説明

交換液を生成する2段階血液濾過

本発明は、患者の2段階血液透析システムに関する。1つの実施例においては、このシステムは、第1濾過装置(210)を有し、この第1濾過装置では患者(200)からの血液(255)を収容し、かつ第1濾液(285)と濾過された血液成分(265)を生成する。このシステムは更に第2の濾過装置(220)を有し、この第2濾過装置では第1濾液(285)を収容し、かつ交換液体(275)と老廃物を生成する。そしてこの第1と第2の濾過装置の少なくともどちらか一方を、テイラー渦攪拌血液濾過装置(10)とすると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の好適な態様は連続的な濾過が様々な仕様の濾液を取り除く多段階濾過に関するものである。本発明の好適な実施例は特に血液透析の間に失われる液体を再生するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、透析は腎臓病の治療に使用される維持療法である。これには2つの手法が存在する。1つは患者の内部で、すなわち患者の腹膜内で処理を行う腹膜透析である。腹膜透析は血液のフィルターとして患者の腹腔膜を使用する。腹腔は透析液で満たされ、これにより血流と透析液の間に濃度勾配を作り出す。毒素は患者の血流から透析液へと拡散し、この透析液は定期的に新鮮な透析液と交換しなければならない。
【0003】
第2の手法は濾過透析による。濾過透析は血液透析と血液濾過の2つの主な技術を包含する。両方とも患者から採血し、毒素を取り除くように血液を処理し、処理後の血液を患者へ戻すことにより体外で作動する。しかし、それぞれの過程は異なる物理的な分離技術によって機能する。
【0004】
血液透析は拡散によって血液からの毒素の除去をもたらす。患者の血液が膜の片側を流れ過ぎる一方、透析液は別の側を流れ過ぎる。その膜は選択的に小分子を流動させる。血液と透析液の間の濃度勾配により、小分子の毒素は透析液へと拡散する。同時に、例えば電解質や他の化学物質などの透析液に存在する栄養分は血液へと拡散する。その後、処理された血液は患者へと戻される。
【0005】
血液濾過は対流によって血液からの毒素の除去をもたらす。患者の血液を、血漿水と一般的に20,000ダルトンより小さな分子とに透過性を持つフィルターに通す。結果として生じる「血液老廃物」と呼ばれる血漿水の濾液は、水と、毒性のある血液成分と、小栄養分子と電解質を含む「所望の小分子」を含む。処理後の血液は濾過の途中で失われた重要な成分を欠いているため、また、その体積が実質的に減少するため、患者への再導入の前に交換液を処理後の血液に加えなければならない。血液濾過の需要に応じて、交換液は血液濾過の前もしくは後に加えることができる。
【0006】
これらの2つの血液の精製手法に加え、血液透析濾過として知られる、血液透析と血液濾過を組み合わせた方法が使用されてきた。血液透析濾過は拡散と対流の両方によって血液から毒物の除去をもたらす。血液濾過と同様に、血液透析濾過の過程において失われる血液量と栄養分/電解質を交換液と置換しなければならない。
【0007】
一般的に交換液は、pHや電解質と栄養分の濃度に関して、健康な血漿水を再現するように設計される。しかし、交換液はまた個々の患者における異常を補正するように調整することができる。多くの場合、例えばクエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、重炭酸塩などの生体適合性のある緩衝液が交換液の基材となる。この緩衝液には例えば塩素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン酸などの電解質、グルコースやデキストロースなどの栄養分を患者の必要に応じて補充することができる。
【0008】
これらの血液処理方法の不利点としては、患者に害となる汚染物のない交換液を大量に産生することに関連する困難と費用が含まれる。それに加えて、血液透析や血液濾過、血液透析濾過は処理するのに費用のかかる医療廃棄物を大量に作り出す。結果的に、生体適合性があり低費用の交換液もしくは透析液を生成するために、これらのシステムからの廃棄物を再利用する必要がある。これにより、外部からの交換液又は透析液を大量に生成する必要を排除することができる。血液透析の間に生成された患者の血液老廃物を濾過することは、これらの必要性を満たす。
【0009】
血液透析の周知の方法を使用している人々が直面するもう1つの問題は、「濃度分極」と表されるフィルターの目詰まりである。フィルターの選択的透過性の結果、フィルターを通過できない、濾し取られた物質がフィルターの表面で高濃度となることがある。この現象は例えばコーヒーフィルターのような「行き止まりの」フィルターの場合には明確に説明することができる。濾過処理の進行の間、フィルターの上に堆積した、濾し取られた物質(コーヒーの残渣)は、フィルターを通ることのできる液体(コーヒー)、つまり濾液に対して流動抵抗を作り出す。結果的に、濾液の流量は減少し、濾過効率は下落する。
【0010】
濃度分極の問題に対する様々な解決法が提案されてきた。これらは、液体の速度及び/又は圧力を上げること(例えばMerin et al, (1980) J. Food Proc. Pres. 4(3): 183-198を参照)、供給路の中に乱流を発生させること(Blatt et al, Membrane Science and Technology, Plenum Press, New York, 1970, pp. 47-97)、フィルター上で供給流を拍動させること(Kennedy et al, (1974) Chem. Eng. ScL 29:1927-1931)、正接流及び/又はディーン渦を発生させるように流路を設計すること(Chung et al, (1993) J. Memb. ScL 81:151-162)、テイラー渦を発生させるために回転濾過を使用すること(例えばLee and Lueptow (2001) J. Memb. ScL 192:129-143 と、参照によりその全体を本明細書に援用している米国特許第5,194,145号、同第4,675,106号、同第4,753,729号、同第4,816,151号、同第5,034,135号、同第4,740,331号、同第4,670,176号、同第5,738,792号を参照)を含む。米国特許第5,034,135号において、Fischelは血液分画を促進するためにテイラー渦を発生させることを開示している。Fischelはまた回転式スピナーと円筒形ハウジングの間の空隙の幅の変形形態を記述しているが、円周形の断面の周りに沿ったこの幅の変形形態は教示していない。
