説明

乾燥リポソーム製剤

【課題】保存性に優れたトコフェリルリン酸エステルを含有するリポソーム製剤を提供する。
【解決手段】 化学式1でR、Rが水素、ナトリウムから選ばれ、少なくとも一方がナトリウムであるトコフェリルリン酸エステル又はその塩類、コエンザイムQ10(ユビキノン)を配合した乾燥リポソーム製剤とする。特に、リポソームは大豆由来のリン脂質又は水素添加リン脂質で形成することが望ましい。また、乾燥は凍結乾燥法によることが望ましい。乾燥リポソーム製剤を水性の製剤に溶解して使用する場合には、その際の溶解性を配慮して、糖類を配合することが望ましい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類をリポソームに安定に含有させた乾燥リポソーム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンEとして広く認知されているトコフェロールの誘導体であるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類は生体内においてトコフェロールに変換されることより、薬物としての利用価値は高い。トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類は、トコフェロールと比較して高い水溶性を示すが、水溶液または乳化系に配合する際には凝集沈殿を引き起こさず配合させることは非常に困難であり、高度な配合組成技術が知られている(特許文献1)。一方、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類は、コラーゲンペプチドを組み合わせることによりコラーゲン合成促進効果、シワ、タルミの改善効果が増大することが知られている(特許文献2)。また、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類は、アクネ菌に対して特異的な優れた抗菌性を有していることも知られている(特許文献3)。
【0003】
さらに、コエンザイムQ10(ユビデカレノイン)は古くから抗酸化能が知られており、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類との併用で肌荒れ防止効果、紫外線による肌の色素沈着改善効果さらにニキビ予防・治癒効果が知られている(特許文献4)。しかしながら、皮膚への経皮吸収性を向上させて効果をより高めるために、リン脂質のリポソーム膜中にトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類を内包させて用いることは報告されていない。
【0004】
リポソームは構造的に安定ではなく、懸濁液として調製しても通常はリポソーム粒子同士の凝集、融合や沈殿物の生成が生じるが、リン脂質及び薬剤をt−ブタノール、n−ブタノール、ジオキサン、酢酸などの有機溶媒に溶解し、凍結して乾燥することで安定化することが知られている(特許文献5)。また、有機溶媒を用いずにリン脂質を水性媒体中に分散させた後、該分散液を凍結乾燥して安定化することも知られている(特許文献6、特許文献7)。さらに、多価アルコールや糖類を含有させ、イオン強度を約20mM以下にし、凍結して安定にする(特許文献8)あるいは凍結乾燥又は噴霧乾燥することで安定化することも知られている(特許文献9)。しかしながら、薬物や化粧品成分を内包させたリポソームの安定性は開示されていない。また、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類を内包させた凍結乾燥リポソーム製剤は、凝集や長期保存性の問題があり、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類を内包させた安定な凍結乾燥リポソーム製剤の報告はない。
【0005】
【特許文献1】:特開平11−199465号公報
【特許文献2】:特開2006−143660号公報
【特許文献3】:特開2006−213633号公報
【特許文献4】:特開2003−238333号公報
【特許文献5】:特開昭53−142514号公報
【特許文献6】:特開昭57−82310号公報
【特許文献7】:特開昭57−82311号公報
【特許文献8】:特開昭64−9931号公報
【特許文献9】:特開昭64−3115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、保存安定性に優れたトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類を含有するリポソーム製剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの解決課題に対し検討した結果、コエンザイムQ10を配合することによりトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩をリン脂質により形成されるリポソーム膜中に内包させた乾燥リポソーム製剤が経時的な安定性に優れることを見出した。すなわち、本発明は、化学式1で表されるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩、コエンザイムQ10を配合した乾燥リポソーム製剤としている。
【0008】
【化1】

【0009】
リポソームは、天然由来のリン脂質あるいは合成リン脂質を用いることができるが、大豆由来のリン脂質及び/又は水素添加リン脂質で形成すると製造コストの点で望ましい(請求項3)。
