説明

不飽和アルデヒド及び/または不飽和酸の製造法

本発明は、固定層触媒の部分酸化反応に使用可能なシェルアンドチューブ反応器であって、該反応器は、オレフィンから不飽和アルデヒドを主として生産する第1段階の反応領域と、不飽和アルデヒドから不飽和酸を主として生産する第2段階の反応領域の少なくとも一方の反応領域を含み、上記反応領域の少なくとも一方は2以上の触媒層を含み、2以上の触媒層は、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によりそれぞれ充填されてなり、反応器の入口側から出口側に進むにつれて、細孔の密度及び/または孔径により触媒有効成分の比表面積が大きくなるように調節されていることを特徴とし、この反応器を用いてオレフィンから不飽和アルデヒド及び/または不飽和酸を製造する方法である。本発明によれば、過熱点における温度を効率よく制御することで触媒の安定した使用を可能にし、且つ、高い収率にて不飽和アルデヒド及び/または不飽和脂肪酸を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルアンドチューブ型熱交換式の反応器における固定層接触部分酸化反応により、オレフィンから不飽和アルデヒド及び/または不飽和酸を製造する方法及び前記製造法に用いられる固定層シェルアンドチューブ型熱交換式反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を用いてC〜Cオレフィンから不飽和アルデヒド及び/または不飽和酸を得る工程は、代表的な接触気相酸化反応(catalytic vapor phase oxidation)である。
【0003】
接触気相酸化反応の具体例として、プロピレンまたはプロパンを酸化してアクロレイン及び/またはアクリル酸を得る工程、イソブチレン、t−ブチルアルコールまたはメチル−t−ブチルエーテルを酸化させてメタアクロレイン及び/またはメタアクリル酸を得る工程などがある。
【0004】
不飽和酸である(メタ)アクリル酸は、塗料、接着剤、可塑剤及び各種の合成樹脂を含めた種々な用途に有用な原料である。
【0005】
通常、接触気相酸化反応は、以下のように行われる。すなわち、1種以上の顆粒状触媒が反応管11、12に充填され、供給ガス1が反応管を介して反応器に供給され、この供給されたガスが反応管において触媒と接触して気相酸化反応が行われる。反応中に生じる反応熱は、熱伝達媒体との熱交換により除去され、熱伝達媒体の温度は、所定の温度に保たれる。このとき、熱交換のための熱伝達媒体は、反応管の外面に取り付けられる。所望の生成物を含む反応混合物3は、管を介して収集・回収及び精製段階に供される。接触気相酸化反応は、通常、大きな発熱反応であるため、反応温度を特定の範囲内に調節することで反応領域内の過熱点(ホットスポット)の大きさを小さくすることが極めて重要である。
【0006】
プロピレン、プロパン、イソブチレン、t−ブチルアルコールまたはメチル−t−ブチルエーテル(以下、「プロピレン等」と称する。)の部分酸化反応を行うには、モリブデンとビスマスまたはバナジウム含有複合酸化物またはこれらの混合物が触媒として用いられる。
【0007】
一般に、プロピレン等から2段階に亘っての接触気相部分酸化反応により最終生産物としての(メタ)アクリル酸が生成される。すなわち、第1段階10においては、酸素、希釈不活性ガス、水蒸気及び任意量の触媒によりプロピレン等が酸化されて、主生成物として(メタ)アクロレイン2が得られる。第2段階20においては、前段階から得られた(メタ)アクロレインが、酸素、希釈不活性ガス、水蒸気及び任意量の触媒によって酸化されて、(メタ)アクリル酸3が得られる。第1段階で使用される触媒は、Mo−Biをベースとする酸化触媒であって、プロピレン等を酸化して主生成物として(メタ)アクロレインを生成する。また、一部の(メタ)アクロレインは、この触媒上においてさらに酸化されて、(メタ)アクリル酸が一部生成される。第2段階で使用される触媒は、Mo−Vをベースとする酸化触媒であって、これは第1段階において得られた(メタ)アクロレイン含有混合ガスを、特に(メタ)アクロレインを酸化して、主生成物として(メタ)アクリル酸を生成する。
【0008】
かかる工程を行う反応器は、単一の装置において上述した2段階の工程を両方とも行うようになっていてもよく、あるいは、上記2段階の工程をそれぞれ異なる装置(図1)において行うようになっていてもよい。
【0009】
一方、反応器の構造を改変したり、酸化反応を起こすための最適な触媒を提案したり、あるいは、運転条件を改善したりすることにより、多くの試みが、(メタ)アクリル酸を生産するための反応器の生産性を高めるためになされてきている。
【0010】
上述したように、プロピレン等または(メタ)アクロレインの気相酸化反応は発熱反応である。したがって、過熱点(ホットスポット)(温度が異常に高い箇所又は熱の蓄積がかなり高い箇所)が、反応器の触媒層中で発生するという問題点がある。そのような過熱点は、反応器の他の箇所に比べてかなり高い温度を示す。したがって、加熱点では、部分酸化よりも完全酸化がすすみ、によるCOxなどの反応副産物が増えて、(メタ)アクロレインまたは(メタ)アクリル酸の歩留まりが低下する。さらに、高い温度に触媒が曝されることにより、触媒の急速な不活性化を引き起こし、その結果、触媒の寿命が短縮する。これらの問題を解決するため、過熱点の発生を抑え、反応器全体にわたって触媒の利用率を均一にする方法が、(メタ)アクロレインまたは(メタ)アクリル酸を高い歩留まりで得るために、及び触媒を長期に亘って使用するために、研究されてきた。これに関して、多くの改良された触媒が次々と提案されてきている。
【0011】
