両面粘着シートを用いた透明導電膜積層体およびタッチパネル装置
【課題】透明導電膜の繊維状の導電性物質を含有する導電層面に両面粘着シートを貼り合わせた透明導電膜積層体であって、高温条件下での剥がれが生じ難く、高温環境下にあっても導電層面の特性が低下しない透明導電膜積層体を提供する。
【解決手段】導電性物質を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
【解決手段】導電性物質を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートを使用した透明導電膜積層体、該透明導電膜積層体を使用したタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直感的に電子機器を操作するために、タッチセンサが搭載され始めている。タッチセンサには、主に接触時の圧力で検知する抵抗膜方式のタッチパネルと、接触時の人体からの静電気で入力箇所を検知する静電容量方式のタッチパネルが主に搭載されており、2点以上の接触箇所の同時検出が可能なこと、多様な入力方法の可能なことから静電容量方式が主流となりつつある。静電容量方式のタッチパネルには、透明な樹脂フィルムやガラスに導電層が設けられた透明導電膜を積層した構成が使用されている。
【0003】
透明導電膜の導電層は、例えば酸化インジウムスズなど高い透明性と導電性を有する金属を蒸着することで形成されており、両面粘着シートによる金属の酸化反応が起こり、導電機能の低下が起こる問題がある。特に透明導電膜の導電層が、互いに絡み合う繊維状導電性物質により形成されたネットワークによって形成されている時は、繊維状導電性物質同士の電気的接触点を介し限られた経路で導電性が保たれているため、該接触点がこのような酸化反応を受け、その導電機能が低下することにより極めて大きな全体の導電性能の低下が引き起こされる。このため、繊維状導電性物質を含有する導電層を有した透明導電膜の固定に用いられる両面粘着シートには、より一層高い金属腐食防止性が要請されている。
【0004】
金属腐食防止性を有する両面粘着シートとしては、粘着剤層に含有する酸成分が金属の腐食の原因であることから、酸成分を含有しない両面粘着シート(例えば、特許文献1参照)が提案されている。当該両面粘着シートは、金属を腐食させる要因となる酸成分を含有しない粘着剤層により金属腐食防止性を有するものである。しかし、酸成分を含有しな
い粘着シートは、粘着剤層の凝集力が低く、高温下で剥がれが生じる問題があった。
【0005】
また、酸成分を含有しつつ、当該酸成分による腐食を防止するために金属腐食防止剤を含有する両面粘着シートが開示されている(例えば特許文献2参照)。しかし、金属腐食防止剤は、それ自身が高温環境下で変質や変色を生じる場合があり、このような変質や変色により、両面粘着シートが着色し、視認性が悪化する問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−325250号公報
【特許文献2】特開2006−045315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層面に対して直接貼り合わせても導電層を腐食させず、また、粘着剤層の凝集力に優れ、高温環境下での剥がれや着色による視認性の低下が生じ難く、耐剥がれ性に優れる両面粘着シートを用い、該両面粘着シートを透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層面に適用した透明導電膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、窒素原子を含有する単量体を使用したアクリル酸エステル共重合体を、他のアクリル酸エステル共重合体と併用した粘着剤層を使用することで、酸成分を含有しなくとも粘着剤の凝集力を好適に確保でき、繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に対する腐食性が低く、高温下での剥がれや、着色による視認性の低下が生じ難い両面粘着シートを実現し、該両面粘着シートを、繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に適用して上記の課題を解決した。
【0009】
すなわち本発明は、導電性物質及び樹脂を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エス
テル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする透明導電膜積層体を提供する。
さらに本発明は上記透明導電膜積層体を有するタッチパネル装置を提供するものである。
さらに本発明は上記透明導電膜積層体を有するタッチパネル用透明導電性シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の透明導電膜積層体は、粘着剤層中に酸成分を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、特定の窒素含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体が配合されているため、変色や変質の発生原因となる金属腐食防止剤を含有しなくとも、隣接する導電層中の繊維状透明導電性物質の腐食を抑制でき、また酸成分を含有しなくても導電層に対して好適な凝集力を有するため、高温環境下でも導電層からの剥がれが生じ難く、好適な視認性と接着性を有する。
このため、本発明の透明導電膜積層体は、導電層に対して好適な視認性や耐腐食性が求められる携帯電子機器や画像表示装置の部品用、特に静電容量方式のタッチパネル用途に好適に使用できる。
また、本発明の透明導電膜積層体は、使用されている粘着剤層が導電層に対して好適な凝集力を有し、良好な打ち抜き加工性を有することから、各種部品形態に応じて精密な打ち抜き加工が求められる携帯電子機器や画像表示装置の部品用に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における透明導電層付き基体の断面図
【図2】本発明におけるネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の断面図
【図3】本発明における透明導電層付き基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の加熱、加圧貼り合わせ工程の模式断面図
【図4】本発明における透明導電層付き基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の剥離工程の模式断面図
【図5】本発明におけるパターン化された透明導電層上に保護層用塗料を塗布し保護層を形成した後の断面図
【図6】本発明の方法により形成するタッチパネル用透明導電層のX軸用パターンの平面図
【図7】本発明の方法により形成するタッチパネル用透明導電層のY軸用パターンの平面図
【図8】本発明において支持体上に形成する感熱接着剤層のためのX軸用ネガティブパターンの平面図
【図9】本発明において支持体上に形成する感熱接着剤層のためのY軸用ネガティブパターンの平面図
【図10】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図11】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図12】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図13】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体を使用した静電容量型タッチパネル装置の概念図である。
【図14】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体を使用した静電容量型タッチパネル装置の概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の透明導電膜積層体は、均一な透明導電層上あるいはパターン化された透明導電層上に両面粘着シートが貼り合わせられた積層体である。
以下にまず透明導電膜を構成する材料とその組成、並びに均一な透明導電層あるいはパターン化された透明導電層を有する透明導電膜の製造方法について詳細に記載し、その後これら透明導電層上に貼り合わせられる両面粘着シートを構成する材料とその組成、及び該両面粘着シートの製造方法について記載する。
【0013】
本発明の透明導電積層体の透明導電膜は透明基体上に透明導電層の形成されたものであっても、透明基体を伴わないものであってもよいが、透明基体上に樹脂および透明導電性物質を含有する透明導電層の形成されたものであるほうが、透明基体上に任意の透明導電層のパターンを形成しやすく好ましい。本発明において「透明導電膜上」と記載した場合、透明基体を有さない場合にはその透明導電膜のどちらか一方の面上を意味し、透明基体上を有する場合には透明基体上に形成された透明導電層上を意味する。
【0014】
透明基体上に樹脂および繊維状透明導電性物質を含有する透明導電層を形成する方法としては、繊維状導電性物質を含有する透明導電性塗料を透明基体上に塗布、乾燥することによって作製することができる。
本発明の透明導電膜は、微細な繊維状の透明導電性物質を液体媒体(分散媒)中に分散した透明導電性塗料を基体上に塗布し、透明導電層を形成することによって作製される。ここで透明導電性物質とはそれ自身が透明でなくても、形状や含有量を制御することにより透明導電層を形成する導電性材料となりうる物質も含むものとする。本発明の透明導電層は、表面抵抗率が0.01Ω/□〜1000Ω/□であることが好ましく、可視光域において高い透明性を有し、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。このような透明導電層は基体上から剥離することによりそれ自体を透明基体を伴わない透明導電膜とすることもできる。以下により好ましい形態として透明基体上に繊維状の透明導電性物質と樹脂とを含有する透明導電層を有する透明導電膜について説明する。
【0015】
[繊維状透明導電性物質]
本発明の透明導電膜積層体に使用する透明導電膜に含有される導電性物質は繊維状であり、その中でも分岐がなく、ほぐれやすく、かつ繊維状物質の均一な分布密度を得やすく、その結果繊維と繊維のからまりの間に大きな開口部を形成し、良好な光透過率を実現することができるワイヤー状のものが好ましい。このような形状をした導電性物質の例としては、カーボンナノチューブやワイヤー状の導電性金属である金属ナノワイヤーを挙げることができる。本発明で金属ナノワイヤーとは、形状が直線または曲線の細い棒状で、材質が金属であるナノメートルサイズの微細な導電性物質である。微細な導電性物質が繊維状、好ましくはワイヤー状であると、それらが互いに絡み合って網の目状となることで、少ない量の導電性物質であっても良好な電気伝導経路を形成することができ、導電性層の抵抗値をより低下させることができ好ましい。さらにこのような網の目状を形成した場合、網の目の隙間部分の開口が大きいので、たとえ繊維状の導電性物質そのものが透明でなかったとしても、塗膜として良好な透明性を達成することが可能である。
【0016】
金属ナノワイヤーの金属として、具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が挙げられ、導電性の観点から銅、銀、白金、金が好ましく、白金メッキ、または金メッキされた銀がより好ましい。金属ナノワイヤーの少なくとも一つの断面寸法は、500nm未満であることが好ましく、200nm未満であることがさらに好ましく、100nm未満であることが一層好ましい。金属ナノワイヤーとしては、アスペクト比としては10を越えることが好ましい。アスペクト比としては50を越えることがさらに好ましく、100を越えるアスペクト比を有することが一層好ましい。金属ナノワイヤーの形状や大きさは走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で確認することができる。
【0017】
金属ナノワイヤーは、当技術分野で既知の方法で調製可能である。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法や、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤーを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる(特開2004−223693公報)。溶液中で硝酸銀を還元する方法としては、より具体的には、銀ナノワイヤーは、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することによりにより合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤーの大量生産は、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745 およびXia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955−960 に記載される方法に準じて 調製可能であるが、特にこれらに記載の方法に限定するものではない。
このような導電性を有する金属ナノワイヤーが透明基体上に適度な間隔を保ちながら互いに絡み合った状態を有し、導電網を形成することで、実質的に透明な導電網が可能である。具体的な金属種や軸長さ、アスペクト比等は使用目的等に応じて適宜定めればよい。
【0018】
[繊維状透明導電性物質を含有する透明導電膜の形成]
本発明で使用する繊維状透明導電性物質を含有する透明導電膜は、透明基体上に繊維状透明導電性物質を分散させた透明導電性塗料を塗布して作製することができる。
前記透明導電性塗料である導電性物質の分散液は、導電性能の向上の点においてはバインダー樹脂を含まないことが好ましい。導電性層においては、バインダー樹脂を用いなければ導電性物質同士の接触が阻害されることがない。従って、導電性微粒子相互間の導電性が確保され、得られる導電層の電気抵抗値をより低く抑えることができる。また、導電性物質の分散液がバインダー樹脂を含まなくすることによって、基体上に透明導電性塗膜を形成したときに、次工程において透明導電性塗膜が該透明基体から容易に剥離可能で、透明導電層のパターンを容易に形成できる点でも好ましい。
更に、その後にパターン化された透明導電層の保護層用塗料による基体上への固定化は、保護層用塗料を導電層に含浸させ基体に到達させることにより行われるため、透明導電性物質の分散液がバインダー樹脂を含まないことは、透明導電層がより間隙を多く含んでいることを意味しており、保護層用塗料の含浸による固定化を阻害しない点で好ましい。
【0019】
このように繊維状の透明導電性物質を使用した透明導電性塗料を用いて透明基体上に透明導電層を形成するためには、透明導電性物質を含有し、好ましくはバインダー樹脂を含まない透明導電性塗料を透明基体上に塗布し、繊維状の透明導電性物質同士の接点を十分に確保して後、繊維状の透明導電性物質を固定するための樹脂を該透明導電性物質間に形成された間隙に浸透させ、固化させて保護層を形成し透明導電層を作成することが好ましい。
このことから透明性基体上に透明導電層を形成するにあたり以下の各工程を経ることが好ましい。
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程
(2)前記透明導電性層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程
【0020】
[透明導電性塗料の作製]
これら微細な導電性物質を分散して透明基体上に透明導電層を形成し透明導電膜を作製する。このために用いる透明導電性塗料を形成するための分散媒である液体としては、特に限定されることなく、既知の各種分散媒を使用することができる。例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。また、分散媒の種類により、分散剤を使用することもできる。これらの中でも、極性を有する分散媒が好ましく、特にメタノール、エタノール等のアルコール類、NMP等のアミド類のような水と親和性のあるものは、分散剤を使用しなくても分散性が良好であり好適である。これら液体は、単独でも2種類以上の混合したものでも使用することができる。
【0021】
また、分散媒として、水も使用可能である。水を用いる場合には、透明基体表面が疎水性の場合は、水をはじきやすく、透明導電性塗料を塗布する際に、均一な膜が得られにくい。このような場合には、水にアルコールを混合するとか、あるいは疎水性の透明基体への濡れ性を改善するような界面活性剤を選定し、添加することで均一な膜を得る。
用いる分散媒としての液体の量は、特に制限されず、前記微細な導電性物質の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、前記透明導電性物質100重量部に対して、液体100〜100,000重量部程度と広範囲に設定可能であって、前記透明導電性物質と分散媒の種類、使用する撹拌、分散装置に応じて適宜選択することができる。
【0022】
基体上の塗膜の導電性や、基体からの塗膜剥離性を低下させず、保護層用塗料中の樹脂による導電性層の固定化工程を損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能であり、その種類と量は、上記特性が得られる範囲で適宜選択可能である。
上記の添加量範囲において導電性物質の分散液は、粘度調整、腐食防止、基体への接着性向上、および導電性物質の分散を制御するために、前記樹脂及びその他の添加剤を含んでもよい。適切な添加剤および結合剤の例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2−ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、トリプロピレングリコール(TPG)、およびキサンタンゴム(XG)、およびエトキシレート、アルコキシレート、エチレンオキシド、および酸化プロピレンなどの界面活性剤、およびそれらの共重合体、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、およびふっ素系界面活性剤が挙げられるがそれだけに限定されない。
さらに2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、アルキルアセテート、等を非ポリマー系有機化合物を膜形成剤として使用することもできる。
【0023】
前記透明導電性物質の分散媒中への分散は、透明導電性物質と分散媒である液体の混合物に対し必要に応じて公知の分散手法を適用することにより行うことができる。ただし、良好な透明性と導電性を有する透明導電層を形成するためには、微細な導電性物質の特性が分散処理前後で大きく変化せず、混合物の透明性が失われないことが重要である。特に導電性物質が金属ナノワイヤーの場合には、折れにより導電性の低下や透明性の低下が引き起こされるため、金属ナノワイヤーの形状を破壊しない分散手法の選択が重要である。
【0024】
[透明導電膜の形成(基体上への透明導電層の形成)]
本発明で透明導電層をその上に形成する透明基体としては、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルム、あるいはガラス板、セラミック板を用いることが出来、その中でも全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは本発明の目的を妨げない程度に着色していても良く、さらに単層で使うこともできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして使用しても良い。さらに基体の少なくとも一方の表面に易剥離性処理を施していてもよい。これらプラスティックフィルムの中では透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適している。この透明プラスチック基体の厚みは、薄いと取り扱い性が悪く、厚いと可視光の透過率が低下するため5μm〜300μmが好ましい。さらに好ましくは、10μm〜250μmが好ましく、25μm〜200μmがさらに好ましい。
【0025】
上記原料を用いて透明基体上に透明導電性塗膜を形成するためには、図1のように透明導電性物質と分散媒と必要に応じて樹脂を含有する分散液を透明基体(1)上に塗布し、乾燥して、透明基体上に均一な導電性塗膜(2)を形成する。
塗布方法としてはスプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコートなど公知の塗布方法を用いることができる。
透明導電層の膜厚は薄すぎると導体としての十分な導電性が達成出来なくなる傾向にあり、厚すぎるとヘイズ値の上昇、全光線透過率の低下等で透明性が損なわれる傾向にある。通常は10nm〜10μmの間で適宜調整を行うが、金属ナノワイヤーのように導電性物質そのものが透明でない場合には、膜厚の増加によって透明性が失われ得やすく、より薄い膜厚の導電層が形成されることが多い。この場合きわめて開口部の多い導電層であるが、接触式の膜厚計で測定したときに平均膜厚として10nm〜500nmの膜厚範囲がこのましく、30nm〜300nmがより好ましく、50nm〜150nmが最も好ましい。
【0026】
本発明による透明導電層の製造方法においては、透明基体上に剥離可能な導電性塗膜を形成したのち、さらに、透明導電層の導電性を高めるため、塗布形成後の透明導電層における透明導電性物質同士の交差部分における、接触点を増すとともに、接触面積を増やしその接触を確実にするための加圧工程を行うことが可能である。
導電性物質の交差部分を加圧する工程とは、具体的には透明導電層面を加圧する工程であって、透明導電性物質が導電性微粒子の場合には、該微粒子の密度を向上させて微粒子同士の接触点と接触面積を増加させる工程であり、透明導電性物質が金属ナノワイヤーのような繊維状、より詳細にはワイヤー状の場合には、網目状に分散している透明導電層に真上から圧力を加えて、透明導電層を圧縮し、内部の金属ナノワイヤーの接触点を増やす工程である。この工程によって導電性微粒子や金属ナノワイヤー間の接触抵抗が下がることになる。
本工程は通常塗膜面を加圧する公知の方法であれば特に制限はないが、塗布によって得られた層を、例えば、加圧可能な2枚の平板間に透明導電層を配置し、一定時間加圧する平板プレス法や、加圧可能な2本のロールの間に透明導電層を挟み込んで線加圧し、ロールを回転させることによって面全体を加圧するカレンダー法などが挙げられる。
ロールによるカレンダー法において、透明導電層を加圧する圧力は、500kN/m2〜50000kN/m2、好ましくは1000kN/m2〜10000kN/m2、より好ましくは2000kN/m2〜5000kN/m2である。
