説明

ワクチン免疫療法

サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを有する相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を有する癌ワクチンとを含む、癌を治療するための組成物。少なくとも1種のアジュバントと組み合わせた相乗量の初代細胞由来生物製剤を含む組成物。この組成物を投与することによって癌を治療する方法。免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法。外因性抗原に対する免疫応答を生成させる方法。少なくとも1種のアジュバントと組み合わせた初代細胞由来生物製剤を投与することによって患者における免疫応答を増強し、初代細胞由来生物製剤とアジュバントの相乗的な相互作用によって患者の免疫応答を増強する方法。免疫系の機能を高める方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン免疫療法に関する。特に、本発明は、癌または他の抗原産生疾患状態もしくは病変を有する患者における内因性または外因性抗原に対する免疫応答を誘発および増強するためのならびにアジュバントに対する免疫応答を誘発および増強するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの癌は、宿主の免疫系に働きかけられた場合に、腫瘍退縮を引き起こし得る抗原を有することがますます明らかになってきた。これらの抗原は、血清学的アプローチと細胞免疫アプローチの両方によって定義され、これらのアプローチにより、B細胞エピトープとT細胞エピトープの両方が定義された(Sahin,1997;Van der Eynde,1997;Wang,1999)。これらの結果に基づいて、腫瘍の退縮を誘導することが、癌の免疫療法の専門家の目標になった。しかしながら、歴史的に、成功した試みはたまにしか見られず、概して、頻度と程度はわずかである。
【0003】
癌患者を(すなわち、腫瘍抗原に対して)免疫しようとする試みの基本的な問題は、担腫瘍状態が腫瘍と宿主免疫系障害の両方に由来する免疫抑制機構と関連していることであり(Kavanaugh,1996)、そのために免疫が難しくなり、今日まで一貫して不可能である。免疫抑制または免疫枯渇は、免疫系の応答能力の低下を伴う。そのような抑制は、薬物によって誘導されるか(すなわち、薬物治療によるもの)、ウイルスによって誘導されるか(例えば、AIDSに見られるもの)、または疾患状態(例えば、癌)によって誘導されることがある。この状態における免疫系は効果的に停止させられる。疾患状態(例えば、癌)の場合、身体は、それ自身を腫瘍抗原から防御することができず、そのため、腫瘍が増殖し、場合によっては転移することがある。
【0004】
種々の腫瘍免疫戦略が開発されている。これらの戦略は全て複雑であり、感染性疾患に用いられる従来の免疫戦略から大きくかけ離れている(例えば、Weber,2000を参照されたい)。1つのそのような腫瘍免疫戦略は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とコンジュゲートされ、かつDETOX(登録商標)マイコバクテリウムアジュバントおよび低用量シクロホスファミドとともに投与される、シアリルTn多糖ムチン抗原のTHERATOPE(登録商標)(Biomira)を含む(Maclean,1996)。このワクチンを転移性乳癌および卵巣癌患者で使用しても、大きな臨床的応答(すなわち、50%を超える腫瘍縮小)は、わずかな割合の患者でしか生じなかった。
【0005】
ウイルス構築物を、腫瘍抗原を発現する遺伝子の発現ベクターとして用いて、遺伝子療法も試みられている。例えば、改変型のヒトパピローマウイルス(HPV)E6およびE7タンパク質配列をコードする組換えワクシニアウイルス構築物が、子宮頸癌患者の免疫に用いられている。この構築物のワクチン接種では、臨床的応答が生じるかどうかがはっきりしなかった(Borysiewickz,1996)。組換えワクシニア−PSA(前立腺特異的抗原)構築物が前立腺癌患者でワクチンとして使用された、Sanda(1999)を参照されたい。
【0006】
別のアプローチは樹状細胞媒介性療法である。例えば、この療法では、樹状細胞に前立腺特異的膜抗原(PSMA)のオリゴペプチド断片がパルスされた。次に、(PSMA抗原で初回刺激されたまたは初回刺激されていない)樹状細胞が転移性前立腺癌患者に投与された。大きな臨床的応答は、わずかな割合の患者でしか得られなかった(Murphy,1999;また、Tjoa,2000も参照されたい)。
【0007】
さらに、悪性黒色腫を有する癌患者を免疫するために、自己腫瘍が低用量シクロホスファミドおよびBCG(カルメット・ゲラン菌)とともに用いられている。しかしながら、臨床的応答はほとんど報告されてなかった(Mastrangelo,1996)。別の戦略には、種々のワクチンアジュバントとともにMAGE抗原を使用することが含まれた。やはり、これについても、悪性黒色腫を有する癌患者で、あるとしても、わずかな応答しか生じなかった(私信、Thierry Boon)。
【0008】
Doyleらに対するいくつかの特許(米国特許第5,503,841号;同第5,800,810号;同第6,060,068号;同第5,643,565号;および同第5,100,664号)には、インターロイキン2(IL−2)を用いて患者の免疫応答を増強する方法が開示されている。この方法は、感染性疾患に対する使用について開示されており、免疫原性であることが知られている抗原を用いて主に機能する。応用が限られていることも実証された。上で開示されたように、癌の治療には、様々なアプローチが必要となることが知られている。これまで、IL−2を用いた治療では、2つの癌(腎細胞癌および悪性黒色腫)においてわずかな効果しか示されていない(応答率20%未満)。IL−2を用いた治療は、一般に、頭頸部扁平上皮癌および子宮頸癌ならびに前立腺癌では効果がないと考えられている。したがって、この治療は、これらの用途には認められていない。
【0009】
健康患者において構造が複雑でかつ分子量が大きい既知の「古典的」抗原を用いる予防ワクチンと、免疫抑制患者(通常成功しない)において腫瘍抗原またはペプチド(通常成功しない)を用いる治療ワクチン(通常成功しない)とを対比することは重要である。前者は容易であり、我々の現在のウイルスワクチンはその効力を立証している。後者は、30年間の懸命な努力にもかかわらず、日常的には不可能に近い。
【0010】
効果的な癌ワクチンは、事によっては、抗体産生に優先してでも、細胞性免疫を刺激する必要がある。述べたように、様々な抗原、アジュバントおよびワクチン構築物を用いた数々の研究にもかかわらず、これまでの臨床試験データは期待はずれであった。T細胞媒介性の抗癌免疫応答にとっての極めて重要な事象は、主に腫瘍または免疫の部位のリンパを集めるリンパ節におけるT細胞への抗原提示と、それに続くT細胞の活性化および末梢部位への遊走である。実際、組織マクロファージ、好中球および/または樹状細胞による抗原の取込みならびにリンパ節におけるT細胞へのMHCクラスI抗原およびクラスII抗原と組み合わせたプロセッシングされたペプチドの提示は、完全な免疫応答にとって極めて重要である。T細胞免疫活性化を成功させる秘訣は、ワクチンに対する免疫応答を駆動するための適切なサイトカイン環境を、免疫部位と流入領域リンパ節の両方において作り出すことである。免疫系の作用機序がこれまで完全には理解されていないという事実のために、現在利用可能な癌ワクチンはその完全な潜在能力を達成することができない。
【0011】
免疫応答の動力学には2つの段階が含まれる。第1の段階は、抗原および可溶性タンパク質を、初期の免疫活性化が起こるリンパ節に流入させることである。24〜48時間後、抗原提示細胞(APC)(より具体的には、樹状細胞)が免疫の部位から流入領域リンパ管を経てリンパ節に遊走し、そこで、抗原提示および活性化の第2の波が生じる。より具体的には、APCは、共刺激受容体およびT細胞受容体の関与を通じて、リンパ節内で前駆体Tヘルパー細胞と相互作用し、Tヘルパー1(Th1)細胞および/またはTヘルパー2(Th2)細胞を生じさせる。これらのサブセットの比率は、その後の細胞性免疫応答または液性(抗体)免疫応答のいずれかの発生を制御する(Th1がDTH/細胞傷害性にバイアスをかけるのに対し、Th2は抗体産生にバイアスをかける)。これらの活性化T細胞が誘導された後、免疫応答は低下し、主に、抗原に再び曝露されたときに応答することができるメモリーT細胞が残る。
【0012】
この経路における極めて重要な事象は、応答にバイアスをかけて液性免疫または細胞性免疫の方向に向かわせるサイトカインによって媒介される。局所的に産生されるサイトカイン(例えば、IL−1、IL−2、IFN−γ、GM−CSF、IL−6、TNF−α、IL−12およびIL−8)は、免疫系細胞の動員、抗原の取込み、樹状細胞の成熟、T調節性細胞活性の抑制、T細胞の教育および増殖、ならびにTh1細胞の発生と関連している(Naylor,2003)。応答の相互依存とは、複数のサイトカインが同時に存在することによって、異なるサイトカインに対する細胞応答の動力学に応じて、注射部位と流入領域リンパ節の両方で異なる効果が得られるように、任意の所与のサイトカインの活性が前駆事象の発生に依存していることを意味する。
【0013】
従来のワクチンで十分な免疫応答を惹起することができないことは、未だワクチン開発の課題として残っている。そのため、ワクチン接種に対する免疫応答を加速、増強、および延長し、また、1回の投与に必要な抗原の量を減少させるための、アジュバントが開発されている。アジュバントは約100年間使用されてきた。Le MoignicとPinoyは、鉱油に懸濁したネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)が免疫応答を増強することを1916年に初めて認識した。1926年、Ramonは、寒天、タピオカ、レシチン、デンプン油、サポニン、およびパンくずなどの広範な物質によって、抗毒素応答を強化することができることを実証し、Glennyは、アルミニウム塩を用いて、免疫原性を向上させるジフテリアトキソイドを沈殿させ、現在使用されているミョウバンを得た。1936年、ThibaudとRichouは、Quil Aにアジュバント特性があることが明らかにした。Quil Aは、南米モニラのシャボンノキであるキラヤ(Quillaja saponaria)の樹皮から抽出されるトリテルペノイドサポニンである。1937年、Freundはまた、エマルジョンからアジュバントを開発した。それ以来、ほとんど進歩していない。上記のような免疫系を理解し始めるにつれて、アジュバントに関してさらなる進歩が見られている。いくつかのアジュバントがワクチン(癌ワクチンを含む)用に開発されているが、依然としてミョウバンしか世界中で成功を収めていない。ミョウバンはTh2アジュバントであるが、Th1応答をもたらすアジュバントも望まれている。アジュバントは、とりわけ、免疫応答障害のために従来のワクチンに十分には応答しない人口集団(例えば、高齢者または免疫抑制患者)に必要とされる。アジュバントには免疫寛容を克服する可能性があるが、これまで、免疫寛容を克服するのに大きな成功を収めたものはない。それゆえ、癌を含む様々な疾患のための効果的なアジュバントが依然として必要とされている。
【0014】
本発明は、患者(例えば、癌患者または他の抗原産生病変もしくは疾患状態を有する他の患者)を免疫しかつ/または免疫を増強するために、出願人に発行された米国特許第5,632,983号および同第5,698,194号に開示されているような初代細胞由来生物製剤IRX−2(以前は天然サイトカイン混合物(NCM)としても知られていた)を利用している。より具体的には、IRX−2は、年老いた免疫抑制マウスにおけるT細胞の発達および機能を促進するのに効果的であることが以前に米国特許第5,698,194号で示されている。IRX−2は、胸腺において、未成熟T細胞の割合を減少させ、成熟T細胞の割合を増加させることが示された。IRX−2は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−γ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、および微量のIL−3、IL−4、IL−7を含んでいた。
【0015】
本発明のサイトカイン組成物およびそれを利用する方法は、対象となる任意の抗原(例えば、癌または腫瘍抗原、および他の持続性疾患状態または病変によって産生される抗原)に対する免疫応答の刺激に適用されることが本明細書に詳述される開示から明白となるであろう。本明細書で詳述するように、本発明のサイトカイン混合物は、アジュバントとして作用して、好ましくは、インビボでT細胞免疫を刺激する。
【0016】
さらに、本発明は、インビボに存在し、かつインビボでAPC(例えば、樹状細胞)によってプロセッシングされ、提示される内因性抗原(すなわち、タンパク質もしくはペプチド)か、またはインビトロで単離および作製され、その後、樹状細胞が存在し、抗原を、例えば、T細胞に効果的に提示することができる環境(例えば、リンパ節)にインビボで投与される外因性抗原(すなわち、タンパク質またはペプチド)のいずれかに対する免疫応答を誘発することに関するものであるが、それだけに限定さるものではない。特に、ペプチド抗原に関して、この目標は、多くの免疫学者によって到達不可能であると考えられている。ペプチドは、一般に、効果的な免疫原となるにはあまりにも小さすぎると考えられており、その半減期は短く、また、ペプチドは、多くの場合、患者が免疫学的に寛容である非突然変異型の自己抗原である。したがって、そのような抗原に対する免疫応答を獲得することは、自己免疫を誘導することに等しい。
【0017】
本明細書で記載するように、本発明は、一貫性のある、効果的なワクチン免疫療法の方法を開発するのに有用であり、この療法では、本発明のサイトカイン組成物を、腫瘍抗原およびペプチドを含む内因性および/または外因性の疾患関連抗原、ならびに他のアジュバントと組み合わせて用いて、免疫応答を患者(例えば、癌患者)に誘発する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを有する相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を有するワクチンとを含む、癌を治療するための組成物を提供する。
【0019】
本発明は、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを有する相乗量の初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて含む、患者における免疫応答を増強するための組成物を提供する。
【0020】
本発明はさらに、癌を治療する方法であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含むワクチンとを含む組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0021】
本発明は、免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含むワクチンとを含む組成物を投与する工程、ナイーブT細胞の産生を刺激する工程、未成熟な樹状細胞を成熟させる工程、得られた成熟樹状細胞によるナイーブT細胞への抗原の提示を可能にする工程を含み、それによって免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、患者における外因性抗原に対する免疫応答を生じさせる方法であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤のアジュバントと、少なくとも1つの外因性抗原とを投与する工程(ここで、この外因性抗原は、通常は免疫応答を生じさせない)と、患者における免疫応答を生じさせる工程とを含む方法を提供する。
【0023】
本発明は、患者における免疫応答を増強する方法であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて投与する工程と、初代細胞由来生物製剤とアジュバントの相乗的な相互作用によって患者の免疫応答を増強する工程とを含む方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、免疫系の機能を増大させる方法であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて投与する工程(ここで、アジュバントは、初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する)と、免疫応答の機能を増大させる工程とを含む方法を提供する。
【0025】
本発明はさらに、初代細胞生物製剤アジュバント系を投与することによって、免疫系の機能を増大させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連させて考慮したときに、以下の詳細な説明を参照することでより良く理解されるので、容易に理解されるであろう。
【0027】
【図1】正常対照、癌対照またはIRX−2処置したH&NSCCを有する集団におけるリンパ節サイズを示す棒グラフである。
【0028】
【図2A】T細胞領域を示す棒グラフである。
【図2B】正常対照、H&NSCC対照およびIRX−2で処置したH&NSCC患者における密度を示す。
【0029】
【図3A】B細胞領域を比較した棒グラフであある。
【図3B】3つの処置群における濾胞を比較した棒グラフである。
【0030】
【図4A】他の細胞の比較を示す。
【図4B】3つの処理群における洞組織球増殖(SH)の比較を示す。
【0031】
【図5】リンパ節B&T(B細胞およびT細胞)と腫瘍B&Tのフィットプロットを示すグラフである。
【0032】
【図6】48カ月の時点での処置した患者の生存率を示すグラフである。
【0033】
【図7】微応答者および不応答者と比較した完全応答者および部分応答者の生存を示すグラフである。
【0034】
【図8】病理学指数と生存との関係を示すグラフである。
【0035】
【図9】リンパ球浸潤と生存との関係性を示すグラフである。
【0036】
【図10】24カ月の時点での処置した患者の生存率(用量応答)を示すグラフであり、ここで、「x」は、約100IU/mlのIL−2に等しい。
【0037】
【図11】図11Aは、SH+癌患者のリンパ節における一部成熟したCD83+樹状細胞(DC)の蓄積を示す棒グラフである。
【0038】
図11Bは、IRX−2(IRX−2)で処置したときのCD86+活性化DCの数の増加を示す棒グラフである。
【0039】
【図12】IRX−2(IRX−2)が、DC表面でのCD83発現の増大により検出されるDC成熟を誘導することを示すグラフである。
【0040】
【図13】図13A−Bは、サイトスピン標本中の単球由来DCの形態に対するIRX−2の効果を示す。IRX−2で処理した細胞(図13B)は、細胞突起および巨大で不規則な形状の核などの成熟DCの形態学的特徴を示す。
【0041】
【図14】IRX−2(IRX−2)とともにインキュベートした末梢血単核細胞(PBMC)によるCD1a抗原の下方調節ならびにMHCII、CD86、CD40、およびCD54(ICAM−1)抗原発現の上方調節を示すヒストグラムを含む。これらの変化は、IRX−2がDCの成熟を刺激することを示している。
【0042】
【図15】IRX−2(IRX−2)が未成熟DCのエンドサイトーシス活性を低下させることを示すグラフであり、この活性の低下はDC成熟を示すものである。
【0043】
【図16】IRX−2(IRX−2)がDCのT細胞刺激能を増強することを示すグラフであり、この増強はDCの成熟および活性化を示すものである。
【0044】
【図17A】IRX−2(IRX−2)が細胞内でIL−12を産生するDCの数を増加させることを示す棒グラフである。IL−12は、成熟した活性化DCによって産生されるサイトカインである。
【0045】
【図17B】IRX−2(IRX−2)が、DCにより分泌される生体活性IL−12の総量を増加させることを示す棒グラフである。
【0046】
【図18】IRX−2(IRX−2)がDCにおけるVEGF媒介性アポトーシスを減少させ、DC生存に対するIRX−2の防御効果を示すことを示す棒グラフである。
【0047】
【図19】図19Aは、フローサイトメトリーで決定される、IRX−2で接着性PBMCを処理した後の、活性化マーカーのCD86、HLA−DR、CD80およびCD40の組合せが陽性の単球/マクロファージ染色の割合の増加を示す2つの棒グラフを含む。
【0048】
図19Bは、フローサイトメトリーで決定される、IRX−2で接着性PBMCを処理した後の、活性化マーカーのCD86、HLA−DR、CD80およびCD40の平均蛍光強度(MFI)の増加を示す一連の棒グラフである。
【0049】
図19Cは、単球/マクロファージ由来のCD40およびCD80に対するIRX−2の効果を示す2つの棒グラフを示す。
【0050】
【図20】本発明のIRX−2が単球/マクロファージを活性化する、すなわち、TNF−αを上回る程度に、活性化マーカーのCD86、HLA−DR、CD80およびCD40の発現を誘導することを示す棒グラフを含む。
【0051】
【図21】本発明のIRX−2が単球/マクロファージを活性化する、すなわち、免疫抑制性サイトカインIL−10の存在下でさえも、活性化マーカーのHLA−DR、CD86およびCD40を誘導することを示す棒グラフを含む。IRX−2は、IL−10の存在下と非存在下の両方において、LPSよりも単球/マクロファージを活性化するのに優れている。
【0052】
【図22】本発明のIRX−2が活性化単球/マクロファージからのTNF−αの産生を刺激して、IL−10の免疫抑制効果を克服すること、IRX−2がLPSよりも大きくTNF−αの産生を刺激したことを示す棒グラフである。
【0053】
【図23】様々なコンジュゲートとアジュバント(本発明のIRX−2(IRX)を含む)とで免疫したマウスの前立腺特異的膜抗原(PSMA)ペプチドに特異的なDTH応答を示すチャートであり、ここで、この応答は、個々のマウス(点)および平均(棒)の腫れ(mmで示す)として示され、アジュバントはx軸上に記載され、ナイーブは免疫されていないマウスを示し、他のマウス全ては、示した場合(KLH)を除き、オボアルブミン−PSMAペプチドコンジュゲートで免疫されている。
【0054】
【図24】図24は、OVA−PSMAまたはKLH−PSMAコンジュゲートのいずれかと組み合わせて本発明のIRX−2(IRX−2)で免疫し、その後、DTHアッセイで(コンジュゲートを作製するのに使用された)PSMAペプチドで刺激したマウスにおけるペプチド特異的DTH免疫応答の増強を示す。個々のマウスの腫れの増加はデータ点によって表され、腫れの平均増加は影付きの四角によって表されている。図24Bは、コンジュゲート免疫で使用された担体のみによる刺激に対するDTH応答を示す。
【0055】
【図25】OVA−PSMAコンジュゲートとIRX−2とで免疫したマウスにおけるペプチド特異的DTH応答に対するシクロホスファミド処置の影響を示す。シクロホスファミド処置は、DTH応答に対して効果がなかった。
【0056】
【図26】それぞれのアジュバントと組み合わせてPSMAコンジュゲートで免疫したマウスにおけるペプチド特異的DTH応答に対する様々なアジュバント(本発明のIRX−2(IRX)を含む)の効果の比較を示す。IRX−2のアジュバント効果は、試験した他のアジュバントよりも大きかった。ナイーブマウス、すなわち、免疫されていないマウスは、陰性対照に相当する。
【0057】
【図27A】IRX−2(IRX)またはミョウバンのいずれかをアジュバントとして組み合わせてOVA−PSMAコンジュゲートで免疫した年老いたマウスと若いマウスのペプチド特異的DTH応答を示す。本発明のIRX−2は、ミョウバンと比較したとき、年老いたマウスと若いマウスの両方においてより大きいペプチド特異的DTH応答を刺激した。
【図27B】IRX−2(IRX)またはミョウバンのいずれかをアジュバントとして組み合わせてPSMAコンジュゲートで免疫した年老いたマウスと若いマウスの担体特異的DTH応答を示す。本発明のIRX−2は、年老いたマウスにおける担体特異的DTH応答を若いマウスで観察される担体特異的DTH応答まで回復させた。
【0058】
【図28】T細胞応答の増強を、KLH−PSMAコンジュゲートおよび本発明のIRX−2(IRX−2)で免疫したマウス由来の脾臓細胞によって分泌されるIFN−γの形態で示しており、結果は、個々のマウス(データポイントマーカー)および平均応答(影付きの棒)について表されている。分泌されたIFN−γの増加は全て、ナイーブ対照と比較して統計的に有意であった。
【0059】
【図29A】図29A〜Cは他のアジュバント(すなわち、ミョウバンおよびCpG)と比較して、本発明のIRX−2と組み合わせてPSMAコンジュゲートで免疫したマウスで観察された血清抗体応答を示す。図29Aは、OVA−PSMAコンジュゲートとIRX−2(IRX)、ミョウバンまたはCpGとで免疫したマウスにおけるOVA担体に対する血清抗体応答を示す。データは、1グループ当たり5〜10匹のマウスの平均および平均の標準誤差として示されている。
【図29B】OVA−PSMAコンジュゲートとIRX−2(IRX)、ミョウバンまたはCpGとで免疫したマウスにおけるPSMAペプチドに対する血清抗体応答を示す。
【図29C】IRX−2(IRX)、ミョウバンまたはPBSと組み合わせてKLH−PSMAコンジュゲートで免疫したマウスにおけるPSMAペプチドに対する血清抗体応答を示す。結果はELISAアッセイで測定され、光学密度として示されている。
【0060】
【図30】PSMAペプチド抗原と組み合わせて本発明のIRX−2で処置された3人の前立腺癌患者における6カ月間にわたるPSAレベルの安定化を示す。
【0061】
【図31】放射線照射したPSMA発現3T3細胞で免疫したマウスのペプチド特異的DTH応答の棒グラフである。
【0062】
【図32】PSMA−KLHと担体なしにおけるペプチド特異的DTHを示す棒グラフである。
【0063】
【図33A】用量依存的に抗原への反応を増大させるIRX−2を示すグラフである。
【図33B】抗原に対する免疫応答に対する追加のIRX−2の注射の効果の棒グラフである。
【0064】
【図34】IRX−2と他のアジュバントを注射した、PMSAペプチドで免疫したマウスのDTHアッセイを示す棒グラフである。
【0065】
【図35】ペプチド抗原に応答したIFN−γ産生の棒グラフである。
【0066】
【図36】血清抗体応答のグラフである。
【0067】
【図37】IRX−2と他のアジュバントの血清抗体応答のグラフである。
【0068】
【図38】図38Aはペプチド抗原に応答したIFN−γ産生T細胞の数のグラフである。図38Bは、ペプチド抗原に応答したIFN−γ産生細胞の数とIFN−γの総産生を比較したグラフである。
【0069】
【図39】ペプチドワクチン接種に応答したIFN−γ産生の動力学のグラフである。
【0070】
【図40】図40Aは、ペプチドワクチン接種に応答した用量応答IFN−γ産生のグラフである。図40Bは、IRX−2を様々に投与した後のIFN−γ産生細胞の数のグラフである。
【0071】
【図41】図41Aは、IRX−2と他のアジュバントをワクチン接種した後のIFN−γ産生のグラフである。図41Bは、IRX−2と他のアジュバントをワクチン接種した後の抗体応答のグラフである。
【0072】
【図42】図42Aは、IRX−2と全細胞ワクチンとで事前免疫した後の腫瘍増殖のグラフである。図42Bは、IRX−2とペプチドコンジュゲートワクチンで事前免疫した後の腫瘍増殖のグラフである。図42Cは、IRX−2とコンジュゲートのみで事前免疫した後の腫瘍増殖のグラフである。
【0073】
【図43】IRX−2と他のアジュバントをワクチン接種した後のT細胞のIFN−γ産生のグラフである。
【0074】
【図44】IRX−2と他のアジュバントをワクチン接種した後の抗原特異的細胞のグラフである。
【0075】
【図45】IRX−2と他のアジュバントをワクチン接種した後のインビボ細胞傷害性のグラフである。
【0076】
【図46】ウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後の血清抗体応答のグラフである。
【0077】
【図47】ウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後のT細胞のIFN−γ応答のグラフである。
【0078】
