説明

中空部を含む粘着シートおよびこれらの製造方法

硬化したアクリル系高分子、硬化したアクリル系高分子中に分散している破裂した高分子微小中空球、および前記高分子微小中空球が硬化したアクリル系高分子中に分散した状態で破裂しながら形成された中空部を含む粘着シートおよびこれらの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよびこれらの製造方法に関するものである。より具体的には、硬化した粘着シート内に含まれている微小中空球が破裂しながら形成された中空部を含む粘着シートおよびこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気、電子産業の発展による電子部品素子の接着は非常に重要になりつつある。併せて、熱伝導性粘着剤が前記素子から発生する熱を制御するために、高分子に熱伝導性無機物粒子を分散させて製造した複合材料から製造されている。前記熱伝導性粘着剤は、基材を接着させ、同時に分散した熱伝導性無機物粒子が電機電子部品素子から発生した熱を放熱板に伝達して放出する機能を行う。
【0003】
一般的に、熱伝導性粘着剤は、アクリル、ポリウレタンおよびシリコーンなどの樹脂に、熱伝導性充填剤である金属、セラミックなどを添加して、電機電子部品から放出される熱を除去している。最近開発されている熱伝導性粘着剤にはその熱伝導特性がさらに大きく要求されている。したがって、高熱伝導性充填剤の摸索、モルフォロジーと性質が異なる充填剤の組み合わせ、熱伝導の経路を提供するための不織布のような繊維状の充填剤の使用、または磁場を用いた充填剤の配列などを含めた、熱伝導性の改善のためのさまざまな方法が採用されている。しかし、このような熱伝導性充填剤の構造を通した改善には粘着剤の硬度調節の困難および単価上昇の問題があり、屈曲/突出部位の貼着面積の改善が必要である。熱伝達効率を増大させるための方法として、熱伝導性充填剤の改善および構造の変更とは別に樹脂自体の特性を改善して貼着面積を増やす方法も研究されている。
【0004】
一方、発熱性電子部品と熱伝導性組成物、放熱部材と熱伝導性組成物との間には屈曲/突出部位が存在する場合、肉眼で確認可能な空気層が存在するようになるが、これは熱伝達性能に深刻な影響を与える貼着面積と関連する。
【0005】
これを解決できる方案として、放熱パッドを軟化させて硬度を減らすか、粘着シートの表面をエンボス処理するか、粘着シートを柔軟にする方法が摸索されてきた。
【0006】
粘着シートを柔軟にする一方法としては、発泡を用いて硬度を低くする方法がある。発泡体の導入は、樹脂組成物の軟化だけでなく防音および防振の役割もするため、多くの研究がなされている。
【0007】
国際公開WO99/03943には架橋型粘着シート内に高分子微小中空球を分散させた発泡型両面粘着テープが記載されている。しかし、粘着テープに高分子微小中空球を分散させる場合、粘着テープに圧縮回復力を付与することができるが、微小中空球が粘着シートの硬度を上昇させるため発泡による硬度減少効果が少ない。
【0008】
また、日本国特開昭第63−225684号では、エポキシ基を有するアクリル系高分子をジアゾニウム塩系の化合物の存在下で紫外線処理を介して架橋構造と発泡構造とを同時に形成する方法が記載されている。しかし、前記方法は、紫外線の透過を妨害しないように材料を設計しなければならず、しかも発泡セルの大きさおよび分布を調節することが難しい。
【0009】
前記の紫外線透過度の問題点を克服した方法として、日本国特開昭第55−90525号には紫外線処理ではなく、熱処理によって発泡および架橋を進める感圧接着性の発泡組成物の製造方法が記載されている。しかし、前記方法では低分子量体を用いるため化合物間の凝集力が低く、加工性が不利となり、発泡セルの大きさおよび分布を調節し難い点があって、製造された粘着性組成物の物性の均一性が悪いという問題がある。
【0010】
前記の低分子量体の短所を克服するために、日本国特開第2002−80817号には10万以上の高分子量アクリル共重合体を用いて、熱架橋および熱発泡を用いた架橋型発泡粘着シートの製造方法が記載されている。しかし、この方法において、熱架橋と熱発泡とを同時に実施する場合、温度に応じて発泡セルの大きさおよび分布が一定でないため、最終成形品の均一性が落ち、特に粘着シートの表面が不均質になって、貼着面積を広くする効果が低下するようになる。
【0011】
大韓民国公開特許公報第2003−0092759号には光重合型ウレタンアクリレートオリゴマー、アセタール系化合物、スロニウム塩(sulonium salt)、または、アゾ系化合物などの光分解発泡剤、および光分解触媒を含む紫外線硬化型発泡樹脂組成物が記載されている。この組成物は紫外線照射による化学発泡が可能であるが、発泡セルの大きさおよび分布の調節および作業条件設定が非常に難しいという点がある。そして、紫外線による光開始剤の分解によってラジカルが過多発生し、これによって樹脂構造が低分子量化されて粘着剤の物性が低下する。また、形成された発泡セル内部の気体が窒素であるため、上記の製造方法を介して製造された製品を高温で長時間用いる場合、セル内部の気体が漏れ出て粘着剤の高温耐久信頼性に悪影響を与える。