例えば、原料ガスの入口側から出口側に向けて触媒層を不活性物質により段階的に希釈して充填する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、この方法は、多くの時間がかかり、不活性物質での希釈比を100%から0%に至るまで徐々に変えてながら触媒層を充填することは非常に困難である。また、触媒の製造に当たって、アルカリ金属の種類及び量を変えて形成した複数種の触媒を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかしながら、この方法では、用いられるアルカリ金属が少量であるが故に、正確な割合で様々な活性を有する触媒を製造することに困難さがある。
【0012】
さらに、過熱点付近において触媒が相対的に大きなサイズを有するように触媒を充填する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、この場合は、そのような大きなサイズを有する触媒粒子が反応管の目詰まりを起こしたり、あるいは不十分な活性しかもたない可能性がある。したがって、所望のプロピレンまたはイソブチレンの転換率及び(メタ)アクリル酸の収率を、所望の程度には得ることができないという不都合がある。
【0013】
したがって、これらの状況から、ピーク過熱点(最も温度の高いホットスポット)の温度を効率よく制御することで、触媒の安定した使用が可能になり、高い収率で不飽和アルデヒド及び/または不飽和脂肪酸を製造するための方法の開発が依然として求められている。
【特許文献1】特開昭43−24403号
【特許文献2】特開昭53−30688号
【特許文献3】大韓民国特許公開第2000−77433号
【特許文献4】特開2000−336060号
【特許文献5】大韓民国特許公報1995−4027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、過熱点における温度を効率よく制御することで触媒の安定した使用を可能にし、且つ、高い歩留まりにて不飽和アルデヒド及び/または不飽和脂肪酸を製造する方法を提供するところにあり、
ここで、前記方法は、不飽和アルデヒド(例えば、(メタ)アクロレイン)を主として製造する第1の反応領域11と、不飽和酸(例えば、(メタ)アクリル酸)を主として製造する第2の反応領域21を有する反応器で行われ、
前記第1及び第2の反応領域の少なくとも一方の反応領域が2以上の触媒層で充填され、それにより、前記反応領域が2以上の反応域に分割されており、
2以上の触媒層のそれぞれに充填されている触媒成形物は、触媒有効成分の細孔(ポア)の密度及び/または孔径が互いに異なっており、反応器の入口側の反応領域から出口側の反応領域へ進むつれて、細孔の密度及び/または孔径により触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、触媒有効成分の細孔の密度及び/または孔径が調節されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、固定層接触部分酸化反応に使用可能なシェルアンドチューブ反応器であって、前記反応器は、オレフィンから不飽和アルデヒドを主として製造する第1段階の反応領域と、不飽和アルデヒドから不飽和酸を主として製造する第2段階の反応領域のうちの少なくとも一方の反応領域を含み、上記反応領域の少なくとも一方は2以上の触媒層を含み、前記2以上の触媒層のそれぞれは、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によって充填されており、反応器の入口側から出口側に進むにつれて触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、前記細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とする反応器を提供する。
【0016】
また、本発明は、シェルアンドチューブ反応器を用いて固定層接触部分酸化反応により、オレフィンから不飽和アルデヒドを製造する方法を提供し、本方法は、前記反応器が、不飽和アルデヒドを製造するための、2以上の触媒層を含む反応領域を含み、
ここで、前記の2以上の触媒層のそれぞれは、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によって充填されており、
反応器の入口側から出口側に進むにつれて触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、前記細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明は、シェルアンドチューブ反応器を用いて固定層接触部分酸化反応により不飽和アルデヒドから不飽和酸を製造する方法を提供し、本方法は、前記反応器が、不飽和酸を製造するための、2以上の触媒層を含む反応領域を含み、
ここで、前記の2以上の触媒層のそれぞれは、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によって充填されており、
反応器の入口側から出口側に進むにつれて触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、前記細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、触媒有効成分の細孔の孔径差または密度差により比表面積が互いに異なる2以上の触媒成形物を反応器の入口側から出口側に向けて触媒の活性が高くなるような向きに充填することにより、以下の効果を得ることができる。
1)反応器のピーク過熱点の温度を効率よく制御することで触媒の安定した使用が可能である。
2)反応器の後端部の触媒活性を高めて不飽和アルデヒド及び/または不飽和脂肪酸を高い歩留まりにて産み出すことができる。
3)高濃度の原料物質や高い空間速度及び高負荷の反応条件下でも安定して不飽和アルデヒド及び/または不飽和脂肪酸を生産して、生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記オレフィン、不飽和アルデヒド、不飽和酸は、炭素数3〜4を有することが好ましく、それぞれの例として、プロピレンまたはイソブチレン、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸が挙げられる。また、不飽和アルデヒドまたは不飽和酸の製造のための原料物質として、オレフィンに加えて、プロパン、t−ブチルアルコール、メチル−t−ブチルエーテル及びその混合物が使用可能であり、この場合も本発明の範疇に属するものとする。