【非特許文献1】Merin et al, (1980) J. Food Proc. Pres. 4(3): 183-198
【非特許文献2】Blatt et al, Membrane Science and Technology, Plenum Press, New York, 1970, pp. 47-97
【非特許文献3】Kennedy et al, (1974) Chem. Eng. ScL 29:1927-1931
【非特許文献4】Lee and Lueptow (2001) J. Memb. ScL 192:129-143
【特許文献1】米国特許第5,194,145号
【特許文献2】米国特許第4,675,106号
【特許文献3】米国特許第4,753,729号
【特許文献4】米国特許第4,816,151号
【特許文献5】米国特許第5,034,135号
【特許文献6】米国特許第4,740,331号
【特許文献7】米国特許第4,670,176号
【特許文献8】米国特許第5,738,792号
【0011】
内側の部材が外側の部材に対して回転すると、同軸上に配置された円筒形の部材の間の空隙にテイラー渦が生じる。テイラー・クエット型濾過装置は、フィルターに沿って高濃度となっている、濾し取られた物質を処理する液体へと混合する働きをする強い渦を、遠心流の不安定性(テイラー不安定性)により生み出す。一般的には、静止した外部のハウジングの内側で円筒形のフィルターが回転する。濃度分極による膜付着が、行き止まり又は正接の濾過に比べて非常に遅いと観察されている。実際に、濾過効率を大体100倍改善することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
回転濾過装置におけるテイラー渦の使用は、血液全体からの血漿の分離に適用されている(例えば米国特許番号5,034,135を参照)。この用途においては、分離装置は安価で患者の1度の使用で使い捨てとしなければならなかった。更に、これらの分離装置は比較的短い時間(約45分)作動すればよかった。その上、濾過装置は確実にドナーから集めることのできる血液の流量(約200ml/分)を受容する大きさであった。この技術は血液処理産業に著しい改善をもたらした。回転濾過システム(テイラー渦)に見られるような利点と改善した濾過効率は、腎臓透析を含む他の商業的な液体分離の分野においては未だ研究されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、改善した血液透析システムを構成することで、人工交換液の必要を著しく減らすことができる。それに加え、この改善した血液透析システムはテイラー渦を発生させることで、既知の濾過方法によく見られる濃度分極の問題を緩和することができる。
【0014】
1つの実施例においては、本発明は患者の2段階血液透析システムに関する。このシステムは患者からの血液を受容し第1の濾液と処理後の血液を生成する第1濾過装置を有する。このシステムは更に第1の濾液を受容し交換液と老廃物を生成する第2濾過装置を有する。第1と第2の濾過装置の少なくとも一方はテイラー渦攪拌血液濾過装置を有することが好ましい。
【0015】
他の実施例においては、本発明は他の患者の2段階血液透析システムに関する。このシステムは患者からの血液と透析液を受容し透析排液と処理後の血液を生成する透析装置を有する。このシステムは更に透析排液を受容し再利用された透析排液と老廃物を生成する濾過装置を有する。
【0016】
他の実施例においては、患者の血液透析を行う方法を本発明にしたがって実行することができる。テイラー渦を作り出すように構成した第1濾過装置を設け、第2濾過装置も同様に設ける。血液は患者から第1濾過装置へ導入され、第1濾過装置からの第1の濾液が第2濾過装置へ導入される。その後交換液を第2濾過装置から取得することができる。
【0017】
他の実施例においては、患者の血液透析を行う第2の方法を本発明に従って実行することができる。第1濾過装置を設け、テイラー渦を作り出すように構成した第2濾過装置も同様に設ける。血液は患者から第1濾過装置へ導入され、第1濾過装置からの第1の濾液が第2濾過装置へ導入される。その後交換液を第2濾過装置から取得することができる。
【0018】
他の実施例においては、患者の血液透析を行う他の方法を本発明に従って実行することができる。透析装置と濾過装置を設ける。血液は患者から透析装置へ導入され、透析装置からの透析排液が濾過装置へと導入される。その後再利用された透析液を濾過装置から取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
従来より、血液透析の過程は1段階で行われている。言い換えれば、血液を患者から取り出し、単一の濾過装置を通過させて老廃物を除去し、その後患者に戻す。不幸なことに、血液はこれらの老廃物より大きな分子と小さな分子の双方が構成する不均一液体であり、これら分子の大きさは一般的に300−6000ダルトンの範囲に及ぶ。結果として、血液からこれらの老廃物を除去する濾過装置は、水や電解質等の小分子の多くを濾過の過程で不慮に取り除いてしまうことがよくある。この場合、これらの小分子を、血液の患者への再導入の前に補充しなければならない。
