説明

両面塗工装置

【課題】塗膜の厚みを一定にできる両面塗工装置を提供する。
【解決手段】両面塗工装置は、ウェブ材Wを支持するバックアップローラと、バックアップローラに対向して配置され、ウェブ材Wの第1の面に塗料を塗布する第1塗装ヘッドと、ウェブ材Wの第1の面の非塗装部分に当接するように環状に突出し、外周に雰囲気を吸い込む吸着穴14が開口する複数の支持部11を備える吸着ローラ4と、吸着ローラ4に対向して配置され、ウェブ材Wの第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッド3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ材の両面に塗料を塗布する両面塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブ材の両面に塗料を塗布する必要がある場合、一般的には、片面塗工装置を用い、片面に塗料を塗布して塗料を乾燥してから巻き取ったウェブ材を、再度、片面塗工装置にセットして裏面に塗料を塗布している。
【0003】
電気自動車等へのニーズの高まりにつれ、二次電池の高密度化と低価格化とが強く求められている。二次電池セルの製造においては、金属箔電極の両面に活物質をより均一に塗布できる塗工装置が求められている。
【0004】
一般に、ダイヘッドによって塗料を塗布する塗工装置は、バックアップローラに巻き付けられたウェブ材に対向するようにダイを配置することで、ウェブ材とダイヘッドとの隙間を一定に保ち、塗膜の厚みを一定にしている。ウェブ材の両面を塗装可能とするために、ウェブ材をバックアップローラに巻き付けた状態で塗装するダイヘッドを2つ設けようとすると、ウェブ材を2つめのバックアップローラに巻き付ける前に最初のダイヘッドで塗布された塗料を乾燥しなければならず、2つのドライヤが必要であるために装置が長くなり、設備コストが高くなってしまう。
【0005】
特許文献1および2には、ウェブ材を挟み込むようにして2つのダイヘッドを配置した塗工装置が記載されているが、塗装時にウェブ材を支持することができないので、ダイヘッドの間でウェブ材が振動し、ダイヘッドとウェブ材との隙間が変化して、塗膜の厚みがばらついてしまう。
【0006】
特許文献3には、ダイヘッドの直前にウェブ材を挟み込むローラを配置し、ダイヘッドの直後にウェブ材の両側の塗装されていないマージン部分を挟み込んで張力を与えるローラを配置した発明が記載されている。しかしながら、この塗工装置においても、ダイヘッドの間で塗装されている瞬間のウェブ材は支持されておらず、ウェブ材の振動を完全に防止することは難しい。
【0007】
特許文献4には、表面に設けた多数の小孔から空気を噴出するローラによって、ウェブ材の塗装された面を空気浮上させた状態で支持し、この空気浮上ローラに対向するように配置したダイヘッドにより反対面を塗装する塗工装置が記載されている。この場合も、ウェブ材を支持する空気層の厚みを一定に保つことは難しく、ダイヘッドとウェブ材との隙間が変動して膜圧がばらついてしまう。
【0008】
特許文献5には、一定のピッチで溝が形成され、ウェブ材と反対向きに回転する溝付ローラによって、ウェブ材の塗装面を支持し、溝付ローラに対向するダイヘッドでウェブ材の反対面を塗装する発明が記載されている。この発明では、溝付ローラに支持される瞬間、溝の山が当接する部分に塗布されている塗料が溝の谷の部分に押し出されるため、塗料の物性によってウェブ材が溝付ローラから離間したときに塗膜の厚みを均一に回復できる場合にしか適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−72976号公報
【特許文献2】特開平10−216603号公報
【特許文献3】特開2008−284528号公報
【特許文献4】特開平2−214564号公報
【特許文献5】特開平7−185436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記問題点に鑑みて、本発明は、塗膜の厚みを一定にできる両面塗工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明による両面塗工装置は、ウェブ材を支持するバックアップローラと、前記バックアップローラに対向して配置され、前記ウェブ材の第1の面に塗料を塗布する第1塗装ヘッドと、前記ウェブ材の前記第1の面の非塗装部分に当接するように環状に突出し、外周に雰囲気を吸い込む吸着穴が開口する複数の支持部を備える吸着ローラと、前記吸着ローラに対向して配置され、前記ウェブ材の第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッドとを有するものとする。
【0012】
この構成によれば、第2塗装ヘッドによりウェブ材の第2の面を塗装するとき、ウェブ材の第1の面の塗装されていない部分すなわちマージン部分を支持部が吸着して保持するので、ウェブ材の位置が厳密に維持され、厚みが均一な塗膜を形成できる。
【0013】
また、本発明の両面塗工装置は、前記支持部の間に、前記ウェブ材との間に隙間を形成するように配置され、前記ウェブ材に向かってガス(通常は空気)を噴射する多数の小孔を備える静圧パッドをさらに有してもよい。