【0012】
一方、大韓民国公開特許公報第1988−0002964号には、密度が非常に低い熱可塑性の高分子微小中空球を混入して製造した発泡型減圧粘着シートが記載されているが、粘着シート中微小中空球はその弾性によって、ガラスや金属などの基材に対する粘着シートの貼着面積の増加に悪影響を及ぼす。併せて、高温で長時間用いる場合、微小球が膨張して粘着シートと基材が分離する問題点がある。
【特許文献1】国際公開WO99/03943パンフレット
【特許文献2】特開昭63−225684号公報
【特許文献3】特開昭55−90525号公報
【特許文献4】特開2002−80817号公報
【特許文献5】大韓民国公開特許公報第2003−0092759号公報
【特許文献6】大韓民国公開特許公報第1988−0002964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、アクリル系高分子に微小中空球を含んで硬化させた後、微小中空球を破裂させることによって中空部が含まれた粘着シートを製造することができるという事実を明らかにした。このような製造方法は、従来技術と比較して発泡セルの大きさおよび分布の調節が容易であるという長所がある。また、前記方法によって製造された粘着シートは、その厚さに応じた物性変化が少なく、防音および防振などの役割ができるだけでなく、微小中空球をそのまま含む従来技術とは異なり、柔軟性、基材に対する貼着面積、接着力、および高温での耐久性が大きく向上する。
【0014】
したがって、本発明は前記のような利点を有するように中空部を含む粘着シートと、これらの製造方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は
硬化したアクリル系高分子と、
硬化したアクリル系高分子中に分散している破裂した高分子微小中空球と、
前記高分子微小中空球が硬化したアクリル系高分子中に分散した状態で破裂することにより形成された中空部とを含む粘着シートを提供する。
【0016】
また、本発明は
a)アクリル系高分子および高分子微小中空球を混合して、アクリル系高分子中に高分子微小中空球を分散させるステップと、
b)前記a)ステップで得た組成物を基材の一面または両面上にコーティングするステップと、
c)前記b)ステップで得た基材上にコーティングされた組成物を硬化させるステップと、
d)前記c)ステップで得た硬化した組成物内に分散している高分子微小中空球を破裂させるステップと、
を含む粘着シートの製造方法を提供する。
【0017】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明では、中空部を含む粘着シートをさらに柔軟に製造するために、アクリル系高分子に高分子微小中空球を分散して硬化させた後、高分子微小中空球を人為的に破裂させることを特徴とする。このように硬化したアクリル系高分子中に分散している高分子微小中空球が破裂する場合、微小中空球内に存在したガスは粘着シートの表面に移動して除去され、すでに硬化していたアクリル系高分子には前記微小中空球が占めていた部分に中空部が形成される。この中空部は、工程条件に応じて前記微小中空球が破裂する前に有していた形態をそのまま保持することもできるが、多少変形された形態を有することもできる。
【0018】
従来の破裂しない微小中空球をそのまま含んでいる粘着シートは弾性が非常に良いが、硬度が高いため貼着面積の増大効果は減少する。しかし、前記のような方法によって製造された本発明に係る粘着シートは、中空部によって防音および防振などの効果があるだけでなく、従来技術における微小中空球をそのまま含む粘着シートと比較して柔軟性がさらに増大し、硬度が減少する。これによって、本発明に係る粘着シートは、突出または屈曲部位を有するか、固い基材表面にも容易に貼着することができ、基材に対する貼着面積が増加するため熱伝導性充填剤を含む場合の熱伝導度が大きく向上し、接着力も向上する。
【0019】
本発明の粘着シートの製造時、前記微小中空球を粘着シートの熱伝導度など、その他の物性に影響を及ぼさない範囲内で硬化したアクリル系高分子中に均一に分散させ、前記微小中空球が破裂して形成される中空部を粘着シートに均一に分散させることが好ましい。前記微小中空球が均一に分散しておらず、厚さ方向からある一部分に集中しているか、粘着シートの表面にだけ存在する場合には、これによって形成される中空部が粘着シート内に均一に分布しなくなり、本発明で得ようとする効果を十分に得ることができないだけでなく、中空部の分布により物性が変わるようになる問題がある。
【0020】
本発明において、硬化したアクリル系高分子中に分散している高分子微小中空球を破裂させる方法としては特別に限定されず、例えば熱処理、加圧、およびマイクロウエーブ照射などの方法がある。
