説明

二次電池

【課題】タブレス構造による高出力化と同時に、高エネルギー密度化および信頼性向上を実現可能な二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の二次電池は、第1電極と、第2電極とを、第1電極と第2電極との間に耐熱性を有する多孔質絶縁層のみを介して、捲回または積層してなる電極群と、第1電極と電気的に接続された第1集電板とを具備する。第1電極は、第1電極芯材に形成された第1電極合剤層を含む。第2電極は、第2電極芯材に形成された第2電極合剤層を含む。第1電極の一端部は、電極群の一端面において、第2電極の端部および多孔質絶縁層の端部よりも突出する。突出する第1電極の端部は、第1電極芯材の露出部を有し、第1電極芯材の露出部は、第1集電板に溶接されている。多孔質絶縁層の端部は、第1電極合剤層および第2電極合剤層の端部よりも突出する。第1集電板と、多孔質絶縁層における第1集電板側の端部との間の距離が3mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流放電に適した、低抵抗の集電構造を備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム二次電池等の二次電池は、様々な機器の駆動用電源として用いられている。二次電池の用途は、携帯電話を始めとする民生用機器から電気自動車や電動工具など、様々である。なかでもリチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、小型、軽量で高エネルギー密度を有するため注目を集めている。近年、二次電池の更なる高エネルギー密度化および高出力化に向けての開発が活発化している。
【0003】
電池の高出力化に対しては、例えば、電池の集電構造をタブレス構造とし、電極の集電抵抗を低減して、電池の内部抵抗を低減することが提案されている。以下、タブレス構造について説明する。電極芯材および電極芯材に形成された電極合剤層を有する帯状の電極において、電極の幅方向の一方の端部に活物質層が形成されていない電極芯材の露出部が設けられている。電極群は、電極群の一端面において電極芯材の露出部が突出するように構成され、その露出部の端部に集電板が接続されている。
【0004】
上記タブレス構造を有する電池については、様々に検討されている。例えば、特許文献1では、正極端子および負極端子を有する電池蓋を備え、電極群の下部に配された集電板に取り付けられた電極リードを、電極群の軸心の中空部に通過させて、電極端子に接続することが提案されている。特許文献2では、集電板を電極芯材の露出部にかしめて、集電板を電極芯材の露出部と接続可能な構造に集電板の形状を改良することが提案されている。特許文献3では、表面に耐熱層を有する電極を用いることが提案されている。
【特許文献1】特開平10−83833号公報
【特許文献2】特開2000−285900号公報
【特許文献3】特開2005−235695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、電池の製造工程において、集電板を電極芯材の露出部に溶接する際に発生する熱により、ポリエチレンまたはポリプロピレン製のセパレータの一部が収縮または溶融して、正極と負極とが微小短絡し、電池の信頼性が低下する場合がある。集電板を電極に溶接する際のセパレータへの熱的影響を低減する方法としては、集電板とセパレータとの間の距離を十分に確保することが考えられる。しかし、上記距離を十分に確保すると、電極合剤層(電極面積)が小さくなり、電池のエネルギー密度が減少する。
【0006】
特許文献2では、集電板を電極芯材の露出部にかしめて接続する構造では、集電板を電極芯材の露出部に溶接する必要がないため、セパレータは溶接による熱影響を受けることがない。しかし、上記構造では、電極芯材の露出部を十分に確保する必要があり、特許文献1の場合と同様に電池のエネルギー密度が減少する。
【0007】
特許文献3では、セパレータにポリエチレンフィルムを使用するため、特許文献1の場合と同様に、電極芯材の露出部に集電板を溶接する際、溶接による熱的影響を受けてセパレータが収縮または溶融する場合がある。このとき、耐熱層は、ある程度は、正極と負極との接触による内部短絡を防ぐ役割を果たすが、セパレータの収縮とともに耐熱層の一部が剥がれ、微小な内部短絡を生じる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するため、タブレス構造による高出力化と同時に、高エネルギー密度化および信頼性向上を実現可能な二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二次電池は、帯状の第1電極と、帯状の第2電極とを、前記第1電極と前記第2電極との間に耐熱性を有する多孔質絶縁層のみを介して、捲回または積層してなる電極群と、前記第1電極と電気的に接続された第1集電板とを具備し、
前記第1電極は、第1電極芯材および前記第1電極芯材に形成された第1電極合剤層を含み、
前記第2電極は、第2電極芯材および前記第2電極芯材に形成された第2電極合剤層を含み、
前記第1電極の一端部は、前記電極群の一端面において、前記第2電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、
前記突出する第1電極の端部は、第1電極芯材の露出部を有し、
前記第1電極芯材の露出部は、前記第1集電板に溶接され、
前記多孔質絶縁層の端部は、前記第1電極合剤層および前記第2電極合剤層の端部よりも突出しており、
前記第1集電板と、前記多孔質絶縁層における前記第1集電板側の端部との間の距離が3mm以下であることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記第2電極と電気的に接続された第2集電板を具備し、
