説明

ワイヤハーネス及びその製造方法

【課題】超音波振動する振動体の振動により、樹脂を適切に溶融させて電線とハウジングとの間を樹脂封止することが可能なワイヤハーネス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、電線31〜33と、雌側ハウジング20を有する雌側コネクタ2とを備え、雌側ハウジング20は、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成された気密ブロック21を有し、気密ブロック21に、挿通孔21aに連通して挿通孔21aと電線31〜33との間の空間21bを樹脂封止するための溶融樹脂214aを流動させる流路213を形成すると共に、流路213に面して溶融樹脂214aとなる溶融部214を一体に形成し、気密ブロック21と相対移動するホーン5を溶融部214に接触させ、ホーン5の超音波振動による発熱によって溶融部214が溶融した溶融樹脂214aを空間21bに流し込んで挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネス、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電線、及び複数の電線の端部に設けられたコネクタを備えたワイヤハーネスには、コネクタの内部に水分等が侵入して不具合が発生することを防ぐため、コネクタのハウジングと電線との間を気密に封止したものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタでは、複数の電線のそれぞれを挿通させる複数の挿通孔をハウジングに形成し、各電線に嵌合したゴム栓を挿通孔に挿入し、このゴム栓によって電線と挿通孔との間を封止している。
【0004】
しかし、この構成のコネクタでは、隣り合う電線の間にゴム栓及び挿通孔同士を画定するハウジングの肉部が介在するため、隣り合う電線の間の間隔を狭くすることに制約があり、コネクタの小型・軽量化の妨げとなっていた。
【0005】
一方、特許文献2に記載のコネクタの防水構造では、コネクタに樹脂からなる電線導出部を設け、この電線導出部と電線の樹脂被覆とを超音波加振によって熱溶着することで、防水性を確保している。この防水構造によれば、ゴム栓等のシール部材を用いないので、特許文献1に記載のコネクタの構成に比較して、コネクタの小型・軽量化を図ることが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−345143号公報
【特許文献2】特開2000−353566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載のコネクタの防水構造では、電線の樹脂被覆の材質をコネクタの樹脂と溶着し得るものに選定する必要があり、設計上の制約事項となっていた。また、電線の樹脂被覆を溶融させるため、この際の溶融量を考慮して、樹脂被覆の厚みを芯線の保護のために必要な厚みよりも厚く設定しなければならない場合があった。
【0008】
そこで、本出願人は、熱によって溶融する樹脂からなる溶融部材を用いてハウジングとケーブル(電線)との間を封止するワイヤハーネス及びその製造方法を先に提案した(特願2009−293345)。
【0009】
このワイヤハーネスは、上記の溶融部材をハウジングに形成した挿入部を介してケーブル挿入穴に挿入し、超音波振動するホーンによって溶融部材を加振しつつケーブル挿入穴の内面に形成された押圧受部に押圧することで、押圧受部に接触する溶融部材の先端部を溶融させ、その溶融した樹脂をケーブルとケーブル挿入穴との間の隙間に流し込んでケーブルの周囲を溶融樹脂で覆うことにより、ハウジングの気密性を確保している。
【0010】
しかし、溶融部材を加振しつつ押圧する際に、ホーンと溶融部材との接触部で溶融部材が溶融してしまうと、溶融部材の加振が適切に行われず、ケーブルとケーブル挿入穴との間に十分な樹脂を円滑に流し込むことができない場合があり、なお改善の余地があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、超音波振動体との接触により、樹脂を適切に溶融させて電線とハウジングとの間を樹脂封止することが可能なワイヤハーネス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスにおいて、前記ハウジングは、前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された樹脂からなる気密ブロックを有し、前記気密ブロックに、前記挿通孔に連通して前記挿通孔と前記複数の電線との間の空間を樹脂封止するための溶融樹脂を流動させる流路を形成すると共に、前記流路に面して前記溶融樹脂となる溶融部を前記気密ブロックと一体に形成し、前記気密ブロックと相対移動する超音波振動体を前記溶融部に接触させ、前記超音波振動体の振動による発熱によって前記溶融部が溶融した前記溶融樹脂を前記空間に流し込んで前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止したことを特徴とするワイヤハーネスを提供する。
【0013】
また、前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って、前記流路を囲むように筒状に形成してもよい。
【0014】
また、前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って延びる柱状に形成され、前記流路は、前記溶融部を囲むように、前記溶融部の周辺に形成してもよい。
【0015】
また、前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って前記流路を囲むように筒状に形成されると共に、前記筒状に形成された部分の内部に柱状に形成してもよい。
【0016】
また、前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って、前記流路を挟んで互いに対向するように分離して形成してもよい。
【0017】
また、前記溶融部は、前記流路となる切欠部が前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って形成された切欠円柱状であってもよい。
【0018】
また、前記溶融部は、前記超音波振動体との接触面積が前記溶融部の溶融に伴って大きくなる形状に形成してもよい。
