説明

中性粒子ビーム処理装置

本発明は、中性粒子ビーム処理装置に関するものである。より詳細には、本発明はプラズマ放電を通じて処理ガスをプラズマに転換させるプラズマ放電空間、プラズマイオンと衝突して前記プラズマイオンを中性粒子に変換させる重金属板、プラズマイオン及び電子の通過は妨害して前記重金属板と前記プラズマイオンの衝突によって生成された中性粒子は通過させるプラズマリミッター及び表面処理を要する基板を収納する処理室含む。ここで、前記プラズマ放電空間は前記重金属板と前記プラズマリミッターの間にサンドイッチされたことを特徴とする中性粒子ビーム処理装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、表面処理装置に関するものである。より詳細には、本発明は基板の表面を中性粒子ビームで処理するための中性粒子ビーム処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマというのは、放電によって生じる電荷を帯びた陽イオンと電子の集団である。プラズマは、半導体製造行程でプラズマ蝕刻及びPECVD(Plasma Enhanced−Chemical Vapor Deposition)などを含む基板の表面処理に広く利用されている。しかし、プラズマによる表面処理を遂行するにおいての問題点は、プラズマが帯電した粒子ということである。例えば、帯電した粒子であるプラズマによる蝕刻は、蝕刻プロファイルを変更させたり、基板に形成された回路を損傷させたり、または電圧勾配を誘導して基板表面を損傷させたりすることがある。
【0003】
前記のプラズマ処理方法によって招来される問題点を解決するため、中性粒子を利用したシステムが提案された。プラズマから中性粒子を生成する方法は、大きくわけて二つある。その中の一つは、プラズマとガス粒子の衝突によって中性粒子を生成する電荷交換である。他の一つは、プラズマイオンと重金属板との衝突によって中性粒子を生成するものである。前者の例としては、日本特許第2,606,551号及び第2,842,344号を挙げることができる。しかし、プラズマとガス粒子の間の電荷交換によって生成された中性粒子は、中性粒子への転換効率が低く、中性粒子の方向性と衝突回数に対する制御が難しいという短所がある。よって、プラズマイオンと重金属板との衝突によって中性粒子を生成することがより好ましいと考えられている。
【0004】
米国特許第4,662,977号は、プラズマを生成することと同時に生成されたプラズマを一定の方向に誘導するプラズマガンと、前記プラズマと衝突してプラズマイオンを中性粒子に変換させて生成された中性粒子を基板の方へ引導する重金属板とを含む基板の表面処理のための中性粒子表面処理装置を開示している。前記システムがプラズマによって招来される問題点を解決することができるという長所を持っているが、入射される中性粒子ビームの断面が狭いので、おおよそ8インチ以上の大きさを持つ基板を処理するには適しないという問題点がある。
【0005】
本発明者等によって出願されたWO01/84611は、高周波電源を導入する高周波電源導入部、プラズマ生成部、中性粒子生成部、及び被処理体を搭載した処理部を含む中性粒子ビーム処理装置を開示している。前記装置で、高周波電源が高周波電源導入部を通じて導入されて、プラズマ生成部で導入された処理ガスが前記高周波電源の助けでプラズマに転換されて、前記プラズマ生成部で生成されたプラズマは重金属板と接触して中性粒子に転換されて、このように生成された中性粒子は基板の表面処理をする。前記中性粒子ビーム処理装置の長所は均一なプラズマの生成であり、これは比較的大面積を有する被処理体の処理を可能にする。未公開のPCT出願であるPCT/KR03/02146は、重金属板に傾斜したホールまたは傾斜したスリットを形成してプラズマと重金属板の間の衝突回数を増進させて中性粒子への転換効率を増加させ、それによって中性粒子処理効率を増加させた中性粒子ビーム処理装置を開示している。ここで、重金属板に形成された傾斜したホールまたは傾斜したスリットは、プラズマと重金属板の衝突を保証すると同時に、中性粒子に転換されないプラズマと電子が基板に到達するのを排除する役目を遂行する。前記中性粒子ビーム処理装置は、広い範囲で均一なプラズマの生成を保証して、中性粒子に転換されないプラズマイオンまたは電子による影響を最小化し、高い方向性を持った中性粒子ビームを生成するという長所を有している。しかし、前記中性粒子ビーム処理装置によれば、重金属板に形成されたホールまたはスリットでプラズマシース(sheath)が発生して、中性粒子の生成を妨害する。言い換えれば、プラズマイオンの方向性が、傾斜したスリットまたは傾斜したホールに形成された不完全なシースによって妨害され、プラズマイオンから生成された相当な量の中性粒子が被処理体に到達することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
