説明

二酸化炭素分離回収装置

【課題】吸収液の二酸化炭素吸収性能の低下を防止する二酸化炭素分離回収装置の提供。
【解決手段】吸収塔103において二酸化炭素と共に酸素を吸収した吸収液104aを酸素捕集部13、14へ供給する。酸素捕集部13、14は銀を含み、吸収液104a中の酸素を捕集し、吸収液104aから酸素を除去する。2つの酸素捕集部13、14の一方に吸収液104aを供給している時に、再生部15が他方の酸素捕集部に捕集されている酸素を分離、回収して、酸素捕集部を再生する。2つの酸素捕集部13、14を切り替えて使用することで、連続運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大量の化石燃料を使用する火力発電所等を対象に、燃焼排ガスとアミン系吸収液を接触させ、燃焼排ガス中の二酸化炭素を分離回収する方法、及び回収された二酸化炭素を大気へ放出することなく貯蔵する方法が研究されている。
【0003】
具体的には、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素をアミン系吸収液に吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が吸収塔から供給され、リッチ液を加熱し、リッチ液から二酸化炭素ガスを放出させて吸収液を再生する再生塔と、を備えた二酸化炭素回収装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
燃焼排ガスには酸素や二酸化硫黄が含まれており、これらは吸収塔において二酸化炭素と共に吸収液に吸収される。酸素や二酸化硫黄を吸収した吸収液は劣化して、二酸化炭素吸収性能が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−323339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸収液の二酸化炭素吸収性能の低下を防止する二酸化炭素分離回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による二酸化炭素分離回収装置は、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液から酸素を除去する酸素除去部と、を備え、前記酸素除去部は、前記吸収液に含まれる酸素を捕集する第1捕集部及び第2捕集部と、前記吸収塔から排出された吸収液を前記第1捕集部又は前記第2捕集部へ供給する第1流路切替部と、前記第1捕集部又は前記第2捕集部から排出された吸収液を前記再生熱交換器へ供給する第2流路切替部と、前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第1捕集部へ供給している時は前記第2捕集部に捕集された酸素を回収し、前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第2捕集部へ供給している時は前記第1捕集部に捕集された酸素を回収する再生部と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の一態様による二酸化炭素分離回収装置は、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、前記吸収塔と前記再生熱交換器との間に設けられ、前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液を貯留し、当該吸収液に含まれる酸素と亜硫酸イオンとの反応により硫酸イオンを生成する反応器と、前記硫酸イオンを含む吸収液から当該硫酸イオンを除去する第1除去部と、前記再生熱交換器と前記吸収塔との間に設けられ、前記再生塔から排出され、前記硫酸イオンが除去された吸収液から有機酸アニオンを除去する第2除去部と、を備えるものである。
【0009】
本発明の一態様による二酸化炭素分離回収装置は、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、前記吸収塔と前記再生熱交換器との間に設けられ、前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液を貯留し、当該吸収液に含まれる酸素と亜硫酸イオンとの反応により硫酸イオンを生成する反応器と、前記硫酸イオンを含む吸収液から当該硫酸イオンを除去する第1除去部と、前記再生熱交換器と前記吸収塔との間に設けられ、前記再生塔から排出され、前記硫酸イオンが除去された吸収液から有機酸アニオンを除去する第2除去部と、前記反応器から排出された吸収液に含まれる酸素を捕集する第1捕集部及び第2捕集部、前記反応器から排出された吸収液を前記第1