説明

ワイヤソー

【課題】ワイヤの断線をより正確に検出できるようにする。
【解決手段】ワイヤソーであって、ガイドローラ24A,24B間に形成されるワイヤ群と、スラリ供給用のノズル26A、26Bと、ワイヤWの断線を検知する断線検知手段とを備える。断線検知手段は、検出部材36A,36Bと、これら検出部材とワイヤWとの間に電圧を印加しながら当該検出部材とワイヤWとの通電状態を監視するための断線検知用回路40等と、その通電状態に基づき断線の有無を判定する制御装置38(判定部38a)とを含む。各検出部材36A,36Bは、ガイドローラの各中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置に配置される。判定部38aは、切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材を判定用検出部材としてこれとワイヤWとの通電状態に基づきワイヤWの断線の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料、セラミック、ガラス基板等の脆性材料からなるワークを高速駆動されるワイヤによりウエハ状に切断するワイヤソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤソーは、複数のワイヤを列状に配置して走行させ、当該ワイヤに遊離砥粒を含有する加工液(スラリ)を吹き付けながらワイヤの軸方向と直交する方向にワークを切断送りすることにより、複数枚のウエハを多数枚同時に切り出すものである。
【0003】
このワイヤソーでは、加工中にワイヤが断線する場合がある。このような場合には、ワークや装置の損傷を防止するために速やかに断線を検知して装置を停止させる必要があり、特許文献1には、そのような断線検知の方法(手段)が記載されている。
【0004】
この特許文献1に記載される方法(手段)は、導電性を有する断線検出用ワイヤ(以下、検出部材という)をワイヤ並び方向と交差するようにワイヤ群に近接する位置に配置し、ワイヤをグランドに接続した上でこの検出部材に電圧を印加することによりその電圧変化を監視するものである。つまり、ワイヤに断線が生じると、その断線部分が検出部材に接触して当該検出部材に電流が流れるため、このときの電圧変化に基づきワイヤの断線を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−34515号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような方法(手段)では次のような課題がある。
【0007】
近年、環境への配慮から、スラリとして油性のものに代えて水溶性のものが用いられる場合があり、例えば、固定砥粒ワイヤ(ワイヤに砥粒が固着されたもの)が適用されるワイヤソーではより水に近いものが用いられる場合がある。この種のスラリは導電性を有するため、このようなスラリが使用されるワイヤソーに上記従来の断線検知方法(手段)が適用されると、ワイヤと検出部材との間にスラリが介在することにより、断線が生じていなくても断線時と同様に検出部材に電流が流れ、断線が誤検知されるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1の方法(手段)は、検出部材とワイヤとの接触により断線を検知するため、検出部材が配置されるワイヤ群の近傍位置以外の場所(ワイヤ繰り出し位置やワイヤ巻取り位置の近傍)で断線が生じた場合に当該断線を検出することが困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ワイヤの断線をより正確に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、ワイヤソーであって、複数のガイドローラを備えるワーク切断部と、前記複数のガイドローラに切断用ワイヤが巻回されることによりガイドローラ間に形成されるワイヤ群と、前記ワーク切断部への切断用ワイヤの繰出し及び巻取りを交互に行うことにより前記ワイヤ群を軸方向に走行させる一対のワイヤ繰出し・巻取り装置と、ワークを前記ワイヤ群に対して相対的に切断送りする送り手段と、前記ワイヤ群のうちワークが切断送りされる切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラの各中心位置よりも内側の位置で前記ワイヤ群に加工液を供給する加工液供給部と、前記切断用ワイヤの断線を検知するための断線検知手段とを備え、前記加工液供給部からワイヤ群に対して加工液が供給された状態で、前記一対のワイヤ繰出し・巻取り装置のうち一方側のワイヤ繰出し・巻取り装置から切断用ワイヤが繰出されながら他方側のワイヤ繰出し・巻取り装置に巻取られる状態と当該他方側のワイヤ繰出し・巻取り装置から切断用ワイヤが繰出されながら前記一方側のワイヤ繰出し・巻取り装置に巻取られる状態とに前記ワイヤ群の走行状態が切換えられながら前記送り手段により前記ワイヤ群に対してワークが切断送りされるように構成されており、前記断線検知手段は、導電性を有する材料からなりかつ前記ワイヤ群の外側の位置であって前記切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラにそれぞれ近接する位置に前記切断用ワイヤと非接触の状態でそれぞれ配置される一対の検出部材と、これら検出部材と前記切断用ワイヤとの間に電圧を印加しながらそのときの当該各検出部材と前記切断用ワイヤとの通電状態をそれぞれ監視する監視手段と、この監視手段により監視される前記通電状態に基づき前記切断用ワイヤの断線の有無を判定する判定手段とを含んでおり、前記各検出部材は、前記切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラの各中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置に配置されており、前記判定手段は、前記各検出部材のうち前記切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材を判定用検出部材と決定し、前記監視手段により監視される前記通電状態のうち前記判定用検出部材と前記切断用ワイヤとの通電状態に基づき当該切断用ワイヤの断線の有無を判定するものである。
【0011】
このワイヤソーでは、ワーク切断部(ワイヤ群)において切断用ワイヤに断線が生じると、これが検出部材に接触して当該検出部材と切断用ワイヤとが通電状態となり、この通電状態の検知に基づき判定手段により断線の有無が判定される。この場合、このワイヤソーによれば、従来のように加工液の影響を受けることなく切断用ワイヤの断線を正確に検知することが可能である。すなわち、各加工液供給部から供給される加工液は、ワイヤ群の走行に伴いその走行方向下流側に運ばれるため、上記のように各検出部材が切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラの各中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置に配置された構成によれば、各検出部材のうち、切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材には殆ど加工液がかからない。従って、このように各検出部材が配置された上で、判定手段が、各検出部材のうち前記切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材を判定用検出部材と決定してこの判定用検出部材と切断用ワイヤとの通電状態に基づき切断用ワイヤの断線の有無を判定する上記ワイヤソーの構成によれば、断線が生じていないにもかかわらず、切断用ワイヤと検出手段との間に加工液が介在して断線時と同様に切断用ワイヤと検出手段とが通電状態となる、つまり断線が誤検知されるといった不都合を回避することが可能であり、これによって切断用ワイヤの断線を正確に検知することが可能となる。
【0012】
なお、この構成では、断線した切断用ワイヤが各検出部材と接触することにより断線が検知されるため、ワーク切断部以外の箇所で断線が生じた場合、すなわち各ワイヤ繰出し・巻取り装置とワーク切断部との間の位置で切断用ワイヤに断線が生じたような場合に当該断線を検知することは困難である。しかし、この問題は次の構成により解決される。
【0013】
すなわち、前記監視手段を第1監視手段としたときに、前記断線検知手段は、前記切断用ワイヤの両端に電圧を印加しながら当該切断用ワイヤの通電状態を監視する第2監視手段を備えており、前記判定手段は、この第2監視手段により監視される通電状態に基づき前記切断用ワイヤの断線の有無を判定するとともに所定時間毎に第1監視手段と第2監視手段とを切換えるように構成される。
【0014】
このように、第2監視手段により切断用ワイヤの両端に電圧を印加しながらその通電状態を監視し、この通電状態に基づき判定手段がさらに切断用ワイヤの断線の有無を判定する構成によれば、断線が発生した場合にはその場所(位置)に拘わらず通電が遮断されるため、切断用ワイヤの全域に亘って断線を検知することが可能となる。
【0015】
そして、所定時間毎に第1監視手段と第2監視手段とが切換えられるこのワイヤソーの構成によれば、切断用ワイヤ全域に亘って正確な断線検出が可能となる。すなわち、上記の通り、切断用ワイヤ全域に亘ってその断線を検知することが可能であることから、第2監視手段により監視される通電状態のみに基づいて断線の有無を判定することも考えられる。しかし、導電性を有する加工液が切断用ワイヤに供給されるような場合には、断線が生じていても、加工液により断線部分が補完されて切断用ワイヤの通電状態が保たれるおそれがあり、第2監視手段により監視される導通状態のみに基づいて切断用ワイヤの断線を検知するのでは信頼性の上で問題がある。これに対して所定時間毎に第1監視手段と第2監視手段とを切換える構成によれば、第1監視手段により監視される切断用ワイヤと各検出部材との導通状態に基づき断線の有無判定が行われることにより、ワーク切断部での切断用ワイヤの断線については加工液の影響を受けることなく確実に断線を検知することができ、また、第2監視手段により監視される導通状態に基づき断線の有無判定が行われることにより、加工液の供給が行われていないワーク切断部以外での切断用ワイヤの断線についても当該断線を確実に検知することができる。従って、切断用ワイヤ全域に亘って正確な断線検知が可能となる。
