説明

ワイヤソー

【課題】ワイヤの走行安定性やガイドローラの耐久性を高める。
【解決手段】ガイドローラ24A〜24Dと、これらの外側から巻回される切断用ワイヤWにより形成されてその軸方向に走行するワイヤ群とを備え、一対のガイドローラ24A,24B間を切断領域としとワイヤ群に対してワーク28が相対的に切断送りされるワイヤソー。このワイヤソーは、ワイヤ群に対して外側から接触して連れ回りする補助ローラ26を備える。補助ローラ26は、互いに隣接するガイドローラ24A,24D同士、及びガイドローラ24B,24C同士の間の位置で当該ガイドローラ24A,24D、及びガイドローラ24B,24Cの各共通接線よりも内側に入り込んだ位置でワイヤ群に接触することによりワイヤ群の軌道を共通接線よりも内側にシフトする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断用ワイヤにより構成されたワイヤ群に対して半導体インゴット等のワークを切り込み送りすることにより当該ワークを切断するワイヤソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークをウエハ状に切り出す手段としてワイヤソーが知られている(例えば特許文献1、2)。ワイヤソーは、複数のガイドローラに対して一体にその外側から切断用ワイヤが巻き掛けられることによりガイドローラ間に該ワイヤが多数本並んだワイヤ群が形成され、このワイヤ群をその軸方向に高速走行させながら該ワイヤ群に対して、ワーク保持部に保持されたワークを切断用ワイヤの軸方向と直交する方向に切断送りすることで、ワークをウエハ状に多数枚同時に切り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−114249号公報
【特許文献2】特開2003−127058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載されるように、一般的なワイヤソーではガイドローラの数は2個〜4個である。ガイドローラの外径が一定の場合、各ガイドローラに巻き掛けられるワイヤの掛かり代(接触長)はガイドローラの数が多いほど少なく(短く)なる。
【0005】
このようにガイドローラへのワイヤの掛かり代が少なくなると、その分、ガイドローラによるワイヤ保持力が低下しワイヤの走行安定性が損なわれることが考えられる。また、ガイドローラに対する単位面積当たりのワイヤの接触圧が高くなって摩耗が進み易くなる結果、ガイドローラの耐久性が低下することも考えられる。従って、この点を改良して、ワイヤをより安定的に駆動でき、またガイドローラの耐久性を高めることが求められる。
【0006】
なお、このような課題を解決する手段として、ガイドローラの外径を大きくしてワイヤの掛かり代を稼ぐことが考えられる。しかし、この場合には、ワークの切断送りスペースを確保するためにガイドローラ間ピッチを拡大する必要があり、例えばガイドローラ間のワイヤ長が長くなりワイヤの撓みの要因になる等、必ずしも得策とは言えない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ワイヤの走行安定性やガイドローラの耐久性を高めることができるワイヤソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、回転駆動される複数のガイドローラと、これらガイドローラに外側から巻回される切断用ワイヤにより形成され、前記ガイドローラの駆動に伴いワイヤ軸方向に走行するワイヤ群とを備え、当該ワイヤ群に対してワークが相対的に切断送りされるワイヤソーにおいて、前記ワイヤ群のうちワークの切断に寄与する領域以外の領域で当該ワイヤ群に対して外側から接触し、当該ワイヤ群の走行に伴い連れ回りする補助ローラを備え、この補助ローラは、互いに隣接する特定のガイドローラ同士の間の位置で当該ガイドローラの共通接線よりも内側に入り込んだ位置で前記ワイヤ群に接触することにより当該ワイヤ群の軌道を当該共通接線よりも内側にシフトするものである。
【0009】
この構成によれば、補助ローラを設けない場合、つまり前記共通接線に沿ってワイヤ群が走行する場合(従来のワイヤソーの場合)に比べて前記特定のガイドローラに対する切断用ワイヤの掛かり代(接触長さ)が増加する。従って、その分、各ガイドローラによるワイヤの保持力を高めることが可能となり、また、ガイドローラに対する単位面積当たりのワイヤの接触圧を低下させてガイドローラの摩耗を低減させることが可能となる。
【0010】