【0020】
典型的な装置では、血液は患者から300〜440mL/分の割合で押し出されてくる。このうち大体半分の流量が血液から濾過され、血液老廃物として処分される。そのため3時間の透析中に、20〜30リットルの交換液を補充し、患者の血液量を一定にしなければならない。勿論、このような透析過程での濾液の大半は水と他の所望の小分子を含む。
【0021】
本発明の1つの実施例では、多段階の濾過過程を使用して、この所望の濾液の大部分を再回収し、処理後の血液に混合することを意図している。これは過剰の人工交換液を用いることなく、患者へ戻す血液の量を改善することを目的としている。本発明の1つの実施例では、2段階濾過を使用する。第1段階では、従来技術と同じように、水、小さな栄養分子、そして老廃物に透過性のある濾過装置を用いる。第2段階では、第1段階の濾過装置から出た血液老廃物を、大きな老廃物の分子を濾し取る第2の濾過装置に通す。その後、第2の濾過装置から出てきた血漿水の濾液を、清潔で生体適合性のある交換液として使用して、患者へ戻す血液の量を増やすことができる。勿論、他の実施例では、特定の老廃物を他の似たような大きさの分子から濾し取るために、より多くの段階が必要になる可能性がある。
【0022】
本発明の1つの実施例の第1段階及び第2段階のどちらにも様々な濾過装置を使うことができる。図1は、本発明において使用可能な1つの濾過装置10の断面図示す。この濾過装置では、単一のローターがテイラー渦を作り出す。図示した実施例では、濾過装置10を用いて血液透析を行い、特定のサイズの分子(老廃物を含む)を血液から濾過する。他の実施例では、濾過装置10を用いて、より一般的に、1つの液体から物質を移動することができる。更に他の実施例では、濾過装置10を用いて1つの液体から熱を移動することができる。当業者には周知のように、この発明は医療的な用途のみに限定されるべきではない。
【0023】
1つの実施例においては、この濾過装置10は円筒形のローター14を収容する円筒形の容器12を含む。容器12とローター14の間には空隙16が存在し、好適な実施例においては、ローター14を容器12の中に同軸上に配置する。他の実施例においては、容器とローターに対して異なる形態と構成を選択して、他の液体や他のテイラー渦発生手段に適合させることができる。
【0024】
図示されている実施例において、ローター14の円筒形の周壁は、少なくとも一部が濾過膜18で構成されており、部分的にローターの内部20を画定している。ローターの内部20は更にローター14の天壁及び底壁で画定されており、これは濾過膜を含むことも含まないこともできる。図1に示されているように、濾過膜18を2段階透析法の第1段階として使うことができる。この濾過膜は透析膜として機能し、水、電解質、小さな栄養分子、血液中にある老廃物を構成する小〜中分子に対して透過性である。典型的な適用例では、透析膜18は分子量が最大約10000ダルトンまでの分子に対して透過性を持つ。他の適用例では、透析膜18を、6000から20000ダルトンの範囲において多少なりとも透過性とすることができる。もう1つの実施例では、濾過膜は2段階透析法の第2段階で使用することができる。この時濾過膜は最大で約300ダルトンの質量の分子までに透過性を持つ。こうして、血漿水、電解質、小さな栄養分子は濾液としてローターの内部20に流れ込み、より重い老廃物は濾し取られる。他の実施例では、異なる濾過膜を使用することによってさまざまな程度の濾過及び/又は熱伝導を行うことができる。例えば、熱伝導用途では、濾過膜は非透過性の構造をしてもよい。しかし、この構造は、熱の効率的な伝導体である。
【0025】
図示した実施例において、円筒形の容器12は22、24、26の3つの液体出入口を有している。22と24の2つは容器12とローター14の間の空隙16につながっており、26はローターの内部20から出ている。他の実施例においては、異なった液体出入口の構成があり得る。例えば、ある1つの実施例においては、1つの液体出入口だけが容器とローターの間の空隙に通じ、2つの出入口がローターの内部に通じるようにすることができる。
【0026】
1つの実施例においては、2つの枢動ピン30、32が円筒形の容器12の軸線Aのそれぞれの端に設置されている。これらの枢動ピン30、32はローター14に対して回転軸線Aを画定しており、このローター14の自由回転を容易にしている。図示されているように、下側の枢動ピン32を中空にすることができ、容器12とローター14の間を通る液体移動路を可能にすることができる。勿論、他の実施例においては、上の枢動ピン30を中空にして、もう1つの液体出入口を収容することもできる。回転を容易にする他の手段も適用することができ、例えばボールベアリング機構、もしくは当業者に周知のような別の手段があり得る。
【0027】
本発明の1つの実施例においては、ローター14は円筒形の容器12の中で自由に回転することができる。この回転を制御するために、回転式磁石34をローター14の内部にとりつけることができ、そして外部の回転磁場(図示していない)を回転式磁石34と相互作用するように配置することもできる。外部の磁場を制御することによって、磁石34を、したがってローター14を異なる方向に変化する速度で回転させることができる。本発明の好適な実施例においては、ローター14と容器12の間の空隙16の中の液体にテイラー渦を発生させるのに十分な速度でローター14を回転させることができる。この空隙16の中にテイラー渦を作り出すことによって、濾過効率を劇的に改善することができる。当業者に公知のように、本発明にしたがい、テイラー渦を作り出すためのローター14を回転させる他の手段を用いることもできる。例えば、1つの実施例においては、ローター14に取り付けられた枢動ピンの少なくとも一方、例えば上の枢動ピン30に、モーターを取り付けることができる。
【0028】
