説明

三次元画像表示装置

【課題】撮影時における被写体の波面を立体像として再現する。
【解決手段】三次元画像表示装置は、二次元配置された複数の表示画素を含む表示画素群が複数個、二次元配置された表示手段と、複数の表示画素群の各々に対応して二次元配置され、表示画素群を投影するマイクロレンズを複数個有するマイクロレンズアレイと、三次元画像データに基づいて、表示画素を制御して三次元画像データに対応する光束をマイクロレンズアレイを介して投影させる表示制御手段と、マイクロレンズアレイの近傍に配置され、マイクロレンズにより投影された三次元画像データに対応する光束を投射する投射光学系と、投射光学系により投射された三次元画像データに対応する光束の進行方向を時間的に逆転させて位相共役光を生成する時間逆転手段と、時間逆転手段により生成された位相共役光の進行方向を観察方向に反射する光反射手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体像を表示する表示装置が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−330452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示された立体像は、撮影時における被写体の波面を再現したものとは異なるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明による三次元画像表示装置は、二次元配置された複数の表示画素を含む表示画素群が複数個、二次元配置された表示手段と、複数の表示画素群の各々に対応して二次元配置され、表示画素群を投影するマイクロレンズを複数個有するマイクロレンズアレイと、三次元画像データに基づいて、表示画素を制御して三次元画像データに対応する光束をマイクロレンズアレイを介して投影させる表示制御手段と、マイクロレンズアレイの近傍に配置され、マイクロレンズにより投影された三次元画像データに対応する光束を投射する投射光学系と、投射光学系により投射された三次元画像データに対応する光束の進行方向を時間的に逆転させて位相共役光を生成する時間逆転手段と、時間逆転手段により生成された位相共役光の進行方向を観察方向に反射する光反射手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マイクロレンズにより投影された三次元画像データに対応する光束の進行方向を時間的に逆転させた位相共役光を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態による三次元画像表示装置の要部構成を説明するブロック図
【図2】実施の形態による三次元画像表示装置が備える表示部の構成の一例を説明する図
【図3】実施の形態による三次元画像表示装置が備える表示部の構成の一例を説明する図
【図4】表示画素と、表示用マイクロレンズアレイと、表示される光点との関係を模式的に示した図
【図5】図4を二次元的に展開した場合を示す図
【図6】投影される空中像について説明する図
【図7】マイクロレンズとパターン光断面との関係を説明する図
【図8】マイクロレンズとパターンとの関係を説明する図
【図9】領域分割を基点マイクロレンズに展開した場合のパターンを説明する図
【図10】基点マイクロレンズの中心位置に対して光点が偏心した場合のパターンを説明する図
【図11】変形例における表示部の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態の三次元画像表示装置は、画像を表示するためのモニタを有するパーソナルコンピュータ等により構成される。この三次元画像表示装置では、公知のプレンオプティックカメラ(Plenoptics Camera)またはライトフィールドカメラ(Light Field Camera)等によって生成された三次元情報を有する画像データに対応する画像が三次元画像として観察可能に表示される。以下、詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施の形態による三次元画像表示装置100の要部構成を説明するブロック図である。三次元画像表示装置100は、制御回路101、HDD102、表示部制御回路103、表示部104、メモリ105、入力部材106、メモリカードインタフェース107、および外部インタフェース108を備える。