前記第2電極の一端部は、前記電極群の一端面において、前記第1電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、
前記突出する第2電極の端部は、第2電極芯材の露出部を有し、
前記第2電極芯材の露出部は、前記第2集電板に溶接されているのが好ましい。
前記第2集電板と、前記多孔質絶縁層における前記第2集電板側の端部との間の距離が3mm以下であるのが好ましい
【0011】
前記多孔質絶縁層は、セラミックス粒子を含むのが好ましい。
前記多孔質絶縁層は、セラミックス粒子およびバインダからなるのが好ましい。
前記多孔質絶縁層は、前記第1電極合剤層および前記第2電極合剤層の少なくとも一方を覆うように形成されているのが好ましい。
【0012】
前記二次電池は非水電解質二次電池であるのが好ましい。
前記第1電極芯材の露出部は、前記第1集電板と、アーク溶接により接続されているのが好ましい。
前記第2電極芯材の露出部は、前記第2集電板と、アーク溶接により接続されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タブレス構造による高出力化と同時に、高エネルギー密度化および信頼性向上を実現可能な二次電池を提供することができる。
集電板を電極芯材の露出部に溶接する際に、熱が発生しても、正極と負極との間に配される耐熱性を有する多孔質絶縁層は、熱的影響を受けない。すなわち、溶接時において、多孔質絶縁層は、従来からセパレータに用いられているポリオレフィン系フィルムのように収縮および溶融することがない。正極と負極との間には、多孔質絶縁層のみが配されるため、セパレータの収縮または溶融による内部短絡を確実に防ぐことができる。
【0014】
多孔質絶縁層は耐熱性に優れているため、集電板と多孔質絶縁層との間の距離を低減することができる。すなわち、多孔質絶縁層を従来のセパレータよりも正負極間に対向させる面積をより広く確保することができ、電極合剤層(電極面積)を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、いわゆるタブレス構造を有する二次電池に関する。すなわち、本発明の二次電池は、帯状の第1電極と、帯状の第2電極とを、前記第1電極と前記第2電極との間にセパレータを介して、捲回または積層してなる電極群と、前記第1電極と電気的に接続された第1集電板とを具備する。前記第1電極は、第1電極芯材および前記第1電極芯材に形成された第1電極合剤層を含み、前記第2電極は、第2電極芯材および前記第2電極芯材に形成された第2電極合剤層を含む。前記第1電極の一端部は、前記電極群の一端面において、前記第2電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、前記突出する第1電極の端部は、第1電極芯材の露出部を有する。前記第1電極芯材の露出部は、前記第1集電板に溶接されている。前記多孔質絶縁層の端部は、前記第1電極合剤層および前記第2電極合剤層の端部よりも突出している。そして、本発明は、セパレータを、第1電極芯材の露出部と第1集電板との溶接による熱的影響を受けない、耐熱性を有する多孔質絶縁層のみで構成し、第1集電板と、多孔質絶縁層における第1集電板側の端部との間の距離が3mm以下である点に特徴を有する。
【0016】
多孔質絶縁層の第1集電板側の端部は、第1集電板と接していてもよい。第1電極は、正極および負極のいずれか一方であり、第2電極は、正極および負極のいずれか他方である。第1電極芯材は、正極芯材および負極芯材のいずれか一方であり、第2電極芯材は、正極芯材および負極芯材のいずれか他方である。第1電極合剤層は、正極合剤層および負極合剤層のいずれか一方であり、第2電極合剤層は、正極合剤層および負極合剤層のいずれか他方である。第1集電板は、正極集電板および負極集電板のいずれか一方である。電極群は、第1電極および第2電極を複数積層して構成してもよい。
【0017】
本発明によれば、タブレス構造による高出力化と同時に、高エネルギー密度化および信頼性向上を実現可能な二次電池を提供することができる。
集電板を電極芯材の露出部に溶接する際に、熱が発生しても、正極と負極との間に配される耐熱性を有する多孔質絶縁層は、熱的影響を受けずに、従来からセパレータに用いられているポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムのように収縮または溶融しない。また、正極と負極との間には、多孔質絶縁層のみが配されるため、セパレータの収縮または溶融による内部短絡を確実に防ぐことができる。したがって、電池の信頼性が向上する。
【0018】
多孔質絶縁層は耐熱性に優れているため、集電板と多孔質絶縁層との間の距離を低減することができる。これにより、電極合剤層(電極面積)をより大きく確保することができる。また、電極芯材の露出部を必要最小限に小さくすることができる。したがって、高エネルギー密度の電池が得られる。
第1集電板と多孔質絶縁層の第1集電板側の端部との間の距離が3mmを超えると、電極合剤層が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。
【0019】
より電池を高出力化できるため、正極および負極の両方がタブレス構造であるのが好ましい。すなわち、さらに、上記二次電池は、前記第2電極と電気的に接続された第2集電板を具備し、前記第2電極の一端部は、前記電極群の一端面において、前記第1電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、前記突出する第2電極の端部は、第2電極芯材の露出部を有し、前記第2電極芯材の露出部は、前記第2集電板に溶接されているのが好ましい。
電池のエネルギー密度をより高くすることができるため、前記第2集電板と、前記多孔質絶縁層における前記第2集電板側の端部との間の距離は、3mm以下であるのが好ましい。
【0020】
多孔質絶縁層は、少なくとも正極合剤層および負極合剤層の端部よりも突出して、正極と負極との間に配置されていればよい。多孔質絶縁層は、例えば、電極合剤層の端部より0.5〜5mmだけはみ出していればよい。
