説明

乾燥肌の処置のためのヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの使用

本発明は、生理学的に許容される媒質中に、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のC〜Cアルコールを有するヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上を含有する組成物を、肌または頭皮に局所的に適用することを含む、乾燥肌または乾燥頭皮の美容処置方法に関する。組成物は、美容用途で、特に更年期後の肌の乾燥を処置するため、または皮膚科学的用途で、特に皮膚炎の形態の脂漏過少性乾燥肌に関連した疾患を処置するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容される媒質中に、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のC〜Cアルコールを有するヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上を含有する組成物を、肌または頭皮に局所的に適用することを含む、乾燥肌または乾燥頭皮の美容処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
35歳から、また特に更年期後、多数の女性が、乾燥肌であることや年齢・更年期に起因する不快な効果または美しくない効果(表皮の剥離、さえない肌の色、肌のたるみ、顔面のつっぱり)についての不平をしばしば訴える。この肌の乾燥は、現在では知られているように、年齢とともに皮脂の生成が減少することに起因する。
【0003】
さらに、皮脂機能がまだ活発でない小児では、アトピー性皮膚炎に進行する可能性のある乾燥肌の徴候がしばしば見られる。
【0004】
皮脂は、皮脂腺で自然に生成されるもので、エクリン腺またはアポクリン腺により汗と共に生成され、表皮のための天然の保湿剤となっている。本質的に、皮脂は、ほとんど脂質の複合混合物からなる。
【0005】
従来、皮脂腺は、スクワレン、トリグリセリド、脂肪族ワックス、コレステロールワックスと、場合によっては遊離コレステロールを生成する(Stewart, M. E. , Semin. Dermatol. 11, 100-105 (1992))。細菌性リパーゼの作用は、遊離脂肪酸中にトリグリセリドの可変部を転化させる。
【0006】
セボサイト(sebocyte)は、皮脂腺のコンピテント細胞である。皮脂の生成は、この細胞の末端分化のプログラムと関連している。この分化の間、セボサイトの代謝活性は、本質的に、脂質生合成(脂質生成)と、さらに正確には脂肪酸とスクワレンのネオ合成に重点が置かれる。
【0007】
それゆえ、皮脂腺の細胞(セボサイト)による皮脂を構成している脂質の生成を刺激する化合物は、脂漏過少性乾燥肌、すなわち額の皮脂含有量が、100μg/cm未満を示す肌の処置に明らかに有益である。
【0008】
このため、US-4496556の特許では、皮脂の生成を増大するため、局所的に投与される、副腎より分泌されるステロイドであるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)またはそのエステルを使用することが提案された。
【特許文献1】US-4496556
【特許文献2】EP-0953345
【特許文献3】WO01/43705
【特許文献4】WO03/055444
【特許文献5】FR-2816843
【特許文献6】FR-2368708
【非特許文献1】Stewart, M. E. , Semin. Dermatol. 11, 100-105 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、規制により、化粧品業界で、この種の化合物の使用が常に可能なわけではない。さらに、この化合物が、脂漏過少性肌に充分な効能があるわけではない。このように、脂漏過少性乾燥肌を処置するために、皮脂機能を有効に刺激するための化粧的に許容される化合物が、未だに要求されている。
【0010】
出願人は、驚くべきことに、所定のヒドロキシスチルベンのエーテルが、この要求を満足できることを見出した。
【0011】
レスベラトロール(resveratrol)やピノシルビン(pinosylvin)などのヒドロキシスチルベンは、特にブドウのつる(葉、茎、果実)といった植物や、特にいたどり(Polygonum cuspidatum)といったタデ(Polygonum)属の植物から製造されるスチルベンである。これらの化合物は、特に、肌への微生物の付着を減らすことができ、また、結果として、アクネ、ふけまたは不快な臭気の処置を目的とした化粧学的製品または皮膚科学的製品に、またさらに特に身体衛生用製品に、有用であることが記載されている(EP-0953345)。また、後者の薬効を相乗的に増すため、特に肌を明るくするため、これらをレチノイドと組合わせて使用することが提案されている(WO01/43705)。
【0012】