【0016】
なお、この種のワイヤソーでは、そのフレームや筐体等の構成部分は感電防止等の目的からグランドに接続される。そのため、上記構成において、前記第2監視手段は、負極がグランドに接続されかつ正極が前記切断用ワイヤの一方側の端部に接続される電源部と、前記切断用ワイヤの他方側の端部を電気的にグランドに接続する導電部と、この導電部の電圧を検出する第1検出部と、グランドから切断用ワイヤの前記一方側の端部までの電圧を検出する第2検出部とを含み、前記各検出部により検出される電圧を監視するものであり、前記判定手段は、第1検出部の検出値が所定の第1基準値以下でかつ第2検出部の検出値が所定の第2基準値以上である場合には前記切断用ワイヤに断線が有ると判定し、前記第1検出部の検出値が前記第1基準値以下でかつ第2検出部の検出値が第2基準値未満である場合には前記切断用ワイヤが走行経路から外れていると判定するように構成することもワークや装置の損傷を防止する上で有効である。
【0017】
このような構成によれば、切断用ワイヤの断線の検知に加えて、切断用ワイヤが走行経路から外れた状態、詳しくは、例えば案内用のプーリ等から切断用ワイヤが脱落してフレームや筐体等、グランドに接続された部分に接触している状態を検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、ワイヤ群の近傍に配置される検出部材と切断用ワイヤとの接触による通電状態に基づいて当該切断用ワイヤの断線を検知するワイヤソーにおいて、切断用ワイヤと検出部材との間に加工液が介在して断線が誤検知されるといった不都合を良好に回避することができる。従って、加工液による影響を受けることなく切断用ワイヤの断線をより正確に検出できるようになる。また、ワーク切断部以外の場所での切断用ワイヤの断線についても当該断線を適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるワイヤソー(第1の実施形態)を示す全体構成図である。
【図2】切断用ワイヤの断線を検知するための構成を示す回路図である。
【図3】ワイヤソーの駆動状態を示す概略図である((a)は切断用ワイヤの順方向駆動状態を示し、(b)は切断用ワイヤの逆方向駆動状態を示す)。
【図4】本発明に係るワイヤソー(第2の実施形態)のうち切断用ワイヤの断線を検知するための構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0021】
図1は、本発明に係るワイヤソー(第1の実施形態)の全体構成を概略的に示している。この図に示すワイヤソーは、一対のワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10B、ガイドプーリ12A,12B、ガイドプーリ14A,14B、ガイドプーリ16A,16B、ワイヤ張力調節装置18A,18B、ガイドプーリ22A,22B及びガイドローラ24A,24Bを備えている。ガイドローラ24A,24Bは互いに同じ高さ位置に配置されており、これらガイドローラ24A,24Bは図外の駆動モータによって個別に回転駆動されるようになっている。
【0022】
各ワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10B(適宜、第1ワイヤ繰出し・巻取り装置10A、第2ワイヤ繰出し・巻取り装置10A10Bという)は、切断用ワイヤW(以下、ワイヤWと略す)が巻かれるボビン9A,9Bと、これを回転駆動するボビン駆動モータ11A,11Bとを備えている。一方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Aのボビン9Aから繰出されたワイヤWは、ガイドプーリ12A,14A,16A、ワイヤ張力調節装置18Aのプーリ20A、及びガイドプーリ22Aの順に掛けられ、さらにガイドローラ24A,24Bの外側に多数回螺旋状に巻回された(巻き掛けられた)後、ガイドプーリ22B、ワイヤ張力調節装置18Bのプーリ20B、ガイドプーリ16B,14B,12Bの順に掛けられ、他方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Bのボビン9Bに巻き取られており、両ワイヤ張力調節装置18A,18BによってワイヤWに適当な張力が与えられている。そして、駆動モータによるガイドローラ24A,24Bの回転駆動方向と、各ボビン駆動モータ11A,11Bによるボビン9A,9Bの回転駆動方向が正逆に切換えられることにより、第2ワイヤ繰出し・巻取り装置10Bのボビン9BからワイヤWが繰出されながら第1ワイヤ繰出し・巻取り装置10Aのボビン9Aに巻き取られる状態(図1中の実線矢印に示す走行状態;以下、順方向駆動状態という)と、ワイヤWがボビン9Aから繰出されながらボビン9Bに巻き取られる状態(図1中の破線矢印に示す走行状態;以下、逆方向駆動状態という)とにワイヤWの駆動方向が反転可能となっている。
【0023】
すなわち、このワイヤソーにおいては、ガイドローラ24A,24Bの間に多数本のワイヤWが互いに平行な状態で張られながらその軸方向に往復駆動されるようになっている。
【0024】
