説明

ワイヤハーネスのシールド構造

【課題】部品点数を削減できるワイヤハーネスのシールド構造を提供する。
【解決手段】シールド壁内に電線1をシールドしながら導入する場合のシールド構造において、電線をシールしながら挿通可能な電線挿通孔5aを有し且つシールド壁に対し密着した状態で装着される導電ゴム製のシール部材5を具備する。電線は、導体2の外周に絶縁樹脂層3を形成し、その絶縁樹脂層の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層4をコーティングした構造をなしている。シールド層のある位置まで、電線の端末部を、シール部材の電線挿通孔に挿通してシールド壁内に導入することにより、シール部材の電線挿通孔の内周を電線のシールド層に密着させて、シールド層と導電ゴム製のシール部材とを互いに導通させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスをシールドケース内に導入する場合のシールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の端末部をシールドケース内にシールドしながら導入する場合、例えば、図13〜図15に示すように、電線の端末部に設けたコネクタ110を囲むようにシールドシェル120を設け、そのシールドシェル120の後端部に、電線を覆うように設けた編組121の端部を二重にして被せ、その被せた部分をリング123で加締め固定し、その状態で、シールドシェル120の前面部をシールドケース101に導通させた状態で固定すると共に、シールドケース101内に導入したコネクタ110の端子112を、シールドケース101の端子台102に接続している。また、この際、シールドケース101とシールドシェル120の合わせ面に、シール用のパッキン122を介在させて、シールドケース101とシールドシェル120間のシール性を確保するのが普通である。
【0003】
このようにシールドした構造は、例えば、特許文献1などにおいて広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−281654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図13〜図15に示すような従来のシールド構造では、シールドのために、シールドシェル120、編組121、加締め用のリング123といった部品が必要であり、部品点数が多くなってしまう問題があった。
【0006】
また、1本の編組121で電線の一端から他端までが覆われてしまうため、電線の途中を分岐して、分岐した2本の電線の先端にコネクタをそれぞれ取り付けるような場合には、編組121の構成が複雑になってしまい、対応し難いという問題もあった。
【0007】
また、シールドケース101とシールドシェル120の合わせ面にパッキン122を挟む場合、パッキン122の厚みの範囲に十分なシールド効果を効かせることが難しく、シールド漏れ箇所が生じるおそれもあった。
【0008】
また、編組121の端部をシールドシェル120の後端部外周に被せる箇所においては、編組121の密度が薄くなるために、シールド性能が低下しないよう編組121の端部を折り返して二重にする等の対策を講じているが、そのための加工が面倒である上、編組121を二重に折り返した部分が余計に膨らんでしまい、周辺に余計なスペースが必要となることもあった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を削減できると共に、電線の途中に分岐がある場合にも容易な対応が可能であり、さらに、十分なシール性能とシールド性能を確保することができ、しかも、編組を使用する場合の不具合を解消することのできるワイヤハーネスのシールド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 電気機器のシールド壁内にワイヤハーネスを構成する電線をシールドしながら導入するワイヤハーネスのシールド構造において、
前記電線を該電線の周囲をシールしながら挿通可能な電線挿通孔を有し且つ前記シールド壁に対し密着した状態で装着される導電ゴム製のシール部材を具備し、
前記電線が、導体の外周に絶縁樹脂層を形成し、その絶縁樹脂層の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層を前記導体の長さ方向の所定範囲にわたりコーティングした構造をなしており、
前記樹脂メッキによるシールド層のある位置まで、前記電線の端末部を、前記シール部材の電線挿通孔に挿通して前記シールド壁内に導入することにより、前記シール部材の電線挿通孔の内周を前記電線のシールド層に密着させて、該シールド層と前記導電ゴム製のシール部材とを互いに導通させたことを特徴とするワイヤハーネスのシールド構造。
【0011】
(2) 前記シールド壁内に導入した前記電線の端末部に、前記導体の端部から所定範囲にわたり前記樹脂メッキを除外した非樹脂メッキ部を確保し、その非樹脂メッキ部の端部に、前記絶縁樹脂層を除外した導体露出部を設け、その導体露出部に接続部を設けたことを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネスのシールド構造。