1つの実施例においては、ローター14を制御する回転磁場を、濾過装置10の上部を囲むように並んだ一連の磁気コイルにより発生させることができる。これらの電気コイルアセンブリは装置10の周りで閉じることができるような半弧(C型の断面)にすることができるが、これは他の構成でもよい。
【0029】
図示された装置10の大きさは血液透析には十分だと考えられるが、他の用途においては、これより大きな、もしくは小さな濾過装置を、処理する具体的な液体に合わせて使っても良い。
【0030】
血液透析の用途においては、ローター14と容器12の内壁の間にある空隙16を、十分なテイラー渦を血液中に発生させるように選択している。この空隙16は、ローター14の直径と毎分回転数(RPM)によって決定され、これらの変数は当業者が変更することができる。遠心速度が2000―2500RPMの範囲で、ローターの直径が約0.1インチ(2.54mm)から10インチ(254mm)の範囲だと、テイラー渦を作り出すのに十分な空隙16の幅は約0.003インチ(0.0762mm)から0.3インチ(7.62mm)とすることができる。更に望ましくは、ローター14の直径が約1インチ(25.4mm)であり約2400RPMで回転する場合に、空隙16の幅が約0.03インチ(0.762mm)だと、十分な渦を発生させることができる。濾過装置10の好適な実施例においては、ローターは、直径が約2インチ(50.8mm)であり、6インチ(152.4mm)より若干長い。
【0031】
図2から図4は、2段階濾過過程に使用される上記の血液透析装置の種々の実施例の更なる構造的特徴をいくつか図示している。特に装置のハウジングとローターの異なる形態と構成が図示してあり、これらは様々な利点を実現するために実行することができる。図2では、上記の実施例が示されている。この図においてより明確に分かるように、ローター14が円筒形をしており、円筒形の容器12の中に同軸上に配置されている。それゆえ、空隙16の幅は装置10の周りで一定である。この比較的単純な実施例においては、ローター14の適切な回転速度の構成をより簡単に行うことができ、テイラー渦の強さが濾過膜18の全周でほとんど一定となる。
【0032】
図3では容器12とローター14のもう1つの構成が図示してある。この実施例においては、容器12とローター14はそれぞれ図2と同様の断面を有しているが、もはや同軸上に配置されていない。そのため図3に示しているように、空隙16の幅は容器16の周りで変化する。生み出される渦の強さを反映するテイラー数は空隙の幅に直接比例するため、ローター14のうち容器12の壁から遠い部分は、壁に近い部分より大きなテイラー渦を受けることになる。ローター14がこれらの空隙の広い部分を通過すると、濾過膜18に残っている濃度分極、もしくはいかなる目詰まりも、より強い渦によっていわば“吹き飛ば”され、膜18の詰まった部分が再開通する。結果として、1回転ごとに、濾過膜18の縦方向に延びる断面を空隙16の広い部分を通過させて“きれい”にし、装置10の効率を改善することができる。それに加え、空隙16の幅が狭くなっている場所では、空隙におけるせん断力が増え、この変化するせん断力はまた濾過膜18を通る物質移動を増加させる傾向がある。そのため1回転毎に、ローター14にある透析膜18のどの点においても、せん断力を増加させ、渦を減少させることができる。
【0033】
図4では、同様に幅が一定でない空隙を作り出す、容器12とローター14の他の構成が図示してある。この構成においては、容器12とローター14が図2と同じように配置されているが、容器12は更に突出部42を壁に組み込んでいる。そのため空隙16の幅は容器12の周りで変化し、突出部42のところで広くなり、図3を参照して説明したような利点を生み出す。この実施例における狭幅と広幅の急激な変化が、透析を促進する渦の特性を更に引き出すことができる。他の実施例においては、容器12とローター14は空隙16の幅が可変となるような他の断面の形を持つことができる。
【0034】
図1に戻り、血液透析装置10の1つの使用方法を、図面を参照しながら説明する。矢印36、38、及び40は装置10を出入りする流れの入力および出力を示している。図示された実施例では、患者からの血液はローター14と容器12の間の空隙16の中を流れ、水、小さな栄養分子、電解質および老廃物はローターの内部20へと濾過される。最初は膜18を横切る形で存在する血液と血漿水の間の濃度勾配によって、ある特定の老廃物は透析膜18を通って血漿水の中へ選択的に流れ込み、こうして血液を透析している。ローター14はテイラー渦を血液中に作り出すのに十分な速度で回転し、透析膜18の近くでの濃度分極を防いでいる。このようにして、本発明の1つの実施例ではより小さく、より生体適合性のある血液濾過装置10の使用を可能としている。
【0035】
もっと詳細に述べると、血液注入口22は円筒形の容器12の上部に位置し、血液排出口24は底部に位置している。これによって、単純に重力のエネルギーと血液流入の圧力を用いた、容器の最上部から底部までの血液の流れが可能となる。装置10は、ある特定の量の血液が血液濾過装置10の上部から底部まで移動する間の時間に、所望の量の老廃副産物が抽出されるように設計されることが望ましい。水と老廃副産物の排出口26はローター14の底部に配置されている。好適な実施例においては、この溶液は装置10を流れ出た後、更に濾過されるが、その更なる詳細は下記で説明する。
【0036】
もう1つの実施例においては、透析液を用いて血液透析を促進することができる。もう1つの液体の出入口を装置10の上部に取り付け、透析液を装置の中へと流入させることができる。図6を三そうして詳しく述べるように、老廃物は透析液の中へと拡散し、透析排液の流れによって装置から運び出される。また本発明に従い、他の修正を加えてもよい。
【0037】