【0010】
入力部材106は、ユーザによって操作されるスイッチやボタンを有するキーボードや、マウス等の操作部材である。入力部材106は、表示部104に表示されたメニュー画面からユーザが所望するメニューや設定を選択し、選択したメニューや設定を実行させる際にユーザにより操作される。
【0011】
HDD102には、たとえばデジタルカメラで撮影した動画や静止画に対応する画像ファイルなどが記録されている。外部インタフェース108は、たとえばUSBインタフェースケーブルや無線伝送路を介してデジタルカメラ等の外部機器とデータ通信を行う。三次元画像表示装置100は、メモリカードインタフェース107や外部インタフェース108を介してメモリカード207aや外部機器から画像ファイルなどを入力する。入力された画像ファイルは、制御回路101により制御されてHDD102に記録される。デジタルカメラで生成された画像ファイルは、制御回路101によりHDD102に記録される。HDD102には、制御回路101で実行される各種のプログラム等が記録される。
【0012】
制御回路101は、三次元画像表示装置100の制御を行うマイクロコンピュータであり、CPUやROMその他周辺回路により構成される。制御回路101は表示制御部101aを機能的に備える。表示制御部101aは、たとえばHDD102に記録されている三次元画像データを読み出す。そして、表示制御部101aは、三次元画像データに基づいて、表示部制御回路103を介して、後述する表示部104が備える表示画素から三次元画像データに対応する光束を投射させる。なお、表示制御部101aの詳細については、説明を後述する。
【0013】
メモリ105は制御回路101のワーキングメモリであり、たとえばSDRAMにより構成される。表示部104は、表示部制御回路103により制御されて、表示用画像データに対応する画像、各種設定を行うためのメニュー画面などが表示される。
【0014】
図2、図3を参照して、表示部104について説明する。図2は、表示部104の概略構成を示す図である。なお、図2においては、図の鉛直方向をy軸、図の水平方向をz軸とする座標系を設定する。図2に示すように、表示部104には、表示器104aと、マイクロレンズアレイ104bと、投影レンズ104cと、ハーフミラー104dと、縮小光学系104eと、光位相共役鏡104fとが設けられている。表示器104aは、たとえばバックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成され、二次元状に配置された複数の表示画素群を有する。マイクロレンズアレイ104bは、二次元状に配列された複数のマイクロレンズにより構成される。マイクロレンズアレイ104bはz軸方向に、マイクロレンズの焦点距離だけ表示画素群から離れた位置に配置される。各マイクロレンズは表示器104aの表示画素群からの光束をz軸方向+側に向けて投射する。なお、表示器104aとマイクロレンズアレイ104bとの配置関係については、図2を用いて詳細を後述する。
【0015】
投射レンズ104cは1つのレンズあるいは複数のレンズ群から構成され、マイクロレンズアレイ104bを介して表示器104aから投射された光束をz軸方向+側へ投射して、ハーフミラー104dへ導く。この投射レンズ104cは、z軸方向+側から入射するものと仮定した入射光をマイクロレンズアレイ104bの近傍に結像させる撮影光学系に対して、逆投射光学系として機能する位置に配置される。投影レンズ104cの焦点距離は、上述のマイクロレンズの焦点距離のたとえば10倍〜1000倍程度に設定される。すなわち、上記のマイクロレンズの焦点距離が、たとえば200μmの場合、投射レンズ104cの焦点距離は50mmに設定される。
【0016】