正極(正極合剤層)および負極(負極合剤層)の面積が異なる場合は、電極合剤層の面積の大きい方の電極における電極合剤層の端部より突出していればよい。多孔質絶縁層は、例えば、正極および負極のうち、電極合剤層の面積が大きい方の電極における電極合剤層の端部より0.5〜5mmだけはみ出していればよい。
【0021】
電極群を構成する前に、多孔質絶縁層は、予め正極および負極の少なくとも一方と一体化させておくのが好ましい。例えば、正極および負極のうちの少なくとも一方の電極上に多孔質絶縁層を形成するのが好ましい。
多孔質絶縁層は、正極および負極のうち少なくとも一方の電極における電極合剤層を覆うように形成されているのが好ましい。電極面積(電極合剤層の面積)の大きい方の電極において、電極合剤層を多孔質絶縁層で被覆して電極複合体を形成するのがより好ましい。
上記のように、多孔質絶縁層を電極と一体化させることにより、積層または捲回時に、正極と負極との間に、別途多孔質絶縁層からなるセパレータを配置する必要がないため、捲きずれ等の不具合を生じることがない。
また、正極を負極と確実に絶縁させることができ、かつ正負極間において、正負極合剤層の端部よりも突出して多孔質絶縁層を形成することが容易であるため、電極合剤層の表面全体を多孔質絶縁層で被複するのがより好ましい。このとき、電極芯材の露出部における電極合剤層側の端部は、電極合剤層における電極芯材の露出部側の端面とともに多孔質絶縁層で覆われていてもよい。
【0022】
集電板は電極芯材の露出部と、アーク溶接により接続されていることが好ましい。アーク溶接では、溶接時の熱集中が抑制されるため、溶接箇所に穴が開くのを防止することでき、OCV不良等の不具合の発生を防止することができる。
本発明の二次電池としては、例えば、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池、非水電解質二次電池が挙げられる。非水電解質二次電池では、水系電解質と比べて導電率が低い非水電解質を用いるため、非常に薄いセパレータを用いる必要があり、セパレータは溶接時に熱影響を受け易く、内部短絡を生じ易い。したがって、非水電解質二次電池では、本発明の効果が顕著に得られる。
【0023】
以下、本発明の二次電池の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の二次電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の概略縦断面図である。図2は、図1の電池の要部縦断面図である。図3は、図1の電池に用いられる正極の正面図である。図4は、図1の電池に用いられる負極の正面図である。
【0024】
図1に示すように、電池容器8内には、帯状の正極1と、帯状の負極2とを、多孔質絶縁層3を介して捲回してなる電極群4が収納されている。電極群4の軸心に形成される中空部には、例えば、棒状の樹脂製の保持部材を配置してもよい。正極1は、正極芯材および正極芯材の両面に形成された正極合剤層1bを有する。負極2は、負極芯材および負極芯材の両面に形成された負極合剤層2bを有する。
【0025】
正極1は、図3に示すように、正極芯材の幅方向の一方の端部において、長手方向に沿って正極合剤層1bが形成されずに正極芯材が露出した部分(以下、正極芯材の露出部1a)が帯状に設けられている。負極2は、図4に示すように、負極芯材の幅方向の一端において、長手方向に沿って負極合剤層2bが形成されずに負極芯材が露出した部分(以下、負極芯材の露出部2a)が帯状に設けられている。
【0026】
正極1の一端部(上端部)は、電極群4の一端面(上端面)において、負極2の端部および多孔質絶縁層3の端部よりも突出しており、突出する正極1の端部に正極芯材の露出部1aが位置するように、正極1は配されている。負極2の一端部(下端部)は、電極群4の別の端面(下端面)において、正極1の端部および多孔質絶縁層3の端部よりも突出しており、突出する負極2の端部に負極芯材の露出部2aが位置するように、負極2は配されている。
【0027】
正極芯材の露出部1aは円盤状の正極集電板6に溶接されている。負極芯材の露出部2aは円盤状の負極集電板7に溶接されている。溶接は、常法により行えばよい。
電極芯材の露出部と集電板とを溶接する手法としては、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接等の溶接法を採用することができる。具体的には、集電板の一方の面を電極芯材の露出部に接触させ、集電板の他方の面からアーク放電等によりエネルギーを照射する。上記溶接法のなかでも、アーク溶接が好ましい。アーク溶接では、電極芯材を損傷せず、信頼性の高い溶接を容易に行うことができる。アーク溶接では、溶接時の熱集中が抑制されるため、溶接箇所に穴が開くのを防止することでき、OCV不良等の不具合の発生を抑制することができる。アーク溶接としては、TIG(タングステンイナートガス)溶接、ミグ溶接、マグ溶接、炭酸ガスアーク溶接等が挙げられるが、TIG溶接が特に好ましい。TIG溶接は、集電板が、銅、アルミニウムなどで構成されている場合に特に有効である。TIG溶接の場合、集電板だけを容易に溶融させることができ、電極芯材を損傷せず、信頼性の高い溶接を容易に行うことができる。リチウムイオン二次電池などの場合、電極芯材の厚みは、例えば10〜30μm程度である。よって、電極芯材の座屈による短絡等の不良を抑制する観点からも、TIG溶接が好ましい。TIG溶接の条件は、例えば、電流値150A〜250A、溶接時間5msec〜20msecである。溶接時における集電板の電極芯材との接続部の温度は、例えば、1100℃程度である。多孔質絶縁層3は、上記溶接により熱的影響を受けることがなく、溶解または収縮しない材料で構成すればよい。
【0028】