前記ガイドローラ24A,24Bの間に張られたワイヤWの上方には、円柱状のワーク(例えば半導体インゴット)28を移動させるワーク送り装置30(本発明の送り手段に相当する)が設けられている。このワーク送り装置30は、前記ワーク28をその軸方向とワイヤ並び方向とが合致する向きに保持するワーク保持部32と、ワーク送りモータを駆動源として上記ワーク保持部32とワーク28とを一体に昇降させる(すなわち切断送りする)図外のねじ送り機構とを含む。従って、このワイヤソーでは、当該ガイドローラ24A,24B間に張られたワイヤ群がその長手方向に同時に高速駆動された状態で、当該ガイドローラ24A,24B間に張られた上下のワイヤ群のうち上側のワイヤ群の略中間部が切断領域とされ、当該ワイヤ群に対してワーク28が下方に切断送りされることにより、このワーク28から一度に多数枚のウエハ(薄片)が同時に切り出される。
【0025】
前記切断領域の両側であってワイヤ群の上方位置には、分散液に遊離砥粒を混合した加工液であるスラリを供給するためのノズル26A、26B(本発明の加工液供給部に相当する)が配備されている。これらノズル26A、26Bは、ガイドローラ24A,24Bの各中心位置よりも内側の位置でスラリをワイヤ群に供給するとともにガイドローラ24A,24Bに供給するものであり、これによりワイヤWを担体として遊離砥粒をワーク28に送り込みながら当該ワーク28を切断するとともに、当該スラリによりガイドローラ24A,24Bを冷却するようなっている。なお、この例では、例えばスラリとして水溶性の分散剤に砥粒を混合した導電性を有するものが適用されている。また、スラリの供給は上記の通りガイドローラ24A,24Bの冷却も目的とするため、加工中は、ワイヤWの走行状態(方向)に関係なく常に両ノズル26A、26Bからスラリの供給が行われる。
【0026】
ワイヤ群の外側の位置であって各ガイドプーリ12A,12Bの近傍位置にはそれぞれワイヤWの断線を検知するための検出部材36A,36Bが配備されている。
【0027】
これら検出部材36A,36B(適宜、第1検出部材36A、第2検出部材36Bという)は、ガイドローラ24A,24Bの軸方向と平行な方向に延びる導電性を有する棒状の部材で、具体的には各ガイドローラ24A,24Bの中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置であって前記中心位置よりも下側の位置に配備され、それぞれ絶縁材料からなる支持部材を介してワイヤソーのフレーム等に固定されている。
【0028】
これら検出部材36A,36Bと前記ワイヤWとの間には電圧が印加されており、ワイヤ群に断線が生じてワイヤWの切断部分が検出部材36A,36に接触すると、後述するように断線検知用回路40が通電状態となって当該断線が検知されるようになっている。
【0029】
なお、図中符号38は、NC装置等からなる制御装置である。この制御装置38は、前記ボビン駆動モータ11A,11B、ガイドローラ24A,24Bの各駆動モータおよびワーク送り装置30のワーク送りモータ等を駆動制御することにより当該ワイヤソーの動作を統括的に制御するものである。
【0030】
この制御装置38は、図2に示すように、その機能構成として判定部38a、監視部38bおよび記憶部38cを備えており、監視部38bにより以下に説明する断線検知用回路40の特定箇所の電圧値を監視しつつ、判定部38aにより当該電圧値と記憶部38cに記憶される基準値(閾値)との比較に基づきワイヤWの断線の有無を判定するとともに、ワイヤWに断線が生じている場合にはワイヤWの走行を緊急停止させるべく前記ボビン駆動モータ11A,11B等を駆動制御する。すなわち、当実施形態では、後記断線検知用回路40及び監視部38bが本発明の監視手段に相当し、判定部38a及び記憶部38cが本発明の判定手段に相当し、制御装置38、断線検知用回路40及び検出部材36A,36Bが本発明の断線検知手段に相当する。
【0031】
このワイヤソーは、ワイヤWの断線を検知するための図2に示すような断線検知用回路40を備えている。同図に示すように、この断線検知用回路40は、直流電源41(以下、電源41と略す)、抵抗R1,R2、ダイオードD及び電圧計測部42、44を含む。
【0032】
電源41は、その負極が、ワイヤWの一方側の端部及び当該ワイヤWの他方側の端部にボビン9Aを介して接続されるダイオードDに接続され、正極が、前記検出部材36A,36Bにそれぞれ接続された抵抗R1、R2の並列回路に対して直列に接続されている。
【0033】
抵抗R1、R2の両端にはそれぞれ、電圧計測部42、44(以下、必要に応じて第1電圧計測部42、第2電圧計測部44という)が接続され、これら電圧計測部42、44から前記制御装置38に計測値が出力されるようになっている。そして、ワイヤWの一端がボビン9AおよびダイオードDを介して電源41の負極に接続される一方、他端がボビン9Bを介して電源41の負極に接続されている。なお、ワイヤWはピアノ線等の導電性を有する線材からなりボビン9A,9Bも導電性を有する金属又は樹脂材料から形成されている。
【0034】
