説明

中空成形品

【課題】小型化を図る上で有利な中空成形品を提供すること。
【解決手段】中空成形品10は冷却水循環用の管体であり、合成樹脂製で、DSI成形で形成されている。中空成形品10は、高さHよりも十分に大きい寸法の幅Wを有する扁平な断面形状を呈している。中空成形品10は、幅W方向において分割され開口縁に接合部14を有する一対の半中空体12で構成されている。接合部14には、相手の接合部14に合わされる接合面が形成され、また、接合面には溶融樹脂20を射出させるための凹部14Aが形成されている。中空成形品10は、一対の半中空体12の接合部14の凹部14Aに射出された溶融樹脂20により接合部14相互が一体化されることで成形されている。接合部14は、中空成形品10の幅W方向の1/4の箇所に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる冷却水循環用の管体として、断面形状が真円ではなく、高さよりも十分に大きい寸法の幅の扁平形状にならざるを得ない場合、ゴムホースに代えて合成樹脂製のものが用いられる。
この種の合成樹脂製の中空成形品は、1次成形において、開口縁に接合部を有する一対の半中空体を射出成形し、2次成形において、それらの接合部に溶融樹脂を射出して接合するDSI(Die Slide Injection)で成形することが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−309030
【特許文献2】特開2003−191340
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、DSI成形で接合部を接合する場合、両接合部を一対の半中空体とともに型により挟んで固定しておき、それら接合部の向かい合う凹部に溶融樹脂を射出することが行なわれるが、中空成形品の内部空間寄りに位置する接合部の箇所には、型が位置していない。そのため、中空成形品の内部空間寄りに位置する接合部の箇所は、溶融樹脂により接合できず、双方の接合部が合わされた状態に留まる。
また、断面が、高さよりも十分に大きい寸法の幅の扁平形状の中空成形品では、内部を流れる水(流体)の圧力により、幅方向の中央部と両端に最も大きな曲げモーメントが作用する。
そこで、上述の特許文献1、2に開示されるように、中空成形品の幅方向の中央部に接合部が位置するように半中空体を設けたのでは、最も大きな曲げモーメントが作用するため、また、上述のDSI成形品の接合部の構造上、接合部の形状を大きくせざるを得ない。
その結果、中空成形品が大型化してしまい、エンジンルーム内の限られた狭いスペースに配置できなくなる不具合が生じる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、小型化を図る上で有利な中空成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、高さよりも大きい寸法の幅を有する扁平な断面形状を呈する中空成形品であって、前記中空成形品は、幅方向において分割され開口縁に接合部を有する一対の半中空体がそれらの接合部が接合されることで構成され、前記一対の半中空体は、それらの接合部が、前記中空成形品の幅方向の中央と両端との間の中間部に位置するように設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、中空製品の内部空間に作用する圧力で生じる曲げモーメントが0となる箇所の近傍に接合部を設けるようにしたので、接合部を大型化することなく2つの半中空体を接合して中空成形品を成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】中空成形品の斜視図である。
【図2】中空成形品を、その長手方向と直交する面で切った断面図である。
【図3】中空成形品の平面図である。
【図4】実施例と比較例との試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本実施の形態が適用された中空成形品10は、自動車のエンジンルーム内に設けられる冷却水循環用の管体であり、合成樹脂製で、DSI成形で形成されている。
中空成形品10は、高さHよりも十分に大きい寸法の幅Wを有する扁平な断面形状を呈している。そして、この扁平な断面形状で延在して管体を構成し、内部空間10Aが冷却水の流路となる。