【図48】TRICOMを発現するウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後のT細胞のIFN−γ応答のグラフである。
【0079】
【図49】ウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後のT細胞のIFN−γ応答のグラフである。
【0080】
【図50】ウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後のIgM応答のグラフである。
【0081】
【図51】ウイルスに基づくワクチンとIRX−2とをワクチン接種した後のIgGおよびIgG2応答のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、免疫療法および癌または他の抗原産生持続性病変もしくは疾患状態の治療の組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、癌または他の抗原産生疾患もしくは病変と関連する抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法に関するものであり、ここで、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含む初代細胞由来生物製剤、および少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンは、患者における抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で患者に投与される。本発明によれば、抗原は好ましくは外因性抗原であり、初代細胞由来生物製剤は抗原とともにアジュバントとして作用して、患者における抗原に対する免疫応答を刺激する。初代細胞由来生物製剤は、本明細書に記載されるような他のアジュバントと組み合わせて使用することもできる。
【0083】
定義
【0084】
本明細書で使用する場合、「アジュバント」という用語は、特定の抗原に対する免疫応答を増強する能力を有する組成物を意味する。そのような能力は、免疫媒介性防御の顕著な増大により明らかにされる。効果的であるために、アジュバントは抗原の部位またはその近くに送達されなければならない。免疫の増強は、通常、抗原に対して生成される抗体の力価の顕著な(通常10倍を上回る)増加および/または陽性皮膚試験、細胞傷害性T細胞アッセイ、IFN−γもしくはIL−2のELISPOTアッセイ、もしくは腫瘍へのT細胞浸潤によって測定することができる細胞性免疫の増強によって明らかにされる。本発明のサイトカイン組成物は、特に、T細胞媒介性免疫応答を増強するのに適している。本発明のサイトカイン組成物のアジュバント効果としては、ナイーブT細胞の生成、樹状細胞の分化および成熟の促進、単球およびマクロファージの刺激、また、癌患者の場合、腫瘍へのリンパ球浸潤の増大、腫瘍断片化、腫瘍退縮、およびリンパ節内での洞組織球増殖の低下が挙げられる。
【0085】
本明細書で使用される「アジュバント系」は、一緒に作用するようにアジュバントを組み合わせて、最適に効果的でかつ安全な処方物を得ることを意味し、この処方物中では、ワクチン、抗原およびアジュバントの各部分が一緒に作用して、免疫応答を生じさせる。そのようなアジュバント系の例は、Glaxo Smith Kline(GSK)により製造されているASO2、3および4処方ワクチンである。
【0086】
本明細書で使用される「ワクチン」は、送達された抗原に対する免疫応答および好ましくはT細胞応答を生成させるために患者に投与される、少なくとも1種の抗原、好ましくは2種以上の抗原を含むワクチンを指す。ワクチンは、担体または他の刺激分子などの様々な他の成分を含むことができる。ワクチンは、様々なウイルス/細菌ベクターまたは細胞中にコードされたDNAに基づくワクチン、ペプチドに基づくワクチン、またはタンパク質に基づくワクチンであることができる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「有効量」は、本発明の所望の結果、すなわち、相乗的な様式で抗原に対する免疫応答を生じさせることを達成するのに必要とされる初代細胞由来生物製剤の量を指す。当業者は、特定の患者に投与すべき初代細胞由来生物製剤の有効量を決定することができる。
【0088】
「IRX−2」(別名、「サイトプルリキン」)は、フィトヘマグルチニン(PHA)およびシプロフロキサシン(CIPRO)によって刺激された純化されたヒト白血球(単核細胞)によって産生される、白血球由来の天然の初代細胞由来生物製剤である。定義によれば、IRX−2はアジュバント系である。主な活性成分は、インターロイキン1β(IL−1β、また、本明細書ではIL−1とも呼ばれる)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、およびγ−インターフェロン(IFN−γ)である。好ましくは、本発明で使用されるIRX−2は、これら6つの極めて重要なサイトカインを含む。IRX−2はまた、以前に、米国特許第6,977,072号および同第7,153,499号において、「NCM」(天然サイトカイン混合物)と呼ばれ、定義され、かつ明記されていた。IRX−2、初代細胞由来生物製剤、およびNCMという用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0089】
簡潔に述べると、IRX−2は、4−アミノキノロン抗生物質が常に存在し、かつマイトジェンが常にまたは間欠的に存在する中で調製され、マイトジェンは、好ましい実施形態では、PHAである。しかしながら、他のマイトジェンを使用することもできる。患者に投与するために産生されたIRX−2は、60〜6,000pcg/mL、より好ましくは150〜1,800pcg/mLの範囲の濃度のIL−1βと、600〜60,000pcg/mL、より好ましくは3,000〜12,000pcg/mLの範囲の濃度のIL−2と、200〜20,000pcg/mL、より好ましくは1,000〜4,000pcg/mLの範囲の濃度のIFN−γおよびTNF−αとを含む。
【0090】
IRX−2はまた、60〜6,000pcg/mL、より好ましくは300〜2,000pcg/mLの範囲の濃度のIL−6と、6000〜600,000pcg/mL、より好ましくは20,000〜180,000pcg/mLの範囲の濃度のIL−8と、200〜20,000pcg/ml、より好ましくは1,000〜4,000pcg/mLの範囲の濃度のTNF−αとを含むことができる。組換えサイトカイン、天然サイトカインもしくはペグ化サイトカインを使用することもできるし、またはIRX−2は組換えサイトカイン、天然サイトカインもしくはペグ化サイトカインの混合物を含むことができる。IRX−2は、上記のサイトカインしか含まないこともあるが、他のサイトカインを含むこともある。本発明のIRX−2はさらに、IL−7、IL−12、IL−15、GM−CSF(100〜10,000pcg/mL、より好ましくは500〜2,000pcg/mLの範囲の濃度)、およびG−CSFなどの他の組換えサイトカイン、天然サイトカインまたはペグ化サイトカインを含むことができる。IRX−2の製造方法は、上で引用した特許および米国仮特許出願第61/044,674号に開示されている。
【0091】
本明細書に開示したサイトカインと関連する誘導体、断片およびペプチドもまた、本発明により包含され、その場合、そのような誘導体、断片およびペプチドは、そのそれぞれのサイトカインの生物学的活性を保持している。
【0092】
免疫抑制を促進するための組成物(例えば、化学的インヒビター、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、亜鉛およびそれらの組合せ)などの、他の化合物を、IRX−2と一緒に投与することもできる。化学的インヒビターは、免疫抑制性でなく(好ましくは低用量で使用され)、かつ例えば、身体内の免疫抑制またはサプレッサー機構を阻害することによって免疫および/または免疫応答を増大させるように免疫調節効果を有する任意の化学療法剤であることができる。好ましい実施形態によれば、化学的インヒビターは、限定するものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤および抗生物質をはじめとする抗新生物剤である。化学的インヒビターは、サリドマイドなどの免疫調節剤であることもできる。化学的インヒビターは、塩または他の複合体形態であることもできる。好ましくは、化学的インヒビターは、アルキル化剤のシクロホスファミド(CY)である。NSAIDは、CoxIとCoxIIの両方のインヒビターであるインドメタシン(INDO)であることが好ましい。NSAIDは、イブプロフェンもしくはCoxIIインヒビター(例えば、セレコキシブおよびロフェコキシブ)、またはそれらの組合せであることもできる。一緒に使用される4つの成分(すなわち、化学的インヒビター、NSAID、初代細胞由来生物製剤、および亜鉛)は、免疫標的によって作り出される抑制性環境に対処し、患者の細胞性免疫応答を回復させることができる。より具体的には、化学的インヒビターはT調節性細胞を阻害する。すなわち、NSAIDは、プロスタグランジンによる局所的免疫抑制を逆転させ、初代細胞由来生物製剤は、樹状細胞を活性化し、T細胞を刺激し、T細胞をアポトーシスから防御し、亜鉛は、図2に示すようなT細胞機能にとっての重要な栄養素を提供する。この組み合わされた作用は、内因性抗原と外因性抗原の両方に対する免疫応答を助長する。
【0093】
本明細書で使用する場合、「内因性抗原」という用語は、本発明のサイトカイン組成物をインビボで投与した後に、サイトカインが患者内で抗原とともにアジュバントとして作用して、抗原に対する免疫応答を刺激するように、インビボで、すなわち、生物(例えば、患者)内で産生され、かつそこに位置する抗原を意味する。
【0094】
本明細書で使用する場合、「外因性抗原」という用語は、本発明のサイトカイン組成物をインビボで投与した後に、サイトカインが患者内で抗原とともにアジュバントとして作用して、抗原に対する免疫応答を刺激するように、インビトロで、すなわち、治療しようとする生物の外側で、産生、すなわち、単離または生成され、かつインビボで生物(すなわち、患者)に投与される抗原を意味する。外因性抗原は、化学合成されたもしくは遺伝子改変された化合物もしくは分子であることができるし、またはそのインビボ環境から抽出され、インビトロで単離された内因性抗原であることができる。抽出された抗原は、インビボに再導入するために処理するかまたは別の方法で修飾することができる。外因性抗原は、本発明のサイトカイン組成物とは別個の薬理学的製剤に含めてまたは同じ製剤に含めて投与することができる。下記の実施例11および12のデータによって示されるように、本発明のIRX−2組成物は、外因性の前立腺特異的膜抗原(PSMA)と組み合わせて、マウスとヒトの両方で免疫応答を促進するのに有効である。他の外因性抗原を、以下でさらに記載するようにIRX−2と組み合わせることができる。
【0095】
本明細書で使用する場合、「腫瘍関連抗原」という用語は、腫瘍に対する免疫応答を誘導することができるタンパク質またはペプチドまたは他の分子を意味する。これには、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin,1997;Wang,1999)、パピローマウイルスペプチド(E6およびE7)、MAGE断片、NY ESO−1または他の同様の抗原が含まれ得るが、これらに限定されない。これまで、これらの抗原は、そのサイズを根拠に(すなわち、それらは小さすぎると考えられていた)、またはそれらはこれまで免疫原性特性を欠くと考えられていたので(すなわち、それらは自己抗原と考えられていた)、患者を治療するのに有効であるとは考えられていなかった。
【0096】
合成された長いペプチドは、22〜45アミノ酸のペプチド配列と定義される。合成された長いペプチドワクチンは、以下で説明される、最小限のペプチド配列ワクチンに優るいくつかの利点を提供する。ワクチン効力における重要な因子のうちの1つは、ペプチドが免疫系に提示される状況である。合成された長いペプチドは、MHCクラスIに直接結合することはできないが、樹状細胞によって取り込まれ、プロセッシングされた後、細胞傷害性T細胞に提示される必要がある。対照的に、最小限の細胞傷害性T細胞ペプチド(8〜10アミノ酸)は、細胞外でMHCクラスI分子に直ちにロードされ、インビボでプロフェッショナルAPC(DC)と非プロフェッショナルAPC(T細胞およびB細胞)によって提示されることができる。非活性化B細胞への細胞傷害性T細胞ペプチドエピトープの提示は一過性の細胞傷害性T細胞応答を誘導し、その後、これらのCD8+T細胞の欠失が起こる。ペプチドワクチンで活性化されたCD8+T細胞が互いに最小限の細胞傷害性T細胞ペプチドを提示するとき、IFAアジュバントによって誘導される徐放性でかつ長期にわたる(100日を超える)抗原提示は、非プロフェッショナルAPCによる非炎症性リンパ節における細胞傷害性T細胞ペプチドの最小限の提示と相まって、CD8+T細胞寛容と同胞殺しを誘導する。対照的に、最小限のMHCクラスI結合ペプチドがDCに直接ロードされると、細胞傷害性T細胞を寛容化するペプチドが、腫瘍防御的な細胞傷害性T細胞応答の拡大を誘発するペプチドに変換され得る。同様に、細胞傷害性T細胞ペプチド配列を、DCによるプロフェッショナルなプロセッシングを必要とする合成された長いペプチドに伸長させることには同じ効果がある。合成された長いペプチドは、主に、プロフェッショナルAPCによってプロセッシングされ、提示されるので、炎症を起こした流入領域リンパという強い刺激性の環境において細胞傷害性T細胞を主に刺激する。合成された長いペプチドワクチンの最小限の細胞傷害性T細胞ペプチドワクチンに優る別の利点は、抗原流入領域リンパ節におけるインビボエピトープ提示の持続期間の延長であり、これは、クローン性拡大およびエフェクターT細胞によるIFN−γ産生に重要である。合成された長いエピトープによるこの改善されたインビボ提示とそれに伴うT細胞拡大の誘導は、関係している細胞傷害性T細胞エピトープがより弱いMHCクラスI結合を示す場合に、特に明白となる。それゆえ、最小限の細胞傷害性T細胞ペプチドを長いペプチドに変換することは、免疫原性を増大させるための細胞傷害性T細胞ペプチドの修飾などの方法に代わる選択肢を提供する。
【0097】
HPV用の合成された長いペプチドの例には、以下のものがある:
E61〜32:MHQKRTAMFQDPQERPRKLPQLCTELQTTIHD(SEQ ID No.:4)
E619〜50:LPQLCTELQTTIHDIILECVYCKQQLLRREVY(SEQ ID No.:5)
E641〜65:KQQLLRREVYDFAFRDLCIVYRDGN(SEQ ID No.:6)
E655〜80:RDLCIVYRDGNPYAVCDKCLKFYSKI(SEQ ID No.:7)
E671〜95:DKCLKFYSKISEYRHYCYSLYGTTL(SEQ ID No.:8)
E685〜109:HYCYSLYGTTLEQQYNKPLCDLLIR(SEQ ID No.:9)
E691〜120:YGTTLEQQYNKPLCDLLIRCINCQKPLCPEEK(SEQ ID No.:10)
E6109〜140:RCINCQKPLCPEEKQRHLDKKQRFHNIRGRWT(SEQ ID No.:11)
E6127〜158:DKKQRFHNIRGRWTGRCMSCCRSSRTRRETQL(SEQ ID No.:12)
E71〜35:MHGDTPTLHEYMLDLQPETTDLYCYEQLNDSSEEE(SEQ ID No.:13)
E722〜56:LYCYEQLNDSSEEEDEIDGPAGQAEPDRAHYNIVT(SEQ ID No.:14)
E743〜77:GQAEPDRAHYNIVTFCCKCDSTLRLCVQSTHVDIR(SEQ ID No.:15)
E764〜98:TLRLCVQSTHVDIRTLEDLLMGTLGIVCPICSQKP(SEQ ID No.:16)
【0098】
より具体的には、本発明は、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを有する相乗量の初代細胞由来生物製剤(IRX−2)と、少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンとを含む組成物を対象とする。IRX−2は、単独でまたはワクチン中の外因性抗原に対する他のアジュバントと組み合わせて、アジュバントとして作用する。すなわち、IRX−2は、外因性抗原に対する免疫応答を刺激する。言い換えると、IRX−2は、外因性抗原と相乗的な様式で作用して、外因性抗原のみを投与することによって達成することができるよりも大きい免疫応答を生成する。IRX−2は、免疫系が何らかの形でその完全な機能から抑制されている患者の免疫系を完全に「作動させる」というその効果によって、これまでのアジュバントに優る利点を提供する。免疫系の抑制を逆転させなければ、抗原を提示して、癌および他の疾患を効果的に治療することはできない。IRX−2が免疫系を「作動させる」機序は、以下でさらに記載されている。
【0099】
本組成物を用いて、癌(例えば、限定するものではないが、頭頸部扁平上皮癌(H&NSCC)、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、膵癌、肺癌、脳腫瘍、結腸癌、卵巣癌、舌癌、咽頭癌、前立腺癌、および黒色腫)などの多くの異なる種類の疾患を治療することができる。さらに、本発明の組成物および方法を用いて、インビボで抗原を産生する感染性病変(例えば、皮膚もしくは全身性のカンジダ症、パピローマウイルス関連の性病いぼ、または子宮頸部の形成異常)などの非癌性の持続性病変を治療することができる。
【0100】
IRX−2は、本質的には、上の定義の節に記載された通りのものであり、場合によって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γという6つの極めて重要なサイトカイン以外のさらなるサイトカインを含むことができ、また、本組成物は、場合によって、通常のIRX−2レジメンで投与される様々な他の化合物、すなわち、上でも記載されたような化学的インヒビター、NSAID、および亜鉛をさらに含むことができる。
【0101】
本発明のワクチンは、特定の抗原に対する免疫応答を刺激することによって癌を治療するために使用され、かつ通常、その特定の種類の癌で一般に産生される少なくとも1種の抗原を含む任意のワクチンである。本明細書で論じられる抗原は、「癌ワクチン」中にあるものとして言及されているが、この抗原はまた、本明細書に(例えば、実施例11および12に)記載されているのと同じように、個別にまたは従来の「ワクチン」中で組み合わせずに使用することができることが理解されるべきである。
【0102】
癌ワクチンで使用される一般的な抗原としては、AFP、α−アクチニン−4、ARTC1、BAGE、BCR−abl、B−RAF、CA15−3、CA19−9、CA−125、CASP−5、CASP−8、β−カテニン、癌胎児性抗原、修飾された癌胎児性抗原、癌関連突然変異ムチン、cdc27、CDK4、CDKN2A、CEA、クロモグラニンA、COA−1、サイクリン依存的キナーゼ−4、dek−can融合タンパク質、EFTUD、伸長因子2、上皮増殖因子受容体EGFRvIII、エプスタインバーウイルスEBNA遺伝子産物、ETA、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GAGE、ガングリオシド、GPNMB、gp75/TRP−1、gp100、H1FT、HAGE、HERV−K−MEL、HER2/neuタンパク質、HIP−55、HIV−1、HIV−2、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、キネシン2、KK−LC−1、KLK−4、KM−HN−1、KSA、LAGE、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、MAGE、マンマグロビン−A、MART−1/Melan A、MART−2、ME1、黒色腫プロテオグリカン、ミオシンクラスI、MUC−1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、NA−88、NCAM−180、neo−PAP、NFYC、NY−BR、NY−ESO−1、OA1、OGT、OS−9、p15、p21−ras、p53、p185 HER2/neu、パピローマウイルスE7、パピローマウイルスE6、pmi−RARα融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、PSA、PSMA、RAGE、K−ras、N−ras、RAB38、RBAF600、SAGE、SIRT2、SNRPD1、sp17、SYT−SSX1融合タンパク質、SYT−SSX2融合タンパク質、TA 90、TAG、TGF−β1抗アポトーシス因子、TGF−βRII、チログロブリン、TRAG−3、トリオースリン酸イソメラーゼ、TRP2、TRP2−INT2、腫瘍タンパク質D52、チロシナーゼ、WT1、それらの断片、それらの誘導体、およびそれらの組合せが挙げられる。任意の他の好適な抗原を使用することもできる。
【0103】
投与される抗原は、天然タンパク質、組換えタンパク質、化学合成タンパク質、またはそれらの組合せの形態の抗原そのものであることもある。
【0104】
さらに、抗原は、ウイルスまたは細菌ベクター、すなわち、核酸ベクターにコードされていることもある。この場合、抗原は、核酸物質(例えば、DNAまたはRNA)にコードされている。核酸をコードするのに使用される一般的なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ポックスウイルスの例としては、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MA)、NYVAC、アビポックス、TROVAX、鶏痘、およびカナリア痘が挙げられる。カナリア痘の具体的な例としては、ALVACおよびALVAC(2)が挙げられる。当業者は、所望のベクターに抗原をコードさせることができる。
【0105】
本組成物は、T細胞を刺激するための共刺激分子をさらに含むことができる。T細胞は、完全に活性化されるようになるために、2つの異なるシグナルを必要とする。第1のシグナルは抗原特異的なものであり、抗原提示細胞の膜表面でペプチド−MHC分子と相互作用するT細胞受容体から生じる。共刺激シグナルとなる第2のシグナルは、抗原非特異的なものであり、抗原提示細胞の膜表面に発現した共刺激分子とT細胞との相互作用によって得られる。共刺激分子は、天然に体内で見出すことができるが、免疫抑制患者では、さらなる分子を投与することができる。共刺激分子の例としては、アバタセプト、ベラタセプト、CD28−SuperMAB、B7/CD28共刺激分子、TNFスーパーファミリー共刺激分子、SLAMファミリー共刺激分子およびその他のものが挙げられる。
【0106】
本組成物は、上記のような合成された長いペプチドを含むこともできる。この組合せは、新規の作用機序を有するワクチンを本発明の組成物と組み合わせて、2つの成分の組み合わされた作用機序によって相乗的な応答を得る例である。
【0107】
本組成物は、抑制性または負の調節免疫機構を阻止する化合物(例えば、抗CTLA−4、抗PD−1または抗PDL−1)を含むこともできる。CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)ファミリーの受容体は、関与したときに、T細胞の活性化を阻害し、細胞周期停止を促進し、かつサイトカイン産生を減少させる。これは、過剰な免疫応答を防ぐための、正常に機能する免疫系における重要な機能である。しかしながら、抑制の一部を除去し、T細胞の活性化を刺激するためには、免疫抑制患者におけるCTLA−4受容体を阻害することが望ましい。
【0108】
本組成物は、Treg枯渇化分子をさらに含むことができる。Treg、または調節性T細胞は、自己抗原と非自己抗原を区別し、免疫活性化を積極的に抑制する。Tregの枯渇によって、免疫抑制患者における免疫系の抑制を低下させることができる。この枯渇は、限定するものではないが、デニロイキンジフィトックス(ONTAK(登録商標)、Eisai Inc.)などのTreg枯渇化分子を投与することによって達成することができる。
【0109】
本組成物は、腫瘍の近くまたは内部で生じる血管新生過程を予防または阻害するために、血管新生関連抗原を含むことができる。血管新生関連抗原としては、VEGF、VEGF受容体、EGFR、bFGF、PDGF−B、PD−ECGF、TGF−αをはじめとするTGF、エンドグリン、Idタンパク質、様々なプロテアーゼ、酸化窒素シンターゼ、アミノペプチダーゼ、トロンボスポンジン、k−ras、Wnt、サイクリン依存的キナーゼ、微小管、熱ショックタンパク質、ヘパリン結合因子、シンターゼ、コラーゲン受容体、インテグリン、および表面プロテオグリカンNG2を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0110】
本組成物は、初代細胞由来生物製剤および癌ワクチンならびに上記の他の成分の効果を増強するための、増強剤CD80、ICAM−1、およびLFA−3(別名、TRICOM)をさらに含むことができる。増強剤の他の組合せとしては、IL−12とGM−CSF;IL−12とGM−CSFとTNF−α;CD80とIL−12;およびCD86とGM−CSFとIL−12が挙げられる。
【0111】
本発明はまた、内因性抗原と外因性抗原の両方の使用を包含する。すなわち、本組成物は、内因性抗原を有する患者にインビボで投与され、かつサイトカインは、外因性抗原と内因性抗原の両方とともにアジュバントとして作用して、患者における免疫応答を刺激する。例えば、内因性抗原は、所属リンパ節または腫瘍部位に存在することができる。
【0112】
本発明はまた、患者の免疫系を刺激するために、それ自体アジュバントとして作用する上記のような初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の他のアジュバントとを含む組成物を対象とする。外因性抗原(例えば、癌ワクチンに含まれるもの)および上記の他の成分も組成物に含めることができる。言い換えると、本組成物は、抗原の効果をさらに増強する多重アジュバント組成物である。さらに、初代細胞由来生物製剤は、上記のような抗原の効果だけでなく、アジュバントの効果も増強する、すなわち、初代細胞由来生物製剤は、アジュバントと相乗的に作用する。
【0113】
2つの異なるクラスのアジュバント:toll様受容体(TLR)非依存的アジュバントおよびTLR依存的アジュバントがある。TLR非依存的アジュバントは送達系として作用し、かつ抗原を濃縮し、それを抗原提示細胞にターゲッティングし、抗原と免疫増強剤を共局在させるのを助ける。TLR依存的アジュバントは、TLRの活性化を通じて免疫系を直接刺激する。本発明の組成物は、TLR非依存的アジュバント、TLR依存的アジュバント、またはそれらの組合せとともに使用することができる。各種のアジュバントを用いて、免疫系の異なる部分を同時に刺激することができる。例えば、TLR非依存的アジュバントは、抗原およびTLR依存的アジュバントをAPCにを輸送して、抗原の取込みおよび安定性を刺激することができ、その一方で、TLR依存的アジュバントは、TLRシグナル伝達の活性化を通じて免疫を直接増強し、TLR依存的アジュバントをそのままで投与する潜在的な毒性を軽減する。また、複数のTLR依存的アジュバントを用いて、アジュバントの相乗効果をもたらすこともできる。
【0114】