捕集部又は前記第2捕集部へ供給する第1流路切替部、前記第1捕集部又は前記第2捕集部から排出された吸収液を前記再生熱交換器へ供給する第2流路切替部、及び前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第1捕集部へ供給している時は前記第2捕集部に捕集された酸素を回収し、前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第2捕集部へ供給している時は前記第1捕集部に捕集された酸素を回収する再生部を有する第3除去部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸収液の二酸化炭素吸収性能の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図2】同第1の実施形態に係る酸素除去方法を説明するフローチャートである。
【図3】酸素除去部における流路切り替え例を示す図である。
【図4】変形例による二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図5】変形例による二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図7】変形例による二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図8】変形例による二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図9】変形例による二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置の概略構成を示す。ここで二酸化炭素分離回収装置は、二酸化炭素を吸収可能な吸収液を用いて、化石燃料の燃焼により生成された燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を回収するものである。二酸化炭素を吸収可能な吸収液には、例えばアミン化合物を水に溶かしたアミン化合物水溶液が使用される。
【0014】
図1に示すように二酸化炭素分離回収装置1は、酸素除去部10、吸収塔103、再生塔105、リボイラー106、再生熱交換器107、冷却器114、ガス冷却器116及び凝縮器117を備える。
【0015】
吸収塔103は、燃焼排ガス102aに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる。再生塔105は、吸収塔103から、二酸化炭素を吸収した吸収液(以下、リッチ液104aと記す)が供給され、このリッチ液104aを加熱し、吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを放出させて、二酸化炭素ガスと蒸気とを含む排出ガス102cを排出するとともに吸収液を再生する。
【0016】
例えば、火力発電所などの発電設備において生成された燃焼排ガス102aが吸収塔103の下部に供給され、吸収塔103の頂部から二酸化炭素が取り除かれた燃焼排ガス102bが排出されるようになっている。
【0017】
リボイラー106は、再生塔105に貯留されていたリーン液104bの一部を加熱してその温度を上昇させて蒸気を生成し、再生塔105に供給する。なお、リボイラー106においてリーン液104bを加熱する際、リーン液104bから微量の二酸化炭素ガスが放出され、蒸気とともに再生塔105に供給される。そして、この蒸気により、再生塔105においてリッチ液104aが加熱されて二酸化炭素ガスが放出される。
【0018】
吸収塔103と再生塔105との間に、再生塔105から吸収塔103に供給されるリーン液104bを熱源として、吸収塔103から再生塔105に供給されるリッチ液104aを加熱する再生熱交換器107が設けられ、リーン液104bの熱を回収するように構成されている。再生熱交換器107からのリーン液104bは冷却器114により冷却され、吸収塔103の上部に供給される。
【0019】
吸収塔103の上部に供給されたリーン液104bは、吸収塔103内において上部から下降する。一方、吸収塔103に供給された燃焼排ガス102aは、吸収塔103内において下部から頂部に向けて上昇する。そのため、二酸化炭素を含む燃焼排ガス102aとリーン液104bが向流接触(直接接触)し、燃焼排ガス102aから二酸化炭素が取り除かれてリーン液104bに吸収され、リッチ液104aが生成される。二酸化炭素が取り除かれた燃焼排ガス102bは、吸収塔103の頂部から排出される。
【0020】
吸収塔103において、燃焼排ガス102a中の二酸化炭素がリーン液104bに吸収される時、酸素も吸収される。そのため、リッチ液104aには酸素が含まれる。酸素除去部10は、リッチ液104aの溶存酸素を除去するものであり、詳しくは後述する。
【0021】
ガス冷却器116は、再生塔105から排出された排出ガス102cを、冷却水(冷却媒体)を用いて冷却し、凝縮器117に供給する。
【0022】
凝縮器117は、この排出ガス102cを凝縮(冷却)して、二酸化炭素ガスと生成された凝縮液とを分離する。凝縮器117から排出された二酸化炭素ガス102dは、貯蔵設備(図示せず)で貯蔵される。凝縮器117からの凝縮液は、再生塔105の上部に供給される。
【0023】
次に、酸素除去部10の構成について説明する。酸素除去部10は、流路切替部11、12、酸素捕集部13、14、及び再生部15を有する。
【0024】
酸素捕集部13、14は、リッチ液104a中の酸素を吸着し、リッチ液104aから酸素を除去する。酸素が除去されたリッチ液104aは、流路切替部12を介して、再生熱交換器107へ送られる。
【0025】
酸素捕集部13、14は、例えば銀多孔体を用いることができる。銀多孔体を用いることで2Ag+O→AgOという反応が起こり、リッチ液104aから酸素が除去される。
【0026】
再生部15は、酸素捕集部13、14に捕集された酸素を分離、回収し、酸素捕集部13を再生する。例えば、再生部15が、銀多孔体が用いられている酸素捕集部13を再生する場合、まず、酸素捕集部13内の液体(吸収液)を回収する。再生部15は回収した吸収液を外部に設けられたタンク(図示せず)等へ排出する。再生部15は、回収した吸収液を全て外部へ排出すると、外部から供給された高温の(200℃程度)の水蒸気、N、CO等を酸素捕集部13へ供給する。なお、以下の説明では、再生部15から酸素捕集部13(14)へ供給する水蒸気、N、CO等を単に気体と称する。酸素捕集部13では、AgO→2Ag+Oという反応が起こり、酸素が分離される。この分離された酸素は、再生部15から供給された気体と共に再生部15に回収される。これにより、酸素捕集部14の銀多孔体が再生する。酸素捕集部14の銀多孔体を再生する場合も同様である。再生部15は酸素捕集部13、14から回収した酸素を含む気体を外部へ排出する。
【0027】
酸素捕集部13、14にヒータを設け、ヒータの加熱によりAgO→2Ag+Oという反応を起こして、銀多孔体から酸素を分離してもよい。再生部15からの気体の供給は、ヒータによる加熱前から行ってもよいし、加熱後に行ってもよい。再生部15から供給される気体と共に、酸素捕集部13、14の銀多孔体から分離した酸素が再生部15に回収される。なお、酸素捕集部13、14にヒータを設ける場合、再生部15から酸素捕集部13、14へ供給する気体は、銀多孔体から分離した酸素を回収するためのものであるので、高温でなくてもよい。
【0028】
再生部15が酸素捕集部13を再生する場合、リッチ液104aは、流路切替部11、酸素捕集部14、流路切替部12を介して、再生塔105に供給される。この時、再生部15から流路切替部12を介して酸素捕集部13に気体が供給され、酸素捕集部13から排出される液体や気体は流路切替部11を介して再生部15に回収される。
【0029】
一方、再生部15が酸素捕集部14を再生する場合は、リッチ液104aは、流路切替部11、酸素捕集部13、流路切替部12を介して、再生塔105に供給される。この時、再生部15から流路切替部12を介して酸素捕集部14に気体が供給され、酸素捕集部14から排出される液体や気体は流路切替部11を介して再生部15に回収される。
【0030】
流路切替部11、12には、例えば四方弁を用いることができる。
【0031】
酸素除去部10におけるリッチ液104aの酸素除去、酸素捕集部13、14の再生の手順の一例を、図2に示すフローチャート及び図3に示す流路切替部11、12の流路切り替え先を用いて説明する。
【0032】
(ステップS101)リッチ液104aが酸素捕集部13に供給され、酸素が除去される。
【0033】
(ステップS102)酸素捕集部13の再生を行うか否かが判定される。例えば、酸素捕集部13にリッチ液104aを供給してから所定時間が経過した場合は、酸素捕集部13における酸素吸着性能が低下していると考えられるため、再生を行うと判定される。再生を行う場合はステップS103に進み、再生が不要な場合はステップS101に戻る。
【0034】
(ステップS103)流路切替部11、12の流路が切り替えられる。図3(a)に示すように、流路切替部11は、リッチ液104aを酸素捕集部14に供給し、酸素捕集部13から排出される液体や気体を再生部15に供給する。
【0035】
また、流路切替部12は、再生部15から供給されるガス等を酸素捕集部13に供給し、酸素捕集部14から排出されるリッチ液104aを再生熱交換器107に供給する。
【0036】