技術目的
前記の問題点を解決するために研究を重ねた結果、本発明者等は中性粒子を生成する手段(具体的には、重金属板)と中性粒子に転換されないプラズマイオンと電子が基板に到達することを排除する手段(具体的には、プラズマリミッター)をプラズマ放電空間を間に置いて分離配置することが好ましいということを確認した。本発明の第一の目的は、プラズマ放電のために処理ガスをプラズマイオンに転換させるプラズマ放電空間と、プラズマイオンと衝突してプラズマイオンを中性粒子に転換させる重金属板と、プラズマイオン及び電子の通過を妨害して前記重金属板と前記プラズマイオンの衝突によって生成された中性粒子を選択的に通過させるプラズマリミッターと、表面処理する基板を収納する処理室とを含んで成り立った中性粒子ビーム処理装置において、前記プラズマ放電空間が前記重金属板と前記プラズマリミッターの間にサンドイッチされたことを特徴とする中性粒子ビーム処理装置を提供するものである。プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンを中性粒子に変換させる部分と、前記中性粒子だけを選択的に通過させて、プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオン及び電子の通過は排除する部分を、プラズマ放電空間を間に置いて分離配置することにより、中性粒子への変換が単純化されて、プラズマイオンと電子による干渉が容易に排除される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
技術的解決法
本発明の中性粒子ビーム処理装置によると、前記重金属板は前記プラズマ放電空間の上部に配置して、前記プラズマリミッターは前記プラズマ放電空間の下部に配置する。前記プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンは、バイアス電圧によって前記重金属板に誘導されて、前記重金属板と衝突して中性粒子を生成し、生成された中性粒子は前記プラズマリミッターに入射する。
【0008】
本発明による中性粒子ビーム処理装置は、必要な場合、前記プラズマリミッターを通過した中性粒子をコリメート(collimating)するコリメータ(collimator)をさらに含むことができる。
【0009】
本発明の好ましい実施態様によると、a)内部空間、側面に配置されたガス流入口及びガス排出口、および重金属板を含む、下部が開放された反応チェンバーであって、前記反応チェンバーの内部空間はプラズマ放電空間で、前記重金属板は前記プラズマ放電空間の上部に配置して、前記ガス流入口を通じてプラズマ放電空間に導入された処理ガスはプラズマ放電によりプラズマイオンに転換され、生成されたプラズマイオンは前記重金属板と衝突して中性粒子に転換される反応チェンバーと、b)前記反応チェンバーの下部に位置したプラズマリミッターであって、前記プラズマリミッターはホールまたはスリットを有し、該ホールまたはスリットを前記中性粒子は通過するが、前記ホールまたはスリットによってプラズマイオン及び電子の通過が妨げられるプラズマリミッターと、c)前記プラズマリミッターの下部に位置して、前記中性粒子によって表面処理が遂行される基板を収納する処理室と、を含む、中性粒子ビーム処理装置を提供する。
【0010】
本発明の他の好ましい実施態様によると、前記プラズマリミッターはホールまたはスリットに磁場を印加する磁気のユニットまたは電場を印加する電気ユニットをさらに含む、中性粒子ビーム処理装置を提供する。
【0011】
本発明のまた他の好ましい実施態様によると、前記プラズマリミッターを通過した中性粒子をコリメートするコリメータを前記プラズマリミッターと処理室の間にさらに含む、中性粒子ビーム処理装置を提供する。
【0012】
本発明のまた他の好ましい実施態様によると、前記コリメータは中性粒子をコリメートするために複数のホールを有する、中性粒子ビーム処理装置を提供する。
【0013】
本発明のまた他の好ましい実施態様によると、前記重金属板は前記反応チェンバーの内部上部面として形成するか、またはプラズマ放電空間の上部に別に配置した中性粒子ビーム処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
発明の効果