上記のワイヤソーでは、ボビン駆動モータ11A,11B等の駆動によりガイドローラ24A,24B間に張られた多数本のワイヤW(ワイヤ群)がその長手方向に高速で駆動されるとともにこのワイヤ群に対してノズル26A、26Bからスラリが供給され、この状態でワーク送り装置30の作動によりワーク28がワイヤ群に対して切断送りされることにより、当該ワーク28から一度に多数枚のウエハが同時に切り出される。
【0035】
ワーク28の切断作業中、前記監視部38bは、断線検知用回路40の各電圧計測部42、44の計測値V,Vを監視し、判定部38aはこれら計測値V,Vに基づきワイヤWの断線の有無を判定する。具体的には、記憶部38cに予め記憶されている基準値(閾値)と前記計測値V,Vとを比較し、計測値V,Vがこの基準値を超えている場合にはワイヤWに断線が生じていると判定する。つまり、ワイヤWに断線が生じていない場合には、図2の断線検知用回路40においてワイヤWと各検出部材36A,36Bとは非接触状態であるため、抵抗R1、R2には電流が流れず、各電圧計測部42、44の計測値V,Vは「0」となる(実際には「0」とは限らないが説明の便宜上「0」とする。以下、同じ)。これに対してワイヤWに断線が生じている場合には、ワイヤWの断線部分が検出部材36A,36Bに接触することにより抵抗R1又は抵抗R2に断続的に電気が流れ、これにより前記基準値(閾値)を超える電圧が抵抗R1又は抵抗R2に生じる。従って、上記のように監視部38bにより電圧計測部42、44の計測値V,Vを監視する、すなわちワイヤWと検出部材36A,36Bとの通電状態を監視することによりワイヤWの断線が検知可能となる。
【0036】
なお、このようなワイヤWの断線の有無判定に関して、前記判定部38aは、ワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10Bの駆動状態に応じて(切断領域におけるワイヤ群の走行方向に応じて)、電圧計測部42、44のうち一方側の電圧計測部42(又は44)の計測値V(又はV)に基づき断線の有無を判定する。具体的には、第2ワイヤ繰出し・巻取り装置10BからワイヤWを繰り出しながら第1ワイヤ繰出し・巻取り装置10Aにより巻取る順方向駆動状態中は第2電圧計測部44の計測値Vに基づいて断線の有無判定を行い、逆に、第1ワイヤ繰出し・巻取り装置10AからワイヤWを繰り出しながら第2ワイヤ繰出し・巻取り装置10Bにより巻取る逆方向駆動状態中は、第1電圧計測部44の計測値Vに基づき断線の有無判定を行う。
【0037】
このように切断領域におけるワイヤ群の走行方向に応じて監視する計測値V,Vを切換えるのは、スラリの影響を受けることなく断線の有無判別を行うためである。つまり、ノズル26A、26Bから吐出されたスラリはワイヤ群の走行に伴いその走行方向下流側に運ばれるため、上記のような各検出部材36A,36Bの配置によれば、切断領域におけるワイヤ群の走行方向下流側に位置する検出部材36A,36Bに対してはガイドローラ24A,24Bに沿ってスラリが流下あるいは飛散することによりスラリがかかるが、同走行方向上流側に位置する検出部材36A,36Bにはスラリは殆どかからない。具体的には、図3(a)に示すように、順方向駆動状態では、切断領域におけるワイヤ群の走行方向下流側に位置する第1検出部材36Aにはスラリがかかるが、同走行方向上流側に位置する第2検出部材36Bにはスラリが殆どかからない。他方、図3(b)に示すように、逆方向駆動状態では、切断領域におけるワイヤ群の走行方向下流側に位置する第2検出部材36Bにはスラリがかかるが、同走行方向上流側に位置する第1検出部材36Aにはスラリが殆どかからない。そのため、判定部38aは、切断領域におけるワイヤ群の走行方向に応じて、前記検出部材36A,36Bのうち、スラリがかかり難い走行方向上流側に位置する検出部材36A,36Bを判定用検出部材と決定し、監視部38bにより監視される検出部材36A,36BとワイヤWとの通電状態(電圧計測部42、44の計測値V,V)のうち、当該判定用検出部材とワイヤWとの通電状態に基づいてワイヤWの断線有無を判定することによりスラリの影響を受けることなく断線の有無判別を行う。つまり、ワイヤWと検出部材36A,36Bとの間にスラリが介在することにより、断線が生じていないにもかかわらず、断線時と同様に断線検知用回路40の抵抗R1、R2に電流が流れ、これにより断線が誤検出されることを回避するようになっている。
【0038】
以上のように、このワイヤソーでは、ワイヤ群の近傍位置に検出部材36A,36Bを設け、ワイヤWとこれら検出部材36A,36Bとの通電状態(電圧計測部42、44の計測値V,V)を監視するため、ワイヤWに断線が生じた場合には当該断線を速やかに検知してワイヤWの走行を停止させることができる。
【0039】
特に、このワイヤソーでは、各検出部材36A,36Bを各ガイドローラ24A,24Bの中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置であって前記中心位置よりも下側の位置に配置した上で、これら検出部材36A,36Bのうち、ワイヤ群の走行方向に応じてスラリがかかり難い側の検出部材36A,36B、つまり切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材36A,36BとワイヤWとの通電状態(電圧計測部42、44の計測値V,V)基づきワイヤWの断線を検知するようになっているので、上記の通りワイヤWと検出部材36A,36Bとの間にスラリが介在して断線が誤検出されるといった不都合を良好に回避することができる。