【0027】
〔保護層用塗料の塗布(透明導電層の固定)〕
基体上に透明導電層の所望のパターンを形成した後に、基体上及び基体上に形成された透明導電層の全面に保護層用塗料の塗布を行う。
保護層用塗料の塗布工程は、図5のように前述の貼り合わせ工程及び剥離工程によって、形成された透明導電層パターンに一部を被覆された基体上の全面に、保護層用塗料を塗布し、溶媒成分を乾燥させ、含有する樹脂成分を硬化し保護層(9)を形成することによって行われる。本工程によって透明導電層の表面が被覆され保護されるとともに、保護層用塗料は透明導電層中の導電性微粒子の間隙や、繊維状、好ましくはワイヤー状の導電性物質の形成する網目の隙間を充填しつつ基体に到達し、硬化したときに透明導電層全体を基体上に強固に固定化し、透明導電層付き基体を形成する。
【0028】
透明導電層の固定化に使用されるバインダー樹脂として可能な材料または材料の組み合わせを以下に述べる。これらバインダー樹脂による固定化は保護層用塗料中に含有される単量体またはオリゴマー(10〜100単量体)が光照射、または加熱によって重合して、または保護層用塗料中の樹脂が、乾燥および加熱によって架橋して、固体高分子マトリクスを形成して行われ、あるいは溶媒中のバインダー樹脂が、溶媒除去によって架橋塗膜を形成して行われるが、該塗膜は必ずしも、重合、架橋プロセスを経て硬化形成されたものに限定されない。しかし、塗膜の耐久性、耐擦過性の点で可視光線または紫外線、電子線、加熱等による単量体の重合、あるいは架橋剤による高分子化合物の架橋を経て固定化されたものであることが好ましい。
【0029】
バインダーとして用いる有機ポリマーは、炭素骨格に結合した極性官能基を有するものが好ましい。極性官能基としては、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、アミノ基、燐酸基、スルホニル基、スルホン酸基、ポリアルキレングリコール基、およびアルコール性水酸基などが例示される。バインダーとして有用なポリマーの例には、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、およびセルロースなどがある。また、無機ポリマーの例には、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合により生成するシロキサン系ポリマーがある。
【0030】
単量体である重合性の有機モノマーもしくはオリゴマーの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどで代表されるアクリレートおよびメタクリレート型のモノマーおよびオリゴマー;モノ(2−メタクロイルオキシエチル) アシッドホスフェート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエンなどの他のビニルモノマー;ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのエポキシド化合物、などがある。
【0031】
単量体である重合性の無機モノマーの例は、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pb、Ag、In、Sb、Pt、Auなどの金属の鉱酸塩、有機酸塩、アルコキシド、および錯体(キレート)である。これらは加水分解または熱分解を経て重合し、最終的に無機物(金属酸化物、水酸化物、炭化物、金属など)になるので、本発明では無機モノマーとして扱う。これらの無機モノマーは、その部分加水分解物の状態で使用することもできる。次に各金属化合物の具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0032】
上記のポリマー系バインダー(ポリマー、モノマーまたはオリゴマー)の1種または2種以上を必要により有機溶媒で溶解または希釈して、粘度が25cps以下、好ましくは10cps以下の液体を調製し、第1工程で形成された塗膜の含浸に使用する。この液体の粘度が25cpsより高いと、塗膜含浸時に、基体に達するように塗膜内部に十分に液体が浸透せず、目的とする密着性および膜強度の向上効果を得ることができない。また、液体が高粘度であると、過剰の液体が第1工程で形成された透明導電層の上に堆積して、導電性微粉末を含有しない絶縁性の層を形成するので、導電性が著しく低下する。
【0033】
溶解または希釈に用いる有機溶媒は特に制限されず、(1)の塗膜形成工程に関して例示したような各種の有機溶媒のほかに、(1)の塗膜形成工程で膜形成剤として使用する液状有機化合物、および水も溶媒として使用可能である。
この含浸用液体には、必要により、硬化触媒(熱硬化の場合) 、光重合開始剤(紫外線硬化の場合)、架橋剤、加水分解触媒(例、酸)、界面活性剤、pH調整剤などを添加することができる。
適切な溶媒の例として、水、アルコール類、ケトン類、環状エーテル化合物類(テトラヒドロフラン等)、炭化水素( 例えば、シクロヘキサン) 、または芳香族系溶剤( ベンゼン、トルエン、キシレン等) が挙げられる。さらに好ましくは、溶媒は、揮発性であり、200℃ 以下、150℃ 以下、または100℃ 以下の沸点を有する。
【0034】
また、保護コート材は、架橋剤、重合開始剤、安定剤(例えば、酸化防止剤および製品寿命長期化のための紫外線安定剤、および保存期間改善のための重合防止剤)、界面活性剤、および同様な効果を有するものを含んでもよい。また、保護コート材は、金属ナノワイヤーの腐食を防止する腐食防止剤をさらに含んでもよい。
保護層を形成する方法としては公知のウェットコート方法であれば特に制限はない。具体的には、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコートなどが挙げられる。
保護層用塗料によって透明導電層を含浸しつつ保護層を形成するとき、塗布、乾燥後の保護層の膜厚は、塗布前の透明導電層に対して薄すぎると耐擦過性、耐摩耗性、耐候性等の保護層としての機能が低下し、厚すぎると導体としての接触抵抗が増加する。
保護層用塗料の塗布は透明導電層の膜厚が50〜150nmの範囲で形成されているときは、塗布、乾燥後の膜厚が30〜150nmであることが好ましく、透明導電層の膜厚を考慮して表面抵抗率、ヘイズ等が所定の値を実現出来るよう調整することができる。40〜175nmがより好ましく、50〜150nmが最も好ましい。保護層用塗料の乾燥後の膜厚は、透明導電層の膜厚にもよるが、30nm以上の膜厚であると保護層による保護機能がより良好に働く傾向にあり、150nm以下の膜厚であるとより良好な導電性能が確保できる傾向にある。
【0035】
[透明導電層のパターン化]
基体上に上記のような均一な導電層を形成する場合と異なり、静電容量型タッチパネルに用いられる透明導電膜の透明導電層のような周期的パターンを形成させるときは、繊維状の導電性物質の凝集を避ける必要性と、また既述したような繊維状導電性物質間の電気的接点確保の必要性があり、透明導電層形成用の塗料の該塗料中には印刷方法による直接パターン形成を行うための十分な樹脂成分を含有させられない場合が多い。このため固形分濃度が極めて低く低粘度であり、パターン形成のための印刷が困難なことが多い。
そのような場合には予め透明基体上に均一な透明導電層を形成しておき、種々の方法で不要な透明導電層部分を削除したり、逆に必要なパターンを切り取ったりしてパターン化された透明導電層を得ることができる。すはわち、透明基体上に繊維状導電性物質を含有した均一な透明導電層を形成したのち、該透明導電層をパターン化する工程を付加することが必要となる。
【0036】
基体上の透明導電層をパターン化する工程は、透明導電層を基体上に固定化する工程の後に行うことも可能であるが、基体上に透明導電層を塗布により形成する工程の後で、透明導電層を基体上に固定化する工程の前に行った方が、パターン化が容易であり適用できる手法も数が多い。さらにパターン化後に、パターン化された透明導電層によって部分的に被覆された透明基体の全面に、保護層用塗料を塗布することにより、パターン化後の透明導電層のより確実な透明基体への固定が可能となり好ましい。
上記基体上にパターン化された透明導電層を形成する具体的方法としては、上記の方法に加えてレーザービームによるパターン化、フォトエッチング等の中から任意の方法を適用することが可能であるが、塗布工程を用いて連続的に処理が行えること、光照射やマスキング等の処理が不要であること、さらにエッチング等の湿式処理を行う必要のないことから、形成すべきパターンに対して接着剤塗料によってネガティブパターンを形成された剥離用基材を使用し、基体上に形成された透明導電層の不要部分を剥離して、所望のパターン化された透明導電層を形成する方法を用いることが好ましい。
【0037】
以下にネガティブパターン化された接着剤層を有する剥離用基材を用いた透明導電層のパターン化方法について記載する。
[パターン化された透明導電層の形成]
下記の方法は予め作製した均一な透明導電層から、ネガティブパターンを形成した接着剤層を用いて不要部分を削除しパターン化された透明導電層を得るものである。逆にパターン化された接着剤層を用いて、必要なパターンを均一な透明導電層から切り取っても良いが、パターン化後に接着剤層が残らない前者の方法の方が好ましい。
すなわち、繊維状導電性物質を含有する透明導電層用いてパターン化された透明導電層を形成し、最終的に透明基体に固定されたパターン化された透明導電層を有する透明導電膜を作製する方法としては、以下の工程を用いる方法をあげることができる。
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程
(2)支持体上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を形成する工程
(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程
(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に透明導電層のパターンを形成する工程
(5)前記透明導電性層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程
である。
以下に上記工程の(2)〜(4)の透明導電層のパターン化に係わる部分の説明を行う。
【0038】
〔パターン化された感熱接着剤層を有する支持体の作成(工程(2)に対応)〕
基体上に形成された透明導電層を、部分的に基体から剥離するために剥離用基材を作製する。図2に示すように本発明で使用する剥離用基材(10)はフィルム状支持体(3)上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層(4)を有している。剥離用基材(10)は、支持体(3)上に感熱接着剤と溶剤を含有する感熱接着剤層用塗料を、基体上に形成すべき所望の導電性パターンに対して、反対のネガティブパターンを形成して塗布することにより形成することができる。
感熱接着剤は、常温では粘着性を全く示さないが、加熱する事により粘着性が発現する。支持体上に形成する感熱接着剤層の感熱接着剤としては、前記透明基体上に形成された透明導電層と、支持体の双方に対して親和性があり、両者を強力に接着できる感熱接着剤であれば、特に限定されることなく、公知の種々の感熱接着剤を用いることができるが、粘着性の発現する温度としては、透明導電層の導電性物質の間隙に浸透し導電性物質と良好に密着し、かつ透明基体としてフィルムを使用する場合には、基体フィルムのガラス転移温度を大きく上回らない温度で粘着性を発現することが好ましい。また、加熱の後に常温程度で支持体を剥離する際に、導電微粒子と支持体の両方に強い接着力を示すことが好ましい。
【0039】
そのような感熱接着剤としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩酢ビ(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体)系接着剤、アクリル系接着剤等を挙げることができる。中でも常温以上のガラス転移温度Tgを持ち、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸基を有し、非晶性ポリエステル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を主剤とする感熱接着剤が好ましく、ガラス転移温度としては20〜100℃の範囲が好ましい。また、感熱温度を操作する目的で、上記主剤に相溶性を有し、ガラス転移温度Tgが異なる樹脂を適量配合してもよい。
感熱接着剤には、必要に応じて、ブロッキング防止剤として、ポリオレフィン系樹脂粒子を添加することができる。なかでも、ポリエチレン樹脂粒子またはポリプロピレン樹脂粒子の添加が好ましく、より具体的には、高密度ポリエチレン樹脂粒子、低密度ポリエチレン樹脂粒子、変性型ポリエチレン樹脂粒子、分解型低密度ポリエチレン樹脂粒子、分解型ポリプロピレン樹脂粒子の添加が好ましい。また、これらポリエチレン樹脂粒子および分解型ポリプロピレン樹脂粒子の重量平均粒子径は0.1〜25μmであるが、粒子が扁平状、リン片状の場合は3〜25μmの範囲が好ましく、分子量は1,000〜29,000の範囲、融点は100〜150℃の範囲にあることがそれぞれ好ましい。
【0040】
感熱接着剤層用塗料に用いる溶剤は、感熱接着剤に使用するバインダー樹脂を良好に溶解または分散すれば、特に限定なくいずれの非腐食性溶媒も使用可能である。より適切な溶媒の例として、水、アルコール類、ケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物類、シクロヘキサン等の炭化水素、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が挙げられる。さらに溶媒は、揮発性であり、200℃以下の沸点を有することが好ましく、150℃下がより好ましく、100℃ 以下の沸点を有することがさらに好ましい。
【0041】
本発明で剥離用基材に使用する支持体としては、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムを用いることができる。なかでも透明導電層と感熱接着剤層とを互いに密着させ加熱貼り合わせる工程において、熱変形を起こさないものが好ましい。
これら支持体は本発明の目的を妨げない程度に着色していても良く、さらに単層で使うこともできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして使っても良い。このうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適している。この透明プラスチック基材の厚みは、薄いと耐熱性が乏しく、厚いと熱容量が大きくなり感熱接着剤の加熱による粘着性の発現に長い加熱時間が必要となるため、5μm〜100μmが好ましい。さらに好ましくは、10μm〜50μmであり、15μm〜30μmの膜厚であることがさらに好ましい。
【0042】
支持体上の感熱接着剤層は、基体上に得ようとする所望の透明導電性パターンを反転した、いわゆるネガティブパターン状に形成する。
接着剤のネガティブパターン形成方法としては、公知の印刷方法が使用でき、加熱により粘着性を発現した感熱接着剤層が、次工程において基体上の透明導電層に良好に接着するための十分な感熱接着剤の厚みを形成できれば、特に制限はなく公知の方法を使用可能できる。例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等が使用できる。また、感熱接着剤層の厚みは、0.05μm〜5.0μmが好ましく、0.1μm〜2.0μmがより好ましく、0.2μm〜1.0μmがさらに好ましい。
【0043】
〔透明導電層のパターニング工程〕
本発明で使用する繊維状の導電性物質を含有する透明導電層のパターニング工程は、(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記ネガティブパターン化された感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程と、(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に所望の透明導電層を残してパターンを形成する工程とからなる。貼り合わせを行う工程においては、前記透明導電層を設けた基体と前記ネガティブパターンを形成した感熱接着剤層を設けた支持体である剥離用基材とを、透明導電層と感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせ加熱及び加圧する。特に透明導電層がバインダー樹脂を含まず、あるいは含んでいても含有量が少ないときは感熱接着剤層の加熱、加圧により、感熱接着剤は軟化し透明導電層の導電性微粒子の間隙、あるいは繊維状導電性物質の網目内に浸透して、感熱接着剤と透明導電層内の導電性物質が接着する。
その後、貼り合わせ部分の感熱接着剤層を常温程度に冷却後、前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と接着した部分の透明導電層を、支持体上でネガティブパターン化された感熱接着剤層上へと剥離、転写させることにより、基体上に透明導電層のポジティブパターンが残り、基体上に所望の透明導電層パターンが完成する。
【0044】
上記透明導電層のパターンニング時に用いる貼り合わせ方法としては、貼り合わせ時における加熱、加圧により基体の熱変形を発生することのない方法であれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、加熱、加圧可能な2枚の平板間に、前記基体の透明導電層と前記剥離用基材における支持体上の感熱接着剤層を配置し、一定時間加熱、加圧する平板ラミネート法や、図3に示すようにどちらか一方、または両方が加熱可能な2本のロール対(5)、(6)のニップ間に、前記透明導電層(2)を有する基体(1)と前記感熱接着剤層(4)を有する支持体(3)を搬送し挟み込んで、加熱、線加圧し、ロール(5)、(6)を回転させることによって面全体を加圧するロールラミネート法などが挙げられる。
特に、後者のロールラミネート方式は、フィルム基体とフィルム状の剥離用基材を使ったロールツーロールでの連続処理が可能であり、優れた生産効率を有する。ロールラミネート方式のロールは、前述の通り、どちらか一方、または両方が加熱可能なロールであり、ロールの材質は、透明導電層と感熱接着材層が良好に熱接着し、基体の熱変形を発生させなければ、特に限定されることはない。金属ロールが主体の剛体ロールと、耐熱ゴム製が主体の弾性ロールの組み合わせとしては、金属/金属、金属/弾性、弾性/弾性の全ての組み合わせが使用可能であるが、ロール対のニップ間で感熱接着剤の粘着性を発現させるため、ニップ巾が広く、加熱時間を長くなる弾性/弾性、弾性/金属のロール対が好ましい。
【0045】
また、貼り合わせ時の処理条件としては、フィルム基体の熱変形を発生させずに感熱接着剤の透明導電層に対する粘着性を発現させる温度、圧力条件を適宜選択すればよい。例えば、処理温度は70℃〜150℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましく、90℃〜120℃がさらに好ましい。圧力はロール線圧で、10kN/m〜60kN/mの範囲で良好な転写状態が得られる最小線圧を選択すればよい。
さらに必要に応じて、貼り合わせ前に感熱接着剤層部分を予備加熱してもよい。また感熱接着剤層中に気泡が混入すると、導電性層との部分的接着不良のため剥離基材による導電性層の剥離が不完全になりやすい。このため気泡混入防止のために、貼り合わせ工程において、剥離基材の感熱接着層部分の加熱、加圧を減圧雰囲気下で行っても良い。
【0046】
貼り合わせた基体と剥離基材を剥離する工程においては、貼り合わせた透明導電層付き基体と、パターン化された感熱接着剤層を有する支持体よりなる剥離用基材を常温程度まで冷却し、前記支持体を前記基体から剥離する。図4に示すように支持体(3)上に形成された感熱接着剤層(4)の形成された部分に対応し、剥離工程で感熱接着剤層と接着された透明導電層(8)は、感熱接着剤層(4)と共に基体から剥離され、感熱接着剤の形成された部分に対応していない透明導電層(7)は基体(1)上に透明導電層のポジティブパターンとして残り、透明導電層のパターンが基体上に完成する。なお剥離用基材の剥離前に、剥離用基材の支持体と感熱接着剤層部分に冷却用の空気を吹き付ける等の冷却手段を講じることは、剥離を良好に行い未剥離部分の発生等のパターニング欠陥を防ぐ目的で有効である。
【0047】
本発明のパターン化された透明導電層の形成方法においては、剥離用基材に感熱接着剤でネガティブパターンを形成し、基体上に均一に形成された透明導電層から不要部分を剥離する。剥離用基材による透明導電層のパターン化は、剥離用基材の支持体上に塗布された感熱接着剤の有無だけで決定され、透明導電層の未剥離部分に対応する剥離用基材の部分には感熱接着剤は塗布されていない。このため透明導電層を確実に基体上に残すことができ、また透明導電層上に不要な感熱接着剤が残って透明導電層の光透過率を低下させる恐れがない。
このように基体上にパターン化された透明導電層を形成したのち、該透明導電層によって部分的に被覆された基体上に、既述の保護層用塗料を塗布し透明導電層を固定して導電層がパターン化された透明導電膜を作製することができる。
【0048】
[両面粘着シート]
以下に上記で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜、あるいはパターン化された透明導電層を有する透明導電膜の透明導電層に貼り合わせられる両面粘着シートについて以下に記載する。
本発明で使用する両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートである。
【0049】
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、単量体成分として金属を腐食させやすいカルボキシル基含有単量体を含有せず、主たる単量体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用した重合体である。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、窒素原子含有単量体を実質的に含有しない。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、カルボキシル基を含有しないものであれば良いが、炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体を好ましく使用できる。当該炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることで、導電層面を固定する際に必要な接着力、および光学特性を粘着剤層に好適に付与できる。