【0020】
不飽和アルデヒドを主として製造する第1段階の反応領域に用いられる触媒成形物中の触媒有効成分は、下記式1で表わされる金属酸化物であることが好ましい。
[式1]
Mo
式中、
Moは、モリブデンであり、
Aは、Bi、及びCrよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Bは、Fe、Zn、Mn、Nb、及びTeよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Cは、Co、Rh、及びNiよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Dは、W、Si、Al、Zr、Ti、Cr、Ag及びSnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Eは、P、Te、As、B、Sb、Sn、Nb、Cr、Mn、Zn、Ce、及びPbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Fは、Na、K、Li、Rb、Cs、Ta、Ca、Mg、Sr、Ba及びMgOよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
a、b、c、d、e、f及びgはそれぞれ、各元素の原子比を示し、
但し、a=10のとき、bは、0.01〜10であり、cは、0.01〜10であり、dは、0〜10であり、eは、0〜10であり、fは、0〜20であり、gは、0〜10であり、hは、上記の各成分の酸化状態によって決まる数値である。
【0021】
また、不飽和酸を主として製造する第2段階の反応領域に用いられる触媒成形物中の触媒有効成分は、下記式2で表わされる金属酸化物であることが好ましい。
[式2]
Mo
式中、
Moは、モリブデンであり、
Wは、タングステンであり、
Vは、バナジウムであり、
Aは、鉄(Fe)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Bは、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Cは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Oは、酸素原子であり、
a、b、c、d、e、f及びxは、それぞれ、Mo、W、V、A、B、C及びO元素の原子比を示し、
a=10のとき、0.5≦b≦4、0.5≦c≦5、0≦d≦5、0≦e≦2、0≦f≦2であり、xは、上記の各成分の酸化状態によって決まる数値である。
【0022】
触媒成形物は、触媒有効成分としての粉体状の金属酸化物またはその前駆体を直接押出あるいは打錠(ペレット化)などの成形工程を経て焼成して製造するか、あるいは、触媒有効成分としての液状または粉体状の金属酸化物またはその前駆体を不活性担体上に被覆して焼成して製造することができる。
【0023】
本発明において、細孔の密度とは、昇華性あるいは熱分解物質により生成された細孔の単位体積当たりの数を意味する。
【0024】
細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒有効成分は、例えば、下記の段階を含む製造法により製造することができる:
(a)金属酸化物を形成する金属成分の塩を混合して触媒水溶液または懸濁液を得る段階と、
(b)上記触媒水溶液または懸濁液を乾燥して触媒粉体を得る段階と、
(c)前段階の結果物を焼成する段階と、を含むが、
(a)段階の途中、または(b)段階と(c)段階との間に、添加量及び粒径のどちらか一方または両方が調節された昇華性の物質または熱分解物質を添加する段階をさらに含む。
【0025】
本発明に用いられる触媒の製造法において、焼成工程は、室温〜500℃の範囲内において徐々に昇温させながら行う。通常、200℃以上の温度において、触媒有効成分を形成する各金属成分が、構造的変化を起こすことが知られている。
【0026】
また、触媒の製造時に上記昇華性の物質または熱分解物質を添加することは、ある程度の発熱を生じさせる。各添加物の昇華または熱分解が200℃以上において行われると、好ましくない発熱、及び金属の望ましくない構造的変化が引き起こされることがあるため、昇華性の物質または熱分解物質は、50ないし200℃において昇華あるいは熱分解されることが好ましい。そのような昇華性の物質または熱分解物質としては、尿素(NHCONH)、メラミン(C)、シュウ酸アンモニウム(C)、シュウ酸メチル(C)及びナフタレン(C10)などが挙げられる。
【0027】
このとき、熱分解物質は熱分解されて気体状態で蒸発することが好ましい。
【0028】
上記触媒水溶液または懸濁液の製造する場合に、上記式1または式2の金属酸化物を形成する金属塩は、特定の塩に限定されるものではない。用いることのできる塩の具体例には、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、及び酸化物が包含される。
【0029】
本発明によれば、昇華性の物質または熱分解物質の添加量及び粒径のどちらか一方または両方を調節することによって、最終的な触媒成形物中の触媒有効成分の細孔の密度及び/または孔径を調節することができる。
【0030】
現在、複数の酸化物を含む不飽和アルデヒド及び/または不飽和酸製造用の市販の触媒は、その比表面積が小さいことが知られている。かかる触媒は、反応物質との接触面積が小さく、したがって、触媒活性が低い。また、触媒有効成分の比表面積を効率よく制御することが困難である。本発明によれば、触媒の製造に当たって、添加剤として昇華性の物質または熱分解物質を用い、かつ、上記昇華性の物質または熱分解物質の粒径及び/または使用量を調節することにより、最終的な触媒成形物において触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径を調節することができる。これにより、触媒の比表面積を容易に調節でき、その結果、高効率の触媒及び様々な活性の触媒を製造することができる。
