説明

二次電池、組電池

【課題】集電体の面内方向における発熱の偏りを抑えた二次電池を提供する。
【解決手段】正極集電体11が補強層140の両面に正極導電性層111(導電材)を形成したものを使用している。正極導電性層111は第1端部112側からそれとは反対側の第2端部113側にかけて厚みが厚くなるように形成している。そして第2端部113側に、正極集電タブ18を電気的に接続する正極端子リード20が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、およびこれを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、活物質を形成して保持し、かつ電流を集めるための集電体を有する。従来、この集電体として、多数のメッシュ孔を備えた電解箔に補強部を一体に形成してなるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−285926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで集電体には、そこから電流を外部へ取り出すための集電タブが接続される。従来の集電体に用いられる電解箔は、その厚みが面内方向に均一である。したがって、集電タブが接続された端部から、それとは反対の端側まで抵抗値が略同一となる。このため集電体全面から集められた電流が集電タブ接続部周囲に集中することになる。そうすると集電タブ接続端周辺では電流が集中することから、それとは反対の端側より相対的に発熱が多くなる。一方で電流集中のない集電タブ接続端の反対側では発熱が少ない。このような集電体の面内での発熱の偏りは、電池性能の低下や耐久性の低下につながる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、集電体の面内方向における発熱の偏りを抑えた二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は以下のように構成される。
【0007】
本発明の二次電池は、正極活物質層が形成された第1集電体と、この正極活物質層に対して電解質層を介在させて対向する位置に配置された負極活物質層が形成された第2集電体とを有する。そして第1集電体および第2集電体のうち少なくとも一方の集電体には、その第1端部からそれに対向する第2端部の方向に単位面積当たりの質量が重くなるように質量勾配をつけた導電材が含まれていて、第2端部側に集電タブが電気的に接続されている。
【0008】
また、本発明の二次電池は、正極活物質層が形成された第1集電体と、この正極活物質層に対して電解質層を介在させて対向する位置に配置された負極活物質層が形成された第2集電体とを有する。そして第1集電体および第2集電体のうち少なくとも一方の集電体には、その第1端部からそれに対向する第2端部の方向にシート抵抗が低くなるようにした導電材が含まれていて、第2端部側に集電タブが電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正極集電体または負極集電体のうち少なくとも一方の集電体において、第1端部側からそれとは反対側の第2端部方向に質量が重くなるようにして、第2端部側に集電タブが電気的に接続されようにしている。したがって、電流集中が起きる第2端部側で電流が流れやすくなり、その部分での発熱が抑えられて集電体の面内方向における発熱の偏りを抑えることができる。
【0010】
また、本発明によれば、正極集電体または負極集電体のうち少なくとも一方の集電体において、第1端部側からそれとは反対側の第2端部方向にシート抵抗が低くなるようにして第2端部側に集電タブが電気的に接続されようにしている。したがって、電流集中が起きる第2端部側での電流が流れやすくなり、その部分での発熱が抑えられて、集電体の面内方向における発熱の偏りを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の二次電池の外観を示す外観図である。
【図2】実施形態1の二次電池を説明するための断面図である。
【図3】実施形態1の正極集電体を説明するための説明図であり、図3Aは平面図、図3Bは図3AにおけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】二次電池から構成される組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図4Aは組電池の平面図、図4Bは組電池の正面図であり、図4Cは組電池の側面図である。
【図5】二次電池を搭載した車両の例を説明するための図である。
【図6】実施形態2の二次電池を説明するための要部断面図である。
【図7】実施形態2の二次電池に外部から導電体が貫通した場合を説明するための説明図である。
【図8】実施形態3の二次電池を説明するための要部断面図である。
【図9】実施形態4の二次電池を説明するための要部断面図である。
【図10】実施形態4の正極集電体を説明するための説明図であり、図10Aは平面図、図10Bは図10AにおけるA−A線に沿う断面図である。断面図である。
【図11】実施形態5の正極集電体を説明するための説明図であり、図11Aは平面図、図11Bは断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面において同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面はあくまでも本発明の実施形態を説明するためのものであるので、各部材の寸法や比率は説明の都合上誇張または簡略化しており、実際の寸法や比率とは異なる。
【0013】
[実施形態1]
以下では、本発明を適用した実施形態1として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
【0014】
(二次電池)