【0050】
炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
【0051】
そのなかでも、炭素数が1〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体又は炭素数が2〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、炭素数が4〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。なかでもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。当該範囲の炭素数のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステルを使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対して高い接着性を好適に付与できる。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中の炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、90〜99質量%とすることが好ましく、90〜96質量%にすることがより好ましい。当該範囲のカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中の上記炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量にすることで、粘着剤層に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な接着性を好適に付与できる。
【0053】
また、架橋剤と好適に架橋反応させることにより粘着剤層の凝集力を高くするために、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーを使用することも好ましい。架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。中でも、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。官能基を有するビニルモノマーの使用量はアクリル共重合体を構成するモノマー成分中の0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることが特に好ましい。
【0054】
当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwは70万〜150万であることが好ましく、80万〜145万がより好ましく、85万〜140万がさらに好ましい。当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwが上記範囲内だと、透明導電膜を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0055】
なお、本発明では、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H」
・検出器:示差屈折
【0056】
[窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)]
本発明に用いられる窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、単量体成分として金属を腐食させやすいカルボキシル基含有単量体を含有せず、単量体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体と窒素原子含有共重合性単量体を使用した重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、カルボキシル基を含有しないものであれば良いが、炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力と接着性を付与できる。また、窒素原子含有共重合性単量体を共重合することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることができ、粘着剤組成物に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0057】
炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
その中でも、炭素数が1〜6のアルキル側鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。なかでもメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。当該範囲の炭素数のアルキル側鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0059】
窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、70〜99質量%とすることが好ましく、90〜98質量%とすることがより好ましい。当該範囲内の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中の上記炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量にすることで、粘着剤層に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な接着性および凝集力を好適に付与できる。
【0060】
窒素原子含有共重合性単量体としては、窒素原子を含有し、上記炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合が可能であればよいが、例えば、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、窒素系複素環含有単量体、シアノ基含有単量体、イミド基含有単量体等が挙げられる。これら単量体としては、例えば、アミノ基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノイソプロピル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルや、(メタ)アクリル酸(N−置換)アミノアルキルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸(N−置換)アミノアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N−(t−ブチル)アミノエチル等の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。
【0061】
その中でも、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体が好ましい。なかでもアミノ基含有単量体が特に好ましい。当該窒素含有共重合性単量体を使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、上記共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることで、粘着剤組成物に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力が好適に付与できる。
【0062】
窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の窒素原子含有共重合性単量体の含有量は、当該共重合体の総量に対し、1〜30重量%とすることが好ましく、1〜20質量%にすることがより好ましい。当該範囲の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中の上記窒素原子含有共重合性単量体の含有量にすることで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることで、粘着剤組成物に導電性面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0063】
当該窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量Mwは5000〜10万であることが好ましく、5000〜8万がより好ましく、5000〜5万がさらに好ましい。当該窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量Mwが上記範囲内だと、導電製面を固定するために必要な接着力を好適に付与できる。
【0064】
[粘着剤組成物]
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、カルボキシル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、カルボキシル基を含有しない窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とが配合されることで、金属面や導電層面に用いられる繊維状導電性物質の腐食を防止でき、さらに酸成分を含有しなくとも粘着剤層の凝集力を好適にでき、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電性面に対して優れた接着性能を当該両面粘着シートの粘着剤層に付与できる。また、高温下での変色の懸念がある金属腐食防止剤を使用する必要がないため高温環境下でも着色による視認性の低下が生じない。
【0065】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量%に対して、窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。上記範囲内で共重合体(A)と(B)とが配合されることで、当該両面粘着シートに優れた凝集力と光学特性を好適に付与できる。
【0066】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体共重合体(B)の配合に際しては、各々の共重合体に使用する(メタ)アクリル酸エステル単量体の一種以上を同一とした共重合体を配合することが好ましい。配合する両共重合体の単量体成分として一種以上の同一の単量体を使用することで、両共重合体の相溶性を向上させることができ、粘着剤層中での光の拡散を大きく抑制できヘイズが低く高い光学特性を有する粘着剤層とすることができる。
【0067】
上記粘着剤組成物中には、上記共重合体(A)及び(B)以外の成分として、粘着剤層の凝集力を上げるために、架橋剤を含有することが好ましい。
【0068】
使用する架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリン系架橋剤、多官能アクリレート系等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリル系共重合体の(A)成分との反応性に富むイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0069】
当該両面粘着シートの粘着剤層に添加する架橋剤の配合量は、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましく、0.1〜1.5質量部がさらに好ましい。当該範囲の架橋剤の含有量にすることで、粘着剤層のゲル分率を好適な範囲に調整しやすい。
【0070】
[透明導電膜固定用の両面粘着シート]
本発明で使用する両面粘着シートは、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電性面と好適に接着でき、かつこれら面の腐食が生じ難い。
【0071】
本発明で使用する両面粘着シートは、基材を有するものであっても、基材を有さず粘着剤層のみからなる両面粘着シートであってもよい。また、粘着剤層は単一層からなるものであっても複数層が積層されていてもよい。なかでも、透明性の確保や、形状追従性の観点からは、基材を有さず、粘着剤層のみからなる両面粘着シートであることが好ましい。
【0072】
本発明で使用するの両面粘着シートが、基材を有する場合には、当該基材として透明基材を使用できる。当該透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。なかでもアクリル樹脂フィルムが好ましい。上記基材を使用すると、例えば、アクリル樹脂フィルムの屈折率が1.45〜1.49に対して、粘着剤層の屈折率が1.47程度であるため、基材と粘着剤層との間での屈折率の差が低く、粘着剤層と透明基材との間での反射ロスが抑制しやすい。
【0073】
また、フィルム基材には、粘着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0074】
本発明で使用するの両面粘着シートの粘着剤層は、トルエン中に24時間浸漬した際の下記式で表されるゲル分率が、30〜90%であることが好ましく、40〜80%であるのがより好ましく、50〜80%が最も好ましい。粘着剤層のゲル分率が上記の範囲内だと、透明導電膜を固定において経時での剥がれを抑制しやすく、また、打ち抜き加工時に加工端面からの糸引きなどを抑制しやすい。
ゲル分率(%)=[(両面粘着シートのトルエン浸漬後質量)/(両面粘着シートのトルエン浸漬前質量)]×100
【0075】
本発明で使用する両面粘着シートは、透明導電膜の透明性を阻害しないよう、60℃、90%RH条件下に100時間静置直後の全光線透過率が90%以上、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。上記範囲内だと、当該両面粘着シートを使用されたタッチパネル装置搭載ディスプレイが高温高湿条件でも高鮮明が保たれやすい。全光線透過率及びヘイズを上記範囲内にするためには、上記共重合体(A)100質量%に対する上記共重合体(B)の配合量を1〜50質量%にすることで達成しやすい。
【0076】
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が−40〜10℃が好ましく、−30〜5℃がより好ましく、−25〜0℃がさらに好ましい。粘着剤層のTgが上記範囲内だと、常温下で優れた接着性を付与しやすく、また、打ち抜き加工時に粘着剤層からの糸引きが発生しづらく、歩留まり向上に貢献しやすい。
【0077】
本発明で使用する両面粘着シートの厚みは、使用する態様により適宜選択すればよいが、5〜200μmであることが好ましい。なかでも、平滑面に接着する場合には、10〜100μmに調整することで、タッチパネル装置を薄型化しやすい。また、段差や凹凸を有する面に貼り付ける場合には、粘着剤層の厚さを20μm以上とすることが好ましく、25〜150μmとすることが特に好ましい。
【0078】
本発明で使用する両面粘着シートは、一般的に使用されている方法で作成できる。例えば、フィルム基材または離型シート上に粘着剤層を形成して製造することができる。具体的には、粘着剤の組成物を基材フィルムに直接塗布し乾燥または硬化・重合するか、或いは、いったん離型シート上に塗布し、乾燥または硬化・重合し、粘着剤層を形成後、同様にして離型シート上に作成した粘着剤層又は基材フィルムに貼り合わせる方法などにより製造できる。
【0079】
本発明で使用するの両面粘着シートの打ちぬき加工後において、剥離フィルムの端面への粘着剤層の付着がないことが好ましい。粘着剤層が剥離フィルム端面に付着しないと、加工時での歩留まりが向上しやすい。
【0080】
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層の剥離フィルム端面への付着を防ぐためには、粘着剤層の凝集力、接着性等を最適な範囲に調整することで達成しやすい。具体的な方法としては、粘着剤層へカルボキシル基含有単量体の使用、粘着剤層のゲル分率の上記範囲内への調整等が挙げられる。なかでも、打ち抜き加工に必要な凝集力の付与と透明導電膜を固定するために必要な接着性の付与の両立がしやすい粘着剤層へカルボキシル基含有単量体の使用が好ましい。
【0081】
[透明導電膜積層体]
本発明の透明導電膜積層体は、透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層に対して上記両面粘着シートの粘着剤層が直接貼り合わされて少なくとも2層以上の積層体が形成されている積層体であり、例えば、基材上に導電層が設けられた透明導電膜と上記両面粘着シートからなる積層体(図1)が挙げられる。また、導電層の反対面にハードコート層が設けられた積層体(図2)や、上記両面粘着シートの両面にハードコート層を有する透明導電膜が設けられた積層体(図3)も挙げられる。積層体の傷つき防止のため、ハードコート層が設けられた積層体(図2、3)が好ましい。
【0082】
本発明に使用する透明導電膜は、少なくとも透明基体の片面の表層に繊維状導電性物資得を含有する導電層を有するものであればよく、透明基材の表層に繊維状導電性物質が蒸着やコーティングにより設けられた透明導電膜を好適に使用できる。なかでも導電物質が蒸着により形成された導電層を有する透明導電膜が、製造が容易であるため好ましい。
【0083】
当該透明導電膜積層体において、下記の式で表される導電膜層の電気抵抗値の上昇率が、60℃、90%RH条件下に500時間放置後で5%以下であることが好ましい。上記範囲内だと、当該透明導電膜積層体を用いて製造されたタッチパネル装置が正常に作動する。
導電膜層の電気抵抗値の上昇率(%)=[(60℃、90%RHに500時間放置後の電気抵抗値)−(初期の電気抵抗値)]/(初期の電気抵抗値)×100
【0084】
[タッチパネル装置]
本発明のタッチパネル装置は、上記両面粘着シートが繊維状透明導電性物質を含有する導電層を有する透明導電膜に貼り合わせて形成された透明導電膜積層体を有することを特徴とする。本発明のタッチパネル装置の構成は特に制限されないが、静電容量方式のタッチパネルの構成であることが好ましい。
【0085】
本発明のタッチパネル装置の好適な構成例としては、両面粘着シートの片面に透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体が、表示パネル(透明パネル)と画像表示モジュールとの間に二層設けられた静電容量方式のタッチパネル装置(図4)を例示できる。二層設けられた粘着剤層付き透明導電膜のうち、少なくとも一層が上記本発明の透明導電膜積層体であればよく、画像表示モジュール側の粘着剤層付き透明導電膜が上記本発明の透明導電膜積層体である構成、または、二層の粘着剤層付き透明導電膜がいずれも上記本発明の透明導電膜積層体である構成を好ましい構成として使用できる。また、他の好適な構成例として、両面粘着シートの両面に透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体が、固定用テープや固定用接着剤により表示パネルと画像表示モジュールの間に固定された静電容量方式のタッチパネル装置(図5)を例示できる。当該構成においては、表示パネル、透明導電膜積層体及び画像表示モジュールを、固定用テープや固定用接着剤を使用して固定することでタッチパネル装置を製造できるため組み立て工程が容易となる。
【0086】
本発明のタッチパネル装置の保護パネルは、特に制限されないが、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
なかでも、透明性と軽量性で優れた(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0087】
本発明のタッチパネル装置の表示パネルには、装飾部があってもよい。具体的な装飾部としては、例えば、携帯電子端末の画像表示部の周囲に視認される文字や図形、あるいは、これらの背面に設けられる黒色や白色の下地などが挙げられる。これら装飾部は、携帯電子端末へ意匠性を付与するため、設けられることが好ましい。
【0088】
当該タッチパネル装置の画像表示モジュールを除いた厚さは、0.3mm〜3.0mmであることが好ましい。上記範囲内だと当該タッチパネル装置が組み込まれた電子機器を薄型にしやすい。
【0089】
なお、画像表示モジュール側の粘着剤層付き透明導電膜を上記本発明の透明導電膜積層体とする場合には、当該透明導電膜積層体の両面粘着シートの厚さを5〜200μmとすることが好ましく、10〜100μmとすることが特に好ましい。また、表示パネルと貼り合わせる側の粘着剤層付き透明導電膜を上記本発明の透明導電膜積層体とする際に、表示パネルに装飾部が設けられている場合には、両面粘着シートの厚みは、25〜200μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。上記範囲内だと、表示パネルの装飾部に両面粘着シートが追従しやすい。
【0090】
タッチパネル装置に使用する画像表示モジュールは、特に制限されず、小型電子端末に通常使用されるLCDモジュールや、有機ELモジュールなどが使用できる。
【実施例】
【0091】
以下に透明導電性物質がナノワイヤーである場合について、タッチパネル装置に用いられる透明導電膜積層体を形成する実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
[透明導電膜の作製]
(銀ナノワイヤーの合成)
銀ナノワイヤーは、Y.Sun、B.Gates、B.Mayers、& Y.Xia,“Crystalline silver nanowires by soft solution processing” 、Nano letters 、 (2002) 、2(2) 165〜168に記載されるポリオールを用いた方法の後、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で、エチレングリコールに硫酸銀を溶解し、これを還元することによって合成されたナノワイヤーである。すなわち本発明においてはCambrios Technologies Corporation 米国仮出願第60/815,627号に記載される修正されたポリオール方法によって、合成されたナノワイヤーを用いた。
【0092】
(透明導電層の作製)
透明導電層を形成する金属ナノワイヤーとして、上記方法で合成された短軸径約70nm〜80nm、アスペクト比100以上の銀ナノワイヤーを水性媒体中に0.5%w/v含有する水分散体(Cambrios Technologies Corporation社製 ClearOhmTM, Ink−A AQ)を、スロットダイ塗工機を使用し、厚み188μmの片面がハードコートされた高透明PETフィルム(HF1C22−188)を基体としてそのハードコート面上にウエット厚み20μmに塗布、乾燥した後に、圧力2000kN/m2で加圧処理を行い均一な透明導電層を形成した(図1)。