ハーフミラー104dは入射光の50パーセントを透過し、50パーセントを反射する特性を有し、投射レンズ104cから投射された光束の光軸に対して45度傾けて配置される。ハーフミラー104dを透過した光は、縮小光学系104eを介して光位相共役鏡104fへ導かれる。光位相共役鏡104fは、ハーフミラー104dおよび縮小光学系104eを介して入射した光束と位相共役な光束、すなわち入射光束とは進行方向が時間的に逆転され、進行方向が反転された光束(位相共役光)を出力する。換言すると、光位相共役鏡104fは入射した光束に対して時間逆転系として機能する。この位相共役光は、再度縮小光学系104eを通過してz軸方向−側へ進み、ハーフミラー104dによって反射されて図2のy軸方向へ進み、観察者に観察される。なお、縮小光学系104eは、光位相共役鏡104fについては説明を後述する。
【0017】
次に、図3を用いて表示器104aおよびマイクロレンズアレイ104bについて説明する。なお、図3においては、表示器104aの表示面の水平方向をx軸、鉛直方向をy軸とし、xy平面(表示器104aの表示面)に垂直な方向をz軸として座標系を設定する。図3(a)は、表示器104aをz軸方向+側から見た場合の表示器104aの斜視図であり、図3(b)は図3(a)を一部拡大して示す図であり、図3(c)はz軸方向における表示器104aの断面を模式的に示す図である。
【0018】
図3(a)、(b)に示すように、表示器104aは、上述したように、二次元状に配置された複数の表示画素群210を有する。これら複数の表示画素群210のそれぞれは、二次元状に配置された複数の表示画素211を有する。なお、本実施の形態においては、1個の表示画素群210には、10×10個の表示画素211が含まれるものとする。ただし、図3においては、図示の都合上、表示画素211の個数を実際よりも少なく描いている。表示画素211は、上述した表示部制御回路103により制御されて、表示用画像データに対応して発光する。
【0019】
マイクロレンズアレイ104bは、二次元状に配列された複数のマイクロレンズ220により構成される。図3(b)に示すように、各マイクロレンズ220は、複数の表示画素群210に対応した配置パターンで配置されている。また、図3(c)に示すように、マイクロレンズアレイ202はz軸方向+側に、マイクロレンズ220の焦点距離fだけ表示画素211から離れた位置に配置される。各マイクロレンズ220は、画像データに応じて表示画素211からの光をz軸方向+側の所定の像面に投影する。
【0020】
次に、表示器104aおよびマイクロレンズアレイ104bによる三次元画像の表示原理について説明する。表示器104aおよびマイクロレンズアレイ104bの表示原理はプレンオプティクスの原理を逆にしたものである。プレンオプティックカメラでは、撮影光学系によりマイクロレンズ近傍に結像された、圧縮された三次元像が二次元のパターン像に展開される。この場合、撮影光学系により、座標(x,y,z)で示される三次元座標上の被写体の点は、次の式(1)で示される二次元パターンに展開される。なお、以下の式(1)では、zはプレンオプティックカメラから被写体までの距離、x,yは光軸と直交する平面上の座標、m(=f/z)はzに依存する倍率を示す。
(x,y,z)→(mx,my,m2z) ・・・(1)
【0021】
式(1)は、3次元的な広がりを有する被写体が、所定の厚さ(奥行き)を有する像面に圧縮されたことを示している。通常のカメラでは、所定の奥行きを有する像面(像曲面)と撮像面とを交差させることによって二次元画像が得られる。像曲面と撮像面とが交差する点(面)が焦点の合った位置(焦点面)となる。さらに、この焦点面の前後に焦点が合わずに写りこむ像面が広がる。プレンオプティックカメラでは、これらの焦点面と、焦点が合わずに写りこむ像面とを、マイクロレンズによって取得する。以下、図4を用いて、上記のプロセスについて簡単に説明する。
【0022】
図4は、表示画素211と、マイクロレンズアレイ104bと、表示される光点LPとの関係を示した図である。上述したように、マイクロレンズアレイ104bは、表示画素211から、マイクロレンズ220の焦点距離fだけz軸方向に離れた位置に設けられている。なお、図4においては、光点LPは、マイクロレンズアレイ104bからz軸方向+側に距離4fだけ離れた位置にあるものとする。
【0023】