【0021】
例えば、熱処理方法を用いる場合、前記微小中空球が破裂され得る時間と温度において前記微小中空球を分散して硬化したアクリル系高分子を滞留させることができる。このような熱処理は、粘着シート物性に影響を及ぼさない範囲で行うことが好ましい。具体的に、本発明では、硬化した粘着剤組成物を100〜250℃の温度で10秒〜30分の間加熱処理し、前記高分子微小中空球を破裂させて中空部を形成することができる。熱処理をあまりにも短い時間の間行う場合、高分子微小中空球の一部のみが破裂して粘着シートの柔軟化が十分になされないため、貼着面積の上昇に大きく役に立たない問題がある。また、熱処理を非常に長い時間の間行えば、高分子基材が劣化するため好ましくない。
【0022】
本発明において、アクリル系高分子の重合方法としては、通常、当技術分野において知られている方法をもちいることができ、例えば、ラジカル重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、光重合、またはバルク重合などがある。具体的に1つの好ましい方法は次の通り行うことができる。バルク状態の単量体を光重合または熱重合方法を用いて、粘度が1,000〜10,000cPsであり、部分重合がなされたシロップを用意する。
【0023】
前記のような方法で製造したバルク重合した粘度1,000〜10,000cPsのシロップに高分子微小中空球および必要な場合熱伝導性充填剤のような添加剤を均一に分散させた後、これをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような基材上に塗布する。続いて、紫外線照射および熱処理によって、重合および架橋を行い、かつ微小中空球を破裂させることによって、本発明に係る粘着シートを製造する。本発明では、前記粘着剤組成物を基材に塗布する前に減圧脱泡段階を経るのが好ましい。
【0024】
本発明に係る粘着シートの厚さは特に限定されないが、50μm〜2mmであることが好ましい。前記粘着シートの厚さが50μmより小さい場合には、粘着シートの応力緩和が容易でなく、粘着シートの両面に接着された熱膨張率が異なる2つの基材の破損の恐れがあり、しかも貼着面積が減少する。また、前記粘着シートの厚さが2mmより大きい場合には粘着シートの熱抵抗性が大きくなり、粘着シートが熱伝導度の機能を有する場合には放熱がなされるのに多くの時間が必要であるため好ましくない。
【0025】
本発明の粘着シートは、片面または両面テープとして使用可能である。本発明に係る粘着シートは、製造の際に基材として離型フィルムを用い、粘着シートを電子製品などに適用する際には離型フィルムを除去した後に用いることができる。また、粘着シートは、基材としてアルミニウム、銅、ステンレス鋼などの金属およびガラスなどを含むこともできる。本発明の粘着シートは、熱伝導性の機能を有する場合、放熱体のような基材上に直接適用することもでき、他の電子部品の一部として提供することもできる。
【0026】
本発明に係る粘着シートは、前述した粘着剤組成物を熱伝導性薄膜(フィルム)の上面および/または下面にコーティングし、硬化および微小中空球の破裂処理をして製造することもできる。このように製造した粘着シートには、粘着シート内部に熱伝導性薄膜が含浸または挿入されているため、粘着シートの水平方向の熱伝導度および熱伝達の均一性を高めることができる。前記熱伝導性薄膜としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ガラス、または熱伝導性不織布を用いることができ、この薄膜は1〜1000μmの厚さを有することが好ましい。前記熱伝導性薄膜の厚さが1μmより小さい場合には、熱伝導度の上昇効果が少なく、1000μmより大きい場合には粘着シートが非常に重くなり、貼着面積が低くなる問題が生じて好ましくない。前記のような熱伝導性薄膜を含む粘着シートは、前述した通り本発明により製造された粘着シートを熱伝導性薄膜の上面および/または下面にコーティングすることによっても製造することができる。
【0027】
上記のように熱伝導性薄膜を含む粘着シートの場合、前記熱伝導性薄膜の一面には微小中空球が破裂して形成された中空部を含む粘着層が形成されており、他の一面には中空部を含まない非発泡粘着層が形成された形態ともなり得る。この時、非発泡粘着層は10〜100μmの厚さを有することが好ましいが、10μmより小さい場合には貼着面積が低くなる問題があり、100μmより大きい場合には熱伝達効率が減少する問題がある。
【0028】