【0012】
(3) 前記導体が複数本、互いに絶縁された状態で、一体成形された前記絶縁樹脂層としての樹脂モールド部によって覆われており、その樹脂モールド部の外周面を覆うように前記樹脂メッキによるシールド層が前記導体の長さ方向の所定範囲にわたりコーティングされ、
一方、前記シール部材に、前記複数の導体を一体に保持した前記樹脂モールド部を該樹脂モールド部の周囲をシールしながら挿通可能な前記電線挿通孔が設けられており、
前記樹脂メッキによるシールド層のある位置まで、前記樹脂モールド部で保持された前記導体の端末部が、前記シール部材の電線挿通孔に挿通されて前記シールド壁内に導入されることにより、前記シール部材の電線挿通孔の内周が前記樹脂モールド部の外周面を覆う前記シールド層に密着し、該シールド層と前記導電ゴム製のシール部材とが互いに導通していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネスのシールド構造。
【0013】
上記(1)の構成のワイヤハーネスのシールド構造によれば、シールド壁の外側に露出する電線部分は、編組の代わりに樹脂メッキによりシールドされ、シールド壁内への電線の導入部は、導電ゴム製のシール部材でシールドされるので、編組やシールドシェルや加締め用のリングが不要であり、部品点数を削減することができる。
【0014】
また、シール部材自体が導電性を有するので、従来のパッキンを使用する場合と違って、シールド漏れ箇所が発生するおそれがなく、十分に高いシールド性能とシール性能を発揮することができる。
【0015】
また、編組の代わりに樹脂メッキを採用するので、電線の途中に分岐がある場合にも容易な対応が可能である。
【0016】
さらに、編組を使用しないので、編組を使用する場合の不具合、即ち、二重折りなどの余分な加工が必要になったり、余分なスペースが必要になったりすることがなく、コンパクトなワイヤハーネスとすることができる。
【0017】
上記(2)の構成のワイヤハーネスのシールド構造によれば、電線の端末部に非樹脂メッキ部を確保し、その非樹脂メッキ部の端部に、絶縁樹脂層を除外した導体露出部を設けて、その導体露出部に接続部を設けたので、シールド層である樹脂メッキ層と導体につながる接続部とを確実に非導通状態に保つことができる。
【0018】
上記(3)の構成のワイヤハーネスのシールド構造によれば、複数本の導体を互いに絶縁した状態で樹脂モールド部により覆って、その樹脂モールド部の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層を形成しているので、複数の導体を絶縁しながら一体的にシールドすることができる。
【0019】
また、導電ゴム製のシール部材の電線挿通孔に樹脂モールド部を挿通させることで、シールド層をシール部材に導通させることができるので、シール部材をシールドケースに密着させるように取り付けることで、シール機能とシールド機能の両方を同時に発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線の外周の樹脂メッキによるシールド層と導電ゴム製のシール部材の採用により、十分なシール性能とシールド性能を確保しながら、部品点数の削減を図ることができる。また、電線の途中に分岐がある場合にも容易な対応が可能であり、さらに、編組を使用する場合の加工の面倒さやスペース面での不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態を示す斜視図である。
【図2】同第1実施形態のワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の斜視図である。
【図4】同第2実施形態のワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の斜視図である。
【図6】同第3実施形態のワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【図7】第3実施形態の組立工程を示すシールド部の分解斜視図である。
【図8】図7の次の工程を示す図であり、図8(a)はシールド部を上から見た斜視図、図8(b)はシールド部を下から見た斜視図である。
【図9】図8の次の工程を示す図であり、図9(a)はシールド部を上から見た斜視図、図9(b)はシールド部を下から見た平面図である。
【図10】図9の次の工程を示すシールド部を上から見た斜視図である。
【図11】図10の次の工程を示すシールド部を上から見た斜視図である。
【図12】図11の次の工程を示すシールド部を上から見た斜視図である。
【図13】従来のワイヤハーネスのシールド構造の組立前の斜視図である。
【図14】同シールド構造の組立状態の斜視図である。
【図15】同シールド構造の組立状態の別の方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態を示す斜視図、図2はワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【0024】