光点LPから表示画素211に向かって光束LFを辿った場合がプレンオプティクスである。光点LPからの光束LFは、複数個のマイクロレンズ220を通過して、マイクロレンズ220から4f/3の位置で焦点を結ぶ。しかし、マイクロレンズ220は表示画素211からz軸方向に距離fだけ離れた位置に配置されているので、各マイクロレンズ220を通過した光束LFは、入射したマイクロレンズ220のそれぞれに対応する表示画素211で広がりを持った像となる。以後、この広がりを持った像を光断面と呼び、光断面の形状をパターンPtと呼ぶ。
【0024】
図5に、上記のパターンPtを二次元的に展開した場合を示す。なお、図5においては、図示の都合上、マイクロレンズ220の配列を正方として描く。すなわち、プレンオプティクスの原理によれば、図4に示す光点LPの光強度(輝度)が、図5に示すパターンPtに分配されることになる。図5においては、パターンPtに斜線を付して示す。
【0025】
表示器104aは、上述したプレンオプティクスの原理を逆にすることによって、すなわち表示画素211から輻射される光束を、マイクロレンズ220を介して投影することにより奥行きを有する空中像を表示する。具体的には、図5に示すパターンPtが、表示画素211上に割り当てられる。このとき、図4を用いて説明した場合とは逆に、表示画素211に割り当てられたパターンPtはマイクロレンズ220によって投影されて光点LPに像を形成する。各パターンPtに含まれる表示画素211から輻射される多方向に進む光束には、その中に光点LPに集光する方向の光束、すなわち上述した入射光束LFの表示画素211への入射角度と同一の角度で輻射する光束が含まれるからである。このため、図6に示すように、マイクロレンズアレイ104bからz軸方向に距離4fだけ離れた位置Sに空中像が形成される。
【0026】
図7を用いて、いくつ、あるいは、どのマイクロレンズ220といずれのパターンPtとが対応するかについて、光点LPからの光束LFの広がりをマイクロレンズ220上に投影することにより説明する。なお、図7では、光点LPから広がる光束LFは、光点LPのz軸方向の位置がマイクロレンズ220の焦点距離fの場合と、その二倍の距離2fの場合とについて示している。図7においては、光点LPのz軸方向の位置が距離fの場合の光束LFの広がりを破線で示し、距離2fの場合を一点鎖線で示す。光点LPがマイクロレンズ220の焦点距離fの位置にあると、光束LFの広がりはマイクロレンズ220で規定されているので、光束LFは1個のマイクロレンズ220内に入射する。以上により、1個の光点LPに対応するマイクロレンズ220が決まる。
【0027】
光点LPのz軸方向の位置がマイクロレンズ220の焦点距離fのときは、光束LFはそのマイクロレンズ220の直下の領域全体に円形開口の光として広がる。このため、正方領域に内接する円の内部に含まれるすべての表示画素211が発光すると、パターンPtが投影されて光点LPで空中像が形成される。光点LPのz軸方向の位置の絶対値が焦点距離fより小さい場合には、光束LFはマイクロレンズ220の直下の領域内で収束せずに広がる。しかし、光点LPから広がる光束LFの角度はマイクロレンズ220のF値で開口の最大(Fの最小)が規定されるので、入射する光束LFは広がり角の制限を受け、パターンPtは被覆領域にとどまる。
【0028】
ここで光点LPのz軸方向の位置が距離2fにある場合について説明する。図8に、この場合に関係するマイクロレンズ220を示す。図8(a)に示すように、関係するマイクロレンズ220は自身、すなわち光点LPとz軸方向について同軸上に配置されたマイクロレンズ220(以後、基点マイクロレンズ220a)とそれに隣接する8個のマイクロレンズ220である。マイクロレンズ220による開口の制限を考えるとき、図8(a)において斜線で示す被覆領域のなかにパターンPtが存在することになる。この場合、各マイクロレンズ220に対応するパターンPtは、図8(b)の斜線で示す領域となる。
【0029】
図8(b)に示すように、ひとつの基点マイクロレンズ220aの被覆領域が分割され、隣接するマイクロレンズ220に配分されている。分割され配分された被覆領域(部分領域)を積算した場合の全領域は、ひとつのマイクロレンズ220の開口領域になる。そのため、どのような位置の光点LPでもパターンPtの全領域の大きさは同じになるので、部分領域を積算して全領域を算出する場合には、それぞれの部分領域が所属するマイクロレンズ220が決まればよいことになる。
【0030】
