説明

中空成形体及び中空成形体の製造方法

【課題】成形加工性に優れる溶融張力の高いエチレン系重合体からなり機械的特性、特に耐環境応力亀裂性と剛性、衝撃強度のバランスに優れ、かつ、クリーン性、熱安定性に優れる中空成形体を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(F)を満足するエチレン系重合体よりなる中空成形体を用いる。(A)密度(d)が910〜970kg/m、(B)MFRが0.01〜1g/10分、(C)末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個以下、(D)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))とMFRの関係が、MS160>90−130×log(MFR)、(E)190℃で測定した溶融張力(MS190(mN))とMS160の関係が、MS160/MS190<1.8、(F)流動の活性化エネルギー[E(kJ/mol)]と密度の関係が127−0.107d<E<88−0.060d

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶融張力が高いエチレン系重合体からなる中空成形体に関するものである。さらに詳細には、従来より知られているエチレン系重合体製中空成形体に比べて、成形加工性に優れる溶融張力の高いエチレン系重合体からなり機械的特性、特に耐環境応力亀裂性(以下、ESCRと記す。)と剛性、衝撃強度のバランスに優れ、かつ、クリーン性、熱安定性に優れる中空成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種工業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、射出成形体、及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。特に安価・軽量であり、成形加工性、耐薬品性・リサイクル性に優れるなどの理由からポリエチレン系樹脂からなる中空成形体が様々な用途に用いられている。これら各種の中空成形における加工特性を改良する試みは、成形加工がポリエチレンを溶融状態にして実施されることから、溶融流動性(易押出性)、溶融延伸性、溶融張力(以下、MSと記す。)などの各種の溶融特性の改良に重点が置かれて鋭意検討がなされてきている。特に中空成形は溶融樹脂膜(パリソン)をダイから下向きに押し出し、金型で挟み込むことにより成形される。このため、樹脂が過度に垂れ下がらないようにするため、とりわけ高いMSが必要となる。
【0003】
MSが高いエチレン重合体としては、高圧ラジカル法で製造される低密度ポリエチレン(LDPE)が知られている。しかし、LDPEは流動の活性化エネルギー(以下、Eと記す。)が大きく、溶融粘度の温度依存性が大きいため、特定の成形加工温度範囲においてのみ高いMSを有し、成形加工において、加工する重合体に適した中空成形機を選定する必要があった。また、製造できる密度範囲が限定されるため、大型の中空成形品とした場合には剛性が不足するため、小型の中空成形品にのみ使用されその用途が限られていた。
【0004】
また、チーグラー触媒またはメタロセン触媒で得られるエチレン系重合体は、Eは小さいものの、MSが低く中空成形体とするには成形加工性に大きな課題を有した。
【0005】
そして、中空成形体とする際の成形加工性を改良したエチレン系重合体としては、例えば、(イ)特定のメタロセン触媒を用い、特定の重合条件下で得られた長鎖分岐を有するエチレン−α―オレフィン共重合体(例えば特許文献1参照。)、(ロ)特定のメタロセン触媒で得られた、Eが60kJ/mol以上であるエチレン−α―オレフィン共重合体(例えば特許文献2参照。)等が提案されている。
【0006】
また、Eが低く、MSが高いことから、幅広い成形加工温度範囲で安定した中空成形時の加工性を有するエチレン系重合体として、Cr系触媒を用いて製造されたエチレン重合体が知られている。
【0007】
しかし、特許文献1,2に提案されたエチレン系共重合体は、LDPEと同様に、E、溶融粘度の温度依存性が共に大きくその改良効果が不十分であるため、中空成形体とする際の成形加工において、温度を厳密にコントロールすることが依然として必要であった。また、Cr系触媒を用いて製造されたエチレン重合体においては、エチレン重合体中に末端ビニル基が1,000個の炭素原子当たり0.3個以上存在することから溶融加工時の熱履歴により黄変が発生する、等の熱安定性的な課題があった。そして、これらエチレン系重合体からなる中空成形体は、これらエチレン系重合体が中空成形に適していないことから、その成形加工時における成形性、剛性、耐衝撃性、ESCRに代表される機械的物性に課題を有するものであった。また、高純度な内容物を充填する容器の用途においては、よりクリーンなポリエチレン樹脂が要求されるようになってきている。特に、医薬品容器用途、試薬容器用途、半導体向け高純度薬品容器用途におけるポリエチレン樹脂においては、その充填される内容物の純度の観点から、よりクリーンなポリエチレン樹脂が要求され、添加剤類の減少ないし無添加であることが要求される上に、重合触媒等に由来する灰分が少ないことが必要になっている。
【0008】
この問題を解決する方法としてポリエチレン樹脂由来の微粒子、添加剤を抑える容器の提案がされている(例えば特許文献3参照。)が、重合触媒成分由来の灰分の影響に対する改良が不十分である上に、ESCRや成形性に関する規定がなく、必ずしも満足出来る高純度薬品容器を得られるものではない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5272236号明細書
【特許文献2】特開2004−292772号公報