【0093】
〔ネガティブパターン化された感熱接着剤層を有する支持体からなる剥離用基材の作成〕
次に、CRISVON NT−810−45(DIC社製ポリウレタン樹脂、45%溶液)100重量部をメチルエチルケトン 62.5重量部、トルエン 62.5重量部に溶解させ感熱接着剤とした。このポリウレタン樹脂の代表的物性値は、粘弾性測定(昇温速度3℃/分)で得られるtanδのピーク値から得られるガラス転移温度が42℃、引っ張り速度300mm/分で得られる引張破断強度が277×10E5Pa、引張破断伸度が665%、高圧式フローテスター(ダイス:1φ×1L、加圧:98N)の測定で得られる流動開始温度が90℃である。上記の感熱接着剤用液を厚み23μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製テイジンテトロンフィルムG2)を支持体としてその上にパターン印刷を行う。ここで基体に形成すべき所望の導電性層パターンとしては、図6及び図7の静電容量方式投影型用タッチパネル用の電極パターンとした。該パターンは一辺の長さが4mmで内角が90度であるダイヤモンド形状の静電エレメントのパターンと、線幅が350μmの細線パターンとが交互に連続した直線状のパターンである。したがって上記支持体上には、透明導電層によって形成されるべきパターン図6、及び図7に対して、そのネガティブパターンである図8、及び図9のパターンをグラビア印刷法にて印刷した。印刷塗膜を乾燥後、感熱接着剤層の厚み0.5μm〜0.8μmとなるように塗布を行い、図8及び図9のようなネガティブイメージ状に感熱接着剤がパターン印刷された剥離用基材を得た(図2)。
【0094】
〔透明導電層のパターニング工程〕
次いで、ロール状の塗布物として作成した透明導電層の形成された基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を有する剥離用基材とを走行させつつ、透明導電層と感熱接着剤層が互いに向き合うように重ね、金属製加熱ロールと、耐熱シリコンロールによる加熱、加圧ニップを持つラミネーターを使用して、加熱ロール温度110℃、ロールニップ圧(線圧)30kN/m、速度5m/分の条件で連続的に貼り合わせを行った(図3)。貼り合わせた材料を走行させながら、貼り合わせ部分の温度が室温程度まで下がった時点で、基体から支持体を連続的に剥離し、基体上に透明導電層が所望のパターン状に残ったパターン化された透明導電層を有するロール状のフィルム基体得た(図4)。
パターン化された透明導電層部分を顕微鏡によって観察したところ、基体上の透明導電層部分は剥離用基材を用いた剥離工程で損傷を受けておらず、また剥離用基材から透明導電層が剥離された部分には透明導電層が残存することがなく、また感熱接着剤が付着することもなかった。この状態の透明導電層について、剥離工程が良好に行われたことを確認するために、光透過率及び抵抗値の測定を行った。結果は表1に示す。
【0095】
〔保護層用塗料の塗布による保護層の形成(透明導電層の固定)〕
保護層用塗料として、アクリル樹脂(DIC社製アクリディックA−815−45 不揮発分45%)100部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製バーノックDN−980 不揮発分75%)7.2部をメチルエチルケトン2200部、トルエン2200部によく溶解させ保護層用塗料とした。
この保護層用塗料を、前記パターン化された透明導電層をその上に有する基体の全面に、スロットダイ塗工機を使用し、該保護層用塗料で透明導電層中の網目状ナノワイヤーの間隙を充填しつつ、ウエット厚み10μmに塗布、乾燥し、乾燥厚み約0.1μmの保護層塗膜を形成した。その後に、60℃の雰囲気に24時間おいて、イソシアネート系硬化剤とアクリル樹脂とを硬化反応させ保護層を形成した(図5)。このようにして図6と図7の2種類のタッチパネル用透明導電層パターンを有する透明導電性フィルム(透明導電層付きフィルム)を作製した。これらパターン化された透明導電層付きフィルムから静電容量型のタッチパネルを作製するには、例えば2種類の透明導電層付きフィルムを、透明導電層を同一方向(例えば上向き)に向けて、一方の透明導電層形成部分が他方の導電層剥離部分に重なるように、互い違いにスペーサを介して重ね合わせる工程を経て作製される。
すなわち一方の透明導電膜である透明導電層付きフィルムの透明導電層上に、両面粘着シートを貼り合わせ、両面粘着シートのもう一方の面にもう一種類の透明導電膜を、透明導電層形成部分が重なり合わないように、かつ透明導電層が透明基体に対して同じ方向を向くように配置して貼り合わせ、透明導電層積層体を形成する工程が行われる。
さらにパターニングされる前の透明基体上に形成された透明導電層の上に、同様に上記の保護層用塗料を塗布して透明導電層の固定を行い、特性測定用の透明導電層付きフィルムを作製した。
【0096】
さらに以下に示す方法によって前記透明導電膜の導電層上に貼り合わせる両面粘着シートを作製した。
【0097】
[アクリル共重合体の調製]
<アクリル共重合体(A1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート87.0重量部、シクロヘキシルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(A1)を得た。
【0098】
<アクリル共重合体(A2)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート87.0重量部、メチルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量88万のアクリル共重合体(A2)を得た。
【0099】
<アクリル共重合体(A3)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート97.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(A3)を得た。
【0100】
<アクリル共重合体(B1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、シクロヘキシルメチルメタクリレート95.0重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル1.0重量部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量2万のメタクリル共重合体(B1)を得た。
【0101】
<アクリル共重合体(B2)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルメタクリレート95.0重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル1.0重量部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量2万のメタクリル共重合体(B2)を得た。
【0102】
<アクリル共重合体(B3)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート96.5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量40万のアクリル共重合体(B3)を得た。
【0103】
<アクリル共重合体(H1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート95.5重量部、アクリル酸4.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(H1)を得た。
【0104】
[粘着剤の調製]
<粘着剤(P1)>
上記アクリル共重合体(A1)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を2.5重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P1)を得た。
【0105】
<粘着剤(P2)>
上記アクリル共重合体(A2)100重量部に、上記アクリル共重合体(B2)を2.5重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P2)を得た。
【0106】
<粘着剤(P3)>
上記アクリル共重合体(A3)100重量部に、上記アクリル共重合体(B2)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P3)を得た。
【0107】
<粘着剤(P4)>
上記アクリル共重合体(B3)100重量部を酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P4)を得た。
【0108】
<粘着剤(P5)>
上記アクリル共重合体(B3)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P5)を得た。
【0109】
<粘着剤(P6)>
上記アクリル共重合体(H1)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P6)を得た。
【0110】
(実施例1)
上記粘着剤(P1)100重量部にイソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン社製D−160N、固形分75%)を0.1重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ50μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で7日間熟成し厚さ25μmの、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。
このようにして得られた粘着シートを両面粘着シートとして、その片面にパターン化された透明導電層付きフィルムの透明導電層側の面を貼り合わせ、両面粘着シートのもう一方の面に膜厚50μmのPETフィルムを貼り合わせて、透明導電層がパターン化され静電容量型のタッチパネルに使用することのできる評価用の透明導電膜積層体1を作製した。さらに透明基体上に、均一なパターン化される前の透明導電層を有し、かつ該透明導電層を保護層で固定した一様な透明導電層を有する透明導電層付きフィルムを用いて、同様に評価用の透明導電膜積層体2を作製した。
【0111】
(実施例2)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P2)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率72%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜層積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0112】
(実施例3)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P3)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率68%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0113】
(比較例1)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P4)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率80%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0114】
(比較例2)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P5)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率70%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0115】
(比較例3)
上記粘着剤(P6)100重量部にイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製L−45、固形分45%)を0.7重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ50μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で7日間熟成し厚さ25μmの、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電層積層体を作製した。
【0116】
(参考例1)
パターン化された透明導電層を有する透明導電膜と、均一な透明導電層を有する透明導電膜とを両面粘着シートを貼り合わせずにそのまま評価用サンプルとして用いて以下の試験を行った。
【0117】
(参考例2)
実施例、比較例において両面粘着シートの透明導電膜を挟んで反対側に貼り合わせていた50μmのPETを、そのまま試料として用い、実施例及び比較例のヘイズ値、及び黄色度の変化に対する50μPETの影響度を調べるための以下測定を行った。
【0118】
(タッチパネル用透明導電層積層体のパターン線抵抗)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3及び参考例1と参考例2で作製したパターン化された透明導電層を有する透明導電膜積層体1を評価サンプルとして使用し、パターン両端の線抵抗(R1)をテスターを使用して測定した。温度80℃、湿度80%の環境下に240時間静置後に同様にパターン両端の線抵抗(R2)を測定し、その上昇率を求めた。パターン線抵抗の上昇率は下記の式で算出した。
パターン線抵抗の上昇率(%)=((R2−R1)/R1)×100
さらに温度85℃のdry環境に240時間静置後のパターン線抵抗の上昇率についても同様の測定を行った。
【0119】
(透明導電層積層体のヘイズ測定)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3、及び参考例1と参考例2で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜積層体2を使用し、そのヘイズ値を日本電色工業(株)製「NDH2000」を使用して測定した、その後温度80℃、湿度80%の環境下に240時間の条件、及び温度85℃のdry環境に240時間のそれぞれの条件に静置した後のヘイズ値を同様に測定し測定値の変化を求めた。
【0120】
(透明導電層積層体の黄色度測定)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3、及び参考例1と参考例2で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜積層体2を使用し、そのb*の値を日本電色工業(株)製「分光式色差計SE2000」を使用して測定した、その後温度80℃、湿度80%の環境下に240時間の条件、及び温度85℃のdry環境に240時間のそれぞれの条件に静置した後のb*の値を同様に測定し測定値の変化を求めた。
【0121】
(耐剥がれ性の評価)
45mm×35mmのハードコート層付きPETフィルムのPETフィルム面と、50
mm×40mmのガラスとを、実施例1〜実施例3、または比較例1〜3で用いた両面粘着シートで貼り合せた後、85℃条件に500時間放置し
、目視でハードコート付きPETフィルムの剥がれを評価した。
○:剥がれ無し
×:剥がれ有り
【0122】
既述の実施例1〜3、比較例1〜3、参考例1、参考例2についての上記の各測定項目に関する数値を表1、表2にまとめた。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
上記のとおり、実施例1〜3の繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に、本発明で使用する両面粘着シートを貼り合わせた透明導電積層体は、高温高湿環境試験後、および高温dry環境試験後の透明導電積層体のパターン線抵抗の上昇率を好適に抑制でき、また、タッチパネル等の画像表示装置に使用する際に要求される透明性や、ヘイズも好適であった。表1、表2の実施例、比較例では、いずれも試験後のヘイズ値、黄色度の上昇が認められるが、参考例2のデータから明らかなように、この上昇は両面粘着シートのもう一方の面に貼り合わせた50μmのPETに起因するものであり、その影響を差し引けば実施例においても比較例においても、ヘイズ値及び黄色度の値が大きく変化していないことが明らかである。一方、窒素含有共重合性単量体を含有させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体のみを使用した比較例1および比較例2の構成では、高温耐久試験時のパターン線抵抗、ヘイズ値、黄色度はその変化を小さく抑えることが出来るものの透明導電積層体の好適な耐剥がれ性を実現することができなかった。また、酸成分を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用した比較例3においては、高温dry環境試験により電気抵抗値の大幅な上昇が見られた。
【符号の説明】
【0126】
1 透明導電膜積層体
2 透明導電膜固定用両面粘着シート
3 導電層
4 透明基材
5 ハードコート層
6 保護パネル
7 装飾層
8 粘着剤層付き透明導電膜
9 固定用テープ
10 画像表示モジュール
11 (透明導電層形成用)基体
12 透明導電層
13 (感熱接着剤ネガティブパターン形成用)支持体
14 感熱接着剤層
15 加熱、加圧用金属ローラー
16 加熱、加圧用耐熱シリコンゴムローラー
17 パターン化された透明導電層
18 感熱接着剤により引き剥がされた透明導電層
19 保護層(透明導電層を保護層用塗料で含浸し、基体上に固定化した保護層)
20 剥離用基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートを使用した透明導電膜積層体、該透明導電膜積層体を使用したタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直感的に電子機器を操作するために、タッチセンサが搭載され始めている。タッチセンサには、主に接触時の圧力で検知する抵抗膜方式のタッチパネルと、接触時の人体からの静電気で入力箇所を検知する静電容量方式のタッチパネルが主に搭載されており、2点以上の接触箇所の同時検出が可能なこと、多様な入力方法の可能なことから静電容量方式が主流となりつつある。静電容量方式のタッチパネルには、透明な樹脂フィルムやガラスに導電層が設けられた透明導電膜を積層した構成が使用されている。
【0003】
透明導電膜の導電層は、例えば酸化インジウムスズなど高い透明性と導電性を有する金属を蒸着することで形成されており、両面粘着シートによる金属の酸化反応が起こり、導電機能の低下が起こる問題がある。特に透明導電膜の導電層が、互いに絡み合う繊維状導電性物質により形成されたネットワークによって形成されている時は、繊維状導電性物質同士の電気的接触点を介し限られた経路で導電性が保たれているため、該接触点がこのような酸化反応を受け、その導電機能が低下することにより極めて大きな全体の導電性能の低下が引き起こされる。このため、繊維状導電性物質を含有する導電層を有した透明導電膜の固定に用いられる両面粘着シートには、より一層高い金属腐食防止性が要請されている。
【0004】
金属腐食防止性を有する両面粘着シートとしては、粘着剤層に含有する酸成分が金属の腐食の原因であることから、酸成分を含有しない両面粘着シート(例えば、特許文献1参照)が提案されている。当該両面粘着シートは、金属を腐食させる要因となる酸成分を含有しない粘着剤層により金属腐食防止性を有するものである。しかし、酸成分を含有しな
い粘着シートは、粘着剤層の凝集力が低く、高温下で剥がれが生じる問題があった。
【0005】
また、酸成分を含有しつつ、当該酸成分による腐食を防止するために金属腐食防止剤を含有する両面粘着シートが開示されている(例えば特許文献2参照)。しかし、金属腐食防止剤は、それ自身が高温環境下で変質や変色を生じる場合があり、このような変質や変色により、両面粘着シートが着色し、視認性が悪化する問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−325250号公報
【特許文献2】特開2006−045315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層面に対して直接貼り合わせても導電層を腐食させず、また、粘着剤層の凝集力に優れ、高温環境下での剥がれや着色による視認性の低下が生じ難く、耐剥がれ性に優れる両面粘着シートを用い、該両面粘着シートを透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層面に適用した透明導電膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、窒素原子を含有する単量体を使用したアクリル酸エステル共重合体を、他のアクリル酸エステル共重合体と併用した粘着剤層を使用することで、酸成分を含有しなくとも粘着剤の凝集力を好適に確保でき、繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に対する腐食性が低く、高温下での剥がれや、着色による視認性の低下が生じ難い両面粘着シートを実現し、該両面粘着シートを、繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に適用して上記の課題を解決した。
【0009】
すなわち本発明は、導電性物質及び樹脂を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エス
テル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする透明導電膜積層体を提供する。
さらに本発明は上記透明導電膜積層体を有するタッチパネル装置を提供するものである。