本発明による中性粒子ビーム処理装置は、既存の装置より構造が簡単である。例えば、WO01/84611及びPCT/KR03/02146に開示された装置は、プラズマイオンの中性粒子への転換とプラズマイオンと電子による干渉を排除するため、複雑に配置された反射板構造を有している。これに反して、本発明による中性粒子ビーム処理装置は、そのような構造をまったく必要としない。また、従来の装置で発生したシースによる中性粒子生成効率の低下が本発明ではまったく発生しない。プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンを中性粒子に変換させる重金属板と、前記中性粒子だけを選択的に通過させて、プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオン及び電子の通過を排除するプラズマリミッターが、これらの間に位置するプラズマ放電空間によって分離配置されている。そうすることにより、中性粒子への変換が単純化され、プラズマイオンと電子による干渉が容易に排除され、その結果として、中性粒子の転換効率と基板の表面処理効率が顕著に向上する。
【0015】
特に、本発明による中性粒子ビーム処理装置は、コリメータの適切な選択とステンシルマスクのようなマスクの使用によって、リゾグラフィーを遂行することができる。フォトリゾグラフィー(Photo lithography)の代りに、中性粒子を利用したリゾグラフィーは二つ重要な長所を有している。フォトリゾグラフィーは、フォトレジストをパターン化したマスクを通じて感光させてこれを現像する順次的な工程で構成される。さらに、数十ナノメータの線幅加工を成就するためには、光の波長が長いので、新しいフォトリゾグラフィー方法が開発されなければならない。しかし、前記中性粒子ビーム処理装置で作られた酸素のようなラジカル中性粒子ビームをパターン化されたマスクを通じてフォトレジストに照射すると、パターン形成とフォトレジストの除去が同時に遂行されて、その結果として、処理効率が向上する。さらに、中性粒子ビームのドブロイ波長は非常に短く(例えば、10eVの酸素原子ビームの場合約0.002nm)、その結果として、フォトリゾグラフィーと異なり、集束限界がなく、中性粒子ビームは数十ナノメータリゾグラフィーに適用できる。前記中性粒子ビーム処理装置を利用したフォトレジスタ除去実験を遂行した結果、分当り約30nmの除去速度を得ることができた。これは、PCT/KR03/02146に提案された装置と比べると、約4倍改善されたものである。
【0016】
図面の簡単な説明
図1は、本発明による中性粒子ビーム処理装置の好ましい具現例を示した断面図である。
【0017】
図2は、発明による中性粒子ビーム処理装置の他の好ましい具現例を示した断面図である。
【0018】
図3は、本発明による中性粒子ビーム処理装置のまた他の好ましい具現例を示した断面図である。
【0019】
図4は、本発明の中性粒子ビーム処理装置に使用されるプラズマリミッターとコリメータの好ましい組み合わせを示した斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態
本発明はプラズマ放電空間、重金属板、プラズマリミッター及び表面処理を要する基板を収納する処理室を含み、前記プラズマ放電空間が前記重金属板と前記プラズマリミッターの間にサンドイッチされた中性粒子ビーム処理装置に関するものである。
【0021】
前記プラズマ放電空間で、流入した処理ガスがプラズマ放電によりプラズマに転換される。すなわち、前記プラズマ放電空間でプラズマイオン(または、陽イオン)と電子の集団であるプラズマが生成される。ここで、プラズマは多様な方式によって生成できる。例えば、蓄電容量性プラズマ放電、誘導結合型プラズマ放電、プラズマウエーブを利用したヘリコン放電及びマイクロウエーブプラズマ放電を適用することができる。その中で、低い運転圧力で高密度のプラズマを形成することができる誘導結合型プラズマ放電が好ましい。誘導結合型プラズマ放電に使用されるアンテナの形態に関しては、大韓民国特許出願番号第7010807/2000号、第14578/1998号、第35702/1999号及び第43856/2001号を参照してほしい。
【0022】
前記プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンは、前記重金属板との衝突によって中性粒子に転換される。本明細書で、「重金属板」は処理ガスより重い原子量を有する金属材質か前記金属で表面がコーティングされた板を意味する。前記重金属板の表面の中で前記プラズマイオンと衝突する面は、ポリッシングすることが弾性衝突を保障することができて好ましい。使用できる重金属の例として、タンタリウム(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、金(Au)、白金(Pt)、ステレス綱またはこれらの合金を挙げられる。WO01/84611及び大韓民国特許出願番号第2002−62648号とは異なり、前記重金属板は、中性粒子の透過経路としてのホールを有する必要がない。その理由は、前記重金属板はプラズマイオンと衝突してプラズマイオンを中性粒子に転換させる役目を遂行するが、生成された中性粒子の透過経路としては作用しないからである。前記重金属板との衝突によって生成された中性粒子は、前記プラズマ放電空間を横切って、前記プラズマ放電空間の下部に位置したプラズマリミッターに入射する。