【特許文献3】特開平7−257540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決し、末端ビニル基数が少なく熱安定性に優れると共に、Eが低く、MSが高いエチレン系重合体からなることから、均一延伸性、耐ドローダウン性、スウェルに代表される中空成形に必要な加工性と、剛性、耐衝撃性、ESCRに代表される機械的物性がともに優れる中空成形体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的に対して鋭意検討した結果、末端ビニル基数が少なく、Eが低く、MSが高い特定のエチレン系重合体よりなる中空成形体が、成形加工時の成形性に優れ、保存貯蔵している内容物へのポリエチレン樹脂由来の微粒子や重合触媒成分由来の金属溶出成分が少なく、剛性・耐衝撃性・ESCRに代表される機械的物性にも優れるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、エチレンから導かれる繰り返し単位、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなり、下記(A)〜(F)を満足するエチレン系重合体よりなることを特徴とする中空成形体に関するものである。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が910kg/m以上970kg/m以下である。
(B)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上1g/10分以下である。
(C)末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個以下である。
(D)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))とMFRの関係が、下記式(1)を満足する。
【0013】
MS160>90−130×log(MFR) (1)
(E)190℃で測定した溶融張力(MS190(mN))とMS160の関係が、下記式(2)を満足する。
【0014】
MS160/MS190<1.8 (2)
(F)流動の活性化エネルギー[E(kJ/mol)]と密度の関係が、下記式(3)を満足する。
【0015】
127−0.107d<E<88−0.060d (3)
【0016】
本発明の中空成形体を構成するエチレン系重合体は、エチレンから導かれる繰り返し単位、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなり、上記(A)〜(F)を満足するエチレン系重合体である。
【0017】
該エチレン系重合体としては、エチレンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン単独重合体、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。ここで、炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とは、単量体である炭素数3〜8のα−オレフィンから誘導され、エチレン−α−オレフィン共重合体に含有される単位であり、炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等が挙げられる。これら炭素数3〜8のα−オレフィンの少なくとも2種類を併用してもよい。そして、α−オレフィンの炭素数が8を越える場合、エチレン系重合体の融点、結晶性が低くなるために中空成形体の耐熱性、剛性が劣るものとなる。
【0018】
本発明の中空成形体を構成するエチレン系重合体は、(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が、910kg/m以上970kg/m以下のものであり、好ましくは910kg/m以上940kg/m以下である。ここで、密度(d)が910kg/m未満の場合、エチレン系重合体の融解温度が低くなり耐熱性に乏しい中空成形体となる。一方、970kg/mを超える場合、中空成形体の耐熱性、剛性は優れるが、衝撃強度が劣るものとなる。
【0019】
該エチレン系重合体は、(B)190℃で、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下、MFRと記す。)が、0.01g/10分以上1g/10分以下のものである。ここで、MFRが0.01g/10分未満である場合、中空成形体とする際の成形加工時に押し出し機の負荷が大きくなり、生産性が低下する。一方、1g/10分を超える場合、溶融張力が小さくなり、強度が低下した中空成形体しか得られない。
【0020】
該エチレン系重合体は、(C)末端ビニル数が1000炭素原子当たり0.2個以下であり、好ましくは0.1個以下である。ここで、末端ビニル数が1000炭素原子当たり0.2個を越える場合、中空成形体とする際の成形加工時に熱劣化等が発生しやすく、得られる中空成形体に黄変等の問題が生じてくる。
る。
【0021】
ここで、本発明における末端ビニル数の測定法としては、エチレン系重合体を熱プレスした後、氷冷して調製したフィルムをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により4000cm−1〜400cm−1の範囲で測定し、下式により算出した。
【0022】
1000炭素原子当たりの末端ビニル数(個/1000C)=a×A/L/d
(式中、aは吸光光度係数、Aは末端ビニルに帰属される909cm−1の吸光度、Lはフィルムの厚み、dは密度を示す。なお、aは、H−NMR測定より、1000炭素原子当たりの末端ビニル数を確認したサンプルを用いて作成した検量線から求めた。H−NMR測定は、NMR測定装置(日本電子社製、商品名GSX400)を用い、重水素化ベンゼンとo−ジクロロベンゼンの混合溶媒中、130℃において実施した。1000炭素原子当たりの末端ビニル数は、メチレンに帰属されるピークと末端ビニルに帰属されるピークの積分比から算出した。各ピークは、テトラメチルシランを基準(0ppm)として、化学シフトが1.3ppmのピークをメチレン、4.8〜5.0ppmのピークを末端ビニルと帰属した。)
該エチレン系重合体は、(D)160℃で測定した溶融張力(以下、MS160と記す。)とMFRの関係が下記式(1)を満足するものであり、好ましくは下記式(4)を満足するものである。
【0023】
MS160>90−130×log(MFR) (1)
MS160>110−130×log(MFR) (4)