さらに本発明は上記透明導電膜積層体を有するタッチパネル用透明導電性シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の透明導電膜積層体は、粘着剤層中に酸成分を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、特定の窒素含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体が配合されているため、変色や変質の発生原因となる金属腐食防止剤を含有しなくとも、隣接する導電層中の繊維状透明導電性物質の腐食を抑制でき、また酸成分を含有しなくても導電層に対して好適な凝集力を有するため、高温環境下でも導電層からの剥がれが生じ難く、好適な視認性と接着性を有する。
このため、本発明の透明導電膜積層体は、導電層に対して好適な視認性や耐腐食性が求められる携帯電子機器や画像表示装置の部品用、特に静電容量方式のタッチパネル用途に好適に使用できる。
また、本発明の透明導電膜積層体は、使用されている粘着剤層が導電層に対して好適な凝集力を有し、良好な打ち抜き加工性を有することから、各種部品形態に応じて精密な打ち抜き加工が求められる携帯電子機器や画像表示装置の部品用に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における透明導電層付き基体の断面図
【図2】本発明におけるネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の断面図
【図3】本発明における透明導電層付き基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の加熱、加圧貼り合わせ工程の模式断面図
【図4】本発明における透明導電層付き基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤を有する支持体の剥離工程の模式断面図
【図5】本発明におけるパターン化された透明導電層上に保護層用塗料を塗布し保護層を形成した後の断面図
【図6】本発明の方法により形成するタッチパネル用透明導電層のX軸用パターンの平面図
【図7】本発明の方法により形成するタッチパネル用透明導電層のY軸用パターンの平面図
【図8】本発明において支持体上に形成する感熱接着剤層のためのX軸用ネガティブパターンの平面図
【図9】本発明において支持体上に形成する感熱接着剤層のためのY軸用ネガティブパターンの平面図
【図10】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図11】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図12】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体の一例を示す概念図である。
【図13】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体を使用した静電容量型タッチパネル装置の概念図である。
【図14】本発明の透明導電膜固定用両面粘着シートと透明導電膜とが積層された透明導電膜積層体を使用した静電容量型タッチパネル装置の概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の透明導電膜積層体は、均一な透明導電層上あるいはパターン化された透明導電層上に両面粘着シートが貼り合わせられた積層体である。
以下にまず透明導電膜を構成する材料とその組成、並びに均一な透明導電層あるいはパターン化された透明導電層を有する透明導電膜の製造方法について詳細に記載し、その後これら透明導電層上に貼り合わせられる両面粘着シートを構成する材料とその組成、及び該両面粘着シートの製造方法について記載する。
【0013】
本発明の透明導電積層体の透明導電膜は透明基体上に透明導電層の形成されたものであっても、透明基体を伴わないものであってもよいが、透明基体上に樹脂および透明導電性物質を含有する透明導電層の形成されたものであるほうが、透明基体上に任意の透明導電層のパターンを形成しやすく好ましい。本発明において「透明導電膜上」と記載した場合、透明基体を有さない場合にはその透明導電膜のどちらか一方の面上を意味し、透明基体上を有する場合には透明基体上に形成された透明導電層上を意味する。
【0014】
透明基体上に樹脂および繊維状透明導電性物質を含有する透明導電層を形成する方法としては、繊維状導電性物質を含有する透明導電性塗料を透明基体上に塗布、乾燥することによって作製することができる。
本発明の透明導電膜は、微細な繊維状の透明導電性物質を液体媒体(分散媒)中に分散した透明導電性塗料を基体上に塗布し、透明導電層を形成することによって作製される。ここで透明導電性物質とはそれ自身が透明でなくても、形状や含有量を制御することにより透明導電層を形成する導電性材料となりうる物質も含むものとする。本発明の透明導電層は、表面抵抗率が0.01Ω/□〜1000Ω/□であることが好ましく、可視光域において高い透明性を有し、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。このような透明導電層は基体上から剥離することによりそれ自体を透明基体を伴わない透明導電膜とすることもできる。以下により好ましい形態として透明基体上に繊維状の透明導電性物質と樹脂とを含有する透明導電層を有する透明導電膜について説明する。
【0015】
[繊維状透明導電性物質]
本発明の透明導電膜積層体に使用する透明導電膜に含有される導電性物質は繊維状であり、その中でも分岐がなく、ほぐれやすく、かつ繊維状物質の均一な分布密度を得やすく、その結果繊維と繊維のからまりの間に大きな開口部を形成し、良好な光透過率を実現することができるワイヤー状のものが好ましい。このような形状をした導電性物質の例としては、カーボンナノチューブやワイヤー状の導電性金属である金属ナノワイヤーを挙げることができる。本発明で金属ナノワイヤーとは、形状が直線または曲線の細い棒状で、材質が金属であるナノメートルサイズの微細な導電性物質である。微細な導電性物質が繊維状、好ましくはワイヤー状であると、それらが互いに絡み合って網の目状となることで、少ない量の導電性物質であっても良好な電気伝導経路を形成することができ、導電性層の抵抗値をより低下させることができ好ましい。さらにこのような網の目状を形成した場合、網の目の隙間部分の開口が大きいので、たとえ繊維状の導電性物質そのものが透明でなかったとしても、塗膜として良好な透明性を達成することが可能である。
【0016】
金属ナノワイヤーの金属として、具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が挙げられ、導電性の観点から銅、銀、白金、金が好ましく、白金メッキ、または金メッキされた銀がより好ましい。金属ナノワイヤーの少なくとも一つの断面寸法は、500nm未満であることが好ましく、200nm未満であることがさらに好ましく、100nm未満であることが一層好ましい。金属ナノワイヤーとしては、アスペクト比としては10を越えることが好ましい。アスペクト比としては50を越えることがさらに好ましく、100を越えるアスペクト比を有することが一層好ましい。金属ナノワイヤーの形状や大きさは走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で確認することができる。
【0017】
金属ナノワイヤーは、当技術分野で既知の方法で調製可能である。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法や、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤーを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる(特開2004−223693公報)。溶液中で硝酸銀を還元する方法としては、より具体的には、銀ナノワイヤーは、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することによりにより合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤーの大量生産は、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745 およびXia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955−960 に記載される方法に準じて 調製可能であるが、特にこれらに記載の方法に限定するものではない。
このような導電性を有する金属ナノワイヤーが透明基体上に適度な間隔を保ちながら互いに絡み合った状態を有し、導電網を形成することで、実質的に透明な導電網が可能である。具体的な金属種や軸長さ、アスペクト比等は使用目的等に応じて適宜定めればよい。
【0018】
[繊維状透明導電性物質を含有する透明導電膜の形成]
本発明で使用する繊維状透明導電性物質を含有する透明導電膜は、透明基体上に繊維状透明導電性物質を分散させた透明導電性塗料を塗布して作製することができる。
前記透明導電性塗料である導電性物質の分散液は、導電性能の向上の点においてはバインダー樹脂を含まないことが好ましい。導電性層においては、バインダー樹脂を用いなければ導電性物質同士の接触が阻害されることがない。従って、導電性微粒子相互間の導電性が確保され、得られる導電層の電気抵抗値をより低く抑えることができる。また、導電性物質の分散液がバインダー樹脂を含まなくすることによって、基体上に透明導電性塗膜を形成したときに、次工程において透明導電性塗膜が該透明基体から容易に剥離可能で、透明導電層のパターンを容易に形成できる点でも好ましい。
更に、その後にパターン化された透明導電層の保護層用塗料による基体上への固定化は、保護層用塗料を導電層に含浸させ基体に到達させることにより行われるため、透明導電性物質の分散液がバインダー樹脂を含まないことは、透明導電層がより間隙を多く含んでいることを意味しており、保護層用塗料の含浸による固定化を阻害しない点で好ましい。
【0019】
このように繊維状の透明導電性物質を使用した透明導電性塗料を用いて透明基体上に透明導電層を形成するためには、透明導電性物質を含有し、好ましくはバインダー樹脂を含まない透明導電性塗料を透明基体上に塗布し、繊維状の透明導電性物質同士の接点を十分に確保して後、繊維状の透明導電性物質を固定するための樹脂を該透明導電性物質間に形成された間隙に浸透させ、固化させて保護層を形成し透明導電層を作成することが好ましい。
このことから透明性基体上に透明導電層を形成するにあたり以下の各工程を経ることが好ましい。
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程
(2)前記透明導電性層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程
【0020】
[透明導電性塗料の作製]
これら微細な導電性物質を分散して透明基体上に透明導電層を形成し透明導電膜を作製する。このために用いる透明導電性塗料を形成するための分散媒である液体としては、特に限定されることなく、既知の各種分散媒を使用することができる。例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。また、分散媒の種類により、分散剤を使用することもできる。これらの中でも、極性を有する分散媒が好ましく、特にメタノール、エタノール等のアルコール類、NMP等のアミド類のような水と親和性のあるものは、分散剤を使用しなくても分散性が良好であり好適である。これら液体は、単独でも2種類以上の混合したものでも使用することができる。
【0021】
また、分散媒として、水も使用可能である。水を用いる場合には、透明基体表面が疎水性の場合は、水をはじきやすく、透明導電性塗料を塗布する際に、均一な膜が得られにくい。このような場合には、水にアルコールを混合するとか、あるいは疎水性の透明基体への濡れ性を改善するような界面活性剤を選定し、添加することで均一な膜を得る。
用いる分散媒としての液体の量は、特に制限されず、前記微細な導電性物質の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、前記透明導電性物質100重量部に対して、液体100〜100,000重量部程度と広範囲に設定可能であって、前記透明導電性物質と分散媒の種類、使用する撹拌、分散装置に応じて適宜選択することができる。
【0022】
基体上の塗膜の導電性や、基体からの塗膜剥離性を低下させず、保護層用塗料中の樹脂による導電性層の固定化工程を損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能であり、その種類と量は、上記特性が得られる範囲で適宜選択可能である。
上記の添加量範囲において導電性物質の分散液は、粘度調整、腐食防止、基体への接着性向上、および導電性物質の分散を制御するために、前記樹脂及びその他の添加剤を含んでもよい。適切な添加剤および結合剤の例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2−ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、トリプロピレングリコール(TPG)、およびキサンタンゴム(XG)、およびエトキシレート、アルコキシレート、エチレンオキシド、および酸化プロピレンなどの界面活性剤、およびそれらの共重合体、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、およびふっ素系界面活性剤が挙げられるがそれだけに限定されない。
さらに2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、アルキルアセテート、等を非ポリマー系有機化合物を膜形成剤として使用することもできる。
【0023】
前記透明導電性物質の分散媒中への分散は、透明導電性物質と分散媒である液体の混合物に対し必要に応じて公知の分散手法を適用することにより行うことができる。ただし、良好な透明性と導電性を有する透明導電層を形成するためには、微細な導電性物質の特性が分散処理前後で大きく変化せず、混合物の透明性が失われないことが重要である。特に導電性物質が金属ナノワイヤーの場合には、折れにより導電性の低下や透明性の低下が引き起こされるため、金属ナノワイヤーの形状を破壊しない分散手法の選択が重要である。
【0024】
[透明導電膜の形成(基体上への透明導電層の形成)]
本発明で透明導電層をその上に形成する透明基体としては、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルム、あるいはガラス板、セラミック板を用いることが出来、その中でも全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは本発明の目的を妨げない程度に着色していても良く、さらに単層で使うこともできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして使用しても良い。さらに基体の少なくとも一方の表面に易剥離性処理を施していてもよい。これらプラスティックフィルムの中では透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適している。この透明プラスチック基体の厚みは、薄いと取り扱い性が悪く、厚いと可視光の透過率が低下するため5μm〜300μmが好ましい。さらに好ましくは、10μm〜250μmが好ましく、25μm〜200μmがさらに好ましい。
【0025】
上記原料を用いて透明基体上に透明導電性塗膜を形成するためには、図1のように透明導電性物質と分散媒と必要に応じて樹脂を含有する分散液を透明基体(1)上に塗布し、乾燥して、透明基体上に均一な導電性塗膜(2)を形成する。
塗布方法としてはスプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコートなど公知の塗布方法を用いることができる。
透明導電層の膜厚は薄すぎると導体としての十分な導電性が達成出来なくなる傾向にあり、厚すぎるとヘイズ値の上昇、全光線透過率の低下等で透明性が損なわれる傾向にある。通常は10nm〜10μmの間で適宜調整を行うが、金属ナノワイヤーのように導電性物質そのものが透明でない場合には、膜厚の増加によって透明性が失われ得やすく、より薄い膜厚の導電層が形成されることが多い。この場合きわめて開口部の多い導電層であるが、接触式の膜厚計で測定したときに平均膜厚として10nm〜500nmの膜厚範囲がこのましく、30nm〜300nmがより好ましく、50nm〜150nmが最も好ましい。
【0026】
本発明による透明導電層の製造方法においては、透明基体上に剥離可能な導電性塗膜を形成したのち、さらに、透明導電層の導電性を高めるため、塗布形成後の透明導電層における透明導電性物質同士の交差部分における、接触点を増すとともに、接触面積を増やしその接触を確実にするための加圧工程を行うことが可能である。
導電性物質の交差部分を加圧する工程とは、具体的には透明導電層面を加圧する工程であって、透明導電性物質が導電性微粒子の場合には、該微粒子の密度を向上させて微粒子同士の接触点と接触面積を増加させる工程であり、透明導電性物質が金属ナノワイヤーのような繊維状、より詳細にはワイヤー状の場合には、網目状に分散している透明導電層に真上から圧力を加えて、透明導電層を圧縮し、内部の金属ナノワイヤーの接触点を増やす工程である。この工程によって導電性微粒子や金属ナノワイヤー間の接触抵抗が下がることになる。
本工程は通常塗膜面を加圧する公知の方法であれば特に制限はないが、塗布によって得られた層を、例えば、加圧可能な2枚の平板間に透明導電層を配置し、一定時間加圧する平板プレス法や、加圧可能な2本のロールの間に透明導電層を挟み込んで線加圧し、ロールを回転させることによって面全体を加圧するカレンダー法などが挙げられる。
ロールによるカレンダー法において、透明導電層を加圧する圧力は、500kN/m2〜50000kN/m2、好ましくは1000kN/m2〜10000kN/m2、より好ましくは2000kN/m2〜5000kN/m2である。
【0027】
〔保護層用塗料の塗布(透明導電層の固定)〕
基体上に透明導電層の所望のパターンを形成した後に、基体上及び基体上に形成された透明導電層の全面に保護層用塗料の塗布を行う。
保護層用塗料の塗布工程は、図5のように前述の貼り合わせ工程及び剥離工程によって、形成された透明導電層パターンに一部を被覆された基体上の全面に、保護層用塗料を塗布し、溶媒成分を乾燥させ、含有する樹脂成分を硬化し保護層(9)を形成することによって行われる。本工程によって透明導電層の表面が被覆され保護されるとともに、保護層用塗料は透明導電層中の導電性微粒子の間隙や、繊維状、好ましくはワイヤー状の導電性物質の形成する網目の隙間を充填しつつ基体に到達し、硬化したときに透明導電層全体を基体上に強固に固定化し、透明導電層付き基体を形成する。
【0028】
透明導電層の固定化に使用されるバインダー樹脂として可能な材料または材料の組み合わせを以下に述べる。これらバインダー樹脂による固定化は保護層用塗料中に含有される単量体またはオリゴマー(10〜100単量体)が光照射、または加熱によって重合して、または保護層用塗料中の樹脂が、乾燥および加熱によって架橋して、固体高分子マトリクスを形成して行われ、あるいは溶媒中のバインダー樹脂が、溶媒除去によって架橋塗膜を形成して行われるが、該塗膜は必ずしも、重合、架橋プロセスを経て硬化形成されたものに限定されない。しかし、塗膜の耐久性、耐擦過性の点で可視光線または紫外線、電子線、加熱等による単量体の重合、あるいは架橋剤による高分子化合物の架橋を経て固定化されたものであることが好ましい。
【0029】
バインダーとして用いる有機ポリマーは、炭素骨格に結合した極性官能基を有するものが好ましい。極性官能基としては、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、アミノ基、燐酸基、スルホニル基、スルホン酸基、ポリアルキレングリコール基、およびアルコール性水酸基などが例示される。バインダーとして有用なポリマーの例には、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、およびセルロースなどがある。また、無機ポリマーの例には、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合により生成するシロキサン系ポリマーがある。
【0030】
単量体である重合性の有機モノマーもしくはオリゴマーの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどで代表されるアクリレートおよびメタクリレート型のモノマーおよびオリゴマー;モノ(2−メタクロイルオキシエチル) アシッドホスフェート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエンなどの他のビニルモノマー;ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのエポキシド化合物、などがある。
【0031】
単量体である重合性の無機モノマーの例は、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pb、Ag、In、Sb、Pt、Auなどの金属の鉱酸塩、有機酸塩、アルコキシド、および錯体(キレート)である。これらは加水分解または熱分解を経て重合し、最終的に無機物(金属酸化物、水酸化物、炭化物、金属など)になるので、本発明では無機モノマーとして扱う。これらの無機モノマーは、その部分加水分解物の状態で使用することもできる。次に各金属化合物の具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0032】
上記のポリマー系バインダー(ポリマー、モノマーまたはオリゴマー)の1種または2種以上を必要により有機溶媒で溶解または希釈して、粘度が25cps以下、好ましくは10cps以下の液体を調製し、第1工程で形成された塗膜の含浸に使用する。この液体の粘度が25cpsより高いと、塗膜含浸時に、基体に達するように塗膜内部に十分に液体が浸透せず、目的とする密着性および膜強度の向上効果を得ることができない。また、液体が高粘度であると、過剰の液体が第1工程で形成された透明導電層の上に堆積して、導電性微粉末を含有しない絶縁性の層を形成するので、導電性が著しく低下する。
【0033】
溶解または希釈に用いる有機溶媒は特に制限されず、(1)の塗膜形成工程に関して例示したような各種の有機溶媒のほかに、(1)の塗膜形成工程で膜形成剤として使用する液状有機化合物、および水も溶媒として使用可能である。
この含浸用液体には、必要により、硬化触媒(熱硬化の場合) 、光重合開始剤(紫外線硬化の場合)、架橋剤、加水分解触媒(例、酸)、界面活性剤、pH調整剤などを添加することができる。
