説明

一体式ワイヤメッシュダンパーを使用する追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受

【課題】高い荷重能力およびダンピングを有するガス軸受を提供する。
【解決手段】追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受(10)のダンパーブリッジ(36)は、ダンパーブリッジ(36)の各々の側にダンパー空洞(42)を形成するための、軸受パッド(12)および外側リム(34)の軸方向長さ(40)より短い軸方向長さ(38)を有する。一体式ワイヤメッシュダンパー(62)がダンパーブリッジ(36)の各々の側のダンパー空洞(42)内に位置する。一体式復心ばね(46、48)が、軸受パッド(12)に半径方向および回転の追従性を与えるように、内側リム(32)と外側リム(34)の間に配置される。このオイルフリー軸受設計は、ロータ形状の変化に対する追従性を保持しながら、今日追従性エーロフォイル軸受設計に固有の低いダンピングおよび低い荷重能力特性に対処する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に軸受に関し、より詳しくは、一体式ワイヤメッシュダンパーを使用する追従性ハイブリッドガス軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンターボ機械などの高速機器、および蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機などの航空機転用応用分野は、設計動作速度に到達する前にいくつかの固有周波数または危険速度を通過しなければならない。システムが固有周波数または危険速度で動作するとき、システム/ロータの振動振幅は大きくなる。ロータ不均衡から生じるこれらの振動は、適切にダンピングされない場合、破壊的にまたは壊滅的にさえなる可能性がある。適切なダンピング特性を有する軸受は、機器が安全に危険速度を通過できるように同期回転数振動を制限しまたは減衰させ抑える。さらに、良好な軸受ダンピングは、ロータ固有振動数の分数調波励振を抑えることによって高速でのロータ動的安定性に寄与する。
【0003】
ターボ機械によって作り出される振動を減衰させるために、流体または油膜ジャーナル軸受が永く使用されてきている。航空機ガスタービンエンジンおよび工業的遠心圧縮機のロータは、振動振幅を制御するために回転かご型復心ばねによって支持される油ベースのスクイーズ膜ダンパー軸受をしばしば使用する。流体膜軸受では、薄い流体膜が回転するジャーナル表面と静止する軸受表面の間に緩衝部を形成し、ロータからの振動を減衰させる。スクイーズ膜ダンパー軸受では、液体、通常油の形態の流体の薄い膜が2つの非回転円筒状表面によって圧搾される。1つの表面は静止し、一方もう1つは復心ばね構造体およびロータの回転に伴う軌道によって位置決めされる。ロータ軌道運動の結果としての流体膜の圧搾が、軸受支持部を介してロータ振動を減衰させる。
【0004】
最も簡単なスクイーズ膜ダンパー軸受設計は、復心ばねを含まない。回転要素軸受の外側レース、または流体膜軸受の場合の外側軸受シェルは、軸受外側直径とハウジング内側直径の間のクリアランス空間内を浮遊しかつ押圧することができる。この設計形態に機械的復心ばねがないことは、このダンパージャーナルは起動時に底に達しているであろうことを意味する。速度が増加し軸が回転し始めるとき、このダンパーのジャーナル(軸受シェル外側表面)は離昇するであろう。スクイーズ膜ダンパー内の油膜は、従来型の流体膜軸受のような直接的な剛性は生じさせない。しかしながら、このダンパーは直接的な剛性のような挙動を生み出す。この直接的な剛性は、剛性のような(ばね)特性を示す、クロスカップル(cross−coupled)減衰係数に起因する。
【0005】
この心に置かれていないダンパーは、スクイーズ膜ダンパー設計の最も非線形なもののうちの1つである。この非線形挙動の原因になる2つの基本的なメカニズムが存在する。この2つの非線形メカニズムの第1は、クロスカップル減衰係数によって生じる非線形特性に帰せられる。この型式のダンパーに存在する非線形挙動の第2の源は、ダンパージャーナルが底に達することの直接的な結果として生じる。
【0006】