一般的にエチレン系重合体を中空成形、押出成形する場合、成形ダイより押し出された状態の溶融樹脂は自重による垂れ下がり(ドローダウン)、変形等が生じ、成形体の肉厚、形状に支障を来す。特に、プラスチックドラム缶のような大型中空成形分野においては、パリソンの重量が数kg〜数十kgにもおよぶことから自重による垂れ下がり等が大きな問題となるケースが多く、耐ドローダウン性に優れるエチレン系重合体が中空成形性、押出成形性に優れるものとされている。ここで、MFRとMS160の関係が上記式(1)を満足しない場合、中空成形体とする際のドローダウンが大きくなり、ブローアップ後の製品形状の制御が困難となったり、特殊なダイギャップの制御が必要となり、その成形性が劣るばかりか、寸法が精度良く制御された中空成形体を得ることができなくなる。
【0024】
なお、本発明におけるMS160は、長さが8mm,直径が2.095mmであるダイスを用い、流入角90°で、せん断速度10.8s−1、延伸比47、測定温度160℃の条件下で測定した値であり、最大延伸比が47未満の場合は、破断しない最高の延伸比で測定した値をMS160とした。
【0025】
該エチレン系重合体は、(E)190℃で測定した溶融張力(以下、MS190と記す。)とMS160の関係が下記式(2)を満足するものであり、好ましくは下記式(5)を満足するものである。
【0026】
MS160/MS190<1.8 (2)
MS160/MS190<1.7 (5)
を満たす関係にある。
【0027】
ここで、MS160とMS190の関係が上記式(2)を満足しない場合、エチレン系重合体は温度によってその溶融張力が大きく変化することから、中空成形体とする際の成形加工温度の厳密な調節が必要となり、ひいては成形可能範囲が狭くなるばかりか、寸法が精度良く制御された中空成形体を得ることができなくなる。
【0028】
なお、本発明におけるMS190は、長さが8mm,直径が2.095mmであるダイスを用い、流入角90°で、せん断速度10.8s−1、延伸比47、測定温度190℃の条件下で測定した値であり、最大延伸比が47未満の場合は、破断しない最高の延伸比で測定した値をMS190とした。
【0029】
該エチレン系重合体は、(F)流動の活性化エネルギー(kJ/mol)(以下、Eと記す。)と密度との関係が、下記式(3)を満足するものであり、下記式(6)を満足するものであることが好ましい。
【0030】
127−0.107d<E<87−0.060d (3)
127−0.107d<E<88−0.060d (6)
ここで、Eが(127−0.107d)以下である場合、中空成形体とする際の加工性に問題が生じる。一方、Eが(88−0.060d)以上である場合、溶融粘度の温度依存性が大きくなるため、成形加工温度の厳密な調節が必要となり、ひいては成形可能範囲が狭くなる。
【0031】
なお、本発明におけるEは、160℃〜230℃の温度範囲における動的粘弾性測定を行い、得られるシフトファクターをアレニウス式に代入することにより求めることができる。
【0032】
該エチレン系重合体は、機械強度に優れる中空成形体となることから(G)重量平均分子量/数平均分子量(以下、M/Mと記す。)が2以上6以下であることが好ましく、より2以上5以下であることが好ましい。なお、M/Mは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリエチレン換算値である重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)を測定することにより算出することが可能である。
【0033】
本発明の中空成形体を構成する(A)〜(F)、好ましくは更に(G)を満足するエチレン系重合体としては、該エチレン系重合体の範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、如何なる方法により得られたものであってもよく、例えば後述する本願実施例の製造条件そのもの、あるいは条件因子の微調整によって任意に作り分けることが可能である。
【0034】
より具体的には、例えばメタロセン化合物として、2つのシクロペンタジエニル基が2種類以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されているか、もしくは2個以上の原子の連鎖からなる架橋基で架橋されている架橋型ビスシクロペンタジエニルジルコニウム錯体(以下、成分(a)と記す。)と、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(b)と記す。)を用いたメタロセン触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
【0035】
成分(a)の具体例としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ブタン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、シス−2−ブテン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。
【0036】
成分(b)の具体例としては、例えばジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0037】
また、成分(a)に対する成分(b)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
【0038】
