説明

一体成形体

【課題】リン化合物を含む樹脂成形体に、付加反応型シリコーン系組成物が接触しても、リン化合物が付加反応型シリコーン系組成物の硬化を阻害しない技術を提供する。
【解決手段】リン化合物を含む熱可塑性樹脂成形体と、付加反応型シリコーン系組成物と、部材とを備え、熱可塑性樹脂成形体と付加反応型シリコーン系組成物とが接触する一体成形体であって、リン化合物として5価のリン化合物を使用する。熱可塑性樹脂成形体は、耐熱性の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を成形してなる樹脂成形体は、成形が容易、軽量等の特徴を有するため、様々な製品、部品に使用されている。
【0003】
樹脂成形体は、用途等によっては、他の部材と接合させる場合がある。樹脂成形体と他の部材とを接合する方法としては、接着剤による接合、ネジ止め、二重成形、熱板溶着、振動溶着、レーザー溶着等が知られている。接合方法の選択は、用途、樹脂成形体の形状等を考慮して行われ、用途によって好適な接合方法は異なる。なお、種類の異なる樹脂や金属との接合では溶着加工が困難なため、接着やネジ止め、かしめといった手法をとることが一般的である。
【0004】
樹脂成形体を他の部材と接合する場合の一例として、電子部品が搭載された基板を収容するケース材(樹脂成形体からなるケース材)が挙げられる(特許文献1)。上記基板がケース材に収容される理由は、ダストや外部衝撃等から電子部品に与えられるダメージを軽減するためである。
【0005】
ところで、上記のようなケース材に収容された電子部品は、ポッティングが施されることがある。電子部品が水分により錆びること等を防止するためである。このようなポッティングが施される電子部品の例としては、自動車用各種電子制御装置、センサー、自動車用・家電用のハイブリッドIC、半導体部品等を挙げることができる(特許文献2)。
【0006】
上記の基板や電子部品を収容するケースと蓋の接合、又はケース内に固定するために接着剤が使用されたり、ポッティングを施すために使用するポッティング剤として、エポキシ系組成物、シリコーン系組成物等が知られている。耐熱性、耐寒性等が要求される一体成形体の場合には、付加反応型のシリコーン系組成物(白金触媒を用いて硬化させるタイプ)が好ましく使用される。なお、この付加反応型シリコーン系組成物は、上記の接着剤、ポッティング剤の他にシーリング剤、コーティング剤等としても使用されることが知られている。
【0007】
ところで、付加反応型のシリコーン系組成物を用いる場合において、樹脂成形体にリン化合物が含まれると、このリン化合物は、白金触媒による付加反応を阻害する(硬化阻害)。その結果、接着剤として付加反応型シリコーン系組成物を用いた場合、樹脂成形体と他の部材との密着力が不充分になりやすい。また、ポッティング剤として付加反応型シリコーン系組成物を用いた場合、硬化阻害によって電子部品が空気に触れてしまい、錆による電子部品の動作不良が発生する場合がある。
【0008】
通常、リン化合物は、樹脂成形体に所望の物性を付与する等の目的で添加される。例えば、リン化合物は、難燃剤や安定剤として、樹脂に添加することができ、樹脂組成物に対して、難燃性を付与したり、高温環境下で物性低下や変色を防いだりする効果がある。このように、リン化合物は、有用な添加剤として知られており、リン化合物は、必須成分として樹脂組成物に含まれる場合も多い。
【0009】
以上の通り、リン化合物は、有用な添加剤として知られているが、付加反応型シリコーン系組成物と接触する樹脂成形体に配合するには適していないとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−343684号公報
【特許文献2】特開2009−149736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リン化合物を含む樹脂成形体に、付加反応型シリコーン系組成物が接触しても硬化阻害しない技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、リン化合物の中でも5価のリン化合物を用いれば、リン化合物が、付加反応型シリコーン系組成物の硬化を阻害する問題が生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1) 熱可塑性樹脂成形体と、付加反応型シリコーン系組成物と、部材とを備え、前記熱可塑性樹脂成形体は、5価のリン化合物を含み、前記熱可塑性樹脂成形体と前記付加反応型シリコーン系組成物とが接触する一体成形体。
【0014】
(2) 前記熱可塑性樹脂成形体がポリブチレンテレフタレート系樹脂を含む(1)に記載の一体成形体。
【0015】
(3) 前記5価のリン化合物は、下記の一般式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩である(1)又は(2)に記載の一体成形体。
【化1】