(ステップS104)酸素捕集部13が再生される。例えば、酸素捕集部13内に残存している吸収液が再生部15に回収される。再生部15は、酸素捕集部13から回収した吸収液を全て外部へ排出した後、外部から供給される高温の気体を酸素捕集部13へ供給する。この高温の気体により酸素捕集部13内の銀多孔体から酸素が分離する。分離した酸素は、気体と共に再生部15に回収される。
【0037】
(ステップS105)リッチ液104aが酸素捕集部14に供給され、酸素が除去される。
【0038】
(ステップS106)酸素捕集部14の再生を行うか否かが判定される。再生を行う場合はステップS108に進み、再生が不要な場合はステップS107に進む。
【0039】
(ステップS107)二酸化炭素分離回収装置1の運転が継続される場合はステップS105に戻る。
【0040】
(ステップS108)流路切替部11、12の流路が切り替えられる。図3(b)に示すように、流路切替部11は、リッチ液104aを酸素捕集部13に供給し、酸素捕集部14から排出される液体や気体を再生部15に供給する。
【0041】
また、流路切替部12は、再生部15から供給されるガス等を酸素捕集部14に供給し、酸素捕集部13から排出されるリッチ液104aを再生熱交換器107に供給する。
【0042】
(ステップS109)酸素捕集部14が再生される。例えば、酸素捕集部14内に残存している吸収液が再生部15に回収される。再生部15は、酸素捕集部14から回収した吸収液を全て外部へ排出した後、外部から供給される高温の気体を酸素捕集部14へ供給する。この高温の気体により酸素捕集部14内の銀多孔体から酸素が分離する。分離した酸素は、気体と共に再生部15に回収される。
【0043】
このように、二酸化炭素回収装置1内を循環する吸収液から酸素を除去することができるため、吸収液の二酸化炭素吸収性能の低下を防止することができる。また、2つの酸素捕集部13、14の一方の再生中に他方を使用することで、連続運転しつつ、酸素捕集部の再生を行うことができる。
【0044】
再生部15が酸素捕集部13、14へ高温水蒸気を供給する場合、この高温水蒸気をリボイラー106から受け取るようにしてもよい。また、当該高温水蒸気に不純物が含まれている場合は、酸素捕集部13、14から酸素を除去した後に、純水で洗浄するようにしてもよい。
【0045】
また、再生部15がボイラーを有し、高温の水蒸気を生成して、酸素捕集部13、14へ供給してもよい。
【0046】
酸素捕集部13、14には銀多孔体だけでなく、銀粒を焼結したもの、ステンレス鋼メッシュ表面を銀メッキしたもの、発泡ウレタンを銀メッキした後に発泡ウレタンを除去したもの等を用いることができる。酸素捕集部13、14から銀が溶け出す場合は、酸素除去部10と再生塔105との間に、吸収液から銀を除去できるカチオン交換樹脂等を設けることが好適である。
【0047】
酸素捕集部13、14には銀だけでなく、酸素を吸着し易く、吸収液に影響を与えない物質を用いることができ、例えば鉄繊維を用いることができる。酸素を十分吸着した鉄繊維は、新しい鉄繊維と交換する方法をとってもよい。
【0048】
酸素捕集部13、14の再生の際に、酸素捕集部13、14から回収した吸収液は、再び二酸化炭素分離回収装置1の系内に戻してもよい。例えば、図4に示すように、再生部10と再生熱交換器107との間に吸収液を戻すことができる。また、図5に示すように、再生熱交換器107と冷却器114との間に設けられた緩衝タンク120に吸収液を戻してもよい。
【0049】
(第2の実施形態)図6に本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置の概略構成を示す。本実施形態は、図1に示す第1の実施形態と比較して、酸素除去部10が省略され、酸化反応器20、硫酸イオン除去部30及び有機酸アニオン除去部40が設けられている点が異なる。図6において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
燃焼排ガス102aには酸素だけでなく、二酸化硫黄も含まれており、この二酸化硫黄は吸収塔103において、SO+HO→H+HSOという反応により吸収液に吸収される。従って、リッチ液104aは、酸素及び亜硫酸を含有する。
【0051】
このリッチ液104aは酸化反応器20に供給され、酸化反応器20において、1/2O+HSO→H+SO2−という反応が起きる。この反応により溶存酸素が硫酸イオンとして固定されるため、酸素による吸収液の劣化を防止することができる。酸化反応器20はこの反応を起こすために吸収液を一時的に貯留しておくものであり、例えばタンクを用いることができる。
【0052】
酸化反応器20から排出されたリッチ液104aは再生塔105において二酸化炭素が除去される。