そして、成分(a)と成分(b)を用いたメタロセン触媒としては、例えば成分(a)と成分(b)と有機アルミニウム化合物(以下、成分(c)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)とアルミノオキサン(以下、成分(d)と記す。)からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)とプロトン酸塩(以下、成分(e)と記す。)、ルイス酸塩(以下、成分(f)と記す。)または金属塩(以下、成分(g)と記す。)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;、成分(a)と成分(b)と成分(d)と無機酸化物(以下、成分(h)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と成分(h)と成分(e)、成分(f)、成分(g)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)と粘土鉱物(以下、成分(i)と記す。)と成分(c)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と有機化合物で処理された粘土鉱物(以下、成分(j)と記す。)からなる触媒を例示することができ、好ましくは成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒を用いることができる。
【0039】
ここで、成分(i)および成分(j)として用いることが可能な粘土鉱物としては、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子を挙げることができ、粘土鉱物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有することが挙げられる。この点で、シリカやアルミナのような三次元構造を持つ金属酸化物と大きく異なる。これらの粘土鉱物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25から0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6から0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土鉱物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、上記粘土鉱物は複数混合して用いることもできる。
【0040】
成分(j)における有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することをいう。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩を例示することができる。
【0041】
成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒は、有機溶媒中、成分(a)と成分(b)と成分(j)を接触させることによって得ることが可能であり、成分(a)と成分(j)の接触生成物に成分(b)を添加する方法;成分(b)と成分(j)の接触生成物に成分(a)を添加する方法;成分(a)と成分(b)の接触生成物に成分(j)を添加する方法;成分(j)に成分(a)と成分(b)の接触生成物を添加する方法を例示することができる。
【0042】
接触溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタンもしくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、1,4−ジオキサン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを例示することができる。
【0043】
接触温度については、0〜200℃の間で選択して処理を行うことが好ましい。
【0044】
各成分の使用量は、成分(j)1gあたり成分(a)が、0.0001〜100mmol、好ましくは0.001〜10mmolである。
【0045】
このようにして調製された成分(a)と成分(b)と成分(j)の接触生成物は、洗浄せずに用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。また、成分(a)または成分(b)がジハロゲン体の時、さらに成分(c)を添加することが好ましい。また、成分(j)、重合溶媒およびオレフィン中の不純物を除去することを目的に成分(c)を添加することができる。
【0046】
本発明の中空成形体を構成するエチレン系重合体を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンである場合、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0047】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、重合に用いる溶媒は一般に用いられる有機溶媒であればいずれでもよく、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ガソリン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0048】
本発明の中空成形体を構成するエチレン系重合体は、本発明の目的を逸脱しないことを限度に各種目的に応じて他の任意の配合成分を配合していてもよく、それらの付加的配合成分としては、通常のポリオレフィン用添加剤や配合材等として用いられるものでよく、例えば結晶化核剤、酸化防止剤、中和剤、耐候性改良剤、気泡防止剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、分子量調整剤(過酸化物等)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種助剤、他の各種樹脂及びエラストマー、フィラー、着色剤等を挙げることができる。この中でも結晶化核剤、分散剤、滑剤等表面光沢を改良する効果のあるものは光沢を更に向上させる手段として有効であり好ましい。
【0049】
また、これら成分の配合方法としては、中空成形体を製造する際に配合してもかまわないが、一般的には中空成形体とする前に該エチレン系重合体と配合することが好ましく、その方法としては、例えば添加剤をドライブレンドする方法;予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチペレットを使用する方法などがある。上記機械的混合或いは溶融混練に用いられる混合機或いは混練機としては、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は一般に100〜300℃で行われる。