【0023】
前記プラズマリミッターは、プラズマイオン及び電子の通過を妨害して、前記中性粒子を選択的に通過させる。プラズマイオン及び電子の通過を妨害するため、ホールまたはスリットを単純に設置するネガティブリミティング(negative limiting)と前記ホールまたはスリットに磁場または電場を印加して電荷を帯びたプラズマイオンまたは電子の移動方向を調節するポジティブリミティング(positive limiting)が使用できる。前記プラズマリミッターを通過した中性粒子は、処理室に収納された基板と衝突して、たとえば、前記基板の表面に存在する有機物の除去、フォトレジストの除去などを含む表面処理を遂行する。
【0024】
適正な表面処理を成就するためには、中性粒子の方向性が適切に調節される必要がある。例えば、表面処理によって所定のパターンを前記基板の表面に形成しようとする場合、中性粒子の方向性は非常に重要である。この場合、前記プラズマリミッターと前記処理室の間に、中性粒子の進行方向をコリメートするコリメータ(collimator)をさらに配置することが好ましい。前記コリメータは、一定の方向性を提供するために複数のホールを有する。
【0025】
本発明による中性粒子ビーム処理装置は、エージング、酸化膜形成及びクリーニングなどを含む多様な半導体工程に利用できる。本明細書で「半導体工程」と言うのは、半導体ウエハーや液晶基板等の被処理体上に半導体層、絶縁層または導電層を形成して、該当する被処理体上に半導体装置または前記半導体装置に接続される配線、電極などを含む構造体を形成するために実施される様々な工程を意味する。
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明による中性粒子ビーム処理装置の好ましい実施態様を示した斜視図である。図1に図示した装置は、下部が開放された反応チェンバー100、前記反応チェンバー100の開放された下部面に位置するプラズマリミッター200及び処理室300を含む。前記反応チェンバーの内部空間は、プラズマ放電空間101である。高周波数のエネルギーを導入するためのアンテナ102を前記放電空間101に配置して、ガス流入口104及びガス排出口105を前記反応チェンバー100の側面にそれぞれ配置する。前記反応チェンバー100の作動を下記に示す。まず、処理ガスがガス流入口104を通じて前記プラズマ放電空間101に流入して、そこで、前記アンテナ102を通じて供給された高周波数の電力によってプラズマ放電を経験し、その結果プラズマ103に転換される。生成されたプラズマの中で陽イオン(プラズマイオン)は、前記プラズマ放電空間101の上部に位置した重金属板106に誘導され、前記重金属板106との衝突によって中性粒子に転換される。ここで、前記重金属板106にマイナスのバイアス電圧を印加することによって、プラズマイオンは前記重金属板106へ容易に誘導される。
【0028】
前記重金属板106にマイナスのバイアス電圧を印加する場合、プラズマイオンは前記重金属板106に実質的に垂直に入射して、前記重金属板106と衝突する。重金属板106との衝突による中性粒子転換効率の向上及び衝突によるエネルギー損傷を防止するため、重金属板106の表面の中で前記プラズマイオンと衝突する面はポリッシングすることができる。前記重金属板106とプラズマイオンの弾性的衝突によって生成された中性粒子は、方向が転換され、前記プラズマ放電空間101を経由して前記プラズマリミッター200に入射する。
【0029】
前記プラズマリミッター200は、ホールまたはスリット201を有する。前記ホールまたはスリット201は、前記中性粒子の通過は許容するが、前記プラズマイオン及び電子の通過は妨害して、結果的に中性粒子だけが前記プラズマリミッター200を選択的に通過して前記処理室300に配置された基板301に到達するようになる。ここで、前記プラズマリミッター200の材質は特別に制限されないが、セラミックのような誘電体が好ましい。その理由は、前記プラズマリミッター200の側壁202と衝突する時、前記プラズマイオンまたは電子のエネルギーは吸収される。したがってプラズマイオンまたは電子による影響が最小化される。一方、前記プラズマリミッター200は、一定の方向性を有しない中性粒子と衝突してこれらのエネルギーを吸収することにより、一定の方向性を持たない中性粒子による影響も排除することができる。前記のホールまたはスリット201によるプラズマイオンまたは電子のネガティブリミティングは、ホールまたはスリット201の直径と深さに依存するのでこれらの適切な調節が要求される。
【0030】
プラズマイオン及び電子が前記プラズマリミッター200を通過することを排除するため、前記プラズマリミッター200の側壁に磁場または電場を印加するユニット203をさらに配置することができる。前記磁場または電場印加ユニット203は、プラズマイオンおよび電子の移動方向を変化させてプラズマイオンおよび電子が基板の表面に到達することを排除する。このようなリミティングは「ポジティブリミティング(positivie limiting)」と呼ばれる。