【0040】
従って、従来のこの種のワイヤソーと比べると、このような断線の誤検知を排除できる分、より正確にワイヤWの断線を検知することができるようになる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態にかかるワイヤソーについて説明する。
【0042】
第2の実施形態にかかるワイヤソーの基本的な構成は第1の実施形態のものと共通であり、従って、共通する部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、第1実施形態との相違点について詳しく説明する。
【0043】
第2の実施形態のワイヤソーは、断線検知用回路40として図4に示すような回路を備えている。この断線検知用回路40は、第1の実施形態の回路構成に、さらに以下のような構成が付加されたものである。すなわち、この断線検知用回路40は、前記電源41(第1電源41という)とは別に電源45(第2電源45という)を備えている。この第2電源45は、その負極がグランドに接続され、正極がスイッチS2及び抵抗R4の直流回路を介してワイヤWの一端側(ボビン9B)に接続されている。また、ワイヤWの他端側(ボビン9A)が抵抗R3を介してグランドに接続されており、断線検知用回路40は、この抵抗R3の両端電圧を計測する電圧計測部46(適宜、第3電圧計測部46という:本発明の第1検出部に相当する)と、ワイヤW(ボビン9A,9B含む)及び抵抗R3の直列回路の両端電圧を計測する電圧計測部48(適宜、第4電圧計測部48という:本発明の第2検出部に相当する)とを備えている。また、抵抗R1,R2の並列回路と第1電源41との間にスイッチS1を備えている。なお、この実施形態では、第2電源45、スイッチS2、抵抗R4、ワイヤW(ボビン9A,9B)及び抵抗R3の直列回路、電圧計測部46、48及び監視部38bが本発明の第2監視手段に相当し、断線検知用回路40のうち第1の実施形態の構成部分及び監視部38bが本発明の第1監視手段に相当する。
【0044】
この第2の実施形態にかかるワイヤソーでは、さらに制御装置38の機能構成としてタイマ部38dが設けられており、ワーク28の切断作業中、判定部38aは、断線検知用回路40の前記スイッチS1、S2を前記タイマ部38dの計時に基づき一定の時間間隔(例えば、0.5s間隔)で交互に開閉する。これにより判定部38aは、第1電源41の電圧をワイヤWと検出部材36A,36Bとの間に印加する状態(スイッチS1が閉、スイッチS2が開の状態;第1電圧印加状態という)と、第2電源45の電圧を抵抗R4、ワイヤW及び抵抗R3の直列回路の両端に印加する状態(スイッチS1が開、スイッチS2が閉の状態;第2電圧印加状態という)とを交互に切換える(つまり、第1監視手段と第2監視手段を切換える)。
【0045】
そして、第1電圧印加状態では、第1実施形態と同様に、監視部38bが各電圧計測部42、44の計測値V,Vを監視(ワイヤWと検出部材36A,36Bとの導通状態を監視)しながら、判定部38aが計測値V,Vに基づきワイヤWの断線の有無を判別する。
【0046】
他方、第2電圧印加状態では、監視部38bが電圧計測部46、48の計測値V,V監視(ワイヤWの通電状態を監視)しながら、判定部38aが計測値V,Vに基づきワイヤWの断線の有無を判別するとともにワイヤWの走行経路からの脱落の有無を判別する。具体的には、判定部38aは、記憶部38cに予め記憶されている第1基準値、第2基準値と前記計測値V,Vとをそれぞれ比較し、第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値以上である場合にはワイヤWに断線が生じていると判定する(第1基準値<第2基準値とする)。つまり、第2電圧印加状態でワイヤWに断線が生じていなければ、抵抗R4,ワイヤW及び抵抗R3の直列回路に電流が流れるため、抵抗R3の両端と、ワイヤW及び抵抗R3の直列回路の両端にはそれぞれ第1基準値及び第2基準値以内の電圧が生じる。一方、ワイヤWに断線が生じた場合には、前記直列回路の通電が遮断されるために第3電圧計測部46の計測値Vが「0」となる一方で、第4電圧計測部48の計測値はほぼ第2電源45の電圧値と等しくなる。従って、判定部38aは、第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値以上である場合には、ワイヤWに断線が生じていると判定する。
【0047】
また、判定部38aは、第1基準値、第2基準値と計測値V,Vとの比較において、第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値未満である場合には、例えばガイドプーリ14A,14BからワイヤWが脱落する等して当該ワイヤWが走行経路から外れていると判定する。つまり、このワイヤソーのフレームや筐体等、ワイヤWの走行経路の周辺部は感電防止等の目的からグランドに接続されており、ワイヤWがガイドプーリ14A,14B等から脱落し、断線を伴うことなくワイヤWが走行経路から外れた場合には、ワイヤWが走行経路の周辺部に接触してワイヤWが電気的にグランドに短絡する。その結果、第3電圧計測部46の計測値Vは「0」となって第1基準値以下となり、また、第4電圧計測部48の計測値VもワイヤWの途中部分でグランドに短絡することにより第2基準値より低くなる。従って、判定部38aは、第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値未満である場合には、ワイヤWが走行経路から外れていると判定する。