本発明において、前記アクリル系高分子としては特に限定されず、従来、粘着剤の材料として用いられているものであれば用いることができる。例えば、アクリル系高分子としては、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、この単量体と共重合が可能な極性単量体との共重合された高分子とを挙げることができる。前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体的な例としては、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはイソノニル(メタ)アクリレートなどがある。一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合が可能な極性単量体の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基を含有した単量体、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)メチルアクリレートなどの水酸基を含有した単量体、アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素を含有した単量体などがある。このような極性単量体は、粘着剤に凝集力を付与して接着力を向上させる作用をする。(メタ)アクリル酸エステル単量体と極性単量体との比率は限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル単量体100重量部を基準として、極性単量体の含量は1〜20重量部であることが好ましい。
【0029】
本発明において、前記高分子微小中空球とは、球形の高分子シェル内に常温で気体状に存在するガスが満たされたことを意味する。本発明では、高分子微小中空球として、コーティングおよび熱硬化または光硬化などの粘着シートの通常の製造工程条件では破裂しないが、所定の条件、例えば一定温度以上で加熱処理する場合、球内部の高い気体圧力および球の形態不安定性により破裂する高分子微小中空球を用いることができる。
【0030】
微小球内部のガスは、常温で気体状に存在するガスであれば特別に限定されない。例えば、窒素、二酸化炭素、ペンタン、ブタンなどで満たされた高分子微小中空球が好ましく、分子量が比較的高いペンタン、ブタンなどで満たされた高分子微小中空球がさらに好ましい。高分子微小中空球のシェルは、前記の通りに粘着シートの通常の製造工程条件下では破裂しないが、適用しようとする所定の条件、例えば熱処理によって破裂できるものであればその材料は限定されない。例えば、高分子微小中空球のシェルは、アクリル系、塩化ビニリデン系、またはスチレン系高分子からなることが好ましく、アクリル高分子粘着組成物との相容性のためにアクリル系高分子からなることがさらに好ましい。
【0031】
高分子微小中空球の粒径は特別に限定されないが、1〜350μmであることが好ましい。粒径が1μmより小さい場合には粘着シートを柔軟にする効果が低下する問題がある。粒径が350μmより大きい場合には破裂時に粘着シートの表面が非常に粗くなって、表面の粗い基材に濡れ性が悪くなり、熱伝導度が減少する問題があって好ましくない。また、本発明では、粒径が異なる2種類以上の高分子微小中空球を混合して用いることが好ましい。異なる大きさの高分子微小中空球が混ざり合う場合には、大きい粒子の間に小さい粒子が満たされ、粘着シートの柔軟性をさらに向上させることができるためである。
【0032】
高分子微小中空球のシェルの厚さは0.01〜1μmが好ましい。前記厚さが0.01μmより小さい場合には高分子微小中空球があまりにも容易に破裂する。また、前記厚さが1μmより大きい場合には高分子微小中空球を破裂させるための条件を設定することが難しく、熱処理による場合は高温での熱処理時間が長くなるため、硬化したアクリル系高分子が劣化して粘着シートの耐久信頼性が低下し得る。
【0033】
高分子微小中空球の密度は特に限定されないが、0.01〜0.5g/cmであることが好ましい。前記密度が0.01g/cmより小さい場合には、高分子樹脂内に混入するために高分子微小中空球を搬送する時、これが飛散り易くて所望する含量を正確に調節することが困難である。また、前記密度が0.5g/cmより大きい場合には粘着シートの密度を増加させる問題が生じて好ましくない。
【0034】
前記微小中空球は、アクリル系高分子100重量部を基準として、0.1〜10重量部を用いるのが好ましく、0.5〜2重量部を用いることがさらに好ましい。微小中空球の含量が0.1重量部より少ない場合には所望する発泡効果を得ることができず、10重量部より多い場合には硬化前のスラリー粘度が余りにも高くて、加工性が減少して好ましくない。
【0035】
本発明に係る粘着シートは、熱伝導性充填剤を含むことが好ましい。前記熱伝導性充填剤としては、酸化金属、水酸化金属、窒化金属、炭化金属、ホウ化金属、または金属などの粉末を用いることができる。特に、熱伝導性充填剤として水酸化金属を用いて粘着シートに難燃性も付与することが好ましい。前記熱伝導性充填剤は、アクリル系高分子100重量部を基準に50〜200重量部を用いることが好ましい。熱伝導性充填剤の含量が50重量部より小さい場合には熱伝導度が低い問題が生じ、200重量部より大きい場合には粘着シートの硬度が上昇して貼着面積が減少する問題がある。前記熱伝導性充填剤の粒径は1〜200μmであることが好ましい。前記粒径が1μmより小さい場合には硬化前のスラリーの粘度上昇の問題があり、200μmより大きい場合には熱伝導率は上昇するが硬化工程中の粒子沈降の問題がある。