【0031】
前記「ネガティブリミティング」または「ポジティブリミティング」によってプラズマイオン及び電子の干渉から保護された中性粒子は、前記処理室300に収納された基板301の表面処理を遂行する。例えば、前記中性粒子は基板(例えば、ウエハー)301上に吸着していたり残留したりしている副産物と衝突してこの副産物を除去する。ここで、中性粒子は帯電した粒子ではないので基板301に損傷を加えない。一方、基板301の表面処理効率は、処理温度が上昇するにつれて増加する。したがって、前記被処理体の表面温度を伝導または輻射などで増加させた方が良い。未説明の参照番号302は、搭載台であり昇降軸(未図示)に連結された昇降デバイスの作動によって上下に昇降することができ、新たに処理する基板301を搬入して処理が完了した基板301を搬出することができる。一方、前記搭載台は、モーター(未図示)によって回転することができる。結果的に、搭載台302の回転は、中性粒子がウエハーの表面に局所的に導入されて発生する、未処理領域(Blind spot)の形成を防止する。未説明の参照番号303は、ガス排出口で、真空ポンプ(未図示)に連結されて処理室300を1mTorr程度の圧力で維持されるようにする。
【0032】
本発明による中性粒子ビーム処理装置に使用される処理ガスの選択は、処理目的によって当該分野で通常の知識を持った者が適切に選択することができる。例えば、基板301上の有機物質を洗浄しようとする場合、窒素ガス、窒素と酸素の混合物、窒素と空気の混合物、不活性ガス、または窒素と不活性ガスの混合物を選択することができる。経済的な側面を考慮すると、窒素、窒素と酸素の混合物、または窒素と空気の混合物がより好ましい。レジストの除去または有機フィルムの蝕刻が要求される場合、酸素、オゾン、空気、二酸化炭素(CO)、蒸気または酸化窒素(NO)を使用する方が良い。また、シリコンを蝕刻する場合、CFのようなフルオル化気体(fluorine−based gas)または塩素系気体を窒素または不活性気体とともに使用するのが効果的である。金属酸化物を還元させる場合、水素またはアンモニアのような還元性気体を使用することが可能である。
【0033】
前記の図1は、誘導結合型プラズマ放電によるプラズマの生成を例示しているが、プラズマ放電空間で放電によるプラズマイオンの生成と生成されたプラズマイオンと重金属板との弾性的衝突による中性粒子の生成が伴って起きるという条件下に、蓄電容量性プラズマ放電、プラズマウエーブを利用したヘリコン放電とマイクロウエーブプラズマ放電を広く採用することができる。前記プラズマ放電方式の多様な応用と共に、前記重金属板106にマイナスのバイアスを印加する代りに反応チェンバー100にプラスのバイアスを印加してプラズマイオンを前記重金属板106に誘導することができる。マイナスのバイアスの印加は、プラス電荷を帯びたプラズマイオンを引力によって前記重金属板106に誘導するもので、プラスのバイアスの印加は斥力によってプラズマイオンを前記重金属板106に誘導するものである。
【0034】
本発明による中性粒子ビーム処理装置は、前記処理ガスの中性粒子ビームと組み合わせて、前記中性粒子による表面洗浄を助ける添加ガスをさらに処理室300に供給することができる。このような事項は、PCT/KR03/02146号に詳細に記載している。
【0035】
前記の説明で、中性粒子ビーム処理装置は、前記重金属板106をプラズマ放電空間101の上部に別途に具備することを例示しているが、前記反応チェンバー100の内部上部面を重金属材質で製作し、または重金属でコーティングして、それを重金属板として利用することができる。その例を図2に図示している。図2で、重金属板106を別途に設置しないで、反応チェンバー100の内部上部面を重金属でコーティングして重金属板106として使用し、そこにマイナスのバイアス電圧を印加し、プラズマ放電空間101で生成されたプラズマ103が、重金属板106として作用する内部上部面と衝突して中性粒子を生成する。ここで、前記上部面は、絶縁体107’,107”によって反応チェンバー100の隣り合う面と電気的に絶縁されている。未説明の参照番号は、図1の中性粒子ビーム処理装置で説明したものと同じである。
【0036】