【化2】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は相異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Rはアルキレン基、脂環族二価基又は芳香族二価基を示す。R及びRは互いに結合して隣接するリン原子とともに環を形成してもよい。Mm+は価数mの金属を示し、mは2〜4の整数である。Mn+は価数nの金属を示し、nは2〜4の整数である。)
【0016】
(4) 前記5価のリン化合物は、リン酸エステルである(1)又は(2)に記載の一体成形体。
【0017】
(5) 前記5価のリン化合物は、アルカリ金属リン酸塩及び/又はアルカリ土類金属リン酸塩である(1)又は(2)に記載の一体成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、リン化合物として5価のリン化合物を用いるため、リン化合物が付加反応型シリコーン組成物の硬化を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は第一実施形態の一体成形体1を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のXX断面を模式的に示した断面図である。
【図2】図2(a)は第二実施形態の一体成形体1を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)のXX断面を模式的に示した断面図である。
【図3】図3は実施例の一体成形体を示す模式図であり、(a)は一体成形体の製造過程を示す図であり、(b)は一体成形体の評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
本発明の一体成形体は、熱可塑性樹脂成形体と、付加反応型シリコーン系組成物と、部材とを備える。熱可塑性樹脂成形体は単一成形体でも良いし、複数の成形体で構成されていても良い。例えば、第一熱可塑性樹脂成形体と第二熱可塑性樹脂成形体との二つの成形体からなる場合、付加反応型シリコーン系組成物(以下の説明において、単にシリコーン系組成物という場合がある)によって接合してなる一体成形体が挙げられる。第一熱可塑性樹脂成形体と第二熱可塑性樹脂成形体の少なくとも一方に5価のリン化合物が含まれる。5価のリン化合物が含まれる方が上記熱可塑性樹脂成形体にあたる。両者に5価のリン化合物が含まれる場合には、いずれを熱可塑性樹脂成形体としてもよい。
【0022】
単一成形体の場合は、部材とその成形体とがシリコーン系組成物とで接着されていたり、部材と熱可塑性樹脂成形体はネジ止め等で結合され周囲をシリコーン系組成物で覆われていたり、容器状の成形体中に部材が収納されシリコーン系組成物でポッティングされていても良い。先ず、本発明の一体成形体の概略例を、図を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一体成形体の第一実施形態を示す図であり、図1(a)は、第一実施形態の一体成形体1を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のXX断面を模式的に示した断面図である。
【0024】
図1に示すように一体成形体1は、ケース10と、カバー11と、付加反応型シリコーン系組成物12とを備え、ケース10とカバー11とが付加反応型シリコーン系組成物12により接合されて、全体として箱体構造を形成する。
【0025】
ケース10は、一の面に開口を有する箱状の部品であり、本発明における熱可塑性樹脂成形体にあたるとする。ケース10は、開口が存在する面の端面に、付加反応型シリコーン系組成物12を介して、カバー11と接合するための第一接合面101を有する。
【0026】
カバー11は、板状の成形体であり、本発明における部材にあたるとする。カバー11は一の面の外周に、付加反応型シリコーン系組成物12を介して、ケース10と接合するための第二接合面111を有する。
【0027】
なお、ケース10、カバー11には、付加反応型シリコーン組成物の硬化温度に耐えることができる程度の耐熱性が求められる。したがって、ケース10やカバー11は、原料として耐熱性の高い熱可塑性樹脂(詳細は後述する)を用いることが好ましい。
【0028】
付加反応型シリコーン系組成物12は、第一接合面101と第二接合面111とを接合するための接着剤として働く。付加反応型シリコーン系組成物12により接合する方法であれば、熱による密着力の低下も生じないため好ましい。
【0029】
図1に示す第一実施形態の一体成形体の製造方法について簡単に説明する。第一接合面101及び第二接合面111の少なくとも一方の面に付加反応型シリコーン系組成物12を塗布し、その後、第一接合面101と第二接合面111とを接触させて第一接合面101と第二接合面111とを接合する。
【0030】
以上が本発明の一体成形体の第一実施形態であり、付加反応型シリコーン系組成物が接着剤として用いられる実施形態である。以下、付加反応型シリコーン系組成物がポッティング剤として使用される実施形態(第二実施形態)について説明する。
【0031】