【0048】
以上のような第2の実施形態のワイヤソーによれば、第1の実施形態と同様、スラリによる影響を排除してワイヤWの断線検出を行うことができることに加え、ワーク切断部以外の場所でのワイヤWの断線についても当該断線を検出できるという利点がある。つまり、第1の実施形態の構成では、上述したように検出部材36A,36BとワイヤWとの接触により当該ワイヤWの断線が検知されるため、例えばワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10Bとガイドローラ24A,24Bとの間で断線が生じたような場合に当該断線を検出することは困難であるが、第2の実施形態によれば、第2電圧印加状態(スイッチS2が閉、スイッチS1が開)においてワイヤWに断線が生じた場合には、その断線の位置に拘わらず第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値以上となるため、ワイヤWの全域に亘ってその断線を早期に検知できる。従って、ワーク切断部以外でのワイヤWの断線についても当該断線を適切に検知することができる。
【0049】
また、この第2の実施形態のワイヤソーによれば、上記の通りワイヤWの断線に加えて、ワイヤWがガイドプーリ14A,14B等から脱落して走行経路から外れるといったトラブルを検知することが可能である。従って、ワイヤWの断線のみならず、ワイヤWが走行経路から外れることに起因するワーク28や装置の損傷を未然に防止することができるという利点がある。
【0050】
なお、この第2の実施形態のワイヤソーでは、第2電圧印加状態中にワイヤWに断線が生じると、上記の通り第3電圧計測部46の計測値Vが第1基準値以下でかつ第4電圧計測部48の計測値Vが第2基準値以上となるため、理論上は、ワイヤWに第2電源45による電圧を印加しながら電圧計測部46,48の計測値V,Vを監視すれば、ワイヤWの断線をその全域に亘って検知することが可能である。しかし、ワーク切断部において導電性を有するスラリがワイヤWに供給される場合には、断線が生じていても、スラリにより断線部分が補完されてワイヤWの通電状態が保たれるおそれがあり、ワイヤWに第2電源45による電圧を印加しながらその導通状態(電圧計測部46,48の計測値V,V)を監視するのみではワイヤWの断線検知の信頼性に問題がある。これに対して、上記のように所定時間毎に第1電圧印加状態と第2電圧印加状態とを切換える構成によれば、第1電圧印加状態中に電圧計測部42、44の計測値V、Vに基づき断線の有無判定が行われることにより、第1実施形態で説明した通り、ワーク切断部でのワイヤWの断線をスラリの影響を受けることなく確実に検知することができる一方で、第2電圧印加状態中に電圧計測部46、48の計測値V、Vに基づき断線の有無判定が行われることにより、スラリの供給が行われていないワーク切断部以外でのワイヤWの断線についても当該断線を確実に検知することができる。従って、ワイヤWの全域に亘って信頼性の高い断線検知が可能となる。
【0051】
ところで、以上説明した各実施形態のワイヤソーは、本発明の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
例えば、上記各実施形態では、判定部38aが予め記憶部38cに記憶されている基準値(閾値)と電圧計測部42、44の計測値V,Vとを比較し、当該計測値V,Vが基準値を超えた場合に断線が生じていると判定するように構成されているが、判定部38aによる具体的な判定方法はこれに限定されるものではない。例えばワイヤ群は一定速度で回転しているため、計測値V,Vの単位間当たりの電圧変化の回数を計数する、具体的には前記基準値を超える計測値V,Vが単位時間当たりに何回発生するかを計数することにより当該計数値に基づき断線の有無を判定するようにしてもよい。この場合、電流値に基づいて断線の有無を判定してもよい。このような判定方法によれば、ノイズの影響等を排除してより正確に断線の有無を判定することが可能となる。
【0053】
また、各実施形態では、一対のガイドローラ24A,24BにワイヤWが巻回されることにより当該ガイドローラ24A,24B間にワイヤ群が形成されたワイヤソーに本発明を適用した例について説明したが、3つのガイドローラや4つのガイドローラに切断用ワイヤが巻回されることによりワイヤ群が形成されるワイヤソーについても本発明は適用可能である。この場合も、検出部材(検出部材36A,36B)は切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラにそれぞれ近接する位置に配置するようにすればよい。なお、上記実施形態では、各検出部材36A,36Bは、各ガイドローラ24A,24B(断領域の両側のガイドローラ)の中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置であって前記中心位置よりも下側の位置に配備されているが、各検出部材36A,36Bの位置は、各ガイドローラ24A,24Bの中心位置よりも当該ガイドローラ24A,24Bの並び方向外側の位置であれば必ずしも前記中心位置よりも下側の位置である必要はなく、当該中心位置の真横の位置であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10A,10B ワイヤ繰出し・巻取り装置