図5に示されているのは、この発明とともに使用可能な他の実施例の断面図であり、ここでは2つのローター装置がテイラー渦を作り出す。この図示された装置は、望ましくは2段階血液濾過システムで使用することができ、その1つの例は図8を参照して詳細に説明する。図示された実施例では、濾過装置110を血液透析を行うために使用し、望ましくない老廃物を血液から濾し取って透析液又は”透析排液”に移す。他の実施例においては、装置110を用いて、より一般的に、物質を1つの液体から他に移すことができる。更に他の実施例においては、装置110を使用して熱を1つの液体から他に移す。当業者には周知のように、本発明は医療的な用途のみに限定されるべきではない。
【0038】
1つの実施例においては、濾過装置110は円筒形の外部ローター114を収容している円筒形の容器112を含む。第1の空隙116が容器112と外部ローター114の間に存在し、その中を血液が流れるようになっている。好適な実施例においては、外部ローター114は円筒形の容器112の中に同軸上に配置される。他の実施例においては、図2から4を参照して説明したように、容器とローターには他の形態や構成を選択することもできる。
【0039】
図示されている実施例において、外部ローター114の円筒形の周壁は、少なくとも一部が濾過膜118で構成されており、部分的に外部ローターの内部120を構成している。外部ローターの内部120は更に外部ローター114の天壁及び底壁で画定されており、これは濾過膜を含むことも含まないこともできる。図5に示されているように、濾過膜118は透析膜である。この濾過膜118は約10000ダルトンより小さな分子の拡散を選択的に促進し、そのため装置110は図8に示された2段階血液濾過システムの第1段階の装置として機能することができる。他の実施例では、異なる濾過膜を使用することによってさまざまな程度の濾過及び/又は熱伝導を行うことができる。例えば、熱伝導用途では、濾過膜は非透過性の構造をしてもよい。しかし、この構造は、熱の効率的な伝導体である。
【0040】
1つの実施例においては、円筒形の容器112の軸線Aには2つの枢動ピン130、132が両端に配置されている。これらの枢動ピン130、132は外部ローター114に対して回転軸線Aを画定しており、このローター114の自由な回転を容易にしている。図示されているように、枢動ピン130、132は同様に中空でもよく、容器112と外部ローター114の間を通る液体移動路を提供することができる。他の実施例においては、回転を容易にする他の手段も適用することができ、例えばボールベアリング機構、もしくは当業者に周知のような別の手段があり得る。
【0041】
本発明の1つの実施例においては、外部ローター114は円筒形の容器112の中で自由に回転することができる。この回転を制御するために、回転式磁石134を外部ローター114の内部にとりつけることができ、そして外部の回転磁場(図示していない)を回転式磁石134と相互作用するように構成することもできる。外部の磁場を制御することによって、磁石134を、したがって外部ローター114を異なる方向に変化する速度で回転させることができる。本発明の好適な実施例においては、外部ローター114と容器112の間の空隙116の中の液体にテイラー渦を発生させるのに十分な速度で外部ローター114を回転させることができる。この第1の空隙116の中にテイラー渦を作り出すことによって、濾過効率を劇的に改善することができる。当業者に公知のように、本発明にしたがい、テイラー渦を作り出すための外部ローター114を回転させる他の手段を用いることもできる。例えば、1つの実施例においては、外部ローター114に取り付けられた枢動ピンの少なくとも一方、例えば上の枢動ピン130に、モーターを取り付けることができる。
【0042】
外部ローター114の内側には、内部ローター144を同様に上下の枢動ピン130、132で支えて同軸上に配置することができ、この場合第2の空隙146が2つのローター114、144の間に生じる。内部ローター144は部分的にもう1つの濾過膜を有することもできるが、好適な実施例においては、内部ローターは比較的に非透過性であり、単に2つのローター114、144の間の第2の空隙を画定しているだけである。上記で容器と外部ローターに関してより詳細に説明しているように、内部ローター144には異なる断面の形態を持たせることができ、また内部ローターの位置をずらして他の液体やテイラー渦を発生させる手段を収容することもできる。これら代替的実施例の中では、外部ローター114を支えるのとは別の構造で内部ローター144を支えることもでき、違う軸線の周りを回転させることもできる。
【0043】
好適な実施例においては、内部ローター144は外部ローター114と円筒形の容器112の両方の内部で自由に回転する。この回転を制御するために、第2の回転式磁石148を内部ローター144の内部に取り付けることができ、第2の外部の回転磁場(図示されていない)をこの第2の回転式磁石148と相互作用するように構成することができる。図示されている実施例においては、内部ローター144のための第2の回転式磁石148は装置110の上部に位置し、外部ローター114のための回転式磁石134は装置110の底部に位置している。このようにして、2つの分離独立した磁場が2つのローター114と144の回転を制御することができる。上記においてより詳細に説明しているように、内部ローター144に取り付けられている2番目の回転式磁石148は外部ローター114に取り付けられているものと同様に制御することができる。好適な実施例においては、内部と外部ローターの間の第2の空隙146にテイラー渦を発生させるのに十分な速度で、内部ローター144を回転させることができる。更に好適な実施例においては、内部ローター144を外部ローター114と反対の方向に回転させ、さらに一層強力なテイラー渦を発生させることができる。第2の空隙146にテイラー渦を発生させることにより、濾過膜118の内部ローター144に面する側での濃度分極を防ぎ、濾過効率を更に改善することができる。当業者に公知のように、他の手段を用いて内部ローター144を回転させテイラー渦を発生させることもできる。例えば、1つの実施例においては、内部ローター144に取り付けられた枢動ピンの少なくともどちらか一方、例えば下の枢動ピン132に、モーターを取り付けてもよい。