正極集電板6、負極集電板7、および電極群4からなる電極構造体は電池容器8に収納されている。負極集電板7は電池容器8の底部に接続されている。正極集電板6の上部には、電池容器8との絶縁性を確保するために、リング状の絶縁板9が設けられている。正極集電板6に取り付けられた正極リード6aは、絶縁板9の開口を通過して、封口板10を備えた電池蓋の下部に接続されている。電池容器8内には、非水電解質が注入されている。電池容器8の開口端部を、ガスケット11を介して電池蓋の周縁部にかしめることにより、電池容器8は密閉されている。
【0029】
正極芯材には、例えば、厚み10〜30μmの金属箔が用いられる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。また、正極芯材には、金属穿孔体を用いてもよい。
正極集電板6は、例えば、厚み0.3〜2mmである。正極集電板6には、例えば、アルミニウム板が用いられる。
【0030】
正極合剤層は、例えば、正極活物質、正極導電剤、および正極結着剤を含む。正極活物質には、例えば、リチウム含有酸化物およびその変性体が用いられる。具体的には、コバルト酸リチウム、コバルト酸リチウムの変性体、ニッケル酸リチウム、ニッケル酸リチウムの変性体、マンガン酸リチウム、マンガン酸リチウムの変性体が用いられる。変性体としては、例えば、アルミニウム、マグネシウムを含む変性体が用いられる。また、コバルト、ニッケル、ンガンを含む変性体を用いてもよい。正極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、または金属が用いられる。正極結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる。
【0031】
負極芯材には、例えば、厚み8〜20μmの金属箔が用いられる。金属箔としては、例えば、銅箔が挙げられる。また、負極芯材には、金属穿孔体を用いてもよい。
負極集電板7には、例えば、ニッケル板、銅板、またはニッケルめっきを施した銅板が用いられる。負極集電板7は、例えば、厚み0.3〜2mmである。
【0032】
負極合剤層は、例えば、負極活物質、負極導電剤、および負極結着剤を含む。負極活物質としては、例えば、炭素材料、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化スズなどの金属酸化物、金属窒化物が用いられる。炭素材料には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛が用いられる。負極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、金属が用いられる。負極結着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられる。
【0033】
本実施形態では、負極芯材上に形成された負極合剤層2bの表面全体を多孔質絶縁層3で被覆して、負極2を多孔質絶縁層3と一体化して、負極複合体5を構成している。負極合剤層2bにおける負極芯材の露出部2a側の端面を覆う多孔質絶縁層3は、負極芯材の露出部2aにおける負極合剤層2b側の端部も覆っている。
電極群4は、正極1と、負極複合体5とを、捲回することにより得られる。電極群4の構成時において、正極1と、負極2とを捲回する際に、正極1と負極2との間に、多孔質絶縁層3を別途配置する必要がないため、捲回時に捲きずれの発生を抑制することができる。
負極複合体5は、例えば、グラビアロール法により、セラミックスおよびバインダ等の原料を含むスラリーを負極の所定箇所に塗布した後、乾燥して、負極上に多孔質絶縁層を形成することにより得られる。
【0034】
また、本実施形態では、正極1と負極2との対向面において、負極合剤層2bは正極合剤層1bよりも面積が大きい。すなわち、負極合剤層2bの正極集電板6と対向する端部および負極合剤層2bの負極集電板7と対向する端部は、それぞれ正極合剤層1bの正極集電板6と対向する端部および正極合剤層1bの負極集電板7と対向する端部よりも突出している。本実施形態のような場合では、正負極集電板と負極複合体との間の距離を考慮すればよい。
【0035】
図2に示すように、負極集電板7と、多孔質絶縁層3における負極集電板7側の端部との間の距離(図2中のA1)は、3mm以下である。この場合、高出力、高エネルギー密度、および高信頼性を有する電池が得られる。上記距離A1が3mm超であると、正負極合剤層が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。
【0036】
負極集電板7と対向する負極合剤層2bの下端面に形成される多孔質絶縁層3の厚み(図2中の(B1−A1))は、0.5〜5mmであるのが好ましい。上記厚み(B1−A1)が0.5mm未満であると、負極合剤層と正極合剤層との間の絶縁性を十分に確保することが難しい。上記厚み(B1−A1)が5mm超であると、正負極合剤層が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。
負極合剤層2bの下端面に形成される多孔質絶縁層3は、負極芯材の露出部2a上に形成されるため、負極合剤層2bにおける正極合剤層1bとの対向面および負極2の上端面に形成される多孔質絶縁層3よりも、負極2上への保持性が高く、厚みを大きくすることが可能である。上記厚み(B1−A1)が1mm未満と薄くなる場合、負極集電板7の負極2との溶接による負極合剤層2bの熱的影響の観点から、上記距離A1は1mm以上が好ましい。
【0037】
正極集電板6と、多孔質絶縁層3における正極集電板6側の端部との間の距離(図2中のC1)は、3mm以下である。この場合、高出力、高エネルギー密度、および高信頼性を有する電池が得られる。上記距離C1が3mm超であると、正負極合剤層が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。
【0038】
