説明

乗用管理機

【課題】本発明は、乗員シートに着座した乗員が作業機の状態を容易に確認することができ、且つ、必要な転回スペースを小さくできる乗用管理機を提供することを課題とする。
【解決手段】乗用管理機10は、前輪18と、後輪19と、この前輪18と後輪19との中間上方に配置した駆動輪21とにクローラ22を掛け渡してなる三角形クローラ部12を機体11の左右に配置し、乗員が座る乗員シート14を後部に備え、乗員シート14は、左のクローラ22Lの上方に配置されると共に、乗員が足を載せる左右のステップ61L、61Rは、左のクローラ22Lを跨いで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑の耕耘や草取り等の管理に供する乗用管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪と、後輪と、この前輪と後輪との中間上方に配置した駆動輪とにクローラを掛け渡してなる三角形クローラ部を機体の左右に配置した乗用管理機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−35924公報(図1、図3)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の技術の基本構成を説明する図であり、乗用管理機100は、前輪102と後輪103とこの前輪102と後輪103との中間上方に配置した駆動輪103とにクローラ104を掛け渡してなる三角形クローラ部105を機体106の側方に配置し、乗員が座る乗員シート107を有する運転室108を前輪102の上方に配置したものである。また、機体106の後方には、耕耘刃を備える作業機109が配置され、この作業機109は機体106に連結されている。111はエンジン、112は操舵ハンドルである。
【0004】
図7は図6の7矢視図であり、乗員シート107は、機体106の幅方向中心に配置されている。乗員シート107に着座した乗員は、転回するときなどに、機体106の後方に連結されている作業機109の状態を目視で確認する場合がある。
作業機109は乗員の真後ろに配置されている装置である。作業機109の状態を確認する動作は、右又は左に体を大きく捻る動作を伴っており、煩雑なものであった。
【0005】
また、運転室108は、三角形クローラ部105の前端部よりも前方に張り出すように配置されているので、運転室108が平面視で三角形クローラ部103の範囲内に配置されている場合と較べると、転回するときには、大きな転回スペースが必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乗員シートに着座した乗員が作業機の状態を容易に確認することができ、且つ、必要な転回スペースを小さくできる乗用管理機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、前輪と、後輪と、この前輪と後輪との中間上方に配置した駆動輪とにクローラを掛け渡してなる三角形クローラ部を機体の左右に配置し、乗員が座る乗員シートを後部に備え、畑の耕耘や草取り等の管理に供する乗用管理機において、乗員シートは、左のクローラの上方に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、乗員が足を載せる左右のステップは、前記左のクローラを跨いで配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、駆動輪は、前輪と後輪との中間点より前輪寄りに設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、機体の前部に載せたエンジン及びこのエンジンを覆うカバーを含め、機体の前端部は、三角形クローラ部の前端部と同位置又は前記三角形クローラ部の前端部よりも後方に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、乗員シートを含め、機体の後端部は、三角形クローラ部の後端部よりも前方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、乗員シートは、車両の後部で左のクローラの上方に配置されている。すなわち、乗員シートは、機体の幅方向中心に対して左にずらして配置されている。