アジュバントは、限定するものではないが、以下のアジュバントであることができる。TLR非依存的アジュバント:ミョウバン(リン酸アルミニウム/水酸化アルミニウム)は、様々な適応を示す無機塩である。AS03(GSK;スクアレン)(10.68mg)、DL−α−トコフェロール(11.86mg)、およびポリソルベート80(4.85mg))は、パンデミックインフルエンザに使用される水中油型エマルジョンである。MF59(Novartis;4〜5%(w/v)スクアレン、0.5%(w/v)Tween 80、0.5%Span 85、任意で可変量のムラムルトリペプチドホスファチジル−エタノールアミン(MTP−PE))は、インフルエンザに使用される水中油型エマルジョンである。プロバックス(Biogen Idec;スクアレン+プルロニックL121)は水中油型エマルジョンである。モンタニド(Seppic SA;Bioven;Cancervax;オレイン酸マンニドおよび鉱油)は、マラリアおよび癌の治療において使用される油中水型エマルジョンである。TiterMax(CytRx;スクアレン+CRL−8941)は、油中水型エマルジョンである。Advax(Vaxine Pty;イヌリンのナノ結晶粒子)は、B型肝炎(予防的および治療的)、インフルエンザ、炭疽菌、赤痢菌、日本脳炎、狂犬病、ハチ毒、アレルギーに対するワクチン、および癌免疫療法において使用される生体ポリマーである。QS21(Antigenics;Quil Aの画分)は、黒色腫、マラリア、HIV、およびインフルエンザの治療において使用される植物由来組成物である。Quil A(Statens Serum Institute;キラヤの精製画分)は、様々な治療において使用される植物由来組成物である。ISCOM(CSL;Isconova;サポニン+ステロール+場合により、リン脂質)は、インフルエンザをはじめとする様々な治療において使用される植物由来組成物である。リポソーム(Crucell;Nasvax;脂質からなる合成リン脂質球)は様々な疾患の治療において使用される。
【0115】
TLR依存的アジュバント:Ampligen(Hemispherx;規則的に現われるミスマッチ領域を含む特異的に構成された合成二本鎖RNA)は、TLR3の活性化により作用し、パンデミックインフルエンザに対するワクチンとして使用される。AS01(GSK;MPL、リポソーム、およびQS−21)は、TLR4のMPL活性化により作用し、リポソームは、APCへの抗原送達の促進をもたらし、QS−21は、APCへの抗原提示の増強および細胞傷害性T細胞の誘導をもたらし、また、これは、マラリアおよび結核に対するワクチンとして使用される。AS02(GSK;MPL、o/wエマルジョン、およびQS−21)は、TLR4のMPL活性化により作用し、o/wエマルジョンは、自然炎症応答、APCの動員および活性化、注射部位における抗原持続の増強、免疫適格細胞への提示、様々なパターンのサイトカインの誘発をもたらし、QS−21は、APCへの抗原提示の増強および細胞傷害性T細胞の誘導をもたらし、また、これは、マラリア、結核、HBV、およびHIVに対するワクチンとして使用される。AS04(GSK;MPL、水酸化アルミニウム/リン酸アルミニウム)は、TLR4のMPL活性化により作用し、ミョウバンは、デポ効果、局所炎症、およびAPCによる抗原取込みの増加をもたらし、また、これは、HBV、HPV、HSV、RSV、およびEBVに対するワクチンとして使用される。MPL RC−529(Dynavax;MPL)は、TLR4の活性化により作用し、HBVに対するワクチンとして使用される。E6020(Eisa/Sanofi Pasteur;合成リン脂質二量体)は、TLR4の活性化により作用する。TLR−テクノロジー(Vaxinnate;抗原およびフラジェリン)は、TLR5の活性化により作用し、インフルエンザに対するワクチンにおいて使用される。PF−3512676(CpG 7909)(Coley/Pfizer/Novartis;免疫調節合成オリゴヌクレオチド)は、TLR9の活性化により作用し、HBV、インフルエンザ、マラリア、および炭疽菌に対するワクチンにおいて使用される。ISS(Dynavax;短いDNA配列)は、TLR9の活性化により作用し、HBVおよびインフルエンザに対するワクチンにおいて使用される。IC31(Intercell;ペプチドおよびオリゴヌクレオチド)は、TLR9の活性化、注射部位デポの形成、およびAPCへの抗原取込みの増強により作用し、インフルエンザ、結核、マラリア、髄膜炎、アレルギー、および癌適応症に対するワクチンとして使用される。
【0116】
初代細胞由来生物製剤とアジュバントの組合せは、上記のアジュバントに対して現在推奨されている適応症とは異なる適応症に使用することができ、かつそれらは、とりわけ、本明細書に記載したような癌適応症に使用することができることも理解されるべきである。したがって、初代細胞由来生物製剤とアジュバントの組合せは、免疫系を増強し、特にこのアジュバントの適応症となる疾患のいずれかまたは本明細書に記載の任意の他の疾患を治療するために使用することができる。
【0117】
さらに、本発明は、初代細胞由来生物製剤と、初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する上記のような別のアジュバントとを含むことができる。初代細胞由来生物製剤は、未成熟な樹状細胞を成熟させることによって免疫系を効果的に「作動させ」、ナイーブT細胞の産生を刺激し、抗原をナイーブT細胞に効果的に提示させるよう作用する。この作用機序は以下でさらに記載されている。免疫系の別の部分に対して作用するアジュバントと組み合わせた場合、初代細胞由来生物製剤とアジュバントは、免疫系の複数の部分を同時に刺激することによって、免疫系における相乗的な応答を生じさせることができる。
【0118】
本発明は、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンとを含む上記の組成物を投与することによって、癌を治療するための方法を提供する。初代細胞由来生物製剤と抗原が相乗的な様式で相互作用して、抗原をT細胞に提示し、免疫系を活性化するので、本組成物は癌の治療に効果的である。一般に、初代細胞由来生物製剤は、ナイーブT細胞の産生を刺激し、未成熟な樹状細胞を成熟させ、得られた成熟樹状細胞によるナイーブT細胞への癌ワクチン中の外因性抗原の提示を可能にするように作用する。この作用機序は以下でさらに記載されている。言い換えると、初代細胞由来生物製剤の作用がなければ、免疫系が抑制されたままになるので、この癌ワクチンは、患者における癌に対する免疫を生成させるのに効果的でなくなる。この投与工程は、以下でさらに記載するように、および好ましくは1日1回の外リンパ注射によって達成することができる。
【0119】
上記のような共刺激分子を投与することによって患者のT細胞を共刺激し、T細胞に対する抗原非特異的シグナルを発生させることもできる。上記のようなT細胞をさらに刺激するために、上記のような抗CTLA−4を投与することによって、T細胞の阻害を妨げることができる。上記のような免疫系の抑制をさらに軽減するために、Treg枯渇化分子を投与することによって、Tregを枯渇させることができる。上記のような血管新生関連抗原を投与することによって、腫瘍内血管の誘導および持続的発達を予防することができる。上記のような成分および組成物の効果を増強する増強剤を投与することができる。
【0120】
癌の治療方法は、化学療法、放射線、抗血管新生療法、およびそれらの組合せなどの治療法の実施をさらに含むことができる。これらの治療法は各々、単独で実施される場合よりも本発明の組成物と組み合わせて実施される場合に効果的である。
【0121】
本発明はまた、免疫抑制を逆転させ、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンとを含む上記の組成物を投与することによって癌に対する免疫を獲得し、ナイーブT細胞の産生を刺激し、未成熟な樹状細胞を成熟させ、かつ得られた成熟樹状細胞によるナイーブT細胞への癌ワクチン中の外因性抗原の提示を可能にし、それにより免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法を提供する。言い換えると、初代細胞由来生物製剤と癌ワクチンは、免疫抑制患者における免疫系を効果的に作動させ、かつ外因性抗原に基づく癌に対する免疫を刺激するために、一緒に作用する。
【0122】
上記の方法と同様に、上記のような共刺激分子を投与することによって患者のT細胞を共刺激し、T細胞に対する抗原非特異的シグナルを発生させることもできる。上記のようなT細胞をさらに刺激するために、上記のような抗CTLA−4を投与することによって、T細胞の阻害を妨げることができる。上記のような免疫系の抑制をさらに軽減するために、Treg枯渇化分子を投与することによって、Tregを枯渇させることができる。上記のような血管新生関連抗原を投与することによって、腫瘍内血管の誘導および持続的発達を予防することができる。上記のような成分および組成物の効果を増強する増強剤を投与することができる。
【0123】
免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法は、化学療法、放射線、抗血管新生療法、およびそれらの組合せなどの治療法を実施することをさらに含むことができる。これらの治療法は各々、単独で実施される場合よりも本発明の組成物と組み合わせて実施される場合に効果的である。
【0124】
本発明はまた、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤のアジュバントと、少なくとも1つの外因性抗原(ここで、この外因性抗原は、通常は免疫応答を生じさせない)とを投与することと、患者における免疫応答を生じさせることとによって、患者における外因性抗原に対する免疫応答を生じさせる方法を提供する。外因性抗原は、通常は患者において免疫応答を生じさせない上記の抗原のいずれかであることができる。実施例12は、IRX−2が、通常は効果がないPSMAペプチドで免疫応答を生じさせるのに効果的であることを示す。この方法は、上記のような工程または化合物のいずれかとさらに組み合わせることができる。
【0125】
本発明は、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて投与することによって、患者における免疫応答を増強する方法を提供する。初代細胞由来生物製剤は上に記載されている。アジュバントは、TLR非依存的アジュバント、TLR依存的アジュバント、またはそれらの組合せであることができる。次に、本方法は、TLR非依存的アジュバントを投与することによって、抗原を送達および濃縮し、抗原を抗原提示細胞にターゲッティングし、抗原および免疫増強剤を共局在させる工程を含むことができる。本方法はまた、TLR依存的アジュバントを投与することによってTLRを活性化することにより、免疫系を直接刺激する工程を含むことができる。上記のように、初代細胞由来生物製剤は、他のアジュバントと相乗的に作用し、抗原に応答して免疫系をより効果的に刺激する。好ましくは、外因性抗原を上記のように(例えば、癌ワクチンに含めて)投与することもできる。この方法は、上記のような工程または化合物のいずれかとさらに組み合わせることができる。アジュバントは、上記のような初代細胞由来生物製剤とは異なる作用機序を有することができる。
【0126】
本発明はさらに、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバント(ここで、このアジュバントは、初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する)と組み合わせて投与することと、免疫応答の機能を増大させることとによって、免疫系の機能を増大させる方法を提供する。言い換えると、初代細胞由来生物製剤とアジュバントは相乗的に相互作用して、初代細胞由来生物製剤またはアジュバントのみから得られるものを超えて免疫機能を増大させるが、それは、各々の成分が免疫系の様々な部分を「作動させ」て、より大きい免疫応答を生じさせるからである。この方法は、上記のような工程または化合物のいずれかとさらに組み合わせることができる。
IRX−2の作用機序
【0127】
上で定義したように、本発明の初代細胞由来生物製剤はアジュバントとして作用する、すなわち、特定の抗原に対する患者の免疫応答を刺激または増強する。さらに、本発明のIRX−2組成物および方法は、T細胞媒介性免疫応答を刺激するのに特に適している。本発明の組成物および方法によって促進される免疫応答としては、ナイーブT細胞の誘導または生成、(例えば、リンパ節における)T細胞への適切な抗原提示を可能にする樹状細胞の分化および成熟、ならびに単球およびマクロファージの活性化が挙げられる。特に癌患者では、本発明の組成物および方法によって促進される免疫応答として、リンパ球による腫瘍浸潤、腫瘍の断片化および退縮ならびに(存在する場合)洞組織球増殖の低下が挙げられる。本質的には、初代細胞由来生物製剤は、免疫の生成を誘導し、かつ免疫の破壊を阻止する。初代細胞由来生物製剤の作用機序は、出願人に対する米国特許出願第12/323,595号でさらに記載されている。
【0128】
より具体的には、本発明の組成物および方法は、ナイーブT細胞の産生を誘導することによって、患者における免疫低下/抑制を克服するのを助ける。本明細書で定義される「ナイーブ」T細胞という用語は、新たに産生されるT細胞を意味し、このT細胞は未だ抗原に曝露されたことがない。そのようなT細胞は非特異的であるが、抗原(例えば、腫瘍ペプチド)がその表面に露出している成熟樹状細胞による抗原提示によって特異的になることができる。したがって、本発明の組成物および方法は、新しいT細胞を補充するかまたは生成する(下記の実施例2および8を参照されたい)。
【0129】
さらに、特に腫瘍を有する癌患者において、本組成物および方法は、腫瘍内へのリンパ球浸潤、それに伴う顕著な腫瘍の断片化および退縮を可能にする。例えば、下記の実施例2〜7を参照されたい。そのような浸潤は、臨床的応答の最大化および生存率の最大増加のために重要である。例えば、90:10の比率のリンパ球:顆粒球浸潤またはマクロファージ浸潤が最適であり、T細胞および/またはB細胞の浸潤は、広汎性でかつ非常に強く、また、末梢性でないことが好ましい。組織学的試料における腫瘍の低下および断片化は良好な免疫応答を反映し、本発明の組成物によるアジュバント効果を示すものである。
【0130】
さらに、特定のリンパ節の変化(例えば、リンパ節腫脹)も、効果的な免疫応答、すなわち、腫瘍誘導性のサイズの低下の逆転だけでなく、正常な節サイズと比較した全体的なサイズの増加、ならびにT細胞およびB細胞領域の増加も示す。さらに、癌患者のリンパ節は、多くの場合、洞組織球増殖(SH)とも呼ばれる大きな組織球の類洞内蓄積を含む。SHは、腫瘍抗原を取り込んで、プロセッシングしたが、成熟することができず、これらの腫瘍ペプチドをナイーブT細胞に提示することができない未成熟な樹状細胞が蓄積することであると考えられている。T細胞への適切な抗原提示がなければ、これらのT細胞は、Th1およびTh2エフェクター細胞を刺激することができない。通常、この刺激によって、それぞれ、細胞性免疫および抗体性免疫が体内で生じる。下記の実施例2〜7に示すように、本発明のサイトカイン組成物および方法は、癌患者のリンパ節におけるSHを低下させ、上記の様々なリンパ変化を生じさせ、これも、本発明の組成物によるアジュバント効果を示している。
【0131】
樹状細胞は、インビボでの適切な免疫応答の生成における抗原提示において、そのような重要な役割を果たすことが知られているので、樹状細胞成熟に対する刺激効果を有する薬剤は、抗原に対する良好な免疫応答を誘発する際にアジュバントとして作用するであろう。下記の実施例9に示すように、本発明のサイトカイン組成物は、樹状細胞成熟を促進する。さらに、実施例2のデータは、本発明のサイトカイン組成物が、すなわち、DC成熟を促進することによって、SHをもたらす樹状細胞の欠陥も取り除き、したがって、特に癌患者において、本発明の組成物が、すなわち、リンパ節内のSHにおいてDCを取り除き、かつDC成熟を全体に促進する際に複数のアジュバント効果を提供することを示す。
【0132】
本発明のサイトカイン組成物はまた、単球/マクロファージの強力なアクチベーターとして作用することによって、さらなるアジュバント効果を提供する。単球は、体内のDCとマクロファージの両方の前駆体であり、したがって、単球/マクロファージ活性化を促進する薬剤は、インビボの免疫応答に対するアジュバント効果を有する。下記の実施例10を参照されたい。
【0133】
初代細胞由来生物製剤はまた、活性化T細胞をアポトーシスから防御することによって免疫破壊を阻止する。腫瘍エスケープの機構の1つは、腫瘍由来微小胞(MV)によって媒介されるアポトーシスを通じたCD8+エフェクターT細胞の標的排除を含む。免疫抑制性MVは、癌患者から得られた新生物性病変、血清、腹水および胸水中に見出されており、これらの患者のエフェクターT細胞におけるアポトーシスおよびTCR変化と関連付けられている。MVが促進する、抗腫瘍宿主防御に必要なエフェクターT細胞の排除は、腫瘍エスケープおよび癌進行の一因である。それゆえ、抗腫瘍エフェクター細胞を機能障害や死から防御することが免疫療法の主な目的である。臨床データおよび実験データにより、特定のサイトカイン(とりわけ、共通の受容体γ鎖を用いる生存サイトカイン)は、活性化T細胞を腫瘍誘導性の死から防御し、その抗腫瘍活性を増強することができることが示されている。
【0134】
より具体的には、初代細胞由来生物製剤がT細胞をアポトーシスから防御するいくつかのやり方がある。抗アポトーシスシグナル伝達分子(すなわち、JAK−3およびホスホ−Akt)の発現を上方調節し、アポトーシス促進性分子(すなわち、SOCS−2)の発現を下方調節する。CD8+およびCD4+Tリンパ球におけるカスパーゼの活性化を減少させ、cFLIP発現を増大させる。PI3K/Akt生存経路の阻害をIRX−2によって弱める。T細胞を外因性のアポトーシス(MV誘導性のアポトーシスおよびFasL誘導性のアポトーシス)と内因性のミトコンドリアアポトーシスの両方から防御する。
【0135】
外因性MV誘導性のアポトーシスからの防御は、JAK3、CD3−ζ、およびSTAT5の下方調節を妨げ、Akt−1/2の脱リン酸化を阻害し、かつBax/Bcl−2、Bax−Bcl−xL、およびBim/Mcl−1の比率のバランスを維持することによってさらに達成される。MV誘導性のアポトーシスからの防御はまた、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−7の活性の誘導を妨げることによって達成される。より具体的には、ミトコンドリア膜電位の喪失となるような、活性のある切断型カスパーゼ−3の誘導が阻止される。核DNAの断片化が阻害される。初代細胞由来生物製剤による内因性アポトーシスからの防御は、スタウロスポリン誘導性のアポトーシスからの活性化T細胞の防御によって示される。
【0136】
重要なことに、初代細胞由来生物製剤のサイトカインは、活性化T細胞をアポトーシスから相乗的な様式で防御する。言い換えると、初代細胞由来生物製剤におけるサイトカインの組合せによって、個々のサイトカインの単独投与で見られるよりも大きな効果が生じる。
【0137】
上記を考慮して、本発明の組成物および方法は、効果的なペプチド抗原提示をもたらす樹状細胞のインビボ成熟ならびに単球およびマクロファージの活性化ならびにナイーブな未分化T細胞の産生を含む、複数の効果によって免疫系を刺激する。適切な抗原提示は、T細胞およびB細胞のクローン性拡大をもたらし、患者における免疫を生成する。癌患者の場合、上述の効果は、(例えば、血行性伝播による)腫瘍内への(例えば、リンパ球の)浸潤ならびに腫瘍の縮小および/または破壊をもたらす。結果は、下記のデータによって示されるように、免疫記憶による生存の延長である(例えば、下記の実施例3を参照されたい)。
【0138】
上記の実施形態のいずれについても、治療のための以下の投与の詳細および/またはプロトコルが使用される。
【0139】
好ましくは、本発明のサイトカイン組成物を、病変(例えば、治療を受けている腫瘍または他の持続性病変)の所属リンパ節に流入するリンパ管周辺に注射する。より具体的には、局所外リンパ注射または当業者に公知の他の注射を、免疫療法製剤の十分な局在化がもたらされるように投与する。頭頸部癌の場合、注射を頸部に投与するが、治療することになっている疾患の要件に応じて、他の場所に適用することができる。そのような治療は、高い割合の頭頸部癌患者において臨床的な退縮を誘発し、これらの患者は、改善された無再発生存も示した(Hadden,1994;Meneses,1998;Barrera,2000;Whiteside,1993)。対照的に、頭頸部癌患者における組換えインターロイキン−2の腫瘍内注射(Whiteside,et al(Cancer Res.53:5654−5662,1993))はT細胞リンパ球の浸潤を生じさせたが、目立った臨床的応答はなかった。同様に、外リンパ注射と組み合わせたマルチカイン(Celsciのウェブサイト)の腫瘍周辺注射は、11人の患者でしか顕著な腫瘍応答(すなわち、50%を上回る腫瘍の縮小)をもたらさず、その応答率は10%未満であった。さらに、腫瘍周辺注射と腫瘍内注射は、最初はサイトカインプロトコルに対する陽性の応答を有していた患者ですらも、疾患の進行を伴うことがあり、したがって、その効果を取り消した。したがって、腫瘍周辺注射または腫瘍内注射は禁忌である。
【0140】
本発明の組成物を投与するための10日間の注射スキームが好ましいが、20日間の注射プロトコルを使用することができる。両側注射が効果的である。根治的頸部廓清を行なった場合、片側注射が効果的である。
【0141】
外因性抗原を利用することになっている実施形態では、外から与えられる合成抗原または抽出抗原(例えば、腫瘍抗原およびペプチド)(Bellone,1998を参照されたい)を、別個の製剤に含めてまたは本発明のサイトカイン組成物の一部として、事前に初回刺激されたまたは同時に初回刺激された所属リンパ節または遠位リンパ節に投与することができる。
【0142】
例えば癌または他の免疫抑制性疾患によって引き起こされ得る内因性のT細胞抑制を、低用量シクロホスファミド(CY)と非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の共投与によって(すなわち、本発明のサイトカイン組成物と組み合わせて)阻止することができる。NSAIDはインドメタシン(INDO)であることが好ましいが、イブプロフェンまたはCoxIIインヒビター(例えば、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))もしくはロフェコキシブ(VIOXX(登録商標)))またはそれらの組合せを使用することもできる。NSAIDの副作用をプロトンインヒビターおよびプロスタグランジンE類似体で積極的に治療することができる。T細胞免疫を回復させるために、亜鉛およびマルチビタミン(場合によっては、セレンの添加を含む)を作用物質として添加することもできる。好ましくは、亜鉛の用量は15〜75mgである。標準的なマルチビタミンを投与することができる。亜鉛は、入手可能なグルコン酸塩であることができる。
【0143】
本発明のサイトカイン組成物を、手術、放射線療法、化学療法、またはそれらの組合せの前または後に投与することができる。本発明の組成物を、腫瘍の再発期間中に、すなわち、腫瘍が消失したと考えられたかまたは寛解期にあった時期の後に腫瘍増殖が再び生じている期間中に投与することができる。
【0144】
本発明のサイトカイン組成物を、個々の患者の臨床的状態、投与の部位および方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、および体重を考慮に入れて、外因性抗原または内因性抗原のいずれかに対する最適な免疫を促進するために、投与および投薬する。したがって、本明細書における目的での薬学的「有効量」は、当技術分野で知られているようなそのような考慮すべき事項によって決定される。この量は、免疫を促進し、例えば、腫瘍の縮小、腫瘍の断片化および白血球の浸潤、再発の遅延もしくは生存率の改善、または症状の改善もしくは消失(T細胞数の増加を含む)をもたらすのに効果的であるべきである。
【0145】
本発明の方法において、本発明の組成物を様々な形で投与することができる。本発明の組成物において使用されるサイトカインまたは外因性抗原を、その標準的な形態でまたは薬学的に許容される誘導体として投与することができ、かつ単独でまたは薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバントおよびビヒクルと組み合わせた活性成分として投与することができることに留意すべきである。さらに、本発明の組成物を、皮内もしくは皮下に、またはリンパ周辺もしくはリンパ内に、リンパ節内もしくは脾臓内もしくは筋肉内に、腹腔内に、および胸腔内に投与することができる。治療を受けている患者は温血動物であり、特に、ヒトを含む哺乳動物である。薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバントおよびビヒクルならびにインプラント担体は、通常、本発明の活性成分と反応しない、不活性で、無毒な固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化材料を指す。
【0146】
用量は、単回用量または数日間にわたる複数回用量であることができる。本発明の組成物を投与する場合、それらは通常、注射用単位投薬形態(例えば、溶液、懸濁液、またはエマルジョン)として処方される。注射に好適な薬学的製剤としては、滅菌水性溶液または分散液と、滅菌注射用溶液または分散液に再構成される滅菌粉末とが挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、または植物油を含む、溶媒または分散媒であることができる。
【0147】
例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散媒の場合には必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。水性ビヒクル(例えば、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、またはピーナッツ油)およびエステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)を本発明の組成物の溶媒系として使用することもできる。さらに、抗微生物防腐剤、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝剤をはじめとする、組成物の安定性、滅菌性、および等張性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって保証することができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖類、塩化ナトリウムなど)を含めることが望ましい。吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を使用することによって、注射用薬学的形態の持続的吸収をもたらすことができる。しかしながら、本発明によれば、使用されるビヒクル、希釈剤または添加剤はいずれも、本発明のサイトカインまたは外因性抗原と適合性でなければならない。
【0148】
滅菌注射溶液は、本発明を実施する際に利用されるサイトカインまたは外因性抗原を、望ましい場合、他の成分のうちのいくつかとともに、所要量の適切な溶媒中に組み込むことによって調製することができる。
【0149】
本発明の薬理学的製剤を、任意の適合性の担体(例えば、様々なビヒクル、添加剤、および希釈剤)を含む注射用製剤に含めて患者に投与することができるか、または本発明において利用されるサイトカインおよび/もしくは外因性抗原を、徐放性の皮下インプラントもしくは標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、有向送達、イオン導入、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェア)の形態で患者に非経口的に投与することができる。本発明において有用な送達系の例としては、米国特許第5,225,182号;同第5,169,383号;同第5,167,616号;同第4,959,217号;同第4,925,678号;同第4,487,603号;同第4,486,194号;同第4,447,233号;同第4,447,224号;同第4,439,196号;および同第4,475,196号に開示されているものが挙げられる。多くの他のそのようなインプラント、送達系、およびモジュールは当業者に周知である。
【0150】
本発明の組成物および方法は、上で考察されたような、抗原産生疾患(例えば、癌、感染性疾患または持続性病変)の治療に有用であることが明白となるはずである。本組成物および方法は、患者における免疫応答をインビボで刺激することにより、これらの疾患によって産生される抗原に対する免疫を促進し、この免疫応答は、患者における疾患の症状および効果を緩和するかまたは消失させるのを助ける。
【0151】
上記の考察から、本発明を使用するための事実的根拠が与えられる。本明細書に開示された用途で使用される本発明の組成物および方法は、以下の非限定的な実施例および添付の図面によって示すことができる。
【0152】