負極2の上端面に形成される多孔質絶縁層3の厚み(図2中の(D1−C1))は、10μm〜3mmであるのが好ましい。上記厚み(D1−C1)が10μm未満であると、多孔質絶縁層における正極集電板6と、正極集電板6と対向する多孔質絶縁層3の上端面との絶縁性を確保することが難しい。上記厚み(D1−C1)が3mmを超えると、正負極合剤層が小さくなり、電池のエネルギー密度が低下する場合がある。
上記厚み(D1−C1)が1mm未満と薄くなる場合、正極集電板6と負極2との絶縁性、および正極集電板6の正極1との溶接による負極合剤層2bの熱的影響の観点から、上記距離C1は1mm以上が好ましい。
【0039】
絶縁性の確保とともに、高出力化および高エネルギー密度化を実現するためには、多孔質絶縁層3(正負極と対向する部分)は、厚み10〜30μmが好ましい。より好ましくは、多孔質絶縁層3(正負極と対向する部分)は、厚み15〜25μmである。
多孔質絶縁層3には、例えば、イミド系化合物、またはセラミックスが用いられる。これらの材料は、絶縁性が良好であり、融点が高く、安定性に優れている。セラミックスには、酸化物、窒化物、または炭化物が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、入手が容易である等の点から酸化物が好ましい。酸化物としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、酸化亜鉛、シリカ(酸化ケイ素)が用いられる。これらのなかでも、アルミナが好ましく、α−アルミナが特に好ましい。α−アルミナは化学的に安定であり、高純度のものは特に安定である。また、α−アルミナは、電池内部において電解質や酸化還元電位により電池特性に悪影響を及ぼすような副反応を起こすことがない。
【0040】
多孔質絶縁層3は、セラミックス粒子を含むのが好ましい。セラミックス粒子(一次粒子)の平均粒径は、例えば、0.05〜1μmである。セラミックス粒子の形態としては、一次粒子がファンデアワールス力で凝集した球状の二次粒子を含んだ形態でもよい。
また、セラミックス粒子は、単結晶の核同士が連結して多結晶粒子を含むのが望ましい。多結晶粒子の形状としては、球状でもよく、一部に突部を有する形状でもよいが、樹枝状、珊瑚状、または房状が好ましい。多結晶粒子を含むセラミックス粒子は、例えばセラミックス前駆体を焼成してセラミックス焼成体を得、そのセラミックス焼成体を機械的に解砕することより得られる。セラミックス焼成体は、単結晶の核が成長して、その核同士が3次元的に連結した構造を有する。このような焼成体を、適度に、機械的に解砕すれば、多結晶粒子を含むセラミックス粒子が得られる。セラミックス粒子は、全てが多結晶粒子からなることが好ましいが、セラミックス粒子は、例えば、多結晶粒子を30重量%未満含んでいればよい。セラミックス粒子は、多結晶粒子以外の粒子、例えば球状もしくは略球状の一次粒子、またはそれらが凝集した粒子を含んでいてもよい。
【0041】
多孔質絶縁層3は、上記セラミックス粒子およびバインダからなるのが好ましい。バインダには、例えば、フッ素樹脂が用いられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が用いられる。バインダには、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体を用いてもよい。ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体は、アクリル酸単位およびアクリロニトリル単位の少なくとも一方と、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸メチル単位、およびメタクリル酸エチル単位からなる群より選択される少なくとも1種とからなるのが好ましい。また、バインダには、ポリエチレン、スチレン−ブタジエンゴムを用いてもよい。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、特に、アクリロニトリル単位を含む高分子、すなわちポリアクリロニトリル誘導体が好ましい。バインダに上記材料を用いた場合、多孔質絶縁層は良好な柔軟性を有するため、多孔質絶縁層にひび割れや剥がれが発生しにくくなる。
【0042】
多孔質絶縁層3の空隙率は、30〜80%が好ましく、40〜80%がより好ましく、50〜70%が特に好ましい。多孔質絶縁層の空隙率が30%以上であれば、良好な大電流での充放電特性(以下、ハイレート特性)および低温環境下での充放電特性(以下、低温特性)が得られる。多孔質絶縁層の空隙率が40%以上であれば、優れたハイレート特性および低温特性が得られる。多孔質絶縁層の空隙率が80%を超えると、多孔質絶縁層の機械的強度が低下する。
【0043】
電極群4は、非水電解質を含む。非水電解質としては、例えば、非水溶媒および前記非水溶媒に溶解するリチウム塩からなる液状の非水電解質、または前記非水電解質にポリマー材料を添加したゲル電解質が用いられる。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)が用いられる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、またはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネートが用いられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、非水電解質に、ビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ジフェニルエーテルのような添加剤を加えてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
《実施例1》
(1)正極の作製