図2は第二実施形態の一体成形体を示す図である。図2(a)は第二実施形態の一体成形体1を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)のXX断面を模式的に示した断面図である。第二実施形態の一体成形体1は、一体成形体1の内部に電子部品2が配置される構成、この電子部品2の周囲が付加反応型シリコーン組成物12で覆われる構成を有する点、ケース10とカバー11との接合が付加反応型シリコーン系組成物を使用する場合に限られず、ネジ止めや溶着によって接合されることもある点で第一実施形態の一体成形体と異なる。なお、以下の説明にあたって、第一実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0032】
電子部品2は、センサー、自動車用・家電用のハイブリッドIC、半導体部品等の電子部品であり、ケース10とカバー11とで囲まれるように、ケース10の底面に従来公知の一般的な方法で配置される。従来公知の一般的な方法としては、例えば、接着剤を用いたり、ネジ止めにより配置したりする方法が挙げられる。接着剤には付加反応型シリコーン系組成物を使用してもよいし、他の接着剤を使用してもよい。また、図2(b)に示すように、電子部品2は、その周囲が付加反応型シリコーン系組成物12で囲まれている。
【0033】
この電子部品2の周囲を覆う付加反応型シリコーン系組成物12は、電子部品2が付加反応型シリコーン系組成物12に完全に浸かるように、ケース10及びカバー11と電子部品2とで囲まれる空間内に設けられる。この付加反応型シリコーン系組成物12はポッティング剤として働く。
【0034】
図2に示す第二実施形態の一体成形体の製造方法について簡単に説明する。電子部品2をケース10の底に配置した後、ケース10の内部を付加反応型シリコーン組成物12で満たし、その後、第一接合面101と第二接合面111とを接合する。
【0035】
次いで、本発明の一体成形体が奏する効果について簡単に説明する。このように付加反応型シリコーン組成物により得られる一体成形体は、熱による影響を受けにくく、非常に有用である。さらに、本発明によれば、熱可塑性樹脂成形体にリン化合物を添加できるため、熱可塑性樹脂成形体に難燃性や高温で安定して存在できる性質等を付与でき、高温環境下で好適に使用できる一体成形体が得られる。
【0036】
従来は、リン化合物を含む樹脂成形体を他の樹脂成形体と接合する際に、付加反応型シリコーン系組成物を用いると、リン化合物が付加反応型シリコーン系組成物の硬化を阻害し、樹脂成形体同士を充分に密着させた一体成形体を得ることができないとされていた。また、電子部品保護のためのシリコーンポッティング剤は硬化阻害によって電子部品が空気に触れてしまい、錆による電子部品の動作不良が発生する恐れがあった。
【0037】
しかし、本発明ではリン化合物として5価のリン化合物を用いるため、上記の通り、リン化合物が付加反応型シリコーン系組成物の硬化を阻害しない。その結果、本発明の一体成形体は、樹脂成形体にリン化合物を含むにもかかわらず、樹脂成形体同士や電子部品を充分に密着させ、さらに、内装基板の信頼性を向上させた一体成形体になる。
【0038】
以上の通り、本発明は、従来組み合わせることができないとされていたリン化合物を含む樹脂成形体と、付加反応型シリコーン系組成物とを組み合わせるものである。以下、熱可塑性樹脂成形体、付加反応型シリコーン系組成物、部材についてさらに詳細に説明する。
【0039】
以上、本発明の一体成形体について、付加反応型シリコーン系組成物が接着剤として用いられる場合、ポッティング剤として用いられる場合について説明したが、付加反応型シリコーン系組成物をシーリング剤、コーティング剤等として使用する一体成形体も本発明に含まれる。
【0040】
また、以上の説明においては、ケースとカバーとを有する箱状の一体成形体を例に説明したが、箱状のものに限られず、例えば、熱可塑性樹脂成形体に、電子部品を他の部材として、付加反応型シリコーン系組成物で接着させてなる一体成形体も本発明に含まれる。
【0041】
<熱可塑性樹脂成形体>
熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂とリン化合物とを含む樹脂組成物を成形してなる。以下、熱可塑性樹脂、リン化合物、その他の含有可能な成分(その他の成分)についてこの順で説明する。
【0042】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂成形体の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、一般的な熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキサイド、液晶性樹脂、生分解性樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0043】