【0019】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスの製造方法において、前記ハウジングの前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された樹脂からなる気密ブロックに、前記挿通孔に連通して前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止するための溶融樹脂を流動させる流路を形成すると共に、前記流路に面して前記溶融樹脂となる樹脂からなる溶融部を前記気密ブロックに一体に形成し、前記複数の電線を前記挿通孔の内面との間に空間を設けて並列に配置し、前記気密ブロックと相対移動する超音波振動体を前記溶融部に接触させ、前記超音波振動体の振動による発熱によって前記溶融部が溶融した前記溶融樹脂を前記流路を介して前記空間に流し込み、前記溶融樹脂を前記空間内で固化させて前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止する、ワイヤハーネスの製造方法を提供する。
また、前記超音波振動体は、温めた状態で前記溶融部に接触させてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法によれば、超音波振動体との接触により、樹脂を適切に溶融させて電線とハウジングとの間を樹脂封止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】雌側コネクタと雄側コネクタとが結合した状態における両コネクタの内部構造を示し、(a)は図1のB−B線断面図、(b)は図1のC−C線断面図である。
【図4】雌側コネクタ側に設けられた接続端子の形状を示す外観図である。
【図5】雌側コネクタ側に設けられた他の接続端子の形状を示す外観図である。
【図6】接続端子及び第2絶縁部材の外観を示す側面図である。
【図7】図1のD−D線断面図である。
【図8】気密ブロックを第2流路部の開口側から見た状態を示す平面図である。
【図9】溶融部を溶融させる工程を示す説明図であり、(a)は溶融部を溶融させる前の状態を、(b)は溶融部が溶融している状態を、(c)は溶融部の溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【図10】第2の実施の形態に係る気密ブロックを第2流路部の開口側から見た状態を示す平面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る溶融部を溶融させる工程を示す説明図であり、(a)は溶融部を溶融させる前の状態を、(b)は溶融部が溶融している状態を、(c)は溶融部の溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【図12】第3の実施の形態に係る気密ブロックを第2流路部の開口側から見た状態を示す平面図である。
【図13】第3実施の形態に係る溶融部を溶融させる工程を示す説明図であり、(a)は溶融部214Bを溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214Bが溶融している状態を、(c)は溶融部214Bの溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【図14】第4の実施の形態に係る気密ブロックを第2流路部の開口側から見た状態を示す平面図である。
【図15】第4の実施の形態に係る溶融部を溶融させる工程を示す説明図であり、(a)は溶融部を溶融させる前の状態を、(b)は溶融部が溶融している状態を、(c)は溶融部の溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【図16】第5の実施の形態に係る気密ブロックを第2流路部の開口側から見た状態を示す平面図である。
【図17】第5の実施の形態に係る溶融部を溶融させる工程を示す説明図であり、(a)は溶融部を溶融させる前の状態を、(b)は溶融部が溶融している状態を、(c)は溶融部の溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【図18】第1〜第5の実施の形態に係る溶融部の形状の変形例を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。このワイヤハーネス1は、例えば車両の駆動源としての電気モータに駆動電流を供給するために用いられる。
【0023】
このワイヤハーネス1は、雌側コネクタ2と3つの電線31〜33とを有している。雌側コネクタ2は、電線31〜33の端部を保持する雌側ハウジング20を有している。雌側ハウジング20は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなる。
【0024】
雌側ハウジング20は、電線31〜33が導出される一端部に、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成された樹脂からなる気密ブロック21を有している。気密ブロック21は、後述するように、電線31〜33との間の隙間が気密に樹脂封止される。
【0025】
3つの電線31〜33は、一方向に並列した状態で雌側ハウジング20に保持されている。また、電線31〜33は、例えば銅やアルミニウム等の導電性の金属からなる中心導体3aと、中心導体3aの外周に形成された架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなるシース3bとから構成されている。
【0026】
図1では、雌側コネクタ2が雄側コネクタ8と結合した状態を示している。雄側コネクタ8は、雄側ハウジング80を有し、雄側ハウジング80は、その一部が雌側ハウジング20の内方に嵌合されている。雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とは、ロック機構2aによって容易に外れないように結合している。
【0027】
雄側コネクタ8はまた、雄側ハウジング80に回転可能に保持された接続部材81(後述)を有している。接続部材81の頭部81aには、ドライバ等の工具によって接続部材81を回転させるための十字状の溝が形成されている。
【0028】
(雌側コネクタ2の構成)
図3は、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とが結合した状態における内部構造を示し、(a)は図1のB−B線断面図、(b)は図1のC−C線断面図である。
【0029】
図3(b)に示すように、雌側コネクタ2側における電線31〜33の先端部では、シース3bが除去されて中心導体3aが露出している。電線31の中心導体3aには接続端子41が、電線32の中心導体3aには接続端子42が、電線33の中心導体3aには接続端子43が、それぞれ接続されている。
【0030】
図4(a)は接続端子41,43の側面図、図4(b)は接続端子41,43の平面図である。また、図5(c)は接続端子42の側面図、図5(d)は接続端子42の平面図である。
【0031】