【0044】
1つの実施例においては、2つのローターを制御する回転磁場を、濾過装置110の上部と底部を囲む一連の磁気コイルによって発生させることができる。図示されている実施例においては事前に接続された管類(図示していない)が軸Aにおいて濾過装置110を出入りするため、これらの電気コイルアセンブリは装置110の周りで閉じることのできるような半弧(C型の断面)の形にすることができる。
【0045】
装置110の図示されている大きさは血液透析には十分だと考えられるが、他の用途においては、これより大きな、もしくは小さな濾過装置を処理する具体的な液体に合わせて使っても良い。
【0046】
血液透析の用途においては、外部ローター114と容器112の内壁の間にある第1の空隙116を十分なテイラー渦を血液中に発生させるように選択している。この第1の空隙116は外部ローターの直径と毎分回転数(RPM)によって決定され、これらの変数は当業者が変更することができる。遠心速度が約1000−5000RPMの範囲で、外部ローターの直径が約0.1−10インチ(2.54−254mm)の範囲だと、テイラー渦を作り出すのに十分な空隙116の幅は約0.003インチ(0.0762mm)から0.3インチ(7.62mm)とすることができる。更に望ましくは、外部ローターの直径が約1インチ(25.4mm)であり約2400RPMで回転する場合には、空隙116の幅が約0.03インチ(0.762mm)だと、十分な渦を発生させることができる。
【0047】
図示されている実施例においては、内部ローターと外部ローターの間の第2の空隙146を透析液の中に十分なテイラー渦を発生させるように選択している。この第2の空隙146は内部ローターと外部ローターの直径とRPMの違いによって決定される。遠心速度が約1000−5000RPMの範囲で、内部ローターの直径が約0.1―10インチ(2.54−254mm)の範囲だと、内部ローター144と外部ローター114の間にテイラー渦を作り出すのに十分な空隙146の幅は約0.003インチ(0.0762mm)から0.3インチ(7.62mm)とすることができる。好ましくは、内部ローターの直径が約0.8インチ(20.32mm)であり約3600RPMで回転する場には、第2の空隙146の幅が約0.03インチ(0.762mm)だと十分な渦を発生させることができる。この好適な変数の組み合わせでは、内部ローター144の回転速度が外部ローター114に対して約1200RPMとなっている。あるいは、内部ローター144を外部ローター114と逆の方向に回転させることによって、強力なテイラー渦を透析液の中に作り出すことができる。
【0048】
様々な可能な用途では、内部ローター、外部ローター、及び外容器の寸法と速度は大幅に違い得る。例えば、ある産業的用途では、より大きな流量と粘度が変化する液体に対応するために、濾過装置110をこれよりかなり大きな規模で設計することができる。本明細書に書いている教示を基に、当業者は空隙とローターの大きさの範囲、また円心速度とローターの回転方向を最適化することができる。
【0049】
図示されている実施例においては、円筒形の容器は4つの液体出入口122、124、126、128を有している。第1の入口122は円筒形の容器112の上部に位置しており、第1の出口124は底部に位置している。血液透析の用途においては、これによって単純に重力のエネルギーと血液流入の圧力を用いた、容器の上部から底部までの血液の流れが可能となる。装置110は、ある特定の量の血液が透析装置110の上部から底部まで移動する間の時間に、所望の量の老廃副産物が抽出されるように設計されることが望ましい。第2の入口126は外部ローター114の底部に位置し、第2の出口128は外部ローター114の上部に位置している。血液透析の用途においては、透析液がこれらの出入口を通り、外部ローターと内部ローターの間にある第2の空隙146を通って、濾過装置110の底部から上部まで流れる。この好適な実施例においては、液体流路が対向流物質移動を利用するように設計されており、これは血液と透析液の通路が逆方向であることを意味している。新たな透析液は透析膜118を通してほぼ透析済の血液に晒され、ここでは濃度勾配が最も低い。しかし当業者には周知のように、本発明に従って、他の液体出入口の数や構成を使用することもできる。
【0050】
第1の入口と出口122と124が容器112の外径に存在しているので、この流路に高圧をかける必要はない。このような状況では、図示されている実施例においては、血液が外部ローター114の回転の中心に押し込まれることはなく、よって血液が内部ローター144に入るのを防ぐための流体シールは必要がない。血液透析または他の用途において、より高い液圧を使用した場合、もしくは内部ローター144に何らかの理由で濾過する液体が入ってしまうような場合には、流体シールを付加してもよい。
【0051】
好適な実施例においては、透析液が下の枢動ピン132を通って内部ローターと外部ローターとの間の第2の空隙146に向かうが、外部ローター114と容器112の間の第1の空隙116に下降していくことのないように、透析液の第2の入口126が構成されている。外部ローター114と容器112の間の第1の空隙116への透析液の移動を防止するため、図示されている実施例においては上の枢動ピン130の所に流体シール150が組み込まれている。このシール150はどのような従来のポリマーのリップシールでもよい。当業者には周知のように、他のシールを組み合わせてもよい。ある代替的な実施例においては、他の流体シールが下の枢動ピン132に組み込まれている。
【0052】