この場合、特定のガイドローラ間の中間位置に補助ローラを配置するようにしてもよいが、前記特定のガイドローラ同士の間で当該各ガイドローラにそれぞれ近接する位置に補助ローラを設ける構成とすれば、当該特定のガイドローラに対する切断用ワイヤの掛かり代をより多く確保することが可能となる。
【0011】
より具体的な構成として、ワイヤソーとして4つのガイドローラを備えるもの、すなわち互いに特定方向に並ぶ一対の第1ガイドローラと、当該第1ガイドローラから前記特定方向と直交する方向に離れた位置で当該特定方向と平行な方向に並ぶ一対の第2ガイドローラとを含み、かつ第1ガイドローラ同士の間が切断に寄与する領域とされるものでは、同じ側にそれぞれ配置される第1及び第2ガイドローラ同士の間に前記補助ローラがそれぞれ配置されているものとするのが好適である。
【0012】
この構成によれば、特に4つのガイドローラを備えるワイヤソーにおいて、従来のこの種のワイヤソーに比べて各ガイドローラへのワイヤの掛かり代を増やすことができる。
【0013】
この場合、ワイヤ群をより安定的に走行させ、また十分な耐久性を確保する上では、前記補助ローラは、各ガイドローラにそれぞれ近接する位置であって当該ガイドローラに対する前記切断用ワイヤの掛かり代が当該ガイドローラの中心軸回りの角度換算値で180°となる位置に配置されているのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、従来のこの種のワイヤソーに比べて各ガイドローラに対する切断用ワイヤの掛かり代を増加させることができる。従って、その分、各ガイドローラによるワイヤの保持力を高めることができ、これによりワイヤの走行安定性を向上させることが可能となる。また、ガイドローラに対する単位面積当たりのワイヤの接触圧を低下させてガイドローラの摩耗を低減させることができるため、これによりガイドローラの耐久性を高めることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるワイヤソーを示す全体構成図である。
【図2】ワイヤソーの要部(ガイドローラ周辺)模式図である。
【図3】ワイヤソーの変形例を示す要部模式図である。
【図4】ワイヤソーの変形例を示す要部模式図である。
【図5】ワイヤソーの変形例を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0017】
図1は、本発明に係るワイヤソーの全体構成を概略的に示している。この図に示すワイヤソーは、一対のワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10B、ガイドプーリ12A,12B、ガイドプーリ14A,14B、ガイドプーリ16A,16B、ワイヤ張力調節装置18A,18B、ガイドプーリ22A,22B、4つのガイドローラ24A〜24D及び4つの補助ローラ26を備えている。
【0018】
ガイドローラ24A,24B(それぞれ本発明の第1ガイドローラに相当する)は互いに同じ高さ位置に配され、ガイドローラ24C,26D(それぞれ本発明の第2ガイドローラに相当する)はそれぞれガイドローラ24A,24Bの下方の位置に配されており、各ガイドローラ24A〜24Dがそれぞれ駆動モータ25A〜25Dによって個別に回転駆動されるようになっている。同図では、便宜上駆動モータ25B、25Cは省略している。
【0019】
各ワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10Bは、切断用ワイヤWが巻かれるボビン9A,9Bと、これを回転駆動するボビン駆動モータ11A,11Bとを備えている。一方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Aのボビン9Aから繰出されたワイヤWは、ガイドプーリ12A,14A,16A、ワイヤ張力調節装置18Aのプーリ20A、及びガイドプーリ22Aの順に掛けられ、さらにガイドローラ24A〜24Dの外側に多数回螺旋状に巻回された(巻き掛けられた)後、ガイドプーリ22B、ワイヤ張力調節装置18Bのプーリ20B、ガイドプーリ16B,14B,12Bの順に掛けられ、他方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Bのボビン9Bに巻き取られており、両ワイヤ張力調節装置18A,18BによってワイヤWに適当な張力が与えられている。そして、駆動モータ25A〜25Dによるガイドローラ24A〜24Dの回転駆動方向と、各ボビン駆動モータ11A,11Bによるボビン9A,9Bの回転駆動方向が正逆に切換えられることにより、ワイヤWがボビン9Aから繰出されてボビン9Bに巻き取られる状態と、ワイヤWがボビン9Bから繰出されてボビン9Aに巻き取られる状態とにワイヤWの駆動方向が反転可能となっている。