【0053】
再生塔105から排出されるリーン液104bは硫酸イオンを含む。リーン液104bは、冷却器114において冷却された後、硫酸イオン除去部30に供給され、硫酸イオンが除去される。
【0054】
硫酸イオン除去部30で硫酸イオンが除去されたリーン液104bは、有機酸アニオン除去部40に供給され、有機酸アニオンが除去される。リーン液104bは、有機酸アニオンの除去後、吸収塔103に供給される。
【0055】
硫酸イオン除去部30は、流路切替部31、32、イオン交換樹脂33、34を有する。イオン交換樹脂33、34はリーン液104b中の硫酸イオンを吸着するものであり、例えば強塩基性アニオン交換樹脂を用いることができる。
【0056】
流路切替部31は、リーン液104bの供給先をイオン交換樹脂33又は34に切り替える。流路切替部32は、イオン交換樹脂33又は34から排出されたリーン液104bを有機酸アニオン除去部40に供給する。流路切替部31、32は例えば三方弁を用いることができる。
【0057】
イオン交換樹脂33においてリーン液104b中の硫酸イオンを吸着している間に、イオン交換樹脂34から硫酸イオンを分離、除去し、再生することができる。例えば、イオン交換樹脂34にNaOH等を流すことで再生することができる。同様に、イオン交換樹脂34においてリーン液104b中の硫酸イオンを吸着している間に、イオン交換樹脂33を再生することができる。
【0058】
有機酸アニオン除去部40は、流路切替部41、42、イオン交換樹脂43、44を有する。イオン交換樹脂43、44はリーン液104b中の有機酸アニオンを吸着するものであり、例えばアニオン交換樹脂を用いることができる。
【0059】
流路切替部41は、リーン液104bの供給先をイオン交換樹脂43又は44に切り替える。流路切替部42は、イオン交換樹脂43又は44から排出されたリーン液104bを吸収塔103に供給する。流路切替部41、42は例えば三方弁を用いることができる。
【0060】
イオン交換樹脂43においてリーン液104b中の有機酸アニオンを吸着している間に、イオン交換樹脂44から有機酸アニオンを分離、除去し、再生することができる。例えば、イオン交換樹脂44にNaOH等を流すことで再生することができる。同様に、イオン交換樹脂44においてリーン液104b中の有機酸アニオンを吸着している間に、イオン交換樹脂43を再生することができる。
【0061】
このように、本実施形態では、吸収液中の溶存酸素を亜硫酸と反応させて硫酸イオンとして固定することで、酸素を除去し、吸収液の二酸化炭素吸収性能の低下を防止することができる。また、吸収液中の硫酸イオンを除去することで、吸収液の劣化や、二酸化炭素分離回収装置の構造材の腐食を防止することができる。
【0062】
上記実施形態では、硫酸イオン除去部30の下流側に有機酸アニオン除去部40を設けているが、これは、硫酸イオンがイオン交換樹脂に吸着された有機酸アニオンを追い出すためである。従って、硫酸イオン除去部30の下流側に有機酸アニオン除去部40を設けることが好適である。
【0063】
硫酸イオン除去部30において、硫酸イオンの吸着を行うイオン交換樹脂33、34の切り替えは、一定時間毎に行うことができる。また、硫酸イオン除去部30から有機酸アニオン除去部40に供給されるリーン液中の硫酸イオン濃度を測定するセンサを設け、硫酸イオン濃度が所定値以上になった時に、使用するイオン交換樹脂を切り替えて、それまで使用していたイオン交換樹脂の再生を行うようにしてもよい。
【0064】
有機酸アニオン除去部40において、有機酸アニオンの吸着を行うイオン交換樹脂43、44の切り替えは、一定時間毎に行うことができる。また、有機酸アニオン除去部40から吸収塔103に供給されるリーン液中の蟻酸イオン濃度を測定するセンサを設け、蟻酸イオン濃度が所定値以上になった時に、使用するイオン交換樹脂を切り替えて、それまで使用していたイオン交換樹脂の再生を行うようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、酸化反応器20を設けていたが、酸化反応器20を設けず、吸収塔103下部のリッチ液保持部を拡大し、上記の酸素と亜硫酸イオンとの反応が起こるのに十分な時間リッチ液を保持できるようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態では、硫酸イオン除去部30を冷却器114の下流側に設けていたが、図7に示すように、硫酸イオン除去部30を酸化反応器20と再生熱交換器107との間に設けるようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態において、燃焼排ガス102aの流量をFg(mol/h)、二酸化炭素分離回収装置の吸収液循環量をFl(mol/h)、燃焼排ガス102aの酸素分圧をPO2(atm)、酸素の溶解係数をk(mol/atm・mol)、燃焼排ガス102aの二酸化硫黄濃度をCSO2(mol/mol)とおき、