ところで、上述の通り、付加反応型シリコーン系組成物の特徴の一つとして、耐熱性に優れることが挙げられる。熱可塑性樹脂として、耐熱性の高いものを選択すれば、耐熱性に優れた一体成形体になり、付加反応型シリコーン系組成物の特徴も充分に活かすことができる。このような観点から、上記の熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性に優れ、難燃剤と好適に組み合わせ可能なポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。そこで、以下ではポリブチレンテレフタレートについて説明する。
【0044】
ポリブチレンテレフタレートは、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレートはホモポリブチレンテレフタレートに限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0045】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において用いるポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0046】
また、本発明において用いるポリブチレンテレフタレートの固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリブチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましい。さらに好ましくは0.65dL/g以上0.9dL/g以下である。かかる範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレートをブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレートと固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレートとをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレートを調製することができる。ポリブチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0047】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレートにおいて、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0049】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレートにおいて、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0051】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0052】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、何れもポリブチレンテレフタレートとして好適に使用できる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0053】
[リン化合物]
リン化合物は、5価のリン化合物である。5価のリン化合物であれば、付加反応型シリコーン系組成物の硬化を阻害することがほとんどない。5価のリン化合物としては、例えば、ホスフィンオキサイド系、ホスフィネート系、ホスホネート系、ホスフェート系、ホスフィニックアミド系、ホスホノジアミデート系、ホスホラミド系、ホスホラミデート系、ホスホロジアミデート系、ホスフィンイミド系、ホスフィンサルファイド系、ホスフィン酸塩、ホスホネート塩、ホスフィンイミド塩等のリン化合物を挙げることができる。これらのリン化合物は単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0054】
リン化合物は難燃剤として用いられる場合がある。この場合、難燃剤は樹脂成形体に対して難燃性を付与する。難燃剤が添加された樹脂成形体は、炎に接触する可能性のある樹脂成形体であり、耐熱性も要求される。上述の通り、本発明においては、付加反応型シリコーン系組成物が耐熱性に優れることを考慮すると、熱可塑性樹脂として耐熱性に優れるものを選択すれば、本発明の一体成形体は、難燃性が要求される用途に好適に採用することができる。
【0055】
リン化合物が難燃剤として用いられる場合とは、例えば、樹脂成形体中のリン化合物の含有量が10質量%以上30質量%以下の場合が挙げられる。リン化合物の含有量がこの範囲内にあれば、付与される難燃性の程度はリン化合物の種類によって異なるものの、樹脂成形体に難燃性が付与される。なお、リン化合物の含有量が上記の上限を超える場合であっても、難燃剤としての効果を奏するが、ポリブチレンテレフタレート等の他の成分の性質を活かす観点から、上限以下であることが好ましい。
【0056】