【0050】
本発明の中空成形体は、該エチレン系重合体を中空成形に供することにより製造することが可能であり、その際の成形機としては、公知のブロー成形機を用いて成形することができ、その成形方法としては、例えば単層ダイレクトブロー成形方法、多層ダイレクトブロー成形方法、アキュームレーター付き単層ブロー成形方法などが挙げられる。単層ダイレクトブロー成形方法とは、円筒状溶融樹脂を押出後に金型を閉じて空気圧力により膨らまし、冷却固化する一般的なダイレクトブロー成形方法であり、本発明の中空成形体を単層ダイレクトブロー成形法により得る際の製造条件としては、例えば成形温度120〜250℃、吹込圧力2〜10kg/cm、ブロー比1.2〜5.0を挙げることができ、該製造条件により、機械強度、耐熱性、表面性に優れる中空成形体を効率よく得ることが可能となる。特に、クリーンルーム内に設置したブロー成形機を使用し、フィルターで微粒子を取り除いたエアーをブローエアーに用いたブロー成形方法はクリーンな容器を製造するのに好ましい。容器 形状および容器の容量は、特に限定はないが、内容物のバリアー性や容器の強度を補強するために、本発明のポリエチレン樹脂を内層に使用し、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリアミド樹脂等を中間層に使用したり、FRP等を外層にして補強容器 としてもよい。
【0051】
また、充填する薬品の種類によっては遮光性容器にする必要があり、本発明のポリエチレン樹脂を内層とし、有機顔料あるいは無機顔料等の遮光性材料を含む層を少なくとも一層含む多層容器とすることもできる。
【0052】
本発明の中空成形体は、特に容器として適したものであり、化粧品、シャンプー、リンス、台所洗剤、食品、医療、試薬、診断薬、玩具等に用いる小型中空成形容器、ドラム缶などの大型中空成形容器として用いることができる。そして、特に剛性、耐衝撃性、ESCRに代表される機械的物性にも優れるものであることから容量50l以上、更に好ましくは容量100l以上を有する中空成形容器として適したものである。
【発明の効果】
【0053】
本発明の中空成形体は、従来のポリエチレン製中空成形体に比べ、製品の肌が良好であり、かつ高純度薬品を充填した場合、薬品性に優れ、その機械強度を長期間安定して保持することが可能であり、半導体装置分野や精密工業部品分野等において部品の洗浄、エッチング等また、医療用、食品用に要求される純度の高い溶剤の容器、大型容器等に好適な成形加工時の成形性に優れ、剛性・耐衝撃性・ESCRに代表される機械的物性にも優れた中空成形体に関するものである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、断りのない限り用いた試薬等は市販品を用いた。
【0055】
有機化合物で処理された粘土鉱物(成分(j))の調製、エチレン系重合体製造用触媒の調製、エチレン系重合体の製造および溶媒精製は全て不活性ガス雰囲気下で行った。有機化合物で処理された粘土鉱物(成分(j))の調製、エチレン系重合体製造用触媒の調製、エチレン系重合体の製造に用いた溶媒等は全て予め公知の方法で精製、乾燥、脱酸素を行ったものを用いた。成分(a)および成分(b)は公知の方法により合成、同定したものを用いた。トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714mol/l)は東ソーファインケム(株)製を用いた。
【0056】
さらに、実施例におけるエチレン系重合体の諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0057】
〜分子量および分子量分布の測定〜
重量平均分子量(M)、数平均分子量(M)および重量平均分子量と数平均分子量の比(M/M)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されている。なお、MおよびMは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0058】
〜密度の測定〜
密度(d)は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0059】
〜末端ビニル数の測定〜
末端ビニル数は、Perkin Elmer社製SPECTRUM ONEフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて、エチレン系重合体を熱プレスした後、氷冷して調製したフィルムを4000cm−1〜400cm−1の範囲で測定し、下式を用い算出した。
1000炭素原子当たりの末端ビニル数(個/1000C)=a×A/L/d
(式中、aは吸光光度係数、Aは末端ビニルに帰属される909cm−1の吸光度、Lはフィルムの厚み、dは密度を示す。なお、aは、H−NMR測定より、1000炭素原子当たりの末端ビニル数を確認したサンプルを用いて作成した検量線から求めた。H−NMR測定は、日本電子社製のGSX400を用い、重水素化ベンゼンとo−ジクロロベンゼンの混合溶媒中、130℃において実施した。1000炭素原子当たりの末端ビニル数は、メチレンに帰属されるピークと末端ビニルに帰属されるピークの積分比から算出した。各ピークは、テトラメチルシランを基準(0ppm)として、化学シフトが1.3ppmのピークをメチレン、4.8−5.0 ppmのピークを末端ビニルと帰属した。)
溶融張力(MS160、MS190)および流動の活性化エネルギー(E)の測定に用いたエチレン系重合体は、予め耐熱安定剤としてイルガノックス1010TM((株)チバスペシャリティケミカルズ製)1,500ppm、イルガフォス168TM((株)チバスペシャリティケミカルズ製)1,500ppmを添加したものを、インターナルミキサー((株)東洋精機製作所製、商品名:ラボプラストミル)を用いて、窒素気流下、190℃、回転数30rpmで30分間混練したものを用いた。
【0060】
〜流動の活性化エネルギーの算出〜