【0020】
すなわち、このワイヤソーにおいては、ガイドローラ24A,24Bの間に多数本のワイヤWが互いに平行な状態で張られながらその軸方向に往復駆動されるようになっている。
【0021】
前記ガイドローラ24A,24Bの間に張られたワイヤWの上方には、円柱状のワーク(例えば半導体インゴット)28を移動させるワーク送り装置30が設けられている。このワーク送り装置30は、前記ワーク28をその軸方向とワイヤ並び方向とが合致する向きに保持するワーク保持部32と、ワーク送りモータ34を駆動源として上記ワーク保持部32とワーク28とを一体に昇降させる(すなわち切断送りする)図外のねじ送り機構とを含む。従って、このワイヤソーでは、ガイドローラ24A,24B間の位置が切断領域とされ当該ガイドローラ24A,24B間に張られたワイヤ群がその長手方向に同時に高速駆動された状態で、該ワイヤ群に対してワーク28が下方に切断送りされることにより、このワーク28から一度に多数枚のウエハ(薄片)が同時に切り出される。
【0022】
図2は、ワイヤソーの要部、つまりガイドローラ24A〜24D及び補助ローラ26とこれらに掛け渡されるワイヤWを模式的に示している。
【0023】
同図に示すようにガイドローラ24A〜24Dは外径が等しい同一構造のローラであり長方形(又は正方形)の四隅の位置に回転中心が位置するように配列されている。これらガイドローラ24A〜24Dは、金属製のローラ本体の外周面に例えばポリウレタン等の樹脂層が形成され、さらにこの樹脂層の外周面にガイド溝(図示省略)が形成された構造であり、これらガイド溝にワイヤWが嵌め込まれながら、当該ワイヤWがガイドローラ24A〜24Dの外側に掛け渡されている。
【0024】
そして、このようにガイドローラ24A〜24DにワイヤWが巻回されることにより形成されたワイヤ群に対してその外側から接触するように4つの補助ローラ26が配置されている。これらの補助ローラ26は、図外のフレーム等に回転自在に支持される従動ローラ(アイドルローラ)であり、その外径はガイドローラ24A〜24Dよりも十分に小さい。
【0025】
補助ローラは、前記ガイドローラ24A〜24D間のうち横方向の同じ側に配置されるガイドローラ間、すなわちガイドローラ24A,24D間及びガイドローラ24B、24C間にそれぞれ2つ上下一列に並んだ状態で配置されている。
【0026】
ガイドローラ24A,24D間に配置される補助ローラ26は、ガイドローラ24A,24Dにそれぞれ近接する位置であって当該ガイドローラ24A,24Dの共通接線(同図中に破線で示す)よりも内側に入り込んだ位置でワイヤ群に接触するように配置されており、これにより当該ガイドローラ24A,24D間のワイヤ群の軌道が前記共通接線よりも内側にシフトしている。同様に、ガイドローラ24B,24C間に配置される補助ローラ26もガイドローラ24B,24Cにそれぞれ近接する位置であって当該ガイドローラ24B,24Cの共通接線(同図中に破線で示す)よりも内側に入り込んだ位置でワイヤ群に接触するように配置されており、これにより当該ガイドローラ24B,24C間のワイヤ群の軌道が前記共通接線よりも内側にシフトしている。なお、当例では、各補助ローラ26は、それらの中心位置が両側に位置するガイドローラ24A,24D(又は24B,24C)の中心位置を結んだ線分よりも内側の位置であって、各ガイドローラ24A,24Dに対するワイヤWの掛かり代(接触長)が各ガイドローラ24A〜24Dの中心軸回りの角度換算値(同図中に符号θ1で示す)でほぼ180°となる位置に配置されている。
【0027】
なお、これら補助ローラ26も前記ガイドローラ24A等と同様に、金属性のローラ本体の外周面にポリウレタン等の樹脂層が形成され、この樹脂層にガイド溝が形成された構造であり、これらガイド溝にワイヤWが嵌め込まれた状態でワイヤWが掛け渡される。
【0028】