図3は、本発明による中性粒子ビーム処理装置のまた他の好ましい実施態様を図示したものである。図3の装置は、下部が開放された反応チェンバー100、前記反応チェンバー100の開放された下部面に位置するプラズマリミッター200、前記プラズマリミッター200の下部に位置した処理室300及び前記プラズマリミッター200と処理室300の間に位置したコリメータ400を含んで成り立っている。前記反応チェンバー100、前記プラズマリミッター200及び前記処理室300は、図1と等しいので説明を省略する。前記プラズマリミッター200と処理室300の間に位置したコリメータ400は、前記プラズマリミッター200を通過した中性粒子をコリメートして中性粒子の方向性を増進させる。前記コリメータ400は、複数のホール401を有する。前記ホール401の側壁402と1回以上衝突する中性粒子は、エネルギーが吸収されてそれ以上自身の役目を遂行することができない。したがって、前記コリメータ400を通過する中性粒子の中でホール401を垂直に貫通する中性粒子が表面処理に利用することができ、中性粒子の方向性が前記コリメータ400によって増進される。
【0037】
図4は、前記プラズマリミッターと前記コリメータの好ましい組み合わせを示した斜視図である。図4で、前記プラズマリミッター200は、セラミックス材質の平板204の間に、スリット201を有し、前記コリメータ400は、前記プラズマリミッター200のスリット201に対応する位置に形成されたホール401を有する。前記プラズマリミッター200に形成されたスリット201は、中性粒子の貫通効率を高め、プラズマイオン及び電子は磁場印加手段としての磁石203によってスリット201を通過することができない。そして、前記コリメータ400に形成されたホール401は、中性粒子の方向性を向上させる。これらの組み合わせによってプラズマイオン及び電子の干渉が排除されて、一定の方向性を持った中性粒子が基板の表面処理を遂行する。前記組み合わせによって方向性の向上した中性粒子は、リゾグラフィーに有用に使用することができる。例えば、前記中性粒子ビームは、ステンシルマスクを利用して、基板301上に存在するフォトレジストの除去に利用することができる。一方、図4で前記プラズマリミッター及びコリメータは、六面体であることを提示しているが、これは説明するためのものであって、円筒形、楕円形等を含む多様な形態に変形することができる。
【0038】
上述のように、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更しなくても他の具体的な形態で実施することができるということを理解することができるであろう。したがって、記述した実施例はすべての面で例示的なもので、限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって現わされ、特許請求の範囲の意味及び範囲そして、その等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による中性粒子ビーム処理装置の好ましい具現例を示した断面図である。
【図2】本発明による中性粒子ビーム処理装置の他の好ましい具現例を示した断面図である。
【図3】本発明による中性粒子ビーム処理装置のまた他の好ましい具現例を示した断面図である。
【図4】本発明の中性粒子ビーム処理装置に使用されるプラズマリミッターとコリメータの好ましい組み合わせを示した斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ放電のために処理ガスをプラズマに転換させるプラズマ放電空間と、衝突によってプラズマイオンを中性粒子に変換させる重金属板と、プラズマイオン及び電子の通過は妨害して前記重金属板と前記プラズマイオンの衝突によって生成された中性粒子は通過させるプラズマリミッターと、表面処理を要する基板を収納する処理室と、を含んで成り立った中性粒子ビーム処理装置において、前記プラズマ放電空間が前記重金属板と前記プラズマリミッターの間にサンドイッチされたことを特徴とする中性粒子ビーム処理装置。
【請求項2】
前記プラズマリミッターが、中性粒子を選択的に通過させてプラズマイオン及び電子の通過を妨害するホールまたはスリットを有する、請求項1に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項3】
前記プラズマリミッターが、前記ホールまたはスリットに磁場を印加する磁気ユニットまたは電場を印加する電気ユニットをさらに含む、請求項2に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項4】
前記重金属板を、前記プラズマ放電空間の上部に配置し、前記プラズマリミッターは前記プラズマ放電空間の下部に配置して、前記プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンはバイアス電圧が印加された前記重金属板に誘導された後、前記重金属板と衝突して中性粒子を生成して、生成された中性粒子は前記プラズマリミッターに入射する、請求項1に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項5】