本発明を実行する1つの方法では、血液がテイラー渦と共に透析膜118に晒されるため、結果として外部ローター114と容器112の間の第1の空隙116における濃度分極層が最小となり、患者の血液から低分子量の老廃物を除去する能力が最大となる。濾過装置110を通過する過程では、透析液もまたテイラー渦に晒されるため、結果として透析膜118の内側の近くの濃度分極層が最小となり、低分子量の老廃物を透析排液の流れの中へと混ぜる能力が最大となる。好適な実施例においては、装置110から出る老廃透析液をその後他の濾過装置へ導き、再利用された清潔な透析液を産生することができる。
【0053】
図6に関連して、血液透析を行う模範的な方法を図5に描写されている装置を用いて説明する。装置110の内側では、外部ローター114と容器112の間と、内部ローター144と外部ローター114の間の液体にテイラー渦を作り出すのに十分な速度で内部ローターと外部ローターが反対方向に回転している。血液は患者から特定の流速136で集められ、装置110の上部にある血液入口122を通して血液透析装置110に入る。透析液もまた血液透析装置140に入るが、この場合下部からであり、第2の透析液入口126を通る。二つの液体は二つのローターからの力を受け、テイラー渦が内部に形成する。これにより、外部ローター114の透析膜118における濃度分極は大半が軽減され、より一定の老廃物の流れが透析膜118を通り透析液へと移動する。透析液は外部ローターと内部ローターの間の第2の空隙146の中を通って血液濾過装置110を通過し、透析液出口128を通って上部から出るが、処理後の血液は装置110の下部にある血液出口124を通って出て患者へと戻される。
【0054】
参照によりその全体を本明細書に援用する同時係属中の米国特許出願第10/797,510号において更に説明しているように、他の実施例においては、他のテイラー渦攪拌濾過装置を使用することができる。
【0055】
多くの上記の血液透析の方法にある1つの問題は、透析膜が老廃物と同様に水に対しても透過性であり得ることである。そのため、透析膜を通して移動する老廃物に大量の血漿水が付随し、血液出口を通って出る処理後の血液の流量が、血液透析装置に入ってくる血液から激減する。この問題は特に図1に図示している濾過装置10において重大である。1つの実施例においては、患者へ戻す前に合流点において、無菌的な交換液を処理後で透析済の血液に加えることができる。しかしこの実施例には患者が汚染された交換液に暴露される危険性があり、交換液の費用によって血液透析の費用を増加させてしまう。
【0056】
図7Aと7Bは本発明に従った2段階血液透析システムの代替的な実施例の略図であり、ここでは第1段階の濾過装置から出た血液老廃物から交換液が生成され、人工交換液の必要性を緩和している。図示された実施例は目的を達成するための段階の順序が異なるが、多くの作用機構を共有している。それゆえ、これら2つのシステムの構成要素は一緒に説明する事とし、違いはその後の説明で必要に応じて強調することとする。これらのシステムを通って流れる様々な液体の流れの方向は矢印によって図示されている。
【0057】
患者は左端の四角形200で表している。典型的な例においては、患者200は尿毒性代謝異常を引き起こす腎臓病を抱えているとする。これは健康な腎臓なら取り除く中間分子量の分子(300−6000ダルトン)がこれらの患者で病的な毒性を引き起こしていることによると見られている。この蓄積する毒性を緩和するために、そのような患者200は一般的には定期的な透析処理を受け、これらの中間分子量の分子を取り除く。他の実施例では、当業者には理解されるであろうが、患者200は危険もしくは有毒な物質が患者の血液中に存在する他の病気を抱えている可能性がある。更に他の実施例においては、濾過する液体の供給源は必ずしも患者である必要はない。この処理は例えば液体が中間的な大きさの分子を抽出する必要がある不均一液体である場合などといった、産業的な設定で使用することもできる。
【0058】
この2段階血液透析システムの第1段階で使用する装置は、血液濾過装置210として説明することができる。上記で説明したように、そのような装置210は一般的にある特定の大きさより小さな分子を含む濾液を生成する。当業者に周知のように、装置210で使用する濾過膜には多種多様の特徴を持たせることができ、多数の異なる大きさの粒子の中から任意のものを濾過するために選ぶことができる。1つの実施例においては、分子量が10000ダルトン以下の分子を濾し取るように血液濾過装置210を構成している。この実施例においては、濾液は患者200にとって有毒な中間分子量の分子を含むのが望ましい。
【0059】
この2段階血液透析システムの第2段階で使用する装置は、限外濾過装置220として説明することができ、より小さな分子に透過性を持つことからこう呼ばれる。好適な実施例においては、限外濾過装置220の目的は中間分子量の毒性分子を不均一溶液から濾し取り、水と他の所望の小分子のみを残すことである。好適な実施例においては、分子量が約300ダルトン以下の分子を通過させ、それゆえ毒性のある可能性のある老廃物を残りの溶液から分離することができるように、限外濾過装置220で使用する濾過膜を選択する。他の実施例においては、濾過膜は分子量が約200ダルトン以下の分子のみを通過させ、他の毒性の疑いのある分子まで濾液として出てくるのを防ぐようにすることができる。
【0060】
同じ又は異なる型の濾過装置を血液濾過装置210と限外濾過装置220に使用することができる。これらは例えば従来の中空糸透析膜カートリッジ、もしくは当業者に周知の他の濾過装置を含むことができる。好適な実施例においては、この装置は上記で図1を参照して説明した濾過装置10と同様に機能するテイラー渦攪拌濾過装置である。上記で説明したように、これらの濾過装置は、異なる粘性と流量の処理液体に対応するために、ローターと外枠のそれぞれの様々な大きさと形、速度の任意の組み合わせを持つことができる。
【0061】