後方の作業機を目視確認する必要があれば、乗員は身体を右に捻ればよい。すなわち、乗員は身体を左右に捻る必要がない。乗員は容易に後方に配置した作業機の状態が確認できるようになるので、耕耘時において、乗用管理機の操縦を容易に行うことができる。従って、乗用管理機の操縦性を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、左右のステップは、左のクローラを跨いで配置されているので、左右のステップを、クローラの上面よりも低い位置に配置することができるようになる。クローラの上面高さよりも左右のステップが、低くなれば、乗員シートの地上高さを下げることができる。この結果、乗員の着座位置を低くすることができ、車両の重心を低く抑えることができる。車両の重心が低くなるので、例えば、凹凸を有する圃場で作業を行う場合などにおいて、乗用管理機の走行安定性を高めることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、駆動輪は、前輪と後輪との中間点より前輪寄りに設けられている。駆動輪が中間点に設けられている場合に較べると、ステップを前方へ移動させることができると共に、より低い位置に配置することができる。
ステップを前方へ移動させることができれば、乗員シートを前方へ移動させることができ、乗用管理機の長さを短縮することが可能となる。また、ステップをさらに下げることができるので、車両の低重心化をさらに促すことができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、機体の前部に載せたエンジン及びこのエンジンを覆うカバーを含め、機体の前端部は、三角形クローラ部の前端部と同位置又はその後方に配置されている。つまり、機体の前端部は、三角形クローラの先端部から前方に張り出していないので、乗用管理機の操縦が容易になると共に必要な転回スペースを小さくできる。
【0016】
請求項5に係る発明では、乗員シートを含め、機体の後端部は、三角形クローラ部の後端部よりも前方に配置されている。つまり、機体の後端部は、三角形クローラよりも後方に張り出していないので、車両の操縦が一層容易になると共に、より限られた転回スペースで転回が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る乗用管理機の左側面図であり、乗用管理機10は、畑の耕耘や草取り等を行う機械であり、機体11と、この機体11の側方に設ける走行手段としての三角形クローラ部12と、機体11の前部を覆うカバー13と、車両の後部に乗員が座る乗員シート14と、を備える。
【0018】
三角形クローラ部12は、機体11から斜め前下方及び斜め後下方に延設した前後のクローラ支持腕15F、15Rと、これら前後のクローラ支持腕15F、15Rの下端部に水平に設けたクローラ支持フレーム16と、このクローラ支持フレーム16の前部及び後部に取り付けた前輪18及び後輪19と、この前輪18及び後輪19の中間上方に配置した駆動輪21と、これら前輪18、後輪19及び駆動輪21に掛け渡したクローラ22と、を主要な構成要素とする。そして、駆動輪21によりクローラ22を駆動する。
図中、23は補助輪、24は遊転輪、25は遊転輪支持腕である。
【0019】
図2は本発明に係る乗用管理機の左側面図(カバーを取り外した状態)、図3は図2の3矢視図である。以下、図2〜図3を参照して説明を行う。
機体11は、枠体27と、この枠体27の幅方向内側に配置すると共に車両長手方向に掛け渡す前後フレーム28、28と、枠体27の後部に配置し幅方向に掛け渡すクロスフレーム29と、を備える。
【0020】
前後フレーム28、28には、変速機ユニット31が取り付けられ、この変速機ユニット31の前方には、駆動源としてのエンジン32が取り付けられている。
変速機ユニット31の後方でクロスフレーム29には、耕耘や草取り等を行う作業機33に動力を供給するギヤボックスとしての動力供給ユニット34が取り付けられている。
【0021】
機体11の後方には、作業機33が配置され、この作業機33と機体11との間は、作業機33を牽引する連結棒35にて連結され、動力供給ユニット34と作業機33との間には、動力を伝達する動力伝達軸36が配置されている。
【0022】
エンジンの出力軸37と変速機ユニットの入力軸38には、各々プーリ41、42が取り付けられ、これらのプーリ41、42の間には、動力伝達用の第1ベルト43が掛け渡されている。変速機ユニット31には、左右の流体変速機45L、45Rが含まれており、左右の流体変速機45L、45Rから左右外方に出力軸としての左右の駆動軸46L、46Rが延設され、これらの駆動軸46L、46Rの先端部には、クローラ22に駆動力を伝達する駆動輪21L、21Rが取り付けられている。
【0023】
駆動輪21L、21Rは、前輪18L、18Rと後輪19L、19Rとの中間点47、47より前輪18寄りに設けられている。ここで、中間点47とは、車両長手方向で前輪18と後輪19から等距離にある点をいう。