復心ばねをスクイーズ膜ダンパー内に設ける最も簡単な手段は、エラストマーOリングの使用を介することである。この設計の利点は、その簡単さ、製造の容易さ、および小さな外囲容器内にダンパーを内蔵する能力である。この設計に伴う欠点のうちのいくつかは、エラストマーで達成できる限られた範囲の剛性に帰せられる。材料差異、およびその特性に対する温度および時間の影響に起因して、エラストマー材料に良好な確実性の程度を有する剛性を予測することは困難である。このOリング設計はクリープも受けやすく、ダンパーを底に達するようにさせ、それは上記で論じたようにバイリニア(bi−linear)ばね挙動に導く可能性がある。
【0007】
特に航空機エンジンで、最も一般的に使用されるスクイーズ膜ダンパー設計は、回転かご型支持ダンパーである。そのような設計に必要な顕著な特徴は、ダンパー長さと比較して必要とされる比較的大きな軸方向空間である。これがこのダンパー設計の主要な欠点の1つである。このダンパー用の復心ばねを形成する回転かごは、ダンパーそれ自体の軸方向空間の3から4倍の空間を非常にしばしば必要とする。
【0008】
回転かご型ばねを組み立て、かつジャーナルをクリアランス空間内に復心させることは、特殊な工具および技能を要する。この回転かご型ばねは、ダンパー端部シール設計および組み立ても複雑にする。軸重量に起因する重力荷重に対応するために、ばねアセンブリをオフセットさせることも非常に困難である。ダンパージャーナルとハウジングの間の平行度を維持することは、この設計に不確実性および複雑性を加える別の要因である。
【0009】
別の油ベースのスクイーズ膜ダンパー設計には、一体式のダンパー復心ばねが含まれる。この設計では、片持ちの支持リブが、それらが両端のところで支持している扇形部と一緒に復心ばね要素を形成する。この扇形部と外側リングの間の小さな隙間がスクイーズ膜ダンパークリアランス空間を形成する。回転かご型ばね設計と違って、この一体式ダンパー復心ばね設計は、軸受によって占有される既存の長さを超えるどのような追加の軸方向空間も占有しない。完成したアセンブリは、荷重と特定の用途に対する要求される剛性およびダンピングに応じて、任意の数の扇形部を含むことができる。ワイヤ放電加工機(EDM)は、所望のクリアランスを非常に高い精度で得るための優れた手段とダンパージャーナルとハウジングの間の優れた平行度を維持する再現性とをもたらす。
【0010】
これらのスクイーズ膜軸受構造によって提供される利点にもかかわらず、油潤滑軸受は、油漏れ、ろ過および導管を伴う、ずっとより高いコストおよびメンテナンスの負担ならびに信頼性の問題点を負わせる。油潤滑軸受のこれらのおよび他の欠点は、業界が追従性エーロフォイル(compliant air foil)軸受を開発することを追及するように導いてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5603574号
【特許文献2】米国特許第5743654号
【特許文献3】米国特許第6379046号
【特許文献4】米国特許第6630761号
【特許文献5】米国特許第6695478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、今日エーロフォイル技術は、小さな軽量のロータおよび機械、すなわち航空機のエアサイクルマシン(ACM)に主として限定されてきている。したがって、空気軸受を航空機に組み込むことの利益はよく理解されているが、実際の設計を展開するためには重大な技術的難問を克服しなければならない。これらの難問には、今日のエーロフォイル軸受技術より相当に高い荷重能力およびダンピングを有するガス軸受を開発することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔に言うと、追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受は、複数の追従性ハイブリッド軸受パッドと、この複数の軸受パッドに隣接する内側リム、外側リム、および内側リムと外側リムの間に半径方向かつ同心で挿入されるダンパーブリッジであって、複数の軸受パッドおよび外側リムの軸方向長さより短い軸方向長さを有し、それによってダンパーブリッジの各々の側にダンパー空洞を形成するダンパーブリッジと、ダンパーブリッジの各々の側のダンパー空洞内に位置する一体式ワイヤメッシュダンパーとを備える。
【0014】