接続端子41,43は、電線31,33の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部41a,43aと、平板状の接触部41b,43bとが一体に形成されている。接触部41b,43bの先端は、二股に分かれて電線31,33の延伸方向に開口している。すなわち、接続端子41,43は、Y端子として形成されている。
【0032】
接続端子42は、電線32の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部42aと、平板状の接触部42bと、かしめ部42aと接触部42bとの間に介在し、電線32の延伸方向に対して傾斜した傾斜部42cとが一体に形成されている。接触部42bは、電線32の中心導体3aの中心軸の延長線上に位置している。この接続端子42もまた、接続端子41,43と同様に、Y端子として形成されている。
【0033】
図3(b)に示すように、接続端子41と接続端子43とは、互いの接触部41b,43b同士が接近するように雌側ハウジング20内に保持されている。また、接続端子42は、接続端子41と接続端子43との間に保持されている。接続端子41の接触部41b、接続端子42の接触部42b、及び接続端子43の接触部43bは、互いに平行かつ等間隔に並列している。
【0034】
また、雌側ハウジング20には、雄側コネクタ8の接続部材81の頭部81aに対応する部位に円形の開口20aが形成されている。
【0035】
(雄側コネクタ8の構成)
雄側コネクタ8の雄側ハウジング80は、アウタハウジング82と、アウタハウジング82の内面に保持されたインナハウジング83とからなる。アウタハウジング82は、例えばアルミニウム等の金属からなる。インナハウジング83は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなる。なお、アウタハウジング82をインナハウジング83と同様の樹脂から形成してもよい。
【0036】
アウタハウジング82には、接続部材81の頭部81aを収容し、接続部材81を回転可能に保持する環状の凹部82aが形成されている。頭部81aの外周面には、凹部82aとの間をシールする環状のシール部材812が保持されている。
【0037】
アウタハウジング82は、その先端部82bが雌側ハウジング20に形成された収容凹部20bに収容されている。アウタハウジング82と雌側ハウジング20との間は、アウタハウジング82の先端部82bの外面に保持されたシール部材821、及び収容凹部20b内に保持されてアウタハウジング82の先端部82bの内面に接触するシール部材822により気密に封止されている。
【0038】
また、アウタハウジング82には、凹部82aに対向する内面に、凹部82a側に向かって突出する凸部82cが形成されている。この凸部82cには、ねじ孔82dが形成されている。
【0039】
接続部材81は、円板状の頭部81a、頭部81aよりも小径に形成された円柱状の軸部81b、及びねじ部81cが一体に形成された本体部810と、軸部81bの外周に形成された絶縁層811とを有している。軸部81bは、頭部81aとねじ部81cとの間に介在して形成されている。ねじ部81cは、凸部82cのねじ孔82dに螺合している。本体部810は、鉄やステンレス等の金属からなる。また、絶縁層811は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0040】
インナハウジング83は、接続端子41〜43にそれぞれ接続される接続端子91〜93を支持している。接続端子91〜93は、それぞれが平板状であり、接続部材81の軸部81bを挿通させる貫通孔が形成されている。接続端子91〜93は、互いに平行かつ等間隔に並列している。
【0041】
雌側コネクタ2と雄側コネクタ8との結合状態において、接続端子41の接触部41bは接続端子91と、接続端子42の接触部42bは接続端子92と、接続端子43の接触部43bは接続端子93と、それぞれ対面する。
【0042】
接続端子91の接触部41bに対面する面の反対側の面には、第1絶縁部材94が固定されている。同様に、接続端子92の接触部42bに対面する面の反対側の面には、第2絶縁部材95が固定されている。また、接続端子93の接触部43bに対面する面の反対側の面には、第3絶縁部材96が固定されている。またさらに、接触部43bと凸部82cとの間には、第4絶縁部材97が配置されている。第1〜第4絶縁部材94〜97は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0043】
図6は、接続端子92及び第2絶縁部材95の外観を示す側面図である。接続端子92及び第2絶縁部材95には、接続部材81の軸部81bを挿通させる貫通孔92a及び貫通孔95aが形成されている。また、第2絶縁部材95には、その厚み方向に窪んだ凹部95bが形成され、この凹部95bに接続端子92の一端が収容されている。なお、接続端子91及び第1絶縁部材94、並びに接続端子93及び第3絶縁部材96も同様に構成されている。
【0044】
また、第1絶縁部材94には、接続部材81の頭部81aとの対向面に環状の凹部94aが形成されている。この凹部94aは、接続部材81の軸部81bを囲むように形成されている。また、凹部94aの底部には、鉄やステンレス等の金属からなるリング状の座金941が配置されている。
【0045】
座金941と接続部材81の頭部81aとの間には、コイルばね84が配置されている。コイルばね84の一端は凹部94aに収容され、コイルばね84の他端は頭部81aに当接している。そして、コイルばね84は、その復元力によって第1絶縁部材94を凸部82c側に向かって押圧している。
【0046】
なお、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とを結合する前の状態では、接続部材81のねじ部81cの先端部のみが凸部82cのねじ孔82dに螺合しており、これにより頭部81aが図3(b)に示す状態よりも第1絶縁部材94から離間し、コイルばね84は第1絶縁部材94を押圧しない。つまり、雌側コネクタ2と雄側コネクタ8との結合は、第1絶縁部材94が凸部82c側への押圧力を受けない状態で行われる。
【0047】
(接続端子41〜43及び接続端子91〜93の積層構造)
雌側コネクタ2と雄側コネクタ8とが結合されると、接続端子41〜43の接触部41b〜43bにおける二股の部分が接続部材81の軸部81bを挟むように、接続端子91〜93に対面する部位に進入する。そして、図3(b)に示すように、第1絶縁部材94、接続端子91、接続端子41の接触部41b、第2絶縁部材95、接続端子92、接続端子42の接触部42b、第3絶縁部材96、接続端子93、接続端子43の接触部43b、及び第4絶縁部材97がこの順序で積み重なった積層構造となる。
【0048】