図1は、本実施形態の二次電池の外観を示す外観図であり、図2は、本実施形態の二次電池を説明するための断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態の二次電池1(リチウムイオン二次電池)は、発電要素17(詳細後述)を収納した電池外装材22によって密封されている。電池外装材22は高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合する。
【0016】
発電要素17の具体的な構成要素は以下の通りである。
【0017】
発電要素17は、正極活物質層12、電解質層13および負極活物質層15からなる単電池層16が複数積層された構成を有する。正極活物質層12は、導電性材料を含む(例えば第1集電体)一枚の正極集電体11の両面に形成されている。この正極集電体11の両面に正極活物質層12が形成されてなるものを正極100(例えば第1電極)と称する。負極活物質層15は導電性材料を含む負極集電体14(例えば第2集電体)の両面に形成されている。この負極集電体14の両面に負極活物質層15が形成されてなるものを負極200(例えば第2電極)と称する。
【0018】
ここでは、正極集電体11の片面の正極活物質層12と隣接する負極集電体14の片面の負極活物質層15とが、電解質層13を介して向き合うように、正極100、電解質層13、負極200がこの順に積層されることで、単電池層16が複数積層され、かつ単電池層16が電気的に並列接続される形態となっている。
【0019】
発電要素17の両最外層には最外層負極集電体14aが位置する。最外層負極集電体14aは正極と対峙せず電池反応に関与しないため、発電要素の内側の面のみに負極活物質層15が形成されている。なお、単電池層16の積層数によっては、最外層には正極集電体の片面に正極活物質層12が形成されてなるものを用いてもよい。
【0020】
正極集電体11および負極集電体14は、それぞれの一端が正極端子リード20および負極端子リード21を介して正極集電タブ18および負極集電タブ19に電気的に接合されている。正極集電体11および負極集電体14は、その一部がラミネートフィルムとの熱融着を介して電池外装材22の外部に露出されていて、発電要素17からの電力を外部へ取り出したり、発電要素17へ充電したりするための端子となる。この端子は、後述するように複数の二次電池1とバスバーやリード線など(連結端子25と云う)により接続して組電池300にする際にも使用される。
【0021】
なお、正極集電体11および負極集電体14における正極端子リード20および負極端子リード21の接続には、半田付けや溶接、また超音波接合などが用いられる。同様に、正極端子リード20および負極端子リード21と正極集電タブ18および負極集電タブ19との接続には、半田付けや溶接、また超音波接合などが用いられる。
【0022】
図3は、正極集電体11を説明するための説明図であり、図3Aは平面図、図3Bは図3AにおけるA−A線に沿う断面図である。
【0023】
正極集電体11は、非導電性材料で構成される補強層110(樹脂層)の両面に正極導電性層111(導電材)が形成された構造としている。つまり、正極集電体11に沿って補強層110が配置されているのである。なお、本実施形態1では、負極集電体14は、その厚みに変化はなく、均等な厚みの一枚板(たとえばアルミニウムや銅などの金属箔膜)としている。
【0024】
正極導電性層111(図3に示した補強層110を挟んで2枚あるうちの一方を云う。以下、正極導電性層111という場合は同じ意味である)だけでは正極集電体11としての機械的強度が弱くなる場合がある。補強層110を用いることで正極集電体11全体としての機械的強度を高めることができる。これにより、例えば、発電要素17の組付けの際の機械的負荷に対しての耐性が高くなり製造が容易になる。また、電池運転時の熱負荷に伴う電池構成部材の膨張収縮に伴う機械的応力に対する耐性も強くなり、二次電池としての耐久性も高くすることができる。
【0025】
正極導電性層111の形状は、その面内において第1端部112から、それとは反対側の第2端部113にかけて正極導電性層111の厚みを厚くするように直線的な勾配をつけて形成している。そして、第2端部112には正極端子リード20を接続することで正極導電性層111と正極集電タブ18と電気的に接続している。
【0026】
一方、本実施形態1では、負極集電体14は、その厚みに変化はなく、均等な厚みの一枚板(たとえばアルミニウムや銅などの金属箔膜)としている。
【0027】
このように正極導電性層111の厚みを変えることで正極導電性層111の活物質形成面における単位面積あたりの質量に勾配をつけて、単位面積あたりの正極活物質層12と同等の電気抵抗となるようにしているのである。このようにすることで、導電性層111の活物質形成面では、シート抵抗が、第1端部112から第2端部113方向に低くなる。すなわち、第1端部112から第2端部113方向に電流がより流れやすく構成されているのである。
【0028】
したがって、仮に図3Aに示した点線a〜fの位置で、一定の面積となるように切り出せば、その質量はa>b>c>d>e>fとなる。同じく点線a〜fの位置で一定の面積部分のシート抵抗を測定すればa<b<c<d<e<fとなる。なお本実施形態においては、点線a〜fのそれぞれの線上、すなわち、第1端部112から第2端部113への方向に直交する方向(点線a〜fの方向)では同じ質量および同じシート抵抗となっている。
【0029】
ちなみに、シート抵抗と部材の厚さとの関係は下記(1)および(2)式の通りである。
【0030】
R=(ρL)/(tW)=Rs・(ρL)/W …(1)
したがって、Rs=ρ/t …(2)
各式中、Rは抵抗値、Rsはシート抵抗、tは厚さ、Wは幅、Lは長さである。
【0031】
(2)式から、部材の厚さtが変わればシート抵抗が変化し、電流の流れやすさが違ってくることがわかる。
【0032】
この正極導電性層111はできるだけ薄い方が好ましい。その理由は下記のとおりである。二次電池は様々な理由から内部短絡が発生するおそれある。内部短絡が起きる理由はたとえば導電性異物の混入や正極集電体または負極集電体でのデンドライトの成長などである。このような電池内部において内部短絡が発生した場合に、正極導電性層111をごく薄くしておけば内部短絡による電流集中でその部分が発熱して焼切れ、その部分での電流を止めてしまうことができる。このような作用を持たせるためには、例えばアルミニウムでは、10μm以下とすることが好ましい。なお、下限値(最も薄くなる第1端部112部分)については特に限定されず、電流を流すことができる最小限の厚さでよい。特に本実施形態1の場合、補強層110が設けられているため、金属薄膜単独でその形状が維持できないほど薄くても電流を流すことができれば問題ない。