また、変速機ユニットの出力軸48と動力供給ユニットの入力軸51には、各々プーリ52、53が取り付けられ、これらのプーリ52、53には第2ベルト54が掛け渡されて、動力供給ユニット34に動力が供給される。
【0024】
乗員シート14は、機体11に取り付けた支柱56と、この支柱56の上端に取り付け座部材57と、この座部材57に被せたクッションとしてのシート部58からなる。
乗員シート14は、左のクローラ22の上方に配置され、その前方には乗員Pが足を載せる左右のステップ61L、61Rが配置されている。
図中、62は操作盤、63L、63Rは操作レバー、64はブレーキレバー、65はクローラカバーである。
【0025】
流体変速機45L、45Rは、HST(hydrostatic transmission)と通常呼ばれ、可変容量形の斜板式油圧ポンプと油圧モータとを内蔵し、油圧ポンプを駆動して油圧を発生させ、この油圧をもつオイルを油圧モータに供給して油圧モータを回転させ、流体変速機の駆動軸46L、46Rに出力するものであり、操作レバー63L、63Rを操作して斜板の傾斜角を変更することで、入力軸を一定速度で回転させつつ、駆動軸46L、46Rを増速、減速、正転、停止、及び逆転させることができる。
【0026】
機体の前端部11fは、機体11の前部に載せたエンジン32及びこのエンジン32を覆うカバー13を含め、三角形クローラ部の前端部12fと略同位置に配置されている。つまり、機体の前端部11fは、三角形クローラの先端部12fから前方に張り出していないので、操縦が容易になると共に、限られた転回スペースで転回操作を行うことが可能となる。
なお、機体の前端部11fを、三角形クローラ部の前端部12fよりも後方に設けることは差し支えない。
【0027】
また、機体の後端部11rとしての乗員シートの後端部14rは、三角形クローラ部の後端部12rよりも前方に配置されている。つまり、機体の後端部11rは、三角形クローラ22よりも後方に張り出していないので、車両の操縦が一層容易になると共に、一層限られた転回スペースで転回操作を行うことが可能となる。
【0028】
図4は図3の4−4線断面図であり、左のクローラ22Lの側方で、その上面22sよりも低い位置には乗員Pが足を載せる左右のステップ61L、61Rが設けられている。つまり、左右のステップ61L、61Rは、左のクローラ22Lを跨いで配置されている。図において、クローラ22Lの幅(W)は、乗員Pが跨ぐことのできる幅であり、例えば、W=200mmに設定されている。Wの値はこれに限定されないものとする。
【0029】
左右のステップ61L、61Rは、左のクローラ22Lを跨いで配置されているので、クローラの上面22s高さよりもステップの上面61Ls、61Rs高さを低くでき、乗員シート14の上面14s高さを低くすることができる。乗員シートの上面14s高さが低くなれば、乗員Pの着座位置を低くすることができる。
【0030】
つまり、左右のステップ61L、61Rが、左のクローラ22Lを跨いで配置されることで、乗員Pの着座位置を低くでき、乗員Pの着座位置が低くなれば、車両の重心を低く抑えることができる。車両の重心が低くなるので、例えば、凹凸を有する圃場などで作業を行う場合などにおいて、乗用管理機10の走行安定性を高めることができる。
【0031】
図5は本発明に係る乗用管理機の後部に備えた乗員シートの配置を説明する比較例図及び実施例図である。
(a)は比較例を示すものであり、駆動輪21は、前輪18と後輪19との中間点47に設けられている。
(b)は実施例1を示すものであり、駆動輪21は、前輪18と後輪19との中間点47より前輪18寄りに設けられている。駆動輪21が前輪18寄りに設けられているので、駆動輪21が中間点47に設けられる場合に較べると、三角形クローラ部12とステップ61間の距離が確保し易くなり、ステップ61はその距離の分だけ前方に移動可能となる。ステップ61の位置は前方に移動可能となるので、ステップ61を前方に移動させた量(L2−L1)だけ乗員シート14の位置を前方に移動させることができる。
【0032】
乗員シート14が前方に移動されると、乗用管理機の前部としての三角形クローラ部の前端部12fから乗員シート14の後端部14rまでの距離(L2)を短くできる。特に、乗員シート14の後端部14rが、三角形クローラ部12の後端部12rよりも後方に配置されている場合には、移動可能な距離(L2−L1)によっては、乗員シート14の後端部14rは、クローラ部12の後端部12rよりも前方に配置することができる。従って、この場合には、乗用管理機の長さを短くすることができる。
【0033】
(c)は実施例2を示すものであり、(b)に加えて乗員が足を載せる左右のステップ61L、61Rからなるステップ61は、クローラ22を跨いで配置されている。このため、ステップ61は、クローラの上面22sよりも低い位置H3(H3<H2)に配置することができるようになる。