このように接続端子91〜93、接続端子41〜43の接触部41b〜43b、及び第1〜第4絶縁部材94〜97が積層された状態で接続部材81をねじ部91cが凸部82cのねじ孔82dに螺合する方向に回転させると、接続部材81の頭部81aが第1絶縁部材94に接近する方向に移動し、コイルばね84を圧縮する。圧縮されたコイルばね84の復元力は、第1〜第4絶縁部材94〜97を介して接続端子91〜93と接続端子41〜43の接触部41b〜43bとをそれぞれの対向面で接触するように作用する。これにより、接続端子91と接続端子41、接続端子92と接続端子42、及び接続端子93と接続端子43を確実に接触させることができる。
【0049】
(気密ブロック21の構成)
気密ブロック21は、雌側ハウジング20の電線31〜33の引き出し側の端部に、雌側ハウジング20の一部として形成されている。この気密ブロック21は、電線31〜33の周囲から雌側ハウジング20内に水分等が侵入しないよう、電線31〜33の周辺部を気密に封止する気密封止部である。
【0050】
図1に示すように、雌側ハウジング20は、本体部200に別体部201を接合して一体に形成されている。本体部200と別体部201との接合は、例えば別体部201を超音波振動させ、本体部200との接触部における摩擦熱によって本体部200と別体部201とを溶着することにより行うことができる。気密ブロック21は、本体部200の一部と別体部201とを含んで構成される。本体部200と別体部201とは、同種の材料により形成することが望ましいが、異なる材料によって形成してもよい。
【0051】
図3(a)及び(b)に示すように、気密ブロック21には、電線31〜33を挿通させる挿通孔21aが形成されている。電線31〜33の延伸方向における挿通孔21aの両端部には、電線31〜33のシース3bに接触して電線31〜33を挟持する第1挟持部211及び第2挟持部212が形成されている。第1挟持部211は、第2挟持部212よりも雌側ハウジング20の外側に形成されている。第1挟持部211及び第2挟持部212は、本体部200側と別体部201側に分かれてそれぞれ半円状に形成され、本体部200と別体部201との接合により環状となって電線31〜33を挟持するように形成されている。
【0052】
第1挟持部211と第2挟持部212との間には、電線31〜33の外周面に沿うように形成された凹部210が形成されている。凹部210の底面210aは、電線31〜33の外周面との間に所定の間隔(例えば、1〜5mm)を保って形成されている。これにより、電線31〜33と挿通孔21aの間には、空間21bが形成されている。
【0053】
挿通孔21aは、図2に示すように、第1挟持部211に対応する領域では、電線31の全周を囲むようにして電線31を保持する円形の保持孔21a1と、電線32の全周を囲むようにして電線32を保持する円形の保持孔21a2と、電線33の全周を囲むようにして電線33を保持する円形の保持孔23a3とが互いに連通しないように分離して形成されている。また、第2挟持部212に対応する領域でも、第1挟持部211と同様の形状に形成されている。
【0054】
図7は、図1のD−D線断面図である。この図に示すように、挿通孔21aは、凹部210に対応する領域では、電線31の外周側の空間部21b1と、電線32の外周側の空間部21b2と、電線33の外周側の空間部21b3とが相互に連通している。より詳細には、空間部21b1と空間部21b2との間が連通部21b4によって連通し、空間部21b2と空間部21b3との間が連通部21b5によって連通している。連通部21b4は、電線31と電線32との間に形成された空間であり、連通部21b5は、電線32と電線33との間に形成された空間である。そして、これらの空間部21b1,連通部21b4,空間部21b2,連通部21b5,及び空間部21b3が一体となって空間21bが形成されている。
【0055】
電線31〜33は、空間部21b1,空間部21b2,及び空間部21b3のそれぞれの中心部を通過するように、第1挟持部211及び第2挟持部212に挟持されている。
【0056】
また、気密ブロック21には、挿通孔21aに連通する流路213が形成されている。この流路213は、空間21bを樹脂封止するための溶融樹脂214a(後述)を空間21b内に導くように流動させる。本実施の形態では、流路213が電線31〜33の配列方向(図7の左右方向)における挿通孔21aの両端部に形成されているが、流路213を挿通孔21aに連通する1箇所に形成してもよい。
【0057】
流路213は、電線31〜33の配列方向に延びる第1流路部213aと、電線31〜33の配列方向に直交する方向に延びる第2流路部213bと、第1流路部213a及び第2流路部213bの間に形成された屈曲部213cとからなる。第1流路部213aは、屈曲部213cの空間21b側に形成されている。第2流路部213bは、その一端が気密ブロック21の外部に開口している。
【0058】
また、気密ブロック21には、加熱によって溶融して空間21bに流入し、挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止する溶融部214が一体に形成されている。溶融部214は、溶融しない非溶融部215と共通する樹脂材料により、この非溶融部215と連続して形成されている。なお、図7では、説明のため、溶融部214を非溶融部215と区別して図示している。
【0059】
本実施の形態では、溶融部214が、第2流路部213bの延伸方向に沿って、第2流路部213bを囲むように筒状に形成されている。つまり、溶融部214は、筒状に形成された内面が第2流路部213bに面して気密ブロック21と一体に形成されている。溶融部214の第1流路部213aに連通する部分には、溶融した樹脂の流路を確保すべく、切欠きが設けられている。
【0060】
(ワイヤハーネス1の製造方法)
ワイヤハーネス1の製造工程は、気密ブロック21に流路213を形成すると共に、流路213に面して溶融部214を形成する気密ブロック形成工程と、電線31〜33を気密ブロック21の挿通孔21aの内面との間に空間21bを設けて並列に配置する配置工程と、気密ブロック21と相対移動する超音波振動体としてのホーン5(後述)を溶融部214に接触させ、ホーン5の振動による発熱によって溶融部214が溶融した溶融樹脂214aを流路213を介して空間21bに流し込み、空間21bに溶融樹脂214aを充填する充填工程と、溶融樹脂214aを空間21b内で固化させる固化工程とを有する。
【0061】
気密ブロック形成工程、及び配置工程は、雌側ハウジング20の本体部200及び別体部201をそれぞれ射出成型等により形成し、本体部200と別体部201との接合前に、接続端子41〜43がかしめ固定された電線31〜33の先端部を雌側ハウジング20内に挿入し、電線31〜33を第1挟持部211と第2挟持部212によって挟持するように別体部201を本体部200に接合することにより行われる。
【0062】
次に、充填工程について、空間21bに溶融樹脂214aを充填するための気密ブロック21の構成と共に詳細に説明する。
【0063】