難燃剤として、特に好ましいリン化合物としては、ホスフィン酸塩が挙げられる。ホスフィン酸塩としては、例えば、ホスフィン酸、ジホスフィン酸、又はこれらの重合物(又は縮合物、例えばポリホスフィン酸等)等の塩[金属塩の他;ホウ素塩(ボリル化合物等)、アンモニウム塩、アミノ基含有窒素含有化合物との塩等)等]が挙げられる。ホスフィン酸塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、ホスフィン酸塩は、鎖状及び環状のいずれの構造を有していてもよい。
【0057】
塩を形成するホスフィン酸、ジホスフィン酸又はこれらの重合物としては、有機基を有しないホスフィン酸、ジホスフィン酸等であってもよいが、通常、有機ホスフィン酸、有機ジホスフィン酸、有機ジホスフィン酸の重合物(又は縮合物)等である場合が多い。上記塩は、これらのホスフィン酸を一種含有してもよく、二種以上組み合わせて含有してもよい。
【0058】
上記ホスフィン酸類のうち、特に金属塩が好ましい。塩を形成する金属としては、アリカリ金属(カリウム、ナトリウム等)、アリカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、遷移金属(鉄、コバルト、ニッケル、銅等)、周期表第12族金属(亜鉛等)、周期表第13族金属(アルミニウム等)等が挙げられる。金属塩は、これらの金属を一種含有してもよく、二種以上組み合わせて含有してもよい。金属のうち、アリカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)及び周期表第13族金属(アルミニウム等)が好ましい。
【0059】
金属の価数は特に制限されず、例えば1〜4価程度であってもよいが、好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2又は3価である。
【0060】
好ましいホスフィン酸塩としては、具体的に、下記式(I)で表される化合物が挙げられ、好ましいジホスフィン酸塩としては、具体的に、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。下記式(I)、(II)で表されるリン化合物は、熱可塑性樹脂の成形性、機械的強度、強靭性等の各種物性を低下させることなく、樹脂成形体に難燃性を付与することができる。
【0061】
【化3】

【化4】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は相異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Rはアルキレン基、脂環族二価基又は芳香族二価基を示す。R及びRは互いに結合して隣接するリン原子とともに環を形成してもよい。Mm+は価数mの金属を示し、mは2〜4の整数である。Mn+は価数nの金属を示し、nは2〜4の整数である。)
【0062】
〜Rで表される炭化水素基としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等のC5−8シクロアルキル基等)、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基等のC6−10アリール−C1−4アルキル基等)等が挙げられる。これらの基のうち、通常、アルキル基(好ましくはC1−4アルキル基等)、アリール基(フェニル基等)等が好ましい。
【0063】
及びRが結合して隣接するリン原子とともに形成する環は、環を構成するヘテロ原子としてリン原子を有するヘテロ環(リン原子含有ヘテロ環)であり、通常、4〜20員ヘテロ環、好ましくは5〜16員ヘテロ環が挙げられる。また、リン原子含有ヘテロ環は、ビシクロ環であってもよい。リン原子含有ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。
【0064】
で表される二価の炭化水素基としては、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン、エチレン、フェニルエチレン、プロピレン、トリメチレン、1,4−ブタンジイル、1,3−ブタンジイル基等のC6−10アリール基等の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキレン基等)、脂環族二価基(シクロヘキシレン基、シクロヘキサジメチレン基等のC5−8脂環族二価基等)、芳香族二価基[フェニレン基、トリレン基等のC1−4アルキル基等の置換基を有していてもよいC6−10アリーレン基;キシリレン基等のアレーン環にメチル基等のC1−4アルキル基を有していてもよいC6−10アリーレンジC1−4アルキレン基;アレーン環にメチル基等のC1−4アルキル基を有していてもよいビスアリール基(例えば、ビフェニレン基;メタジフェニレン基等の直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルカン−ジC6−10アリーレン基;ジフェニルエーテル等のC6−10アリールエーテルに対応する二価基;ジフェニルケトン等のジC6−10アリールケトンに対応する二価基;ジフェニルスルフィド等のジC6−10アリールスルフィドに対応する二価基等)等]等が挙げられる。これらの二価炭化水素基のうち、アルキレン基(特にC1−6アルキレン基等)が好ましい。
【0065】