【0036】
本発明において、前記粘着剤組成物を光硬化によって硬化させる場合には、本発明の粘着剤組成物に光開始剤を添加することができる。この光開始剤は、粘着組成物の重合度を調節する役割をする。光開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、α、α−メトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン、2−ベンゾイル−2(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどがあるが、これらにだけ限定されるのではない。光開始剤は、アクリル系高分子100重量部を基準に0.01〜2重量部を用いることが好ましい。光開始剤の含量が0.01重量部より少ない場合には未反応モノマーが増加して環境問題が生じ、2重量部より多い場合には高分子構造内部に低分子量体が多く生じて耐熱性が減少する問題がある。
【0037】
本発明の粘着剤組成物には必要な場合、光架橋剤を添加することができる。光架橋剤は粘着剤組成物の粘着特性を調節することができる。光架橋剤の例としては、多官能性アクリレートを用いることができる。より具体的に、架橋剤としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリルレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、および1,12−ドデカンジオールアクリレートなどの架橋性単量体があるが、これらにだけ限定されるのではない。架橋剤は、アクリル系高分子100重量部を基準に0.05〜2重量部を用いることが好ましい。架橋剤の含量が0.05重量部より小さい場合には粘着シートがあまりにも柔らかいため耐熱性の問題が生じ、2重量部より大きい場合には粘着シートが非常に固くなって貼着面積が減少する問題がある。
【0038】
本発明の粘着シートは、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、熱開始剤、熱架橋剤、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、粘着付与樹脂、シラン結合剤、光沢剤などの添加剤をさらに含むことが可能である。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る粘着シートは、その厚さに応じて物性変化が少なく、中空部を含むことによって防音および防塵効果がある。また、本発明に係る粘着シートは、従来技術の微小中空球をそのまま含む粘着シートとは異なり、柔軟性が増大して基材に対する貼着面積が大幅に上昇し、接着力が向上し、高温での耐久性が向上する。そして、本発明の製造方法により粘着シートを製造する場合には、発泡セルの大きさおよび分布を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明の範囲が下記実施例に限定されることはない。
[実施例]
〔実施例1〕
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部と極性単量体アクリル酸5重量部を1リットルガラス反応器で熱重合させ、粘度4500cPアクリル高分子を得た。得られたアクリル高分子100重量部に対して光開始剤としてイガキュア(Igacure)−651(α、α−メトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン)0.2重量部、架橋剤として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.35重量部を添加した後、十分に攪拌した。ここに高分子微小中空球として平均粒径が40μmである微小中空球(Expancel 092 DE 40 d30、Akzo Nobel社製)0.5重量部および平均粒径が120μmである微小中空球(Expancel 092 DET 120 d30、Akzo Nobel社製)0.5重量部と、熱伝導性充填剤として平均粒径が70μmである水酸化アルミニウム(H−100、Showa Denko社製)100重量部を添加して組成物が均一になるまで十分に攪拌した。
上記にて得た混合物を真空ポンプを用いて減圧脱泡した後、ナイフコーティングを用いてポリエステル離型フィルム上に厚さ1mmでコーティングした。この時、酸素を遮断するためにコーティング層上にポリエステルフィルムを被せた後、ブラック蛍光灯ランプを用いて3分間照射して硬化させた。続いて、200℃で90秒間加熱して高分子微小中空球を破裂させることによって、本発明に係る粘着シートを得た。
【0041】
〔実施例2〕