このシールド構造は、電気機器のシールド壁50の内部51に、シールド壁50に形成した挿入孔52を通して、ワイヤハーネスWを構成する電線1を、シールドおよびシールしながら導入する場合の構造である。まず、電線1は、帯板状の導体2の外周に絶縁樹脂層3を形成し、その絶縁樹脂層3の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層4を導体2の長さ方向の所定範囲(図中H3で示す範囲)にわたりコーティングした構造をなしている。
【0025】
本実施形態では、帯板状の電線3は、幅方向に3本並べて配置され、互いに平行に同じ経路で配索されている。これら3本の電線1の両端には、導電ゴム製のシール部材5と、このシール部材5の成形時に、シール部材5と一体化された金属製のシールドシェル7とが配されている。
【0026】
シールドシェル7は、長円形のリング状のもので、その内周鍔部7aがシール部材5を構成するゴムの内部に埋め込まれることで、シール部材5と一体化されており、取付孔付きの外周鍔部7bがシール部材5を構成するゴムの外部に露出している。また、シールドシェル7の内周部に配されたシール部材5は、シールドシェル7を電気機器のシールド壁50に取付孔を用いてネジ止めすることにより、シールド壁50に対して密着した状態に保持されるようになっている。
【0027】
このシール部材5は、長円形状の厚肉板体であり、厚さ方向に貫通させて、各電線1を該電線1の周囲をシールしながら挿通可能な3つの電線挿通孔5aを有している。この場合、帯板状の電線1の断面は長方形であるので、3つの電線挿通孔5aはそれぞれ長方形状の貫通孔として形成されている。また、シールド壁50に対する密着性を高めるために、シールド壁50に対する密着面には環状のシールリップ5bが設けられている。
【0028】
そして、各電線1の端末部は、樹脂メッキによるシールド層4のある位置まで、シール部材5の電線挿通孔5aにそれぞれ挿通されており、シール部材5の電線挿通孔5aの内周リップ5cが電線1のシールド層4の外面に密着している。それにより、シールド層4と導電ゴム製のシール部材5とが互いに導通している。
【0029】
従って、シールドシェル7を電気機器のシールド壁50に取り付けて、シール部材5をシールド壁50に密着させることにより、電線1とシールド壁50の間を防水シールすることができると同時に、シール部材5を通して、あるいは、シール部材5とシールドシェル7とを通して、電線1の外周のシールド層4を電気機器のシールド壁50に導通させて接地することができる。
【0030】
また、このようにしてシールド壁50内に導入される電線1の端末部には、電線1の導体2の端部から所定範囲にわたり樹脂メッキを除外した非樹脂メッキ部H4が確保されており、その非樹脂メッキ部4の端部に、絶縁樹脂層3を除外した導体露出部H1が設けられ、その導体露出部H1が、締結孔を有する接続部8となっている。なお、図中H2で示す範囲は、絶縁樹脂層3が露出した部分である。
【0031】
このように、樹脂メッキによるシールド層4をケーブル露出区間(シールド壁50の外側に露出する区間)の電線1の外周面に形成する場合、シールド用に編組を設ける場合と違って、簡単に余計なスペースや厚さをとらずに電線にシールド効果を持たせることができる。また、電線1のシールド層4と電気機器のシールド壁50との間に導電ゴム製のシール部材7を介在させるので、シール部材7の電線挿通孔7aに電線1を挿通させ、シール部材7をシールド壁50に密着させるだけで、シールド層4とシールド壁50と容易に導通させることができる。従って、編組や加締め用のリングが不要であり、部品点数を削減することができる。
【0032】
また、本実施形態では、シールドシェル7を用いているが、シールド性を確保する上では、導電ゴム製のシール部材5があれば十分であり、シールドシェル7は、シール部材5をシールド壁50に密着させる機能を果たすだけでよい。従って、必ずしもシールド性能を持つ必要はなく、非金属で構成することもできる。その意味で、シールド機能を果たすシールドシェル7は省略可能である。
【0033】
また、シール部材5自体が導電性を有するので、従来のパッキンを使用する場合と違って、シールド漏れ箇所が発生するおそれがなく、十分に高いシールド性能とシール性能を発揮することができる。また、編組の代わりに樹脂メッキによるシールド層4を採用するので、電線1の途中に分岐があるような場合であっても、容易な対応が可能である。つまり、配索経路に沿って予め導体2を成形した上で、絶縁樹脂層3を形成し、その上に樹脂メッキを施せばよい。従って、電線1の配索形態に影響されることがなく、レイアウトの自由度が増す。例えば、一端側がコネクタ1つで、他端側がコネクタ複数のシールド機能を備えたワイヤハーネスも簡単に作ることができる。
【0034】
さらに、本実施形態のシールド構造では、編組を使用ないので、編組を使用する場合の不具合、即ち、二重折りなどの余分な加工が必要になったり、余分なスペースが必要になったりすることがなく、コンパクトなワイヤハーネスとすることができる。
【0035】