中空成形品10は、幅W方向において分割され開口縁に接合部14を有する一対の半中空体12がそれらの接合部14が接合されることで構成されている。
【0009】
一対の半中空体12は、接合部14と、管体部16と、補強リブ18とを含んで構成されている。
管体部16は、均一の厚さで形成され、一対の半中空体12が接合された状態で中空成形品10の周方向に延在しまた長手方向に延在するように設けられている。
管体部16は、中空成形品10と同一の高さHを有し、また、中空成形品10の幅Wよりも短い寸法の幅を有している。
管体部16は、円弧状の側面部16Aと、側面部16Aの両端から延在し互いに対向する上面部16Bおよび下面部16Cとを有している。
【0010】
接合部14は、管体部16の両端の開口縁に膨出形成され、すなわち、上面部16Bおよび下面部16Cの端部に膨出形成されている。そして、接合部14は、管体部16の長手方向の全長にわたって延在している。
接合部14には、相手の接合部14に合わされる接合面が形成され、また、接合面には溶融樹脂20を射出させるための凹部14Aが形成されている。
中空成形品10は、一対の半中空体12の凹部14Aに射出された溶融樹脂20により接合部14相互が一体化されることで成形されている。
補強リブ18は、一対の半中空体12が接合された状態で中空成形品10の長手方向に間隔をおいてそれぞれ中空成形品10の周方向に延在するように、各半中空体12に膨出形成されている。
補強リブ18は、各半中空体12の接合部14から幅方向の端部まで延在しており、接合部14付近では接合部と同じ高さで形成され、また、幅方向の端部に至るにつれて次第に高さと幅が減少するように設けられている。
この補強リブ18は、接合部14の接合強度を確保する観点から必要に応じて設けられる。
【0011】
中空成形品10の製造方法について説明すると、1次成形で一対の半中空体12を射出成形により成形し、冷却してある程度固化させる。
次に、2次成形で一対の半中空体12の接合部14を合わせ、それら半中空体12を重ねて接合部14を含めて型締めし、それらの接合部14の凹部14A内に溶融樹脂20を射出する。
そして、この溶融樹脂20により接合部14相互を一体化し、これにより中空成形品10が成形される。
【0012】
接合部14は、中空成形品10の幅W方向の中央と両端との中間部に位置している。
本実施の形態では、接合部14を、中空成形品10の幅W方向の1/4の箇所に位置させた。
この接合部14を設ける幅W方向の1/4の箇所は、図2(A)で示すように、中空成形品10の中心点と中心として点対称となる位置に設けてもよく、あるいは、図2(A)で示すように、高さ方向の中央を通る中心線に対して対称な位置に設けてもよい。
ここで、図2の中空成形品10の管体部16の上半部について考察すると、管体部16の上半部は、両端が固定された固定梁と考えられ、また、内部空間10Aを流れる水(流体)の圧力が作用するのでこの固定梁に等分布荷重が作用すると考えられる。そうとすると、管体部16の上半部の中央で+の曲げモーメントが最大となり、管体部16の上半部の両端で−の曲げモーメントが最大となる。そして、管体部16の中央と両端との中間部の箇所に、曲げモーメントが0となる箇所が存在することになる。
したがって、接合部14を、中空成形品10の幅W方向の中央と両端との中間部に位置させることにより、内部空間10Aを流れる水(流体)の圧力により生じる曲げモーメントが0となる箇所の近傍に接合部14が位置することになる。
【0013】
したがって、本実施の形態によれば、接合部14を、曲げモーメントが0となる箇所の近傍に位置させることから、凹部14A内に射出される溶融樹脂20によって接合部14を一体化させるための強度が小さい値で足りる。
すなわち、凹部14Aの容積を小さくできるので接合部14を小型化できる。
したがって、大きな流路面積を確保しつつ中空成形品10の小型化を図る上で有利となる。
特に、DIS成形では、中空成形品10の内部空間10A寄りに位置する接合部14の箇所14B(図2(A)参照)は、溶融樹脂20により接合できず、双方の接合部14が合わされた状態に留まる構造となり、接合強度を確保する観点から接合部14をもともと大型化せざるを得ない事情があることから、接合部14を一体化させるための強度を小さい値で足りるようにし、接合部14を小型化できるようにすることはDIS成形で大きな意義を持つ。
また、接合部14から幅W方向の端部に至る補強リブ18を膨出形成したので、接合部14を引き離す方向に力が作用しても、この力の一部を補強リブ18で受けることができ、接合部14の接合強度を確保する上で有利となる。