高分子微小中空球を破裂させるための熱処理を200℃で180秒間行ったことを除いては、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0042】
〔実施例3〕
高分子微小中空球として平均粒径が40μmである微小中空球(Expancel 092 DE 40 d30、Akzo Nobel社製)0.7重量部および平均粒径が120μmである微小中空球(Expancel 092 DET 120 d30、Akzo Nobel社製)0.3重量部を用いたことを除いて、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0043】
〔実施例4〕
高分子微小中空球として平均粒径が40μmである微小中空球(Expancel 092 DE 40 d30、Akzo Nobel社製)0.3重量部および平均粒径が120μmである微小中空球(Expancel 092 DET 120 d30、Akzo Nobel社製)0.7重量部を用いたことを除いて、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0044】
〔実施例5〕
実施例1のように調製した粘着剤組成物をポリエステル離型フィルム上に塗布せずに厚さ50μmのAl薄膜の上面と下面に各々0.5mmの厚さで塗布したことを除いて、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0045】
〔実施例6〕
Al薄膜の代わりにCu薄膜を用いたことを除いては、実施例5と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0046】
〔実施例7〕
Al薄膜の一面には微小中空球を含まずに、微小中空球破裂のための熱処理をしなかった非発泡粘着剤層を25μmの厚さで形成し、Al薄膜の他の一面には実施例1で製造した粘着シートを貼着させて粘着シートを得た。
【0047】
〔比較例1〕
高分子微小中空球を添加せずに微小中空球破裂のための熱処理をしなかったことを除いては、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0048】
〔比較例2〕
高分子微小中空球を添加したが、微小中空球破裂のための熱処理をしなかったことを除いては、実施例1と同一の方法によって粘着シートを得た。
【0049】
前記実施例および比較例の粘着シート製造条件を下記表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
粘着シートの特性評価
1.貼着面積試験
前記の各例で得られたシートを90mm×160mmの大きさに切断し、粘着シートの片面をアルミニウム基材上に積層させた後で厚さ3mmのガラス板をサンプル上に載置した後、200gの荷重を有する錘を2つ載置する。30秒経過後、ガラスと粘着シートが貼着された面積をデジタルカメラで撮ってからイメージを分析して測定する。
2.接着力試験
前記の各例において、シートのアルミニウム板に対する接着力をJISZ1541に基づいて測定した。但し、粘着シートをアルミニウム板に塗布後、180度方向の接着力を測定する前までの常温における放置時間は30分であった。
3.熱伝導率試験
前記の各例から得られたシートを約60mm×120mmの大きさで切断し、このサンプルの熱伝導率を京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率測定機QTM−500を用いて測定した。
実施例および比較例の粘着シートの特性評価の結果を下記表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
前記表2によれば、本発明に係る粘着シートは900g/inを超える高い接着力を示し、熱伝導度は0.30W/m・Kを超えることが確認された。併せて、ガラスと粘着シートとの貼着面積を測定した結果、30秒経過後は80%以上になり、24時間経過後には100%に近い貼着面積を示した。結局、本発明の粘着シートは、非常に高い貼着面積、接着力、熱伝導性を有する。したがって、本発明の粘着シートは、接着力、熱伝導度、貼着面積に関して、厳格な規格の性能を要求するプラズマディスプレイパネルのような電子部品に適用することによって、発熱体から発生する熱をアルミニウム放熱板に伝達するとともに支持する役割を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る粘着シートは、その厚さに応じた物性変化が少なく、中空部を含むことによって防音および防振効果がある。また、本発明に係る粘着シートは、従来技術の微小中空球をそのまま含む粘着シートとは異なり、柔軟性が増大して基材に対する貼着面積が大幅に上昇し、接着力が向上し、高温での耐久性が向上する。そして、本発明の製造方法により粘着シートを製造する場合には、発泡セルの大きさおよび分布を容易に調節することができる。このような利点で、本発明の粘着シートは、プラズマディスプレイパネルのような電子素子に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したアクリル系高分子と、