図8は、気密ブロック21を第2流路部213bの開口側から見た状態を示す平面図である。この図では、凹部210及び電線31〜33を破線で示している。
【0064】
溶融部214が溶融する前の状態において、筒状の溶融部214の中心部に形成された第2流路部213bは、第1流路部213aと略同一の幅に形成されている。また、第2流路部213bの開口からは、溶融部214の一端面を臨むことができる。
【0065】
図9は、溶融部214を溶融させる工程を図8のE−E断面図と共に示す説明図であり、(a)は溶融部214を溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214が溶融している状態を、(c)は溶融部214の溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【0066】
溶融樹脂214aの充填は、超音波振動するホーン5を気密ブロック21との相対移動により溶融部214に接触させ、ホーン5の超音波振動による発熱によって溶融部214が溶融した溶融樹脂214aを空間21bに流し込むことにより行われる。
超音波振動するホーン5は、溶融部214に接触させる前に、事前に温めた状態、すなわち、常温以上(例えば、溶融部214の融点以上)に温めた状態で溶融部214に接触させてもよい。これにより、溶融部214が溶融し易くなり、ひいては、ホーン5による超音波振動における振動時間を短縮することが可能となる。
【0067】
図9(a)に示すように、第2流路部213bは、気密ブロック21とホーン5との相対移動方向に沿って形成されている。ホーン5は第2流路部213bの開口から第2流路部213b内に進入し、溶融部214の一端面に接触する。ホーン5は円柱状であり、その先端面5aは、円形の平坦な面に形成されている。このホーン5は、電気エネルギーを振動に変換する図略の超音波発振器に連結され、超音波振動しながらその中心軸方向に進退移動する。ホーン5の振動の周波数は、例えば15〜70kHzである。
【0068】
ホーン5がさらに第2流路部213b内に進入すると、図9(b)に示すようにホーン5の先端面5aが溶融部214に接触し、この接触面における超音波振動による摩擦熱によって溶融部214が溶融する。溶融部214が溶融した液状の溶融樹脂214aは、ホーン5に押し出されるように第2流路部213bから第1流路部213aを流動し、空間21b内に流れ込む。
【0069】
図9(c)に示すように、ホーン5が屈曲部213cに達して溶融部214の溶融が完了すると、空間21b内は溶融樹脂214aに満たされた状態となる。
【0070】
固化工程では、空間21b内に充填された溶融樹脂214aの温度を冷却又は自然放熱により低下させる。溶融樹脂214aの温度が融点以下となると、溶融樹脂214aが固化して挿通孔21aと電線31〜33との間を封止する封止樹脂となる。これにより、挿通孔21aと電線31〜33との間が樹脂封止される。
【0071】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0072】
(1)溶融部214にホーン5を直接接触させ、この接触面で溶融部214を溶融させるので、溶融部214を適切に溶融させて電線31〜33と雌側ハウジング20の気密ブロック21との間を樹脂封止することが可能となる。
【0073】
(2)溶融樹脂214aは、ホーン5の流路213内への進入に伴ってホーン5に押し出されるように流動するので、空間21b内における電線31〜33の周囲に溶融樹脂214aを隙間なく充填し、気密性を確保することができる。
【0074】
(3)電線31の外周側の空間部21b1と、電線32の外周側の空間部21b2と、電線33の外周側の空間部21b3とが相互に連通しているため、流路213から空間21bに供給される溶融樹脂214aが各電線31〜33の周囲に順次充填される。このため、3つの電線がそれぞれ独立した(連通しない)挿通孔に挿通される場合に比較して、電線31〜33の間隔を狭くすることが可能となり、雌側ハウジング20を小型化及び軽量化することができる。
【0075】
(4)溶融部214はホーン5の先端面5aに接触した部分が圧力及び振動を受けて加熱され、ホーン5に接触しない部分の加熱は抑制されるので、例えばヒータによって樹脂を溶融させる場合に比較して、溶融部214以外の部分の熱による変形が抑えられる。つまり、ホーン5の進入方向にあたる、溶融させることを意図した範囲の樹脂のみを溶融させることが可能となる。
【0076】
(5)接続端子41〜43の先端部は、雄側コネクタ8の接続端子91〜93と第1〜第4絶縁部材94〜97との間に挟まれ、接続部材81及びコイルばね84によって押圧して固定されるので、例えばワイヤハーネス1が搭載された車両の振動が雌側コネクタ2に伝導しても、雌側ハウジング20内における接続端子41〜43及び電線31〜33の振れ幅が小さくなり、電線31〜33と封止樹脂との剥離が抑制される。これにより、気密ブロック21における気密性が長期にわたって保たれる。
【0077】
(6)溶融部214を筒状に形成し、その中心部を流路213(第2流路部213b)としたので、溶融樹脂214aを円滑に流動させることができる。また、ホーン5の先端面5aと溶融部214との接触面が、先端面5aの中心点に対して点対称となるので、ホーン5の傾きが抑制される。
【0078】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図10及び図11を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施の形態では、溶融部214の形状が第1の実施の形態と異なり、その他の構成は第1の実施の形態と共通であるので、共通する部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図10は、本実施の形態に係る気密ブロック21Aを第2流路部213bの開口側から見た状態を示す平面図である。図11は、本実施の形態に係る溶融部214Aを溶融させる工程を図10のF−F線断面図と共に示す説明図であり、(a)は溶融部214Aを溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214Aが溶融している状態を、(c)は溶融部214Aの溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【0080】
図10及び図11(a)に示すように、溶融部214Aは、気密ブロック21とホーン5との相対移動方向に沿って延びる柱状に形成されている。より具体的には、溶融部214Aは、流路213の屈曲部213cの内面に立設して、気密ブロック21とホーン5との相対移動方向に沿って形成された第2流路部213bの中心部に柱状に形成されている。第2流路部213bは、この溶融部214Aを囲むように、溶融部214Aの周辺に形成され、溶融部214Aが溶融した溶融樹脂214aを流動させる。