【0010】
リン脂質としては、例えば、皮膚外用剤に使用する場合には、安全性の観点から大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等を使用することが望ましく、必要に応じてその一種または二種以上を用いることができる。特に大豆由来のリン脂質及び/又は水素添加リン脂質が特に望ましい。
【0011】
リポソームを構成するリン脂質の配合量は、乾燥リポソーム製剤中糖類の含有量を除いた重量%で、47〜70%程度が望ましく、特に65〜70%が望ましい。
【0012】
本発明に用いられる化学式1で表されるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩は、R、Rが水素、アルカリ金属、有機塩基から選ばれる。
【0013】
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が用いられる。また、有機塩基としては、L−アルギニン、アミノメチルプロパノール等の有機塩基が用いられる。
また、化学式1で表されるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類のうち、R、Rは、水素、ナトリウムから選ばれ、少なくとも一方がナトリウムとすると水への溶解性が高くなり望ましい(請求項2)。
【0014】
また、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩の配合量は、乾燥リポソーム製剤中糖を除いた重量%で、25〜50%程度が望ましく、特に27〜30%が望ましい。
【0015】
コエンザイムQ10は、ユビキノン10、ユビデカレノンまたは補酵素UQ10等として、日本薬局方に記載されている。本発明で用いる成分コエンザイムQ10は、動物から抽出されるものや合成法及び発酵法で得られるものが挙げられる。本発明のリポソーム製剤を化粧料に使用する場合には、市販品として、KOUENZYME(ZMC-KOUGEN製、商品名)、食品素材コエンザイムQ10(日清ファルマ(株)製、商品名)、カネカ・コエンザイムQ10(鐘淵化学(株)製、商品名)、CoQー10協和(協和発酵工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0016】
コエンザイムQ10の配合量は、乾燥リポソーム製剤中糖類の含有量を除いた重量%で、1〜13%程度が望ましく、特に1.5〜7%が望ましい。
【0017】
糖類は、リポソーム製剤として必ずしも必要ではないが、使用時に水性の製剤(精製水、あるいは化粧水、美容液、ジェル、乳液等の製剤)に溶解して使用する場合には、その溶解性を高めるために配合することが望ましい。糖類としては、特に限定はなく、必要に応じてその一種または二種以上を用いることができる。皮膚外用剤に使用されるものであれば糖類の中でも 安全性の観点からスクロース、マルトース、トレハロースなどが望ましく、特にスクロースは、経時的に着色することがなく望ましい。(請求項4、請求項5)。
【0018】
糖類の配合量は、使用時に水性の製剤への溶解性の点から乾燥リポソーム製剤の重量%で、58〜75%程度が望ましく、特に73〜75%が望ましい。
【0019】
次に本発明の乾燥リポソーム製剤を製造するには、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩、コエンザイムQ10と糖類を内包させたリポソーム懸濁液を作製し、乾燥することにより得られる。
【0020】
その一例を具体的に説明すると、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩、コエンザイムQ10及び大豆由来のリン脂質及び/又は水素添加リン脂質をエタノールで溶解し、水に溶解させたスクロース水溶液を加え65℃に加温しながら、ホモミキサーで乳化する。pH調整剤等の溶質を添加し、pHを調整後、水で全量を調整する。この乳化した懸濁液を加圧ろ過し、リポソーム懸濁液とする。例えば、凍結乾燥する場合には、リポソーム懸濁液の溶質と水の重量比は1:5〜1:50程度とする。溶質に対して水の量が5倍以下であると、均一なリポソーム水分散液とならず、50倍以上であると凍結乾燥の効率が悪い。凍結乾燥の条件は凍結乾燥するリポソーム懸濁液をバイヤルに充填し、約−60℃〜−40℃で凍結後、真空度を約1〜10パスカル(Pa)にして、約−40℃〜25℃まで昇温しながら、真空乾燥する。これにより乾燥リポソーム製剤を得ることができる。
【0021】
なお、リポソーム懸濁液の乾燥方法は通常の噴霧乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法等を用いてもよい。特に凍結乾燥法により乾燥すると、復水時の溶解性が向上するため、使用時に水性の製剤に溶解して使用する皮膚外用剤に適している。(請求項7)。
【0022】
また、本発明の乾燥リポソーム製剤は、使用時に水性の製剤(精製水、あるいは化粧水、美容液、ジェル、乳液等の製剤)に溶解して使用する皮膚外用剤とすることができる。また、本発明の乾燥リポソーム製剤を水分含有量の低い他の化粧品基剤と混合したものを、使用時に水性の製剤(水、あるいは化粧水、美容液、ジェル、乳液等の製剤)に溶解して使用する皮膚外用剤とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
乾燥リポソーム製剤の調製