24A,24B ガイドローラ
28 ワーク
36A,36B 検出部材
38 制御装置
38a 判定部
38b 監視部
38c 記憶部
38d タイマ部
40 断線検知用回路
42、44、46、48 電圧計測部
W 切断用ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤソーであって、
複数のガイドローラを備えるワーク切断部と、前記複数のガイドローラに切断用ワイヤが巻回されることによりガイドローラ間に形成されるワイヤ群と、前記ワーク切断部への切断用ワイヤの繰出し及び巻取りを交互に行うことにより前記ワイヤ群を軸方向に走行させる一対のワイヤ繰出し・巻取り装置と、ワークを前記ワイヤ群に対して相対的に切断送りする送り手段と、前記ワイヤ群のうちワークが切断送りされる切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラの各中心位置よりも内側の位置で前記ワイヤ群に加工液を供給する加工液供給部と、前記切断用ワイヤの断線を検知するための断線検知手段とを備え、
前記加工液供給部からワイヤ群に対して加工液が供給された状態で、前記一対のワイヤ繰出し・巻取り装置のうち一方側のワイヤ繰出し・巻取り装置から切断用ワイヤが繰出されながら他方側のワイヤ繰出し・巻取り装置に巻取られる状態と当該他方側のワイヤ繰出し・巻取り装置から切断用ワイヤが繰出されながら前記一方側のワイヤ繰出し・巻取り装置に巻取られる状態とに前記ワイヤ群の走行状態が切換えられながら前記送り手段により前記ワイヤ群に対してワークが切断送りされるように構成されており、
前記断線検知手段は、導電性を有する材料からなりかつ前記ワイヤ群の外側の位置であって前記切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラにそれぞれ近接する位置に前記切断用ワイヤと非接触の状態でそれぞれ配置される一対の検出部材と、これら検出部材と前記切断用ワイヤとの間に電圧を印加しながらそのときの当該各検出部材と前記切断用ワイヤとの通電状態をそれぞれ監視する監視手段と、この監視手段により監視される前記通電状態に基づき前記切断用ワイヤの断線の有無を判定する判定手段とを含んでおり、
前記各検出部材は、前記切断領域を挟んで互いに隣接するガイドローラの各中心位置よりも当該ガイドローラの並び方向外側の位置に配置されており、
前記判定手段は、前記各検出部材のうち前記切断領域におけるワイヤ群の走行方向上流側に位置する検出部材を判定用検出部材と決定し、前記監視手段により監視される前記通電状態のうち前記判定用検出部材と前記切断用ワイヤとの通電状態に基づき当該切断用ワイヤの断線の有無を判定することを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤソーにおいて、
前記監視手段を第1監視手段としたときに、前記断線検知手段は、前記切断用ワイヤの両端に電圧を印加しながら当該切断用ワイヤの通電状態を監視する第2監視手段を備えており、前記判定手段は、この第2監視手段により監視される前記通電状態に基づき前記切断用ワイヤの断線の有無を判定するとともに所定時間毎に第1監視手段と第2監視手段とを切換えることを特徴とするワイヤソー。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤソーにおいて、
前記第2監視手段は、負極がグランドに接続されかつ正極が前記切断用ワイヤの一方側の端部に接続される電源部と、前記切断用ワイヤの他方側の端部を電気的にグランドに接続する導電部と、この導電部の電圧を検出する第1検出部と、グランドから切断用ワイヤの前記一方側の端部までの電圧を検出する第2検出部とを含み、前記各検出部により検出される電圧を監視するものであり、
前記判定手段は、第1検出部の検出値が所定の第1基準値以下でかつ第2検出部の検出値が所定の第2基準値以上である場合には前記切断用ワイヤに断線が有ると判定し、前記第1検出部の検出値のみが前記第1基準値以下でかつ第2検出部の検出値が第2基準値未満である場合には前記切断用ワイヤが走行経路から外れていると判定することを特徴とするワイヤソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212763(P2011−212763A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80806(P2010−80806)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】