【0081】
図11(b)に示すように、ホーン5が第2流路部213b内に進入すると、ホーン5の先端面5aに接触した溶融部214Aが溶融し、この溶融した溶融樹脂214aが第2流路部213bを流動する。
【0082】
図11(c)に示すように、ホーン5が屈曲部213cに達して溶融部214の溶融が完了すると、空間21b内は溶融樹脂214aに満たされた状態となる。この後、溶融樹脂214aを固化させ、挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止する。
【0083】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)と同様の作用及び効果に加え、溶融部214Aを円柱状に形成し、その周辺部を流路213(第2流路部213b)としたので、溶融樹脂214aを円滑に流動させることができる。また、ホーン5の先端面5aと溶融部214との接触面が、先端面5aの中心点に対して点対称となるので、ホーン5の傾きが抑制される。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図12及び図13を参照して説明する。
【0085】
図12は、本実施の形態に係る気密ブロック21Bを第2流路部213bの開口側から見た状態を示す平面図である。図13は、本実施の形態に係る溶融部214Bを溶融させる工程を図12のG−G線断面図と共に示す説明図であり、(a)は溶融部214Bを溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214Bが溶融している状態を、(c)は溶融部214Bの溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【0086】
図12及び図13(a)に示すように、溶融部214Bは、気密ブロック21Bとホーン5との相対移動方向に沿って、第2流路部213bを囲むように筒状に形成されると共に、その内部に柱状に形成されている。より具体的には、溶融部214Bは、流路213の屈曲部213cの内面に立設して柱状に形成された第1溶融部214B1と、第1溶融部214B1を囲む筒状に形成された第2溶融部214B2とを含んで形成され、第1溶融部214B1と第2溶融部214B2との間に第2流路部213bが形成されている。
【0087】
図13(b)に示すように、ホーン5が第2流路部213b内に進入すると、ホーン5の先端面5aに接触した溶融部214B(第1溶融部214B1及び第2溶融部214B2)が溶融し、この溶融した溶融樹脂214aが第2流路部213bを流動する。
【0088】
図13(c)に示すように、ホーン5が屈曲部213cに達して溶融部214Bの溶融が完了すると、空間21b内は溶融樹脂214aに満たされた状態となる。この後、溶融樹脂214aを固化させ、挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止する。
【0089】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)と同様の作用及び効果に加え、溶融部214Bを柱状の第1溶融部214B1、及び筒状の第2溶融部214B2からなるように形成したので、ホーン5の傾きが抑制されると共に、環状に形成された第2流路部213bに、その内周側及び外周側から溶融樹脂214aが流入するので、溶融樹脂214aを円滑に流動させることができる。
【0090】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図14及び図15を参照して説明する。
【0091】
図14は、本実施の形態に係る気密ブロック21Cを第2流路部213bの開口側から見た状態を示す平面図である。図15は、本実施の形態に係る溶融部214Cを溶融させる工程を図14のH−H線断面図と共に示す説明図であり、(a)は溶融部214Cを溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214Cが溶融している状態を、(c)は溶融部214Cの溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【0092】
図14及び図15(a)に示すように、溶融部214Cは、気密ブロック21Bとホーン5との相対移動方向に沿って、第2流路部213bを挟んで対向するように分離して形成されている。
【0093】
より具体的には、溶融部214Cは、第1溶融部214C1と第2溶融部214C2とからなり、第1溶融部214C1と第2溶融部214C2の間に第2流路部213bが形成されている。第2流路部213bは、気密ブロック21Bとホーン5との相対移動方向に沿って延びるように形成されている。第1溶融部214C1と第2溶融部214C2との対向面は平面状であり、この対向面は第1流路部213aの延伸方向に平行となるように形成されている。また、図14に示すように、第1溶融部214C1と第2溶融部214C2との間隔は、第1流路部213aの幅と等しくなるように形成されている。
【0094】
図15(b)に示すように、ホーン5が第2流路部213b内に進入すると、ホーン5の先端面5aに接触した溶融部214C(第1溶融部214C1及び第2溶融部214C2)が溶融し、この溶融した溶融樹脂214aが第2流路部213bを流動する。
【0095】
図15(c)に示すように、ホーン5が屈曲部213cに達して溶融部214Cの溶融が完了すると、空間21b内は溶融樹脂214aに満たされた状態となる。この後、溶融樹脂214aを固化させ、挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止する。
【0096】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)と同様の作用及び効果に加え、溶融部214Cを第2流路部213bの延伸方向に沿って、第2流路部213bを挟んで対向する第1溶融部214C1及び第2溶融部214C2から形成したので、ホーン5の傾きが抑制されると共に、第1溶融部214C1と第2溶融部214C2との間の第2流路部213bに両側から溶融樹脂214aが流入するので、溶融樹脂214aを円滑に流動させることができる。
【0097】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について、図16及び図17を参照して説明する。
【0098】
図16は、本実施の形態に係る気密ブロック21Dを第2流路部213bの開口側から見た状態を示す平面図である。図17は、本実施の形態に係る溶融部214Dを溶融させる工程を図16のI−I線断面図と共に示す説明図であり、(a)は溶融部214Dを溶融させる前の状態を、(b)は溶融部214Dが溶融している状態を、(c)は溶融部214Dの溶融が完了した状態を、それぞれ示す。