好ましい金属塩(I)及び(II)は、金属Mの価数(m及びn)がそれぞれ2〜3である多価金属塩である。
【0066】
ホスフィン酸の金属塩(I)の具体例としては、例えば、ジメチルホスフィン酸Al、メチルエチルホスフィン酸Al、ジエチルホスフィン酸Al等のジアルキルホスフィン酸Al塩(ジC1−10アルキルホスフィン酸Al塩等)、フェニルホスフィン酸Al、ジフェニルホスフィン酸Al等のアリールホスフィン酸Al塩(モノ又はジC6−10アリールホスフィン酸Al塩等)、メチルフェニルホスフィン酸Al等のアルキルアリールホスフィン酸Al塩(C1−4アルキル−C6−10アリールホスフィン酸Al塩等)、1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン−1−オキシドAl塩、2−カルボキシ−1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン−1−オキシドAl塩等の置換基を有していてもよいアルキレンホスフィン酸のAl塩(C3−8アルキレンホスフィン酸Al塩等)、これらのAl塩に対応するCa塩の他、他の金属塩等が挙げられる。
【0067】
ジホスフィン酸の金属塩(II)の具体例としては、例えば、エタン−1,2−ビス(ホスフィン酸)Al塩等のアルカンビス(ホスフィン酸)Al塩[C1−10アルカンビス(ホスフィン酸)Al塩等]、エタン−1,2−ビス(メチルホスフィン酸)Al塩等のアルカンビス(アルキルホスフィン酸)Al塩[C1−10アルカンビス(C1−6アルキルホスフィン酸)Al塩等]、これらのAl塩に対応するCa塩の他、他の金属塩等が挙げられる。
【0068】
ホスフィン酸の金属塩には、これらのホスフィン酸の多価金属塩及び/又はジホスフィン酸の多価金属塩の重合物又は縮合物も含まれる。
【0069】
ホスフィン酸塩としては、ホスフィン酸の多価金属塩、ジホスフィン酸の多価金属塩、及びジホスフィン酸の重合物(又は縮合物)の多価金属塩から選択された少なくとも一種が好ましい。
【0070】
好ましいホスフィン酸塩は、上記式(I)又は(II)で示される金属塩のうち、特にジアルキルホスフィン酸金属塩(Ca塩、Al塩等)、アルカンビスホスフィン酸金属塩(Ca塩、Al塩等)等である。
【0071】
ホスフィン酸塩の平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。平均粒子径が小さいほうが、成形品外観が優れ、靭性及び難燃性改善効果に優れる場合が多い。ホスフィン酸類の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置等によりメジアン径として得られる。
【0072】
難燃剤として好ましく使用可能なリン化合物は、上記のホスフィン酸塩以外に、リン酸エステルが挙げられる。脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルのいずれも使用することができる。脂肪族リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル2,6キシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等が挙げられる。芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等が挙げられる。これらのリン酸エステルの中では、芳香族縮合リン酸エステルの使用が好ましく、芳香族縮合リン酸エステルの中でもレゾルシノールビスジキシレニルホスフェートの使用が好ましい。
【0073】
以上の説明では、難燃剤として用いられるリン化合物について説明したが、続いて、安定剤として使用されるリン化合物について説明する。ここで、安定剤とは、例えば、高温環境下での樹脂成形体の変色防止に用いられる安定剤が挙げられる。このような安定剤が添加された樹脂成形体は、高温環境下での使用が前提になっており、一体成形体としても高い耐熱性が要求される。上述の通り、本発明においては、付加反応型シリコーン系組成物が耐熱性に優れるため、熱可塑性樹脂として耐熱性に優れるものを選択すれば、本発明の一体成形体は、高温環境下で使用される用途に好適に採用することができる。
【0074】
リン化合物が安定剤として使用される場合とは、例えば、樹脂成形体中にリン化合物が0.01質量%以上3.0質量%以下含まれる場合を指す。安定化効果、安定化の程度は、リン化合物の種類やリン化合物の含有量に依存するが、樹脂成形体中のリン化合物の含有量が上記範囲内にあれば、安定剤としての効果を奏する傾向にある。なお、リン化合物の含有量が上記の上限を超える場合であっても、安定剤としての効果を奏するが、ポリブチレンテレフタレート等の他の成分の性質を活かす観点から、上限以下であることが好ましい。
【0075】
安定剤としては、無機リン系安定剤(アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩等)、及び有機リン系安定剤(例えば、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸エステル)から選択された少なくとも1種が挙げられる。リン系安定剤は、液状又は固体状のいずれであってもよい。