【0014】
この構成によれば、ウェブ材の支持部の間に張架されている部分が、第2塗装ヘッドによる塗料の吐出圧力や第1の面の塗料の重量によって凹まないように、ガス圧によって支持することができ、塗膜の厚みを幅方向に均一にできる。
【0015】
また、本発明の両面塗工装置は、前記吸着ローラの下流に、多数の貫通穴が開いた無端ベルトと、前記無端ベルトの裏側から前記貫通穴を介して前記ウェブ材を吸引する吸引チャンバとを備え、前記ウェブ材の両端の前記非塗装部分にそれぞれ当接し、下流側の間隔が広くなるように掛け渡された一対の吸引コンベアをさらに有してもよい。
【0016】
この構成によれば、吸引コンベアによりウェブ材を幅方向に拡げられるので、塗布された塗料の重みによってウェブ材に搬送方向の皺が形成されることを防止できる。
【0017】
また、本発明の両面塗工装置において、前記第1塗装ヘッドは、前記ウェブ材の前記第1の面に複数の条線状に塗料を塗布し、前記吸着ローラの前記支持部は、前記ウェブ材の前記複数の条線状の塗料の間の部分を吸着する位置にも設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、幅広のウェブ材に並列して塗膜を形成できるので、処理量を多くできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウェブ材の第2の面を塗装するときに、吸着ローラによってウェブ材の塗装のマージン部分を吸着して保持するので、ウェブ材が振動せず、厚みが均一な塗膜を形成できる。また、第2の面を塗装するときに、吸着ローラが第1の面の塗膜には接触しないので、第2の面を塗装する前に第1の面の塗膜を乾燥する必要がない。このため、設備の設置スペースが小さく、エネルギー消費も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の両面塗工装置の部分斜視図である。
【図2】図1の両面塗工装置の吸着ローラの斜視図である。
【図3】図1の吸着ローラおよび第2塗装ヘッドの軸方向断面図である。
【図4】図2の吸着ローラの支持部の径方向断面図である。
【図5】図2の吸着ローラの静圧パッド部の径方向断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の両面塗工装置の吸着ローラの軸方向断面図である。
【図7】図6の吸着ローラの静圧パッド部の径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これより、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の第1実施形態の両面塗工装置の塗工に係る部分の構成を示す。本実施形態の両面塗工装置は、ウェブ材Wの第1の面(裏面)に、塗料を等間隔の3本の条線状に塗布する第1塗装ヘッド(コーティングダイ)1と、第1塗装ヘッド1が対向する位置においてウェブ材Wの第2の面を支持するバックアップローラ2と、ウェブ材Wの第2の面(表面)に、塗料を第1の面の塗料と表裏一致する3本の条線条に塗布する第2塗装ヘッド(コーティングダイ)3と、第2塗装ヘッド3が対向する位置においてウェブ材Wの第1の面を支持する吸着ローラ4とを有する。
【0022】
さらに、この両面塗工装置は、バックアップローラ2と吸着ローラ4との間および吸着ローラ4の下流に、ウェブ材Wの第1の面の両端の塗装されていない非塗装部分(マージン部分)を吸着する、下流側の間隔が広くなった一対の吸引コンベア5,6をそれぞれ有する。
【0023】
吸引コンベア5,6は、2つのプーリ7の間に張架され、ウェブ材Wの搬送速度よりも僅かに高い速度で回転駆動される無端ベルト8と、無端ベルト8の裏面に開口し、内部が真空引きされる吸引チャンバ9とを備える。無端ベルト8には多数の貫通穴10が設けられており、吸引チャンバ9は、貫通穴10を介して無端ベルト8の表面に近接するウェブ材Wを吸引する。
【0024】
吸引コンベア5,6のそれぞれの対は、下流側の間隔が僅かに広くなるように互いに傾斜して配置され、ウェブ材Wの貫通穴10によって吸着している部分の距離を拡げるように移動する。吸引コンベア5,6の吸引力は、ウェブ材Wの張力が高くなると、吸引コンベア5,6の表面上でウェブ材Wが滑る程度であり、連続してウェブ材Wを拡幅することで、上流側のウェブ材Wにまで幅方向に張力を与えることができる。
【0025】
図2に、吸着ローラ4を詳細に示す。吸着ローラ4は、ウェブ材Wの第1の面の両端および条線状に塗布された塗料の間の非塗装部分に当接するように、それぞれ、環状に突出する支持部11を備える外管12と、外管12の内部に配置され、一端に不図示の真空源が接続される内管13とからなる。内管13は、固定されており、外管12は、不図示の駆動機構によって駆動され、内管13の周りで回転する。
【0026】
図3および図4に示すように、吸着ローラ4の支持部11は、その外周に、内側まで貫通した多数の吸着穴14が等ピッチで開口しており、内管13の開口部15に連通することにより、雰囲気を吸い込むようになっている。これにより、支持部11は、ウェブ材Wを吸着して支持することができる。なお、開口部15は、支持部11がウェブ材Wを吸着すべき角度範囲に対応して開口しており、それ以外の部分では吸着穴14の真空引きを遮断してウェブ材Wを開放させる。