【0031】
炭素数が少ない昇華性の物質または熱分解物質、例えば、尿素(NHCONH)、メラミン(C)、シュウ酸アンモニウム(C)、シュウ酸メチル(C)またはナフタレン(C10)は、触媒の成形に際して触媒組成物内に一定の体積を占めている。それゆえ、比較的低い温度による乾燥または焼成によってそれが除去されることにより、触媒有効成分内に細孔を形成することができる。上記昇華性の物質または熱分解物質の使用量及び粒径を調節することにより、触媒の比表面積を適度に制御することができる。なお、触媒有効成分の比表面積が大きくなるほど、触媒の活性が高くなる。一方、相対的に触媒有効成分の比表面積が小さくなるほど、活性は低くなる。
【0032】
上記昇華性の物質または熱分解物質は、粒状粉体または液状にして用いることができる。この物質を粒状粉体で使用する場合は、0.01〜50μmの粒度を有することが好ましい。さらに好ましい昇華性の物質または熱分解物質の粒度は、0.01〜10μmである。
【0033】
昇華性の物質または熱分解物質の使用量は、上記式1で表される化合物から製造される触媒の重量を基準にして0〜30重量%である。得られる触媒の性能と耐久性を得るためには、0.1〜20重量%でこれら物質を用いるのが好適である。前記昇華性の物質または熱分解物質は、上記式2で表される化合物から形成される触媒の重量を基準に0〜30重量%の量で使用される。触媒の性能と耐久性を得るためには、0.1〜20重量%が好適である。担体を用いる場合、前記物質は、担体の量に対する触媒有効成分の前駆体の量の割合に応じて減らした量を用いることが好ましい。
【0034】
上記昇華性の物質または熱分解物質を添加する時期には特に制限がない。液状の触媒有効成分(触媒水溶液または懸濁液)の製造時に添加してもよく、粉状の乾燥された触媒有効成分と混合してもよい。但し、得られた触媒成形物の比表面積を最大限に精度よく調節するためには、触媒を成形する(押出、打錠、被覆など)段階の直前に添加することが好ましい。
【0035】
また、粉砕された触媒粉体に上記物質を添加する前に、粉砕された触媒粉体を酸素の雰囲気下、180ないし250℃において3時間ないし5時間をかけて焼成する前処理段階を追加することができる。これは、触媒の成形前に、吸湿性のあるニトレート(nitrate)化合物を除去することにより、作業性を良くするためである。
【0036】
上記触媒成形物の製造時に用いられる触媒粉体は、触媒の円滑な成形のために、150μm以下の粒度に粉砕して用いることが好ましい。
【0037】
本発明の触媒成形物の製造過程において、焼成時の温度には特に制限がない。通常の方法により触媒有効成分を直接押出若しくは打錠(ペレット化)して成形するか、あるいは、不活性担体に触媒有効成分を被覆させ、500℃以下において5〜20時間をかけて焼成した後に用いることができる。それぞれの反応領域に用いられる触媒の焼成温度は、同じであっても異なってもよい。
【0038】
触媒成形物の形には特に制限がない。触媒成形物は、円柱状、球状、パレット状、環状であっても良い。触媒有効成分を直接押出、打錠などの通常の触媒成形法により成形してもよい。あるいは、アランダム、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイドなどの不活性担体に被覆させて触媒を成形してもよい。上記触媒成形物は、好適には、シリンダー状、空洞のシリンダー状のものであっても良い。但し、担体を用いることなく、触媒有効成分のみで触媒を製造する場合、触媒活性が必要以上に高くなりうる。したがって、この場合には、円筒状の触媒の内部に穴の開けられた環状の触媒が好ましい。例えば、直径3〜8mmの円筒状の触媒に触媒有効成分が20〜70%になるように内部に直径0.5〜5mmの穴を開けることが好ましい。液状の触媒有効成分若しくは乾燥された粉末状の触媒有効成分を担体に担持するときには、回転式被覆機、遠心流動被覆機、スフェルダイザーなどに入れた状態で被覆することが好ましい。触媒有効成分を担体に被覆させて用いる場合、好ましくは、球状の担体に触媒有効成分を20〜70%担持させ、3〜8mm径をもつ粒子状に成形した方が、触媒の製造作業及び触媒の充填作業に有利である。
【0039】
本発明は、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる多数の触媒成形物をそれぞれ、反応器の反応管を複数の領域に分割して各領域に充填することを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、反応器の入口側から出口側に進むにつれて触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、細孔の密度及び/または孔径を調節することを特徴とする。
【0041】
触媒有効成分の比表面積を大きくするときは、細孔の密度を大きくするかまたは細孔径を大きくするか、或いは細孔の密度及び孔径の両方を大きくすればよい。しかし、細孔の密度及び孔径のどちらか一方を大きくして他方を小さくしても、比表面積が大きくなる限り、この場合も本発明の範疇に属する。一方、本発明において、触媒有効成分の比表面積が最小となる場合の例には、触媒有効成分内の細孔がない場合を含むことができる。
【0042】