正極活物質としてのコバルト酸リチウム3kgと、正極導電剤としての電気化学工業(株)製のアセチレンブラック90gと、正極結着剤としての三井デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)230J(PTFEを60重量%含む水性分散液)100gと、適量の水とを、プラネタリーミキサーにて混練し、スラリー状の正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔(厚み15μm、幅53mm)からなる正極芯材の両面に塗布した後、乾燥し、正極芯材の両面に正極合剤層1bを形成した。このとき、正極芯材の長手方向に沿う一端部に幅3mmの正極芯材の露出部1aを設け、正極合剤層1bの幅を50mmとし、図3に示す正極1を得た。正極1を圧延し、正極1の厚み100μmとした。
【0045】
(2)負極の作製
負極活物質としての人造黒鉛3kgと、負極結着剤としての日本ゼオン(株)製のBM−400B(スチレン−ブタジエン共重合体(ゴム粒子)を40重量%含む水性分散液)75gと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)30gと、適量の水とを、プラネタリーミキサーにて混練し、スラリー状の負極合剤を得た。この負極合剤を銅箔(厚み10μm、幅57mm)からなる負極芯材の両面に塗布した後、乾燥し、負極芯材の両面に負極合剤層2bを形成した。このとき、負極芯材の長手方向に沿う一端部に幅3mmの負極芯材の露出部2aを設け、負極合剤層2bの幅を54mmとし、図4に示す負極を得た。負極2を圧延し、負極2の厚み110μmとした。
【0046】
(3)多孔質絶縁層の形成
メディアン径0.3μmのアルミナ粉末1000gと、日本ゼオン(株)製のBM−720H(アクリロニトリル単位を含むゴム性状高分子を8重量%含むNMP溶液)375gと、適量のNMP溶媒とを、プラネタリーミキサーにて混練し、スラリーを得た。このスラリーを、上記で得られた負極の負極合剤層上に、グラビアロール法で、0.5m/分の速度で塗布し、120℃の熱風を0.5m/秒の風量を送り、乾燥させた。このようにして、負極の両面(負極合剤層における正極合剤層との対向面)に、それぞれ厚み20μmの多孔質絶縁層3を形成した。
【0047】
負極芯材の露出部2aにおける負極合剤層2b側の端部にスラリーを塗布可能なように、グラビアロールおよび負極2の位置を調整した。負極芯材の露出部2aにおける負極合剤層2b側の端部に、スラリーを、2mm幅で、負極合剤層2bの下端面を覆うように塗布し、多孔質絶縁層3を形成した。すなわち、負極集電板7と対向する負極合剤層2bの下端面に厚み(図2中の(B1−A1))が2mmである多孔質絶縁層3を形成した。
さらに、正極集電板6と対向する負極2の上端面にスラリーを塗布し、厚み(図2中の(D1−C1))が100μmである多孔質絶縁層3を形成した。このようにして、負極合剤層2bの表面全体を多孔質絶縁層3で覆い、負極複合体5を得た。負極芯材の露出部2aにおける負極合剤層2b側の端部以外は、多孔質絶縁層3を形成せずに、負極芯材を露出させた。
【0048】
(4)非水電解質の調製
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比2:3:3で含む混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させて、非水電解質を得た。さらに、非水電解質100重量部にビニレンカーボネート(VC)2重量部を添加した。
【0049】
(5)電池の作製
上記で得られた正極1と、負極複合体5とを、それぞれ長手方向の長さ100cmに切断し、これらを用いて電極群4を構成した。より具体的には、電極群4の一方の端面において正極芯材の露出部1aが突出し、電極群4の別の端面において負極芯材の露出部2aが突出するように、正極1と負極複合体5とを捲回して円筒形の電極群4を作製した。このとき、電極群4の最内周側にも厚み20μmの多孔質絶縁層を配置した。
【0050】
正極芯材の露出部1aの端部を正極集電板6にTIG溶接し、負極芯材の露出部2aの端部を負極集電板7にTIG溶接し、電極構造体を作製した。このとき、負極集電板7と、多孔質絶縁層3における負極集電板7側の端部との間の距離A1は、1mmとした。正極集電板6と、多孔質絶縁層3における正極集電板6側の端部との間の距離C1は、1mmとした。正極集電板6には、アルミニウム製の円板(厚み1mm、径14mm)を用いた。負極集電板7には、銅製の円板(厚み1mm、径14mm)を用いた。TIG溶接の条件は、電流値180A、および溶接時間50msecとした。
【0051】
ニッケルめっき鋼板からなる有底円筒形の電池容器8(直径18mm、高さ65mm)に電極構造体を挿入し、負極集電板7を電池容器8の内底面に抵抗溶接した。正極集電板6に正極リード6aの一端を取り付けた。正極端子を兼ねる封口板10を備えた電池蓋を準備し、正極リード6aの他端を電池蓋の下部にレーザ溶接した。上記で得られた非水電解質を減圧下で電池容器8内に注入した。電池容器8の開口端部を、樹脂製ガスケット11を介して封口板10の周縁部にかしめて、電池容器8を密閉した。このようにして、非水電解質二次電池(1)を作製した。
【0052】
《実施例2》
アルミニウム箔(厚み15μm、幅51mm)からなる正極芯材を用い、正極芯材の長手方向に沿う一端部に幅5mmの正極芯材の露出部1aを設け、正極合剤層1bの幅を46mmとした以外、実施例1と同様の方法により正極1を作製した。
銅箔(厚み10μm、幅55mm)からなる負極芯材を用い、負極芯材の長手方向に沿う一端部に幅5mmの負極芯材の露出部2aを設け、負極合剤層2bの幅を50mmとした以外、実施例1と同様の方法により負極2を作製した。
負極集電板7と、多孔質絶縁層3における負極集電板7側の端部との間の距離A1は、3mmとした。正極集電板6と、多孔質絶縁層3における正極集電板6側の端部との間の距離C1は、3mmとした。
上記以外、実施例1と同様の方法により電池(2)を作製した。
【0053】
《比較例1》
