説明

一方向間欠送りユニット

【課題】ラチェットホイールに一方向型トルクリミッタを組み込み、該トルクリミッタの内輪をハウジングに固定した一方向間欠送りユニットにおいて、前記内輪と同軸に支持された揺動アームに駆動爪を設け、その駆動爪を前記ラチェットホイールに係合させ、該揺動アームの揺動方向によってトルクリミッタを空転・ロックさせながら1ピッチづつの送りを加えるようにした一方向間欠送りユニットにおいて、前記内輪を製作し易い構造として、製作上の作業性を向上させることである。
【解決手段】前記揺動アーム17の支持軸部が従来は内輪3の前端面に設けられていたことが、内輪3の製作上の作業性を阻害していた点に鑑み、その支持軸の機能を固定ねじ31に設けた頸部34に負わせることで解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インデックステーブル等の部品供給装置等における送りユニットとして使用される一方向間欠送りユニットに関し、特に内輪の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方向間欠送りユニットとして、図7から図9に示したものが従来公知である(特許文献1の図20から図22参照)。この一方向間欠送りユニットは、ハウジング1の凹部2の中心部に内輪3が固定され、その凹部2の内周面と内輪3の外径面との間に環状のラチェットホイール4が嵌合される。そのラチェットホイール4の内径面と内輪3との間に一方向クラッチ型のトルクリミッタ5が設けられる。
【0003】
前記のトルクリミッタ5は、内輪3の外径面に周方向に所定の間隔をおいて設けられた所要数のポケット7、各ポケット7に収納されたころ8、そのころ8の付勢ばね9とから構成される。ポケット7の底面に形成されたカム面11とこれに対向したラチェットホイール4の内径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角θが形成される。
【0004】
前記内輪3は、その背面中心に固定軸12が設けられ、その固定軸12を前記凹部2の中心部に挿入してナット13で固定される。また、内輪3の前面においてその中心部に支持軸部14が設けられる。
【0005】
また、前記のラチェットホイール4の前面において、その全周にわたりラチェットベース部6が同芯状に設けられ、そのラチェットベース部6の外径面にスプロケット15が設けられる。また、その内径面にラチェット16が設けられる。
【0006】
前記の支持軸部14に揺動アーム17が取り付けられる。揺動アーム17はその端部に円板部18を有し、その円板部18が前記支持軸部14の周りに揺動自在に嵌合される。また、その円板部18の周縁部内面が前記ラチェットベース部6の前面に接触される。前記の円板部18の内面に駆動爪19がピン21により取り付けられ、該駆動爪19が付勢ばね22により付勢された状態でラチェット16に係合される。駆動爪19と付勢ばね22は、円板部18の背面において前記のラチェットベース部6の軸方向の長さに等しい幅で支持軸部14の周りに形成された空所に収納される。
【0007】
前記支持軸部14の端面に抜け止めリング23を当て、固定ねじ24を該抜け止めリング23と支持軸部14にねじ込むことにより、揺動アーム17の円板部18は、前記のラチェットベース部6と抜け止めリング23との間で軸方向に挟持される。
【0008】
前記の揺動アーム17が、図8の矢印a方向に揺動すると、ラチェット16に係合された駆動爪19によってラチェットホイール4とスプロケット15が矢印A方向に回転される。このとき、トルクリミッタ5はフリーとなり一定の空転トルクを発生させながら、スプロケット15に係合されたキャリアテープ25に1ピッチの送りを加える。次に揺動アーム17が矢印b方向に揺動すると、トルクリミッタ5がロックしてラチェットホイール4とスプロケット15の逆転を防止しながら駆動爪19と共に元の位置に戻る。このような作用を繰り返してキャリアテープ25が間欠送りされる。
【0009】
なお、前記の内輪3は、その背面に固定軸12を突設したものを示しているが、内輪3の構造を簡単にするため、この固定軸12を削除し、前記固定ねじ24を内輪3を貫通させその端部をハウジング1にねじ止めする構成を採用することができる(特許文献1の図14参照)。
【特許文献1】特開2005−98490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の一方向間欠送りユニットにおいて、内輪3について前記のように固定軸12を削除した構成をとったとしても、内輪3はその前面に支持軸部14が突き出した構成となる。内輪3は金属のプレス成形によって製作されるが、その際に前記の支持軸部14のような突出部分が存在すると、その部分の成形工程と、内輪3の部分の成形工程を段階的に行う必要があるため作業性が低くなり、製作コスト上昇の要因となる。
【0011】
一方、前記の支持軸部14は、揺動アーム17を揺動自在に支持する機能のみならず、その外周の空所に揺動アーム17の円板部18と駆動爪19、付勢ばね22を収納する軸方向の幅を確保する機能を併せ持つ。また、抜け止めリング23は円板部18の抜け止め機能を持つが、部品点数の増加要因となっている。
【0012】