図7において、光点LPのz軸方向の位置と、倍率つまり基点マイクロレンズ220aに隣接するマイクロレンズ220との個数と関係について示したが、これを仮想的な開口領域に適用する。たとえば、倍率で縮小したマイクロレンズ220の配列で開口領域を分割し、これで定義されたマイクロレンズ220の中の同じ位置に開口領域の断片を配するという方法をとる。開口領域に外接する正方形を倍率2で縮小し、マイクロレンズ220の配列で開口領域を分割(領域分割)した場合を例に説明する。
【0031】
図9は、上記の領域分割を基点マイクロレンズ220aに展開した場合のパターンPtを示している。同様の領域分割を倍率に応じて行うと、倍率、すなわち光点LPに対するパターンPtが得られる。具体的には、マイクロレンズ220の径(マイクロレンズの一辺の大きさ)をgとするとき、g/m幅の格子で開口領域が分割される。倍率は、光点LPの高さ(位置)yとマイクロレンズの焦点距離fとの比m=y/fで表すことができる。比mには負の符号も存在する。比mの符合が負の場合には、マイクロレンズ220より表示画素211側に光点LPがあるものとする。
【0032】
マイクロレンズ220による被覆領域とマイクロレンズ220の個数との積は、ほぼ表示画素群210に含まれる表示画素211の全画素数に等しくなる。このため、1個のマイクロレンズ220内で偏心した複数の点のそれぞれに対応する光点LPを形成することは、表示画素211に再現されたパターンPtを重畳して投影することに等しい。すなわち、各偏心した光点LPからの光束LFが重畳して表示画素211上に存在している。ただし、倍率が1倍のときには、この演算は、単なる内挿作業になって、分解能向上には実質的に寄与しない。これは、マイクロレンズ220頂点近辺に結像すれば、光学的に奥行き方向の情報が失われることを示している。
【0033】
図10は、基点マイクロレンズ220aの中心位置に対して左に偏心した光点LPについての分割領域を表したものある。基点マイクロレンズ220a(レンズ径をgとする)の中心から図10の左方向へpだけ偏心して、光点LPの高さ(位置)が2fの場合について説明する。なお、図10においては、点O1は偏心した光点LP、点O2はマイクロレンズ220の中心位置を示す。この場合、図9に示すマイクロレンズ220を図中の右方向へpだけずらし、開口領域を分割すれば、図10に示す場合の分割領域が得られる。マイクロレンズ220の開口領域を16個に分割すると仮定する。この場合、中心位置の座標を(0,0)として、x軸y軸に対して、それぞれ−g/2、−g/4、0、g/4、g/2の位置のパターンとそれによる分割領域および、全領域の積算をおこなえば、ひとつのマイクロレンズ120に対して16点の光点群を得ることができる。
【0034】
表示制御部101aは、表示部制御回路103に指令して、画像データを用いて表示用三次元画像データを生成する。そして、表示制御部101aは、表示用三次元画像データ、すなわち三次元情報を示すパターンPtを表示画素211に割り当てて発光させる。このとき、表示制御部101aは、以下のような場合には、読み出された三次元画像データに対して正規化処理を施す。すなわち、三次元画像データを生成したプレンオプティックカメラが有するマイクロレンズの中心位置(光軸)と、マイクロレンズ220の中心位置(光軸)とが異なる場合、すなわちマイクロレンズ220の中心軸と光点LPとがz軸方向について同一軸上にない場合である。この場合、表示制御部101aは、各パターンPtに対応した光点LPが基点マイクロレンズ220aの中心軸上に位置するように、三次元画像データの位置をxy平面上で移動させる。そして、表示制御部101aは、生成した表示用三次元画像データが示すパターンPtを表示画素211に割り当てる。
【0035】
上述した表示器104aおよびマイクロレンズアレイ104bを介して投射された光束は投射レンズ104cを通過すると、被写体像の奥行き方向の圧縮が解放され、プレンオプティックカメラで撮影されたときと同様の被写体の波面が再現された光束となる。これは、上述したように、投射レンズ104cが、プレンオプティックカメラが有する撮影光学系に対して逆投射光学系として機能する位置に配置されることによる。ただし、この場合の光束の進行方向(z軸方向+側)は、撮影時の被写体からの光束の進行方向とは逆方向となる。光位相共役鏡104fは、z軸方向+側に進行する光束をz軸方向−側に進行する光束に変換する、すなわち位相共役光を発生させることによって、撮影時における被写体波面を再現する。以下、縮小光学系104e、光位相共役鏡104fについて説明する。