本発明の別の態様では、追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受は、少なくとも1つの軸受パッドが、流体静力学的凹部と、加圧ガスの流れを供給するための毛細管リストリクター(capillary restrictor)とを含む複数の追従性ハイブリッド軸受パッドと、この複数の軸受パッドに隣接する内側リム、外側リム、および内側リムと外側リムの間に半径方向かつ同心で挿入されるダンパーブリッジであって、複数の軸受パッドおよび外側リムの軸方向長さより短い軸方向長さを有し、それによってダンパーブリッジの各々の側にダンパー空洞を形成するダンパーブリッジとを備える。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受は、少なくとも1つの軸受パッドが、流体静力学的凹部と、加圧ガスの流れを供給するための毛細管リストリクターとを含む複数の追従性ハイブリッド軸受パッドと、この複数の軸受パッドに隣接する内側リム、外側リム、および内側リムと外側リムの間に半径方向かつ同心で挿入されるダンパーブリッジであって、複数の軸受パッドおよび外側リムの軸方向長さより短い軸方向長さを有し、それによってダンパーブリッジの各々の側にダンパー空洞を形成するダンパーブリッジと、ダンパーブリッジの各々の側のダンパー空洞内に位置する一体式ワイヤメッシュダンパーと、内側リムと外側リムの間に配置される複数の一体式復心ばねとを備える。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、同様な文字が複数の図面にわたって同様な部品を示す添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとき、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受アセンブリの部分横断面斜視図である。
【図2】図1の追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受ハウジングの端面図である。
【図3】図2の線3−3に沿ってとられた、追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受ハウジングの横断面図である。
【図4】図2の追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受ハウジングの軸受ハウジング径間中央扇形部の拡大横断面図である。
【図5】図4の軸受ハウジング径間中央区画の流体静圧学的凹部および毛細管リストリクターの拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
同一の参照番号が様々な図にわたって同じ要素を表示する図面を参照すると、図1から5は、本発明の一実施形態による全体的に10のところに示される追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受を示す。この軸受10は、複数の追従性ハイブリッド軸受パッド12を含む。各軸受パッド12は、矢印18の方向に通常回転する回転ロータまたはシャフト16に近接するパッド表面14を含む。一実施形態では、この軸受パッド12は、オフセットする一体式ばねを有する傾いたパッドを備える(図2)。各軸受パッド12は、軸受パッド12の重量を最小にするための軸方向スロット20も含む。各軸受パッド12のパッド表面14は、深さ24および幅26を有する流体静力学的凹部22も含む(図5)。例えば、この流体静力学的凹部22は、軸受表面14とロータ表面の間のガス膜厚さの2から10倍の深さを有することができる。図示の実施形態では、流体静力学的凹部22の面積の軸受表面14の面積に対する比は約0.027である。一般に、軸受表面積に比較した流体静力学的凹部22の面積が小さいほど、軸受安定性の余地が高くなる。
【0019】
一実施形態では、この流体静力学的凹部22は各軸受パッド12上で中央に配置され、したがって、シャフト16の周りで対称的に配置される。別の実施形態では、この流体静力学的凹部22は軸受パッド12上で中心をずれている。しかしながら、この凹部22がたとえ軸受パッド12上で中心がずれていても、この流体静力学的凹部22をシャフト16の周りに対称的に配置することが依然として可能である。各流体静力学的凹部22は、空気、等などの加圧ガスの流れを軸受パッド12に供給するために、毛細管リストリクター28と流体連通している。各毛細管リストリクター28は、圧縮機バイパス流れ等などの加圧ガス源30に連結される(図1)。一実施形態では、この毛細管リストリクター28は、流体静力学的凹部22に対して非対称的に配置される。別の実施形態では、この毛細管リストリクター28は、流体静力学的凹部22に対して対称的に配置される。この加圧ガスは、シャフト16が起動中底に着かないように流体静力学的上昇力を供給する。換言すれば、この加圧ガスは、シャフト16が回転していなくても、シャフト16を軸受パッド12から離れて上昇させることができるように、上昇力を供給する。一実施形態では、このガスは約206.8kPa(30psig)から約1379kPa(200psig)の間の範囲内の圧力を有する。