【0014】
(実施例)
接合部14を、中空成形品10の幅W方向の1/5に位置させた実施例1と、幅W方向の1/4に位置させた実施例2と、幅W方向の2/5に位置させた実施例3とをそれぞれ5つずつ製作した。
また比較例として、接合部14を、中空成形品10の幅W方向の中央(1/2)に位置させた比較例1と、幅W方向の9/20に位置させた比較例2と、幅W方向の1/10に位置させた比較例3と、幅W方向の両端に位置させた比較例4とをそれぞれ5つずつ製作した。
【0015】
中空成形品10の内部空間10Aに圧力を掛けていき、接合部14が破壊されたときの圧力を測定した。その時の圧力の平均値を図4に示す。
なお、図4において破壊圧力の欄に記載されている数値は指数化されており、比較例1における破壊圧力を100とし、数値が大きいほど破壊圧力が大きいことを示している。
比較例1、4では、最も大きな曲げモーメントが作用する箇所に接合部14が位置しているので、最も小さな圧力で破壊されることが分かる。
比較例2、3では、最も大きな曲げモーメントが作用する箇所の近傍に接合部14が位置しているので、やはり小さな圧力で破壊されることが分かる。
【0016】
これに対して、実施例1〜3では、曲げモーメントが0となる箇所の近傍に接合部14が位置していることから、破壊される際の圧力が比較例1〜4に比べて大きい値となっている。
特に、接合部14を、幅W方向の中央と両端との中心箇所である、中空成形品10の幅W方向の1/4に位置させた実施例2では、破壊される際の圧力が最も大きい値となっている。
したがって、図4からも、本実施の形態によれば、接合部14を小型化でき、大きな流路面積を確保しつつ中空成形品10の小型化を図る上で有利となることが明らかである。
【0017】
なお、本実施の形態では、中空成形品10が合成樹脂製でDISで成形される場合について説明したが、本発明が適用される中空成形品10はDIS成形に限定されず、一対の半中空体12の接合部14がシール材を介在させてボルト、ナットで締結されるものであってもよい。また、一対の半中空体12は金属であってもよく、合成樹脂に限定されない。すなわち、一対の半中空体12がそれらの接合部14において接合され、断面形状が高さよりも大きい寸法の幅Wを有して扁平形状を呈する中空成形品10に広く適用される。
【符号の説明】
【0018】
10……中空成形品、12……半中空体、14……接合部、14A……凹部、18……補強リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さよりも大きい寸法の幅を有する扁平な断面形状を呈する中空成形品であって、
前記中空成形品は、幅方向において分割され開口縁に接合部を有する一対の半中空体がそれらの接合部が接合されることで構成され、
前記一対の半中空体は、それらの接合部が、前記中空成形品の幅方向の中央と両端との間の中間部に位置するように設けられている、
中空成形品。
【請求項2】
前記中空成形品は合成樹脂製であり、前記一対の半中空体は射出成形により成形されかつ前記接合部は溶融樹脂により接合されるDSI成形により製造されている、
請求項1記載の中空成形品。
【請求項3】
前記中空成形品は、前記扁平な断面形状で延在する管体であり、前記一対の半中空体は前記中空成形品に沿って延在しており、前記接合部は各半中空体の延在方向の全長にわたって延在している、
請求項1または2記載の中空成形品。
【請求項4】
前記中空成形品の延在方向に間隔をおいてそれぞれ前記中空成形品の周方向に延在する補強リブが前記一対の半中空体に設けられている、
請求項3記載の中空成形品。
【請求項5】
前記接合部は前記中空成形品の幅の1/4に位置する箇所に設けられている、
請求項1乃至4に何れか1項記載の中空成形品。
【請求項6】
前記接合部は前記中空成形品の幅の1/5から2/5の範囲に位置する箇所に設けられている、
請求項1乃至4に何れか1項記載の中空成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51221(P2011−51221A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201851(P2009−201851)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】