【0036】
図2に示すように、縮小光学系104eは、たとえば凹面鏡310とリレー光学系311とを含んでいる。縮小光学系104eは、投射レンズ104cを通過することによって広がって進行する光束の幅を所定の幅の光束に縮小する。この場合、後段の光位相共役鏡104fにおいて処理が可能な光束の幅となるように縮小されればよい。なお、この縮小光学系104eは、光位相共役鏡104fからの位相共役光に対しては拡大光学系として機能し、位相共役光をハーフミラー104dへ導く。このため、投射レンズ104cからの光束と、位相共役光とが同一の光路に沿って互いに異なる進行方向に進むので、縮小光学系104eの収差が打ち消されることになる。このため、縮小光学系104eは、必要な縮小率を満たせば十分であり、高い光学性能は要求されない。
【0037】
光位相共役鏡104fは、たとえば公知のチタン酸バリウムを媒体とした4光波混合タイプの光位相共役鏡であり、R,G,Bの3色のそれぞれの光束に対応して設けられている。光位相共役鏡104fは、投射レンズ104cから入力した光束のR,G,Bのそれぞれについて、時間反転された光である位相共役光として反射する。すなわち、入力した光束のR色の分光成分については、R色に対応した光位相共役鏡104fにより時間反転されてR成分の位相共役光となる。入力した光束のG色、B色についても同様に、時間反転されてそれぞれG色、B色の位相共役光となる。その結果、光位相共役鏡104fから出力される位相共役光はR,G,Bについて離散的な分光分布を有する。
【0038】
光位相共役鏡104fから出力された位相共役光は、縮小光学系104eを介してハーフミラー104dへ導かれる。この場合、上述したように、位相共役光は、投射ミラー104cからの光束が縮小光学系104eを進行する方向とは逆方向に進行するので、プレンオプティックカメラによる撮影時と同様の被写体波面を再現している。この位相共役光は、ハーフミラー104dによりy軸方向に反射されて観察者の方向に向かって進行する。その結果、観察者は、撮影時と同様の波面が再現された三次元像を観察することができる。
【0039】
以上で説明した実施の形態による三次元画像表示装置100によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)三次元画像表示装置100は、表示器104aと、マイクロレンズアレイ104bと、表示制御部101aと、投射レンズ104cと、ハーフミラー104dと、光位相共役鏡104fとを含むようにした。表示器104aは、二次元配置された複数の表示画素211を含む表示画素群210が複数個、二次元配置される。マイクロレンズアレイ104bは、複数の表示画素群210の各々に対応して二次元配置され、表示画素群210を投影するマイクロレンズ220を複数個有する。表示制御部101aは、三次元画像データに基づいて、表示画素211を制御して三次元画像データに対応する光束をマイクロレンズアレイ104bを介して投影させる。投射レンズ104cは、マイクロレンズアレイ104bの近傍に配置され、マイクロレンズ220により投影された三次元画像データに対応する光束をz軸方向+側へ投射する。光位相共役鏡104fは、投射レンズ104cにより投射された三次元画像データに対応する光束の進行方向を時間的に逆転させて位相共役光を生成する。ハーフミラー104dは、光位相共役鏡104fにより生成された位相共役光の進行方向を観察方向、すなわちy軸方向+側に反射する。
【0040】
その結果、ステレオ型やレンチキュラー方式のように右眼と左目との視差による錯覚を利用した立体表示を行うことなく、観察者は立体形状を有する被写体の像を観察できる。特に、光位相共役鏡104fにより時間反転されることにより位相共役光、換言すると撮影時と時間的に同等の進行方向を有する光が生成されるので、観察者は撮影時の被写体の像の波面と同等の波面を有する三次元の空中像として観察することができる。したがって、錯覚に基づくものではなく、実際に三次元に再現された空中像を観察するので、従来の立体画像の表示で問題となっていた立体酔いや小児の視覚形成機能の阻害等の生理的な悪影響を防ぐことができる。さらに、専用のメガネ等を用いることなく観察できるので、長時間の観察が可能になる。