最後に、WO03/055444の明細書には、特にコラーゲンの合成と繊維芽細胞の増殖を刺激することにより、皮膚老化の徴候を処置するのに使用できる、アルキルエーテルを含む、多大な種類のレスベラトロール類似体が開示されている。
【0013】
しかしながら、出願人の知る限りでは、ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルが、乾燥肌、特に脂漏過少性肌の処置に有益であることは、未だ提案されたことがない。
【0014】
一方、レスベラトロールは、5α−還元酵素の阻害因子として記載されており、それから当然のこととして、脂肪性肌の処置に適用することが見出せる(FR-2816843)。実際、出願人は、レスベラトロールが皮脂を生成するセボサイトの能力を減少させることを立証した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、あらゆる予想に反して、出願人は、ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルが、皮脂を生成するセボサイトの能力を増大させることに気づいた。
【0016】
それゆえ、本発明の主題は、生理学的に許容される媒質中に、式(I):
【化1】

[上式中、RとRは独立に、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のC〜Cアルキル基を表し、
mとnは独立に、0〜3の整数で、mとnは同時に零にならないと理解される。]
のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルまたはそのシス異性体の少なくとも一種以上を含有する組成物を、肌または頭皮に局所的に適用することを含む、乾燥肌または乾燥頭皮の美容処置方法である。
【0017】
また、本発明の主題は、乾燥肌または乾燥頭皮の処置剤として、上記式(I)のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上の美容的使用である。
【0018】
本発明にしたがって使用される組成物は、特に、脂漏過少性肌や脂漏過少性頭皮の処置に適していて、それゆえ、例えば、FR-2368708に記載された方法により、額で測定すると、皮脂含有量が100μg/cm未満であることを示す個体に、適用するのに有益である。
【0019】
本発明に係る組成物は、セボサイトによる皮脂生成を回復することを可能にし、そして同様の徴候により、乾燥肌および乾燥頭皮の快適さを改善することを可能にする。
【0020】
また、この組成物は、肌のつっぱりおよび/または、乾燥に起因する肌および/または髪のさえないおよび/または生気がない外観に対抗することを可能にする。
【0021】
また、本発明の主題は、脂漏過少性乾燥肌に関連した疾患、特に皮膚炎の形態を処置することを目的とした組成物、特に皮膚科学的組成物を調製するために、上記ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの使用である。
【0022】
本発明の使用に好ましい式(I)の化合物は、n=2であって、m=0または1のもの、すなわちレスベラトロールやピノシルビンのアルキルエーテルであり、特にこれらヒドロキシスチルベンのメチルエーテル、すなわちR基およびR基のすべてが、メチル基を表す化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルは、各種のカップリング反応を用いる合成方法、例えば、Mc Murry (N. A. Ali, K. Kondo, Y. Tsuda, Chem. Pharm. Bull., 40 (5), 1130-1136, (1992) ), Wittig (N. A. Ali, K. Kondo, Y. Tsuda, Chem. Pharm. Bull. , 40 (5), 1130-1136, (1992) ), Perkin (Spath E. , Kromp K. , Chem. Ber. , 1941, 74,189-192) および Heck (Synlett, 1998,792) 反応として知られている合成方法にしたがって調製される。
【0024】
レスベラトロールのトリメチルエーテルは、特に、Phytochemistry, 24 (7), 2309-12(1998)および図1に記載された製造方法にしたがって、合成により得られる。
【0025】
この製造方法によれば、市販のジメトキシベンジルアルコールが、対応する臭化物に転化され、臭化物それ自身はホスホン酸ジエチルに転化される。収率は、精製および蒸留後で、84%である。合成の要所となる工程は、Wittig-Horner 反応である。望ましいオレフィンは、THF中ナトリウムメトキシドの存在下、ホスホン酸ジエチルとp−メトキシベンズアルデヒドとから形成され、シリカの濾過による精製後で、88%の収率である。
【0026】
さらに、ピノシルビンのジメチルエーテルは、APIN CHEMICALS社から市販されているものを利用できる。
【0027】