このようなワイヤソーによれば、補助ローラ26を設けることなく各ガイドローラ24A〜24DにワイヤWを巻回しただけの場合に比べて各ガイドローラ24A〜24DへのワイヤWの掛かり代が多くなる。すなわち、補助ローラ26を設けることなくガイドローラ24A〜24DにワイヤWを巻回した場合には、同図中に破線で示すように、ガイドローラ24A,24D間、及びガイドローラ24B,24C間では、ワイヤ群が隣接するガイドローラ24A,24D(又はガイドローラ24B,24C)の共通接線に沿うこととなり、各ガイドローラ24A〜24DへのワイヤWの掛かり代は角度換算値(同図中に符号θ2で示す)でほぼ90°となるところ、当例では、上記の通りガイドローラ24A〜24DへのワイヤWの掛かり代は倍の180°となっている。
【0029】
従って、このワイヤソーによれば、このようにワイヤWの掛かり代が多くなる分、補助ローラ26を設けること無くガイドローラ24A〜24DにワイヤWを巻回した場合、つまり、当該補助ローラ26を備えていない従来のこの種のワイヤソーに比べてガイドローラ24A〜24DによるワイヤWの保持力を高めることができ、これによりワイヤWの走行安定性を向上されることが可能となる。また、ガイドローラ24A〜24Dに対する単位面積当たりのワイヤWの接触圧を低下させることができ、これによりガイドローラ24A〜24Dのガイド溝の摩耗を低減してこれらガイドローラ24A〜24Dの耐久性を向上させることが可能となる。
【0030】
なお、この実施形態では、ガイドローラ24A,24D間、及びガイドローラ24B,24C間にそれぞれ2つの補助ローラ26を設けているが、例えば、図3に示すように、ガイドローラ24A,24Dの中間位置、及びガイドローラ24B,24Cの中間位置にそれぞれ補助ローラ26を一つだけ設けた構成としてもよい。この構成によれば、図2の例に比べると各ガイドローラ24A〜24DへのワイヤWの掛かり代は若干少なくなるが、それでも補助ローラ26を設けることなくガイドローラ24A〜24DにワイヤWを巻回した場合に比べると、各ガイドローラ24A〜24DへのワイヤWの掛かり代は多くなる。そのため、従来のワイヤソーに比べると、ワイヤWの走行安定性を向上させ、またガイドローラ24A〜24Dの耐久性を向上させるという作用効果を享受することができる。
【0031】
以上の例は、4つのガイドローラ24A〜24DにワイヤWが巻回されるタイプのワイヤソーに本発明を適用した例であるが、本発明は、2つのガイドローラにワイヤWが巻回されることによりワイヤ群が形成されるもの、あるいは3つのガイドローラに切断用ワイヤが巻回されることによりワイヤ群が形成されるものについても適用が可能である。
【0032】
図4は、3つのガイドローラを備えるワイヤソーに本発明を適用した場合の一形態を模式的に示している。このワイヤソーは、2つのガイドローラ24A、24Bが互いに同じ高さ位置に配置され、これらの中間の下方位置に1つのガイドローラ24Cが配置されている。そして、これらガイドローラ24A〜24Cの外側にワイヤWが巻回されることによりワイヤ群が形成され、上側2つのガイドローラ24A,24Bの間がワーク28の切断領域とされる。
【0033】
上側2つの各ガイドローラ24A,24Bと下側のガイドローラ24Cとの中間位置にはそれぞれ補助ローラ26が配置され、これら補助ローラ26がワイヤ群に対してその外側から接触している。詳しくは、各補助ローラ26は、各ガイドローラ24A,24Bの中心とガイドローラ24Cの中心をそれぞれ通る軸線上又はそれよりも内側に中心が位置するように配置されており、これにより、ガイドローラ24A,24C間、及びガイドローラ24B,24C間のワイヤ群の軌道がガイドローラ24A,24C、及びガイドローラ24B,24Cの各共通接線よりも内側にシフトしている。
【0034】
このようなワイヤソーの場合も、補助ローラ26を設けることなくガイドローラ24A〜24CにワイヤWを巻回してワイヤ群を形成する場合(同図中に破線で示す)に比べて各ガイドローラ24A〜24CへのワイヤWの掛かり代が多くなる。従って、補助ローラ26を設けることなく3つのガイドローラ24A〜24CにワイヤWを巻回した場合、つまり、当該補助ローラ26を備えていない従来のこの種のワイヤソーに比べると、ワイヤWの走行安定性を向上させ、またガイドローラ24A〜24Cの耐久性を向上させることができる。
【0035】
図5は、2つのガイドローラを備えたワイヤソーに本発明を適用した場合の一形態を模式的に示している。このワイヤソーは、2つのガイドローラ24A,24Bが互いに同じ高さ位置に配置されている。そして、これらガイドローラ24A,24Bの外側にワイヤWが巻回されることによりワイヤ群が形成され、このワイヤ群のうちガイドローラ24A,24B間で上側に位置するワイヤ群に対してワーク28が切断送りされる。
【0036】
