説明

二次電池異常検出装置

【課題】簡単な構成にして締結部材の緩みを検出することの可能な二次電池異常検出装置を提供する。
【解決手段】複数の電池セル(11)の電極端子(12)同士を連結する導電性を有する接続板(14)と、接続板と電極端子とを締結する締結部材(16)と、締結部材による接続板と電極端子との締結部に近接して設けられ、締結部周りの温度を検出する温度検出手段(32)と、温度検出手段の温度検出値に基づき電池セルまたは締結部材の異常を判定する異常判定手段(40)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池異常検出装置に係り、詳しくは電池セルを連結する接続板及び電池セルの端子を締結する締結部材の緩みを検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は、複数の電池セルから構成される電池モジュールを並列または直列に接続した構造であり、車両へ電力を供給するように構成されている。
このように、複数の電池セルを接続するために、電池セルの端子同士をバスバーなどの導電性のある接続板を用いて締結部材で締結し、配置する構造が一般に用いられている。
【0003】
しかしながら、接続板及び端子を締結する締結部材は振動などにより緩む場合があり、締結部材が緩むことにより端子と接続板との接触抵抗が増大するためにエネルギーの損失を招くという問題がある。
このようなことから、従来、各締結部材に圧力センサを取り付けて締結部材の緩みを検出する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−306468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気自動車には多数の電池モジュールを搭載しており、それに伴い多数の締結部が存在する。複数の電池セルを接続して構成されている電池パックも同様に多数の締結部が存在する。
その点、上記特許文献1に開示された従来技術では、各締結部材に圧力センサを取り付ける構成であるため、圧力センサの数も多くなるために部品費用がかさむという問題がある。また、多量の配線を電池パック内に収容することになり、整備性に劣り好ましいことではない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成にして締結部材の緩みを検出することの可能な二次電池異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1の二次電池異常検出装置は、複数の電池セルの電極端子同士を連結する導電性を有する接続板と、該接続板と該電極端子とを締結する締結部材と、該締結部材による前記接続板と前記電極端子との締結部に近接して設けられ、該締結部周りの温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の温度検出値に基づき前記電池セルまたは前記締結部材の異常を判定する異常判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の二次電池異常検出装置では、請求項1において、前記異常判定手段は、前記電極端子から前記接続板に所定以上の負荷電流が流れているとき、前記温度検出手段の温度検出値に基づいて前記締結部材の緩みを検出し判定することを特徴とする。
請求項3の二次電池異常検出装置では、請求項1または2において、前記電極端子は前記電池セル毎にそれぞれ複数設けられ、前記異常判定手段は、前記温度検出手段により前記電池セル毎に検出される前記締結部の複数の温度検出値のうち、いずれか1つが所定の温度を上回ったとき、前記締結部材の緩み有りと判定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の二次電池異常検出装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記温度検出手段は、サーミスタであることを特徴とする。
請求項5の二次電池異常検出装置では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記電極端子には導電性及び伝熱性を有する金属板の一端が接続され、該金属板の他端は前記電池セルの状態を監視する電池監視装置の基板に接続されており、前記温度検出手段は、前記金属板に近接して前記電池監視装置の基板に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の二次電池異常検出装置によれば、電池セルの電極端子と接続板との締結部材による締結部の近傍に温度検出手段を設け、締結部周りの温度を検出する。
このように、締結部近傍に温度検出手段を配置して締結部周りの温度を検出することにより、締結部材が緩むと接触抵抗の増大に伴い発熱して締結部の温度が上昇するのであるが、電池セルの温度及びかかる締結部材の緩みによる温度上昇の両方を検出し、電池セルまたは締結部材の異常を判定することができる。
【0011】
また、このように電池セルの温度及び締結部材の緩みによる温度上昇の検出に温度検出手段を共用するので、コストを抑えることができる。
さらに、締結部近傍に温度検出手段を配設することにより温度異常の発生位置を容易に特定することができるので、整備に要する時間を削減し、作業効率を向上させることが可能である。
【0012】
請求項2、3の二次電池異常検出装置によれば、異常判定手段は、接続板に所定以上の負荷電流が流れている場合に締結部材の緩みを検出し、或いは、温度検出手段により電池セル毎に検出される締結部の複数の温度検出値のうち、いずれか1つが所定の温度を上回ったとき、締結部材の緩み有りと判定するので、電池セルの温度異常と締結部材の緩みによる温度異常とを区別することができる。
【0013】