適切な溶媒の例として、水、アルコール類、ケトン類、環状エーテル化合物類(テトラヒドロフラン等)、炭化水素( 例えば、シクロヘキサン) 、または芳香族系溶剤( ベンゼン、トルエン、キシレン等) が挙げられる。さらに好ましくは、溶媒は、揮発性であり、200℃ 以下、150℃ 以下、または100℃ 以下の沸点を有する。
【0034】
また、保護コート材は、架橋剤、重合開始剤、安定剤(例えば、酸化防止剤および製品寿命長期化のための紫外線安定剤、および保存期間改善のための重合防止剤)、界面活性剤、および同様な効果を有するものを含んでもよい。また、保護コート材は、金属ナノワイヤーの腐食を防止する腐食防止剤をさらに含んでもよい。
保護層を形成する方法としては公知のウェットコート方法であれば特に制限はない。具体的には、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコートなどが挙げられる。
保護層用塗料によって透明導電層を含浸しつつ保護層を形成するとき、塗布、乾燥後の保護層の膜厚は、塗布前の透明導電層に対して薄すぎると耐擦過性、耐摩耗性、耐候性等の保護層としての機能が低下し、厚すぎると導体としての接触抵抗が増加する。
保護層用塗料の塗布は透明導電層の膜厚が50〜150nmの範囲で形成されているときは、塗布、乾燥後の膜厚が30〜150nmであることが好ましく、透明導電層の膜厚を考慮して表面抵抗率、ヘイズ等が所定の値を実現出来るよう調整することができる。40〜175nmがより好ましく、50〜150nmが最も好ましい。保護層用塗料の乾燥後の膜厚は、透明導電層の膜厚にもよるが、30nm以上の膜厚であると保護層による保護機能がより良好に働く傾向にあり、150nm以下の膜厚であるとより良好な導電性能が確保できる傾向にある。
【0035】
[透明導電層のパターン化]
基体上に上記のような均一な導電層を形成する場合と異なり、静電容量型タッチパネルに用いられる透明導電膜の透明導電層のような周期的パターンを形成させるときは、繊維状の導電性物質の凝集を避ける必要性と、また既述したような繊維状導電性物質間の電気的接点確保の必要性があり、透明導電層形成用の塗料の該塗料中には印刷方法による直接パターン形成を行うための十分な樹脂成分を含有させられない場合が多い。このため固形分濃度が極めて低く低粘度であり、パターン形成のための印刷が困難なことが多い。
そのような場合には予め透明基体上に均一な透明導電層を形成しておき、種々の方法で不要な透明導電層部分を削除したり、逆に必要なパターンを切り取ったりしてパターン化された透明導電層を得ることができる。すはわち、透明基体上に繊維状導電性物質を含有した均一な透明導電層を形成したのち、該透明導電層をパターン化する工程を付加することが必要となる。
【0036】
基体上の透明導電層をパターン化する工程は、透明導電層を基体上に固定化する工程の後に行うことも可能であるが、基体上に透明導電層を塗布により形成する工程の後で、透明導電層を基体上に固定化する工程の前に行った方が、パターン化が容易であり適用できる手法も数が多い。さらにパターン化後に、パターン化された透明導電層によって部分的に被覆された透明基体の全面に、保護層用塗料を塗布することにより、パターン化後の透明導電層のより確実な透明基体への固定が可能となり好ましい。
上記基体上にパターン化された透明導電層を形成する具体的方法としては、上記の方法に加えてレーザービームによるパターン化、フォトエッチング等の中から任意の方法を適用することが可能であるが、塗布工程を用いて連続的に処理が行えること、光照射やマスキング等の処理が不要であること、さらにエッチング等の湿式処理を行う必要のないことから、形成すべきパターンに対して接着剤塗料によってネガティブパターンを形成された剥離用基材を使用し、基体上に形成された透明導電層の不要部分を剥離して、所望のパターン化された透明導電層を形成する方法を用いることが好ましい。
【0037】
以下にネガティブパターン化された接着剤層を有する剥離用基材を用いた透明導電層のパターン化方法について記載する。
[パターン化された透明導電層の形成]
下記の方法は予め作製した均一な透明導電層から、ネガティブパターンを形成した接着剤層を用いて不要部分を削除しパターン化された透明導電層を得るものである。逆にパターン化された接着剤層を用いて、必要なパターンを均一な透明導電層から切り取っても良いが、パターン化後に接着剤層が残らない前者の方法の方が好ましい。
すなわち、繊維状導電性物質を含有する透明導電層用いてパターン化された透明導電層を形成し、最終的に透明基体に固定されたパターン化された透明導電層を有する透明導電膜を作製する方法としては、以下の工程を用いる方法をあげることができる。
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程
(2)支持体上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を形成する工程
(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程
(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に透明導電層のパターンを形成する工程
(5)前記透明導電性層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程
である。
以下に上記工程の(2)〜(4)の透明導電層のパターン化に係わる部分の説明を行う。
【0038】
〔パターン化された感熱接着剤層を有する支持体の作成(工程(2)に対応)〕
基体上に形成された透明導電層を、部分的に基体から剥離するために剥離用基材を作製する。図2に示すように本発明で使用する剥離用基材(10)はフィルム状支持体(3)上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層(4)を有している。剥離用基材(10)は、支持体(3)上に感熱接着剤と溶剤を含有する感熱接着剤層用塗料を、基体上に形成すべき所望の導電性パターンに対して、反対のネガティブパターンを形成して塗布することにより形成することができる。
感熱接着剤は、常温では粘着性を全く示さないが、加熱する事により粘着性が発現する。支持体上に形成する感熱接着剤層の感熱接着剤としては、前記透明基体上に形成された透明導電層と、支持体の双方に対して親和性があり、両者を強力に接着できる感熱接着剤であれば、特に限定されることなく、公知の種々の感熱接着剤を用いることができるが、粘着性の発現する温度としては、透明導電層の導電性物質の間隙に浸透し導電性物質と良好に密着し、かつ透明基体としてフィルムを使用する場合には、基体フィルムのガラス転移温度を大きく上回らない温度で粘着性を発現することが好ましい。また、加熱の後に常温程度で支持体を剥離する際に、導電微粒子と支持体の両方に強い接着力を示すことが好ましい。
【0039】
そのような感熱接着剤としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩酢ビ(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体)系接着剤、アクリル系接着剤等を挙げることができる。中でも常温以上のガラス転移温度Tgを持ち、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸基を有し、非晶性ポリエステル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を主剤とする感熱接着剤が好ましく、ガラス転移温度としては20〜100℃の範囲が好ましい。また、感熱温度を操作する目的で、上記主剤に相溶性を有し、ガラス転移温度Tgが異なる樹脂を適量配合してもよい。
感熱接着剤には、必要に応じて、ブロッキング防止剤として、ポリオレフィン系樹脂粒子を添加することができる。なかでも、ポリエチレン樹脂粒子またはポリプロピレン樹脂粒子の添加が好ましく、より具体的には、高密度ポリエチレン樹脂粒子、低密度ポリエチレン樹脂粒子、変性型ポリエチレン樹脂粒子、分解型低密度ポリエチレン樹脂粒子、分解型ポリプロピレン樹脂粒子の添加が好ましい。また、これらポリエチレン樹脂粒子および分解型ポリプロピレン樹脂粒子の重量平均粒子径は0.1〜25μmであるが、粒子が扁平状、リン片状の場合は3〜25μmの範囲が好ましく、分子量は1,000〜29,000の範囲、融点は100〜150℃の範囲にあることがそれぞれ好ましい。
【0040】
感熱接着剤層用塗料に用いる溶剤は、感熱接着剤に使用するバインダー樹脂を良好に溶解または分散すれば、特に限定なくいずれの非腐食性溶媒も使用可能である。より適切な溶媒の例として、水、アルコール類、ケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物類、シクロヘキサン等の炭化水素、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が挙げられる。さらに溶媒は、揮発性であり、200℃以下の沸点を有することが好ましく、150℃下がより好ましく、100℃ 以下の沸点を有することがさらに好ましい。
【0041】
本発明で剥離用基材に使用する支持体としては、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムを用いることができる。なかでも透明導電層と感熱接着剤層とを互いに密着させ加熱貼り合わせる工程において、熱変形を起こさないものが好ましい。
これら支持体は本発明の目的を妨げない程度に着色していても良く、さらに単層で使うこともできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして使っても良い。このうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適している。この透明プラスチック基材の厚みは、薄いと耐熱性が乏しく、厚いと熱容量が大きくなり感熱接着剤の加熱による粘着性の発現に長い加熱時間が必要となるため、5μm〜100μmが好ましい。さらに好ましくは、10μm〜50μmであり、15μm〜30μmの膜厚であることがさらに好ましい。
【0042】
支持体上の感熱接着剤層は、基体上に得ようとする所望の透明導電性パターンを反転した、いわゆるネガティブパターン状に形成する。
接着剤のネガティブパターン形成方法としては、公知の印刷方法が使用でき、加熱により粘着性を発現した感熱接着剤層が、次工程において基体上の透明導電層に良好に接着するための十分な感熱接着剤の厚みを形成できれば、特に制限はなく公知の方法を使用可能できる。例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等が使用できる。また、感熱接着剤層の厚みは、0.05μm〜5.0μmが好ましく、0.1μm〜2.0μmがより好ましく、0.2μm〜1.0μmがさらに好ましい。
【0043】
〔透明導電層のパターニング工程〕
本発明で使用する繊維状の導電性物質を含有する透明導電層のパターニング工程は、(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記ネガティブパターン化された感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程と、(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に所望の透明導電層を残してパターンを形成する工程とからなる。貼り合わせを行う工程においては、前記透明導電層を設けた基体と前記ネガティブパターンを形成した感熱接着剤層を設けた支持体である剥離用基材とを、透明導電層と感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせ加熱及び加圧する。特に透明導電層がバインダー樹脂を含まず、あるいは含んでいても含有量が少ないときは感熱接着剤層の加熱、加圧により、感熱接着剤は軟化し透明導電層の導電性微粒子の間隙、あるいは繊維状導電性物質の網目内に浸透して、感熱接着剤と透明導電層内の導電性物質が接着する。
その後、貼り合わせ部分の感熱接着剤層を常温程度に冷却後、前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と接着した部分の透明導電層を、支持体上でネガティブパターン化された感熱接着剤層上へと剥離、転写させることにより、基体上に透明導電層のポジティブパターンが残り、基体上に所望の透明導電層パターンが完成する。
【0044】
上記透明導電層のパターンニング時に用いる貼り合わせ方法としては、貼り合わせ時における加熱、加圧により基体の熱変形を発生することのない方法であれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、加熱、加圧可能な2枚の平板間に、前記基体の透明導電層と前記剥離用基材における支持体上の感熱接着剤層を配置し、一定時間加熱、加圧する平板ラミネート法や、図3に示すようにどちらか一方、または両方が加熱可能な2本のロール対(5)、(6)のニップ間に、前記透明導電層(2)を有する基体(1)と前記感熱接着剤層(4)を有する支持体(3)を搬送し挟み込んで、加熱、線加圧し、ロール(5)、(6)を回転させることによって面全体を加圧するロールラミネート法などが挙げられる。
特に、後者のロールラミネート方式は、フィルム基体とフィルム状の剥離用基材を使ったロールツーロールでの連続処理が可能であり、優れた生産効率を有する。ロールラミネート方式のロールは、前述の通り、どちらか一方、または両方が加熱可能なロールであり、ロールの材質は、透明導電層と感熱接着材層が良好に熱接着し、基体の熱変形を発生させなければ、特に限定されることはない。金属ロールが主体の剛体ロールと、耐熱ゴム製が主体の弾性ロールの組み合わせとしては、金属/金属、金属/弾性、弾性/弾性の全ての組み合わせが使用可能であるが、ロール対のニップ間で感熱接着剤の粘着性を発現させるため、ニップ巾が広く、加熱時間を長くなる弾性/弾性、弾性/金属のロール対が好ましい。
【0045】
また、貼り合わせ時の処理条件としては、フィルム基体の熱変形を発生させずに感熱接着剤の透明導電層に対する粘着性を発現させる温度、圧力条件を適宜選択すればよい。例えば、処理温度は70℃〜150℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましく、90℃〜120℃がさらに好ましい。圧力はロール線圧で、10kN/m〜60kN/mの範囲で良好な転写状態が得られる最小線圧を選択すればよい。
さらに必要に応じて、貼り合わせ前に感熱接着剤層部分を予備加熱してもよい。また感熱接着剤層中に気泡が混入すると、導電性層との部分的接着不良のため剥離基材による導電性層の剥離が不完全になりやすい。このため気泡混入防止のために、貼り合わせ工程において、剥離基材の感熱接着層部分の加熱、加圧を減圧雰囲気下で行っても良い。
【0046】
貼り合わせた基体と剥離基材を剥離する工程においては、貼り合わせた透明導電層付き基体と、パターン化された感熱接着剤層を有する支持体よりなる剥離用基材を常温程度まで冷却し、前記支持体を前記基体から剥離する。図4に示すように支持体(3)上に形成された感熱接着剤層(4)の形成された部分に対応し、剥離工程で感熱接着剤層と接着された透明導電層(8)は、感熱接着剤層(4)と共に基体から剥離され、感熱接着剤の形成された部分に対応していない透明導電層(7)は基体(1)上に透明導電層のポジティブパターンとして残り、透明導電層のパターンが基体上に完成する。なお剥離用基材の剥離前に、剥離用基材の支持体と感熱接着剤層部分に冷却用の空気を吹き付ける等の冷却手段を講じることは、剥離を良好に行い未剥離部分の発生等のパターニング欠陥を防ぐ目的で有効である。
【0047】
本発明のパターン化された透明導電層の形成方法においては、剥離用基材に感熱接着剤でネガティブパターンを形成し、基体上に均一に形成された透明導電層から不要部分を剥離する。剥離用基材による透明導電層のパターン化は、剥離用基材の支持体上に塗布された感熱接着剤の有無だけで決定され、透明導電層の未剥離部分に対応する剥離用基材の部分には感熱接着剤は塗布されていない。このため透明導電層を確実に基体上に残すことができ、また透明導電層上に不要な感熱接着剤が残って透明導電層の光透過率を低下させる恐れがない。
このように基体上にパターン化された透明導電層を形成したのち、該透明導電層によって部分的に被覆された基体上に、既述の保護層用塗料を塗布し透明導電層を固定して導電層がパターン化された透明導電膜を作製することができる。
【0048】
[両面粘着シート]
以下に上記で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜、あるいはパターン化された透明導電層を有する透明導電膜の透明導電層に貼り合わせられる両面粘着シートについて以下に記載する。
本発明で使用する両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートである。
【0049】
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、単量体成分として金属を腐食させやすいカルボキシル基含有単量体を含有せず、主たる単量体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用した重合体である。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、窒素原子含有単量体を実質的に含有しない。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、カルボキシル基を含有しないものであれば良いが、炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体を好ましく使用できる。当該炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることで、導電層面を固定する際に必要な接着力、および光学特性を粘着剤層に好適に付与できる。
【0050】
炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
【0051】
そのなかでも、炭素数が1〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体又は炭素数が2〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、炭素数が4〜9のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。なかでもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。当該範囲の炭素数のアルキル側鎖を有するアクリル酸アルキルエステルを使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対して高い接着性を好適に付与できる。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中の炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、90〜99質量%とすることが好ましく、90〜96質量%にすることがより好ましい。当該範囲のカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中の上記炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量にすることで、粘着剤層に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な接着性を好適に付与できる。
【0053】
また、架橋剤と好適に架橋反応させることにより粘着剤層の凝集力を高くするために、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーを使用することも好ましい。架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。中でも、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。官能基を有するビニルモノマーの使用量はアクリル共重合体を構成するモノマー成分中の0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることが特に好ましい。
【0054】
当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwは70万〜150万であることが好ましく、80万〜145万がより好ましく、85万〜140万がさらに好ましい。当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwが上記範囲内だと、透明導電膜を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0055】
なお、本発明では、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H」
・検出器:示差屈折
【0056】
[窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)]
本発明に用いられる窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、単量体成分として金属を腐食させやすいカルボキシル基含有単量体を含有せず、単量体成分として(メタ)アクリル酸エステル単量体と窒素原子含有共重合性単量体を使用した重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、カルボキシル基を含有しないものであれば良いが、炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力と接着性を付与できる。また、窒素原子含有共重合性単量体を共重合することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることができ、粘着剤組成物に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0057】
炭素数1〜9の(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
その中でも、炭素数が1〜6のアルキル側鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。なかでもメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。当該範囲の炭素数のアルキル側鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0059】
窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、70〜99質量%とすることが好ましく、90〜98質量%とすることがより好ましい。当該範囲内の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中の上記炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量にすることで、粘着剤層に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な接着性および凝集力を好適に付与できる。
【0060】
窒素原子含有共重合性単量体としては、窒素原子を含有し、上記炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合が可能であればよいが、例えば、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、窒素系複素環含有単量体、シアノ基含有単量体、イミド基含有単量体等が挙げられる。これら単量体としては、例えば、アミノ基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノイソプロピル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルや、(メタ)アクリル酸(N−置換)アミノアルキルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸(N−置換)アミノアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N−(t−ブチル)アミノエチル等の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。
【0061】
その中でも、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体が好ましい。なかでもアミノ基含有単量体が特に好ましい。当該窒素含有共重合性単量体を使用することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、上記共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることで、粘着剤組成物に金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面を固定するために必要な凝集力が好適に付与できる。
【0062】
窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の窒素原子含有共重合性単量体の含有量は、当該共重合体の総量に対し、1〜30重量%とすることが好ましく、1〜20質量%にすることがより好ましい。当該範囲の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中の上記窒素原子含有共重合性単量体の含有量にすることで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電層面に対する接着性を高めると共に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤との反応を促進させることで、粘着剤組成物に導電性面を固定するために必要な凝集力を好適に付与できる。
【0063】
当該窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量Mwは5000〜10万であることが好ましく、5000〜8万がより好ましく、5000〜5万がさらに好ましい。当該窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量Mwが上記範囲内だと、導電製面を固定するために必要な接着力を好適に付与できる。
【0064】
[粘着剤組成物]
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、カルボキシル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、カルボキシル基を含有しない窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とが配合されることで、金属面や導電層面に用いられる繊維状導電性物質の腐食を防止でき、さらに酸成分を含有しなくとも粘着剤層の凝集力を好適にでき、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電性面に対して優れた接着性能を当該両面粘着シートの粘着剤層に付与できる。また、高温下での変色の懸念がある金属腐食防止剤を使用する必要がないため高温環境下でも着色による視認性の低下が生じない。
【0065】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量%に対して、窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。上記範囲内で共重合体(A)と(B)とが配合されることで、当該両面粘着シートに優れた凝集力と光学特性を好適に付与できる。
【0066】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体共重合体(B)の配合に際しては、各々の共重合体に使用する(メタ)アクリル酸エステル単量体の一種以上を同一とした共重合体を配合することが好ましい。配合する両共重合体の単量体成分として一種以上の同一の単量体を使用することで、両共重合体の相溶性を向上させることができ、粘着剤層中での光の拡散を大きく抑制できヘイズが低く高い光学特性を有する粘着剤層とすることができる。
【0067】
上記粘着剤組成物中には、上記共重合体(A)及び(B)以外の成分として、粘着剤層の凝集力を上げるために、架橋剤を含有することが好ましい。
【0068】
使用する架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリン系架橋剤、多官能アクリレート系等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリル系共重合体の(A)成分との反応性に富むイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0069】
当該両面粘着シートの粘着剤層に添加する架橋剤の配合量は、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましく、0.1〜1.5質量部がさらに好ましい。当該範囲の架橋剤の含有量にすることで、粘着剤層のゲル分率を好適な範囲に調整しやすい。
【0070】
[透明導電膜固定用の両面粘着シート]
本発明で使用する両面粘着シートは、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することで、金属面や繊維状導電性物質を用いた導電性面と好適に接着でき、かつこれら面の腐食が生じ難い。
【0071】
本発明で使用する両面粘着シートは、基材を有するものであっても、基材を有さず粘着剤層のみからなる両面粘着シートであってもよい。また、粘着剤層は単一層からなるものであっても複数層が積層されていてもよい。なかでも、透明性の確保や、形状追従性の観点からは、基材を有さず、粘着剤層のみからなる両面粘着シートであることが好ましい。
【0072】
本発明で使用するの両面粘着シートが、基材を有する場合には、当該基材として透明基材を使用できる。当該透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。なかでもアクリル樹脂フィルムが好ましい。上記基材を使用すると、例えば、アクリル樹脂フィルムの屈折率が1.45〜1.49に対して、粘着剤層の屈折率が1.47程度であるため、基材と粘着剤層との間での屈折率の差が低く、粘着剤層と透明基材との間での反射ロスが抑制しやすい。
【0073】
また、フィルム基材には、粘着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0074】
本発明で使用するの両面粘着シートの粘着剤層は、トルエン中に24時間浸漬した際の下記式で表されるゲル分率が、30〜90%であることが好ましく、40〜80%であるのがより好ましく、50〜80%が最も好ましい。粘着剤層のゲル分率が上記の範囲内だと、透明導電膜を固定において経時での剥がれを抑制しやすく、また、打ち抜き加工時に加工端面からの糸引きなどを抑制しやすい。
ゲル分率(%)=[(両面粘着シートのトルエン浸漬後質量)/(両面粘着シートのトルエン浸漬前質量)]×100
【0075】
本発明で使用する両面粘着シートは、透明導電膜の透明性を阻害しないよう、60℃、90%RH条件下に100時間静置直後の全光線透過率が90%以上、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。上記範囲内だと、当該両面粘着シートを使用されたタッチパネル装置搭載ディスプレイが高温高湿条件でも高鮮明が保たれやすい。全光線透過率及びヘイズを上記範囲内にするためには、上記共重合体(A)100質量%に対する上記共重合体(B)の配合量を1〜50質量%にすることで達成しやすい。
【0076】
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が−40〜10℃が好ましく、−30〜5℃がより好ましく、−25〜0℃がさらに好ましい。粘着剤層のTgが上記範囲内だと、常温下で優れた接着性を付与しやすく、また、打ち抜き加工時に粘着剤層からの糸引きが発生しづらく、歩留まり向上に貢献しやすい。
【0077】
本発明で使用する両面粘着シートの厚みは、使用する態様により適宜選択すればよいが、5〜200μmであることが好ましい。なかでも、平滑面に接着する場合には、10〜100μmに調整することで、タッチパネル装置を薄型化しやすい。また、段差や凹凸を有する面に貼り付ける場合には、粘着剤層の厚さを20μm以上とすることが好ましく、25〜150μmとすることが特に好ましい。
【0078】
本発明で使用する両面粘着シートは、一般的に使用されている方法で作成できる。例えば、フィルム基材または離型シート上に粘着剤層を形成して製造することができる。具体的には、粘着剤の組成物を基材フィルムに直接塗布し乾燥または硬化・重合するか、或いは、いったん離型シート上に塗布し、乾燥または硬化・重合し、粘着剤層を形成後、同様にして離型シート上に作成した粘着剤層又は基材フィルムに貼り合わせる方法などにより製造できる。
【0079】
本発明で使用するの両面粘着シートの打ちぬき加工後において、剥離フィルムの端面への粘着剤層の付着がないことが好ましい。粘着剤層が剥離フィルム端面に付着しないと、加工時での歩留まりが向上しやすい。
【0080】
本発明で使用する両面粘着シートの粘着剤層の剥離フィルム端面への付着を防ぐためには、粘着剤層の凝集力、接着性等を最適な範囲に調整することで達成しやすい。具体的な方法としては、粘着剤層へカルボキシル基含有単量体の使用、粘着剤層のゲル分率の上記範囲内への調整等が挙げられる。なかでも、打ち抜き加工に必要な凝集力の付与と透明導電膜を固定するために必要な接着性の付与の両立がしやすい粘着剤層へカルボキシル基含有単量体の使用が好ましい。
【0081】
[透明導電膜積層体]
本発明の透明導電膜積層体は、透明導電膜の繊維状導電性物質を含有する導電層に対して上記両面粘着シートの粘着剤層が直接貼り合わされて少なくとも2層以上の積層体が形成されている積層体であり、例えば、基材上に導電層が設けられた透明導電膜と上記両面粘着シートからなる積層体(図1)が挙げられる。また、導電層の反対面にハードコート層が設けられた積層体(図2)や、上記両面粘着シートの両面にハードコート層を有する透明導電膜が設けられた積層体(図3)も挙げられる。積層体の傷つき防止のため、ハードコート層が設けられた積層体(図2、3)が好ましい。
【0082】
本発明に使用する透明導電膜は、少なくとも透明基体の片面の表層に繊維状導電性物資得を含有する導電層を有するものであればよく、透明基材の表層に繊維状導電性物質が蒸着やコーティングにより設けられた透明導電膜を好適に使用できる。なかでも導電物質が蒸着により形成された導電層を有する透明導電膜が、製造が容易であるため好ましい。
【0083】
当該透明導電膜積層体において、下記の式で表される導電膜層の電気抵抗値の上昇率が、60℃、90%RH条件下に500時間放置後で5%以下であることが好ましい。上記範囲内だと、当該透明導電膜積層体を用いて製造されたタッチパネル装置が正常に作動する。
導電膜層の電気抵抗値の上昇率(%)=[(60℃、90%RHに500時間放置後の電気抵抗値)−(初期の電気抵抗値)]/(初期の電気抵抗値)×100
【0084】
[タッチパネル装置]
本発明のタッチパネル装置は、上記両面粘着シートが繊維状透明導電性物質を含有する導電層を有する透明導電膜に貼り合わせて形成された透明導電膜積層体を有することを特徴とする。本発明のタッチパネル装置の構成は特に制限されないが、静電容量方式のタッチパネルの構成であることが好ましい。
【0085】
本発明のタッチパネル装置の好適な構成例としては、両面粘着シートの片面に透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体が、表示パネル(透明パネル)と画像表示モジュールとの間に二層設けられた静電容量方式のタッチパネル装置(図4)を例示できる。二層設けられた粘着剤層付き透明導電膜のうち、少なくとも一層が上記本発明の透明導電膜積層体であればよく、画像表示モジュール側の粘着剤層付き透明導電膜が上記本発明の透明導電膜積層体である構成、または、二層の粘着剤層付き透明導電膜がいずれも上記本発明の透明導電膜積層体である構成を好ましい構成として使用できる。また、他の好適な構成例として、両面粘着シートの両面に透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体が、固定用テープや固定用接着剤により表示パネルと画像表示モジュールの間に固定された静電容量方式のタッチパネル装置(図5)を例示できる。当該構成においては、表示パネル、透明導電膜積層体及び画像表示モジュールを、固定用テープや固定用接着剤を使用して固定することでタッチパネル装置を製造できるため組み立て工程が容易となる。
【0086】
本発明のタッチパネル装置の保護パネルは、特に制限されないが、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
なかでも、透明性と軽量性で優れた(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0087】
本発明のタッチパネル装置の表示パネルには、装飾部があってもよい。具体的な装飾部としては、例えば、携帯電子端末の画像表示部の周囲に視認される文字や図形、あるいは、これらの背面に設けられる黒色や白色の下地などが挙げられる。これら装飾部は、携帯電子端末へ意匠性を付与するため、設けられることが好ましい。
【0088】
当該タッチパネル装置の画像表示モジュールを除いた厚さは、0.3mm〜3.0mmであることが好ましい。上記範囲内だと当該タッチパネル装置が組み込まれた電子機器を薄型にしやすい。
【0089】
なお、画像表示モジュール側の粘着剤層付き透明導電膜を上記本発明の透明導電膜積層体とする場合には、当該透明導電膜積層体の両面粘着シートの厚さを5〜200μmとすることが好ましく、10〜100μmとすることが特に好ましい。また、表示パネルと貼り合わせる側の粘着剤層付き透明導電膜を上記本発明の透明導電膜積層体とする際に、表示パネルに装飾部が設けられている場合には、両面粘着シートの厚みは、25〜200μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。上記範囲内だと、表示パネルの装飾部に両面粘着シートが追従しやすい。
【0090】
タッチパネル装置に使用する画像表示モジュールは、特に制限されず、小型電子端末に通常使用されるLCDモジュールや、有機ELモジュールなどが使用できる。
【実施例】
【0091】
以下に透明導電性物質がナノワイヤーである場合について、タッチパネル装置に用いられる透明導電膜積層体を形成する実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
[透明導電膜の作製]
(銀ナノワイヤーの合成)
銀ナノワイヤーは、Y.Sun、B.Gates、B.Mayers、& Y.Xia,“Crystalline silver nanowires by soft solution processing” 、Nano letters 、 (2002) 、2(2) 165〜168に記載されるポリオールを用いた方法の後、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で、エチレングリコールに硫酸銀を溶解し、これを還元することによって合成されたナノワイヤーである。すなわち本発明においてはCambrios Technologies Corporation 米国仮出願第60/815,627号に記載される修正されたポリオール方法によって、合成されたナノワイヤーを用いた。
【0092】
(透明導電層の作製)
透明導電層を形成する金属ナノワイヤーとして、上記方法で合成された短軸径約70nm〜80nm、アスペクト比100以上の銀ナノワイヤーを水性媒体中に0.5%w/v含有する水分散体(Cambrios Technologies Corporation社製 ClearOhmTM, Ink−A AQ)を、スロットダイ塗工機を使用し、厚み188μmの片面がハードコートされた高透明PETフィルム(HF1C22−188)を基体としてそのハードコート面上にウエット厚み20μmに塗布、乾燥した後に、圧力2000kN/m2で加圧処理を行い均一な透明導電層を形成した(図1)。
【0093】
〔ネガティブパターン化された感熱接着剤層を有する支持体からなる剥離用基材の作成〕
次に、CRISVON NT−810−45(DIC社製ポリウレタン樹脂、45%溶液)100重量部をメチルエチルケトン 62.5重量部、トルエン 62.5重量部に溶解させ感熱接着剤とした。このポリウレタン樹脂の代表的物性値は、粘弾性測定(昇温速度3℃/分)で得られるtanδのピーク値から得られるガラス転移温度が42℃、引っ張り速度300mm/分で得られる引張破断強度が277×10E5Pa、引張破断伸度が665%、高圧式フローテスター(ダイス:1φ×1L、加圧:98N)の測定で得られる流動開始温度が90℃である。上記の感熱接着剤用液を厚み23μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製テイジンテトロンフィルムG2)を支持体としてその上にパターン印刷を行う。ここで基体に形成すべき所望の導電性層パターンとしては、図6及び図7の静電容量方式投影型用タッチパネル用の電極パターンとした。該パターンは一辺の長さが4mmで内角が90度であるダイヤモンド形状の静電エレメントのパターンと、線幅が350μmの細線パターンとが交互に連続した直線状のパターンである。したがって上記支持体上には、透明導電層によって形成されるべきパターン図6、及び図7に対して、そのネガティブパターンである図8、及び図9のパターンをグラビア印刷法にて印刷した。印刷塗膜を乾燥後、感熱接着剤層の厚み0.5μm〜0.8μmとなるように塗布を行い、図8及び図9のようなネガティブイメージ状に感熱接着剤がパターン印刷された剥離用基材を得た(図2)。
【0094】
〔透明導電層のパターニング工程〕
次いで、ロール状の塗布物として作成した透明導電層の形成された基体と、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を有する剥離用基材とを走行させつつ、透明導電層と感熱接着剤層が互いに向き合うように重ね、金属製加熱ロールと、耐熱シリコンロールによる加熱、加圧ニップを持つラミネーターを使用して、加熱ロール温度110℃、ロールニップ圧(線圧)30kN/m、速度5m/分の条件で連続的に貼り合わせを行った(図3)。貼り合わせた材料を走行させながら、貼り合わせ部分の温度が室温程度まで下がった時点で、基体から支持体を連続的に剥離し、基体上に透明導電層が所望のパターン状に残ったパターン化された透明導電層を有するロール状のフィルム基体得た(図4)。
パターン化された透明導電層部分を顕微鏡によって観察したところ、基体上の透明導電層部分は剥離用基材を用いた剥離工程で損傷を受けておらず、また剥離用基材から透明導電層が剥離された部分には透明導電層が残存することがなく、また感熱接着剤が付着することもなかった。この状態の透明導電層について、剥離工程が良好に行われたことを確認するために、光透過率及び抵抗値の測定を行った。結果は表1に示す。
【0095】
〔保護層用塗料の塗布による保護層の形成(透明導電層の固定)〕
保護層用塗料として、アクリル樹脂(DIC社製アクリディックA−815−45 不揮発分45%)100部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製バーノックDN−980 不揮発分75%)7.2部をメチルエチルケトン2200部、トルエン2200部によく溶解させ保護層用塗料とした。
この保護層用塗料を、前記パターン化された透明導電層をその上に有する基体の全面に、スロットダイ塗工機を使用し、該保護層用塗料で透明導電層中の網目状ナノワイヤーの間隙を充填しつつ、ウエット厚み10μmに塗布、乾燥し、乾燥厚み約0.1μmの保護層塗膜を形成した。その後に、60℃の雰囲気に24時間おいて、イソシアネート系硬化剤とアクリル樹脂とを硬化反応させ保護層を形成した(図5)。このようにして図6と図7の2種類のタッチパネル用透明導電層パターンを有する透明導電性フィルム(透明導電層付きフィルム)を作製した。これらパターン化された透明導電層付きフィルムから静電容量型のタッチパネルを作製するには、例えば2種類の透明導電層付きフィルムを、透明導電層を同一方向(例えば上向き)に向けて、一方の透明導電層形成部分が他方の導電層剥離部分に重なるように、互い違いにスペーサを介して重ね合わせる工程を経て作製される。
すなわち一方の透明導電膜である透明導電層付きフィルムの透明導電層上に、両面粘着シートを貼り合わせ、両面粘着シートのもう一方の面にもう一種類の透明導電膜を、透明導電層形成部分が重なり合わないように、かつ透明導電層が透明基体に対して同じ方向を向くように配置して貼り合わせ、透明導電層積層体を形成する工程が行われる。