【0041】
また、ホログラム方式を用いる場合には、表示の冗長度が1000:1以上ある。このため、たとえば100万画素の解像度を有する立体像を再現するためには、表示器は100億画素以上の画素を有する必要がある。または、立体像を再現するための画像データは100億画素に相当する情報量を有する必要がある。これに対して、本実施の形態の三次元画像表示装置100では、画像の解像度に対する冗長度が100〜1000倍程度の画素数で、撮影時の被写体の像が有する波面と同等の波面を有する三次元の空中像を表示できる。
【0042】
(2)表示制御部101aは、プレンオプティクスカメラが有する異なる複数の撮影用マイクロレンズに対応して配列された複数の撮像画素から出力された複数の画像信号に基づいて、光束を射出する複数の表示画素211の配列関係が、複数の撮像画素の配列関係と等価となるように正規化処理を施して、三次元画像データを生成するようにした。したがって、各撮像画素から出力された画像信号を、対応する表示画素211に割り当てることによって、三次元情報を有する表示用画像データを容易に生成することができる。
【0043】
以上で説明した実施の形態による三次元画像表示装置100を、以下のように変形できる。
(1)表示器104aがバックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成されるものに代えて、透過型LCD表示器を用いてもよい。この場合、照明光としては白色LEDに代えて、R,G.Bの3色を照明光として透過型LCD表示器を照明することにより、R,G,Bについて離散的な分光分布を有する光束が表示器104aから光位相共役鏡104fへ投射される。
【0044】
(2)表示器104aに代えて、光源からの照明光を反射させる反射型表示器、たとえば反射型LCOS表示器や、DLP方式の表示器を用いて、フィールドシーケンシャル方式によりR,G,Bの各色を時系列で表示させてもよい。図11を参照して、反射型LCOS反射器を用いた場合の表示の一例について説明する。図11に示すように、実施の形態の表示器104aおよびマイクロレンズアレイ104bに代えて、表示器500と、マイクロレンズアレイ501と、偏光分離鏡502と、リレー系レンズ503と、絞り504と、光源505とを有する。なお、表示器500とマイクロレンズアレイ501との配置関係の詳細は、図3に示す実施の形態における表示器104aとマイクロレンズアレイ104bとの配置関係と同様である。
【0045】
光源505は、反射型LCOS表示器である表示器500を照明する照明光源である。光源505は、表示制御部101aにより点灯制御されて、R,G,Bの3色の照明光を時分割で射出する。リレー系レンズ503は、光源505から射出された照明光を偏光分離鏡502へ導くための光学系である。絞り504は、リレー系レンズ503が焦点を結ぶ位置に設けられている。このため、光源505からの照明光は、照明光がマイクロレンズアレイ501の焦点の位置Mで像を結び、マイクロレンズアレイ501でそれぞれ一様な明るさで表示器500を照明するようになる。さらに、照明光がマイクロレンズアレイ501のF値に合わせた大きさに制限されるようになる。
【0046】
偏光分離鏡502は、マイクロレンズアレイ501の前段に配置され、光源505からの照明光を反射してマイクロレンズアレイ501および表示器500へ導く。そして、表示器500で反射された反射光は、偏光分離鏡502を透過して投射レンズ104cへ進行する。
【0047】
上述したように、光源505からは時分割でR,G,Bのそれぞれの色の照明光が射出されるので、表示制御部101aは、それぞれの色の照明光が射出されるタイミングで表示器500に対応する色に応じた画像を表示させる。表示器500に表示される色の切り替えは、たとえばカラーホイール方式であってもよいし、LED等の点灯によるものでもよい。この結果、画像を再現するために使用可能な表示画素の画素数を増やすことができる。なお、光源505から射出される照明光に含まれる離散的なR,G,Bの波長は、光位相共役鏡104fに対応するR,G,Bの3色の波長と一致している必要がある。