本発明に使用されるヒドロキシスチルベンのアルキルエーテル量は、当然ながら、望まれる効果次第であり、それゆえ、広い範囲を取り得る。量を示せば、ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルは、組成物の総重量の0.001〜5%である量、好ましくは組成物の総重量の0.05〜1%である量で用いることができる。
【0028】
本発明に係る組成物は、一般的に、肌および/または頭皮への局所的な適用に適している。それゆえ、生理学的に許容される媒質、すなわち肌、その外皮(まつげ、爪および髪)および/または粘膜に適合できる媒質を含んでいる。
【0029】
この組成物は、化粧学や皮膚学に通常使用される、いかなる提示形態をもとることができる。特に、任意のゲル状の油性溶剤、分散体、任意の二相、ローション類、脂肪相を水相に分散させること(O/W)またはその逆(W/O)により得られるエマルション、あるいは三相エマルション(W/O/WまたはO/W/O)若しくはイオンおよび/または非イオン型の小胞分散体の形態としてもよい。これらの組成物は、一般的な方法にしたがって調製される。水中油型エマルションの形態の組成物が、本発明に従って好適に使用される。
【0030】
この組成物は、多少流動体であってもよく、また、白色または着色したクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペーストまたはムースの外観を呈するものであってもよい。エアロゾルの形態で、任意に適用してもよい。また、固体状であってもよく、特に棒状形状であってもよい。肌のためのケア製品および/またはクレンジング/メイクアップ落としおよび/またはメイクアップ製品として、使用することができる。また、シャンプーやコンディショナーとして使用してもよい。
【0031】
また、よく知られているように、本発明にしたがって使用される組成物は、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性剤、防腐剤、抗酸化剤、溶剤、香料、充填剤、遮蔽剤、顔料、脱臭剤および着色剤などの化粧品業界で慣用の補助剤を含有することができる。これら各種補助剤の量は、化粧品業界で従来使用される量、例えば、組成物の総重量の0.01〜20%である。それらの性質によって、これらの補助剤は、脂肪相、水相または脂質小胞体中に導入することができる。とにかく、これらの補助剤およびそれらの割合は、本発明に係るヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの望ましい性質を阻害しないよう選択される。
【0032】
本発明にしたがって使用される組成物がエマルションである場合、脂肪相の割合は、組成物の総重量に対して、5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。エマルション型の組成物に使用されるオイル、乳化剤および補助乳化剤は、化粧品業界で従来使用されるものから選択される。乳化剤および補助乳化剤は、組成物の総重量に対して、0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の割合で、組成物中に存在している。
【0033】
本発明に使用されるオイルとして、鉱物性オイル(液体状ワセリン)、植物性オイル(アボガドオイル、大豆油)、動物性オイル(ラノリン)、合成油(ペルヒドロスクワレン)、シリコーンオイル(シクロメチコン)およびフッ素系オイル(ペルフルオロポリエーテル)が挙げられる。また、脂肪族アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸およびワックス(カルナウバ蝋、地蝋)も、脂肪性物質として、使用することができる。
【0034】
本発明に使用される乳化剤および補助乳化剤として、例えば、ステアリン酸PEG‐100(PEG-100 stearate)などのポリエチレングリコールの脂肪酸エステルや、ステアリン酸グリセリルなどのグリセロールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0035】
特に挙げられる親水性ゲル化剤は、カルボキシビニルポリマー(カルボマー(carbomer))、アクリル酸エステル/アルキルアクリル酸エステルのコポリマーなどのアクリル系コポリマー、ポリアクリルアミド、多糖、天然ゴムおよび粘土を含む。また、挙げることのできる親油性ゲル化剤は、ベントンなどの変性粘土、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカおよびポリエチレンを含む。
【0036】
活性剤としては、表皮剥離剤;抗菌剤;保湿剤;鎮静剤;およびケラチノサイト増殖および/または分化刺激剤から選択される少なくとも一種以上の化合物を、本発明にしたがって使用される組成物に導入することが有益である。
【0037】
実際、本発明に係るヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルによる脂漏症への刺激は、所定の個体では、濾胞口の常在微生物叢(特に座瘡プロピオンバクテリウム)のための増殖領域を与える。それに伴って、皮脂のトリグリセリドの遊離脂肪酸への重要な加水分解と多価不飽和脂肪酸(特にリノール酸)の不飽和度の減少を生じる。これらの二つの現象は、漏斗状器官のケラチン化と微小面皰(microcomedone)の形成に寄与する。これは、面皰へと変性し、不快な閉塞と毛穴の拡張を引き起こす。さらに進行した段階では、この閉塞は炎症性のにきび状外傷に変性する。