前記硬化したアクリル系高分子中に分散している破裂した高分子微小中空球と、
前記高分子微小中空球が硬化したアクリル系高分子中に分散した状態で破裂することにより形成された中空部とを含む粘着シート。
【請求項2】
前記高分子微小中空球が、アクリル系高分子100重量部に対し0.1〜10重量部で含まれている請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記高分子微小中空球が、アクリル系、塩化ビニリデン系およびスチレン系の高分子から選択される高分子シェル内に常温で気体のガスを含んでいる請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記高分子微小中空球の粒径が1〜350μmである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記高分子微小中空球の密度が0.01〜0.5g/cmである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記高分子微小中空球のシェルの厚さが0.01〜1μmである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記高分子微小中空球が、粒径が異なる2種類以上の高分子微小中空球を含む請求項1に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着シートが、熱伝導性充填剤をさらに含む請求項1に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記熱伝導性充填剤が、前記アクリル系高分子100重量部に対し50〜200重量部で含まれている請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記熱伝導性充填剤が酸化金属、水酸化金属、窒化金属、炭化金属、ホウ化金属および金属からなる群より選択される請求項8に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記熱伝導性充填剤は、粒径が1〜200μmである請求項8に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記粘着シートが、光開始剤、光架橋剤、熱開始剤、熱架橋剤、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、粘着付与樹脂、シランカップリング剤、光沢剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む請求項1に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着シートが、50μm〜2mmの厚さを有する請求項1に記載の粘着シート。
【請求項14】
前記粘着シートが、この粘着シートによって少なくとも一面がコーティングされた熱伝導性薄膜を含む請求項1に記載の粘着シート。
【請求項15】
前記熱伝導性薄膜が、厚さが1〜1000μmであり、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ガラスおよび熱伝導性不織布からなる群より選択される材料からなる請求項14に記載の粘着シート。
【請求項16】
a)アクリル系高分子および高分子微小中空球を混合して、アクリル系高分子中に高分子微小中空球を分散させるステップと、
b)前記a)ステップで得た組成物を基材の一面または両面上にコーティングするステップと、
c)前記b)ステップで得た基材上にコーティングされた組成物を硬化させるステップと、
d)前記c)ステップで得た硬化した組成物内に分散している高分子微小中空球を破裂させるステップと、
を含む粘着シートの製造方法。
【請求項17】
前記c)ステップは、100〜250℃温度で10秒〜30分の間、熱処理することによって行う請求項16に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項18】
前記基材が、熱伝導性薄膜または離型フィルムである請求項16に記載の粘着シートの製造方法。

【公表番号】特表2008−501848(P2008−501848A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527006(P2007−527006)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001731
【国際公開番号】WO2005/121267
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】