【0033】
そして、このようなごく薄い金属膜を用いた場合でも集電体として必要な機能、つまり充放電レートを確保することができるようにするために既に説明した通り導電性層111に質量勾配およびシート抵抗の勾配を付けたのである。
【0034】
正極集電体11は、構成する材料に特に制限はなく、上記した金属以外にも導電性樹脂が採用されうる。金属を用いる場合には、例えば、上記アルミニウムのほか、銅やステンレス鋼などを用いることができる。なかでも電子伝導性、電池作動電位という観点からはアルミニウムが好ましい。
【0035】
一方、導電性樹脂の場合は、樹脂全体が導電性を示す導電性高分子と非導電性の中に導電性フィラーを配合したもののいずれであってもよい。より具体的には下記のとおりである。
【0036】
(高分子材料が導電性高分子である形態)
まず、簡単に樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態を説明する。この場合、正極導電性層111全体が導電性高分子材料からなることになる。
【0037】
導電性高分子は導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、がより好ましい。
【0038】
(非導電性樹脂および導電材(導電性フィラー)を含む形態)
次に、非導電性樹脂に導電性フィラーを含む形態について説明する。この場合、正極導電性層111全体が、非導電性樹脂に均一に導電性フィラーを配合して、全体として導電性樹脂となったものが用いられる。
【0039】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
【0040】
導電性フィラーの具体例としては、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電性フィラー)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0041】
また、導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
【0042】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、正極導電性層111に形成する際の厚さを考慮すれば、0.01〜10μm程度であることが望ましい。つまり正極導電性層111の厚さを最大値10μmとする場合、これより大きな導電性フィラーを用いると、導電性フィラーが正極導電性層111の厚さを越えてしまうことになり、局所的な厚さばらつきが発生する原因になって好ましくないのである。もちろん正極導電性層111の厚さを厚くすれば、導電性フィラーを10μm以上にしても差し支えない。
【0043】
また、樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、樹脂層を形成する樹脂は、導電性フィラーに加えて、導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料を含んでいてもよい。樹脂層の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、双極型二次電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0044】
非導電性の樹脂である高分子材料の例としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、二次電池の高出力密度化が可能となる。
【0045】
非導電性樹脂に対する導電性フィラーの比率は、特に限定されず、十分な導電性が確保されていればよい。たとえば、高分子材料(非導電性の樹脂とその他の添加剤などを含む)および導電性フィラーの合計に対して、5〜90wt%、好ましくは5〜40wt%の導電性フィラーを均等に配合する。5〜90wt%程度であれば導電性を確保することができる。
【0046】
また、樹脂成分内に結着剤を入れた場合には、好ましくは5〜40wt%程度とすることで結着性を高めることができ、形態(形状)が安定する。
【0047】
結着剤として用いられる結着高分子は特に限定されるものではないが、たとえば下記のような高分子材料が使用されうる。エポキシ樹脂;スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);スチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム材料のほか、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;シリコーン、ポリイミド(PI);ポリアミド(PA);ポリフッ化ビニリデン(PVdF);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリアクリロニトリル(PAN);ポリメチルアクリレート(PMA);ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。これらの高分子材料は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
【0048】
なお、導電性フィラーおよび非導電性の樹脂の他、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0049】