流動の活性化エネルギー(E)は、円板−円板レオメーター((株)アントンパール製、商品名:MCR−300)を用い、150℃、170℃、190℃の各温度で角速度0.1〜100rad/sの範囲のせん断貯蔵弾性率G’、せん断損失弾性率G”を求め、基準温度150℃での横軸のシフトファクターを求め、アレニウス型の式により計算した。
【0061】
〜溶融張力の測定〜
溶融張力は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計((株)東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mmのダイスを流入角が90°になるように装着し測定した。MS160は、温度を160℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)をMS160とした。最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)をMS160とした。また、温度を190℃に設定し同様の方法で測定した荷重(mN)をMS190とした。
【0062】
〜熱安定性の評価〜
エチレン系重合体の熱安定性は、エチレン系重合体を耐熱安定剤無添加で、インターナルミキサー((株)東洋精機製作所製、商品名:ラボプラストミル)を用いて、窒素気流下、190℃、回転数30rpmで30分間混練した後ペレット化したものを、120℃に設定したオーブンに96時間放置し、JIS K 7105に記載された方法で黄変度(ΔYI)を計算することにより評価した。ΔYIは下記式により求めた黄色度の変化量であり、ΔYIが小さくなるほど熱安定性が良好になる。
【0063】
ΔYI=YI−YI
(式中、YIはオーブン中での加熱処理後の黄色度であり、YIはオーブン中での加熱前の黄色度である。)
〜100l容器の成形とその評価〜
115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて、シリンダ温度220〜230℃、厚み5mm、容器容積100lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0064】
〜成形性〜
上記の成形で成形可能なものを○、成形できないものを×とした。
【0065】
〜落下強度〜
上記の成形で得られた100l容器に下記の薬品を充填後、50℃で1ケ月放置した後、薬品を取り出し、水で洗浄した後、同容器に水を満液まで充填して、密栓した後、3mの高さより容器の底面を下にして垂直に落下させ、10個の容器の落下試験を行った。薬品は、下記のものを用いた。目視観察により割れがないものを○、1個の容器でも割れが発生したものを×とした。
【0066】
過酸化水素水:三菱瓦斯化学社製 特級試薬過酸化水素水(31%)
弗化水素酸:キシダ化学社製 特級試薬弗化水素酸(46%)
硫酸:和光純薬社製 特級試薬硫酸(98%)
〜500ml容器の成形とその評価〜
65mmφの押出スクリューを有する3種3層のブロー成形機((株)プラコー製)を用いて、吹き込み空気口に0.2μmのフィルターを装着して、シリンダ温度160〜180℃、厚み1.5mm、容器容積500mlの容器を成形し、表面粗さと微粒子数を測定した。
【0067】
〜成形品の表面粗さ〜
上記の成形で得られた容器の内側の表面粗さRa値(μm)をデジタル顕微鏡((株)キーエンス製超深度形状測定顕微鏡VK−8550)を使用して測定した。
【0068】
〜微粒子数の測定〜
上記の成形で得られた容器を0.1μmのフィルターで濾過した下記薬品で十分洗浄した後、容器内に薬品を充填した。これを40℃で一定期間放置した後、HIAC/ROYCO社製液体微粒子カウンター・シリーズ4100で、粒子径が0.5μm以上の微粒子の数を測定した。全ての操作は、クラス1000のクリーンルーム内で行った。
【0069】
純水
過酸化水素水:三菱瓦斯化学社製 特級試薬過酸化水素水(31%)
弗化水素酸:キシダ化学社製 特級試薬弗化水素酸(46%)
硫酸:和光純薬社製 特級試薬硫酸(98%)
実施例1
[エチレン系重合体製造触媒の調製]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(成分(a))63mg(160μmol)をヘキサン17.6mLに懸濁させ、トリイソブチルアルミニウム(成分(c))のヘキサン溶液(0.714M)22.4mLを添加し、成分(a)と成分(c)の接触生成物を得た。この接触生成物に実施例1[有機化合物で処理された粘土鉱物{成分(j)}の調製]で調製した変性ヘクトライト(成分(l))4.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した後、静置して上澄み液を除去、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.03M)で洗浄した。さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加して触媒スラリー(100g/L)とした。
【0070】
上記で調製した触媒スラリーに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドに対して5mol%のジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(成分(b))5.6mg(8.4μmol)とヘキサン6.7mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)1.18mLからなる溶液を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.03M)で洗浄し、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加して最終的に100g/Lの触媒スラリーを得た。
[エチレン系重合体の製造]