また、樹脂メッキにより形成したシールド層4は、導電ゴム製のシール部材5の電線挿通孔5aの内周に接触するだけで、加締めの場合のようにメッキ層を破壊する心配がないので、端末のシールド性能を損なうことがない。
【0036】
また、電線1の端末部に非樹脂メッキ部H4を確保し、その非樹脂メッキ部H4の端部に、絶縁樹脂層3を除外した導体露出部H1を設けて、その導体露出部H1が、締結孔を有する接続部8となっているので、シールド層4である樹脂メッキ層と導体2の接続部8とを確実に非導通状態に保つことができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、シールドシェル7とシール部材5をインサート成形により一体に形成した場合を示したが、別々に成形した上で、後で両者を組み合わせてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の斜視図、図4はワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【0039】
この実施形態のワイヤハーネスW2を構成する電線11は、帯板状の導体2を3本、厚さ方向に間隔をおいて重ねて束にし、導体2間を互いに絶縁した状態で、一体成形した絶縁樹脂層としての樹脂モールド部13によって覆った構造をなしている。そして、樹脂モールド部13の外周面を覆うように、樹脂メッキによるシールド層14が、導体2の長さ方向の所定範囲にわたりコーティングされている。
【0040】
また、電線11の両端には、導電ゴム製のシール部材15と、このシール部材15を保持する金属製のシールドシェル17とが配されている。シールドシェル17は、リング状のもので、その内周鍔部17aをシール部材15の外周溝15eに嵌めることで、シール部材15と一体に結合されており、取付孔付きの外周鍔部17bがシール部材15の外側に露出している。また、シールドシェル17の内周部に配されたシール部材15は、シールドシェル17を電気機器のシールド壁50に取付孔を用いてネジ止めすることにより、シールド壁50に対して密着した状態に保持されるようになっている。
【0041】
このシール部材15は厚肉板体であり、厚さ方向に貫通させて、電線11を該電線11の周囲をシールしながら挿通可能な電線挿通孔15aを有している。この場合、電線挿通孔15aは樹脂モールド部13の断面形状に対応した形状に形成されている。また、シールド壁50に対する密着性を高めるために、シールド壁50に対する密着面には環状のシールリップ15bが設けられている。
【0042】
そして、樹脂モールド部13が設けられた電線11の端末部は、樹脂メッキによるシールド層14のある位置まで、シール部材15の電線挿通孔15aに挿通されており、シール部材15の電線挿通孔15aの内周リップ15cが電線11のシールド層14の外面に密着している。それにより、シールド層14と導電ゴム製のシール部材15とが互いに導通している。
【0043】
従って、シールドシェル17を電気機器のシールド壁50に取り付けて、シール部材15をシールド壁50に密着させることにより、電線11とシールド壁50の間を防水シールすることができると同時に、シール部材15を通して、あるいは、シール部材15とシールドシェル17とを通して、電線11の外周のシールド層14を電気機器のシールド壁50に導通させて接地することができる。
【0044】
また、このようにしてシールド壁50内に導入される電線11の端末部には、電線11の導体2の端部から所定範囲にわたり樹脂メッキを除外した非樹脂メッキ部H4が確保されており、その非樹脂メッキ部4の端部に、樹脂モールド部(絶縁樹脂層)13を除外した導体露出部H1が設けられ、その導体露出部H1が、締結孔を有する接続部8となっている。接続部8は、3本の導体2ごとに厚さ方向に重ならないよう位置をずらして配置されており、電気機器側の端子とそれぞれにボルト結合できるようになっている。なお、図中H2で示す範囲は、樹脂モールド部13が露出した部分である。
【0045】
この実施形態のシールド構造の場合、上述した第1実施形態のシールド構造の効果の他に次の効果を得ることができる。即ち、複数本の導体2を互いに絶縁した状態で樹脂モールド部13により覆って、その樹脂モールド部13の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層14を形成しているので、複数の導体2を絶縁しながら一体的にシールドすることができる。また、導電ゴム製のシール部材15の電線挿通孔15aに樹脂モールド部13を挿通させることで、シールド層14をシール部材15に導通させることができるので、シール部材15をシールド壁50に密着させるように取り付けることで、シール機能とシールド機能の両方を同時に発揮することができる。
【0046】
[第3実施形態]
図5は本発明の第3実施形態のワイヤハーネスのシールド構造の斜視図、図6はワイヤハーネスの端部をシールドケース内に導入した部分の断面図である。
【0047】