【0099】
図16及び図17(a)に示すように、溶融部214Dは、気密ブロック21Dとホーン5との相対移動方向に沿って、第2流路部213bとなる切欠部が形成された切欠円柱状に形成されている。
【0100】
より具体的には、溶融部214Dは、円柱をその中心軸に平行な切欠面214dで切り欠いた形状であり、この切り欠かれた部分が第2流路部213bとして形成されている。切欠面214dは、第1流路部213aに対向している。つまり、溶融部214Dは、第1流路部213a側の一部の領域が切欠面214dによって切り欠かれている。
【0101】
図17(b)に示すように、ホーン5が第2流路部213b内に進入すると、ホーン5の先端面5aに接触した溶融部214Dが溶融し、この溶融した溶融樹脂214aが第2流路部213bを流動する。
【0102】
図17(c)に示すように、ホーン5が屈曲部213cに達して溶融部214Dの溶融が完了すると、空間21b内は溶融樹脂214aに満たされた状態となる。この後、溶融樹脂214aを固化させ、挿通孔21aと電線31〜33との間を樹脂封止する。
【0103】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)と同様の作用及び効果に加え、溶融部214Dを第2流路部213bとなる切欠部が形成された切欠円柱状に形成したので、溶融樹脂214aは切欠面214dに沿って第2流路部213bを流動し、第1流路部213aを介して空間21bに円滑に流入する。
【0104】
[溶融部の変形例]
図18は、上記第1〜第5の実施の形態に係る溶融部214〜214Dの形状を、ホーン5との接触面積が溶融に伴って大きくなる形状に変更した変形例を示す断面図である。
【0105】
一般に樹脂材料を超音波振動子により加熱して溶融させる場合、樹脂材料に超音波振動子が接触してから溶融が始まるまでの間に大きなエネルギーを必要とし、溶融が始まった後は、より小さなエネルギーで樹脂材料を継続して溶融させることができる。図18に示す各変形例は、この知見に基づいて、溶融部とホーン5との接触面積を溶融の開始段階では比較的小さくして樹脂部の溶融を容易化し、溶融の進行に伴って接触面積を大きくし、より多くの溶融樹脂214aを生じさせるようにしたものである。
【0106】
図18(a)は、第1の実施の形態に係る溶融部214の形状を変更した変形例に係る溶融部214Eを示す。溶融部214Eは、略筒状であり、第2流路部213bの開口側に形成された先端部214E1の内径が、先端部214E1よりも第1流路部213a側における本体部214E2の内径よりも大きく形成されている。これにより、先端部214E1は、本体部214E2よりも薄肉に形成されている。
【0107】
第2流路部213b内にホーン5が進入すると、まず先端部214E1がホーン5に接触し、先端部214E1が溶融する。その後さらにホーン5が進入すると、本体部214E2がホーン5に接触して溶融する。
【0108】
図18(b)は、第2の実施の形態に係る溶融部214Aの形状を変更した変形例に係る溶融部214Fを示す。溶融部214Fは、略円柱状であり、第2流路部213bの開口側の先端部214F1の径が、先端部214F1よりも第1流路部213a側における本体部214F2の径よりも小さく形成されている。先端部214F1は、本体部214F2に近づくにつれて徐々に拡径する円錐状に形成されている。
【0109】
図18(c)は、第3の実施の形態に係る溶融部214Bの形状を変更した変形例に係る溶融部214Gを示す。溶融部214Gは、屈曲部213cの内面に立設する略円柱状の第1溶融部214G1と、第2流路部213bを介して第1溶融部214G1を囲むように略筒状に形成された第2溶融部214G2とから構成されている。
【0110】
第1溶融部214G1の先端部214G11は、第1流路部213a側の本体部214G12よりも小径であり、本体部214G12側に向かって徐々に拡径する円錐状に形成されている。
【0111】
第2溶融部214G2の先端部214G21は、その内径が第1流路部213a側の本体部214G22よりも大径であり、本体部214G22よりも薄肉に形成されている。
【0112】
図18(d)及び(e)は、第4の実施の形態に係る溶融部214Cの形状を変更した変形例に係る溶融部214H,214Iを示す。溶融部214H,214Iは、第4の実施の形態について説明したように、第2流路部213bを挟んで対向するように分離して形成されているが、図18(d)及び(e)では、分離された一方の形状を示している。
【0113】
図18(d)に示す変形例では、溶融部214Hの先端部214H1が第2流路部213bの開口に向かって徐々に細くなる先細り形状に形成されている。先端部214H1よりも第1流路部213a側の本体部214H2は、第4の実施の形態に係る溶融部214Cと同様の形状に形成されている。
【0114】
図18(e)に示す変形例では、溶融部214Iの先端部214I1が、第1流路部213a側の本体部214I2よりも狭幅に形成され、第2流路部213bの開口に向かって突出した突起として形成されている。
【0115】
図18(f)〜(h)は、第5の実施の形態に係る溶融部214Dの形状を変更した変形例に係る溶融部214J,214K,214Lを示す。溶融部214J,214K,214Lは、円柱をその中心軸に平行な切欠面で切り欠いた略切欠円柱状である。
【0116】
図18(f)に示す変形例では、溶融部214Jが先端部214J1と本体部214J2とからなり、第2流路部213bの開口側の先端部214J1が第2流路部213bの開口に向かって厚みが薄くなるように形成されている。先端部214J1における第2流路部213bの開口側の端面は、第1流路部213a側に向かって第2流路部213bの開口からの距離が大きくなるように傾斜して形成されている。
【0117】
図18(g)に示す変形例では、溶融部214Kが先端部214K1と本体部214K2とからなり、第2流路部213bの開口側の先端部214K1が第2流路部213bの開口に向かって厚みが薄くなるように形成されている。先端部214K1における第2流路部213bの開口側の端面は、第1流路部213a側とは反対側に向かって第2流路部213bの開口からの距離が大きくなるように傾斜して形成されている。
【0118】
図18(h)に示す変形例では、溶融部214Lが先端部214L1と本体部214L2とからなり、第2流路部213bの開口側の先端部214L1の厚みが本体部214L2よりも薄く形成されている。先端部214L1の厚みは、第2流路部213bの延伸方向において不変であり、先端部214L1は、第2流路部213bの開口に向かって突出した突起として形成されている。
【0119】
これらの変形例によれば、溶融部214E〜214Lとホーン5との接触面積が、溶融部214E〜214Lの溶融開始時には狭く、ホーン5の進行に伴って広くなる。これにより、溶融部214E〜214Lの溶融が円滑に開始されると共に、ホーン5の進行に伴ってより大きな接触面積で溶融部214E〜214Lを溶融させることができ、空間21bに十分な量の溶融樹脂214aを供給することができる。
