説明

主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂及びその硬化方法

【課題】 短時間硬化、かつ、低温硬化ができ、長いポットライフをもち、基材と強い密着力を有するエポキシ樹脂組成物、およびその硬化方法の提供。
【解決手段】 (A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物と、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物とを含む主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂、より詳しくは、主剤−プライマー型の熱硬化性エポキシ樹脂及びその硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂をチオール硬化剤により硬化するには、通常150℃以上の硬化温度が必要とされる。しかしながら、硬化のために基材を150℃以上のような高温にさらすのは好ましくない。アミン硬化促進剤を使用すると、エポキシ樹脂を低温で硬化させることができる。しかし、硬化温度が低くなるほど、ポットライフが短くなるという問題がある。例えば、エポキシ樹脂とチオール化合物の混合物に環状アミン硬化促進剤を添加すると、瞬時に硬化反応が起こる。
【0003】
ポットライフを向上させるための方法として、エポキシ樹脂と硬化剤を分け、2液タイプにする方法がある。しかし、この2液タイプのエポキシ樹脂は、液の混合比がばらつくことで硬化物の物性に影響が出やすいという欠点、すなわち、安定した性能を出すための管理が困難であり、その結果、未硬化部分が発生しやすいという欠点があった。
【0004】
ポットライフを向上させるための別の方法として、室温ではエポキシ樹脂に不溶性の固体で、加熱することにより可溶化して促進剤として機能する潜在性硬化促進剤を含む1液タイプとする方法がある(特許文献1)。しかし、この1液タイプのエポキシ樹脂は、必ずしも十分なポットライフが得られないこと、低温での硬化速度が必ずしも十分でないこと、特殊な潜在性硬化促進剤を必要とすることなどの欠点があった。
【特許文献1】特開平6−211969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低温硬化、短時間硬化が可能でありながら、ポットライフが向上しており、さらに安定した硬化物の物性を与えるエポキシ樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂及び硬化剤を1液化(主剤組成物)し、硬化促進剤を処理剤(プライマー組成物)とすることにより、エポキシ樹脂自体のポットライフが向上するとともに、低温硬化、短時間硬化が可能となり、さらに2液の混合の必要がないため、硬化物の物性を安定化できることを知見し本発明を達成した。
【0007】
本発明は、(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物と、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物とを含む主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂である。
【0008】
本発明は、(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を基材に塗布してプライマー塗布層を得、この塗布層上に、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を塗布して主剤塗布層を得た後、両塗布層を加熱硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法である。
【0009】
本発明は、(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を基材に塗布してプライマー塗布層を得、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を他の基材に塗布して主剤塗布層を得、次いで両塗布層を熱圧着して硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温硬化、短時間硬化が可能でありながら、ポットライフが向上しており、さらに安定した硬化物の物性を与えるエポキシ樹脂が提供できる。
【0011】
本発明は、低温で速やかに硬化するので、接着剤、塗料などの用途に適しており、また、硬化時間が短いため、大量生産にも適する。
【0012】
また、本発明は、ポットライフが長いので、環境温度で左右されにくく、使い易く、かつ2液タイプのエポキシ樹脂とは異なり、安定した硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂は、(A)プライマー組成物と(B)主剤組成物を含む。
【0014】
本発明における(A)プライマー組成物は、アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含む。アミン化合物及びイミダゾール化合物は、エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用できるものであれば限定されない。
【0015】
硬化促進化合物としては、ラウリルジメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−ウンデシルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−エチル−4−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが例示される。好ましい硬化促進剤は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)などの環状アミンである。硬化促進剤は、上記を単独でも、複数使用してもかまわない。
【0016】
本発明における(A)プライマー組成物は、硬化促進化合物のほかに、塗布の都合上、硬化促進剤を溶解又は分散できる溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、硬化促進剤を溶解又は分散すれば限定されないが、アセトン、アルコール、トルエン、トリクロロエタン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ノルマルヘキサンなどが挙げられるが、硬化促進剤が環状アミンの場合、アセトンが特に好ましい。プライマー組成物が溶剤を含む場合、溶剤を蒸発させることで薄い硬化促進剤の層ができる。
【0017】
(A)プライマー組成物において、硬化促進剤:溶剤の割合は、塗布に適した粘性を有するように適宜選択することができるが、重量比で0.1:99.9〜90:10、好ましくは、0.5:99.5〜50:50、特に好ましくは、1:99〜20:80である。
【0018】
(A)プライマー組成物は、硬化促進剤と必要により溶剤を混合することにより製造することができる。
【0019】
本発明における(B)主剤組成物は、(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む。
【0020】