そこで、この発明は、内輪3として製作が容易である構成を採用する一方、支持軸部14による円板部18の支持機能を1部品に集約することで、部品の削減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明は、図1から図3に示したように、内輪3は、前述の固定軸12はもちろん支持軸部14も切除した円板形に形成する一方、固定ねじ31として、その一端部に抜け止め頭部32と、その頭部32内面に円柱形頸部34が同芯状に設けられ、前記揺動アーム17の円板部18の外面から挿入された前記固定ねじ31の抜け止め頭部32を該円板部18の外面に当てることにより揺動アーム17の抜け止めが図られ、前記頸部34を該円板部18に貫通させて前記揺動アーム17を揺動自在に支持せしめ、該頸部34の内端面を前記内輪3の端面に当てることにより該固定ねじ31の軸方向の位置決めが行われ、該内輪3に該固定ねじ31のねじ軸部33を貫通させてハウジング1にねじ止めした構成を採用することとした。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、内輪3はその両端面に軸方向に突き出した部分が存在しないので、プレス成形によって作業性よく製作することができ、コストの低減に寄与することができる。また、固定ねじ31に抜け止め頭部32及び頸部34を設けたことにより、従来の抜け止めリングが不要になり部品の削減を図ることができるとともに、頸部34によってその周囲に軸方向一定幅の空所を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
この発明の一方向間欠送りユニットの実施例1を図1から図3に基づいて説明する。実施例1の基本的構造は、先に図7から図9において述べたのと同様であり、同一部分については同一の符号を用いて説明する。即ち、ハウジング1の凹部2の中心部に内輪3が固定され、その凹部2の内周面と内輪3の外径面との間に環状のラチェットホイール4が嵌合される。そのラチェットホイール4の内径面と内輪3との間に一方向クラッチ型のトルクリミッタ5が設けられる。
【0017】
前記のトルクリミッタ5は、内輪3の外径面に周方向に所定の間隔をおいて設けられた所要数のポケット7、各ポケット7に収納されたころ8、そのころ8の付勢ばね9とから構成される。ポケット7の底面に形成されたカム面11とこれに対向したラチェットホイール4の内径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角θが形成される。
【0018】
前記内輪3は、前述の場合と異なり、貫通した中心孔27が設けられ、その中心孔27の周りにおいて内輪3の背面側に肉ヌスミ部28が設けられる。また、前面側の中心孔27の周りに嵌合凹部29が設けられる。前記の肉ヌスミ部28は内輪3の軽量化のために設けられる。
【0019】
また、前記のラチェットホイール4の前面において、その全周にわたりラチェットベース部6が同芯状に設けられ、そのラチェットベース部6の外径面にスプロケット15が設けられるとともにその内径面にラチェット16が設けられる。
【0020】
固定ねじ31は前述の場合と異なり、この実施例1の場合は、その一端部に、抜け止め頭部32と、その抜け止め頭部32の内面に円柱形頸部34が同心状に設けられたものである。抜け止め頭部32は頸部34より大径に形成され、その中心にレンチ穴35が設けられる。また、頸部34はねじ軸部33より大径に形成される。
【0021】
前記の固定ねじ31は揺動アーム17の円板部18の外面から挿入され、内輪3の中心孔27に貫通され、ハウジング1のねじ孔36に固定される。前記の抜け止め頭部32が円板部18の外面に当てられ、これにより揺動アーム17の抜け止めが図られる。また、頸部34が円板部18に貫通され、該頸部34の外径面により揺動アーム17を揺動自在に支持する。円板部18の外周縁の内面は前記のラチェットベース部6の前面に当接される。前記頸部34の内端面が内輪3の前端面に設けられた前記の嵌合凹部29に嵌合され、固定ねじ31の軸方向の位置決めと径方向の位置決めが行われる。
【0022】
前記固定ねじ31は、図1に示したように、ハウジング1のねじ孔36にねじ結合により固定する以外に、図1Aに示したように、ハウジング1に設けた凹部10内でナット10’を締結することにより固定するようにしてもよい。
【0023】
なお、内輪3の一部とハウジング1との間に内輪3の回り止めピン38が挿入される。
【0024】
前記円板部18の内面に駆動爪19がピン21により取り付けられ、該駆動爪19が付勢ばね22により付勢された状態でラチェット16に係合される。駆動爪19と付勢ばね22は、円板部18の背面において前記のラチェットベース部6の軸方向の長さに等しい幅で頸部34の周りに形成された空所に収納される。
【0025】
前記の固定ねじ31をねじ込み、その頸部34が内輪3の嵌合凹部29に合致した際に、抜け止め頭部32が円板部18をラチェットベース部6に押し当て、その円板部18と内輪3の端面との間に駆動爪19と付勢ばね22の収納空所の幅を確保する。
【0026】
実施例1の一方向間欠送りユニットは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0027】
揺動アーム17が、図2の矢印a方向に揺動すると、ラチェット16に係合された駆動爪19によってラチェットホイール4とスプロケット15が矢印A方向に回転される。このとき、トルクリミッタ5はフリーとなり一定の空転トルクを発生させながら、スプロケット15に係合されたキャリアテープ25に1ピッチの送りを加える。次に揺動アーム17が矢印b方向に揺動すると、トルクリミッタ5がロックしてラチェットホイール4とスプロケット15の逆転を防止しながら駆動爪19と共に元の位置に戻る。このような作用を繰り返してキャリアテープ25が間欠送りされる。