これら導電性樹脂による正極導電性層111は(高分子材料が導電性高分子である形態と非導電性樹脂に導電性フィラーを含む形態のどちらも)従来公知の手法により製造できる。たとえば、導電性高分子材料または導電性フィラーを含む非導電性高分子のスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。具体的にはたとえば、スプレー法やコーティング法により調整したスラリーを、塗り回数を変えたり、開口径の異なるノズルを使用するなどして、滑らかにあるいは段階的に厚さを変えて塗布する。またインクジェット方式により作製することも可能である。
【0050】
次に、補強層110は、用いる材料の機械的強度に応じて必要最小限の厚み以上とする。しかし、厚すぎても発電要素17の体積が必要以上に大きくなるため、例えば樹脂を用いる場合は補強層110の厚さとして10〜30μmにて構成することが好ましい。
【0051】
この補強層110の厚みは、正極導電性層111の厚さの勾配とは逆勾配になるよう形成する。これにより正極集電体11としての厚みを一定に保つことができ、ひいては単電池層16としての厚みも一定に保たれて、発電要素17を組付ける際に単電池層16が斜めに積層されることを回避することができる。
【0052】
補強層110を構成する材料としては、例えば、樹脂のほかに、セラミック、セラミックと樹脂の複合体などの絶縁性材料が挙げられる。なかでも補強層の軽量化という観点からは、補強層の構成材料は樹脂であることが好ましい。この樹脂も、特に制限はないが、たとえば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などが用いられうる。なかでも、耐熱性という観点からは、ポリイミドまたはポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリイミドが特に好ましい。なお、ポリイミドの具体的な名称としては、カプトン(登録商標)が挙げられる。
【0053】
なお、本実施形態の二次電池に使用される正極活物質、負極活物質および電解質については、通常リチウムイオン二次電池に使用される物質を使用すればよく特に限定されないため説明を省略する。また、本実施形態の二次電池としてリチウムイオン二次電池以外の二次電池とする場合には、それらに合わせた素材を使用すればよいことは云うまでもない。
【0054】
(組電池)
次に、上述した二次電池の利用形態の一つである組電池について説明する。
【0055】
図4は、上述した二次電池から構成される組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図4Aは組電池の平面図、図4Bは組電池の正面図であり、図4Cは組電池の側面図である。
【0056】
図4に示すように、組電池300は、まず、上述した二次電池を複数、直列および並列に接続して組電池250を構成し、さらにこの組電池250を複数、直列および並列に接続している。これにより、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した組電池300となる。
【0057】
組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、接続治具310を用いて複数段積層される。組電池250は、接続治具310によってくみつけられるため組電池300に対して装脱着可能となっている。なお、組電池300に組み込む組電池250の数およびその接続形態(直列か並列か)は、それを搭載する車両(電気自動車など)が必要とする電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0058】
なお、組電池250を構成する際の個々の二次電池1の接続形態(直列か並列か)についても同様であり、所望する出力電圧や電池容量に応じて決めればよい。
【0059】
(車両)
次に、上述した二次電池の利用形態の一つである車両への搭載について説明する。
【0060】
図5は、上述した二次電池を搭載した車両の例を説明するための図である。
【0061】
本実施形態の二次電池電池は、例えば上述した組電池300の形態に組み上げて、図5に示すように、たとえば電気自動車400のような車両に搭載されうる。電気自動車400に搭載された二次電池電池は、例えば、車両のモータを駆動する電源として用いられうる。
【0062】
図示した電気自動車400の例では、電気自動車400の車体中央部の座席下に組電池300を搭載している。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。
【0063】
以上説明した本実施形態1によれば、以下のような効果を奏する。
【0064】
本実施形態の正極集電体11は、補強層110の片面または両面に正極導電性層111を接合させてなる構造とした。そして正極導電性層111は、第1端部112からそれとは反対側の第2端部113方向に質量が重くなるように質量勾配を持たせた。具体的には厚さが第1端部112から第2端部113方向に厚くなるようにしている。したがって、正極導電性層111は第1端部112から第2端部113方向にシート抵抗が低くなって電流が流れやすくなっている。
【0065】
これにより、第1端部112側から第2端部113側に行くほど電気抵抗値が相対的に小さくなり、かつ熱容量も大きく保つことができる。したがって、二次電池1から電力を取り出すとき、および充電するときには、電流が集中する正極集電タブ18を接続する側において余裕を持って電流を流すことが可能となる。その結果、正極集電タブ18が接続されて電流が集中する側だけが相対的に発熱するようなことがなくなり、電池全体としても温度上昇を招くことが少ない。したがって発熱による充放電時のロスも少ない二次電池となる。
【0066】
またこの構成により、十分な充放電レートを確保することができるため充放電特性がよくなる。
【0067】
また、正極導電性層111の厚さを、二次電池内部で短絡が生じた際に、その温度上昇意より焼き切れる厚さとすることで、耐異常時の耐久性を向上することができる。そして、上記のような正極導電性層111の構成とすることで、そのように薄くした場合でも十分な充放電レートを確保することができる。
【0068】