前記プラズマリミッターを通過した中性粒子をコリメートするコリメータを前記プラズマリミッターと前記処理室の間にさらに含む、請求項1に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項6】
前記コリメータが、中性粒子のコリメートを遂行するために複数のホールを有する、請求項5に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項7】
a)内部空間、側面に配置されたガス流入口及びガス排出口、および重金属板を含む、下部が開放された反応チェンバーであって、前記反応チェンバーの内部空間はプラズマ放電空間で、前記重金属板は前記プラズマ放電空間の上部に配置して、前記ガス流入口を通じてプラズマ放電空間に導入した処理ガスはプラズマ放電のためにプラズマイオンに転換され、生成されたプラズマイオンは重金属板と衝突して中性粒子に転換される反応チェンバーと、
b)前記反応チェンバーの下部に位置したプラズマリミッターであって、前記プラズマリミッターはホールまたはスリットを有し、該ホールまたはスリットを通じて前記中性粒子は通過するが、前記ホールまたはスリットによってプラズマイオン及び電子の通過は妨害されるプラズマリミッターと、
c)前記プラズマリミッターの下部に位置して、前記中性粒子によって表面処理が遂行される基板を収納する処理室と、
を含む、中性粒子ビーム処理装置。
【請求項8】
前記プラズマリミッターが、前記ホールまたはスリットに磁場を印加する磁気のユニットまたは電場を印加する電気ユニットをさらに含む、請求項7に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項9】
前記プラズマリミッターを通過した中性粒子をコリメートするコリメータを前記プラズマリミッターと処理室の間にさらに含む、請求項7に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項10】
前記コリメータが、中性粒子のコリメートを遂行するために複数のホールを有する、請求項9に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項11】
前記プラズマイオンを重金属板に誘導するため、バイアス電圧を前記重金属板に印加する、請求項7に記載の中性粒子ビーム処理装置。
【請求項12】
a)プラズマ放電によって処理ガスをプラズマに転換させるプラズマ放電空間を、プラズマイオンと衝突して前記プラズマイオンを中性粒子に転換させる重金属板とプラズマイオン及び電子の通過は妨害して前記重金属板と前記プラズマイオンの衝突によって生成された中性粒子の通過は許容するプラズマリミッターの間に配置する工程と、
b)前記プラズマ放電空間で、プラズマ放電により処理ガスをプラズマに転換させる工程と、
c)前記重金属板に印加されたバイアス電圧の助けにより、前記プラズマ放電空間で生成されたプラズマイオンを前記重金属板に誘導し、前記プラズマイオンと前記重金属板の衝突によって中性粒子を生成する工程と、
d)前記重金属板で反射した中性粒子を前記プラズマ放電空間を横切って前記プラズマリミッターを通過させる工程と、
e)前記プラズマリミッターを通過した中性粒子を基板の表面と接触させて基板の表面処理を遂行する工程と、
を含む、中性粒子を利用した表面処理方法。
【請求項13】
前記プラズマリミッターが、ホールまたはスリットを有し、該ホールまたはスリットを前記中性粒子は通過するが、プラズマイオン及び電子の通過は妨害する、請求項12に記載の中性粒子を利用した表面処理方法。
【請求項14】
前記プラズマリミッターが、前記ホールまたはスリットに磁場を印加する磁気ユニットまたは電場を印加する電気ユニットをさらに含む、請求項13に記載の中性粒子を利用した表面処理方法。
【請求項15】
d)工程とe)工程の間に、前記プラズマリミッターを通過した中性粒子を、複数のホールを有するコリメータを通過させて中性粒子をコリメートする工程をさらに含む、請求項12に記載の中性粒子を利用した表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515754(P2007−515754A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541045(P2006−541045)
【出願日】平成16年11月27日(2004.11.27)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003099
【国際公開番号】WO2005/053365
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(502391862)セムテクノロジー カンパニー リミテッド (4)
【出願人】(506181265)コリア ベーシック サイエンス インスチチュート (3)
【Fターム(参考)】