この実施形態のワイヤハーネスW3を構成する電線11は、第2実施形態のものとほぼ同じ構造のものである。違う点は、電線11の端末部の樹脂モールド部13の外周に、嵌合溝13dを構成する2つの凸部13c、13eが設けられており、この嵌合溝13dに、リング状のシール部材25の内周部が嵌まっていることである。シール部材25は、2つの凸部13c、13eの表面のシールド層14と導通している。
【0048】
また、外周鍔部27bを有するリング状のシールドシェル27の内周鍔部27aは、適当な箇所で樹脂モールド部13に係合しており、シールドシェル27を電気機器のシールド壁50に固定することで、シール部材25をシールド壁50にシールしながら密着させることができるようになっている。
【0049】
それ以外の構成は、第2実施形態と同様であり、同様の効果を得ることができる。
【0050】
図7〜図12は第3実施形態のシールド部分の組立工程図である。なお、電線11は図示を省略している。
まず、図7〜図9に示すように、シール部材25を装着した樹脂モールド部13は、シェル27の挿通孔27dに挿通される。このとき、シール部材25が完全に挿通孔27を通過しているようにする。次いで、図10に示すように、樹脂モールド部13を挿通元方向にわずかに戻し、樹脂モールド部13に設けた鍔部13gが、シェル27の挿通孔27dの入り口部分に圧接して軸芯を中心に相対回動可能なようにする。次いで、図11及び図12に示すように、シェル27を90度回動させて、シェル27に設けた凹部27cを鍔部13gに設けた凸部13fに係合させる。このようにして、樹脂モールド部13にシェル27が装着される。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0052】
例えば、接続される電線は、上記実施形態のような扁平な電線(フラットケーブル)ではなく、一般の断面円状の電線であってもよい。
【0053】
また、接続部は、別体の接続端子を導体の先端に加締めや溶着等で接続固定したものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
W1〜W3 ワイヤハーネス
1、11 電線
2 導体
3 絶縁樹脂層
4 シールド層
5 シール部材
5a 電線挿通孔
8 接続部
13 樹脂モールド部
15 シール部材
25 シール部材
50 シールド壁
H1 導体露出範囲(導体露出部)
H3 樹脂メッキ範囲(シールド層)
H4 非樹脂メッキ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のシールド壁内にワイヤハーネスを構成する電線をシールドしながら導入するワイヤハーネスのシールド構造において、
前記電線を該電線の周囲をシールしながら挿通可能な電線挿通孔を有し且つ前記シールド壁に対し密着した状態で装着される導電ゴム製のシール部材を具備し、
前記電線が、導体の外周に絶縁樹脂層を形成し、その絶縁樹脂層の外周面を覆うように樹脂メッキによるシールド層を前記導体の長さ方向の所定範囲にわたりコーティングした構造をなしており、
前記樹脂メッキによるシールド層のある位置まで、前記電線の端末部を、前記シール部材の電線挿通孔に挿通して前記シールド壁内に導入することにより、前記シール部材の電線挿通孔の内周を前記電線のシールド層に密着させて、該シールド層と前記導電ゴム製のシール部材とを互いに導通させたことを特徴とするワイヤハーネスのシールド構造。
【請求項2】
前記シールド壁内に導入した前記電線の端末部に、前記導体の端部から所定範囲にわたり前記樹脂メッキを除外した非樹脂メッキ部を確保し、その非樹脂メッキ部の端部に、前記絶縁樹脂層を除外した導体露出部を設け、その導体露出部に接続部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスのシールド構造。
【請求項3】
前記導体が複数本、互いに絶縁された状態で、一体成形された前記絶縁樹脂層としての樹脂モールド部によって覆われており、その樹脂モールド部の外周面を覆うように前記樹脂メッキによるシールド層が前記導体の長さ方向の所定範囲にわたりコーティングされ、
一方、前記シール部材に、前記複数の導体を一体に保持した前記樹脂モールド部を該樹脂モールド部の周囲をシールしながら挿通可能な前記電線挿通孔が設けられており、
前記樹脂メッキによるシールド層のある位置まで、前記樹脂モールド部で保持された前記導体の端末部が、前記シール部材の電線挿通孔に挿通されて前記シールド壁内に導入されることにより、前記シール部材の電線挿通孔の内周が前記樹脂モールド部の外周面を覆う前記シールド層に密着し、該シールド層と前記導電ゴム製のシール部材とが互いに導通していることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネスのシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−138280(P2012−138280A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290407(P2010−290407)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】