さらにパターニングされる前の透明基体上に形成された透明導電層の上に、同様に上記の保護層用塗料を塗布して透明導電層の固定を行い、特性測定用の透明導電層付きフィルムを作製した。
【0096】
さらに以下に示す方法によって前記透明導電膜の導電層上に貼り合わせる両面粘着シートを作製した。
【0097】
[アクリル共重合体の調製]
<アクリル共重合体(A1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート87.0重量部、シクロヘキシルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(A1)を得た。
【0098】
<アクリル共重合体(A2)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート87.0重量部、メチルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量88万のアクリル共重合体(A2)を得た。
【0099】
<アクリル共重合体(A3)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート97.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(A3)を得た。
【0100】
<アクリル共重合体(B1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、シクロヘキシルメチルメタクリレート95.0重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル1.0重量部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量2万のメタクリル共重合体(B1)を得た。
【0101】
<アクリル共重合体(B2)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルメタクリレート95.0重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル1.0重量部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量2万のメタクリル共重合体(B2)を得た。
【0102】
<アクリル共重合体(B3)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート96.5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量40万のアクリル共重合体(B3)を得た。
【0103】
<アクリル共重合体(H1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート95.5重量部、アクリル酸4.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量90万のアクリル共重合体(H1)を得た。
【0104】
[粘着剤の調製]
<粘着剤(P1)>
上記アクリル共重合体(A1)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を2.5重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P1)を得た。
【0105】
<粘着剤(P2)>
上記アクリル共重合体(A2)100重量部に、上記アクリル共重合体(B2)を2.5重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P2)を得た。
【0106】
<粘着剤(P3)>
上記アクリル共重合体(A3)100重量部に、上記アクリル共重合体(B2)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P3)を得た。
【0107】
<粘着剤(P4)>
上記アクリル共重合体(B3)100重量部を酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P4)を得た。
【0108】
<粘着剤(P5)>
上記アクリル共重合体(B3)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P5)を得た。
【0109】
<粘着剤(P6)>
上記アクリル共重合体(H1)100重量部に、上記アクリル共重合体(B1)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分30%の粘着剤(P6)を得た。
【0110】
(実施例1)
上記粘着剤(P1)100重量部にイソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン社製D−160N、固形分75%)を0.1重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ50μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で7日間熟成し厚さ25μmの、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。
このようにして得られた粘着シートを両面粘着シートとして、その片面にパターン化された透明導電層付きフィルムの透明導電層側の面を貼り合わせ、両面粘着シートのもう一方の面に膜厚50μmのPETフィルムを貼り合わせて、透明導電層がパターン化され静電容量型のタッチパネルに使用することのできる評価用の透明導電膜積層体1を作製した。さらに透明基体上に、均一なパターン化される前の透明導電層を有し、かつ該透明導電層を保護層で固定した一様な透明導電層を有する透明導電層付きフィルムを用いて、同様に評価用の透明導電膜積層体2を作製した。
【0111】
(実施例2)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P2)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率72%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜層積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0112】
(実施例3)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P3)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率68%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0113】
(比較例1)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P4)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率80%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0114】
(比較例2)
粘着剤(P1)100重量部を粘着剤(P5)100重量部にする以外は、実施例1と同様にして、ゲル分率70%の粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電膜積層体1と透明導電膜積層体2を作製した。
【0115】
(比較例3)
上記粘着剤(P6)100重量部にイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製L−45、固形分45%)を0.7重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ50μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で7日間熟成し厚さ25μmの、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。この粘着シートを両面粘着シートとして用い、実施例1と同様にして評価用の透明導電層積層体を作製した。
【0116】
(参考例1)
パターン化された透明導電層を有する透明導電膜と、均一な透明導電層を有する透明導電膜とを両面粘着シートを貼り合わせずにそのまま評価用サンプルとして用いて以下の試験を行った。
【0117】
(参考例2)
実施例、比較例において両面粘着シートの透明導電膜を挟んで反対側に貼り合わせていた50μmのPETを、そのまま試料として用い、実施例及び比較例のヘイズ値、及び黄色度の変化に対する50μPETの影響度を調べるための以下測定を行った。
【0118】
(タッチパネル用透明導電層積層体のパターン線抵抗)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3及び参考例1と参考例2で作製したパターン化された透明導電層を有する透明導電膜積層体1を評価サンプルとして使用し、パターン両端の線抵抗(R1)をテスターを使用して測定した。温度80℃、湿度80%の環境下に240時間静置後に同様にパターン両端の線抵抗(R2)を測定し、その上昇率を求めた。パターン線抵抗の上昇率は下記の式で算出した。
パターン線抵抗の上昇率(%)=((R2−R1)/R1)×100
さらに温度85℃のdry環境に240時間静置後のパターン線抵抗の上昇率についても同様の測定を行った。
【0119】
(透明導電層積層体のヘイズ測定)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3、及び参考例1と参考例2で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜積層体2を使用し、そのヘイズ値を日本電色工業(株)製「NDH2000」を使用して測定した、その後温度80℃、湿度80%の環境下に240時間の条件、及び温度85℃のdry環境に240時間のそれぞれの条件に静置した後のヘイズ値を同様に測定し測定値の変化を求めた。
【0120】
(透明導電層積層体の黄色度測定)
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3、及び参考例1と参考例2で作製した均一な透明導電層を有する透明導電膜積層体2を使用し、そのb*の値を日本電色工業(株)製「分光式色差計SE2000」を使用して測定した、その後温度80℃、湿度80%の環境下に240時間の条件、及び温度85℃のdry環境に240時間のそれぞれの条件に静置した後のb*の値を同様に測定し測定値の変化を求めた。
【0121】
(耐剥がれ性の評価)
45mm×35mmのハードコート層付きPETフィルムのPETフィルム面と、50
mm×40mmのガラスとを、実施例1〜実施例3、または比較例1〜3で用いた両面粘着シートで貼り合せた後、85℃条件に500時間放置し
、目視でハードコート付きPETフィルムの剥がれを評価した。
○:剥がれ無し
×:剥がれ有り
【0122】
既述の実施例1〜3、比較例1〜3、参考例1、参考例2についての上記の各測定項目に関する数値を表1、表2にまとめた。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
上記のとおり、実施例1〜3の繊維状導電性物質を含有する透明導電膜に、本発明で使用する両面粘着シートを貼り合わせた透明導電積層体は、高温高湿環境試験後、および高温dry環境試験後の透明導電積層体のパターン線抵抗の上昇率を好適に抑制でき、また、タッチパネル等の画像表示装置に使用する際に要求される透明性や、ヘイズも好適であった。表1、表2の実施例、比較例では、いずれも試験後のヘイズ値、黄色度の上昇が認められるが、参考例2のデータから明らかなように、この上昇は両面粘着シートのもう一方の面に貼り合わせた50μmのPETに起因するものであり、その影響を差し引けば実施例においても比較例においても、ヘイズ値及び黄色度の値が大きく変化していないことが明らかである。一方、窒素含有共重合性単量体を含有させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体のみを使用した比較例1および比較例2の構成では、高温耐久試験時のパターン線抵抗、ヘイズ値、黄色度はその変化を小さく抑えることが出来るものの透明導電積層体の好適な耐剥がれ性を実現することができなかった。また、酸成分を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用した比較例3においては、高温dry環境試験により電気抵抗値の大幅な上昇が見られた。
【符号の説明】
【0126】
1 透明導電膜積層体
2 透明導電膜固定用両面粘着シート
3 導電層
4 透明基材
5 ハードコート層
6 保護パネル
7 装飾層
8 粘着剤層付き透明導電膜
9 固定用テープ
10 画像表示モジュール
11 (透明導電層形成用)基体
12 透明導電層
13 (感熱接着剤ネガティブパターン形成用)支持体
14 感熱接着剤層
15 加熱、加圧用金属ローラー
16 加熱、加圧用耐熱シリコンゴムローラー
17 パターン化された透明導電層
18 感熱接着剤により引き剥がされた透明導電層
19 保護層(透明導電層を保護層用塗料で含浸し、基体上に固定化した保護層)
20 剥離用基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質及び樹脂を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、
(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基
含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分とし
て含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする
透明導電膜積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に含まれる窒素原子含有共重合性単量体
の含有量が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の1〜
30質量%である請求項1に記載の透明導電膜積層体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に含まれる窒素原子含有共重合性単量体
が、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、窒素系複素環含有単量体、シアノ基含有
単量体及びイミド基含有単量体〜選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の
透明導電膜積層体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が70万〜150万で
あり、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量が5000〜10万である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電膜積層体。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)及び(メタ)アクリル酸ステル共重合体(B
)が、同一の(メタ)アクリル酸エステル単量体を一種以上含有する請求項1〜4のいず
れかに記載の透明導電膜積層体。
【請求項6】
前記同一の(メタ)アクリル酸エステル単量体が、n−ブチルアクリレート、2−エチル
ヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルアクリレートから選ばれる少なくとも一種であ
る請求項5に記載の透明導電膜積層体。
【請求項7】
前記透明導電膜は、透明基体上に前記樹脂及び前記透明導電性物質を含有する透明導電層を有し、前記両面粘着シートは該透明導電層上に貼り合わせられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【請求項8】
前記透明導電膜は、前記透明基体上に一定方向に延伸し、平行かつ等間隔に配列した透明導電層からなるパターンを形成して作製されたものである請求項7に記載の透明導電膜積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の2つの透明導電膜積層体を有し、該2つの透明導電層膜層体は透明導電層からなるパターンが互いに直角方向となるように貼り合わせられた静電容量型タッチパネル装置。
【請求項10】
基体上にパターン化された透明導電層を有するタッチパネル用透明導電膜の製造方法であって、
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程と、
(2)支持体上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を形成する工程と、
(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程と、
(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に透明導電層のパターンを形成する工程と
(5)前記透明導電層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程と、
(6)前記基体上の透明導電層上に両面粘着シートを貼り合わせる工程を有し、
前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とするタッチパネル用透明導電膜の製造方法。
【請求項1】
導電性物質及び樹脂を含有する透明導電膜と該透明導電膜上に貼り合わせられた、両面粘着シートとを有する透明導電膜積層体であって、前記導電性物質は繊維状の金属導電性物質であり、前記両面粘着シートが、
(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基
含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分とし
て含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする
透明導電膜積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に含まれる窒素原子含有共重合性単量体
の含有量が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体成分中の1〜
30質量%である請求項1に記載の透明導電膜積層体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に含まれる窒素原子含有共重合性単量体
が、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、窒素系複素環含有単量体、シアノ基含有
単量体及びイミド基含有単量体〜選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の
透明導電膜積層体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が70万〜150万で
あり、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量が5000〜10万である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電膜積層体。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)及び(メタ)アクリル酸ステル共重合体(B
)が、同一の(メタ)アクリル酸エステル単量体を一種以上含有する請求項1〜4のいず
れかに記載の透明導電膜積層体。
【請求項6】
前記同一の(メタ)アクリル酸エステル単量体が、n−ブチルアクリレート、2−エチル
ヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルアクリレートから選ばれる少なくとも一種であ
る請求項5に記載の透明導電膜積層体。
【請求項7】
前記透明導電膜は、透明基体上に前記樹脂及び前記透明導電性物質を含有する透明導電層を有し、前記両面粘着シートは該透明導電層上に貼り合わせられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【請求項8】
前記透明導電膜は、前記透明基体上に一定方向に延伸し、平行かつ等間隔に配列した透明導電層からなるパターンを形成して作製されたものである請求項7に記載の透明導電膜積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の2つの透明導電膜積層体を有し、該2つの透明導電層膜層体は透明導電層からなるパターンが互いに直角方向となるように貼り合わせられた静電容量型タッチパネル装置。
【請求項10】
基体上にパターン化された透明導電層を有するタッチパネル用透明導電膜の製造方法であって、
(1)基体上に剥離可能な透明導電層を塗布により形成する工程と、
(2)支持体上に、ネガティブパターン化された感熱接着剤層を形成する工程と、
(3)前記基体と前記支持体とを、前記透明導電層と前記感熱接着剤層とが互いに密着するように貼り合わせる工程と、
(4)前記支持体を前記基体から剥離し、前記感熱接着剤層と密着した部分の前記透明導電層を、感熱接着剤層上へと移行させることにより、基体上に透明導電層のパターンを形成する工程と
(5)前記透明導電層パターンを形成した基体全面に、保護層用塗料を塗布し、透明導電層を基体上に固定化する工程と、
(6)前記基体上の透明導電層上に両面粘着シートを貼り合わせる工程を有し、
前記両面粘着シートが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び窒素原子含有共重合性単量体を単量体成分として含有し、カルボキシル基含有単量体を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とするタッチパネル用透明導電膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−79257(P2012−79257A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226489(P2010−226489)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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