請求項4の二次電池異常検出装置によれば、温度検出手段は安価なサーミスタであるので、部品コストを抑えることができる。
請求項5の二次電池異常検出装置によれば、温度検出手段は電池監視装置基板に配設されるので、温度検出手段を電池監視装置基板に一体化することで複雑な配線が不要となり、温度検出手段の省スペースでの設置が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る二次電池異常検出装置の概略構成を示すシステム図である。
【図2】本発明に係る二次電池異常検出装置の概略構成図である。
【図3】図2の上面図である。
【図4】図2に示す二次電池異常検出装置において行われる電池セル異常検出処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る二次電池異常検出装置の概略構成を示すシステム図である。
図1に示すように、電気自動車に備えられた駆動用バッテリ1は、電池モジュール10を複数個直列に接続して構成されており、当該電気自動車は外部電源からの充電経路を備え、当該充電経路から電力の供給を受けて充電を行う充電器を介して蓄電するよう構成されている。
【0016】
1つの電池モジュール10は、複数個の電池セル11を備えて構成されている。さらに、電池モジュール10には、それぞれの充電状体を監視するセルモニタユニット(以下、CMUと略す)30が備えられている。電池モジュール10を直列に接続する配線50には、駆動用バッテリ1全体の入出力電流を検出する電流センサ60が設けられている。
CMU30は、バッテリ管理コントロールユニット(異常判定手段、以下、BMUと略す)40に接続されている。BMU40は、各CMU30から各電池モジュール10の充電状態情報と、電流センサ60から駆動用バッテリ1の入出力電流値を入力し、電子コントロールユニット(ECU)70にバッテリ情報を伝達する。
【0017】
図2は、本発明に係る二次電池異常検出装置を構成する電池モジュールの概略構成図である。
図2に示すように、電池モジュール10は、複数個の電池セル11の電極端子12同士を、バスバー(接続板)14を使用して締結部材(例えば、ナット)16で直列に固定することにより構成されるものである。電極端子12には導電性及び伝熱性を有する金属板18の一側が接続されており、金属板18の他側には金属端子20が接合されている。金属端子20は金属板18を介して電極端子12に電気的及び熱的に接合されており、電池セル11の電圧を検出可能である。なお、ここでは電池セル11の電極端子面側を上側として定義する。
【0018】
また、電池モジュール10には、CMU30である電池監視装置基板31が電池モジュール10を構成する複数個の電池セル11にまたがって金属板18の上側に配設され、上記金属端子20において締結されている。電池監視装置基板31にはサーミスタ(温度検出手段)32が設けられている。
詳しくは図3に示すように、サーミスタ32は締結部材16の締結部に近接し金属板18の近傍になるよう電池監視装置基板31に金属板18と配線(図示せず)を介して配設され、後述するように、電極端子12から金属板18を介して伝わる上記締結部周りの熱を検出する。
【0019】
図2に戻り、電池監視装置基板31はBMU40の入力側に接続されている。BMU40では電池監視装置基板31からの情報に基づき電池パックを構成する全ての電池セル11の状態(電圧、温度等)を監視する。
以下、このように構成された本発明に係る二次電池異常検出装置の作用について説明する。
【0020】
バスバー14に負荷電流が流れると、締結部材16による締結部周り、例えば電極端子12にはバスバー14や締結部材16との接触抵抗に比例して発熱が起こる。ここで、通常このような電気自動車では、車両の駆動用モータに用いる高電圧の電流と、車両に搭載された補機等に用いられる低電圧の電流があるが、バスバー14には前者の高電圧の負荷電流が流れる。これにより、電極端子12とバスバー14を締結している締結部材16が緩んでいる場合には接触抵抗は増大するため、発熱量も大きくなる。電極端子12における発熱は、金属板18から電池監視装置基板31のサーミスタ32に伝わる。このようにしてサーミスタ32は電極端子12での発熱を検出する。また、発熱量は負荷電流量にも比例するため、負荷電流が所定(例えば10アンペア)以上あるときにサーミスタ32が検出した発熱について、締結部材16の緩みによる発熱か、電池異常による発熱かを明確に区別することができる。
【0021】
ここで、検出した温度が所定温度以上であれば締結部材16の緩みと判定する異常判定処理について説明する。
図4には、BMU40が実行する異常判定処理ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに基づいて説明する。
ステップS1では、車両の電源をONする、または電源コネクタを100Vまたは200Vの外部電源へ接続することにより充電器が受電する。
【0022】
ステップS2では、電池監視装置基板31に配設されているサーミスタ32により各電池セル温度Tcを検出し、収集する。
ステップS3では、収集した電池セル温度Tcが所定温度Tmax以上であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)と判定された場合はステップS4へ進む。
ステップS4では、バスバー14に所定以上の負荷電流が流れているか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)と判定された場合はステップS5へ進む。
【0023】
ステップS5では、同一の電池セル11の温度を検出するサーミスタ32のうち、いずれか一方が所定温度Tmax以上であるか否かを判定する。
詳しくは、図3に示すように、同一電池セル11にある電極端子12a、12bの温度を測定するサーミスタ32a、32bのうち、いずれか一方が所定温度Tmax以上か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合、ステップS6へ進む。