【0020】
別の実施形態では、この軸受10は流体静力学的凹部22を有さないが、軸受パッド12の表面14に対して毛細管リストリクター28のみ有する。この形態での毛細管リストリクター28は、軸54、58周りで中心におくことができ、あるいは配置を軸54、58に対して非対称的にして、軸受パッド12の前縁に向かってオフセットさせることができる。
【0021】
図示の実施形態では、この軸受10は、シャフト16の周りに対称的に配置される4つの軸受パッド12を有し、各軸受パッド12は毛細管リストリクター28を有する単一の流体静力学的凹部22を含む。しかしながら、本発明は軸受パッド、凹部および毛細管リストリクターの数によって限定されず、本発明は軸受パッド、凹部およびリストリクターの任意の所望の数で実施できることは理解されるであろう。
【0022】
図3および4を参照すると、この軸受10は軸受パッド12に隣接する内側リム32、外側リム34および内側リム32と外側リム34の間に半径方向かつ同心に挿入されるダンパーブリッジ36とを含む。隙間35が内側リム32を、全体的に複数の軸受パッド12に対応する複数の扇形部50に仕切る。このダンパーブリッジ36は、軸受パッド12および外側リム34の軸方向長さ40より短い軸方向長さ38を有し、それによってダンパーブリッジ36の各側に幅44を有するダンパー空洞42を形成する。
【0023】
本発明の一態様は、軸受10が内側リム32と外側リム34の間に配置される複数の一体式復心ばね46、48を含むことである。一実施形態では、軸受10の各扇形部50は、1対の一体式復心ばね46、48を含み、ばね46は前縁一体式ばねであり、ばね48は後縁一体式ばねである。図示の実施形態では、この一体式復心ばね46、48は一般に「S」字形の横断面形状を有する。この一体式復心ばね46、48は、ワイヤ放電加工機(EDM)の技術を使用して形成することができる。軸受パッド12と外側リム34の間の隙間60は、ばね46、48が高速、高温用途のために発生する遠心力および熱の影響に対し適応するための、クリアランス空間を提供する。同様に、このクリアランス空間60は、軸受パッド重量および軸受アセンブリの全体重量を減少させる。この一体式復心ばね46、48は、従来型のバンプフォイル(bump foil)軸受によって示される非線形挙動と違って、線形挙動をもたらす。この一体式復心ばねの設計は、追加の軸方向長さを必要とする従来型の回転かご型設計と違って、軸受パッド12の軸方向長さ40を超えるどのような追加の軸方向空間も占有しない。油ベースの、一体式ワイヤスクイーズ膜ダンパーの一例は、West Greenwich,RIのKMC,Inc.(www.kmcbearings.com)から商業的に入手可能である。
【0024】
図4に示すように、各扇形部50用の対のばね46、48は、軸受安定性および荷重能力を大いに高めることを示してきている、傾いたパッドの動きまたはパッド回転を発生させるように軸受パッド12に対してオフセットしている。換言すれば、このばね46、48は、軸受パッド12に対して非対称に配置される。具体的には、ばね46の中央線は扇形部50の水平軸54に対してある角度52を形成し、ばね48の中央線は、水平軸54に対して実質的に直角な垂直軸58に対してあるより小さな角度56を形成する。角度52より小さい角度56を有することは、軸受パッド12上に中心から外れるモーメントを発生させ、それによって軸受パッド12の広範囲な傾動または回転を作り出す。一実施形態では、角度52、56の差は約10度と約25度の間の範囲であることができる。例えば、角度52は約28度であることができ、角度56は約18度、または約10度の差であることができる。その上、角度52、56の差は、高速、高温用途のために発生する遠心力および熱的影響から生じる軸受穴の半径方向伸びを可能にするように、軸受10の軸受パッド12が半径方向および回転的に追従性であることを可能にする。図示の実施形態では、軸受10は各扇形部に1対のばね46、48を伴う4つの扇形部50を有する。しかしながら、本発明は具体的な用途に対する荷重および要求される剛性に応じて、任意の所望の数の扇形部および各扇形部内の任意の所望の数のばねを有して実施できることは理解されるであろう。