また、補強層110を設け、この補強層110に沿って正極導電性層111を配置したことで、正極導電性層111単独では十分な強度を得ることができない場合でも、正極集電体11全体としては、十分な強度を確保することができる。しかも、補強層110は、その厚みの勾配を正極導電性層111の厚みの勾配と逆勾配としたことで、正極集電体11としては平坦な構造とすることができる。そのため、二次電池を構成する際に斜めに積層されることがなく、組付け性がよい。
【0069】
また、質量勾配は、第1端部112から第2端部113方向に直交する方向には単位面積あたり同一質量となるようにしたので、正極導電性層111の厚さを違える加工も容易である。
【0070】
また、本実施形態の二次電池を複数接続した組電池250および300とすることで、さまざまな出力電圧や電池容量とすることができる。しかも、一つひとつの電池は本実施形態の二次電池であるので、充放電特性がよいので高速充電に適したものとなる。このため高速充電時においても温度上昇が少なく、高い耐久性を有する。
【0071】
さらに、上記組電池300を用いた電気自動車400は、組電池300が高速充電時においても温度上昇が少なく、高い耐久性を有するので、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。したがって、これを車両に搭載したことで、二次電池の交換回数も少なくでき、さらに、発熱による充放電時のロスも少ないので、燃費に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【0072】
[実施形態2]
図6は、実施形態2の二次電池を説明するための要部断面図である。
【0073】
本実施形態2の二次電池2は、負極集電体14を非導電性材料で構成される補強層140の両面に負極導電性層141を形成したものを使用している。負極導電性層141以外の他の構成は、実施形態1と同様であるので説明は省略する。なお、負極導電性層141は、図6に示した補強層140を挟んで2枚あるうちの一方を云う。以下、負極導電性層141という場合は同じ意味である。
【0074】
ここで用いている負極導電性層141(導電材)は、第1端部142側からそれとは反対側の第2端部143側にかけて厚みが薄くなるように形成している。負極集電タブ19(図2参照)を電気的に接続する負極端子リード21が接続される
これにより、負極導電性層141は、第1端部142から第2端部143方向に単位面積あたりの質量が重くなっている。これに伴いそのシート抵抗も第1端部142から第2端部143方向に低くなっている。すなわち、第1端部142から第2端部143方向に電流が流れやすくなっているのである。
【0075】
なお、最外層の負極集電体14aは、補強層140に対して正極活物質層12に対向する負極導電性層141が形成される方にのみ負極導電性層141が形成されてなる。
【0076】
この負極導電性層141は、用いる材料に特に制限はなく、たとえば、金属や導電性高分子が採用されうる。具体的には、金属の場合は、例えば、ニッケル、銅、ステンレスなどの金属材料が挙げられる。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、銅が好ましい。
【0077】
一方、本実施形態2では、正極集電体11は、その厚みに変化はなく、均等な厚みの一枚板(たとえばアルミニウムや銅などの金属箔膜)としている。
【0078】
正極集電体11をたとえば、厚さについて特別な考慮をしないアルミニウムで構成し、負極導電性層141を銅の薄膜で上記のように厚さに勾配を持たせた構成とすることができる。この場合、アルミニウムの融点(660℃)よりも銅の融点(1083℃)が高いために、内部短絡が発生した際は、アルミニウムが特別厚さについて考慮しなくても先に焼き切れる。
【0079】
また、仮に、図7に示すように、本実施形態2の二次電池2な複数の電池に外部から導電体900が貫通した場合、正極集電体11が焼ききれても、導電体900が正極活物質15に接触しているため正極集電体として作用する。このため隣接する単電池16の間では負極導電性層141および負極集電タブ19を通して短絡回路が形成されて短絡電流Iが流れ続ける。なお、負極導電性層141は、図2において負極集電体14となるものであるから、その第2端部143側が負極集電タブ19により互いに電気的に接続されている。
【0080】
そこで、負極導電性層141の厚みを薄く、たとえば最大厚さを3μm以下に形成すれば、銅であっても瞬時に発熱より溶解し焼き切れる。このため内部短絡が発生した場合には、内部短絡部位の発熱による温度上昇が、その周囲に及ぶ前に電流を遮断することができる。
【0081】
なお、銅を用いた場合の厚さの下限値(特に第1端部側)については特に限定されず、電流を流すことができる最小限の厚さでよい。特に本実施形態においても、補強層140が設けられているため、金属薄膜単独で、その形状が維持できないほど薄くても電流を流すことができれば問題ない。
【0082】
一方、補強層140は負極導電性層141の厚みの勾配と逆勾配の厚みで形成されている。この補強層140については、実施形態1で説明したものと同じでよいので、詳細な説明は省略する。
【0083】
また、負極集電体の材料として導電性樹脂を用いる場合も、実施形態1と同様の導電性樹脂を用いることができる。さらに、本実施形態2においても実施形態1同様にリチウムイオン電池以外の電池でも適用可能である。
【0084】
以上説明した本実施形態2によれば、以下のような効果を奏する。
【0085】
本実施形態の負極集電体14として、補強層140の片面または両面に負極導電性層141を接合させてなる構造とした。そして、負極導電性層141は、第1端部142からそれとは反対側の第2端部143方向に質量が重くなるように勾配を持たせ、第2端部143側に負極集電タブ19を電気的に接続している。具体的にはその厚さが、第1端部142から第2端部143方向に厚くなるようにしている。したがって、負極導電性層141は第1端部142から第2端部143方向にシート抵抗が低くなっている。
【0086】