下記に示す実施例には、本発明によるサイトカイン混合物であるIRX−2の調製、癌患者における免疫応答を刺激するためにIRX−2を内因性腫瘍抗原とともにアジュバントとして使用することを示す臨床試験からのデータならびにインビボで免疫応答を刺激するために本発明のサイトカイン混合物を外因性抗原とともに使用することを示すマウスおよびヒトにおける実験が記載されている。
【0153】
より具体的には、下記の実施例1には、本発明によるサイトカイン組成物のIRX−2の産生が記載されている。IRX−2の産生は、米国特許第5,632,983号および同第5,698,194号に十分に開示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0154】
下記の実施例2には、(低用量シクロホスファミド(CY)、インドメタシン(INDO)および亜鉛と組み合わせて)IRX−2で処置されたH&N SCC患者が、免疫を示すリンパ節の変化(例えば、リンパ節サイズの増大および洞組織球増殖の減少)、リンパ球による腫瘍浸潤、ならびに腫瘍の縮小および断片化をはじめとする、顕著な臨床的および病理学的応答を示した臨床試験データが開示されている。実施例4〜7は、さらなる癌患者、すなわち、リンパ腫、子宮頸癌、肝癌、および陰茎扁平上皮癌(ヒトパピローマウイルス関連)の患者に関するものであり、これらの患者は全て、本発明のIRX−2で処置され、その処置に対する顕著な臨床的応答を示した。実施例3は、これらの研究の癌患者の生存の延長(最長2年)に関するデータを提供している。
【0155】
実施例2に示すように、IRX−2による治療はまた、Tリンパ球減少患者におけるTリンパ球数の著しい増加および対応するナイーブT細胞(抗原に曝露されていない新たに生成されたT細胞)の増加をもたらした。さらに、下記の実施例8のデータによって示されるように、これらの研究で観察されたT細胞の増加は、特に、本発明のサイトカイン組成物での処置によるものであった。より具体的には、実施例8には、IRX−2のみ(CYおよび/またはINDOの投与を伴わない)によるリンパ球減少H&N SCC癌患者の治療のデータが提供されており、この治療では、リンパ球数全体ならびに特定のCD3+およびCD4+T細胞サブセット集団の有意な増加が得られた。
【0156】
同様に、実施例9のデータは、IRX−2が、形態学的基準、表現型基準および機能的基準によって測定されるような、樹状細胞の分化および成熟を促進することを示している。上述のように、樹状細胞(DC)は、抗原に対する、すなわち、抗原を適切なT細胞に提示することによる、患者の免疫において極めて重要な役割を果たすことが知られている。より具体的には、実施例9は、IRX−2が、成熟を示すDCの形態学的変化を促進することを示している。IRX−2は、DC細胞表面でのCD1a抗原発現を下方調節し、DC細胞表面でのCD83およびMHC II抗原発現を上方調製し、かつDC細胞表面でのT細胞共刺激分子ならびに接着分子(例えば、CD86、CD40、およびCD54(ICAM−1))発現を増大させることも示された。さらに、IRX−2は、(DCの成熟と一致する)DCエンドサイトーシス活性を下方調節し、(MLR活性の増加によって示されるような)DCのT細胞刺激活性を増強し、かつDCからのIL−12の産生を増大させることが示された。IL−12それ自体は、ナイーブCD4+ヘルパーT細胞の(Th1細胞への)分化ならびに免疫系の細胞成分および食細胞成分の活性化および増殖に不可欠な因子である。最後に、IRX−2は、VEGF誘導性のDCのアポトーシスを低下させることが示された。IRX−2のこの抗アポトーシス効果は、腫瘍環境内で成熟DCの生存を維持し、腫瘍抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球の持続的な抗原提示および活性化を可能にする上で極めて重要な役割を果たし得る。
【0157】
下記の実施例10のデータは、IRX−2が単球およびマクロファージの強力なアクチベーターであることをさらに示している。例えば、IRX−2は、単球/マクロファージの活性化マーカー、すなわち、HLA−DR、CD86、CD40およびCD80を顕著に増大させる。さらに、IRX−2は、TNF−αまたはLPSよりも強力な単球/マクロファージのアクチベーターであることが示され、IRX−2は、免疫抑制性サイトカインIL−10の存在下ですら細胞を活性化し続けることができた。
【0158】
下記の実施例11は、サイトカイン組成物を外因性前立腺特異的膜(PSMA)ペプチド抗原コンジュゲートと組み合わせて投与した後に、マウスにおける免疫応答を、すなわち、DTH応答および抗体応答の形態で誘発するIRX−2の能力を示している。IRX−2は、進行前立腺癌を有するヒトにおいて、コンジュゲートされていないPSMAペプチドに対するDTH応答を刺激するのにも効果的である。
【0159】
下記の実施例12はさらに、PSMA外因性抗原と組み合わせたIRX−2の有効性を示している。さらに、IRX−2を、放射線照射したPSMA発現細胞に基づくワクチンまたは合成ペプチドコンジュゲートワクチンと組み合わせて投与し、これらの抗原に対するインビボでのT細胞免疫応答を増強することができた。
【0160】
下記の実施例13はさらに、これらの抗原に対するインビボでのT細胞免疫応答を増強する際のペプチドおよび不完全フロイントアジュバントと組み合わせたIRX−2の有効性を示している。これらの実験の結果は、IRX−2を多重抗原癌ワクチンおよび細胞に基づくワクチンと効果的に組み合わせることができることを示している。
【0161】
下記の実施例14はさらに、CpG、ポリI:C、IFN−γおよび不完全フロイントアジュバントをはじめとする他のアジュバントと組み合わせたIRX−2の有効性を示している。さらに、IRX−2は、これらの他のアジュバントと組み合わせて、インビボでの抗原特異的T細胞応答および抗原特異的T細胞の細胞傷害活性を増強することができた。IRX−2は、CpG、ポリI:C、IFN−γおよび不完全フロイントアジュバントを含むワクチンの一部として含まれた場合、1回の接種として投与されたときに、抗原特異的T細胞応答を増強するのに効果的であった。
【0162】
下記の実施例15はさらに、ウイルスに基づくワクチンと組み合わせてB細胞応答およびT細胞応答を増強する際のIRX−2の有効性を示している。さらに、IRX−2は、3つ組の共刺激分子TRICOMを発現するウイルスに基づくワクチンと組み合わせて使用されたとき、B細胞応答およびT細胞応答を増強する。
【実施例】
【0163】
細胞培養に関連する工程は全て滅菌条件下で行なわれる。本明細書に記載されていない細胞免疫学の一般的な方法は、細胞免疫学の手法についての一般的な参考文献(例えば、Mishell and Shiigi(Selected Methods in Cellular Immunology,1981))に記載されている通りに行なわれ、また、これらの方法は当業者に周知である。
実施例1
【0164】
初代細胞由来生物製剤(IRX−2)の調製
【0165】
初代細胞由来生物製剤の製造方法は、一般に、米国仮特許出願第61/044,674号に記載されている。白血球をリンパ球分離培地(LSM)の上に載せ、この培地を遠心分離することによって単核細胞(MNC)を純化して夾雑細胞を除去し、自動化された細胞の処理および洗浄システムを用いて純化されたMNCを得る。その後、MNCをFEPリンパ球保存バッグで一晩保存する。MNCの誘導混合物を使い捨ての細胞培養装置中でマイトジェン、好ましくはフィトヘマグルチニン(PHA)と、シプロフロキサシンとで刺激し、初代細胞由来生物製剤をMNCから産生する。マイトジェンを濾過および接線流濾過の手法により誘導混合物から除去し、その後、誘導混合物をインキュベートする。誘導混合物を濾過により清澄化して、初代細胞由来生物製剤上清を得る。最後に、陰イオン交換クロマトグラフィーと、15ナノメーター濾過と、場合により、紫外線C(UVC)による不活化とを適用して、初代細胞由来生物製剤上清をDNAおよび外来性の作用因子から除去する。その後、将来患者に投与するために、最終産物をバイアルに入れて、保存する。
実施例2
【0166】
低用量CY(300mg/m2)、INDO(25mg、経口で1日3回)、および亜鉛(硫酸塩としての元素亜鉛65mg、経口で1日1回)による処置に加えた、頸部へのIRX−2の局所外リンパ注射により、高い割合の頭頸部扁平上皮癌患者(H&NSCC)における臨床的退縮が誘発され(Hadden,1994;Meneses,1998;Barrera,2000;Hadden,2003;Menesis,2003)、改善された無再発生存が示された。病理標本における微応答(25%〜50%)、腫瘍の収縮および腫瘍の縮小を含めて、全体として、90%超が応答を示し、大半は50%を上回る腫瘍の縮小を示した。
【0167】
これらの応答は、Bリンパ球とTリンパ球の両方が腫瘍に浸潤することが観察されたため、免疫退縮により媒介されると推測される。この治療法は、顕著な毒性を伴わなかった。IRX−2と組み合わせたリンパ球減少癌患者の処置は、著しいリンパ球の動員をもたらした。解析すると、これらの患者は、CD45RA陽性T細胞(すなわち、ナイーブT細胞(下記の表Iを参照されたい))の増加を示した。さらに、H&NSCC患者におけるIRX−2の腫瘍内注射または腫瘍周辺注射は、免疫療法誘導性の腫瘍退縮の逆転または腫瘍の進行のいずれかを引き起こした。したがって、腫瘍は免疫の部位ではない。それどころか、所属リンパ節の解析により、所属リンパ節が想定上の腫瘍抗原に対する免疫の部位であることが明らかとなった(Meneses,2003;図1〜5を参照されたい)。IRX−2で処置されたこれらの患者は誰も、臨床的に患者の15%および病理学的に50%まで予想される転移を発症しなかった。これらの結果は、単なる局所免疫ではなく全身性免疫が誘導されたことを示す。患者は、処置の前に0.1mlのIRX−2に対して皮膚試験で予備試験され、陽性の皮膚試験(24時間で>0.3mm)を示した者の90%よりも多くが、頑健な臨床的および病理学的応答を有した。陰性の皮膚試験を示した患者は、弱い応答または無応答であった。したがって、皮膚試験は良好な応答者を選別する。
【0168】
Tリンパ球数(CD3)の大きな増加(752→1020)がこれらのTリンパ球減少患者において観察された(T細胞数752対1600(正常))。重要なことに、「ナイーブ」CD45RA陽性T細胞が対応して増加した(532→782)。先に述べたように、これらの増加は、特に、IRX−2のような薬理療法では成人に生じないと一般に考えられている。これらの細胞はおそらく、胸腺遊出(thymic emigre)したばかりであり、腫瘍抗原のような新しい抗原に応答する主要な新能力と考えることができる。既存のCD45RA陽性細胞は腫瘍抗原に応答しなかった。これらの細胞は、腫瘍誘導性の免疫抑制(アネルギー)のために、そうすることができなかったのかも知れない。
【表1】

【0169】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997;Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 21:79−101,1999)は、2つの主要な型の癌であるSCCと腺癌の両方について、所属リンパ節が、洞組織球増殖と、リンパ枯渇と、しばしば(IL−2で)腫瘍細胞に反応することができる腫瘍関連リンパ球の存在とを含む、腫瘍に関連する異常を反映することを示している。転移に伴って、リンパ枯渇および機能低下が起こる。10人のH&NSCC患者の非病変頸部リンパ節の未発表の解析により、平均リンパ節サイズの減少およびH&NSCCと関連する洞組織球増殖の増加が示された(本出願の図1〜4AおよびBの対照を参照されたい)。
【0170】
1サイクルのIRX−2プロトコル(Hadden,1994;Meneses,1998;Barrera,2000)による処置の後、非病変頸部リンパ節は図1〜4に示す変化を示した。IRX−2で処置していないH&NSCC患者の所属リンパ節と比較すると、これらの節は、サイズ、T細胞の領域および密度の顕著な増加を示し、かつ洞組織球増殖および鬱血の減少を示した。処置した患者のリンパ節は全て刺激され、対照リンパ節より大きく、T細胞の領域および密度は増加した。したがって、これらのリンパ節は正常にまで回復するだけでなく、H&NSCCの生存と正に相関することが知られているT細胞優勢の証拠を示した(Hadden,1997)。
【0171】
重要なことに、B細胞およびT細胞の領域に関連するリンパ節の変化がT細胞およびB細胞の浸潤を反映する腫瘍の変化と相関する場合、T細胞(p.<0.01)およびB細胞(<0.01)および全リンパ球の存在(p.<0.001)について高度の相関関係が得られた(図5)。同様に、これらの変化は病理学的基準および臨床的基準による腫瘍の縮小と相関した。これらの発見は、腫瘍の反応がリンパ節の変化と直接にかつ正に相関すること、および腫瘍の反応が従属変数としてのリンパ節の変化を反映することを示す。これらの発見は、免疫系が一般的にどのように機能するかについての知識(Roitt,1989)、およびサイトカイン遺伝子による以下の腫瘍トランスフェクション(Maass,1995)と併せて、IRX−2プロトコルがリンパ節のレベルで内因性腫瘍抗原に対してこれらの患者を免疫することを示す。自己腫瘍抗原による免疫を反映するリンパ節の変化についての証拠はこれまで提示されていなかった。これにより、本発明が、遠隔転移の退縮をもたらす作用においてこれまで効果がなかったかまたは効果に乏しかった腫瘍抗原で免疫を誘導することができることが確認されている。
実施例3
【0172】
前述の臨床試験データ研究の臨床的、病理学的および生存のデータのさらなる分析から、自身の自己腫瘍抗原に対する癌患者の免疫および得られる腫瘍の免疫退縮に関するような本発明の性質についてのより多くの洞察が得られる。図6は、IRX−2プロトコルによる処置が、48カ月での生存の延長(p<0.01)を伴うことを示す。図7は、陽性の臨床的応答が生存と相関する、すなわち、完全応答(CR)および部分応答(PR)(>50%の腫瘍の縮小)の患者が、微応答(MR)(<50%だが、>25%の腫瘍の縮小)または無応答(NR)(<25%)の患者よりも良好な生存を示す(p<0.01)ことを示す。図8は、より強い病理学的応答(指標6〜9)の患者がより弱い病理学的応答(<6)の患者よりも良好な生存を示すことを示す(p<0.02)。図9は、単一変数としての腫瘍へのリンパ球浸潤が生存を予測する(p<0.01)ことを示す。臨床的応答と病理学的応答との関係に関するカイ二乗分析は極めて有意な関係を示し(p<0.01)、これは、この2つが互いにおよび生存と相関し、したがって、臨床的応答、免疫退縮パラメータ、および生存に相関するデータの統計的三角測量を提供することを示す。そのような関係がヒトの癌の免疫療法について示されたことはこれまでなかった。
【0173】
最後に、図10は、用量と24カ月での全体的な生存を関連付ける、本発明のIRX−2についての用量応答曲線を示す。IRX−2処置は、約100〜233国際単位のIL−2当量で生存に最適な効果を与える。
実施例4
【0174】
頭頸部のリンパ腫を有する2人の患者を上記のようなプロトコルに従って治療した。以下のスキームに従った。
【0175】
処置の前に、患者の前腕に0.1mlのIRX−2を皮下注射して皮膚試験し、その領域に印を付け、24時間後に試験を読み取った。この試験は、誘導および紅斑が3mm以上である場合に陽性とみなされた。
【0176】
症例1:
【0177】
患者は、左顎下腺領域に腫瘍が3カ月存在する既往歴を示し、他の症状はない23歳の男性であった。応急処置室で、患者は、深いレベルで一部固定された、硬質性の直径約6.5cmの左顎下三角のリンパ節腫脹を有していることが分かった。残りの身体検査は正常であった。切開生検でホジキンリンパ腫が示された。病変の病期はECIIAとされた。1サイクルのIRX−2処置が施され、リンパ節腫脹のサイズが直径1cmだけ減少する微応答が得られた。IRX−2処置の後に得られた生検報告では、病変の60%が正常なリンパ球の浸潤を示し、新生物の残り(40%)は壊死を示した。生存する腫瘍細胞は見当たらなかった。
【0178】
この後、患者は頸部に3600ラドの放射線治療を受けた。患者は、2年経って無病であった。
【0179】
症例2:
【0180】
患者は、2カ月の有痛性中頸部腫瘤、および10kgの体重減少の既往歴を示した82歳の男性である。身体検査で、患者は右口蓋扁桃に腫瘍を示し、この腫瘍は、約4×3cmまで肥大し、扁桃腺の中心に潰瘍があった。頸部で、右顎下リンパ節は約2×2cmと測定され、レベルIIおよびレベルIIIのリンパ節腫瘤は約5×5cmであった。残りの検査は正常であった。扁桃腺および頸部リンパ節の1つの切開生検で、中悪性度の明確な混合型非ホジキンリンパ腫であることが示された。
【0181】
患者は2サイクルのIRX−2を受け、サイクルの最後に扁桃腺および頸部のリンパ節腫脹に直径1cmの減少が観察された。IRX−2処置後の病理報告では、生存腫瘍が20%、腫瘍断片化および壊死が30%、ならびに正常なリンパ球浸潤が50%であることが示された。
【0182】
患者に、6サイクルの化学療法(CHOP)、次いで全用量4600ラドの外部放射線療法(RT)を施した。患者は、RTの8カ月後に後頭部に腺肥大を再発した。患者は、頸部疾患の所見が見られた3カ月後に亡くなった。
実施例5
【0183】
未処置の初期子宮頸癌を有する10人の患者(臨床病期はIB1、IB2、およびIIA)を、IRX−2の局所外リンパ注射(毎日10回の注射)と、それに続く21日目での放射線子宮摘出術で処置した。IRX2処置を開始する1日前に、患者に、単回IV用量のCYを300mg/mで投与した。INDOまたはイブプロフェンおよび硫酸亜鉛を1日目から21日目まで経口投与した。臨床的および病理学的応答、毒性ならびに無病生存率を評価した。
【0184】
患者全員がIRX−2処置を完了し、応答および毒性について評価された。臨床的応答は患者の50%に見られた(3人が部分応答(PR)、2人が微応答(MR)(>25%<50%の減少))。7人の患者が手術を受けた。病理学的に、腫瘍断片化を伴う腫瘍の縮小は5人の症例で見られた。腫瘍に浸潤する細胞型のパターンは不均一であり、リンパ球、形質細胞、好中球、マクロファージおよび好酸球が含まれた。処置は、注射時の軽度の疼痛および少量の出血とINDOに対する胃の不耐性を除いて、十分に耐えられるものであった。24カ月の経過観察で、9人の患者は無病であった。
【0185】
この研究は、IRX−2処置によって、初期の未処置の子宮頸癌における免疫媒介性の腫瘍応答が誘導されることを示している。
実施例6
【0186】
原発性肝細胞癌からの肝転移を有する2人の患者を、脾臓内IRX−2(1回または3回の注射)で処置した。プロトコルは、H&NSCC、子宮頸部、またはリンパ腫の症例について先に記載した通りであった。1人の進行性肝細胞癌患者は、断層撮影法で確認される部分応答を有した。もう一人は手術で確認される部分応答を有した。組織学的試験は、腫瘍の縮小、断片化、およびリンパ球浸潤を示した。
実施例7
【0187】
陰茎の扁平上皮癌(ヒトパピローマウイルスが関連するもの)を有する4人の患者を上記のようなIRX−2プロトコルで処置した。4人全員が臨床的に部分応答を有し、手術標本は、H&NSCC癌患者に特徴的な腫瘍の縮小および断片化ならびにリンパ球浸潤を示した。
実施例8
【0188】
IRX−2によるTリンパ球減少の矯正
【0189】
以下の実験の目的は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αという6つのサイトカイン(115ユニットのIL−2当量/日)を含むIRX−2を毎日10日間注射する処置がリンパ球減少患者のリンパ球数(LC)に与える効果を評価することであった。これらの患者は、過去の頭頸部癌の手術および放射線療法から回復し、平均数441細胞/mm3の持続性リンパ球減少を示していた。LCの正常レベルは2000細胞/mm3である。処置の時点で、患者には癌がなかった。LCを0日目と13日目に得た。Tリンパ球(CD3+)およびT細胞サブセット(CD4+またはCD8+)をサイトフルオロメトリーで評価した。表IIに、5人の応答患者のデータを示す。有意な増加は、LC、CD3+、およびCD4+T細胞について観察された。
【表2】

【0190】
これらの変化は、リンパ球減少AIDS患者においてはるかに高用量のペグ化インターロイキン2(3×10ユニットの組換えIL−2)で達成された変化(T.Merigan、私信)よりも優れているが、毒性はより低い。これらの変化は、AIDS患者において>10×10ユニット/日のIL−2を8日間注入することにより達成された変化よりは小さい。しかしながら、後者は、多大な費用、不自由を要求し、また、毒性が大きかった(Kovaks,1997)。IRX−2によるこれらの結果は、INDOおよびCYの非存在下で得られたものであり、したがって、このレジメンのLCに対する効果が本発明のIRX−2組成物の効果であることを示している。
実施例9
IRX−2は樹状細胞の成熟および活性化を刺激する:
【0191】
先の実験では、IRX−2で処置した5人のH&NSCC患者および未処置の5人のH&NSCC対照患者からのリンパ節を単離し、細胞成分を、樹状細胞の細胞表面マーカーのパネル(すなわち、CD83+、CD86+、およびCD68+)を用いてフローサイトメトリーで解析した。上述のように、洞組織球増殖は、一部の癌患者に見られるリンパ節病理であり、これは、未成熟な樹状細胞に相当する巨大な組織球がリンパ節内で蓄積することを特徴とする。図11Aに示すように、SH(SH+)患者では、リンパ節にCD68+、CD83+、CD86−のDCが蓄積しているが、目立ったSHのない患者では、CD83+細胞がほとんどない。しかしながら、IRX−2処置により、未処置の癌対照と比較して(CD68+、CD83+と同時に)CD86+DCの数が5倍増加し、「活性化」DC表現型への転換が示された。対照は、IRX−2で処置した癌患者と比較される未処置のH&NSCC患者である(図11B参照)。
【0192】
洞組織球増殖は、内因性腫瘍ペプチドを担持すると考えられる一部成熟したDCが蓄積することを表すので、共刺激受容体CD86の発現による完全な成熟および活性化により、本発明のIRX−2を用いて、成熟に関するこの欠陥が矯正され、かつT細胞への効果的な抗原提示が可能になることが示されている。したがって、本発明のIRX−2は、洞組織球増殖を逆転させ、ナイーブT細胞の効果的な免疫をもたらす。
【0193】
上記のデータおよびMenesesら(2003)に含まれる後のデータは、外リンパIRX−2、低用量CY、およびINDOを用いたH&NSCC患者の処置が、この癌および他の癌のリンパ節に現われることが多い洞組織球増殖を逆転させることを示した。しかしながら、上記の薬剤IRX−2、CY、および/またはINDOのうちのどれがこの欠陥を矯正するのかということは、このデータからは明らかでなかった。
【0194】
以下のデータは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αという6つのサイトカインを含むIRX−2が、CYおよび/またはINDOの非存在下でDCの成熟および活性化を誘導する証拠を示している。これらの実験で使用されるIRX−2は、上に列挙されたかまたは下記の表IIIに示すような6つのサイトカインを含む。これらの実験の目的のために、IRX−2濃度を、IRX−2に含まれるTNF−αの濃度として表す。TNF−αを含むIRX−2中のサイトカイン濃度をELISAで測定した。組換えTNF−αの純度は>95%である。滴定を除く全ての実験について、IRX−2を1ng/mlの濃度で使用した。
【表3】

【0195】
使用した培地は、2mMのL−グルタミン、50μg/mlのストレプトマイシン、50U/mlのペニシリンおよび10%のFBSを補充したRPMI 1640であった(全ての試薬をCellgro,Herndon,VAから購入した)。GM−CSF、TNF−αおよびVEGF165は、Peprotech(Rocky Hill,NJ)から購入した。X−VIVO 10は、BioWhittaker(Walkersville,MD)から購入した。LPSは、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。製造者の指示に従って高感度のカブトガニ血球抽出物アッセイ(LALアッセイ;BioWhittaker)を用いて、全ての試薬をエンドトキシン汚染について検査し、陰性であることが分かった。全ての溶液は、最小検出限界の0.06EU/ml未満しか含まないことが分かった。さらに、全てのプラスチック製品は、パイロジェンフリーであった。
【0196】
これらの実験で使用されるPBMCを、フィコール−ハイパック遠心分離(Cellgro,Herndon,VA)を用いる遠心分離によって、健康ドナーの白血球濃縮バフィーコート30mlから得、低密度画分を42.5〜50%界面から回収した。細胞を培養培地に再懸濁し、6ウェルプレート(Costar,Cambridge,MA)に接着させた。37℃で2時間後、非接着細胞を洗浄により除去し、接着細胞(約90%がCD14+細胞、すなわち、単球)を、50ng/mlのGM−CSF(500U/ml)および50ng/mlのIL−4(500U/ml)を補充した3mlの培地中で培養した。
【0197】
表面マーカー解析のために、以下の蛍光色素コンジュゲートmAb(全てBD Pharmingen,San Diego,CA製)を使用した:CD86−PE、CD80−FITC、CD54−APC、CD83−PE、HLA−DR−FITC、CD1a−APC、CD40−FITCおよび適切なアイソタイプ対照。FACSを用いて免疫表現型の解析を行なった。細胞(0.25×10個)を2%のFBSおよび0.1%のNaN3を補充したPBS(FACS洗浄バッファー)で洗浄し、APC−、PE−、もしくはFITC−コンジュゲートmAbまたは対応するアイソタイプ一致mAbとともに室温で30分間インキュベートした。FACS洗浄バッファー中で洗浄して余分なmAbを除去した。結果を、平均蛍光強度または特定の抗原を発現する細胞のパーセンテージのいずれかとして表した。10,000事象を取得した後、FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences,Rockville,MD)で蛍光解析を行ない、BD Biosciences CellQuestソフトウェア(Rockville,MD)を用いて解析した。
【0198】
図12に示すように、本発明のIRX−2組成物は、DC成熟の重要なマーカーであるCD83抗原を有するDCの数を増加させた。より具体的には、接着性PBMCを上記のようにGM−CSFおよびIL−4の存在下で7日間培養し、その後、増加量の組換えTNF−α(PeproTech)またはIRX−2のいずれかで刺激した。48時間後、細胞を洗浄し、CD83発現についてフローサイトメトリーで解析した。図12は、CD83+細胞の増加から明らかなように、IRX−2がDC成熟を誘導する活性があることを示している。さらに、IRX−2は、DC成熟を誘導する活性が等用量のTNF−αのみよりも大きかった。図12のデータは、5回の個別の実験の平均−/+SEMとして表されている(p<0.0001、ANOVAによる)。
【0199】
これらのデータは、IRX−2がDCの成熟を促進し、かつDC成熟に作用することが知られている、IRX−2混合物に含まれるどの単一のサイトカインでも説明できないような形でDCの成熟を促進することを示している。例えば、PBMCの通常のインビトロ分化には、100〜500U/mlのGM−CSF(約10〜50ng/ml)および500〜1000U/mlのIL−4(50〜100ng/ml)の存在が必要とされる。これにより、DC系統に分化しているが、比較的未成熟な状態にある(低い/中程度のCD86、CD40、HLA−DR発現、CD83は未発現)細胞の集団が生成される。未希釈のIRX−2は検出不可能な量のIL−4を含み、かつDCのインビトロ分化に必要とされるよりも10〜50倍低い濃度のGM−CSF(約1.1ng/ml)を含む。したがって、IRX−2中の個々のIL−4およびGM−CSFサイトカインは、図12の培養で産生されるCD83+細胞を説明するものとはなり得ない。
【0200】
TNF−αは、そのような細胞を誘導することができるが、本発明のIRX−2に含まれる濃度をはるかに上回る濃度でしか誘導できない(図12参照)。例えば、(インビトロで数日間のGM−CSF+IL−4によって)樹状細胞系統に最初に分化させた後、「危険信号」(例えば、病原性因子(例えば、LPS)に由来するもの)を後から添加することによって、CD86、CD40、HLA−DRの高/強発現、およびCD83の存在を含む、完全に成熟した樹状細胞表現型が誘導される。20〜50ng/mlの範囲のTNF−αは、そのような病原性因子に由来する危険信号を大部分模倣し、同じマーカーの上方調節をもたらすことができる。しかしながら、未希釈のIRX−2混合物は、完全なDC成熟に必要とされるTNF−α濃度をはるかに下回る、平均2.8ng/mlのTNF−αしか含まない。したがって、図12に示す結果は、この実験で使用されるTNF−α当量濃度では、IRX−2によるCD83マーカーの誘導をIRX−2混合物にTNF−αが存在することのみのせいにすることができないことを明白に示している。