図5に示すように、多孔質絶縁層3の代わりに、セパレータとして帯状のポリエチレンフィルム13a(旭化成ケミカルズ(株)製、厚み20μm)を正極1と負極2との間に配置した。
負極集電板7と、ポリエチレンフィルム13aにおける負極集電板7側の端部との間の距離A2は、1mmとした。ポリエチレンフィルムにおける負極合剤層2bの下端部から突出する部分の長さ(B2−A2)は、2mmとした。正極集電板6と、ポリエチレンフィルム13aにおける正極集電板6側の端部との間の距離C2は、1mmとした。ポリエチレンフィルム13aにおける負極2の上端部から突出する部分の長さ(D2−C2)は、100μmとした。
上記以外、実施例1と同様の方法により電池(3)を作製した。
【0054】
《比較例2》
アルミニウム箔(厚み15μm、幅51mm)からなる正極芯材を用い、正極芯材の長手方向に沿う一端部に幅7mmの正極芯材の露出部1aを設け、正極合剤層1bの幅を44mmとした以外、実施例1と同様の方法により正極を作製した。
厚み10μmおよび幅53mmの銅箔を用い、負極芯材の長手方向に沿う一端部に幅5mmの負極芯材の露出部2aを設け、負極合剤層2bの幅を48mmとした以外、実施例1と同様の方法により負極を作製した。
【0055】
負極集電板7と、ポリエチレンフィルム13aにおける負極集電板7側の端部との間の距離A2は、3mmとした。正極集電板6と、ポリエチレンフィルム13aにおける正極集電板6側の端部との間の距離C2は、3mmとした。
上記以外、比較例1と同様の方法により電池(4)を作製した。
【0056】
《比較例3》
図6に示すように、実施例1と同じ正極1と、実施例1と同じ負極複合体5とを、正極1と負極複合体5との間に比較例1と同じポリエチレンフィルム13aを介在させて電極群を構成した。このとき、ポリエチレンフィルム13aの上端および下端を、負極複合体5の上端および下端と一致させた。
具体的には、負極集電板7と、多孔質絶縁層3およびポリエチレンフィルム13aにおける負極集電板7側の端部との間の距離A3は、1mmとした。ポリエチレンフィルム13aにおける負極合剤層2bの下端部から突出する部分の長さおよび負極集電板7と対向する負極合剤層2bの下端面に形成された多孔質絶縁層3の厚み、すなわち、(B3−A3)の寸法は、2mmとした。正極集電板6と、多孔質絶縁層3およびポリエチレンフィルム13aにおける正極集電板6側の端部との間の距離C3は、1mmとした。ポリエチレンフィルム13aにおける負極2の上端部から突出する長さ、および正極集電板6と対向する負極2の上端面に形成された多孔質絶縁層3の厚み、すなわち、(D3−C3)の寸法は、100μmとした。
上記以外、実施例1と同様の方法により電池(5)を作製した。
【0057】
上記で作製した電池(1)〜(5)について、以下の評価を実施した。
[評価]
(1)電池容量の測定
各電池を電池電圧が4.2Vに達するまで1Aの定電流で充電した後、充電電流値が0.2Aに減少するまで4.2Vの定電圧で充電した。その後、各電池を、電池電圧が2.5Vに達するまで1Aで放電し、そのときの放電容量(電池容量)を求めた。各電池の試験数を30個とし、電池容量を、電池30個の放電容量の平均値として求めた。電池容量が900mAh以上であれば、電池は高容量(高エネルギー密度)を有すると判断した。
【0058】
(2)OCV不良率の測定
各電池を、1Aの定電流で4時間充電した。そして、充電してから10分間経過した後の電池の開路電圧(V1)を測定した。
また、各電池を、上記と同じ条件で充電した後、45℃で48時間保存した。保存後の電池の開路電圧(V2)を測定した。(V1−V2)(保存前後の開路電圧の差)を求めた。
そして、(V1−V2)が100mV以上である電池を不良であると判断した。
各電池の試験数を30個とし、30個の電池に対する不良と判断された電池数の割合(OCV不良率)を求めた。
上記の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の実施例1および2の電池(1)および(2)は、高容量を有し、かつOCV不良率0%であった。電池(1)および(2)では、正極と負極との間に耐熱性を有する多孔質絶縁層のみが配されているため、TIG溶接により集電板と電極芯材の露出部との接合部が高温となっても、多孔質絶縁層は溶接による熱的影響を受けることがないため、多孔質絶縁層により正極は負極との絶縁性が確保された。
また、多孔質絶縁層の端部を従来よりも電極集電体の近くに配置でき、電極合剤層を大きく設けることができるため、電池(1)および(2)では高エネルギー密度が得られた。出力の大きいタブレス構造を有しながらエネルギー密度を損なうことなく、信頼性の高い二次電池を提供することができた。
これに対して、比較例1の電池(3)では、いずれの電池もOCV不良を発生した。電池(3)では、セパレータに、従来品であるポリエチレンフィルムを用いたため、TIG溶接により接合部が高温になり、セパレータはこの溶接による熱的影響を受けて、収縮し、正極は負極と接触し、内部短絡を生じたと考えられる。
【0061】
比較例2の電池(4)では、電池(3)と同様にセパレータにポリエチレンフィルムを用いたが、電池(3)と比べて、OCV不良率は低下した。これは、電極集電板の溶接部と、セパレータの電極集電板側の端部との距離を大きく確保することにより、電極芯材の露出部の電極集電板への溶接によるセパレータの熱的影響が小さくなったためであると考えられる。しかし、電極芯材の露出部を大きくしたため、電極合剤層が小さくなり、電池(4)の容量は減少した。従来のセパレータにポリエチレンフィルムを用いた場合において、OCV不良率を0%とするためには、電池(4)の場合よりも電極芯材の露出部をさらに大きくし、正極芯材の露出部の幅14mm、負極芯材の露出部の幅10mmとする必要があった。この場合の電池容量は670mAhと大幅に低減した。
【0062】