過熱点(ホットスポット)とは、触媒層において温度が異常に高いか、あるいは、相対的に熱の蓄積(熱溜まり)が多い個所をいう。通常、最高温度の過熱点は、第1段階の反応領域においては、主反応物としてのオレフィン(例えば、プロピレン等)と分子酸素の濃度が高い第1段階の反応領域の前部で生じる。同様に、第2段階の反応領域においては、最高温度の過熱点は、主反応物としての不飽和アルデヒド(例えば、(メタ)アクロレイン)と分子酸素の濃度が高い第2段階の反応領域の前部に生じる。また、触媒有効成分の細孔の密度及び/または孔径が大きくなるほど、反応性が高くなる(一方、選択性及び安定性は低下する)。このため、相対的に触媒有効成分の細孔の密度及び/または孔径が最小となる触媒層をピーク過熱点が形成される各第1段階、第2段階の反応領域の前部付近に充填することにより、熱の発生を減らすと共に、過度な熱の蓄積を防いで、好ましくない副産物の生成を抑えることができる。さらに、有効成分の細孔の密度及び/または孔径が相対的に大きな触媒を、過熱点以降から反応管の後端部まで大きい順に順次に充填することにより、反応管の後端部の活性を高めて全体としての生成物の収率を高めると共に、より長期に亘って安定的に最終品を生産することができる。
【0043】
本発明によれば、触媒サイズ(体積)そのものを調節して触媒の活性を調節するのではなく、触媒有効成分内の細孔の孔径及び/または密度を調節することにより、触媒サイズを均一に保ちながらも、触媒の活性を調節することができる。また、本発明によれば、触媒有効成分の微細孔により反応物の通路が形成され、それによって反応熱を分散させて望ましくない過熱を防ぐ。したがって、高い転換率を保つとともに、優れた選択性をもたらすことができる。
【0044】
さらに、細孔の孔径及び/または密度を不連続的にも連続的にも調節可能なことから、細孔の孔径及び/または密度が互いに異なる触媒有効成分を含む様々な触媒層を、上記反応領域中に充填することができる。
【0045】
理論的には、反応器の発熱温度の分布に応じて、第1段階および第2段階においてさまざまな触媒層の使用によって細分化した各反応領域の数を増やした場合、反応熱の制御がより容易になる。しかし、商業的な面からみた場合には、反応領域を無限に増やすことはできない。このため、本発明の効果を所望する程度にまで得るためには、2または3段の反応領域を用いることが好ましい。一方、各段の触媒層は、反応器の発熱を効率よく制御可能な任意の高さまで充填することができる。細孔の密度及び/または孔径の調節により触媒有効成分の比表面積が最小となる触媒層の充填高さは、ピーク過熱点を含むことが好ましい。より具体的には、上述した充填高さは、全体の触媒層の高さのうち、入口側から10ないし50%、好ましくは、10ないし30%である。
【0046】
反応器の各段に用いられる触媒有効成分の細孔の孔径及び/または密度によって比表面積を調節する場合、例えば、触媒有効成分の比表面積が大きな(過熱点付近以降の2、3段付近に用いられる)触媒を製造するに際しては、相対的に触媒有効成分の比表面積が小さな(過熱点付近に用いられる)触媒と比べて、昇華性の物質または熱分解物質を、その使用量及び/またはその物質の粒度が順次1〜3倍増大するように添加することが好ましい。
【0047】
上記第1段階の反応領域及び/または第2段階の反応領域において、相異なる触媒層を2段に充填する場合、第1の充填層の触媒有効成分の比表面積は5ないし10m/gの範囲であり、第2の充填層の触媒有効成分の比表面積は10ないし100m/gの範囲であることが好ましい。
【0048】
また、第1段階の反応領域及び/または第2段階の反応領域において、相異なる触媒層を3段に充填する場合、第1の充填層の触媒有効成分の比表面積は5ないし10m/gの範囲であり、第2の充填層の触媒有効成分の比表面積は10ないし50m/gの範囲であり、第3の充填層の触媒有効成分の比表面積は50ないし100m/gの範囲であることが好ましい。
【0049】
本発明に用いられる反応条件には特に制限がない。本発明では、固定層多管式シェルアンドチューブ型反応器内における、プロピレンまたはプロパンの気相接触酸化反応によるアクロレイン及びアクリル酸の製造、若しくはイソブチレン、t−ブチルアルコール及びメチル−t−ブチルエーテルの気相接触酸化反応によるメタアクロレイン及びメタアクリル酸の製造に有用である任意の反応条件を導入することができる。例えば、本発明にしたがって反応器中で酸化を行うためには、1ないし10体積%のプロピレン等などの原料化合物と、1ないし15体積%の分子酸素、5ないし60体積%の水蒸気、及び20ないし80体積%の不活性ガスを含む原料ガス(但し、それぞれの成分の合計は、100体積%である)を、200ないし350℃範囲の温度、且つ、大気圧〜3気圧の圧力下において、500ないし4000hr−1の空間速度(STP)で触媒上に導入して行うことができる。
【0050】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、決して本発明を限定するものではない。
【0051】
製造例
(触媒1の製造)
分岐型攪拌器付き50L容量のガラス反応器に蒸留水30Lを入れた後、加熱した。90℃において、そのなかにモリブデン酸アンモニウム10,000gを溶解させることにより、溶液1を製造した。蒸留水2500 mlに硝酸コバルト6593g、硝酸ビスマス4121g、硝酸鉄2746g、硝酸セリウム185g、硝酸マンガン258g及び硝酸カリウム28.63gを加えて良く混合し、溶液2を製造した。溶液1を激しく攪拌しながら、溶液2をゆっくりと投入して触媒懸濁液を製造した。製造した触媒懸濁液を12時間以上乾燥させた後、150μm以下の粒径に粉砕した。次にそこへ尿素(NHCONH)を全体の重量(触媒有効成分の粉砕物+尿素)の10重量%になるように添加した。得られた生成物を、内径2mm、外径6mm、長さ6mmの環状のペレット状にし、450℃において5時間をかけて空気の雰囲気下で焼成して触媒成形物を製造し、触媒の活性を検証した。製造された触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo10Bi1.5Fe1.2Co0.05Ce0.1Mn0.1(触媒1)であった。
【0052】
(触媒2の製造)
尿素(NHCONH)を20重量%用いた以外は、触媒1の製造法と同様にして触媒2を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo10Bi1.5Fe1.2Co0.05Ce0.1Mn0.1(触媒2)であった。