【0024】
ステップS6では、バスバー14と電極端子12とを締結する締結部材16に緩みがあると判定する。
一方、上記ステップS4の判定結果が偽(No)、または、ステップS5の判定結果が偽(No)である場合、ステップS7へ進む。
ステップS7では、電池セル11の発熱と判断して電池セル11の異常と判定する。
【0025】
一方、上記ステップS3の判定結果が偽(No)である場合、ステップS8へ進む。
ステップS8では、電池セル11は正常と判定し、ステップS9に進む。
ステップS9では、車両の電源がON、または充電器が受電しているか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合、ステップS2に戻り、当該判定結果が偽(No)である場合には本電池セル異常検出処理ルーチンを終了する。
【0026】
このように、本発明の実施形態によれば、電池監視装置基板31にあるサーミスタ32を金属板18の近傍になるように配設し、バスバー14に所定以上の負荷電流が流れている場合に、電池監視装置基板31に配設されたサーミスタ32が所定値以上の温度を検出し、且つ同一の電池セル11の電極端子12a、12bの温度を検出するサーミスタ32a、32bのうち、いずれか一方の温度が所定値以上であると、電極端子12及びバスバー14を締結している締結部材16の緩み有りと判断する。
【0027】
これにより、サーミスタ32は電池セル11の温度を検出し、且つ電極端子12とバスバー14とを締結する締結部材16の緩みによる発熱をも検出することができる。このように、電池セルや締結部材16による締結部周りの温度検出にサーミスタ32を共用するので、コストを抑えることができる。
また、温度センサに安価なサーミスタを使用することで、部品コストを抑えることができる。
【0028】
そして、温度の異常箇所を容易に特定することができるので、整備に要する時間を短縮でき、作業効率を向上させることが可能である。
また、電池セル11の異常による温度異常と締結部材16の緩みによる温度異常とを区別して判定することができる。
さらに、サーミスタ32は電池監視装置基板31に配設されており、締結部材16の緩みによる発熱は金属板18及び電池監視装置基板31のサーミスタ32に伝わるので複雑な配線は不要であり、サーミスタ32の省スペースでの設置が可能である。
【0029】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、サーミスタ32を電池監視装置基板31に配設しているが、サーミスタ32をバスバー14や締結部材16に配設してもよい。
また、温度センサとしてサーミスタを使用しているが、温度を検出することができれば特にサーミスタに限定されるものではない。
【0030】
さらに、1つの電池セル11の温度検出に2個のサーミスタを用いているが、サーミスタの数は2個に限られるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 駆動用バッテリ
10 電池モジュール
11 電池セル
12 電極端子
14 バスバー(接続板)
16 締結部材
18 金属板
31 電池監視装置基板
32 サーミスタ(温度検出手段)
40 BMU(異常判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルの電極端子同士を連結する導電性を有する接続板と、
該接続板と該電極端子とを締結する締結部材と、
該締結部材による前記接続板と前記電極端子との締結部に近接して設けられ、該締結部周りの温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段の温度検出値に基づき前記電池セルまたは前記締結部材の異常を判定する異常判定手段と、
を備えたことを特徴とする二次電池異常検出装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記電極端子から前記接続板に所定以上の負荷電流が流れているとき、前記温度検出手段の温度検出値に基づいて前記締結部材の緩みを検出し判定することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池異常検出装置。
【請求項3】
前記電極端子は前記電池セル毎にそれぞれ複数設けられ、
前記異常判定手段は、前記温度検出手段により前記電池セル毎に検出される前記締結部の複数の温度検出値のうち、いずれか1つが所定の温度を上回ったとき、前記締結部材の緩み有りと判定することを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池異常検出装置。
【請求項4】
前記温度検出手段は、サーミスタであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の二次電池異常検出装置。
【請求項5】
前記電極端子には導電性及び伝熱性を有する金属板の一端が接続され、該金属板の他端は前記電池セルの状態を監視する電池監視装置の基板に接続されており、
前記温度検出手段は、前記金属板に近接して前記電池監視装置の基板に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の二次電池異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−282816(P2010−282816A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134806(P2009−134806)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】