【0038】
本発明に係る組成物への表皮剥離剤またはケラチノサイト増殖または分化の制御剤の添加は、これら面皰の形成を阻害することができる。同様に、抗菌剤または静菌剤は、常在微生物叢の増殖を変更することにより、同様の効果を得ることができる。
【0039】
さらに、保湿剤は、本発明に係るヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの使用により得られる効果を補うことができる。また、鎮静剤は、脂漏過少性乾燥肌の快適さの程度を改善するのに有益である。
【0040】
このような添加活性剤の例を、以下に述べる。
【0041】
[表皮剥離剤]
「表皮剥離剤」という文言は、下記の作用が可能ないずれかの化合物を意味するものである。
− β−ヒドロキ酸、特にサリチル酸およびその誘導体(5−n−オクタノイルサリチル酸を含む);グリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、またはマンデル酸などのα−ヒドロキシ酸;尿素;ゲンチシン酸;オリゴフコース;桂皮酸;エンジュ(Saphora japonica)の抽出物;レスベラトロールなどの剥離の促進による表皮剥離に直接的に作用するもの。
− あるいは、角質接着斑の表皮剥離や分解に関係した酵素、グリコシダーゼ、角質層キモトリプシン酵素(SCCE)、またはまったく別のプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン類似体)に作用するもの。EDTA;N−アシル−N,N’,N’−エチレンジアミン三酢酸;アミノスルホン化合物および特に(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタン)スルホン酸(HEPES);2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(プロシステイン)誘導体;(EP-0852949に記載したような)グリシン型のα―アミノ酸誘導体とTrilon Mの商標名でBASFにより販売されているメチルグリシン二酢酸ナトリウム;蜂蜜およびO−オクタノイル−6−D−マルトース並びにN−アセチルグルコサミンなどの糖類誘導体といったキレート化無機塩用の薬剤が挙げられる。
【0042】
[保湿剤]
「保湿剤」という文言は、以下、
− 角質層の保湿を維持するためバリアー機能に作用する化合物かまたは閉塞化合物。セラミド、スフィンゴイドをベースとする化合物、レシチン、グリコスフィンゴリピド、リン脂質、コレステロールおよびその誘導体、植物ステロール(スチグマステロール、β−シトステロールまたはカンペステロール)、必須脂肪酸、1,2−ジアシルグリセロール、4−クロマノン、ウルソール酸などのトリテルペン五員環、ワセリンおよびラノリンが挙げられる。
− あるいは、トレアロースおよびその誘導体、ヒアルロン酸およびその誘導体、グリセロール、ペンタンジオール、ピドール酸ナトリウム、セリン、キシリトール、乳酸ナトリウム、アクリル酸ポリグリセリル、エクトインとその誘導体、キトサン、オリゴ糖並びに多糖、環式炭酸塩、N−ラウロイルピロリドンカルボン酸、N−α−ベンゾイル−L−アルギニンなどの角質層の水分含有量を直接的に増大させる化合物。
− あるいは、DHEA並びにその誘導体およびビタミンD並びにその誘導体などの皮脂腺を活性化する化合物を意味するものである。
【0043】
[ケラチノサイト増殖および/または分化刺激剤]
本発明に係る組成物に使用されるケラチノサイト増殖刺激剤は、特に、フロログルシノール;Gattefosse社から販売されているクルミケーク(walnut cake)抽出物;およびSederma社から販売されているジャガイモ抽出物を含有する。
【0044】
ケラチノサイト分化刺激剤は、例えば、カルシウムなどの無機物;Photopreventineの商標名でSilab社から販売されているルピナスの抽出物;Phytocohesineの商標名でSeporga社から販売されているβ−シトステロール硫酸ナトリウム;およびPhytovitylの商標名でSolabia社から販売されているトウモロコシの抽出物を含有する。
【0045】
[鎮静剤]