【0025】
上記で説明したように、一体式ばね46、48の非対称配置および流体静力学的凹部22の非対称配置が軸受パッド12の広範囲な傾動および回転を生じさせる。しかしながら、この軸受パッド12の広範囲な傾動および回転は、前縁一体式ばね46に後縁一体式ばね48より相対的に低い半径方向剛性を与えることによっても達成することができる。例えば、前縁一体式ばね46は約75,000ポンド/インチの半径方向剛性を有することができ、一方後縁一体式ばね48は約85,000ポンド/インチの半径方向剛性を有することができる。ばね46、48の間の半径方向剛性のこの差が軸受パッド12の広範囲な傾動および回転を引き起こす。
【0026】
本発明の別の態様は、軸受10がダンパーブリッジ36の各側のダンパー空洞42内に位置するオイルフリー一体式ワイヤメッシュダンパー(IWMD)62を含むことである。換言すれば、このIWMD62は、図1に示すように軸受パッド12と外側リム34の間に位置する。このIWMD62は、網構造に編まれた金属ワイヤまたはプラスチック線を備える編まれたワイヤメッシュである。この編み工程がかみ合ったループ(interlocking loop)の網を生じさせる。これらのループは、網を変形させることなく同じ平面内で互いに対し相対的に移動することができ、編まれた網に2方向伸びを与える。引っ張りまたは圧縮応力に曝されるとき、各ループが小さなばねとして振舞うので、編まれた金属は生来的な弾力性を有する。編まれた金属は高い機械的オイルフリーダンピング特性および非線形ばね定数ももたらす。振動および機械的ショックは、激しい共振状態をなくさせ、動的過荷重からの十分な保護を与えるように、効果的に制御することができる。IWMD62が従来型のエーロフォイル軸受と比較して少なくとも30倍のダンピングを与えることを調査は示している。このIWMD62は、鋼、インコネル、アルミニウム、銅、タンタル、プラチナ、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、等などの様々な材料から作ることができる。IWMD62の密度および寸法は、具体的な設計用途に合致するように調整することができる。ワイヤメッシュダンパーの一例は、Edison,NJのMetex Corporation(www.metexcorp.com)から商業的に入手可能である。
【0027】
本発明の追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受10と従来型の軸受アセンブリの間に重要な相違点が存在する。上記で述べたように、従来型の油ベース一体式ワイヤスクイーズ膜ダンパーは、West Greenwich,RIのKMC,Inc.から商業的に入手可能である。「S」字形ばねを使用するこのKMC一体式ワイヤスクイーズ膜ダンパー(ISFD)は、ダンピングが流体を1つの制御空間から別の制御空間に移動させることから生じる軸受支持体である。クリアランス空間またはオリフィスを通る流体のこの移動は、軸受支持システム内でダンピングとして実現される「流体ベース」の粘性消散を作り出す。通常、このスクイーズ膜流体は、ISFDが組み込まれる回転要素軸受またはジャーナル軸受の潤滑流体と同じである。従来型のISFD曲げ枢動軸受アセンブリでは、対称的に位置決めされる「S」字形ばねによって、曲げ枢動軸受パッドを有する各内側リム四分円の半径方向移動が可能になる。この曲げ枢動によって、軸受パッドが曲げ枢動梁の基部周りを枢動または回転するのが可能になる。したがって、この「S」字形ばねは、半径方向追従性を与え、一方軸受パッド内の回転追従性または付勢は、この曲げ枢動を介して達成される。各々の機構、曲げ枢動および「S」字形ばねは、単一の機能を有する。
【0028】