【0048】
(3)ハーフミラー104dに代えて偏光分離ミラーと1/4位相板とを設けてもよい。この場合、偏光分離ミラーは、表示器104aから投射レンズ104cを介して投射された光束のうち直線偏光の光を透過可能となる方向に配置される。さらに、1/4位相板は偏光分離ミラーに対してz軸方向+側に配置され、偏光分離ミラーを透過した直線偏光の光を円偏光に変換し、光位相共役鏡104fへ導くようにすればよい。
【0049】
(4)投射レンズ104cからの光束の幅が光位相共役鏡104fにより反射可能な光束の幅であれば、縮小光学系104eを設けなくてもよい。
【0050】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。説明に用いた実施の形態および変形例は、それぞれを適宜組み合わせて構成しても構わない。
【符号の説明】
【0051】
101 制御回路、 101a 表示制御部、
104 表示部、 104a 表示器、
104b マイクロレンズアレイ、 104c 投影レンズ、
104d ハーフミラー、 104e 縮小光学系、
104f 光位相共役鏡、 211 表示画素、
220 マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元配置された複数の表示画素を含む表示画素群が複数個、二次元配置された表示手段と、
前記複数の表示画素群の各々に対応して二次元配置され、前記表示画素群を投影するマイクロレンズを複数個有するマイクロレンズアレイと、
三次元画像データに基づいて、前記表示画素を制御して前記三次元画像データに対応する光束を前記マイクロレンズアレイを介して投影させる表示制御手段と、
前記マイクロレンズアレイの近傍に配置され、前記マイクロレンズにより投影された前記三次元画像データに対応する光束を投射する投射光学系と、
前記投射光学系により投射された前記三次元画像データに対応する光束の進行方向を時間的に逆転させて位相共役光を生成する時間逆転手段と、
前記時間逆転手段により生成された前記位相共役光の進行方向を観察方向に反射する光反射手段と、を備えることを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元画像表示装置において、
前記表示制御手段は、異なる複数の撮影用マイクロレンズに対応して配列された複数の撮像画素から出力された複数の画像信号に基づいて、前記光束を射出する前記複数の表示画素の配列関係が、前記複数の撮像画素の配列関係と等価となるように、前記三次元画像データを生成することを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元画像表示装置において、
前記表示手段は、
反射型の表示素子と、
前記反射型の表示素子を照明するための照明光を射出する光源と、
前記光源からの照明光を反射して、前記反射型の表示素子へ導く偏光分離部材と、
前記偏光分離部材により反射された照明光によって、前記マイクロレンズの焦点面の位置で前記反射型の表示素子を一様に照明させる照明光学系とを含むことを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元画像表示装置において、
前記表示制御手段は、前記光源を制御して複数種類の単色光を時間分割で射出させ、前記反射型の表示素子を制御して前記単色光のそれぞれに同期した前記三次元画像データを表示させることを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の三次元画像表示装置において、
前記投射光学系から投射された前記三次元画像の光束の広がりを縮小する縮小光学系をさらに備えることを特徴とする三次元画像表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−113997(P2013−113997A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259429(P2011−259429)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】