【0076】
アルカリ金属リン酸塩としては、リン酸塩又は対応するリン酸水素塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム[(リン酸一ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、リン酸二ナトリウム(リン酸水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)等)]等のアルカリ金属塩を例示することができる。アルカリ土類金属リン酸塩としては、リン酸カルシウム[第一リン酸カルシウム(リン酸二水素カルシウム、ビス(リン酸二水素)カルシウム一水和物等)、第二リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物等)等]、リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム等)等のアルカリ土類金属塩が例示できる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、無水物又は含水物のいずれであってもよい。特に好ましくはリン酸ナトリウム、リン酸カルシウムである。
【0077】
有機リン酸エステルとしては、リン酸のモノ乃至トリアルキルエステル(例えば、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等のモノ乃至ジC6−24アルキルエステル等)、リン酸のモノ乃至トリアリールエステル(モノ又はジフェニルホスフェート等のモノ又はジC6−10アリールエステル等)等が挙げられる。
【0078】
有機ホスホン酸エステルとしては、ジステアリルホスホネート等のモノ又はジアルキルホスホネート(C6−24アルキルホスホネート等);ジフェニルホスホネート、ジ(ノニルフェニル)ホスホネート等のアリール基に置換基を有していてもよいアリールホスホネート(C6−10アリールホスホネート等);ジベンジルホスホネート等のモノ又はジアラルキルホスホネート((C6−10アリール−C1−6アルキル)ホスホネート等)等が挙げられる。
【0079】
[その他の成分]
樹脂成形体は、上記の熱可塑性樹脂、リン化合物以外に、無機充填剤、酸化防止剤、顔料等の従来公知の添加剤を、本発明の効果を害さない範囲で添加できる。特に、無機充填剤の一種であるガラス繊維を使用すると、樹脂成形体の耐熱性が高まるため好ましい。
【0080】
<付加反応型シリコーン系組成物>
付加反応型シリコーン系組成物は、室温又は加熱により硬化する組成物であり、従来公知の組成物を使用することができる。例えば、接着剤用途、ポッティング剤用途、シーリング剤用途、コーティング剤用途等に用いられるいずれの付加反応型シリコーン系組成物も使用可能である。ここで、使用する付加反応型シリコーン系組成物は、用途や求める機能に応じて、適宜選択される。なお、硬化は、白金系触媒による付加反応で進行する。
【0081】
硬化阻害への影響有無は、簡便にはシリコーン系組成物に直接リン化合物を加え、それぞれのシリコーン系組成物に適しているとされる硬化条件にて硬化処理させることで確認できることが多い。そのような処理をした場合にシリコーン系組成物が硬化するものは、硬化阻害を起こさないと判断できる。
【0082】
<部材>
部材は特に限定されず、センサー、自動車用・家電用のハイブリッドIC、半導体部品等の電子部品の他に、他の樹脂成形体であってもよい。部材が電子部品の場合には、接着、ポッティングのいずれの用途も一般的である。樹脂成形体の場合には、主に上記熱可塑性樹脂成形体との接合のために、付加反応型シリコーン系組成物が使用される。ここで、樹脂成形体は、どのような樹脂からなるものであってもよく、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれからなるものであってもよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0084】
<材料>
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):ウィンテックポリマー社製、商品名「ジュラネックス300FP」
【0085】
リン化合物1:アルミニウムトリ(ジエチルホスフィネート)、クラリアントジャパン製EXOLIT OP1240
リン化合物2:レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート、大八化学工業(株)PX−200
リン化合物3:第一リン酸カルシウム、太平化学産業(株)製
リン化合物4:リン酸二水素ナトリウム、和光純薬(株)試薬特級
リン化合物5:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’ビフェニレンフォスフォナイト、クラリアントジャパン製Hostanox P−EPQ