ガイドローラ24A,24B間には2つの補助ローラ26が配置され、これら補助ローラ26がワイヤ群に対してその外側(同図では下側)から接触している。詳しくは、各補助ローラ26は、ガイドローラ24A,24Bにそれぞれ近接する位置であって当該ガイドローラ24A,24Bの共通接線(同図中に破線で示す)よりも内側に入り込んだ位置に配置されており、これにより当該ガイドローラ24A,24B間のワイヤ群のうちワーク28の切断に寄与しない下側のワイヤ群の軌道が前記共通接線よりも内側にシフトしている。
【0037】
このようなワイヤソーの場合も、補助ローラ26を設けることなくガイドローラ24A,24BにワイヤWを巻回してワイヤ群を形成する場合(同図中に破線で示す)に比べて各ガイドローラ24A,24BへのワイヤWの掛かり代が多くなる。従って、補助ローラ26を設けることなく2つのガイドローラ24A,24BにワイヤWを巻回した場合、つまり、当該補助ローラ26を備えていない従来のこの種のワイヤソーに比べると、ワイヤWの走行安定性を向上させ、またガイドローラ24A,24Bの耐久性を向上させることができる。
【0038】
なお、以上は本発明の実施形態の例示であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
例えば、補助ローラの数や配置は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、補助ローラを設けることなくガイドローラにワイヤWを掛け渡した場合よりもガイドローラに対するワイヤWの掛かり代が多くなるように適宜設けるようにすればよく、従って、図1,2の実施形態では、補助ローラ26は、これらの中心位置がそれらの両側に位置するガイドローラ24A,24D(又は24B,24C)の中心位置よりも内側に位置するように配置されているが、当該補助ローラ26の位置は、その両側に位置するガイドローラ24A,24D(又は24B,24C)の共通接線よりも内側に入り込んだ位置で当該補助ローラ26がワイヤ群に接触する位置であれば適宜変更可能である。この点は、図4、図5の実施形態のものについても同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される複数のガイドローラと、これらガイドローラに外側から巻回される切断用ワイヤにより形成され、前記ガイドローラの駆動に伴いワイヤ軸方向に走行するワイヤ群とを備え、当該ワイヤ群に対してワークが相対的に切断送りされるワイヤソーにおいて、
前記ワイヤ群のうちワークの切断に寄与する領域以外の領域で当該ワイヤ群に対して外側から接触し、当該ワイヤ群の走行に伴い連れ回りする補助ローラを備え、当該補助ローラは、互いに隣接する特定のガイドローラ同士の間の位置で当該ガイドローラの共通接線よりも内側に入り込んだ位置で前記ワイヤ群に接触することにより当該ワイヤ群の軌道を当該共通接線よりも内側にシフトすることを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤソーにおいて、
前記補助ローラは、前記特定のガイドローラ同士の間で当該各ガイドローラにそれぞれ近接する位置に設けられていることを特徴とするワイヤソー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤソーにおいて、
互いに特定方向に並ぶ一対の第1ガイドローラと、当該第1ガイドローラから前記特定方向と直交する方向に離れた位置で当該特定方向と平行な方向に並ぶ一対の第2ガイドローラとを含み、かつ第1ガイドローラ同士の間が切断に寄与する領域とされており、同じ側にそれぞれ配置される第1及び第2ガイドローラ同士の間に前記補助ローラがそれぞれ配置されていることを特徴とするワイヤソー。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤソーにおいて、
前記補助ローラは、各ガイドローラにそれぞれ近接する位置であって当該ガイドローラに対する前記切断用ワイヤの掛かり代が当該ガイドローラの中心軸回りの角度換算値で180°となる位置に配置されていることを特徴とするワイヤソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177849(P2011−177849A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45448(P2010−45448)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】