【0053】
(触媒3の製造)
尿素(NHCONH)を添加しなかった以外は、上記触媒1の製造法と同様にして触媒3を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo10Bi1.5Fe1.2Co0.05Ce0.1Mn0.1(触媒3)であった。
【0054】
(触媒4の製造)
尿素(NHCONH)に代えてナフタレン(C10)を10重量%添加し、且つ、硝酸セリウムと硝酸マンガンに代えて塩化アルミニウム622.5gを添加した以外は、上記触媒1の製造法と同様にして触媒4を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo10Bi1.5Fe1.2CoAl0.05(触媒4)であった。
【0055】
(触媒5の製造)
ナフタレン(C10)を20重量%添加した以外は、上記触媒4の製造法と同様にして触媒5を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo10Bi1.5Fe1.2CoAl0.05(触媒5)であった。
【0056】
(触媒6の製造)
通常の分岐型攪拌器とホモジナイザー付き50L容量のガラス反応器に蒸留水30Lを入れて加熱した。蒸留水が沸点に達したら、ここにパラタングステン酸アンモニウム2960g、モリブデン酸アンモニウム10000g及びメタバナデン酸アンモニウム2320gを順次に投入した。反応混合物が完全に溶解されるまで、攪拌しながら沸騰状態が維持されるように加熱した。次いで、ホモジナイザーを4000RPMにて回転させながら、水2.6Lに溶かした硝酸銅1370g、硝酸ニッケル1650g及び硝酸ストロンチウム960gの水溶液を、上記の3種のアンモニウム塩混合水溶液に混合した。このようにして製造した懸濁液に、尿素(NHCONH)を10重量%添加した。次いで、直径5mmのシリカ−アルミナ担体上に被覆させて触媒を得た。このようにして得られた担体上に担持された触媒を450℃において空気の流通下で5時間焼成して最終的な触媒を製造した。焼成後、得られた触媒は、担体と触媒粉体の合計量を基準にして30重量%の触媒粉末を含んでいた。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo103.5CuNiSr0.8(触媒6)であった。
【0057】
(触媒7の製造)
尿素(NHCONH)を20重量%用いた以外は、触媒6の製造法と同様にして触媒7を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo103.5CuNiSr0.8(触媒7)であった。
【0058】
(触媒8の製造)
製造された懸濁液を担体に被覆する前に尿素(NHCONH)を添加しなかった以外は、触媒6の製造法と同様にして触媒8を製造した。得られた触媒有効成分のうち酸素を除く元素の組成比は、Mo103.5CuNiSr0.8(触媒8)であった。
【0059】
下記表1は、上記触媒1〜8に従って製造された各触媒有効成分の比表面積と構成元素を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例1
内径1インチのステンレス製反応器に反応ガス導入部から出口に向けて触媒1を1000mm、および触媒2を2000mm充填した後、プロピレン8体積%、酸素14体積%、水蒸気18体積%及び不活性ガス60体積%の混合ガスを空間速度1600hr−1、反応温度280℃にて酸化反応を行った。
【0062】
比較例1
触媒1と触媒2の両方を用いる代わりに、触媒1を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例1と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0063】
比較例2
触媒1と触媒2の両方を用いる代わりに、触媒2を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例1と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0064】
実施例2
内径1インチのステンレス製反応器に、反応ガス導入部から出口に向けて触媒4を1000mm、および触媒5を2000mm充填した。次に、プロピレン8体積%、酸素14体積%、水蒸気18体積%及び不活性ガス60体積%の混合ガスを空間速度1600hr−1、反応温度280℃にて酸化反応を行った。
【0065】
比較例3
触媒4と触媒5の両方を用いる代わりに、触媒4を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例2と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0066】
比較例4
触媒4と触媒5の両方を用いる代わりに、触媒5を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例2と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0067】
比較例5
触媒3を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例1と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0068】
実施例3
内径1インチのステンレス製反応器に、反応ガス導入部から出口に向けて触媒6を1000mm、および触媒7を2000mm充填した後、アクロレイン7体積%、酸素13体積%、水蒸気20体積%及び不活性ガス60体積%の混合ガスを、空間速度1800hr−1、反応温度250℃にて酸化反応を行った。
【0069】
比較例6
触媒6と触媒7の両方を用いる代わりに、触媒6を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例3と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0070】