リン化合物6:ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(株)ADEKA製 アデカスタブPEP−24G
【0086】
ガラス繊維 日東紡績(株)製 CS 3J−948
【0087】
付加反応型シリコーン系組成物:東レダウコーニングシリコーン(株)製、商品名「SE1714」
【0088】
<硬化阻害への影響有無確認のための予備実験>
アルミカップに付加反応型シリコーン系組成物5g、各リン化合物50mgを加えよく攪拌した後、120℃×1.0時間で硬化処理を行った。リン化合物1〜4はシリコーン系組成物が硬化したが、リン化合物5,6は未硬化のままだった。
【0089】
<第一樹脂成形体及び第二樹脂成形体の製造>
表1に示す配合割合(単位は質量%)で、PBT、リン化合物及びガラス繊維を二軸押出機にて溶融混練(シリンダー温度260℃、スクリュー回転数130rpm、押出量15kg/hr)しペレットを作成後、得られたペレットを140℃、3時間乾燥した後に、射出成形機(ファナック社製S2000i 100B)に投入し、後述する接着強度の測定に使用する樹脂試験片(ISO3167に準拠した多目的試験片)を作製した。このISO3167に準拠した試験片の中央部を切断し、一方を第一樹脂成形体とし、他方を第二樹脂成形体とした。
【0090】
<一体成形体の作製>
図3(a)に示すように、第一樹脂成形体に7mm×7mmの穴を開けた日東電工株式会社製ニトフロン粘着テープ(厚み0.18mm)を貼り付け、穴の部分にシリコーン系組成物を塗布した。塗布後、第二樹脂成形体を重ね合わせ、クリップで固定し、120℃×0.5時間の条件で接着を行った。実施例及び比較例の一体成形体が得られた。
【0091】
<接着強度の測定>
接合体を23℃、50%RHの環境に24時間以上放置し、接合体を図3(b)に示すように固定し、オリエンテック製万能試験機テンシロンRTC−1325PLを用い,試験速度5mm/minの条件で第二樹脂成形体を押し剥がし(具体的には、図3(b)の白抜き矢印の方向に圧力を加えて押し剥がした。)、押し剥がし強度の最高値を測定した。測定結果は表1に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例の結果及び比較例の結果から、3価のリン化合物を用いた場合には、付加反応型シリコーン系組成物の硬化が阻害され、5価のリン化合物を用いた場合には付加反応型シリコーン系組成物の効果が阻害されないことが確認された。
【0094】
実施例2、6では、5価のリン化合物を難燃剤として作用する量配合する。このため、実施例2、6では、難燃性が付与された一体成形体になることが確認された。
【0095】
実施例1〜6では、5価のリン化合物を安定剤として作用する量配合する。このため、実施例1、3〜5では、高温環境下で安定して存在する一体成形体になることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
1 一体成形体
10 ケース
101 第一接合面
11 カバー
111 第二接合面
12 付加反応型シリコーン系組成物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成形体と、付加反応型シリコーン系組成物と、部材とを備え、
前記熱可塑性樹脂成形体は、5価のリン化合物を含み、
前記熱可塑性樹脂成形体と前記付加反応型シリコーン系組成物とが接触する一体成形体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂成形体がポリブチレンテレフタレート系樹脂を含む請求項1に記載の一体成形体。
【請求項3】
前記5価のリン化合物が、下記の一般式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩である請求項1又は2に記載の一体成形体。
【化1】

【化2】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は相異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、Rはアルキレン基、脂環族二価基又は芳香族二価基を示す。R及びRは互いに結合して隣接するリン原子とともに環を形成してもよい。Mm+は価数mの金属を示し、mは2〜4の整数である。Mn+は価数nの金属を示し、nは2〜4の整数である。)
【請求項4】
前記5価のリン化合物が、リン酸エステルである請求項1又は2に記載の一体成形体。
【請求項5】
前記5価のリン化合物が、アルカリ金属リン酸塩及び/又はアルカリ土類金属リン酸塩である請求項1又は2に記載の一体成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62421(P2012−62421A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208889(P2010−208889)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】