トコフェリルリン酸ナトリウム(以下VEPと呼ぶ)3.2g、コエンザイムQ10(以下CoQ10と呼ぶ)を0.16g及び水素添加大豆レシチン7.6gにエタノール8.0gを加え溶解した。この溶解液にスクロース32.0gを水294.0gに溶解した水溶液326gを加え、65℃で加温しながら、ホモミキサーで10,000rpm回転にて20分間乳化した。乳化後、リン酸緩衝液にて、pH7に調整し、水で全量を400.0gとした。乳化した溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて加圧ろ過した。メンブランは2枚重ねとし、4回の加圧ろ過を行い、リポソーム懸濁液とした。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、約−60℃〜−40℃で凍結後、真空度を約1〜10パスカル(Pa)にして、約−40℃〜25℃まで昇温しながら、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この実施例1の乾燥リポソーム製剤を、水10mLで復水すると、VEP濃度は0.2%、CoQ10濃度は0.01%となる。
【実施例2】
【0025】
実施例1の製法のCoQ10を0.32gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、凍結乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10濃度は0.02%となる。
【実施例3】
【0026】
実施例1の製法のCoQ10を0.37gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10の濃度は0.023%となる。
【実施例4】
【0027】
実施例1の製法のCoQ10を0.40gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、凍結乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10の濃度は0.025%となる。
【実施例5】
【0028】
実施例1の製法のCoQ10を0.43gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10の濃度は0.027%となる。
【実施例6】
【0029】
実施例1の製法のCoQ10を0.48gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10の濃度は0.03%となる。
【実施例7】
【0030】
実施例1の製法のCoQ10を0.80gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10濃度は0.05%となる。
【実施例8】
【0031】
実施例1の製法のCoQ10を1.6gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%、CoQ10濃度は0.1%となる。
【実施例9】
【0032】
実施例1の製法のVEPを8.0g、CoQ10を0.48gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.5%、CoQ10濃度は0.03%となる。
【実施例10】
【0033】
実施例1の製法のCoQ10を0.48g、スクロースを16.0gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、コエンザイムQ10濃度は0.3%、スクロース濃度は1.0%となる。
【比較例1】
【0034】
VEP3.2gと水素添加大豆レシチン7.6gにエタノール8.0gを加え溶解した。この溶解液にスクロース32.0gを水に溶解した水溶液326gを加え、65℃で加温しながら、ホモミキサーで10,000rpm回転にて20分間乳化した。乳化後、リン酸緩衝液にて、pH7に調整し、水で全量を400.0gとした。乳化した溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて加圧ろ過した。メンブランは2枚重ねとし、4回の加圧ろ過を行い、リポソーム懸濁液とした。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、約−60°C〜−40°Cで凍結後、真空度を約1〜10パスカル(Pa)にして、約−40°C〜−20°Cまで昇温しながら凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、水10mLの復水により、VEP濃度は0.2%となる。
【比較例2】
【0035】
VEPとスクワランを配合した乾燥リポソーム製剤
VEP3.2g、スクワランを0.48g及び水素添加大豆リン脂質7.6gにエタノール8.0gを加え溶解した。この溶解液にスクロース50.4gを水に溶解した水溶液326gを加え、65℃で加温しながら、ホモミキサーで10,000rpm回転にて20分間乳化した。乳化後、リン酸緩衝液にて、pH7に調整し、水で全量を400.0gとした。乳化した溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて加圧ろ過した。メンブランは2枚重ねとし、4回の加圧ろ過を行い、リポソーム懸濁液とした。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、VEP濃度が5.2重量%、スクワラン濃度が0.8重量%となる。
【比較例3】
【0036】
VEPとコレステロールを配合した乾燥リポソーム製剤