鎮静剤として有効な原料のなかで、非限定的に、以下の活性剤を挙げることができる;β−グリチルレチン酸などのトリテルペン五員環並びにその塩、および/またはその誘導体(グリチルレチン酸モノグルクロニド、グリチルレチン酸ステアリル、3−ステアロイルオキシグリチルレチン酸)、ウルソール酸およびその塩、オレアノール酸およびその塩、ベツリン酸およびその塩;ボタン(Paeonia suffruticosa)および/またはシャクヤク(lactiflora)の抽出物、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)の抽出物、アカバナ属植物(epilobium)の抽出物、ピジウム(Pygeum)の抽出物、乳香樹(Boswellia serrata)の抽出物、センチペダ・カニンガミ(Centipeda cunnighami)の抽出物、ヒマワリ(Helianthus annuus)の抽出物、コラノキ(Cola nitida)の抽出物、クローブの抽出物およびバコパ・モニエラ(Bacopa moniera)の抽出物;サリチル酸塩および特にサリチル酸亜鉛;藻類の抽出物、特にカラフトコンブ(Laminaria saccharina)の抽出物;キャノーラオイル、ムスク・ローズオイルなどのオメガ−3−不飽和油、ブラックカラントオイル、エチウムオイル、フィッシュオイル;α−ビサボロールおよびカモミールの抽出物;アラントイン;ビタミンEおよびビタミンCのリン酸ジエステル;カプリロイルグリシン;トコトリエノール;ピペロナール;アロエ・ヴェラ;植物ステロール;ストロンチウム塩;湧水および特にヴィシー(Vichy)盆地の湧水並びにラ・ロッシュ・ポゼ(La Roche Posay)の湧水;細菌性抽出物および特にEP-0761204の特許出願に記載された光合成しない糸状菌の抽出物、好ましくはベギアトーレ(Beggiatoales)目に属する細菌から生成されたもの、およびさらに特にヴィートレオシラー・フィリフォルミス(Vitreoscilla filiformis)の抽出物;in vitro培養で得られた少なくとも一種以上のアヤメ(Iridacea)科植物の細胞(好ましくは未分化細胞)の抽出物、好ましくはEP-0765668の特許出願に特に記載されたようなイリス(Iris pallid)の水溶性抽出物;好ましくはin vivo培養されたバラ(Rosaceae)科植物の抽出物、有利にはロサ・ガリカ(Rosa gallic)種、より好ましくはEP-0909556の特許出願に特に記載されたようなロサ・ガリカの花びらの水−グリコール抽出物である。
【0046】
[抗菌剤]
本発明に使用される抗菌剤は、特に、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル(またはトリクロサン)、3,4,4’−トリクロロバニリド、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、ウンデシレン酸およびその塩、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、フィチン酸、N−アセチル−L−システイン酸、リポ酸、アゼライン酸およびその塩、アラキドン酸、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、オクトピロックス、オクトオキシグリセリン、オクタノイルグリシン、カプリリルグリコール、10−ヒドロキシ−2−デカン酸、WO93/18743の特許に記載したジクロロフェニルイミダゾールジオキソランおよびその誘導体、ファルネソール並びにフィトスフィンゴシン、およびそれらの混合物から選択されるものである。
【0047】
本発明にしたがって使用される組成物は、レチノイドを一切含有しないのが好ましい。
【0048】
本発明を、以下の非制限的な実施例を用いて例証する。これらの実施例では、量は重量パーセントで表される。
【実施例】
【0049】
[実施例1]脂質生成におけるヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの活性の証明
レスベラトロールのトリメチルエーテルを、培養液中の不死化したヒトのセボサイト、すなわちZouboulis,C. C. , Seltmann, H. , Neitzel, H. および Orfanos, C. E.、「不死化したヒトの皮脂腺細胞株の確立および同定」(Establishment and Characterization of an Immortalized Human Sebaceous Gland Cell Line)、J. Invest. Dermatol., 113,1011-1020 (1999)の論文に記載されたSZ95株に由来するモデルで試験した。
【0050】
培養媒質中のDMSOの最終量が0.1%であり、レスベラトロールのトリメチルエーテルが、それぞれ0.01%(4×10−4M)および0.001%(4×10−5M)であるような、二種類の異なった濃度の条件で、DMSOで希釈した活性剤の存在下または非存在下で、(集密で)SZ95株のセボサイトで生成された脂質の量を測定する試験を行った。24時間処理後、付着細胞をナイルレッド(Nile Red)(1μg/ml)で処理する。次いで、脂質濃度を、染料の蛍光(2つの励起/放出対:中性脂質に対する485〜540nmの蛍光と非中性脂質に対する540〜620nmの蛍光)を測定して定量する。(2つの測定の組み合わせにより)脂質の総量が得られる。
【0051】
実験は、96プレートで6重(アッセイとコントロール生成物)に4回繰り返し行う。
【0052】
下記の表がその結果である。
【0053】
【表1】

【0054】
この表からわかるように、レスベラトロールのトリメチルエーテルは、セボサイトでの脂質生成の著しい増大を誘発する。それに対し、同じ条件で同じ濃度で試験したレスベラトロールは、それぞれ20%および67%まで、脂質生成を著しく阻害する。