(式1)CSO2≧2kPO2Fl/Fg
を満たす場合、酸化反応器20における反応により吸収液中の溶存酸素を全て硫酸イオンとして固定できる。
【0068】
一方、上記式1を満たさない場合、すなわち酸化反応器20における反応により硫酸イオンとして固定されない酸素が吸収液中に残存する場合は、図8に示すように、酸化反応器20と再生熱交換器107との間に酸素除去部10を設けて、吸収液中の酸素を除去することが好適である。酸素除去部10は、上記第1の実施形態で説明したものである。このような構成にすることで、吸収液中の酸素や二酸化硫黄を除去することができ、吸収液の劣化を防止することができる。
【0069】
また、図9に示すように、燃焼排ガス102aの流量Fgを測定するセンサ50、燃焼排ガス102aの酸素分圧PO2を測定するセンサ51、燃焼排ガス102aの二酸化硫黄濃度CSO2を測定するセンサ52、二酸化炭素分離回収装置の吸収液循環量Flを測定するセンサ53、流路切替部61、62を設けてもよい。
【0070】
センサ50〜53の測定結果から上記式1を満たすか否か判定し、満たすと判定された場合は、酸化反応器20から排出されたリッチ液104aが酸素除去部10を通らないように循環させる。
【0071】
一方、センサ50〜53の測定結果から上記式1が満たさないと判定された場合は、酸化反応器20から排出されたリッチ液104aが酸素除去部10を通るように循環される。
【0072】
このようにセンサ50〜53の測定結果を用いることで、吸収液の循環ルートを適切に切り替えることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 酸素除去部
13、14 酸素捕集部
15 再生部
20 酸化反応器
30 硫酸イオン除去部
33、34、43、44 イオン交換樹脂
40 有機酸アニオン除去部
103 吸収塔
105 再生塔
106 リボイラー
107 再生熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、
前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、
前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液から酸素を除去する酸素除去部と、
を備え、
前記酸素除去部は、
前記吸収液に含まれる酸素を捕集する第1捕集部及び第2捕集部と、
前記吸収塔から排出された吸収液を前記第1捕集部又は前記第2捕集部へ供給する第1流路切替部と、
前記第1捕集部又は前記第2捕集部から排出された吸収液を前記再生熱交換器へ供給する第2流路切替部と、
前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第1捕集部へ供給している時は前記第2捕集部に捕集された酸素を回収し、前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第2捕集部へ供給している時は前記第1捕集部に捕集された酸素を回収する再生部と、
を有することを特徴とする二酸化炭素分離回収装置。
【請求項2】
前記再生部は、前記第1捕集部又は前記第2捕集部から、酸素の回収前に吸収液を回収し、前記回収した吸収液を当該二酸化炭素分離回収装置を循環する吸収液に加えることを特徴とするとする請求項1に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項3】
前記第1捕集部及び前記第2捕集部は銀を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項4】
前記第1捕集部及び前記第2捕集部は、前記再生部により酸素が回収される時に加熱されることを特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項5】
燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、
前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、
前記吸収塔と前記再生熱交換器との間に設けられ、前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液を貯留し、当該吸収液に含まれる酸素と亜硫酸イオンとの反応により硫酸イオンを生成する反応器と、
前記硫酸イオンを含む吸収液から当該硫酸イオンを除去する第1除去部と、