対照的に、一体式ワイヤメッシュダンパー62を使用する追従性ハイブリッドジャーナル軸受10は、流体を圧搾するまたは変位させることを介したダンピングを発生させず、そうではなくダンピングは機械的構造、すなわちワイヤメッシュダンパー62を介して発生する。本発明の軸受10内の潤滑流体はガスであり、軸受支持体内に粘性消散またはダンピングを全く与えず、ダンピングはクーロン摩擦と組み合わされるヒステリシス構造的ダンピング(hysteretic structural damping)から生じる。この構造的ダンピングは、数千の互いに一斉に曲がる個々のワイヤセグメントから生じ、クーロン摩擦はワイヤの互いの上の微少滑りから生じる。この組み合わせが、特にオイルフリー動作を必要とするあるいはそれから利益を得ることができる機械に対して、優れたオイルフリー源のダンピングを与える。一体式ワイヤメッシュダンパー62を使用する追従性ハイブリッドジャーナル軸受10の1つの有利な特徴は、半径方向追従性および回転追従性機能が「S」字形ばね46、48だけを介して達成されることである。これは、本発明の「S」字形ばね46、48が内側リム32の各四分円または扇形部50の周りに対称的に配置されていないからである。「S」字形ばね46、48のこの非対称位置決めが、半径方向移動に加え回転を可能にする、個々の軸受パッド12内での回転的付勢を与える。2重の機能を発揮する1つの機構を有することに加え、別の利点は、曲げ枢動が存在しないために、占有される半径方向空間が減少することであり、これがこの軸受の重量を減少させる。これは、重量が性能に対する主要な駆動要因であるので、宇宙空間用途で卓絶するものとなる。さらなる軸受重量の減少は、「S」字形ばね46、48の間の材料のEDM機械加工から生じる。
【0029】
この軸受10は、IWMD62の望まれない軸方向移動を防止し、かつ端部プレート圧縮のレベルに応じて剛性およびダンピング係数を同調させるためにも使用できる、ダンパー圧縮ランド68、70それぞれを形成する1対の端部プレート64、66も含む。
【0030】
本発明の追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受10は、いくつかの動作モードで使用することができる。1つの動作モードは、純粋に流体動力学的動作モードである。この最も単純な動作モードでは、一体式ワイヤメッシュダンパーを使用するこの追従性ガス軸受は、流体静力学的能力を全く伴わない追従性パッドを有する。この動作モードは、余剰の加圧ガスが実現不可能であった状況に適用可能であろう。この動作モードは、追従性パッドとロータの間に流体動力学を介して圧力を作り出す。この動作モードでは、軸受パッドは所与の荷重に対して対応するロータ回転数のところでロータ表面から離昇するであろう。しかしながら、流体動力学が効いて軸受パッドが離昇する前に、過渡的なこすり区域が存在する。
【0031】
別の動作モードは、流体動力学的動作からハイブリッド(流体動力学的および流体静力学的)動作までの過渡期から構成される。このモードは、例えば、起動中に外部流体静圧的圧力が使用できなく、この最初の動作形態が流体動力学によって支配されるとき存在するであろう。この状況では、ロータ表面と軸受パッド表面の間に摺動摩擦が存在する、過渡的こすり区域が存在する。最終的に軸受パッドが流体動力学によって離昇する。各軸受パッドに対する流体静力学は、ある回転数のところで開始し始め、ターボ機械台内の主要な作動流体からの放出される圧力ガスを介して動力供給される可能性が最も高いであろう。この点で、軸受はハイブリッドモードで動作している。
【0032】
別の動作モードは、流体静力学モードからハイブリッドモードへの過渡期である。この状況は、例えば、機械の全動作順序を通して圧力ガスが使用可能なときに存在するであろう。ロータ回転前に圧力ガスを有することは、このガスが過渡期のこすりを防止し、起動トルクを減少させ、かつエンストなどの非常事態での安全なシャットダウンを可能にすることができるので有利である。この動作モードでは、軸受パッドはロータを回転なしで上昇させるであろうが、これは純粋な流体静力学である。ロータが回転数を増加させるとき、流体動力学からの寄与がより優勢になる。高回転数のところで、ハイブリッド動作が達成される。
【0033】
上記で説明したように、本発明の追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受10は、今日のエーロフォイル軸受設計に固有の低ダンピングおよび低荷重能力特性に対処するオイルフリー軸受設計を提供する。その上、本発明の追従性ハイブリッドガス軸受は、従来型フォイル軸受技術より(30倍またはそれを超える)ずっと高いダンピング、相当により大きな荷重能力および相当により高い製造再現性を提供する。さらに、本発明のオイルフリーガス軸受は、流体膜または油ベースのダンパー設計と比較するとき、相当なコスト節減をもたらす。