【0055】
[実施例2]化粧品組成物
この組成物は、当業者に周知の方法で調製される。これらの実施例で与えられる量は、重量%で表される。
【0056】
レスベラトロールのトリメチルエーテル 0.5%
5−n−オクタノイルサリチル酸 1%
メチルパラベン 0.1%
プロピルパラベン 0.1%
ラノリン 5%
液体状ワセリン 4%
ゴマ油 4%
セチルアルコール 5%
モノステアリン酸グリセリン 2%
トリエタノールアミン 1%
プロピレングリコール 5%
カルボマー 940 0.1%
水 適量 100%
【0057】
このクリームは、1日2回の適用で、乾燥肌の明るい輝きを回復することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】レスベラトロールのトリメチルエーテルの合成方法を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒質中に、式(I):
【化1】

[上式中、RとRは独立に、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のC〜Cアルキル基を表し、
mとnは独立に、0〜3の整数で、mとnは同時に零にならないと理解される。]
のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルまたはそのシス異性体の少なくとも一種以上を含有する組成物を、肌または頭皮に局所的に適用することを含む、乾燥肌または乾燥頭皮の美容処置方法。
【請求項2】
n=2であって、m=0または1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R基および前記R基のすべてが、メチル基を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルが、前記組成物の総重量の0.05〜1%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、レチノイドを一切含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに前記組成物が、少なくとも一種以上の表皮剥離剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記表皮剥離剤が、サリチル酸およびその誘導体(5−n−オクタノイルサリチル酸を含む);グリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、またはマンデル酸などのα−ヒドロキシ酸;尿素;ゲンチシン酸;オリゴフコース;桂皮酸;エンジュの抽出物;レスベラトロール;EDTA;N−アシル−N,N’,N’−エチレンジアミン三酢酸;アミノスルホン化合物および特に(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタン)スルホン酸(HEPES);2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(プロシステイン)誘導体;(メチルグリシン二酢酸ナトリウムなどの)グリシン型のα―アミノ酸誘導体;蜂蜜;およびO−オクタノイル−6−D−マルトース並びにN−アセチルグルコサミンなどの糖類誘導体から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに前記組成物が、保湿剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記保湿剤が、セラミド、スフィンゴイドをベースとする化合物、レシチン、グリコスフィンゴリピド、リン脂質、コレステロールおよびその誘導体、植物ステロール(スチグマステロール、β−シトステロールまたはカンペステロール)、必須脂肪酸、1,2−ジアシルグリセロール、4−クロマノン、ウルソール酸などのトリテルペン五員環、ワセリンおよびラノリン;トレアロースおよびその誘導体、ヒアルロン酸およびその誘導体、グリセロール、ペンタンジオール、ピドール酸ナトリウム、セリン、キシリトール、乳酸ナトリウム、アクリル酸ポリグリセリル、エクトインとその誘導体、キトサン、オリゴ糖並びに多糖、環式炭酸塩、N−ラウロイルピロリドンカルボン酸、N−α−ベンゾイル−L−アルギニン;DHEA並びにその誘導体;およびビタミンD並びにその誘導体から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに前記組成物が、少なくとも一種以上の鎮静剤を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記鎮静剤が、β−グリチルレチン酸などのトリテルペン五員環並びにその塩、および/またはその誘導体、ウルソール酸およびその塩、オレアノール酸およびその塩、ベツリン酸およびその塩;ボタンおよび/またはシャクヤクの抽出物、ローズマリーの抽出物、アカバナ属植物の抽出物、ピジウムの抽出物、乳香樹の抽出物、センチペダ・カニンガミの