【0201】
DCが未成熟細胞から成熟細胞へと進むにつれて、明確な形態学的変化を遂げることが知られているので、IRX−2処理によって細胞の形態が変化するかどうかを明らかにするために、未成熟DCをIRX−2で処理した。より具体的には、接着性PBMCを上記のようにGM−CSF(500U/ml)およびIL−4(500U/ml)の存在下で4日間増殖させ(この処理により未成熟DCが得られることが知られている)、次に、IRX−2で処理するかまたは対照として処理しないで維持するかのいずれかにした。3日後、細胞をライト染色および検鏡で可視化した。図13に示すように、IRX−2で処理した細胞(図13B)は、成熟DCの特徴的な細胞突起と運動性を示し、細胞突起および細胞膜(veil)を連続的に伸縮させた。これらの細胞は、未処理対照と比較して、巨大で不規則な形の核、多数の小胞、比較的少ない細胞質顆粒、および顕著でかつ多数の細胞突起を有していた(図13A)。したがって、IRX−2処理は、典型的な成熟DCの形態を有するDCを生じさせた。
【0202】
さらに、未成熟DCから成熟DCへの原型的な移行が、特定の細胞表面抗原のよく特徴付けられている増加および減少をもたらすことが知られている。例えば、未成熟DCは高レベルのCD1aを発現しており、刺激(例えば、サイトカインまたは細菌産物)に直面すると、このマーカーが下方調節される。したがって、IRX−2処理が、DCの活性化および成熟と関連する細胞表面マーカーの獲得または喪失をもたらしたかどうかを明らかにするために、GM−CSFおよびIL−4で処理した接着性PBMC(単球)(上記)を7日間培養し、その後、IRX−2とともにまたはIRX−2なしで、48時間インキュベートした。CD1a、HLA−DR、CD86、CD40およびCD54の発現をフローサイトメトリーで調べ、平均蛍光強度として表した。
【0203】
図14のヒストグラムによって示されるように、未成熟DCのIRX−2処理(ヒストグラム中の実線で示したもの)は、CD1a発現の下方調節(147対62)およびMHCII発現の上方調節(455対662)をもたらした。さらに、IRX−2処理は、細胞のサイズの増大および粒度の減少をもたらした(データは示さない)。未処理対照は、各ヒストグラム中の破線で示されている。未処理DCの平均値は、パネルの左上隅に示されている。IRX−2で処理したDCのそれぞれの値は、右上隅に示されている。示したヒストグラムは代表的な実験からのものであり、値は、少なくとも10回の個別の実験の平均の結果を表す(=p<0.05、**=p<0.002、***=p<0.00005、対応スチューデントt検定)。図14によってさらに示されるように、IRX−2処理は、共刺激表面分子CD86(別名B7−2)(193対390)、CD40(46対75)、およびCD54(別名、細胞内接着分子1またはICAM−1)(1840対3779)の発現を増強した。これらの表面マーカー発現の変化は全て、本発明のIRX−2がDC活性化の強力なエフェクターであることを示している。
【0204】
抗原提示細胞としてのその役割と一致して、未成熟DCは、高いエンドサイトーシス活性を有し、活発に抗原を取り込む。成熟すると、この活性は下方調節され、そしてすぐに、DCは抗原のプロセッシングおよび提示に関与する。生理的条件下では、APCエンドサイトーシスの下方調節は、表面上のペプチド/MHC複合体の増加を伴い、T細胞刺激の増強をもたらす。エンドサイトーシスに対するIRX−2の影響を検討するために、DCを増加量のIRX−2とともにインキュベートし、FITC−デキストランを内在化する能力を決定した。より具体的には、接着性PBMC(単球)をGM−CSFおよびIL−4(上記)で4日間処理し、その後、TNF−α(1μg/ml)または1ng/ml TNF−α相当までの増加濃度のIRX−2(IRX−2)で刺激した。18時間後、細胞をFITC−デキストラン(Sigma,St.Louis,MO)とともにインキュベートした。FITC−デキストランは最終濃度1mg/mlまで添加した。細胞を37℃で30分間培養した。インキュベーション後、細胞を氷冷したPBSで4回洗浄し、上記のようにフローサイトメトリーで解析した。
【0205】
図15に示すように、IRX−2とともにインキュベートした未成熟DC(黒丸)は、用量依存的にエンドサイトーシスを下方調節した。IRX−2中に見られる対応する用量でのTNF−α処理(白丸)は最小限の効果を示した。より大量のTNF−α(10〜25ng/ml)で未成熟DCを処理すると、予期された通り、エンドサイトーシス活性の下方調節がもたらされた(データは示さない)。図15のデータは、刺激したDCと刺激していないDCの平均蛍光強度のパーセンテージとして示されており、これは、4回の独立した実験の平均−/+SEM(p<0.00001、ANOVAによる)である。これらの実験は、本発明のIRX−2によって、DC成熟を示すDCのエンドサイトーシス活性の下方調節が生じることを示している。
【0206】
次に、DCのT細胞刺激能を増強するIRX−2の能力を評価した。活性化した成熟DCは、ナイーブT細胞の強力なスティミュレーターである。IRX−2処理が機能的効果ならびに上述の表現型変化および形態学的変化に変換されることを示すために、DCのT細胞刺激能に対するIRX−2の影響を混合リンパ球反応(MLR)増殖アッセイで評価した。
【0207】
より具体的には、接着性PBMC(単球)をまずGM−CSFおよびIL−4(上記)で7日間処理し、その後、IRX−2を用いてまたはIRX−2を用いずに刺激した。48時間後、IRX−2処理したDCまたはIRX−2処理していないDCを回収し、次のようにMLRでアッセイした。純化したDCを無関係なドナー由来の1×10個のT細胞と、1:5、1:10、1:30、および1:100のDC:T細胞の比で共培養した。フィコール−ハイパック勾配遠心分離によってバフィーコートから純化したPBMCをナイロンウールカラムに通して、同種異系T細胞を調製した。3つ複製して丸底96ウェルプレート中でアッセイを行なった。MLRアッセイの間は、IRX−2は存在しなかった。DC−T細胞共培養の5日後、これらのウェルにBrDUを18時間パルスした。比色BrDU取込みアッセイ(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を用いて、BrDUの取込みを測定した。
【0208】
図16に示すように、共培養の2日前にIRX−2に曝露されたDC(黒四角)は、未処理のDC(白丸)よりもT細胞増殖応答を誘導するのが強力であり、これにより、IRX−2処理したDCは機能的に適格であることが確認された。図16のデータは、((o.d.DCで刺激されたT細胞−o.d.DCのみ)/o.d.休止T細胞)−/+SEMとして定義される刺激指数として表されており、かつ4回の個別の実験の平均の結果である(p<0.05、ANOVAによる)。
【0209】
これらの共培養ではIRX−2は存在せず、観察されたT細胞刺激の増大は、IRX−2のT細胞に対する直接的な効果ではなく、IRX−2のDCに対する刺激効果によるものであったことに留意することが重要である。したがって、本発明のIRX−2は、同種異系MLR反応における増殖の増強によって示されるように、DCのT細胞刺激活性を増強する。さらに、IRX−2は、ICAM−1(CD54)の発現を増大させることが上で示された。この細胞表面アクセサリーリガンドは、LFA−1を介するシグナル伝達に関与することが示されており、また、このリガンドは、Th1表現型への偏りをもたらす(Rogers,2000)。癌の状況では、これらの効果の機能的結果は、IRX−2処理したDCが、T細胞応答をTh1表現型に偏らせ、腫瘍特異的CTL活性の活性化に有利に働き、それによって腫瘍拒絶を促進するということである。
【0210】
本発明者らのデータは、IRX−2がDCからのIL−12の産生を刺激することも示している。IL−12は、感染期に病原体に応答したDCによって分泌される強力なTh1極性化サイトカインである。しかしながら、腫瘍拒絶を仲介する際のDCの最も重要な役割のうちの1つは、Th1に偏った抗腫瘍T細胞応答を効果的にかつ効率的に刺激することであり、この応答を導く際に極めて重要なサイトカインのうちの1つがIL−12である。IL−12は活性化DCによって産生され、また、ナイーブCD4+ヘルパーT細胞のTh1細胞への分化に関与する必須因子である。Th1細胞は、IFN−γおよびIL−2を分泌し、これらのサイトカインはIL−12とともに、免疫系の細胞成分および食細胞成分(例えば、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL))の活性化および増殖を媒介する。
【0211】
IRX−2がDCにおけるIL−12産生を誘導することができるかどうかを明らかにするために、GM−CSF/IL−4で培養した単球をIRX−2で18時間刺激し、細胞内IL−12 p70産生についてアッセイした。より具体的には、接着性PBMCをGM−CSFおよびIL−4(上記)中で4日間増殖させ、その後、IRX−2もしくはLPSを用いてまたはこれらを用いずに18時間処理した。ブレフェルジンA(BFA;10μg/ml;Sigma,St.Louis,MO)を最後の4時間添加して、サイトカインの大半をゴルジ複合体に蓄積させた。細胞を固定し、製造者の指示に従って、Fix and Perm(Caltag,Burlingame,CA)を用いて透過処理し、その後、IL−12 p70(BD Pharmingen,San Diego,CA)に対するFITC標識mAbまたは適切なアイソタイプ対照(BD Pharmingen,San Diego,CA)で標識した。細胞をフローサイトメトリーで解析した。
【0212】
図17Aに示すように、IRX−2は、IL−12を産生するDCのパーセンテージを平均4.5%陽性から22.5%に増大させた。DCにおけるIL−12産生のスティミュレーターであるLPSを陽性対照として使用し、IRX−2と比べて同様のレベルの誘導が生じた(27%±11)。図17Aのデータは、4回の独立した実験の平均であり、IL−12陽性の細胞染色のパーセンテージ−/+SEM(p<0.05、スチューデントのt検定)として表されている。IL−12の細胞内産生の増大が生体活性IL−12の分泌の増大と対応していたことを確認するために、(上記のようなGM−CSFおよびIL−4で最初に4日間培養し、IRX−2とともに48時間インキュベートした)IRX−2処理DCの上清における生体活性IL−12の濃度を、生体活性p70ヘテロ二量体を検出する市販のELISAキット(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて測定した。その結果、図17Bに示すように、IRX−2への曝露から48時間後、DC上清は、対照処理したDCよりも有意に多くの生体活性IL−12を含んでいた。図17Bのデータは、6回の独立した実験の平均(−/+SEM)(p<0.05、スチューデントのt検定)である。
【0213】
最後に、本発明者らのデータは、IRX−2が、DCにおけるVEGF誘導性のアポトーシスを低下させることを示した。VEGFはDC成熟のインヒビターであり、成熟中のDCにおけるアポトーシスレベルを増大させることが示されている。IRX−2がVEGFの効果を緩和することができるかどうかを明らかにするために、DCをIRX−2とともにまたはIRX−2なしでVEGFで処理し、アネキシンV−FITC結合によりアポトーシスのレベルを決定した。より具体的には、接着性PBMCをGM−CSFおよびIL−4で7日間処理し、その後、IRX−2とともに(1:3)またはIRX−2なしで、VEGF(100ng/ml)の存在下または非存在下で、さらに2日間インキュベートした。細胞を回収し、氷冷したPBS中で2回洗浄し、アネキシン結合バッファー(BD Pharmingen,San Diego,CA)に再懸濁した。アネキシンV−FITC(BD Pharmingen,San Diego,CA)およびヨウ化プロピジウムを添加し、細胞を4℃で30分間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリーで解析した。
【0214】
図18に示すように、アポトーシスレベルは、対照と比較してVEGF処理した細胞で増大した。しかしながら、IRX−2は、VEGF処理した細胞におけるアポトーシスのレベルを低下させた。図18のデータは4回の独立した実験の結果であり、アネキシンV−FITC陽性の細胞染色のパーセンテージ(−/+SEM)として表されている。このデータは、IRX−2が、その刺激能に加えて、成熟DCに対する防御効果も有することを示唆している。さらに、欠損したDC機能と数は、腫瘍による異常なVEGF発現によって一部媒介され得る(Gabrilovich,1996b;Saito,1999;Takahashi,2004)。腫瘍によるVEGF産生は、H&NSCC、肺癌、胃癌、および骨肉腫をはじめとするいくつかの癌における不良な予後の予測因子であることが示された(Gallo,2001;Kaya,2000;Miyake,1992;Saito,1998;Smith,2000)。本明細書に含まれるデータは、IRX−2が、VEGF媒介性のDCのアポトーシスを逆転させ、それによって腫瘍環境内での成熟DCの生存を促進し、かつ腫瘍抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球の持続的な抗原提示および活性化を可能にすることができることを示している。
【0215】
DCを用いたこれまでの研究では、エクスビボで産生されるDCに基づく癌ワクチンに使用されるDCを成熟させるために、単球馴化培地(MCM)などの天然サイトカイン混合物またはTNF−α、IL−1β、IL−6、およびPGE2を含む組換え炎症性サイトカインの混合物が利用されている(Romani,1996;Bender,1996;Sorg,2003)。IRX−2と他の研究で使用されるサイトカイン混合物の極めて重要な違いは、この研究で使用されるサイトカインのレベルが10〜100倍低いことであり、これは、IRX−2の特有のサイトカイン成分同士の顕著な相乗作用を示唆する。さらに、これらの他の混合物によって成熟させたDCの使用に関しては大きな問題がある。例えば、TNF−α、IL−1β、IL−6、およびPGE2の存在下で成熟したDCは、IL−12を少ししか産生しないかまたは全く産生せず、不適切に活性化された場合、寛容原性となり得る(Steinman,2002;Langenkamp,2000)。さらに、エクスビボで生成された完全に成熟したDCが「使い果たされる」可能性があり、効果的なT細胞応答を効率的にプライミングすることができないという懸念がある(Kalinski,2001)。エクスビボ法によって成熟させたDCで処置した患者に見られる低い臨床的応答レベルは、これらの懸念を支持する(Holtl,2002;Schuler−Thurner,2002;Thurner,1999)。
【0216】
本明細書で提示した証拠により、IRX−2が樹状細胞の強力なアクチベーターであることが確認される。このデータは、IRX−2のT細胞に対する既知の効果(Hadden,1995b)と組み合わせて、IRX−2が癌患者に見られるAPCとT細胞の欠陥を克服することができることを示唆し、出願人の臨床試験で見られる、成功した臨床転帰の機序を説明するものである。DCは現在、癌を標的とした免疫療法における主役として認められているが、免疫系の単一の要素を個別に操作すること(例えば、腫瘍特異的T細胞ワクチン接種戦略または腫瘍抗原でパルスしたDCだけを再導入すること)は、患者の顕著な臨床的改善をもたらさないことがますます明らかになってきている(Ridgway,2003;Rosenberg,2004)。より有益な治療計画は、いくつかの協調して働く細胞型(例えば、T細胞およびDC)の活性を同時に増強して、相互作用を強化し、機能的カスケードが、腫瘍の様々な免疫抑制戦略によって遮断されるのではなく、持続される可能性が高くなることを可能にすることであり得る。この状況において、本発明のIRX−2は、腫瘍抗原をロードした内在性DCと腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞の両方を刺激し、効果的な免疫応答と腫瘍拒絶をもたらすように作用している可能性がある。まとめると、これらの結果は、本発明のサイトカイン組成物が、内因性腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する強力な臨床的ツールであり得るか、または癌ワクチンの設定で外から添加される腫瘍抗原と併せて使用され得ることを示している。
実施例10
IRX−2は単球/マクロファージ活性化を刺激する
【0217】
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含む本発明のIRX−2は、単球/マクロファージの強力なアクチベーターでもある。より具体的には、接着性PBMC(約90%の単球)をX−VIVO 10培地(BioWhittaker Bioproducts)中で一晩増殖させ、IRX−2(1:3の最終濃度)で24時間刺激し、活性化マクロファージの表面に通常見られる様々な活性化マーカーの発現についてフローサイトメトリーでアッセイした。対照として、細胞をIRX−2を欠く培地中で24時間インキュベートした。図19に示すように、IRX−2を用いる細胞処理とサイトカインを添加しない細胞処理によって、HLA−CR、CD86、CD40およびCD80(全て単球/マクロファージの活性化マーカーである)が陽性の細胞染色のパーセンテージの有意な増加(図19A)とHLA−CR、CD86、CD40およびCD80の平均蛍光指数(MFI)の増加(図19B)(p<.03)がもたらされた。図19に示すデータは、3回の独立した実験/3人の独立したドナーからの平均値+/−SEMを表す。
【0218】
さらに、本発明のIRX−2はTNF−αを上回る程度に単球を活性化することが分かった。より具体的には、接着性PBMCをIRX−2(IRX−2)(1:3の最終濃度;約1ng/ml TNF−α)またはTNF−α(10ng/ml)のいずれかで刺激し、活性化マーカーの発現についてフローサイトメトリーでアッセイした。図20に示すように、IRX−2は、TNF−αよりも統計的に大きいHLA−DR、CD86、CD40およびCD80の発現を誘導した(p<.03)。図20に示すデータは、3回の独立した実験/3人の独立したドナーからの平均値+/−SEMを表す。
【0219】
同様に、少ない用量のLPS(活性化するが、最大限ではない)を用いて行なわれた研究もまた、IRX−2が比較的強い活性化シグナルであることを示した。より具体的には、接着性PBMCを、IL−10(5ng/ml)の非存在下または存在下において、IRX−2(IRX−2)(1:3の最終濃度)またはLPS(10ng/ml)のいずれかで刺激し、活性化マーカーの発現についてフローサイトメトリーでアッセイした。図21に示すように、IRX−2は、LPSよりも大きい単球/マクロファージ成熟マーカーHLA−DR、CD86、およびCD40の発現の増大をもたらした。さらに、免疫抑制性サイトカインのIL−10の存在下において、IRX−2が依然として単球を刺激することができたのに対し、LPSは単球を刺激することができなかった(p<.02)。図21に示すデータは、3回の独立した実験/3人の独立したドナーからの平均値+/−SEMを表す。
【0220】
最後に、単球は、活性化シグナルに応答してTNF−αを分泌し、この分泌が、単球/マクロファージの非特異的殺活性と関連することが知られている。図21に示すデータは、本発明のIRX−2が単球からのTNF−αの産生を刺激し、IL−10の免疫抑制効果を克服することを示している。より具体的には、接着性PBMCを、IL−10(5ng/ml)の非存在下または存在下において、IRX−2(IRX−2)(1:3の最終濃度)またはLPS(10ng/ml)のいずれかで刺激し、TNF−α産生について細胞内染色およびフローサイトメトリーでアッセイした。図22に示すように、IRX−2は、LPSまたは対照よりも大きいTNF−α産生の増大をもたらした。IL−10の存在下において、IRX−2が依然として単球を刺激し、TNF−αを産生することができたのに対し、LPSはもはや単球を刺激し、TNF−αを産生することができなかった(p<.05)。図22に示すデータは、5回の独立した実験/5人の独立したドナーからの平均値+/−SEMを表す。
実施例11
【0221】
以下に詳述する実験は、本発明のIRX−2組成物が外因性抗原との組合せで作用し、マウスにおいて抗原に対する改善された免疫応答(細胞に基づくものと抗体に基づくものの両方)を誘発する能力を示している。
【0222】
外因性腫瘍抗原の投与
【0223】
マウス:
【0224】
この手順は、オボアルブミン(OVA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のいずれかにコンジュゲートした、PSMA(LLH&ALF)の予測されるT細胞エピトープに基づく前立腺特異的膜抗原(PSMA)ペプチド(100μg@)でマウスを免疫することであった。単離された非コンジュゲートペプチドを用いた過去の試みはマウスにおいて不成功に終わった。低用量CY(400μg/マウス)を投与した後、IRX−2(0.1ml)を単回免疫として両方のコンジュゲート抗原とともに投与し、その後、抗原なしでIRX−2(0.1ml)を9日間毎日注射し、一方、CpG、ミョウバン、またはRIBI−Corixaアジュバントを単回一次免疫としてOVAコンジュゲートとともに投与した。21日目と28日目に、各マウス群に対して、2回の追加免疫(上記のようなコンジュゲート+アジュバント)を施した。最後の追加免疫から9日後に、T細胞ペプチドに対するDTH反応を測定し、15日目〜21日目の屠殺時に血清を採取した。
【0225】
図23は、抗原刺激として、個々のALFおよびLLHペプチド(10μg@)を使用した、すなわち、コンジュゲートを使用しない、マウスの皮膚試験のDTH結果を示している。図によって示されるように、IRX−2は、両方のコンジュゲートによる免疫の後、また、OVAコンジュゲートについては、ミョウバンとともに投与されたときに、抗原に対する顕著なDTH応答を誘導する。ミョウバン、RIBI−Corixa、およびCpGは、活性をほとんど示さなかった。
【0226】
血清抗体の結果:
【0227】
血清を示されたように希釈し、ペプチド(ALFもしくはLLH)またはオボアルブミンのいずれかをコーティングしたマイクロプレートのウェルに添加した。結果を5つのマウス群についての平均OD405として表す。データを下記の表IVに示す。
【0228】
より具体的には、IRX−2と組み合わせたKLHコンジュゲートで免疫したマウスは、オボアルブミン抗体が陰性であったが、ペプチドが陽性であった。OVAコンジュゲートとIRX−2とで免疫したマウスは、OVAとペプチドの両方の抗体が陽性であったが、OVAコンジュゲート+CpGで免疫したマウスは、OVAのみが陽性であった。これらの結果は、IRX−2が、ペプチドに特異的なDTHとIgG応答の両方を刺激するコンジュゲートPSMAペプチドの能力を増強する際にアジュバントとして作用するが、ミョウバン、RIBI−Corixa、およびCpGのような他のアジュバントは、活性がなかったかまたは活性が乏しかったことを示している。
【表4】

【0229】
上記の結果を確認し、かつ本発明のIRX−2組成物が、若いマウスと年老いたマウスの両方においてT細胞特異的免疫応答を増強することを示すために、追加の実験を行なった。下記の実験では、以下の方法および材料を用いた。
【0230】
試薬:
【0231】
前立腺特異的膜抗原ペプチド(ペプチド1:Leu−Leu−His−Glu−Thr−Asp−Ser−Ala−Val(SEQ ID No.:1);ペプチド2:Ala−Leu−Phe−Asp−Ile−Glu−Ser−Lys−Val(SEQ ID No.:2))は、BioSynthesis Inc.(Lewisville,Tx)により合成された。オボアルブミンおよびシクロホスファミドはSigmaから、KLHはPierce Biochemicalsから入手した。RASとも呼ばれるRIBIアジュバント系(R−700)は、Corixaから購入し、ミョウバン(各40mg/mlの水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム)は、Pierce Chemicalsから購入した。RASは、モノホスホリル脂質A(0.5mg)および合成トレハロースジコリノミコラート(0.5mg)と、44μlのスクアレンおよびTween−80とからなっていた。CpGオリゴヌクレオチド(マウス特異的配列)は、BioSynthesisにより合成された。CpG配列は、TCCATGACGTTCCTGACGTT(SEQ ID No.:3)であり、かつホスホチオナート誘導体であった。マウスにおけるCpGの生体活性は、マウス脾臓細胞の増殖およびマウス接着細胞によるTNF−αの産生を測定することによって確認された(データは示さない)。
【0232】
IRX−2(本明細書ではIRX−2とも呼ばれる)は、PHAおよびシプロフロキサシンでヒト末梢血単核細胞を刺激した後、24時間にわたって産生される規定のサイトカイン混合物である。PHAは、サイトカインを含む上清を回収する前に除去される。2つのウイルス除去工程が後の処理に含まれる(イオン交換および二重ナノ濾過)。バイオアッセイとELISAの両方によるサイトカインレベルの測定を含む厳しいQC検査により、IRX−2(IRX−2)の一貫性が保証される。滅菌性、DNA、マイコプラズマ、エンドトキシンに関する安全性検査ならびにCMVおよびEBVのウイルス検査も、このプロセスの一部である。IRX−2のいくつかのロットをこれらの研究中に使用した。IRX−2(IRX−2)のロットに含まれるいくつかのサイトカインのレベルを下記の表Vに掲載する。表中、は、これらの研究で使用した5つのロットのIRX−2についての平均サイトカインレベルを表し、**は、全てのロットで測定したレベルではなく、一番最近のロットのみについてのレベルを表す。pg/mlの範囲で存在するさらなるサイトカインとしては、G−CSF、IL−12、およびIL−10が挙げられる。Th2にバイアスをかける典型的なサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−7およびIFN−α)は存在しない。2つのロットを同じ実験で試験したとき、それらの活性は常に類似していた(データは示さない)。
【表5】

【0233】
抗原ペプチドのコンジュゲーション:
【0234】
上記のペプチド1および2を、担体分子(例えば、上記のようなオボアルブミンまたはKLH担体)にコンジュゲートした。両方のペプチドを、各々の担体に、すなわち、単一の作用物質としてコンジュゲートした。例えば、これらの研究で使用されるOVA−PSMAコンジュゲートまたはKLH−PSMAコンジュゲートは、担体分子に連結された両方のペプチドを含んでいた。これらのペプチドを、カルボジイミド法(ODC;Pierce EDCキット 77502,Rockford,Ill)を用いて、それぞれの担体にコンジュゲートした。初期の研究では、グルタルアルデヒド(Sigma,St.Louis,Mo)を利用したが、これら2つの方法に免疫原性の違いはなかった(データは示さない)ので、後の研究では、より制御された方法として、カルボジイミドカップリングを選んだ。Sephadex精製カラムからの画分中でOD280と215を測定することにより、コンジュゲーションを特徴付けた。カラムからの280ODのピークはオボアルブミンまたはKLHコンジュゲートを表し、これをコンジュゲートとして回収した。投与量は、カラムから回収されたときの担体濃度を基にした。OD215をモニタリングすると、遊離ペプチドを表すテーリングピークが示され、コンジュゲーション手順において余分なペプチドが存在するという確認が得られた。
【0235】
免疫:
【0236】