これにより、第1端部142側から第2端部143側に行くほど電気抵抗値が相対的に小さくなり、かつ熱容量も大きく保つことができる。したがって、二次電池2から電力を取り出すとき、および充電するときには、電流が集中する負極集電タブ19を接続する側において余裕を持って電流を流すことが可能となる。その結果、電流が集中する負極集電タブ19を接続する側だけが相対的に発熱するようなことがなくなり、電池全体としても温度上昇を招くことが少ない。したがって発熱による充放電時のロスも少ない二次電池となる。
【0087】
またこの構成により、十分な充放電レートを確保することができるため充放電特性がよくなる。
【0088】
また、負極導電性層141の厚さを、二次電池内部で短絡が生じた際に、その温度上昇意より焼き切れる厚さとすることで、耐異常時の耐久性を向上することができる。そして、上記のような負極導電性層141の構成とすることで、そのように薄くした場合でも十分な充放電レートを確保することができる。
【0089】
また、補強層140を設け、この補強層140に沿って負極導電性層141を配置したことで、負極導電性層141単独では十分な強度を得ることができない場合でも、正極集電体11全体としては、十分な強度を確保することができる。しかも、補強層140は、その厚みの勾配を負極導電性層141の厚みの勾配と逆勾配としたことで、負極集電体14としては平坦な構造とすることができる。そのため、二次電池を構成する際に斜めに積層されることがなく、組付け性の悪化を抑制することができる。
【0090】
また、質量勾配は、第1端部142から第2端部143方向に直交する方向には単位面積あたり同一質量となるようにしたので、負極導電性層141の厚さを違える加工も容易である。
【0091】
さらに、本実施形態2の二次電池2についても、実施形態1同様に、組電池として構成することができる。また、この組電池を車両に搭載することもできる。この場合、組電池および車両としての作用効果なども実施形態1と同様に得ることができる。
【0092】
[実施形態3]
図8は、実施形態3の二次電池を説明するための要部断面図である。
【0093】
本実施形態3の二次電池3は、前述した実施形態1と実施形態2を統合した形態である。すなわち、正極集電体11は非導電性材料で構成される補強層140の両面に正極導電性層111(導電材)を形成したものを使用している。正極導電性層111は第1端部112側からそれとは反対側の第2端部113側にかけて厚みが厚くなるように形成している。そして第2端部113側に、正極集電タブ18(図2参照)を電気的に接続する正極端子リード20が接続される。なお、正極導電性層111は、図8に示した補強層110を挟んで2枚あるうちの一方を云う。以下、正極導電性層111という場合は同じ意味である。
【0094】
一方、負極集電体14は、非導電性材料で構成される補強層140の両面に負極導電性層141(導電材)を形成したものを使用している。負極導電性層141は第1端部142側からそれとは反対側の第2端部143側にかけて厚みが厚くなるように形成している。そして、第2端部143側に負極集電タブ19(図2参照)を電気的に接続する負極端子リード21が接続される。なお、負極導電性層141は、図6に示した補強層140を挟んで2枚あるうちの一方を云う。以下、負極導電性層141という場合は同じ意味である。
【0095】
したがって、正極導電性層111の構成は実施形態1と同様であり、負極導電性層141の構成は実施形態2と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。また、これら以外の構成についても実施形態1または実施形態2と同様であるので説明は省略する。
【0096】
この本実施形態3によれば、以下のような効果を奏する。
【0097】
正極集電体11および負極集電体14の両方を、それぞれ質量勾配を持たせた正極導電性層111および負極導電性層141を用いたことで、いっそう熱の偏りを抑えることができる。そして充放電レートもいっそう保たれるようになって高い電池性能を引き出すことができる。また、正極導電性層111および負極導電性層141の両方の溶解・焼切れ性を高めるために両方の厚さを極限まで薄くすることができる。したがって、電池の内部への異物混入やデンドライト成長に伴う内部短絡時および複数の電池に外部から導電体が貫通するような短絡時の場合に、面内のどの位置で短絡しても即刻、短絡電流の流れを遮断することができる。しかも充放電レートは十分に保って電池性能を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態3では、正負極の集電タブ18および19を、二次電池の対向する位置に配置した。これにより正極導電性層111が厚い方向から薄い方向に対して負極導電性層141が薄い方向から厚い方向となるように積層されることになる。したがって、正極集電体11と負極集電体14で、その電気抵抗値の勾配の向きを逆になる。
【0099】
このようにしたことで、仮に電池外部から導電性部材が貫通して電池内部で短絡が発生した場合、導電性部材が面内のどこで貫通しても正負極のいずれか薄い方が先に焼き切れるようになり、短絡電流の遮断性を向上することができる。したがって、電池の内部短絡に起因する安全性をさらに向上することができる。
【0100】
そのほか、質量勾配をつけるための厚さや補強層については本実施形態3でも実施形態1および2と同様の効果を有する。
【0101】
もちろん本実施形態3においても、組電池とすることもできるし、車両に搭載することも可能であり、上述した実施形態1で説明した組電池および車両と同様の効果を得ることができる。
【0102】
[実施形態4]
図9は実施形態4の二次電池を説明するための要部断面図であり、図10は実施形態4の正極集電体を説明するための説明図であり、図10Aは平面図、図10Bは図10AにおけるA−A線に沿う断面図である。断面図である。
【0103】
本実施形態4は、正極集電体11として、補強層110の片面または両面に多孔体構造の正極導電性層161を設けた構造としたものである。そして、正極導電性層161は、第1端部162からそれとは反対側の第2端部163方向に単位面積あたりの多孔体の空隙率が段階的または滑らかに小さくするよう構成されている。そして、第2端部163側に正極集電タブ18を電気的に接続する正極リード20を接続している。