50Lオートクレーブに、ヘキサン30Lとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)25.0mLを導入し、オートクレーブの内温を85℃に昇温した。このオートクレーブに、上記触媒スラリー1.875mLを添加し、エチレン/水素混合ガス(水素:700ppm含)を分圧が1.2MPaになるまで導入して重合を開始した。重合中、分圧が1.2MPaに保たれるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に導入した。また、重合温度を85℃に制御した。重合開始90分後にオートクレーブの内圧を脱圧した後、内容物を吸引ろ過した。乾燥後、2,250gのポリマーが得られた。得られたエチレン系重合体の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、E、ΔYIを表1に示す。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0071】
次に得られたポリエチレンを単層ブロー成形機((株)プラコー製)を用いて、シリンダ温度160〜180℃、厚み1.5mm、容器容積500mlの容器を成形した。この容器を用いて表面粗さと微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、耐薬品性に優れ、微粒子数が少ないことが分かる。
【0072】
実施例2
[エチレン系重合体の製造]
50Lオートクレーブに、ヘキサン30Lとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)25.0mLを導入し、オートクレーブの内温を85℃に昇温した。このオートクレーブに、上記触媒スラリー1.875mLを添加し、エチレン/水素混合ガス(水素:1000ppm含)を分圧が1.2MPaになるまで導入して重合を開始した。重合中、分圧が1.2MPaに保たれるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に導入した。また、重合温度を85℃に制御した。重合開始90分後にオートクレーブの内圧を脱圧した後、内容物を吸引ろ過した。乾燥後、2.250gのポリマーが得られた。得られたエチレン系重合体の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、E、ΔYIを表1に示す。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0073】
次に得られたポリエチレンを、単層ブロー成形機((株)プラコー製)を用いて、シリンダ温度160〜180℃、厚み1.5mm、容器容積500mlの容器を成形した。この容器を用いて表面粗さと微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、耐薬品性に優れ、微粒子数が少ないことが分かる。
【0074】
実施例3
[エチレン系共重合体製造触媒の調製]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドに対して10mol%のイソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(成分(b))9.7mg(17.8μmol)とヘキサン5.4mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.5mLからなる溶液を添加したこと以外は実施例3[エチレン系重合体製造触媒の調製]と同様の方法で調製を行なった。
[エチレン系共重合体の製造]
50Lオートクレーブに、ヘキサン30Lとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)25.0mLを導入し、オートクレーブの内温を85℃に昇温した。このオートクレーブに、上記触媒スラリー1.875mLを添加し、エチレン/水素混合ガス(水素:2500ppm含)を分圧が1.2MPaになるまで導入して重合を開始した。重合中、分圧が1.2MPaに保たれるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に導入した。また、重合温度を85℃に制御した。重合開始90分後にオートクレーブの内圧を脱圧した後、内容物を吸引ろ過した。乾燥後、2,275gのポリマーが得られた。得られたエチレン系重合体の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、E、ΔYIを表1に示す。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0075】
次に得られたポリエチレンを、単層ブロー成形機((株)プラコー製)を用いて、シリンダ温度160〜180℃、厚み1.5mm、容器容積500mlの容器を成形した。この容器を用いて表面粗さと微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、耐薬品性に優れ、微粒子数が少ないことが分かる。
【0076】
比較例1
[エチレン系重合体の製造]
50Lオートクレーブに、ヘキサン30Lとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.0mLを導入し、オートクレーブの内温を90℃に昇温した。このオートクレーブに、イネオスシリカス社製Cr触媒(EP350)1812.5mgを添加し、水素ガスを分圧が1.0MPaになるまで導入した後、エチレンガスを分圧が1.0MPaになるまで導入して重合を開始した。重合中、エチレン分圧が保たれるようにエチレンガスを連続的に導入した。また、重合温度を90℃に制御した。重合開始90分後にオートクレーブの内圧を脱圧した後、内容物を吸引ろ過した。乾燥後、3575gのポリマーが得られた。得られたエチレン系重合体の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、E、ΔYIを表1に示す。本エチレン系重合体は、1,000炭素原子当たりの末端ビニル数が0.2個を超え、ΔYIを評価した結果、熱安定性に劣ることを確認した。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0077】