【0034】
この記載された説明は、最良の形態を含む本発明を開示するための、かつどのような当業者も本発明を作りかつ使用することができるための実施例を使用している。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文字どおりの言語から異ならない構造要素を有する場合、あるいはそれらが特許請求の範囲の文字どおりの言語からごくわずかな相違を有する均等な構造要素しか含まない場合は、特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10 追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受
12 軸受パッド
14 パッド表面
16 ロータまたはシャフト
18 矢印
20 軸方向スロット
22 流体静力学的凹部
24 深さ
26 幅
28 毛細管リストリクター
32 内側リム
34 外側リム
35 隙間
36 ダンパーブリッジ
38 軸方向長さ(ダンパーブリッジ)
40 軸方向長さ(軸受パッド)
42 ダンパー空洞
44 幅(ダンパー空洞)
46 一体式復心ばね
48 一体式復心ばね
50 扇形部
52 角度
54 水平軸
56 角度
58 垂直軸
60 隙間
62 一体式ワイヤメッシュダンパー(IWMD)
64 端部プレート
66 端部プレート
68 ダンパー圧縮ランド
70 ダンパー圧縮ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の追従性ハイブリッド軸受パッド(12)と、
前記複数の軸受パッド(12)に隣接する内側リム(32)、外側リム(34)、および前記内側リム(32)と外側リム(34)の間に半径方向にかつ同心で挿入されるダンパーブリッジ(36)であって、前記複数の軸受パッド(12)および前記外側リム(34)の軸方向長さ(40)より短い軸方向長さ(38)を有し、それによって該ダンパーブリッジ(36)の各々の側にダンパー空洞(42)を形成するダンパーブリッジ(36)と、
前記ダンパーブリッジ(36)の各々の側の前記ダンパー空洞(42)内に位置する一体式ワイヤメッシュダンパー(62)とを備える、追従性ハイブリッドガスジャーナル軸受(10)。
【請求項2】
前記内側リム(32)と前記外側リム(34)の間に配置される複数の一体式復心ばね(46、48)をさらに備える、請求項1記載の軸受。
【請求項3】
前記複数の一体式復心ばね(46、48)が「S」字形の横断面形状を有する、請求項2記載の軸受。
【請求項4】
隙間(35)が、前記内側リム(32)を、前記複数の軸受パッド(12)に全体的に対応する複数の扇形部(50)に仕切る、請求項2記載の軸受。
【請求項5】
各扇形部(50)が1対の一体式復心ばね(46、48)を含む、請求項4記載の軸受。
【請求項6】
前記1対の一体式復心ばねのうちの一方(46)が、前記軸受(10)の水平軸(54)に対して第1の角度(52)を形成し、かつ前記1対の一体式復心ばねのうちの他方(48)が、前記軸受(10)の垂直軸(58)に対して第2の角度(56)を形成し、前記第1の角度(52)が前記第2の角度(56)と異なる、請求項5記載の軸受。
【請求項7】
前記1対の一体式復心ばね(46、48)のうちの一方が、第1の半径方向剛性を有し、前記1対の一体式復心ばね(46、48)のうちの他方が、第1の半径方向剛性と異なる第2の半径方向剛性を有する、請求項5記載の軸受。
【請求項8】
各軸受パッド(12)が、ある深さ(24)とある幅(26)を有する流体静力学的凹部(22)を伴うパッド表面(14)を含む、請求項1記載の軸受。
【請求項9】
加圧ガスの流れを前記軸受(10)に供給するための、前記流体静力学的凹部(22)と流体連通する毛細管リストリクター(28)をさらに備える、請求項8記載の軸受。
【請求項10】
前記毛細管リストリクター(28)が前記流体静力学的凹部(22)に対して非対称的に配置される、請求項9記載の軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112486(P2010−112486A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−286268(P2008−286268)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】