抽出物、ヒマワリの抽出物、コラノキの抽出物、クローブの抽出物およびバコパ・モニエラの抽出物;サリチル酸塩および特にサリチル酸亜鉛;藻類の抽出物、特にカラフトコンブの抽出物;キャノーラオイル、ムスク・ローズオイルなどのオメガ−3−不飽和油、ブラックカラントオイル、エチウムオイル、フィッシュオイル;α−ビサボロールおよびカモミールの抽出物;アラントイン;ビタミンEおよびビタミンCのリン酸ジエステル;カプリロイルグリシン;トコトリエノール;ピペロナール;アロエ・ヴェラ;植物ステロール;ヴィートレオシラー・フィリフォルミスの抽出物、イリスの水溶性抽出物およびロサ・ガリカの花びらの水−グリコール抽出物から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに前記組成物が、少なくとも一種以上の抗菌剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌剤が、トリクロサン、フェノキシエタノール、オクトオキシグリセリン、オクタノイルグリシン、10−ヒドロキシ−2−デカン酸、カプリリルグリコール、ファルネソールおよびアゼライン酸から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに前記組成物が、少なくとも一種以上のケラチノサイト増殖および/または分化刺激剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、水中油型エマルションの形態であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
額の皮脂含有量が、100μg/cm未満を示す個体に、前記組成物を適用することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
肌のつっぱりおよび/または、肌および/または髪のさえないおよび/または生気がない外観に対抗することを目的とすることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
乾燥肌または乾燥頭皮の処置剤として、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上の美容的使用。
【請求項19】
脂漏過少性乾燥肌に関連した疾患を処置することを目的とする組成物を調製するために、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上の使用。
【請求項20】
前記疾患が、皮膚炎の形態であることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒質中に、式(I):
【化1】

[上式中、RとRは独立に、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のC〜Cアルキル基を表し、
mとnは独立に、0〜3の整数で、mとnは同時に零にならないと理解される。]
のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルまたはそのシス異性体の少なくとも一種以上を含有する組成物を、肌または頭皮に局所的に適用することを含む、乾燥肌または乾燥頭皮の美容処置方法。
【請求項2】
n=2であって、m=0または1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R基および前記R基のすべてが、メチル基を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルが、レスベラトロールのトリメチルエーテルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルが、ピノシルビンのジメチルエーテルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乾燥肌または乾燥頭皮の処置剤として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上の美容的使用。
【請求項7】
脂漏過少性乾燥肌に関連した疾患を処置することを目的とする組成物を調製するために、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシスチルベンのアルキルエーテルの少なくとも一種以上の使用。
【請求項8】
前記疾患が、皮膚炎の形態であることを特徴とする請求項7に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−510738(P2006−510738A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502413(P2005−502413)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012507
【国際公開番号】WO2004/054533
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】