次に得られたポリエチレンを用いて実施例1と同じ方法で容器を成形し、成形性、表面粗さ、落下試験、微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、製品外観(表面肌)、耐薬品性が劣る。
【0078】
比較例2
ダウ・ケミカル社が市販しているメタロセン触媒系エチレン・1−オクテン共重合体(商品名:AF1840)の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、Eを表1に示す。本エチレン系共重合体は、式(1)および(3)の要件から外れている。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0079】
次に得られたポリエチレンを用いて実施例1と同じ方法で容器を成形し、成形性、表面粗さ、落下試験、微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、大型容器としての強度、剛性が不足しており、製品外観(表面肌)、耐薬品性が劣る。
【0080】
比較例3
東ソー(株)が市販している高圧法LDPE(商品名:ペトロセン360)の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、Eを表1に示す。本エチレン重合体は、式(2)および(3)の要件から外れている。
得られたポリエチレンを115mmφの押出スクリューを有するブロー成形機((株)日本製鋼所製)を用いて100Lのドラムを成形し、成形性と落下強度を測定した。
【0081】
次に得られたポリエチレンを用いて実施例1と同じ方法で容器を成形し、成形性、表面粗さ、落下試験、微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、大型容器としての強度、剛性が不足しており、製品外観(表面肌)、耐薬品性が劣る。
【0082】
比較例4
市販の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名:RS1000、MFR=0.1g/10分、密度953kg/m)の密度、MFR、末端ビニル数、M/M、MS160、MS190、Eを表1に示す。この樹脂を用いて実施例1と同じ方法で容器を成形し、成形性、表面粗さ、落下試験、微粒子数の測定を行った。その結果を表2、3に示すが、製品外観(表面肌)、耐薬品性が劣る。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンから導かれる繰り返し単位、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなり、下記(A)〜(F)を満足するエチレン系重合体よりなることを特徴とする中空成形体。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が910kg/m以上970kg/m以下である。
(B)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上1g/10分以下である。
(C)末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個以下である。
(D)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))とMFRの関係が、下記式(1)を満足する。
MS160>90−130×log(MFR) (1)
(E)190℃で測定した溶融張力(MS190(mN))とMS160の関係が、下記式(2)を満足する。
MS160/MS190<1.8 (2)
(F)流動の活性化エネルギー[E(kJ/mol)]と密度の関係が、下記式(3)を満足する。
127−0.107d<E<88−0.060d (3)
【請求項2】
エチレン系重合体が、さらに(G)重量平均分子量/数平均分子量(M/M)が2以上6以下を満足することを特徴とする請求項1に記載の中空成形体。
【請求項3】
エチレン系重合体が、(A’)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が910kg/m以上940kg/m以下を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の中空成形体。
【請求項4】
容量50l以上を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空成形体。
【請求項5】
エチレンから導かれる繰り返し単位、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなり、下記(A)〜(F)を満足するエチレン系重合体をブロー成形に供することを特徴とする中空成形体の製造方法。
(A)JIS K6760に準拠して密度勾配管法により測定した密度(d)が910kg/m以上970kg/m以下である。
(B)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上1g/10分以下である。
(C)末端ビニル数が1,000炭素原子当たり0.2個以下である。
(D)160℃で測定した溶融張力(MS160(mN))とMFRの関係が、下記式(1)を満足する。
MS160>90−130×log(MFR) (1)
(E)190℃で測定した溶融張力(MS190(mN))とMS160の関係が、下記式(2)を満足する。
MS160/MS190<1.8 (2)
(F)流動の活性化エネルギー[E(kJ/mol)]と密度の関係が、下記式(3)を満足する。
127−0.107d<E<88−0.060d (3)
【請求項6】
成形温度120〜250℃、吹込圧力2〜10kg/cm、ブロー比1.5〜5の成形条件下でブロー成形を行うことを特徴とする請求項4に記載の中空成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−24767(P2008−24767A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196636(P2006−196636)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】