比較例3の電池(5)では、多孔質絶縁層とポリエチレンフィルムとを併用したため、電池(3)と比べて、電池ケースに挿入される電極の長さが減少し、電池容量が減少した。また、電池(5)の仕様では、OCV不良が発生した電池がみられた。この理由としては、ポリエチレンフィルムが、電極芯材の露出部の集電板への溶接による熱的影響を受けて、収縮し、その収縮に伴い、多孔質絶縁層の一部が剥がれたためであると考えられる。
【0063】
《実施例4》
電池製造時において、電極芯材の露出部の電極集電板への溶接法に、TIG溶接の代わりに、レーザ溶接を用いた以外、実施例2と同様の方法により非水電解質二次電池(6)を作製した。この電池(6)について、上記と同様の方法によりOCV不良率を求めた。
【0064】
電池(6)のOCV不良率は20%であり、電池(2)よりも高いOCV不良率を示した。
OCV不良と判断された電池(6)を解体調査した。その結果、集電板に穴が開いていることが確認された。レーザ溶接は、TIG溶接と比べて、熱が集中するため、耐熱性を有する多孔質絶縁層を用いた場合でも、集電板の一部が融解し穴が開くことにより、OCV不良が発生した。
このことから、電極芯材の露出部の集電板への溶接は、TIG溶接が好ましいことがわかった。
【0065】
上記実施例では、円筒形非水電解質二次電池を作製したが、角形非水電解質二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池などの二次電池を作製した場合でも、上記と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の二次電池は、高信頼性、高出力、および高エネルギー密度を有するため、パワーツール用途、ならびに電力貯蔵および電気自動車のような高出力や長期耐久性が要求される用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の二次電池の一実施形態である円筒形非水電解質二次電池の概略縦断面図である。
【図2】図1の電池の要部断面図である。
【図3】図1の電池に用いられる正極の正面図である。
【図4】図1の電池に用いられる負極の正面図である。
【図5】比較例1および2の電池における要部断面図である。
【図6】比較例3の電池における要部断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 正極
1a 正極芯材の露出部
1b 正極合剤層
2 負極
2a 負極芯材の露出部
2b 負極合剤層
3 多孔質絶縁層
4 電極群
5 負極複合体
6 正極集電板
6a 正極リード
7 負極集電板
8 電池容器
9 絶縁板
10 封口板
11 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極とを、前記第1電極と前記第2電極との間に耐熱性を有する多孔質絶縁層のみを介して、捲回または積層してなる電極群と、前記第1電極と電気的に接続された第1集電板とを具備し、
前記第1電極は、第1電極芯材および前記第1電極芯材に形成された第1電極合剤層を含み、
前記第2電極は、第2電極芯材および前記第2電極芯材に形成された第2電極合剤層を含み、
前記第1電極の一端部は、前記電極群の一端面において、前記第2電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、
前記突出する第1電極の端部は、第1電極芯材の露出部を有し、
前記第1電極芯材の露出部は、前記第1集電板に溶接され、
前記多孔質絶縁層の端部は、前記第1電極合剤層および前記第2電極合剤層の端部よりも突出しており、
前記第1集電板と、前記多孔質絶縁層における前記第1集電板側の端部との間の距離が3mm以下であることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
さらに、前記第2電極と電気的に接続された第2集電板を具備し、
前記第2電極の一端部は、前記電極群の別の端面において、前記第1電極の端部および前記多孔質絶縁層の端部よりも突出しており、
前記突出する第2電極の端部は、第2電極芯材の露出部を有し、
前記第2電極芯材の露出部は、前記第2集電板に溶接されている請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2集電板と、前記多孔質絶縁層における前記第2集電板側の端部との間の距離が3mm以下である請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記多孔質絶縁層は、セラミックス粒子を含む請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
前記多孔質絶縁層は、セラミックス粒子およびバインダからなる請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
前記多孔質絶縁層は、前記第1電極合剤層および前記第2電極合剤層の少なくとも一方を覆うように形成されている請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
前記二次電池は非水電解質二次電池である請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1電極芯材の露出部は、前記第1集電板と、アーク溶接により接続されている請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
前記第2電極芯材の露出部は、前記第2集電板と、アーク溶接により接続されている請求項2記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−99558(P2009−99558A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246008(P2008−246008)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】