【0034】
図4に戻って、クローラの上面22sの高さよりもステップの上面61Ls、61Rsの高さを低くできるので、乗員シートの上面14sの高さを低くすることができる。乗員シートの上面14s高さが低くなれば、乗員Pの着座位置は低くなる。
【0035】
つまり、左右のステップ61L、61Rが、左のクローラ22Lを跨いで配置されることで、乗員Pの着座位置を低くでき、乗員Pの着座位置が低くなれば、車両の重心を低く抑えることができる。車両の重心が低くなるので、例えば、凹凸を有する圃場などで作業を行う場合などにおいて、乗用管理機の走行安定性を高めることができる。
【0036】
図2及び図3を参照して、本発明に係る乗用管理機の作用説明を以下に行う。
乗員シート14は、機体11の後部で左のクローラ22Lの上方に配置されている。乗員シート14は、機体11の幅方向中心に左にずらして配置されている。後方の作業機33を目視確認する必要があるときに、乗員Pは身体を右に捻ればよい。すなわち、乗員Pは身体を左右に捻る必要がない。乗員Pは容易に後方に配置した作業機の状態が確認できるようになるので、耕耘時において、乗用管理機10の操縦を容易に行うことができる。
乗用管理機の操縦を容易に行えるようになり、乗用管理機10の操縦性を高めることができる。
【0037】
尚、請求項1では、乗員が足を載せるステップを、クローラの上方に配置することは差し支えない。
請求項2では、クローラを駆動する駆動輪を、前輪と後輪の中間点より後輪寄りに配置することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、三角形クローラを備え畑の耕耘などの管理に供する管理機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る乗用管理機の左側面図である。
【図2】本発明に係る乗用管理機の左側面図(カバーを取り外した状態)である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る乗用管理機の後部に備えた乗員シートの配置を説明する比較例図及び実施例図である。
【図6】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【図7】図6の7矢視図である。
【符号の説明】
【0040】
10…乗用管理機、11…機体、11f…機体の前端部、11r…機体の後端部、12…三角形クローラ部、12f…三角形クローラ部の前端部、12r…三角形クローラ部の後端部、13…カバー、14…乗員シート、18…前輪、19…後輪、21…駆動輪、22…クローラ、22L…左のクローラ、22R…右のクローラ、32…エンジン、47…中間点、61…ステップ、61L…左のステップ、61R…右のステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、後輪と、この前輪と後輪との中間上方に配置した駆動輪とにクローラを掛け渡してなる三角形クローラ部を機体の左右に配置し、乗員が座る乗員シートを後部に備え、畑の耕耘や草取り等の管理に供する乗用管理機において、
前記乗員シートは、左のクローラの上方に配置されていることを特徴とする乗用管理機。
【請求項2】
前記乗員が足を載せる左右のステップは、前記左のクローラを跨いで配置されていることを特徴とする請求項1記載の乗用管理機。
【請求項3】
前記駆動輪は、前記前輪と前記後輪との中間点より前記前輪寄りに設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗用管理機。
【請求項4】
前記機体の前部に載せたエンジン及びこのエンジンを覆うカバーを含め、前記機体の前端部は、前記三角形クローラ部の前端部と同位置又は前記三角形クローラ部の前端部よりも後方に配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の乗用管理機。
【請求項5】
前記乗員シートを含め、前記機体の後端部は、前記三角形クローラ部の後端部よりも前方に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の乗用管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6869(P2009−6869A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170577(P2007−170577)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(391004470)北海道ホンダ販売株式会社 (4)
【Fターム(参考)】