(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂は、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アルキル置換ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキル置換ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリスルフィド変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族基を有する脂環式エポキシ化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらエポキシ樹脂は、固形でも液状でもよく、固形エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。エポキシ樹脂は、単独で用いても混合して用いても良い。
【0021】
(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物は、例えば、3,3’−ジチオジプロピオン酸、トリメチロールプロパン トリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトール テトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコール ジチオグリコレート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社から商品名:カレンズMT(登録商標)BD1として市販)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(昭和電工株式会社から商品名:カレンズMT(登録商標)NR1として市販)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社から商品名:カレンズMT(登録商標)PE1として市販)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)、等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル;末端チオール基含有ポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等のような分子内にチオール基を2個以上有するチオール化合物が使用できる。好ましいポリチオール化合物は、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)である。ポリチオール化合物は、単独で用いても混合して用いても良い。
【0022】
(2)酸無水物の例は、ヘキサヒドロフタル酸無水物、3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、1−メチルナジック酸無水物、5−メチルナジック酸無水物、ナジック酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物が例示され、更に、α−テルピネンやアロオシメン等のテルペン系ジエンもしくはトリエン化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応物、及びこれら酸無水物のうちの不飽和結合を有するものの水素添加物、これら酸無水物の構造異性体若しくは幾何異性体をはじめ、それらの混合物や変性物が例示される。中でもこれら酸無水物の構造異性化、幾何異性化、2種以上の混合等の方法により常温で液状とした酸無水物系硬化剤が例示される。また、酸無水物は、分子内に2個以上の酸無水物基を有する化合物でもよく、この化合物としては、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸ニ無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類を使用することができ、具体的に例示すると、テトラカルボン酸二無水物 としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などがある。酸無水物は、上記のものを単独でも、複数使用してもかまわない。
【0023】
(B)主剤組成物において、エポキシ樹脂:ポリチオール化合物の配合比(モル比)は、70:30〜30:70、好ましくは60:40〜40:60である。
【0024】
(B)主剤組成物において、エポキシ樹脂:酸無水物の配合比(モル比)は、70:30〜30:70、好ましくは60:40〜40:60である。
【0025】
(B)主剤組成物が(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内に2個以上チオール基を持つポリチオール化合物を含む場合は、硬化スピードが速く、(B)主剤組成物が(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び分子内に2個以上酸無水を持つ酸無水化合物を含む場合は、硬化スピードはやや遅めである。
【0026】
本発明の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲内で、充填剤、顔料、酸化防止剤等の慣用成分を添加できる。
【0027】
(B)主剤組成物は、エポキシ樹脂と、ポリチオール化合物又は酸無水物と、必要により慣用成分とを混合することにより製造できる。
【0028】
本発明の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂は、主剤組成物とプライマー組成物がそれぞれに存在する、いわゆるキットの形態である。
【0029】
本発明の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂は、塗料又は接着剤であり得る。
【0030】
本発明は、(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を基材に塗布してプライマー塗布層を得、この塗布層上に、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を塗布して主剤塗布層を得た後、両塗布層を加熱硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法にも関する。
基材としては、プラスチック、金属、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
【0031】
プライマー組成物を基材に塗布する方法としては、浸漬による塗布、筆やはけなどによる塗布、ディスペンサーやスプレーなどによる塗布などが挙げられる。
主剤組成物を塗布する方法としては、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0032】
主剤組成物に対するプライマー組成物の塗布量は、両塗布層を加熱硬化できる量であれば限定されず、当業者には容易に設定できる。
塗布層の加熱硬化は、恒温槽やホットプレートなどによる常法によって行うことができる。
【0033】
本発明は、(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を塗布してプライマー塗布層を得、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を他の基材に塗布して主剤塗布層を得、次いで両塗布層を熱圧着して硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法にも関する。