Balb/cマウスを、Charles RiverまたはHarlanのどちらかから購入し、Cold Spring Harbor Animal Facility(CSHL)が世話をした。手順は全て、CSHLのALAC委員会によって承認された。いくつかの実験では、IRX−2処置の3日前に、シクロホスファミド(400または2000μg/100μl、IP)を注射した。後の研究で、シクロホスファミドには、マウスにおける応答のIRX−2(IRX−2)増強に対して統計的に有意な効果がないことが示された(データは示さない)。免疫を以下のように行なった。所属リンパ節への速やかな流入をもたらすために、100μlのアジュバント(例えば、IRX−2もしくはミョウバン)とともに100μgのPSMAコンジュゲートを含む200μl/マウス、またはPBSを尻尾の付け根に皮下注射した。一次免疫の後には必ず、9回の追加のIRX−2(100μl=6〜8IUのIL−2当量)注射を(2、3、4、5、8、9、10、11、および12日目に)行なった。ミョウバンまたはRIBIとは異なり、IRX−2(IRX−2)を同じ部位に繰り返し注射しても、その部位での大きな炎症は生じなかった(未発表の観察結果)。DTH活性を評価する前に、コンジュゲート+アジュバントで2回の追加免疫(14日目と28日目)を行なった。追加免疫ではさらなるIRX−2を投与しなかった。
【0237】
若いマウスにおける比較アジュバント研究では、RAS(R−700=スクアレン/Tween 80中のMPL+TDM)を(推奨されるプロトコルの通りに)1mlのPBSで再構成し、その後、1mlのコンジュゲート(1mg/ml)と混合した。ミョウバンを抗原と1:1で混合した。CpGオリゴヌクレオチドを、マウスについて公表されているプロトコル(マウス1匹当たり20μgのCpGと100μgのコンジュゲート)の通りにコンジュゲートと混合した。
【0238】
DTHアッセイ:
【0239】
DTHアッセイのためのインビボ抗原刺激は、2種のPSMAペプチドの混合物(担体を含まない)(20μl中100μg)または担体のみ(オボアルブミンもしくはKLH)(20μl中50〜100μg)のいずれかによるものであった。追加免疫の9日後、マウスに対して、左足蹠に刺激抗原を、右足蹠にPBSを皮下注射した。24時間後、デジタル読取り式キャリパー(Preisser DIGI−MET Model 18314,Stofiting Co.,Wooddale,IL)を用いて、右足蹠および左足蹠の厚さを測定した。左足蹠の厚さ(実験応答)から右足蹠の厚さ(ベースライン)を差し引くことにより、腫れ応答を算出した。データを個々のマウスの腫れおよび平均+/−平均の標準誤差として表した。統計分析はスチューデントのt検定またはANOVAによった。
【0240】
抗原/マイトジェン誘導性のサイトカイン産生および測定:
【0241】
これらの研究のために、追加免疫の14〜21日後に脾臓を摘出し、ワイヤースクリーンに通して分散させることにより単離した。脾臓細胞を取り出し、それらをプラスチックに90分間接着させておくことにより、接着細胞を得た。単離された接着細胞をプールし、その後、さらなる抗原提示細胞を得るために、培養物に添加した。1ウェル当たり約6×10個のリンパ球に2×10個の接着細胞を添加した。
【0242】
抗原またはマイトジェン誘導性のリンパ球活性化によるサイトカイン放出を、R&D Systems(Minn.,MN)製のDuo−Sets ELISA試薬を用いて上清中で測定した。抗原で刺激した細胞から上清を回収するのに最適な日は6日目であったが(IFN−γの場合)、PHAで刺激したIL−2産生は3日目に最適であった(データは示さない)。
【0243】
オボアルブミンおよびペプチドに対する血清抗体:
【0244】
屠殺時の血清を後にELISAアッセイで使用するために凍結させた。ELISAプレート(Immunolon−4,Nunc,Denmark)に、対象となる抗原(オボアルブミン、KLH、コンジュゲートまたは個々のペプチド)を一晩コーティングした。ブロッキングし、洗浄したウェルに血清の希釈液を添加し、一晩インキュベートした。抗マウスビオチンおよびビオチン−アルカリホスファターゼ(Southern BioTech,Birmingham,AL)を順次添加し、pNPP基質を添加した後、ODを測定し、血清の希釈に対してプロットした。
【0245】
以下に詳述するようなこれらの研究の結果は、本発明のIRX−2が、若いマウスと年老いたマウスの両方における腫瘍抗原特異的免疫応答をインビボで刺激することを示している。より具体的には、下記の実験において、インビボDTH(遅延型過敏症)アッセイをT細胞活性化の指標として利用した。癌抗原に対するDTH応答は、動物モデルおよび臨床試験において腫瘍の消失とよく相関し、したがって、T細胞免疫応答のインビボ関連因子として有用である(例えば、Stuart,1987;Sweat,1998を参照されたい)。本実験により示されるように、本発明のIRX−2組成物は、若いマウスにおけるT細胞免疫応答をインビボで刺激する際に、前立腺特異的腫瘍抗原とともにアジュバントとして作用する。さらに、本実験は、IRX−2が、若いマウスにおいてT細胞ペプチドに対する免疫応答を増大させるだけでなく、T細胞が損なわれた年老いたマウスにおいてT細胞免疫応答を回復させることも示した。したがって、以下に詳述する実験では、年老いたマウスを、免疫機能障害、すなわち、マウスとヒトの両方で起こる加齢関連の免疫機能低下のモデルとして用いた。さらに、この免疫機能障害は、ヒトにおいて年齢の増加とともに起こる癌発生の増加の主な理由であると考えられている。
【0246】
若いマウスにおけるペプチド特異的DTH応答のIRX−2増強:
【0247】
上記のようなOVA−PSMAまたはKLH−PSMAコンジュゲートのいずれかと組み合わせたIRX−2(または陰性対照としてのPBS)(例えば、100μlのIRX−2またはPBSとともに100μgのコンジュゲートを含む、200μl/マウス)で若いマウスを免疫した。所属リンパ節への速やかな流入をもたらすために、免疫を尻尾の付け根への皮下注射として施した。その後、PSMAペプチド(図24A)またはそれぞれのコンジュゲート免疫において使用される担体(図24B)のいずれかを刺激抗原として用いて、上記のようなDTHアッセイにおいて、マウスを刺激した。
【0248】
図24Aに示すように、OVA−PSMAまたはKLH−PSMAコンジュゲートと組み合わせたIRX−2(IRX−2)による若いマウス(6〜8週齢)の免疫によって、担体にかかわらず、ペプチド特異的DTH応答が増強された。これらのペプチドを、IRX−2とともに、しかし、コンジュゲーションせずに共投与したとき、ペプチド特異的DTH応答は測定されなかった(データは示さない)。担体(オボアルブミンまたはKLHのいずれか)に対するDTH応答はペプチドに対する応答よりも強く、IRX−2とともに投与しても、DTH活性は増強しなかった(図24B)。ミョウバンをIRX−2−ペプチドコンジュゲート免疫に追加しても、陽性のペプチド特異的DTH応答は修飾されなかった(データは示さない)。
【0249】
初期の研究では、免疫の3日前のシクロホスファミドによる単回前処置と組み合わせて、IRX−2(IRX−2)を使用した。より具体的には、マウスを、一次免疫の3日前のシクロホスファミド(400μg/マウスまたは2mg/マウスのいずれか)の投与を伴ってまたは伴わずに、OVA−PSMAコンジュゲートおよびIRX−2(IRX−2)で免疫した。2回の追加免疫(14日目と28日目)の後、DTHアッセイを上記のように行なった。
【0250】
図25に示すように、シクロホスファミドによる前処置はペプチド特異的応答には必要とされず、後の実験では使用されなかった。さらに、この実験により、マウスがシクロホスファミドで前処置されたか、されなかったかにかかわらず、ペプチドコンジュゲートと組み合わせたIRX−2処置が、ミョウバンまたはPBSを使用するよりも有意に大きい程度にペプチド特異的DTH応答を増強させる(p<0.05)ことが確認された。このアッセイの結果を平均の腫れ(図25中の棒)および個々のマウスの腫れ(図25中の菱形のデータ点)として表した。さらに、これらのマウス研究の結果は全て、一次免疫後に9日間の追加のIRX−2(IRX−2)注射を利用したものであるが、4回の追加処置は、9回の追加処置と統計的に差がなかった(データは示さない)。
【0251】
さらに、PSMAコンジュゲートに対するペプチド特異的免疫応答を刺激するIRX−2の能力を、3つの他のアジュバント:ミョウバン、RIBIアジュバント系(またはRAS)、およびCpGの能力と比較した。より具体的には、マウスを、これらの様々なアジュバントと組み合わせたOVA−ペプチドコンジュゲートで免疫した。2回の追加免疫(14日目と28日目)の後、(追加免疫後の9日目に)DTHアッセイを上記のように行なった。この研究の結果を図26に示し、平均の腫れ(棒)および個々のマウスの腫れ(菱形のデータ点)として表す。
【0252】
図26に示すように、IRX−2(IRX−2)のアジュバント効果は、試験した他のアジュバントの効果よりも大きかった(p<0.001)。全てのアジュバントが、ナイーブマウスと比較して担体タンパク質に対する応答を増強させたが(データは示さない)、IRX−2(IRX−2)だけが腫瘍ペプチド特異的免疫応答を増強させた。
【0253】
老齢マウスにおけるペプチド特異的免疫応答のIRX−2増強
【0254】
本発明者らはまず、マイトジェン(PHA)で刺激した年老いたマウス由来の脾臓細胞が、若いマウス由来の応答と比較したとき、2種の主要なT細胞サイトカインであるIL−2およびIFN−γの分泌に関して損なわれている(IL−2:285対75pg/mlおよびIFN−γ:1535対128pg/ml)ことを示すことによって、年老いたマウス(>18カ月齢)におけるT細胞免疫応答が、若いマウス(8〜16週齢)における応答と比較して欠損していることを確認した。
【0255】
次に、本発明者らは、PSMAコンジュゲートと、アジュバントとしてのIRX−2またはミョウバンのいずれかとで免疫し、次いで上記のDTHアッセイを用いて抗原刺激した、年老いたマウスと若いマウスにおけるDTH応答を試験した。より具体的には、年老いたマウス(研究を開始した時点で18〜20カ月齢)および若いマウス(研究を開始した時点で6〜8週齢)を、上記のように、アジュバントとしてのIRX−2またはミョウバンと組み合わせたPSMAコンジュゲートのOVA−PSMAで免疫した。その後、上記のDTHアッセイに従って、マウスを抗原で刺激した。
【0256】
図27Aによって示されるように、IRX−2(IRX−2)は、ペプチド特異的DTH応答に関して、年老いたマウスの免疫活性を若いマウスの免疫活性にまで回復させた。これらの結果を、1群当たり9〜15匹のマウスの平均についての、PBSを注射した足と抗原を注射した足の腫れの差として表す。IRX−2で処置した年老いた群および若い群の平均の腫れは、ペプチド特異的応答に関して統計的に差がなかった。しかしながら、IRX−2で処置した若い群とIRX−2で処置した年老いた群の両方のDTH応答は、ミョウバンで処置したマウスで見られる応答よりも有意に大きかった(p<0.005、スチューデントのt検定)。
【0257】
OVA担体特異的DTH応答に関して、図27Bは、この応答について若いマウスと比較すると年老いたマウスは欠損しているが(p<0.05)、IRX−2処置によって、オボアルブミン特異的DTH応答が年老いたマウスで回復したことを示している(図27B)。オボアルブミンに対する若いマウスの応答は、ミョウバンで最適であり、それゆえ、IRX−2によって改善されなかった。
【0258】
これらの実験は、年老いたマウスと若いマウスの両方における特異的な抗腫瘍抗原T細胞免疫応答をインビボで刺激する際の本発明のIRX−2組成物のアジュバント効果を示している。実際、本発明のIRX−2は、試験した他のアジュバントと比較してより大きい腫瘍抗原特異的T細胞免疫応答をもたらした。
【0259】
T細胞サイトカインのIFN−γの産生に対するIRX−2処置の効果を測定するために、下記のようなさらなる実験を行なった。IFN−γの産生は、免疫刺激のもう1つの指標である。
【0260】
脾臓T細胞のエクスビボ応答に対するIRX−2の効果
【0261】
上に述べたように、IRX−2とPSMAコンジュゲートとで免疫したマウスに対するIRX−2処置のアジュバント効果を、免疫したマウス由来の脾臓細胞によるIFN−γの分泌を測定することにより明らかにした。より具体的には、KLH−PSMAコンジュゲート(上記)とIRX−2(IRX−2)とで免疫したマウス由来の脾臓細胞を回収し、コンジュゲート(KLH−PSMA)、担体(KLH)またはペプチド(PSMA)とともにエクスビボでインキュベートした。培養6日後に脾臓細胞由来の上清を回収し、上の節の方法および材料に記載されたように、IFN−γ分泌について測定した。図28に示すように、IFN−γ(pg/mlで示す)の産生の形で示すT細胞応答は、ナイーブマウスと比較したとき、コンジュゲートとIRX−2とで免疫したマウスにおいて、3つ全ての抗原について、より大きかった。
【0262】
血清抗体力価に対するアジュバントの効果
【0263】
さらに、IRX−2処置が、インビボでの抗体産生に対するアジュバント効果を有するかどうかを明らかにするために、実験を行なった。より具体的には、マウスを、上記のようなPSMA−コンジュゲートと以下のアジュバント:IRX−2、ミョウバンまたはCpGとで免疫した。PBSをアジュバントの陰性対照として用いた。これらのマウス由来の血清を、3回目の免疫の15日後(データは図29AおよびBに示す)または3回目の追加免疫の8および15日後(図29Cのデータ)の屠殺時に得た。血清を抗体についてELISAでアッセイし、その結果を希釈対光学密度(図29AおよびB)または最適希釈(1/400)時の光学密度(図29C)として表した。
【0264】
担体(オボアルブミンか、KLHかを問わない)に対する血清抗体力価を測定し、それにより、IRX−2(IRX−2)、ミョウバンおよびCpGがオボアルブミンに対するよく似た力価を誘導し、その応答は、CpG>ミョウバン>IRX−2(IRX−2)であることが示された(図29Aおよびデータは示さない)。KLHコンジュゲートで免疫したマウスは、予想した通り、オボアルブミンに対する力価を生じさせず、ELISAアッセイの特異性が確認された(例えば、図29Aを参照されたい)。しかしながら、図29Bに示すようなペプチド特異的抗体応答に関して、OVA−PSMAペプチドコンジュゲートと組み合わせたIRX−2は、ミョウバンおよびCpGとは対照的に、両方のペプチドに対する血清抗体を誘導した。図29Bのデータは、ALFペプチドに関するものであり、IRX−2対ミョウバンおよびCpGについて、ANOVAでp<0.05である。同様の応答がLLHペプチドについて測定された(データは示さない)。図29Cに示すように、KLHをペプチドの担体としてコンジュゲート中で使用した場合、IRX−2(IRX−2)は、アジュバントなし(PBS)またはミョウバンよりも高いペプチド抗体応答を誘導した(IRX−2対ミョウバンおよびPBSについて、p<0.001)。図29Cのマーカーは個々のマウスを示している。上記のようなアッセイ法において、抗体応答は、両方のペプチドをコーティングしたELISAプレート上で測定された。
【0265】
上記の研究は、本発明のIRX−2が、インビボでのT細胞ペプチド特異的DTH応答およびプロトタイプの前立腺ペプチドワクチンモデルにおけるエクスビボでの脾臓細胞のT細胞応答を増強することを示している。(ほんの数種からなる活性とは対照的に)サイトカイン混合物の重要な性質は、単球を欠き、それゆえ、単球由来サイトカインに欠損のある細胞培養物から作製された製剤がペプチド特異的DTH応答またはインビトロでの脾臓細胞のT細胞応答を増強しなかったという観察によって確認されている。IRX−2の新規の性質は、IRX−2を様々な作用機序を代表するように選択された他のアジュバントと比較することによって、さらに示された。例えば、CpGは、APCのTLRアゴニストであり、TLR活性化アジュバントを代表するのに対し、RAS系は、オイルと細菌成分を含むアジュバントの代表であり、マウスモデルにおけるより安全なフロイントアジュバント代替物である。ミョウバンは、大部分のFDA承認ワクチンで利用されているアジュバントである。本研究では、IRX−2はペプチド特異的DTH応答を増強したが、ミョウバン、CpGおよびRASは増強しなかった。さらに、インビボでのT細胞ペプチド特異的DTH応答のIRX−2増強は、抗原特異的なIFN−γ分泌によって規定されるようなエクスビボでの脾臓細胞によるT細胞応答の増強と相関した。最後に、全てのアジュバントが(PBSと比較して)担体に対する抗体応答を増強したが、IRX−2のみが、担体にコンジュゲートしたペプチドに対する抗体応答を増強した。
【0266】
APCの動員、貪食、増殖、活性化、成熟および遊走ならびにT細胞の動員、増殖、分化および成熟は全て、サイトカインによる影響を受けるので、IRX−2中のサイトカインがDTHアッセイによって規定されるようなペプチド特異的免疫応答を増強するように作用する機序は複雑である可能性が極めて高い。しかしながら、これらの研究で観察されたDTH応答のペプチド特異的な性質は、抗原提示ならびにそれに続くT細胞増殖および末梢への遊走に対するIRX−2の影響の結果であると考えられている。また、IRX−2のサイトカインが、DC寛容またはT調節性バランスをT細胞エピトープに対する応答の活性化へと転換すると考えられている。IRX−2は、担体中のT細胞ヘルパーエピトープを増強して、効果的なT細胞免疫応答の発達をさらに刺激している可能性もある。本明細書に示すように(実施例9および10を参照されたい)、本発明のIRX−2は、樹状細胞の成熟および活性化を刺激し、これにより、(樹状細胞による)抗原提示および強力なTh1分極化サイトカインであるIL−12の分泌が促進される。IRX−2は、単球およびマクロファージの強力なアクチベーターでもある。
【0267】
IRX−2は、IRX−2中に存在するサイトカインの既知の影響力に基づく、T細胞に対するさらなる効果を有する。上記の実施例2および8に示したように、本発明のIRX−2は、ナイーブT細胞の産生を含め、リンパ球減少患者におけるTリンパ球数を増加させる。さらに、IL−1(IRX−2中に存在する)は、リンパ球の走化性因子および他のサイトカインの産生のスティミュレーターであることが知られている。既知の活性としては、IL−2分泌の誘導による休止T細胞の増殖および活性化の増大と、IRX−2の活性にとってより重要な、IL−2受容体の上方調節とが挙げられる。さらに、TNF−α(これもIRX−2中に存在する)は、他のサイトカイン(例えば、IL−8およびCSF)の活性を増強するのと同様に、IL−1の活性を増強する。IL−8は、T細胞、好塩基球および好中球を含む、複数の細胞の走化性因子としても作用する。IL−2は、受容体を通じて刺激するだけでなく、さらなるIL−2受容体およびさらなるサイトカインの受容体を上方調節することによっても、活性化細胞の増殖を増強するように作用する。このように、本発明のIRX−2組成物のサイトカインは多面的であり、単球、樹状細胞およびT細胞に影響を与える。
【0268】
本発明のIRX−2中に生理的レベルで存在するサイトカインの活性の部位は局所であり、注射部位と注射部位に関連するリンパ節の両方を含む。IRX−2は毎日投与することができるので、全てのサイトカインの高い局所レベルを維持することができる。本発明のIRX−2をアジュバントとして用いるDTH応答のペプチド特異的な性質は、将来的なT細胞ワクチンにおけるIRX−2の使用を支持するものである。
【0269】
さらに、本研究は、本発明のIRX−2が、老齢マウスにおけるT細胞サイトカイン欠損を矯正することを示している。癌が、免疫系が衰えつつあることがわかっている高齢者に発生することが非常に多いことに留意するのは重要である。さらに、腫瘍に対する現在の治療法(放射線照射および化学療法)の多くはそれ自体、免疫抑制的であり、患者の免疫適格性をさらに低下させ得る。したがって、多くの患者に対する癌ワクチンは、加齢、癌治療および癌の防御機構と関連する免疫不全を回復させる可能性を有する薬剤から恩恵を受ける可能性がある。高齢者におけるワクチンの使用に対するこの潜在的な障害を考慮して、IRX−2を老齢の免疫適格マウスおよび若い免疫適格マウスにおける効力について本研究で評価した。年老いたマウス由来の脾臓細胞は、若いマウスと比較したとき、IL−2とIFN−γの両方のサイトカイン産生が欠損していることがまず確認された。DTH応答はオボアルブミンに関しても損なわれていた。本発明のIRX−2組成物は、担体に対する弱い応答を回復させることができただけでなく、若いマウスの応答と同様のレベルにまでペプチド特異的応答を回復させるのに効果的でもあった。
【0270】
ワクチンモデルにおいてIRX−2を使用するためのプロトコルは、頭頸部癌患者でIRX−2(IRX−2)を用いた第I相/第II相臨床研究と、免疫応答に関する既知の動力学に基づいている(例えば、Meneses,2003;Hillman,1995)。臨床試験では、低用量シクロホスファミドの前注射および10日間のIRX−2(IRX−2)投与と組み合わせて、腫瘍流入領域リンパ節をターゲッティングすることにより、腫瘍のリンパ球浸潤の増強、腫瘍構造の断片化および腫瘍サイズの低下がもたらされた(上記の実施例2〜7を参照されたい)。上記のように、マウスでのワクチンモデルにおいて、初期の研究ではシクロホスファミドの前注射が使用されたが、その後の研究で、シクロホスファミドの前注射は健康な非担腫瘍マウスでは必要ないことが確認された(図25)。さらに、一次免疫(4〜9日間)後にIRX−2を毎日投与することが重要であるように思われるが、それは、そのような毎日の投与が、注射部位、および後に、流入領域リンパ節に、活性化期間からメモリー移行期間までのT細胞免疫応答の最適な刺激に十分なサイトカインレベルが存在することを保証するからである。サイトカインのレベルが低いので、注射部位における明らかな炎症応答はない。これは、腫れと炎症が注射部位で顕著であったミョウバンとRIBIアジュバント系の両方とは対照的である(未発表の観察結果)。
【0271】
担体へのコンジュゲーションをしていないPSMAペプチドを用いた第I相/第II相研究について報告されたデータに基づくと、本明細書に記載の提案されるペプチド−担体ワクチンは、治療的ワクチンとして臨床的に大いに有望である(Toja,2000;O’Hagan,2001;Katsuyuki,2000;およびNaylor,1991)。この2つのペプチドは、コンピュータモデリングと前立腺癌患者由来のリンパ球の応答の両方に基づくT細胞エピトープである。患者をペプチドのみまたはペプチドをパルスした樹状細胞で処置したとき、臨床的応答およびT細胞応答の改善が第I相/第II相試験で見られた。しかしながら、第I相試験では、アジュバントなしのペプチドは、ペプチドをパルスした樹状細胞よりも効果が小さかった。IRX−2をペプチド−コンジュゲートとともに投与したときに観察されるペプチド特異的応答の増強および多種多様な臨床試験におけるKLH−コンジュゲートの安全性を考慮すると、ペプチドとIRX−2(IRX−2)とを用いる臨床試験が当然必要とされる。
【0272】
癌ペプチドワクチンマウスモデルを用いた本明細書に提示された研究および本発明のIRX−2を用いた内因性抗原に対する活発な抗腫瘍応答を示すヒト臨床データは、腫瘍特異的破壊を媒介するのに十分な免疫応答を生成させるための腫瘍ワクチンにおける本発明のIRX−2組成物の使用を支持するものである。さらに、IRX−2は、若いマウスと年老いたマウスの両方におけるT細胞特異的応答を増強するよう作用するので、IRX−2は、その目標としてT細胞免疫応答の増強を含む、どの癌ワクチン(とりわけ、高齢癌患者用のもの)にも含まれる成分の候補である。
【0273】
ヒト:
【0274】
3人の進行前立腺癌患者に対して、低用量CY(300mg/m2)および毎日のINDO(25mg、1日3回)の後に、IRX−2(1ml−100ユニットのIL−2当量)とともに、コンジュゲートしていないALFペプチドおよびLLHペプチド(100μg@)を投与し、追加でIRX−2(1ml)をさらに9回注射した。15日目に、IRX−2+ペプチドの追加免疫を施した。追加の患者(#4)に対しては、このレジメンにおいてOVAコンジュゲートペプチドを投与した。皮内皮膚試験(24時間で紅斑のセンチメートルと持続期間の単位で読み取る)により、IRX−2(0.1ml)、ALFまたはLLH(10μg)の場合の遅延型過敏反応(DTH)を測定した。結果を表VIに示す。
【表6】

【0275】
これらのデータは、IRX−2レジメンが、進行前立腺癌を有する人におけるコンジュゲートしていないPSMAペプチドおよびコンジュゲートしたPSMAペプチドに対するDTH反応を誘導するのに効果的であることを示している。この結果は、単離されたペプチドで失敗した大半のこれまでの試みの結果とは異なっている。
【0276】
さらなる実験により、本発明のIRX−2が、PSMAペプチド抗原とともにアジュバントとして作用して、疾患の安定化をもたらすことができることが示された。より具体的には、3人の進行前立腺癌を有するHLA−A2陽性の男性を、IRX−2(IRX−2)(115ユニットのIL−2当量)と上記の2種のPSMAペプチド(各100μg)とで処置した。最初の免疫を頸部への注射によって行ない、次いでIRX−2(IRX−2)を9回注射し(上記の実施例2のプロトコルと同様、低用量シクロホスファミド、インドメタシンおよび亜鉛をプラスした)、その後、IRX−2+2種のペプチドを、月1回5カ月間、追加免疫した。
【0277】
表VIIに、病歴(Hx)と治療に対する応答(Rx)を簡潔にまとめる。患者は3人とも、(他の薬に加えて)4〜10年前に前立腺切除と睾丸切除を受け、再発していた。全員、4カ月からおよそ6カ月の間、PSA上昇が倍加している段階にあった。2人には骨痛の症状があった。IRX−2+ペプチドで免疫し、次いで追加免疫の注射をすると、症状は誘発されなかった。
【0278】
骨痛を示した2人の患者では痛みが解消した。(患者#2が大腿骨の骨折を患い、一時悪化したことを除き)患者は3人とも、臨床的に安定した。3人とも、単離されたPSMAペプチド(AおよびB;各10μg)を用いる皮膚試験に対して一過性の皮膚反応を示した。3人とも、IRX−2またはPHAを用いる皮膚試験に対する反応性の増大を示した。これらの結果は、本発明のIRX−2が、免疫および追加免疫の間に、これらの患者をPSMAペプチドに対して免疫し、疾患を安定化させたことを示している。6カ月間にわたるこれら3人の患者におけるPSA抗原レベルの安定化を示す図30も参照されたい。上記の追加の患者#4は、一過性のPSA安定化と臨床的安定化を示したが、臨床情報は不完全である。PSAレベルの早期再発を有するさらなる追加の患者(7)は、正常レベルへの復帰を示し、このレベルは、2年の経過観察の間、追加の治療なしで持続した(完全応答)。
【表7】


実施例12
【0279】
以下の研究において、IRX−2が前立腺特異的膜抗原(PSMA)由来の2つのT細胞特異的ペプチドに対するT細胞応答を増幅することが示された。IRX−2は、放射線照射したPSMA発現3T3細胞(細胞に基づくワクチン)でおよびペプチド−担体コンジュゲートワクチンに対して免疫したマウスのPSMAペプチド特異的な遅延型過敏症「DTH」応答を増強した。これは、PSMAペプチドに対するT細胞応答の生成において活性がなかったミョウバン、RIBIアジュバント系(RAS(登録商標),RIBI ImmunoChem Research,Inc.)およびCpGなどのアジュバントとは対照的であった。T細胞特異的なインビボ活性は、免疫マウスから回収した脾臓細胞によるペプチド特異的なIFN−γ分泌の増加を示すことにより確認された。他のアジュバントとは対照的に、IRX−2は、ペプチドに対するB細胞応答も増強した。
【0280】
材料および方法
【0281】
試薬および細胞
【0282】
前立腺特異的膜抗原ペプチド(ペプチド1=Leu−Leu−His−Glu−Thr−Asp−Ser−Ala−Val(配列番号1);ペプチド2=Ala−Leu−Phe−Asp−Ile−Glu−Ser−Lys−Val(配列番号2))は、BioSynthesis Inc.(Lewisville,TX)により合成された。オボアルブミン、シクロホスファミドおよびRIBIアジュバント系(RAS;R−700)はSigma(St Louis,MO)から購入した。KLHおよびミョウバン(各40mg/mlの水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム)はPierce Biotechnology(Rockford,Il)から購入した。RASは、モノホスホリル脂質A(0.5mg)および合成トレハロースジコリノミコラート(0.5mg)と、44μlのスクアレンおよびTween−80とからなっていた。CpGオリゴヌクレオチド(マウス特異的配列)は、BioSynthesis(Lewisville,TX)により合成された。CpGは、TCCATGACGTTCCTGACGTT(配列番号3)であり、かつホスホチオナート誘導体であった。マウスにおけるCpGの生体活性は、マウス脾臓細胞の増殖およびマウス接着細胞によるTNF−αの産生を測定することによって確認された(データは示さない)。