比較例7
触媒6と触媒7の両方を用いる代わりに、触媒7を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例3と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0071】
比較例8
触媒8を単独で3000mm充填して用いた以外は、実施例3と同じ反応条件下で酸化反応を行った。
【0072】
<考察1>
反応物質(プロピレン)の転換率、選択率、及び収率は、それぞれ下記数式1〜3により計算した。
【0073】
[数式1]
プロピレン転換率(%)=[反応したプロピレンのモル数/供給したプロピレンのモル数]×100
[数式2]
アクロレイン+アクリル酸の選択率(%)=[(生成したアクロレイン及びアクリル酸のモル数)/反応したプロピレンのモル数]×100
[数式3]
[アクロレイン+アクリル酸]の収率(%)=[(生成したアクロレイン及びアクリル酸のモル数)/供給したプロピレンのモル数]×100
【0074】
上記実施例1、2及び比較例1〜5に従い触媒を充填した反応器を用いてプロピレンを酸化反応した結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
上記表2に示すように、熱分解性若しくは昇華性の物質を添加して触媒有効成分の比表面積が異なるように製造された2種の触媒を充填して酸化反応を行った実施例1あるいは実施例2の方が、比表面積が同じ触媒成形物を用いた比較例1〜5に比べて、反応物(プロピレン)の転換率、生成物の選択率と収率に一層優れていることが分かった。
【0077】
<考察2>
反応物質(アクロレイン)転換率、選択率及び収率はそれぞれ下記数式4〜6により計算した。
【0078】
[数式4]
アクロレインの転換率(%)=[反応したアクロレインのモル数/供給したアクロレインのモル数]×100
[数式5]
アクリル酸の選択率(%)=[生成したアクリル酸モル数/反応したアクロレインのモル数]×100
[数式6]
アクリル酸の収率(%)=[生成したアクリル酸のモル数/供給したアクロレインのモル数]×100
【0079】
以下の表3は、上記実施例3及び比較例6〜8に従い触媒を充填した反応器を用いてアクロレインを酸化反応させた結果を示す。
【0080】
【表3】

【0081】
上記表3に示すように、昇華性若しくは熱分解性の物質を添加して触媒有効成分の比表面積が異なるように製造された2種の触媒を充填して酸化反応を行った実施例3の方が、同じ触媒を使用あるいは不使用の比較例6〜8に比べて、アクロレインの転換率、生成物の選択率と収率が一層優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、第1段階及び第2段階における反応がそれぞれ別個の反応器において行われ、各反応器が1本の接触管よりなるパイロット反応器の構造と、接触管内に配置された触媒層の構成を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定層接触部分酸化反応に使用可能なシェルアンドチューブ反応器において、
前記反応器は、オレフィンから不飽和アルデヒドを主として製造する第1段階の反応領域と、不飽和アルデヒドから不飽和酸を主として製造する第2段階の反応領域のうちの少なくとも一方の反応領域を含み、
前記反応領域の少なくとも一方は2以上の触媒層を含み、
前記2以上の触媒層は、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によりそれぞれ充填されてなり、
反応器の入口側から出口側に進むにつれて触媒有効成分の比表面積が大きくなるように、前記細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とする反応器。
【請求項2】
前記触媒成形物が、触媒有効成分を所望の形に成形することにより得られる成形触媒、または触媒有効成分を所望の形の不活性担体に担持させることにより得られる担持触媒であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項3】
細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる前記触媒有効成分が、
(a)触媒有効成分となる金属酸化物を形成する金属成分の塩を混合して、触媒水溶液または懸濁液を得る段階と、
(b)前記触媒水溶液または懸濁液を乾燥して触媒粉体を得る段階と、
(c)前段階の結果物を焼成する段階と、を含むが、
(a)段階の途中で、または(b)段階と(c)段階との間に、添加量及び粒径のどちらか一方または両方が調節された昇華性の物質または熱分解物質を添加する段階をさらに含む製造法により得られることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項4】
前記昇華性の物質または熱分解物質は、50ないし200℃において昇華または熱分解されることを特徴とする請求項3に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項5】
前記昇華性の物質または熱分解物質は、尿素(NHCONH)、メラミン(C)、シュウ酸アンモニウム(C)、シュウ酸メチル(C)及びナフタレン(C10)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項6】
前記昇華性の物質または熱分解物質は、0.01〜50μm径の粒状粉体であるかまたは液状体であることを特徴とする請求項3に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項7】
前記昇華性の物質または熱分解物質は、触媒有効成分に対して0〜30重量%の量で添加されることを特徴とする請求項3に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項8】