【0034】
基材としては、上記したものが例示でき、一つの基材と他の基材は、同種の基材でも異なる基材でもよい。
【0035】
プライマー組成物を基材に塗布する方法、主剤組成物を基材に塗布する方法及びプライマー組成物の塗布量と主剤組成物の塗布量は、上記と同様である。
【0036】
塗布層の熱圧着は、ホットプレート、ボンダー、熱プレス機などにより行うことができる。
【0037】
本法によれば、熱圧着することで秒単位での硬化が可能となる。また、プライマー塗布層と主剤塗布層を貼り合せ、熱圧着前に、硬化促進剤が主剤塗布層に浸透できるだけの時間を置けば、厚膜硬化も可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製のYL7175−850S;エポキシ当量184〜194)50重量部とトリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)35重量部を混合して主剤組成物を製造した(モル比 エポキシ樹脂:ポリチオール=50:50)。主剤組成物の製造直後、室温で1ヶ月放置後及び40℃で1ヶ月放置後の粘度を測定した。粘度は、製造直後:1013mPa・s、室温で1ヶ月放置後:1033mPa・s及び40℃で1ヶ月放置後:1317mPa・sであった。
【0040】
(実施例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製のYL7175−860;エポキシ当量235〜255)50重量部と、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)又はジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)35重量部を混合して主剤組成物を製造した。アセトン96部と、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)又は1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)4重量部を混合してプライマー組成物を製造した。
図1に示すように、鉄板(25×70×0.5mm)にプライマー組成物を膜厚5μmに塗布し、別の鉄板(25×70×0.5mm)に主剤組成物を適量塗布した後、2つの鉄板の塗布面を張り合わせた。その後、張り合わせた鉄板をホットプレート(80℃)へ押し付けて硬化性を評価した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0041】
(実施例3)
実施例1と同様にして主剤組成物を製造した。1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)4重量部とアセトン96重量部を混合してプライマー組成物を製造した。
鉄板(25×70×0.5mm)にプライマー組成物を膜厚5μmに塗布し、別の鉄板(25×70×0.5mm)に主剤組成物を適量塗布した後、2つの鉄板の塗布面をスペーサー(厚み:50、100又は300μm)を介して又は介さずして張り合わせた。その後、張り合わせた鉄板をホットプレート(60、80又は100℃)へ押し付け、硬化するまでの時間を確認した。硬化の判断基準は、手で触れても鉄板が動かなくなった時間とした。結果を表2に示す。
【表2】


表2における未硬化部分は、長時間室温放置することにより硬化させることが可能であった。
【0042】
(実施例4)
主剤組成物及びプライマー組成物を実施例3と同様にして製造した。第一のニッケルめっき鋼板(10×10×1mm)の表面にプライマー組成物を膜厚5μmに塗布し、第二のニッケルめっき鋼板(15×15×3mm)の表面に主剤組成物を適量塗布した。2つの塗布面を張り合わせた後、第一のニッケルめっき鋼板側を100℃のホットプレートに10秒間押し付けて硬化して試験片を得た。試験片の常態でのせん断強度及びヒートショック(−40℃×30分/85℃×30分)後のせん断強度を測定したところ、いずれも700N以上(破材)のせん断強度であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、低温硬化、短時間硬化が可能でありながら、ポットライフが向上しており、さらに安定した硬化物の物性を与えるエポキシ樹脂が提供できるので、接着剤、塗料などの用途に適しており、また、硬化時間が短いため、大量生産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】硬化性測定用の試験片の平面図(A)、側面図1(B)及び側面図2(C)を示す。
【符号の説明】
【0045】
1:鉄板
2:スペーサー
3:主剤組成物+プライマー組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物と、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物とを含む主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂。
【請求項2】
硬化促進剤が環状アミンから選択される、請求項1記載の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂。
【請求項3】
ポリチオール化合物が1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)又はジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)である、請求項1又は2記載の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂。
【請求項4】
塗料又は接着剤である、請求項1〜3のいずれか1項記載の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化物。
【請求項6】
(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を基材に塗布してプライマー塗布層を得、この塗布層上に、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を塗布して主剤塗布層を得た後、両塗布層を加熱硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法。
【請求項7】
(A)アミン化合物及びイミダゾール化合物から選択した1以上の硬化促進化合物を含むプライマー組成物を基材に塗布してプライマー塗布層を得、(B)(1)分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂及び(2)分子内にチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物又は酸無水物を含む主剤組成物を他の基材に塗布して主剤塗布層を得、次いで両塗布層を熱圧着して硬化することを含む、主剤−プライマー型熱硬化性エポキシ樹脂の硬化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100704(P2010−100704A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272138(P2008−272138)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】