【0283】
PSMA挿入物を安定にトランスフェクトしたNIH3T3細胞を、10%のFBSを補充したMEMを用いて培養した。この挿入物の発現は、ジェネティシン耐性と免疫組織化学およびフローサイトメトリーによるPSMAの発現とを示すことによって確認された。セシウム源を用いて細胞に800Gyの放射線を照射し、細胞に基づくワクチンとして使用するまで−20℃で凍結させた。
【0284】
IRX−2は、上記のような活性のある複数のサイトカインからなる初代細胞由来生物製剤である。IRX−2投与量はIL−2含量に基づく。2つのロットを同じ実験において等しいIL−2含量で試験したとき、それらの活性は常に等しかった(データは示さない)。IRX−2のいくつかのロットをこれらの研究中に使用した。これらの研究で使用されたIRX−2のロットにおける潜在的な免疫増強サイトカインの平均レベルは、IL−2(5.5ng/ml)、IL−1(0.5ng/ml)、IFN−γ(1.5ng/ml)、TNF−α(2.7ng/ml)、IL−6(1ng/ml)およびIL−8(46.2ng/ml)であった。
【0285】
コンジュゲーション
【0286】
カルボジイミド法(ODC;Pierce EDCキット 77502,Rockford,Ill)を用いて、ペプチドをオボアルブミンまたはKLHにコンジュゲートした。カラムからの280nmのピークは担体を特定するものであり、これをコンジュゲートとして回収した。215nmの光学密度をモニタリングすると、遊離ペプチドを表すテーリングピークが示され、コンジュゲーション手順において余分なペプチドが存在するという確認が得られた。投与量は、カラムから回収されたときの担体濃度を基にした。
【0287】
免疫
【0288】
Balb/c雌マウス(6〜8週齢)を、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)またはHarlan Laboratories(Indianapolis,IN)のどちらかから購入し、Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)Animal Facility(動物福祉保証証明書第A3280−01号)の世話の下で飼育した。手順は全て、CSHLのALAC委員会によって承認された。所属リンパ節への速やかな流入をもたらすために、免疫(100μlのアジュバントまたはPBSとともに100μgのコンジュゲートを含む200μl/マウス)を尻尾の付け根に皮下投与した。一次免疫の後に、9回の追加のIRX−2注射を行なった(2、3、4、5、8、9、10、11、および12日目)。ミョウバンまたはRIBI(これらの場合、単回注射するとその部位での炎症が起こる)とは異なり、IRX−2を同じ部位に繰り返し注射しても、その部位での大きな炎症は起こらなかった(未発表の観察結果)。DTH活性を評価する前に、コンジュゲート+アジュバントで追加免疫(14日目と28日目)を行なった。追加免疫後に、毎日のIRX−2をさらには投与しなかった。放射線照射細胞をワクチンとして使用する場合は、細胞をPBSまたはIRX−2のいずれかに懸濁し、10〜10細胞/マウスの用量を用いて皮下注射した。免疫スケジュールは、ペプチドコンジュゲートワクチンで使用したものと同じであった。
【0289】
マウスにおける比較アジュバント研究では、RAS(R700=スクアレン/Tween 80中のMPL+TDM)を(推奨されるプロトコルの通りに)1mlのPBSで再構成し、その後、1mlのコンジュゲート(1mg/ml)と混合した。ミョウバンを抗原と1:1で混合した。CpGオリゴヌクレオチドを、公表されているマウスでのプロトコル(マウス1匹当たり20μgのCpGと100μgのコンジュゲート)の通りにペプチドコンジュゲートと混合した。
【0290】
DTHアッセイ
【0291】
DTHアッセイのためのインビボ抗原刺激を追加免疫の9日後に評価した。マウスに対して、左足蹠に刺激抗原を、右足蹠にPBSを皮下注射した。抗原刺激は、ペプチド(20μl中100μg)または担体(オボアルブミンもしくはKLH)(20μl中50μg)のいずれかであった。24時間後、デジタル読取り式キャリパー(Preisser DIGI−MET Model 18314,Stofiting Co.,Wooddale,IL)を用いて、右足蹠および左足蹠の厚さを測定した。左足蹠の厚さ(実験応答)から右足蹠の厚さ(ベースライン)を差し引くことにより、腫れ応答を算出した。データを平均+/−平均の標準誤差として表す。統計分析はスチューデントのt検定によった。
【0292】
抗原刺激IFN−γアッセイ
【0293】
2回目の追加免疫の7〜14日後に脾臓を摘出し、ワイヤースクリーンに通して分散させることにより単離した。脾臓細胞を取り出し、それらをプラスチックに90分間接着させておくことにより、接着細胞を得た。さらなる抗原提示細胞を得るために、単離された接着細胞を培養物に添加した(1ウェル当たり約6×10個のリンパ球に2×10個の接着細胞を添加した)。抗原誘導性のリンパ球活性化によるIFN−γ放出を、R&D Systems(Minneapolis,MN)製のDuo−Sets ELISA試薬を用いて、6日目に回収した上清中で測定した。
【0294】
担体およびペプチドに対する血清抗体
【0295】
3回目の追加免疫の7〜21日後に血清を得、後にELISAアッセイで使用するまで凍結させた。ELISAプレート(Immunolon−4,Nunc,Denmark)に対象となる抗原(オボアルブミン、KLH、コンジュゲートまたはペプチド)を一晩コーティングした。ブロッキングし、洗浄したウェルに血清の希釈液を添加し、一晩インキュベートした。ビオチン標識抗マウスIgGおよびアビジン−アルカリホスファターゼ(Southern BioTech,Birmingham,AL)を順次添加し、pNPP基質を添加した後、ODを測定し、血清の希釈に対してプロットした。
【0296】
結果
【0297】
IRX−2は全細胞に基づくワクチンに対する免疫応答を増大させる
【0298】
PSMAをトランスフェクトした3T3細胞を用いてマウスを免疫し、PSMAペプチドのプロセッシングと提示を確認した。ペプチドに対する免疫応答を遅延型過敏症(DTH)アッセイにより評価した。図31に示すように、放射線照射したPSMA発現細胞は、この2つのPSMAペプチドで刺激したときに、マウスにおいてDTH応答を生成させた。マウスに対して、放射線照射したPSMA発現3T3細胞とIRX−2(青色)を投与するか、または放射線照射したPSMA発現3T3細胞をアジュバントなし(PBS、赤紫色)で投与することによってワクチン接種し、2回目の追加免疫の9日後に、ペプチド刺激後のDTH応答を測定した。結果を5〜15匹のマウスからなる群の平均(+/−SEM)として表す。足蹠の腫れの増大は、アジュバントなし(PBS)のマウスと比較したときの、投与された放射線照射細胞およびIRX−2の用量の関数であった。IRX群とアジュバントなし(PBS)の群の統計的な差の判定をスチューデントのt検定で評価した。両側有意は10および10細胞/マウスについてp<0.001であり、片側有意は10についてp<0.05であった。応答は用量関連性であり、アジュバントなしと比較して、ワクチンをIRX−2とともに投与したときに増強した。
【0299】
PSMA−コンジュゲートで免疫したマウスにおけるペプチド特異的DTHのIRX−2増強:コンジュゲートおよびIRX−2の投与
【0300】
IRX−2とともにまたはIRX−2なしで、様々な用量のペプチドのみまたはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体にコンジュゲートしたペプチドでマウスを免疫した。抗原の最適用量を規定するために、ペプチドまたはコンジュゲート刺激後のT細胞応答を評価した。ペプチド特異的DTH応答については用量依存的応答があったが、担体に対する応答は、コンジュゲートの用量によって影響を受けなかった(図32)。図32は、免疫したマウスのペプチド(左側)またはKLH(担体;右側)に対するDTH応答を示している。応答を1群につき5〜10匹のマウスの平均+/−SEMとして表す。アジュバントなし(No Adj)は、応答が最適な用量のコンジュゲートおよびPBSで免疫したマウスで測定されたことを示す。ペプチド応答は用量関連性であったが、担体に対する応答は用量関連性でなかった。100μgおよび25μgのPSMA−KLHコンジュゲート用量に対するペプチド特異的応答は、アジュバントなしと比べて有意差があった(p<0.05、スチューデントのt検定による)。KLH応答(これは、IRX−2の場合の応答と同様であった)と比較したとき、アジュバントなしで試験された最大用量のコンジュゲートは、ペプチド特異的アッセイにおいて活性がなかった。コンジュゲーションしていないペプチドをIRX−2と共投与したとき、ペプチド特異的DTH応答は観察されなかった(データは示さない)。
【0301】
IRX−2は抗原に対する応答を用量依存的に増大させる
【0302】
最適なペプチド特異的DTH応答を生じさせるのに必要なIRX−2の用量を評価した(図33Aおよび33B)。マウスを最適なコンジュゲートワクチン(100μg/マウス)と様々な用量のIRX−2とで免疫した。IRX−2は複数のサイトカインを含むので、IRX−2の用量は、マウス1匹当たりのIRX−2中のIL−2濃度としてプロットする。IL−2の濃度を2つの相互交換可能な測定のどちらかによって表す(IU=国際単位または純粋な組換え標準を基にしたpg/ml)。T細胞特異的ペプチド応答をDTHアッセイで評価した。これを、ペプチド刺激による腫れの増大(+/−平均の標準誤差)として表す。最適用量(200〜800pg/マウス;4〜16IU/マウス)での応答間の相違は、アッセイで試験されたIRX−2なし(0)ならびに最小用量(70pg/ml)および最大用量(2100pg/ml)と比べて統計的に有意であった(p<0.05、スチューデントのt検定による)。IRX−2の投与量は、ELISAで測定したときのIL−2のレベルによって規定した。マウス1匹当たり200〜800pgのIL−2当量の用量が、DTHアッセイでT細胞応答を増強するのに効果的であった。
【0303】
IRX−2の複数回注射は抗原に対する免疫応答を改善する
【0304】
4回または9回のいずれかの追加のIRX−2注射は、ペプチド特異的DTHの増強に関して同様であったが、後のIRX−2注射を伴わない単回投与のみでは、抗原に対するT細胞特異的応答は増強されなかった(図33Aおよび33Bおよびデータは示さない)。
【0305】
IRX−2は抗原に対するT細胞応答を媒介する上で他のアジュバントよりも優れている
【0306】
IRX−2と比較するために、異なる作用機序を有する3つのアジュバントを選択した。ミョウバン(大部分のFDA承認ワクチンで利用されているアジュバント)、Ribiアジュバント系(オイルと細菌成分を含むアジュバントを代表するもの)およびCpG(Toll様受容体(TLR)活性化アジュバントを代表するもの)を公表されているプロトコルの通りに投与した。T細胞ペプチド特異的応答のIRX−2増強は、ミョウバン、Ribi(登録商標)またはCpGアジュバントのいずれかよりも優れていた(図34)。マウスをPSMAペプチドコンジュゲートと示したアジュバントとで免疫した。2回の追加免疫(14日目と28日目)の後、最後の追加免疫の9日後にDTHアッセイを行なった。結果をペプチド注射した足と対照の足の腫れの平均増加(+/−SEM)として表す。IRX−2応答は、他の全てよりも大きかった(p<0.001、スチューデントのt検定)。
【0307】
IRX−2はペプチド抗原に応答してIFN−γ産生を増大させる
【0308】
マウスを様々な用量のKLH−PSMAコンジュゲートとIRX−2とで免疫した。IFN−γの分泌を測定することにより、免疫したマウス由来の脾臓細胞を、ペプチドによる刺激に対する応答についてエクスビボで評価した。IRX−2は、脾臓細胞によるペプチド特異的なIFN−γ分泌を増大させ、この応答は、免疫に使用したコンジュゲート濃度に対して用量依存的であり、また、その増強は、アジュバント処置していないマウス((PBS)図35)と有意差があった。IFN−γを培養6日後の上清中で測定し、結果をコンジュゲートワクチンの所与の用量でのマウスについての平均(=/−SEM)として表した。25および100μgコンジュゲートでの増加は、アジュバントなしの対照(PBS)と比べて統計的に有意であった(P<0.05)。比較目的で、下のパネルは、同様の用量のコンジュゲートについてのペプチド特異的DTH応答を表す。
【0309】
IRX−2はペプチド抗原に対する抗体応答を増強する
【0310】
放射線照射細胞に基づくワクチンで免疫したマウスはペプチドに対する血清抗体を示し、免疫したマウスの抗体応答は、より低い用量のワクチンでIRX−2により増強した(図36)。放射線照射細胞ワクチンで免疫したマウス由来のペプチド特異的血清抗体。血清抗体応答は、方法において記載されたようなELISAアッセイでマウスIgG特異的抗体を用いて、血清の希釈における光学密度として測定した。ワクチン+IRX−2で免疫したマウスは、ワクチンの用量がアジュバントを含まない次善最適であったときに、ペプチド特異的応答の増強を示している。この応答は、ワクチン用量がより大きく血清希釈がより小さい場合のIRX−2でも有意差があった。KLH−ペプチドコンジュゲートワクチンを評価した場合、IRX−2はまた、ミョウバンとアジュバントなしの両方と比較してペプチド特異的応答を増強した(データは示さない)。
【0311】
IRX−2はコンジュゲートペプチドに対する抗体応答の刺激において他のアジュバントよりも優れている
【0312】
オボアルブミン−ペプチドコンジュゲートとともに投与されたIRX−2は、ペプチドに対する抗体を生じさせたが、コンジュゲートとともに投与されたCpGもミョウバンもペプチドに対する抗体を生じさせなかった(図37)。このデータは、ALFで始まる配列を有するペプチドについてのものであり、有意性は、IRX−2対ミョウバンおよびCpGについて、ANOVAでp<0.05であった。これらの結果は、コンジュゲートワクチンとともに投与されたIRX−2だけがペプチド特異的DTH応答をもたらしたT細胞アジュバント比較研究と一致する(比較のために、図34を参照されたい)。
【0313】
実施例13
【0314】
以下の研究において、IRX−2は、不完全フロイントアジュバントを含むワクチン中のPSMAの優性マウスエピトープに対するT細胞応答を増幅することが示された。IRX−2は、不完全フロイントアジュバント中のPSMAペプチドで免疫したマウスのPSMAペプチド特異的IFN−γ応答を増強した。T細胞特異的なインビボ活性は、免疫したマウスから回収された脾臓細胞によるペプチド特異的なIFN−γの分泌および抗原特異的T細胞の数の全体的な増加によって確認された。他のアジュバントとは対照的に、IRX−2は、ペプチドに対するB細胞応答も増強した。
【0315】
材料および方法
【0316】
試薬および細胞
【0317】
これらの研究で使用されるNFTペプチドは、BioSynthesis Inc(Lewisville Tx)により合成された。NFTペプチド配列は、NFTQIPHLAGTEQNF(ヒトタンパク質由来)であった。マウスPSMAは類似の配列(NFTRTPHLAGTQNNF)を有するが、太字でないアミノ酸によって示されるような非同一性も有しており、このことは、これらの研究が寛容の破壊を示すために特にデザインされたものではないことを意味する。これらの研究のための陰性対照の免疫ペプチドは、C57bl/6マウスのクラスIIインフルエンザエピトープ(NGSLQCRICI)であった。オボアルブミン、不完全フロイントアジュバント(IFA)、および組合せアジュバント(スクアレン/Tween 80中のMPL+TDM、別名、Ribiアジュバント系またはSigmaアジュバント系カタログ番号S6322)はSigma(St Louis,MO)から購入した。組合せアジュバントは、最終容量1mlのPBS中のモノホスホリル脂質A(MPL;0.5mg)および合成トレハロースジミコラート(TDM;0.5mg)と、44μlのスクアレンおよび200μlのTween−80(すなわち、水中油)とからなっていた。フロイントの不完全アジュバントは、モノオレイン酸マンニドと組み合わせたパラフィン油(0.85mLのパラフィン油と0.15mLのモノオレイン酸マンニド)からなっている。市販され、フロイント完全アジュバントに似ているが、毒性がないので、このアジュバントを選択した。
【0318】
免疫
【0319】
Balb/c雌マウス(6〜8週齢)を、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)またはHarlan Laboratories(Indianapolis,IN)のどちらかから購入し、Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)Animal Facility(動物福祉保証証明書第A3280−01号)の世話の下で飼育した。手順は全て、CSHLのALAC委員会によって承認された。所属リンパ節への速やかな流入をもたらすために、免疫(通常、100μlのアジュバント、PBSまたはX−Vivo 10培地とともに100μgの抗原を含む200μl/マウス)を尻尾の付け根に皮下投与した。注記した場合を除き、一次免疫(0日目と表す)の後に、尻尾の付け根に9回の追加のIRX−2注射を行ない、その結果、抗原を含まないIRX−2を1、2、3、4、7、8、9、10、11日目に投与した。マウスを操作する際の潜在的なストレスについてコントロールするために、IRX−2を投与されないマウスには、PBSまたはX−Vivo 10培地のいずれかを1、2、3、4、7、8、9、10、11日目に投与した。抗原とともに投与したとき、PBSとX−Vivoは両方とも、IRX−2と比較して非刺激性であった。本テキストおよび図では、抗原+PBSまたはX−Vivoを投与されたマウスを「対照」またはアジュバントなしのマウスと呼ぶ。投与量は、IRX−2中のIL−2レベルに基づいて規定され、別途示さない限り、700pg/マウス(15IU/マウス)であった。抗原+アジュバントによる追加免疫を14日目に投与し、DTHアッセイについては、28日目に繰り返した。追加免疫の後、毎日のIRX−2注射をさらには投与しなかった。放射線照射細胞をワクチンとして使用する場合は、細胞をPBSまたはIRX−2のいずれかに懸濁し、10〜10細胞/マウスの用量を用いて皮下注射した。
【0320】
IFAを1部のペプチド(1mg/ml)、1部のIFA、および1部のIRX−2またはPBS/X−VIVOとして混合した。2本のシリンジを接続するメス:メスルアーロックに通して乳化した後、各マウスに300μlを皮下投与した。組合せアジュバント(スクアレン/Tween 80中のMPL+TDM)を(推奨されたプロトコルの通りに)2mlのPBSで再構成し、その後、2mlのコンジュゲート(1mg/ml)および2mlのIRX−2または対照のいずれかと混合した。組合せアジュバントをボルテックス処理によってIRX−2と混合し、各マウスに300μlを皮下投与して、追加容量のIFAとした。
【0321】
抗原刺激IFN−γアッセイ
【0322】
リンパ節と脾臓を示した時点で(最初の追加免疫の3〜24日後に)摘出し、細胞をワイヤースクリーンに通して分散させることにより単離した。脾臓内の赤血球を塩化アンモニウム溶解バッファー(Quality Biological Inc,Gaithersburg,MD)を用いて溶解させた。脾臓細胞をプレーティングし、それらをプラスチックに90分間接着させておくことにより、リンパ節細胞培養物に添加するための接着細胞を得た。さらなる抗原提示細胞を得るために、単離された接着細胞を培養物に添加した(1ウェル当たり2〜6×10個のリンパ球を2〜4×10個の接着細胞に添加した)。抗原誘導性のリンパ球活性化によるIFN−γ放出を、R&D Systems(Minneapolis,MN)製のDuo−Sets ELISA試薬を用いて、6日目に回収した上清中で測定した。
【0323】
ELISpotアッセイ
【0324】
脾臓細胞について1ウェル当たり2×10リンパ球またはリンパ節細胞について1ウェル当たり3×10リンパ球のいずれかで細胞をプレーティングした。ELISpotプレート(Millipore,Billerica,MA)をPBSにて捕捉抗体(MAB−18、MabTech(Mariemont,OH)製)で一晩コーティングした。プレートを洗浄し、抗原と細胞を添加し、その後、37℃で18時間インキュベートした。ウェルをPBSで激しく洗浄して細胞を除去し、ビオチン化二次抗体(MabTech)をさらに18時間のインキュベーションの間添加した。ビオチン−APとDAB基質を順次用いてプレートを発色させた。ZellNet(Fort Lee,New Jersey)製のデジタル変換ソフトウェアを備えた顕微鏡を用いて、プレートを読み取った。
【0325】
結果
【0326】
IRX−2活性を規定するためのIFA中のT細胞ペプチドによる免疫
【0327】
タンパク質抗原の優性ペプチドエピトープに対するT細胞応答は、通常、これらのペプチドを不完全フロイントアジュバント(IFA)に含めて投与することによって評価される。IFAは、そのデポ効果および当該部位で炎症反応を生成させるその潜在能力の結果として効果的である。IFA中の優性NFTペプチドで免疫したマウスは免疫応答を起こし、これは、リンパ節および脾臓細胞についてのELISpotアッセイで測定したとき、IRX−2での処置によって増強された(図38A)。IRX−2の有無にかかわらず、IFAを含まないペプチドでは、ナイーブマウスと有意差がなかった(データは示さない)。図38Bにより、IRX−2誘導性の脾臓細胞ELISpot応答の増大は、IFN−γ分泌アッセイでも反映されたことが確認される。図39Aと39Bは、追加免疫の後、マウスから経時的に回収した細胞のELIspotアッセイで明確にされたT細胞応答の一過性の発達を示している。IRX−2は、全ての時点のリンパ節において、抗原のみの対照と比較して免疫応答を増大させる。脾臓細胞では、応答は、17〜19日目にのみ増強された。また、IRX−2の最適投与量を測定するために、IFA中のNFTを用いるELISpotアッセイを使用した。図40Aに示すように、IRX−2の最適用量は、700pgのIL−2当量/マウスの10日間毎日の投与であった。最適用量を用いて、9回と4回の追加用量のIRX−2の両方が同様であることが分かった(図40B)。IRX−2の単回投与は、T細胞応答を増強するのに十分ではない(図40B)。ELISpotアッセイとDTHアッセイの両方でペプチド−コンジュゲートを免疫原として用いて同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0328】
IRX−2はT細胞応答を優先的に増強する
【0329】
NFTペプチド−コンジュゲートを用いて、IRX−2を市販の組合せアジュバント(MPL+TDM+スクアレン+Tween 80)と比較し、NFTに対するT細胞応答と、担体として用いたオボアルブミンまたはKLHに対するB細胞応答とを測定することにより評価した。MPL+TDMに基づくアジュバントはSIGMAから市販されているが、これは、かつてはRIBI Adjuvant Companyから入手可能で、その後、Sigma Chemical Companyにより販売されたRIBIアジュバントと類似している。このアジュバントは、古典的なフロイントアジュバントと同等であるが、毒性のある副作用がないので、強力なアジュバントのプロトタイプ例と考えられる。コンジュゲートとともに使用された100μg/ml用量のKLHに対する抗体力価は、KLHの強力な活性のために、アジュバントによって増大しなかった(データは示さない)。これらの研究では、オボアルブミンに対する応答を用いて、アジュバントのB細胞活性を評価した。追加免疫後3日目のNFT−コンジュゲートに対するT細胞応答の増大は、IRX−2および組合せアジュバントについて陽性であったが(図41A)、IRX−2は組合せアジュバントよりも優れていた。逆に、IRX−2はB細胞応答を増強したが、血清中の抗体力価に関しては、組合せアジュバントほど効果的ではなかった(図41B)。
【0330】
予防腫瘍ワクチン研究
【0331】
これまでの研究で、本発明者らの研究で使用したよりも高い用量の放射線照射したhPSMA発現3T3細胞(P−3T3)で免疫したマウスは、neo−ベクターのみを含む3T3細胞で免疫したマウスと比較したとき、PSMA発現RENCA細胞(P−RENCA)による腫瘍刺激から防御されることが示された。本発明者らは、IRX−2処置したまたはIRX−2処置していないhPSMA発現3T3細胞を用い、その後、P−RENCA細胞で刺激して、これらの研究を確認し、敷延した。これまでに報告されたように、高用量の細胞(>10細胞/マウス)で免疫したマウスは、アジュバントなしでも完全に防御された(データは示さない)。より低い用量の10細胞/マウスで免疫したマウスでは腫瘍増殖が遅延し、IRX−2が防御を増強した(図42)。IRX−2による生存の改善はあったが、ごくわずかのマウスだけがIRX−2群で腫瘍を発達させなかった。優性エピトープが防御的であるかどうかを評価するために、マウスをNFT−KLHコンジュゲート(IRX−2の有無を問わない)で免疫した。1組の対照マウスをKLHのみ(IRX−2の有無を問わない)で免疫した。図42A〜Cに示すように、NFT−KLH+IRX−2で免疫したマウスは、他の3つの群(アジュバントなしのNFT−KLHまたはIRX−2ありのKLHまたはIRX−2なしのKLH)と比較したとき、早い腫瘍増殖遅延を示した。腫瘍を完全に拒絶したマウスはなく、腫瘍増殖によって明確にされたような早い防御は、生存の延長にはつながらなかった。
【0332】
IRX−2はペプチドコンジュゲートワクチン系において他のアジュバントよりも優れている
【0333】
8〜10週齢の年老いたマウス(1群につき5〜8匹)を、NFT−KLHコンジュゲートと、IRX−2、組合せアジュバントであるスクアレン/Tween 80中のモノホスホリル脂質A(MPL)+トレハロースジコリノミコラート(TDM)、または対照のいずれかとで免疫した。追加免疫の3日後に得られたリンパ節細胞を用いてNFT特異的ELISpot応答を測定した。図43に示すように、IRX−2は、IFN−γ分泌細胞によって測定されるようなインビボでの抗原特異的T細胞応答を刺激するのに、MPL+TDMワクチンよりも優れていた。データをNFT特異的ELISpotの増加(平均+/−SEM)として表す。
実施例14
【0334】
感染性生物または腫瘍に由来する規定の抗原からなるサブユニットワクチンの開発は、CD8T細胞およびTh1を誘導する効果的なアジュバントがないために、大いに妨げられている。これらの応答は協調して効果的な細胞性免疫を媒介し、感染した細胞または悪性宿主細胞の排除をもたらす。実際、現在使用されている大半のワクチンは今も、生きた弱毒化生物からなり、これは、製造が難しく、また、安全性と貯蔵の潜在的な問題がある可能性がある。アジュバント(例えば、鉱油、マイコバクテリア、およびミョウバン)は、多くの場合、獲得免疫を増幅するために必要とされる。最も効果的なものは、一般に、CFAと考えられているが、これは、動物でしか使用することができず、有害な皮膚炎症を引き起こすことがある。下記の研究は、IRX−2をTLR依存的アジュバントとTLR非依存的アジュバントとからなる多重アジュバントワクチンに付加すると、極めて高いレベルの抗原特異的T細胞免疫が誘導されることを示している。
【0335】
以下の実施例は、TLR依存的機構とTLR非依存的機構の両方によって機能する他のアジュバントと組み合わせたIRX−2がペプチドワクチンを増強することを示している。さらに、IRX−2は、多成分ワクチンを接種した後にインビボで抗原特異的T細胞の数を増大させただけでなく、抗原特異的T細胞の細胞傷害活性も増大させた。
【0336】
材料および方法
【0337】
アジュバント組合せおよびワクチン接種手順
【0338】