【0028】
なお、前記の内輪3はプレス成形によって製作されるが、軸方向にプレスするだけで一度に成形ができるので製作能率がよい。なお、プレス工程ではなく後加工で行う場合もある。
【実施例2】
【0029】
図4から図6に示した実施例2の一方向間欠送りユニットは、実施例1の場合とトルクリミッタ5の構造において相違する。即ち、この場合のトルクリミッタ5を構成するポケット7はラチェットホイール4の内径面に形成され、その底面面に形成されたカム面11と内輪3の外径面とによってくさび角θが形成される。その内部にころ8及び付勢ばね9が収納される。このように、ポケット7をラチェットホイール4に設けると、内輪3の構造が一層簡単になるので、内輪3の製作が容易になる。その他の構成及び作用は、実施例1の場合と同じであるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の縦断側面
【図1A】図1の一部変形断面図
【図2】同上の一部省略縦断正面図
【図3】同上の分解斜視図
【図4】実施例2の縦断側面図
【図5】同上の一部省略縦断正面図
【図6】同上の分解斜視図
【図7】従来例の縦断正面図
【図8】同上の一部省略縦断正面図
【図9】同上の分解斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
2 凹部
3 内輪
4 ラチェットホイール
5 トルクリミッタ
6 ラチェットベース部
7 ポケット
8 ころ
9 付勢ばね
10 凹部
10’ ナット
11 カム面
12 固定軸
13 ナット
14 支持軸部
15 スプロケット
16 ラチェット
17 揺動アーム
18 円板部
19 駆動爪
21 ピン
22 付勢ばね
23 抜け止めリング
24 固定ねじ
25 キャリアテープ
27 中心孔
28 肉ヌスミ部
29 嵌合凹部
31 固定ねじ
32 抜け止め頭部
33 ねじ軸部
34 頸部
35 レンチ穴
36 ねじ孔
38 回り止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットホイール(4)の内径側に一方向クラッチ型のトルクリミッタ(5)が組み込まれ、該トルクリミッタ(5)は前記ラチェットホイール(4)と同軸の内輪(3)がハウジング(1)に固定され、その内輪(3)の外径面又はラチェットホイール(4)の内径面に周方向に所定の間隔をおいて所要数のポケット(7)が形成され、各ポケット(7)の底面に形成されたカム面(11)に対向した前記ラチェットホイール(4)の内径面又は内輪(3)の外径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角θが形成され、前記ポケット(7)内に転動体とこれをクサビ角θの方向に付勢する付勢ばね(9)が収納され、前記内輪(3)と同軸状態に取り付けられた揺動アーム(17)の端部に円板部(18)を有し、該円板部(18)の内面に駆動爪(19)がピン(21)により取り付けられ、該駆動爪(19)を付勢ばね(22)により付勢された状態で前記ラチェットホイール(4)に係合させてなり、前記揺動アーム(17)の一定方向への揺動時に前記トルクリミッタ(5)が空転して前記駆動爪(19)が該ラチェットホイール(4)をクサビ角θと反対方向に所要の空転トルクで1ピッチの送りを行い、前記と逆方向への揺動時に前記トルクリミッタ(5)がロックしてラチェットホイール(4)の逆回転を防止しつつ駆動爪(19)を後退させるようにした一方向間欠送りユニットにおいて、
前記内輪(3)の固定ねじ(31)の一端部に、抜け止め頭部(32)と、その頭部(32)内面に円柱形頸部(34)が同芯状に設けられ、前記揺動アーム(17)の円板部(18)の外面から挿入された前記固定ねじ(31)の抜け止め頭部(32)を該円板部(18)外面に当てることにより揺動アーム(17)の抜け止めが図られ、前記頸部(34)を該円板部(18)に貫通させて前記揺動アーム(17)を揺動自在に支持せしめ、該頸部(34)の内端面を前記内輪(3)の端面に当てることにより該固定ねじ(31)の軸方向の位置決めが行われ、該内輪(3)に該固定ねじ(31)のねじ軸部(33)を貫通させると共にそのねじ軸(33)をハウジング(1)にねじ止めしたことを特徴とする一方向間欠送りユニット。
【請求項2】
前記内輪(3)の端面に前記固定ねじ(31)の頸部(34)に合致した嵌合凹部(29)を設け、該嵌合凹部(29)に該頸部(34)の内端部を嵌合させたことを特徴とする請求項1に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項3】
前記ラチェットホイール(4)のラチェットベース部(6)が前記揺動アーム(17)側に突き出して全周に設けられ、そのラチェットベース部(6)の端面に前記揺動アーム(17)の円板部(18)を当接させ、該円板部(18)とラチェットベース部(6)及び内輪(3)端面によって囲まれた空所に前記駆動爪(19)とその付勢ばね(22)が収納されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向間欠送りユニット。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−247668(P2007−247668A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67930(P2006−67930)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】