前記触媒粉体が、150μm以下に粉砕して用いられることを特徴とする請求項3に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項9】
細孔により触媒有効成分の比表面積が最小となる触媒層がピーク過熱点を含み、前記触媒有効成分の比表面積が5ないし10m/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項10】
少なくとも1つの反応領域が、2層に充填された第1の触媒層と第2の触媒層とを含み、第1の充填層の触媒有効成分の比表面積は5ないし10m/gの範囲であり、第2の充填層の触媒有効成分の比表面積は10ないし100m/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項11】
少なくとも1つの反応領域が、3層に充填された、第1の触媒層、第2の触媒層、及び第3の触媒層を含み、第1の充填層の触媒有効成分の比表面積は5ないし10m/gの範囲であり、第2の充填層の触媒の比表面積は10ないし50m/gの範囲であり、第3の充填層の触媒の比表面積は50ないし100m/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドチューブ反応器。
【請求項12】
シェルアンドチューブ反応器を用いて固定層接触部分酸化反応によりオレフィンから不飽和アルデヒドを製造する方法であって、
不飽和アルデヒドを製造する反応領域を有し、2以上の触媒層を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の反応器を使用し、
ここで、2以上の前記触媒層のそれぞれは、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によって充填されており、
前記触媒有効成分の比表面積が、反応器の入口側から出口側に進むにつれて大きくなるように、細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とする不飽和アルデヒドの製造法。
【請求項13】
前記触媒有効成分が、下記式1で表わされる化合物であることを特徴とする請求項12に記載の製造法:
[式1]
Mo
式中、
Moは、モリブデンであり、
Aは、Bi、及びCrよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Bは、Fe、Zn、Mn、Nb、及びTeよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Cは、Co、Rh、及びNiよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Dは、W、Si、Al、Zr、Ti、Cr、Ag及びSnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Eは、P、Te、As、B、Sb、Sn、Nb、Cr、Mn、Zn、Ce、及びPbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Fは、Na、K、Li、Rb、Cs、Ta、Ca、Mg、Sr、Ba及びMgOよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比を示し、
但し、a=10のとき、bは、0.01〜10であり、cは、0.01〜10であり、dは、0〜10であり、eは、0〜10であり、fは、0〜20であり、gは、0〜10であり、そしてhは、上記の各成分の酸化状態によって決まる数値である。
【請求項14】
シェルアンドチューブ反応器を用いて固定層接触部分酸化反応により不飽和アルデヒドから不飽和酸を製造する方法であって、
不飽和アルデヒドを製造する反応領域を有し、2以上の触媒層を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の反応器を使用し、
ここで、2以上の前記触媒層のそれぞれは、触媒有効成分内の細孔の密度及び/または孔径が互いに異なる触媒成形物によって充填されており、
前記触媒有効成分の比表面積が、反応器の入口側から出口側に進むにつれて大きくなるように、細孔の密度及び/または孔径が調節されていることを特徴とする不飽和酸の製造法。
【請求項15】
前記触媒有効成分が、下記式2で表わされる化合物であることを特徴とする請求項14に記載の製造法:
[式2]
Mo
式中、
Moは、モリブデンであり、
Wは、タングステンであり、
Vは、バナジウムであり、
Aは、鉄(Fe)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Bは、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Cは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属よりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
Oは、酸素原子であり、
a、b、c、d、e、f及びxは、それぞれMo、W、V、A、B、C及びO元素の原子比を示し、
a=10のとき、0.5≦b≦4、0.5≦c≦5、0≦d≦5、0≦e≦2、且つ、0≦f≦2であり、xは、上記の各成分の酸化状態によって決まる数値である。

【図1】
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【公表番号】特表2008−535784(P2008−535784A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556971(P2007−556971)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000596
【国際公開番号】WO2006/091005
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】