前記再生熱交換器と前記吸収塔との間に設けられ、前記再生塔から排出され、前記硫酸イオンが除去された吸収液から有機酸アニオンを除去する第2除去部と、
を備える二酸化炭素分離回収装置。
【請求項6】
前記第1除去部は、前記反応器と前記再生熱交換器との間、又は前記再生熱交換器と前記第2除去部との間に設けられることを特徴とする請求項5に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項7】
前記第1除去部は、吸収液中の硫酸イオンを吸着する2つのイオン交換樹脂を有し、一方のイオン交換樹脂に吸収液が供給されている間に、他方のイオン交換樹脂に吸着している硫酸イオンを分離して除去することを特徴とする請求項5又は6に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項8】
前記第2除去部は、吸収液中の有機酸アニオンを吸着する2つのイオン交換樹脂を有し、一方のイオン交換樹脂に吸収液が供給されている間に、他方のイオン交換樹脂に吸着している有機酸アニオンを分離して除去することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂であることを特徴とする請求項7又は8に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項10】
燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を含む吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された吸収液が供給され、当該吸収液から蒸気を含む二酸化炭素ガスを除去し、当該吸収液を再生して排出する再生塔と、
前記吸収塔と前記再生塔との間に設けられ、前記再生塔から排出されて前記吸収塔に供給される吸収液を熱源として、前記吸収塔から排出されて前記再生塔に供給される吸収液を加熱する再生熱交換器と、
前記吸収塔と前記再生熱交換器との間に設けられ、前記吸収塔から前記再生塔に供給される吸収液を貯留し、当該吸収液に含まれる酸素と亜硫酸イオンとの反応により硫酸イオンを生成する反応器と、
前記硫酸イオンを含む吸収液から当該硫酸イオンを除去する第1除去部と、
前記再生熱交換器と前記吸収塔との間に設けられ、前記再生塔から排出され、前記硫酸イオンが除去された吸収液から有機酸アニオンを除去する第2除去部と、
前記反応器から排出された吸収液に含まれる酸素を捕集する第1捕集部及び第2捕集部、前記反応器から排出された吸収液を前記第1捕集部又は前記第2捕集部へ供給する第1流路切替部、前記第1捕集部又は前記第2捕集部から排出された吸収液を前記再生熱交換器へ供給する第2流路切替部、及び前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第1捕集部へ供給している時は前記第2捕集部に捕集された酸素を回収し、前記第1流路切替部が前記吸収液を前記第2捕集部へ供給している時は前記第1捕集部に捕集された酸素を回収する再生部を有する第3除去部と、
を備える二酸化炭素分離回収装置。
【請求項11】
前記燃焼排ガスの流量を測定する第1センサと、
前記燃焼排ガスの酸素分圧を測定する第2センサと、
前記燃焼排ガスの二酸化硫黄濃度を測定する第3センサと、
当該二酸化炭素分離回収装置の吸収液循環量を測定する第4センサと、
前記第1〜第4センサの測定結果に基づいて、前記反応器から排出される吸収液を前記第3除去部を介して前記再生熱交換器へ供給するか、又は前記第3除去部を介さずに前記再生熱交換器へ供給するかを切り替える第3流路切替部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項12】
前記第3流路切替部は、前記流量をFg(mol/h)、前記酸素分圧をPO2(atm)、酸素の溶解係数をk(mol/atm・mol)、前記二酸化硫黄濃度をCSO2(mol/mol)、前記吸収液循環量をFl(mol/h)とおき、CSO2≧2kPO2Fl/Fgが満たされる場合に前記反応器から排出される吸収液を前記第3除去部を介さずに前記再生熱交換器へ供給し、満たされない場合に前記反応器から排出される吸収液を前記第3除去部を介して前記再生熱交換器へ供給することを特徴とする請求項11に記載の二酸化炭素分離回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−115709(P2011−115709A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274399(P2009−274399)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】