【0120】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0121】
例えば、ワイヤハーネス1の用途としては、車両の駆動源としての電気モータに電流を供給するものに限らず、他の用途にも適用可能である。また、上記各実施の形態では、ワイヤハーネス1の電線31〜33の数が3である場合について説明したが、電線の数に制限はなく、2本でも良いし、4本以上でもよい。各部材の材質等も、上記したものに限らない。
【0122】
また、上記各実施の形態では、溶融部214〜214Lが気密ブロック21〜21Dと同じ樹脂材料により連続して形成された場合について説明したが、これに限らず、溶融部214〜214Lを気密ブロック21〜21Dの非溶融部215とは異なる樹脂材料により形成し、接合によって気密ブロック21〜21Dと一体化してもよい。例えば、溶融部214〜214Lを非溶融部215よりも融点の低い樹脂材料により形成すれば、より溶融部214〜214Lを溶融させやすくなる。
【符号の説明】
【0123】
1…ワイヤハーネス、2…雌側コネクタ、2a…ロック機構、3a…中心導体、3b…シース、5…ホーン、5a…先端面、8…雄側コネクタ、20…雌側ハウジング、20a…開口、20b…収容凹部、21〜21D…気密ブロック、21a…挿通孔、21a1,21a2 ,23a3…保持孔、21b…空間、21b1,21b2,21b3…空間部、21b4,21b5…連通部、31〜33…電線、41〜43…接続端子、41a,42a,43a…かしめ部、41b,42b,43b…接触部、42c…傾斜部、80…雄側ハウジング、81…接続部材、81a…頭部、81b…軸部、81c…ねじ部、82…アウタハウジング、82a…凹部、82b…先端部、82c…凸部、82d…ねじ孔、83…インナハウジング、91〜93…接続端子、91c…ねじ部、92a…貫通孔、94〜97…第1〜第4絶縁部材、94a…凹部、95a…貫通孔、95b…凹部、200…本体部、201…別体部、210…凹部、210a…底面、211,212…挟持部、213…流路、213a…第1流路部、213b…第2流路部、213c…屈曲部、214〜214L…溶融部、214B1,214C1,214G1…第1溶融部、214B2,214C2,214G2…第2溶融部、214E1,214F1,214G11,214G21,214H1,214I1,214J2,214K2,214L2…本体部、214E2,214F2,214G12,214G22,214H2,214I2,214J1,214K1,214L1…先端部、214a…溶融樹脂、214d…切欠面、215…非溶融部、810…本体部、811…絶縁層、812,821,822…シール部材、941…座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスにおいて、
前記ハウジングは、前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された樹脂からなる気密ブロックを有し、
前記気密ブロックに、前記挿通孔に連通して前記挿通孔と前記複数の電線との間の空間を樹脂封止するための溶融樹脂を流動させる流路を形成すると共に、前記流路に面して前記溶融樹脂となる溶融部を前記気密ブロックと一体に形成し、
前記気密ブロックと相対移動する超音波振動体を前記溶融部に接触させ、前記超音波振動体の振動による発熱によって前記溶融部が溶融した前記溶融樹脂を前記空間に流し込んで前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止したことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って、前記流路を囲むように筒状に形成される、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って延びる柱状に形成され、
前記流路は、前記溶融部を囲むように、前記溶融部の周辺に形成される、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って前記流路を囲むように筒状に形成されると共に、前記筒状に形成された部分の内部に柱状に形成される、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記溶融部は、前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って、前記流路を挟んで互いに対向するように分離して形成される、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記溶融部は、前記流路となる切欠部が前記気密ブロックと前記超音波振動体との相対移動方向に沿って形成された切欠円柱状である、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記溶融部は、前記超音波振動体との接触面積が前記溶融部の溶融に伴って大きくなる形状に形成される、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
複数の電線と、前記複数の電線の端部を保持するハウジングを有するコネクタとを備えたワイヤハーネスの製造方法において、
前記ハウジングの前記複数の電線を挿通させる挿通孔が形成された樹脂からなる気密ブロックに、前記挿通孔に連通して前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止するための溶融樹脂を流動させる流路を形成すると共に、前記流路に面して前記溶融樹脂となる樹脂からなる溶融部を前記気密ブロックに一体に形成し、
前記複数の電線を前記挿通孔の内面との間に空間を設けて並列に配置し、
前記気密ブロックと相対移動する超音波振動体を前記溶融部に接触させ、前記超音波振動体の振動による発熱によって前記溶融部が溶融した前記溶融樹脂を前記流路を介して前記空間に流し込み、
前記溶融樹脂を前記空間内で固化させて前記挿通孔と前記複数の電線との間を樹脂封止する、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項9】
前記超音波振動体は、温めた状態で前記溶融部に接触させる、
請求項1乃至7の何れか1項に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−30454(P2013−30454A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21760(P2012−21760)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】