【0027】
さらに、本実施形態の両面塗工装置は、吸着ローラ4の支持部11の間の凹部に、それぞれ、支持部11がウェブ材Wを吸着する角度範囲に略対応する大きさの静圧パッド16が配設されている。
【0028】
図5に示すように、静圧パッド16は、支持部11の外周面の内側に位置し、支持部11が吸着支持しているウェブ材Wとの間に隙間を形成するような4分の1円筒外面を有する中空構造を有し、その表面に多数の小孔17が設けられている。静圧パッド16には、不図示の圧空源が接続され、小孔17からウェブ材Wの塗装された部分に向かって空気を噴射するようになっている。
【0029】
静圧パッド16は、ウェブ材Wの第1面に塗布された塗料の重みや第2面に塗布される塗料の吐出圧に対向して、ウェブ材Wが吸着ローラ4側に撓まないように支持する。したがって、静圧パッド16の空気圧は非常に低圧でよく、噴射した空気によって第1面の塗料の表面を荒らすことがないようにする必要がある。
【0030】
このように、本実施形態の両面塗工装置では、第1塗装ヘッド1が塗装したウェブ材Wの第1の面と反対側の第2の面を第2塗装ヘッド3によって塗装する際、吸着ローラ4が支持部11の外周面にウェブ材Wの第1の面を密接させるように吸引して支持するので、ウェブ材Wの第2の面と第2塗装ヘッド3との隙間が一定に保たれ、結果として、第2塗装ヘッド3によって塗布される塗膜の厚みを一定にすることができる。
【0031】
続いて、図6および7に、本発明の第2実施形態の両面塗工装置に係る吸着ローラ18を示す。この吸着ローラ18は、外管19と内管20とからなり、外管19は、環状に突出し、その外周面に放射状に吸着穴21が開口してウェブ材の非塗装部分を吸着する支持部22と、支持部22の間に設けられ、全体的に多数の小孔23が開口する静圧パッド部24とを備える。
【0032】
内管20には、軸方向に平行に延伸する2本の流路が画定されており、一方が不図示の真空源に接続される吸引ヘッダ流路25であり、他方が不図示の圧空源に接続される圧力ヘッダ流路26である。また、内管20の外側には、支持部22および静圧パッド部24にそれぞれ対向する位置の約90度の範囲に、互いに隔離された接続溝27,28が形成されており、さらに、吸引ヘッダ流路25と接続溝27とを接続する連通孔29、および、圧力ヘッダ流路26と接続溝28とを接続する連通孔30が設けられている。
【0033】
以上の構成により、吸着ローラ18は、第2塗装ヘッド3に対向する約90度の角度範囲においてのみ、吸着穴21から雰囲気を吸引してウェブ材Wの非塗装部分を支持部22の外周面に吸着し、且つ、静圧パッド部24の小孔23から空気を噴射してウェブ材Wの撓みを防止する。
【符号の説明】
【0034】
1…第1塗装ヘッド
2…バックアップローラ
3…第2塗装ヘッド
4…吸着ローラ
5,6…吸引コンベア
8…無端ベルト
9…吸引チャンバ
10…貫通穴
11…支持部
14…吸着穴
16…静圧パッド
17…小孔
18…吸着ローラ
21…吸着穴
22…支持部
23…小孔
24…静圧パッド部
W…ウェブ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ材を支持するバックアップローラと、
前記バックアップローラに対向して配置され、前記ウェブ材の第1の面に塗料を塗布する第1塗装ヘッドと、
前記ウェブ材の前記第1の面の非塗装部分に当接するように環状に突出し、外周に雰囲気を吸い込む吸着穴が開口する複数の支持部を備える吸着ローラと、
前記吸着ローラに対向して配置され、前記ウェブ材の第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッドとを有することを特徴とする両面塗工装置。
【請求項2】
前記支持部の間に、前記ウェブ材との間に隙間を形成するように配置され、前記ウェブ材に向かってガスを噴射する多数の小孔を備える静圧パッドをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記吸着ローラの下流に、多数の貫通穴が開いた無端ベルトと、前記無端ベルトの裏側から前記貫通穴を介して前記ウェブ材を吸引する吸引チャンバとを備え、前記ウェブ材の両端の前記非塗装部分にそれぞれ当接し、下流側の間隔が広くなるように掛け渡された一対の吸引コンベアをさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の両面塗工装置。
【請求項4】
前記第1塗装ヘッドは、前記ウェブ材の前記第1の面に複数の条線状に塗料を塗布し、
前記吸着ローラの前記支持部は、前記ウェブ材の前記複数の条線状の塗料の間の部分を吸着する位置にも設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の両面塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147864(P2011−147864A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10077(P2010−10077)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】