VEP3.2g、コレステロールを0.48g及び水素添加大豆リン脂質7.6gにエタノール8.0gを加え溶解した。この溶解液にスクロース50.4gを水に溶解した水溶液326gを加え、65℃で加温しながら、ホモミキサーで10,000rpm回転にて20分間乳化した。乳化後、リン酸緩衝液にて、pH7に調整し、水で全量を400.0gとした。乳化した溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて加圧ろ過した。メンブランは2枚重ねとし、4回の加圧ろ過を行い、リポソーム懸濁液とした。このリポソーム懸濁液2.5gをバイヤルに充填し、凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を得た。この乾燥リポソーム製剤は、VEP濃度が5.2重量%、コレステロール濃度が0.8重量%となる。
【0037】
以上、実施例1〜10、比較例1〜3の配合量及びリポソーム製剤の組成、及び糖類の含有量を除いた組成を表1〜表3に纏めた。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
これら実施例1〜10、比較例1〜3について、乾燥前後のリポソーム製剤の粒子径及び乾燥したリポソーム製剤を40°Cに保温した状態に維持して7日経過後、14日経過後及び28日経過後についてそれぞれ粒子径を測定した。
【0042】
乾燥前のリポソーム製剤は蒸留水にて10倍に希釈し、また、乾燥したリポソーム製剤は各2本づつを蒸留水10mLで復水したのち更に蒸留水で10倍に希釈した水溶液を、それぞれ粒子径測定サンプルとし、動的光散乱法(NICOMP 380ZLS:Volume Weighted Gaussian Distribution法)により粒子径を測定した。その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
各リポソーム懸濁液の粒子径は、実施例1〜10、比較例1〜3のすべてが135nm〜162nmの範囲であった。
【0045】
乾燥直後の粒子径は、比較例1を除き、いずれもリポソーム懸濁液の粒子径とほぼ同程度であった。CoQ10を配合していない比較例1では、リポソームの粒子径が400nm以上となっており、凍結乾燥前より、非常に大きく変化した。なお、CoQ10を1.6gと多量に配合した実施例8では、復水後に僅かながら沈殿物が生じた。また、VEPを8.0gと多量に配合した実施例9では、復水時の溶解性が余り良好ではなく、また、後に沈殿物が生じた。
【0046】
40℃の経時保存後のリポソームの粒子径は、実施例1〜10では、7日後、14日後、さらに28日後の何れも粒子径はほぼ同等程度で、大きな変動は見られず、安定していた。なお、糖であるスクロースを16gと少量配合した実施例10では、40℃の保存において、わずかながら凝集傾向が認められて、粒子径が除々に大きくなって凝集する傾向が示された。
【0047】
また、CoQ10に代えてスクワランを配合した比較例2、及びコレステロールを配合した比較例3の保存性を検証したが、7日後には、542nm、906nmと粒子径が非常に大きく凝集していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

化学式1(R1、R2はそれぞれ水素、アルカリ金属、有機塩基から選ばれる。)で表されるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類およびコエンザイムQ10を配合した乾燥リポソーム製剤。
【請求項2】
化学式1で表されるトコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類のうち、R、Rが水素、ナトリウムから選ばれ、少なくとも一方がナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の乾燥リポソーム製剤。
【請求項3】
リポソームが大豆由来のリン脂質及び/又は水素添加リン脂質で形成される請求項1、2記載の乾燥リポソーム製剤。
【請求項4】
糖類を配合した請求項1〜3記載の乾燥リポソーム製剤。
【請求項5】
糖類が、スクロースであることを特徴とする請求項4記載の乾燥リポソーム製剤。
【請求項6】
請求項1〜5記載の乾燥リポソーム製剤を水性の製剤に溶解することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項7】
トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩類およびコエンザイムQ10及びリン脂質及び/又は水素添加リン脂質を低級アルコールで溶解した後、水を加えて乳化し、その後リポソーム懸濁液を乾燥させた乾燥リポソーム製剤の製造方法。
【請求項8】
リポソーム懸濁液を凍結乾燥させた請求項7記載の乾燥リポソーム製剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−161503(P2009−161503A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3228(P2008−3228)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(390010205)第一ファインケミカル株式会社 (23)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】