【0104】
すなわち、正極導電性層161は、図10に示すように、たとえば、空隙部分168の数が第1端部162から第2端部163方向に少なくなっている。これにより導電要素部分167の面積が第1端部162から第2端部163方向に多くなって、導電材としては単位面積あたりの質量が重くなる。これによりシート抵抗も第1端部162から第2端部163方向に低くなって、第1端部162から第2端部163方向に電流が流れやすくなるようにしている。
【0105】
空隙部分168の大きさは、特に限定されるものではないが、正極活物質からの電流を受けて、第1端部162から第2端部163方向に確実に電流が流れるようにしておく必要がある。この観点からは、たとえば0.1〜数百μm程度の大きさが好ましい。これは、空隙部分168の大きさがあまり大きいと導電要素部分167が途切れたり、隙間が大きくなりすぎて集電作用が低下するおそれがあるためである。
【0106】
その他の構成は実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0107】
この本実施形態4によれば、以下のような効果を奏する。
【0108】
本実施形態4では、空隙率を違えて質量勾配をつけシート抵抗に変化をつけることとしたので、正極導電性層161の厚みに勾配をつける必要がない。したがって、補強層110の厚みにも勾配をつける必要がないため、正極導電性層161および補強層110の加工性がよくなる。もちろん、電池の充放電レートを保って電池性能を確保しつつ正極導電性層161の溶解・焼切れ性を向上させることもできる。
【0109】
そのほか補強層については本実施形態4でも実施形態1および2と同様の効果を有する。
【0110】
なお、本実施形態4の構成は、負極導電性層14についても適用することができる。また、正極集電体11と負極集電体14の双方に適用することも可能である。さらに、これら形態の二次電池を組電池とし、また車両に搭載できることは実施形態1で説明したものと同様であり、それらの作用効果も同様に得ることができる。
【0111】
また、多孔体構造は、その空隙部分168としてハニカム構造に似た6角形の場合を図示したが、このような形状以外にも、円形(楕円形を含む)やその他の多角形や不定形形状などであってもよい。また、空隙率を違えるためには空隙部分168の単位面積あたりの数を違えるのではなく、空隙部分168の単位面積あたりの大きさを違えることでもよい。さらに多孔体構造の空隙部分168は、空間とするのではなく非導電性素材(例えば樹脂)によって埋め込まれた構造であってもよい。つまり、導電材である正極導電性層161は、空隙または非導電性素材からなる非導電部の割合(非導電部の体積/導電材全体の体積)が第1端部から第2端部の方向へ小さくなるように構成されていればよいのである。
【0112】
また、図では平面的に空隙部分168が存在するように示したが、これは、厚さ方向に存在するようにしてもよいし、ポーラス構造のようにしてもよい。もちろんこれらの場合も、非導電部の割合(非導電部の体積/導電材全体の体積)が第1端部162から第2端部163の方向へ小さくなるように構成されていればよいのである。
【0113】
さらに本実施形態4の応用として、正極導電性層161として非導電性樹脂に導電性フィラーを配合した導電性樹脂を用いて、導電性フィラーの配合比率を単位面積あたりで違えることでもシート抵抗に差をつけることができる。
【0114】
つまり、第1端部162から第2端部163方向に、段階的にまたは滑らかに非導電性樹脂に対する導電性フィラーの配合量を多くするのである。これにより正極導電性層161の導電材としてのシート抵抗は第1端部162から第2端部163方向に低くなって、この方向に電流が流れやすくなる。この場合も正極導電性層161の厚さに変化をつけることなくシート抵抗を変化させることができる。
【0115】
[実施形態5]
図11は実施形態5の正極集電体を説明するための説明図であり、図11Aは平面図、図11Bは断面図である。
【0116】
本実施形態5は、前述した実施形態1における正極導電性層111の厚さを下記のようにしたものである。正極端子リード20が接続された部分を略中心とした同心円の円弧(図示点線)上では同じ厚さにし、円弧に対し直交する方向(図示矢印)でかつ第1端部112から第2端部113方向には厚くなるようにしている。なお正極端子リード20は第2端部113側に接続されている。これにより各矢印方向の断面を見れば、図11Bのように正極導電性層111の厚さに勾配ができる。したがって、第1端部112から第2端部113方向を含む、正極集電タブ18との電気的接続点となる略中心から円弧に対し直交する方向に質量勾配が生まれて、シート抵抗もこの方向に低くなる。ここで「略中心」としたのは、機械的な取り付け誤差の範囲があるためである。
【0117】
この際、補強層110は、正極導電性層111の勾配と逆勾配で形成されることは第1実施形態1と同様である。また、そのほかの構成も実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0118】
この本実施形態5によれば、以下のような効果を奏する。
【0119】
正極端子リード20の幅W1に対して、正極導電性層111の幅W2が大きい場合などには、電流が正極端子リード20の全周囲方向から流れ込む。このため第1端部112から第2端部113に向けて一方向に勾配をつける場合と比較して、特に第1端部112の辺に直交する辺114や115近傍の厚みを薄くすることができる。これにより、第1端部112の辺に直交する辺114や115から第2端部113方向である正極集電タブ18との電気的接続点への電流の流れもよくなる。このため電池の充放電レートを保って電池性能を確保しつつ正極導電性層111の溶解・焼切れ性をさらに向上させることができる。
【0120】
なお、本実施形態5は、負極導電性層14にも適用可能であるし、正極集電体11と負極集電体14の双方に適用することもでき、それらの場合に同様の効果を得ることができる。
【0121】