C57BL/6またはBALB/cマウス(Harlan)をPBS中の以下の試薬の組合せ(マウス1匹当たり):OVA257−264(SIINFEKL)ペプチド(100μg;ProImmune)、IFN−γ(100ng、Peprotech)、モノホスホリル脂質A(MPL)+トレハロース6,6’−ジミコラート(TDM)エマルジョン(Ribiアジュバント、製造者の指示の通りに使用;Sigma−Aldrich)、CpG 1826(25μg;VH Bio)、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C;50μg;Sigma−Aldrich)、MPL(50μg;InvivoGen)で皮内(i.d.)免疫し、最終的なワクチン容量は200μl(100μl/脇腹)とし、ワクチンを37℃に温め、注射前に激しく振盪した。0日目にマウスに初回刺激し、別途示さない限り、同じ用量のAg/アジュバントで9〜11日目に追加免疫した。MPL+TDMと、さらなるTLRアゴニストと、IFN−γと、抗CD40、クラスIIペプチド、または全タンパク質のいずれかとを含む組合せアジュバントを、細胞性免疫の相乗的活性化のための組合せアジュバント(CASAC)と呼ぶ。別途示さない限り、5量体解析のために血液サンプルを19〜21日目に採取した。別途示さない限り、インビボCTLアッセイを20〜22日目に行なった。
【0339】
インビボ細胞傷害性アッセイ
【0340】
初回刺激していないC57BL/6マウス由来の脾臓細胞に、10μg/mlの抗原性ペプチドを培養液中で1時間パルスした。その後、これらの細胞をPBS中で2回洗浄し、0.3μMのCFSEで10分間標識した。対照細胞を培地のみで培養し、3μMのCFSEで標識した。対照細胞および標的細胞(各10個)を混合し、免疫したレシピエントまたは対照レシピエントにi.v.移入した。18時間後、本発明者らは、脾臓を摘出し、フローサイトメトリーでCFSEを解析した。回収した標的(CFSElow)細胞と対照(CFSEhigh)細胞の数を用いて、以下の式により、殺傷率を算出した:殺傷(%)=1−[(免疫した動物内の標的細胞の数/対照細胞の数)/(対照動物内の標的細胞の数/対照細胞の数)]×100。
【0341】
結果
【0342】
IRX−2はペプチドワクチン中の他のアジュバントと相乗的に作用する
【0343】
図44に示すように、多重アジュバント製剤(CpG、ポリI:C、IFN−γを含むオイルエマルジョン)と組み合わせたIRX−2は、抗原特異的T細胞を生成させるのに、アジュバントの組合せのみよりも優れている。図44Aに示すように、ワクチン接種後の抗原特異的T細胞の割合は、IRX−2をワクチンに追加したときに増加した。さらに、図44Bに示すように、T細胞当たりの抗原特異的MHC分子の数は、IRX−2をワクチンに追加したときに増加した。
【0344】
IRX−2は、TLR依存的アジュバントとTLR非依存的アジュバントとを含むペプチドワクチンに追加したとき、抗原特異的T細胞の細胞傷害性を増大させる。
【0345】
図45に示すように、多重アジュバント製剤(CpG、ポリI:C、IFN−γを含むオイルエマルジョン)と組み合わせたIRX−2は、ワクチンの接種によって生成される抗原特異的T細胞の細胞傷害活性を増強するのに、アジュバントの組合せのみよりも優れている。さらに、IRX−2を多重アジュバントワクチンに追加したとき、1回の注射しか必要ないことが図45で示された。
【0346】
実施例15
【0347】
カナリア痘ウイルスベクター(ALVAC)によって発現されたオボアルブミンに対する免疫応答のIRX−2増強
【0348】
以下の実施例は、IRX−2が、ウイルスに基づくワクチン中で発現された抗原に対するT細胞応答を増強することができることを示している。さらに、IRX−2は、3つ組の刺激分子TRICOMでさらに増強される、ウイルスに基づくワクチンに対するT細胞応答を増強することが示された。
【0349】
OVA−ALVACは、オボアルブミンタンパク質を発現するように「改変された」カナリア痘ウイルスである。この構築物の推定される利点は、このウイルスが、TLRアジュバントを不要にする「炎症応答」を生じさせるはずであるということである。OVA−ALVACは、当該部位の全ての細胞(交差提示を必要とせずに、プロセッシングした抗原を提示する抗原提示細胞(DC)を含む)に感染する。当該部位のリンパを集めるリンパ節は、感染した細胞によって分泌されるオボアルブミンと炎症部位から遊走してきたDCの両方を受容する。リンパ節に侵入したAPCは、T細胞(ヘルパーTおよび細胞傷害性T)の主な駆動因子であり、当該部位からリンパ節に流入したオボアルブミンは、抗体産生細胞の生成に必要とされる。2つの異なるオボアルブミン発現構築物:OVA−ALVACおよびOVA−TriCom−ALVACが評価用に利用可能であった。TriCom構築物は、オボアルブミンの他に、LFA−1、ICAM−1およびB7.1を発現するよう改変されたものである。これらの3つのタンパク質は、重要な共刺激タンパク質の過剰発現をもたらすことによって免疫応答を増強すると仮定される。
【0350】
材料および方法
【0351】
免疫応答を評価するためのモデルは、一次免疫と、それに続く14日目の追加免疫であった。両方の日にIRX−2をALVAC構築物とともに送達した。追加のIRX−2を一次免疫の後に9日間投与した。本報告に添付する図の中に示された日に、マウスを屠殺したかまたはマウスから採血した。3つの用量のOVA−ALVACを本研究で使用した(マウス1匹当たり3×10(標準用量)、3×10、3×10PFU)。2つの用量のOVA−TriCom−ALVACも本研究で評価した(マウス1匹当たり3×10(標準用量)、3×10PFU)。リンパ節および脾臓におけるT細胞応答を、マウス優性エピトープ(SIINFEKL)を用いるELISpotで測定した。B細胞応答を、オボアルブミンコーティングプレートと免疫したマウス由来の血清とを用いるELISAで測定した。
【0352】
結果
【0353】
IRX−2はウイルスに基づくワクチンを接種した後に抗体応答を増大させる
【0354】
図46に示すように、ウイルスワクチンを接種した後の抗体応答は、IRX−2の追加によって増強した。IRX−2は、対照と比較してペプチド特異的T細胞応答を全ての時点で一貫して増大させた。
【0355】
IRX−2はウイルスに基づくワクチンを接種した後にT細胞応答を増大させる
【0356】
図47に示すように、IRX−2は、ウイルスに基づくワクチンを接種した後に抗原特異的T細胞応答を増強した。
【0357】
IRX−2はTRICOMを発現するウイルスに基づくワクチンを接種した後にT細胞応答を増強させる
【0358】
IRX−2は、より低い用量のOVA−TriCom−ALVAC構築物で免疫したマウスに対するT細胞応答を増強させた。より低い用量のOVA−TriCom−ALVACでより低いT細胞応答が生じたので、T細胞応答は用量依存的であった。図48に示すように、IRX−2は、マウス1匹当たり3×10pfuで免疫したマウスの対照と比較するとT細胞応答を増強したが、より高い用量のOVA−TriCom−ALVAC(マウス1匹当たり3×10pfu)で免疫したマウスの対照と比較するとT細胞応答を増強しなかった。
【0359】
IRX−2はウイルスに基づくワクチンを接種した後に抗原特異的メモリーT細胞の拡大を増強する
【0360】
図49に示すように、IRX−2は、対照と比較してペプチド陽性メモリーT細胞を増大させた。10PFUで免疫したマウスと10PFUで免疫したマウスは両方とも、IRX−2をワクチンに含めた場合により強い応答を示した。より高い用量のワクチンでの一次応答と拡大応答の差は、一次応答が活性T細胞を測定するものであるのに対し、拡大応答はメモリー細胞に注目するものであることによる可能性がある。
【0361】
IRX−2はウイルスに基づくワクチンを接種した後にIgM抗体応答を増強する
【0362】
図50に示すように、IRX−2は、全ての時点および全てのOVA−ALVAC用量において、オボアルブミン特異的IgM抗体の応答を増強する。
【0363】
IRX−2はウイルスに基づくワクチンを接種した後にIgG1およびIgG2A抗体応答を増強する
【0364】
図51に示すように、血清の希釈対ODとしてプロットした場合、IgG応答とIgG2応答は、対照と比較してIRX−2で免疫したマウスにおいてより大きかった。
【0365】
考察
【0366】
本研究の結果は、癌ワクチンまたは感染性疾患ワクチン中の外から投与される腫瘍抗原に対する細胞性免疫応答を開始させるのに使用することができる強力な治療法としてのIRX−2を提示するものである。放射線照射したPSMA発現細胞に基づくワクチンまたは合成ペプチドコンジュゲートワクチンとともに投与されたIRX−2は、これらの抗原に対するインビボでのT細胞免疫応答を増強することができた。IRX−2活性のこの新規の性質は、IRX−2と、様々な作用機序を代表するように選択された他のアジュバントとを比較することにより確認された。ミョウバンを評価したのは、それが広く使用されているFDA承認アジュバントであるからであり、CpGを評価したのは、それが抗原提示細胞を標的とするTLRアゴニストであるからであり、RIBIアジュバント系(RAS)を評価したのは、それが複数のアジュバント活性を含んでおり、かつマウスモデルにおけるより安全なフロイントアジュバント代替物であるからであった。IRX−2は、コンジュゲートワクチンに対するペプチド特異的DTH応答を増強したが、ミョウバン、CpGまたはRASは、コンジュゲートワクチンに対するペプチド特異的DTH応答を増強しなかった。インビボでのT細胞ペプチド特異的DTH応答のIRX−2増強は、IFN−γ分泌によって測定されるような、エクスビボでの特異的抗原に対する脾臓細胞のT細胞応答の増強を伴った。これらの結果と並行して、ペプチドに対する抗体応答があった。(PBSと比較したとき)全てのアジュバントがタンパク質担体に対する抗体応答およびDTH応答を増強したが、IRX−2だけが、担体にコンジュゲートしたペプチドに対する抗体応答を増強した。IRX−2は、放射線照射したPSMA発現細胞を免疫原として使用したときのペプチド特異的抗体応答も増強した。これらの観察は、ヒトとマウスのタンパク質に80%の相同性があり、また、ペプチドに対する寛容が、他のアジュバントと比較して、IRX−2によって克服される可能性があることを示すので、重要である。
【0367】
ここに報告された研究は、IRX−2が外因性抗原に対するT細胞免疫応答を増強し、かつ治療用癌ワクチン中の複数の抗原タイプと組み合わせて使用することができることを示す重要な前臨床データを提供している。放射線照射細胞とコンジュゲートワクチンの両方に対するT細胞ペプチド特異的応答という独特の性質は、IRX−2の作用の多重標的様式とサイトカイン同士の相乗作用の結果である。IRX−2は、抗原提示の増加だけでなく、その後のT細胞分化、増殖および末梢への遊走の刺激も含む複数の活性を有するワクチンをもたらすT細胞アジュバントプラットフォームを提供する。これらのサイトカインはまた、DC寛容または調節性T細胞バランスをT細胞エピトープに対する応答の活性化へと転換し、メモリーT細胞の産生を増強する。IRX−2はまた、担体または放射線照射細胞におけるT細胞ヘルパーエピトープを増強し、効果的なT細胞応答の発達をさらに刺激する。
【0368】
本出願の全体を通して、米国特許を含む様々な刊行物は、著者および年および特許番号により参照される。これらの刊行物についての完全な引用を以下に列挙する。これらの刊行物および特許の完全な形での開示は、本発明が関係する技術の状態をより十分に記載するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0369】
本発明は説明的な様式で記載されており、使用された専門用語は、単語の限定する性質ではなく、説明する性質を持つことを意図することが理解されるべきである。
【0370】
本発明の多数の修飾および変形が上記の教示に鑑みて可能であることは明らかである。したがって、記載された発明の範囲内において、本発明は具体的に記載されたものとは別の方法で実施され得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンとを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物は、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、膵癌、肺癌、脳腫瘍、結腸癌、卵巣癌、舌癌、咽頭癌、前立腺癌、および黒色腫からなる群から選択される癌の治療用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗原が、天然タンパク質、組換えタンパク質、化学合成タンパク質、またはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原が、AFP、α−アクチニン−4、ARTC1、BAGE、BCR−abl、B−RAF、CA15−3、CA19−9、CA−125、CASP−5、CASP−8、β−カテニン、癌胎児性抗原、修飾された癌胎児性抗原、癌関連突然変異ムチン、cdc27、CDK4、CDKN2A、CEA、クロモグラニンA、COA−1、サイクリン依存的キナーゼ−4、dek−can融合タンパク質、EFTUD、伸長因子2、上皮増殖因子受容体EGFRvIII、エプスタインバーウイルスEBNA遺伝子産物、ETA、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GAGE、ガングリオシド、GPNMB、gp75/TRP−1、gp100、H1FT、HAGE、HERV−K−MEL、HER2/neuタンパク質、HIP−55、HIV−1、HIV−2、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、キネシン2、KK−LC−1、KLK−4、KM−HN−1、KSA、LAGE、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、MAGE、マンマグロビン−A、MART−1/Melan A、MART−2、ME1、黒色腫プロテオグリカン、ミオシンクラスI、MUC−1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、NA−88、NCAM−180、neo−PAP、NFYC、NY−BR、NY−ESO−1、OA1、OGT、OS−9、p15、p21−ras、p53、p185 HER2/neu、パピローマウイルスE7、パピローマウイルスE6、pmi−RARα融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、PSA、PSMA、RAGE、K−ras、N−ras、RAB38、RBAF600、SAGE、SIRT2、SNRPD1、sp17、SYT−SSX1融合タンパク質、SYT−SSX2融合タンパク質、TA 90、TAG、TGF−β1抗アポトーシス因子、TGF−βRII、チログロブリン、TRAG−3、トリオースリン酸イソメラーゼ、TRP2、TRP2−INT2、腫瘍タンパク質D52、チロシナーゼ、WY−1、それらの断片、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ワクチンが、ウイルスベクター中にコードされた少なくとも1種の抗原を含むものとしてさらに規定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MA)、NYVAC、アビポックス、TROVAX、鶏痘、およびカナリア痘からなる群から選択されるポックスウイルスである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記カナリア痘が、ALVACおよびALVAC(2)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アバタセプト、ベラタセプト、CD28−SuperMAB、B7/CD28共刺激分子、TNFスーパーファミリー共刺激分子、SLAMファミリー共刺激分子、およびそれらの組合せからなる群から選択される共刺激分子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
抗CTLA−4をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
Treg枯渇化分子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記Treg枯渇化分子がデニロイキンジフチトクスである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
血管新生関連抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
(1)CD80、ICAM−1、およびLFA−3;(2)IL−12およびGM−CSF;(3)IL−12、GM−CSF、およびTNF−α;(4)CD80およびIL−12;ならびに(5)CD86、GM−CSF、およびIL−12からなる群から選択される増強剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
化学療法、放射線、抗血管新生療法、およびそれらの組合せからなる群から選択される治療とさらに組み合わせた、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、1日1回の両側性外リンパ注射によって投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記初代細胞由来生物製剤が、前記サイトカインIL−12、GM−CSFおよびG−CSFをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
内因性抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
有効量の化学的インヒビターならびにインドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、CoxIIインヒビター、およびそれらの組合せからなる群から選択される非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
IL−1が60〜6,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−2が600〜60,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−6が60〜6,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−8が6000〜600,000pcg/mLの濃度で存在し、かつIFN−γおよびTNF−αが200〜20,000pcg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
toll様受容体非依存的アジュバント、toll様受容体依存的アジュバント、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて含む、患者における免疫応答を増強するための組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種のアジュバントが、toll様受容体非依存的アジュバント、toll様受容体依存的アジュバント、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アジュバントが、前記初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含むワクチンとを含む組成物を投与する工程を含む、ワクチン接種方法。
【請求項26】
前記抗原が、AFP、α−アクチニン−4、ARTC1、BAGE、BCR−abl、B−RAF、CA15−3、CA19−9、CA−125、CASP−5、CASP−8、β−カテニン、癌胎児性抗原、修飾された癌胎児性抗原、癌関連突然変異ムチン、cdc27、CDK4、CDKN2A、CEA、クロモグラニンA、COA−1、サイクリン依存的キナーゼ−4、dek−can融合タンパク質、EFTUD、伸長因子2、上皮増殖因子受容体EGFRvIII、エプスタインバーウイルスEBNA遺伝子産物、ETA、ETV6−AML1融合タンパク質、FLT3−ITD、FN1、GAGE、ガングリオシド、GPNMB、gp75/TRP−1、gp100、H1FT、HAGE、HERV−K−MEL、HER2/neuタンパク質、HIP−55、HIV−1、HIV−2、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、キネシン2、KK−LC−1、KLK−4、KM−HN−1、KSA、LAGE、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、MAGE、マンマグロビン−A、MART−1/Melan A、MART−2、ME1、黒色腫プロテオグリカン、ミオシンクラスI、MUC−1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、NA−88、NCAM−180、neo−PAP、NFYC、NY−BR、NY−ESO−1、OA1、OGT、OS−9、p15、p21−ras、p53、p185 HER2/neu、パピローマウイルスE7、パピローマウイルスE6、pmi−RARα融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、PSA、PSMA、RAGE、K−ras、N−ras、RAB38、RBAF600、SAGE、SIRT2、SNRPD1、sp17、SYT−SSX1融合タンパク質、SYT−SSX2融合タンパク質、TA 90、TAG、TGF−β1抗アポトーシス因子、TGF−βRII、チログロブリン、TRAG−3、トリオースリン酸イソメラーゼ、TRP2、TRP2−INT2、腫瘍タンパク質D52、チロシナーゼ、WY−1、それらの断片、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
共刺激分子を投与することによってT細胞を共刺激する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
抗CTLA−4を投与することによってT細胞の阻害を妨げる工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
Treg枯渇化分子を投与することによってTregを枯渇させる工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
血管新生関連抗原を投与することによって腫瘍内血管の誘導および持続的発達を予防する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
増強剤を投与する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
化学療法、放射線、抗血管新生療法、およびそれらの組合せからなる群から選択される治療を行なう工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記投与工程が、1日1回の外リンパ注射による前記組成物の投与としてさらに定義される、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記初代細胞由来生物製剤が、前記サイトカインIL−12、GM−CSFおよびG−CSFをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が内因性抗原をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、有効量の化学的インヒビターと、インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、CoxIIインヒビター、およびそれらの組合せからなる群から選択される非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
IL−1が60〜6,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−2が600〜60,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−6が60〜6,000pcg/mLの濃度で存在し、IL−8が6000〜600,000pcg/mLの濃度で存在し、かつIFN−γおよびTNF−αが200〜20,000pcg/mLの濃度で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
ナイーブT細胞の産生を刺激する工程と、未成熟な樹状細胞を成熟させる工程と、得られた成熟樹状細胞による前記ナイーブT細胞への前記抗原の提示を可能にする工程とをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
toll様受容体非依存的アジュバント、toll様受容体依存的アジュバント、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアジュバントを投与する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
免疫抑制を逆転させ、癌に対する免疫を獲得する方法であって、
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む相乗量の初代細胞由来生物製剤と、少なくとも1種の抗原を含む癌ワクチンとを含む組成物を投与する工程と
ナイーブT細胞の産生を刺激する工程と
未成熟な樹状細胞を成熟させる工程と
得られた成熟樹状細胞による前記ナイーブT細胞への前記抗原の提示を可能にする工程と
を含み、それによって免疫抑制を逆転させ、前記癌に対する免疫を獲得する方法。
【請求項41】
患者における外因性抗原に対する免疫応答を生じさせる方法であって、
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤のアジュバントと、少なくとも1つの外因性抗原とを投与する工程(ここで、前記外因性抗原は、通常は免疫応答を生じさせない)と
前記患者において免疫応答を生じさせる工程と
を含む方法。
【請求項42】
患者における免疫応答を増強する方法であって、
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて投与する工程と、
前記初代細胞由来生物製剤と前記アジュバントの相乗的な相互作用によって前記患者の前記免疫応答を増強する工程と
を含む方法。
【請求項43】
前記少なくとも1種のアジュバントが、TLR非依存的アジュバント、TLR依存的アジュバント、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
TLR非依存的アジュバントを投与することによって、抗原を送達および濃縮し、抗原を抗原提示細胞にターゲッティングし、かつ抗原および免疫増強物質を共局在させる工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
TLR依存的アジュバントを投与してTLRを活性化させることによって、前記患者の免疫系を直接刺激する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの外因性抗原を投与する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記アジュバントが前記初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
免疫系の機能を増大させる方法であって、
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNF−α、およびIFN−γを含む初代細胞由来生物製剤を、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて投与する工程(ここで、前記アジュバントは、前記初代細胞由来生物製剤の作用機序とは異なる作用機序を有する)と
前記免疫応答の機能を増大させる工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公表番号】特表2012−526853(P2012−526853A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511064(P2012−511064)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/035060
【国際公開番号】WO2010/132867
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505401687)アイ アール エックス セーラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】