また、図においては、正極端子リード20が接続された部分(集電タブとの電気的接続点)を正極集電体の一つの辺(第2端部113の辺)の中ほどに設けているが、この電気的接続点は正極集電体の一つの辺の端であってもよい。その場合も正極端子リード20が接続された部分を略中心をして同心円の円弧上では正極導電性層111の厚さを同じ厚さにし、円弧に対し直交する方向でかつ第1端部112から第2端部113方向には厚くする。これにより上記効果と同じ効果を得ることができる。そのほか本実施形態は正極端子リード20が接続された部分が正極集電体のどこであっても同じように実施可能である。もちろん負極集電体においても同様に実施できる。
【0122】
以上、本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0123】
たとえば、上述した実施形態は、厚さの勾配(実施形態1〜3および5)においては、図示上滑らかな勾配をつけて説明したが、段差的な勾配であってもよい。
【0124】
また、上述した実施形態は、積層型の扁平な形状の二次電池により説明したが、そのほかにも巻回型の二次電池である、円筒型形状(楕円形状を含む)、角型形状のものであってもよい。円筒型や角型の形状のものでは、その外装材にラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど特に制限されるものではない。
【0125】
また上述した実施形態は、リチウムイオン二次電池を例に説明した。これは、リチウムイオン二次電池が単電池(1セル)当たりの電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。しかし本発明は、これに限らず、その他にもたとえばニッケル水素二次電池などにも適用可能である。
【0126】
また、本実施形態の二次電池や組電池は、車両に搭載する以外にも、たとえば無停電電源装置などの載置用電源(固定型電源)として利用することも可能である。
【0127】
そのほか、本発明は、本発明の技術思想の範囲内においてさまざまな実施形態が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0128】
1、2、3、4 二次電池、
11 正極集電体、
14 負極集電体、
18 正極集電タブ、
19 負極集電タブ、
20 正極端子リード、
21 負極端子リード、
110、140 補強層、
111、161 正極導電性層
112、142、162 第1端部、
113、143、163 第2端部、
141 負極導電性層、
167 導電要素部分、
168 空隙部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層が形成された第1集電体と、
前記正極活物質層に対して電解質層を介在させて対向する位置に配置された負極活物質層が形成された第2集電体と、
前記第1集電体および前記第2集電体のうち少なくとも一方の集電体に含まれ、第1端部からそれに対向する第2端部の方向に単位面積当たりの質量が重くなるように質量勾配をつけた導電材と、
前記第2端部側に電気的に接続された集電タブと、
を有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
正極活物質層が形成された第1集電体と、
前記正極活物質層に対して電解質層を介在させて対向する位置に配置された負極活物質層が形成された第2集電体と、
前記第1集電体および前記第2集電体のうち少なくとも一方の集電体に含まれ、第1端部からそれに対向する第2端部の方向にシート抵抗が低くなっている導電材と、
前記第2端部側に電気的に接続された集電タブと、
を有することを特徴とする二次電池。
【請求項3】
前記導電材は、厚みが前記第1端部から前記第2端部方向に厚くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の二次電池。
【請求項4】
前記集電体は、前記導電材に沿って配置された補強層を含み、
前記補強層の厚みが前記導電材の厚みと逆に変化していることを特徴とする請求項3記載の二次電池。
【請求項5】
前記導電材は、導電部と非導電部とからなり、前記導電材内における単位面積あたりの前記非導電部の割合(前記非導電部の体積/前記導電材全体の体積)が前記第1端部から前記第2端部の方向へ小さくなることを特徴とする請求項1または2記載の二次電池。
【請求項6】
前記導電材は、前記第1端部から前記第2端部の方向に対して直交する方向には単位面積当たりの質量が同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の二次電池。
【請求項7】
前記導電材は、前記集電タブが電気的に接続された部分を中心とする同心円の円弧方向には単位面積当たりの質量が同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の二次電池。
【請求項8】
前記導電材を含む集電体を前記第1集電体および前記第2集電体の両方に用いて、当該第1集電体における第1端部と当該第2集電体における第2端部が互いに向かい合う位置となるように、前記第1集電体における前記正極活物質層、前記電解質層、および前記第2集電体における前記負極活物質層が積層されて、前記集電タブが互いに対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の二次電池。
【請求項9】
前記正極活物質層はリチウムを含み、リチウムイオン二次電池になることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の二次電池。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電池が複数電気的に接続されてなることを特徴とする組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−23249(P2011−23249A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168203(P2009−168203)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】