この2段階血液透析システムから生成された望ましくない老廃物を集めるために廃棄袋230を使用する。1つの実施例においては、この廃棄袋230は通常なら健康な腎臓により集められる老廃物と同じものの多くを集めるべきである。勿論、廃棄袋230は廃棄物を集める及び/又は廃棄する多数の手段のうち任意のものを表すことができ、必ずしも特定の形と大きさをもった物理的な容器である必要は無い。適用となる法律と規制に従って、廃棄袋230を廃棄に注意が必要な危険廃棄物として集めなければならないことがよくある。本発明独自の特性により、2段階血液透析システムによって生み出される老廃物の容量は一般の単段階透析処理から生み出されるものと比べてはるかに少なくすることができる。
【0062】
2つのシステムでそれぞれ別の場所で示されているものの、補足交換液供給源240がまた図7Aと図7Bに示されている。患者の血液容量を一定に保つための交換液の大半を患者自身の血液老廃物から生成することができるものの、処理の間に比較的少量の人工交換液は依然として必要になる可能性がある。たとえ2段階濾過システムが完全に機能したとしても、患者の血液容量を一定に保つために、中間分子量の老廃分子に相当する容量を一般には置換しなければならない。1つの実施例においては、大体3リットルの人工交換液を3時間ごとに患者の血流に加えなければならず、大体3リットルの老廃物が同じ時間枠の間に除去されると推定されている。上記で説明したように、これは一般の処理で必要だった20〜30リットルという量からの著しい改善を意味している。
【0063】
補足人工交換液は様々な方法で生成することができるが、無菌的で発熱性物質がなく、一般的に体温でなければならない。参照によりその全体を本明細書に援用するLee HendersonとErminia Beansの論文である“Successful Production of Sterile Pyrogen-Free Electrolyte Solution by Ultrafiltration”, Kidney International, 14, 522-25, 1978に示されているようにして、1つの実施例においては、人工交換液は普通の水道水から産生することができる。他の実施例においては、そのような液体は当業者に周知の別の方法によって産生することができる。
【0064】
図7Aにおいては、2段階血液濾過装置の随意的な構成要素である、抗凝固剤供給源250が示してある。この抗凝固剤供給源250は例えば血液と混合して体外で血液が凝固するのを防ぐヘパリンの供給源を有している。他の実施例においては、他の濾過を促進する方法、もしくは凝集や他の望ましくない液体の性質を防ぐ方法を使用してもよい。例えば、濾過装置210と220での渦の生成を促進するために、水を他の不均一溶液に加えてもよい。
【0065】
ここで、図7Aで図示された2段階血液透析システムを使い、本発明に従って血液透析を行う方法を更に詳細に説明する。患者200から血液透析濾過装置210へと延びる矢印255で示してあるように、処理の第1段階は患者からの採血である。従来のように、患者200の腕の動脈に接続されたIVチューブを通して採血する。勿論、患者から採血する他の手段も当業者には周知である。上記で説明したように、一般的な患者からの血流量は300−450ml/分である。それゆえ患者の血液量を比較的一定に保つため、患者へと戻る液体(矢印265)は同程度の流量で流れなければならない。従来のように、患者200へと戻る液体は患者の静脈に接続されたIVチューブを通して戻る。
【0066】
随意的な第2段階では、患者200から流れる血液を抗凝固剤供給源250からの抗凝固剤と混合する。このようにして、血液透析システムの性能を改善することができる。
【0067】
患者200から流れる血液はその後血液透析濾過装置210を通過する。濾過装置210は当業者に周知のような数多くの方法で血液を濾過することができる。好適な実施例においては、濾過装置210は上記で詳細に説明した装置10と同様に動作する。この例においては、血液は入口22を通って容器12とローター14の間にある空隙16に流れ込む。濾過膜18は約10,000ダルトン以下の分子量の分子をローター内部20へ通すことができるように設計されている。患者200から流れる血液は多数の成分を含み、それには水、電解質、小栄養分子、老廃物、高分子量の分子(例えば蛋白質など)、血球、そして他の様々な種類の細胞などを含む。上記に列挙した最初の4つの成分は血液老廃物を含み、濾過膜18を通ってローター内部20へと入る。このようにしてローターの内部は水、電解質、小栄養分子、そして老廃物で充満する。
【0068】
一方、ローター14はローター14と容器12の間にある空隙16を流れている血液中にテイラー渦を作り出すのに十分な速度で回転する。これらのテイラー渦はこの空隙16にある血液を混合し、それによって濾過膜18の外側の部分での濃度分極の問題を緩和している。
【0069】
濾過装置210は二つの出口24と26を有している。第1の出口24はローター14と容器12の間の空隙16と連通している。血液老廃物が再利用されなかった場合、濾過膜18を通過するのには大きすぎる血液成分は出口24を通過して血液濾過装置210から出る。典型的な例においては、この出口24からの流量は入口22へ入る流量の大体半分である。このようにして、患者の血液の大体半分が水、所望の小分子、老廃物を含み、もう半分が出口24を通って出るより大きな分子と細胞を含む。これらのより大きな成分は患者200へと戻る矢印265によって表される。
【0070】
しかしながら、矢印275で示しているように水と所望の小分子は交換液として2段階システムへと再循環されるため、血液濾過装置210は流入する液体を完全に濾過することができず、患者へ戻される処理後の血液と交換液を表している矢印265は少なくとも患者200から来る血流255と大体等しい容量を有している。それゆえ、還元流265は、より大きな構成成分と、望まない老廃物のない交換液の両方を有している。この処理の更なる詳細は下で説明する。
【0071】
ローターの内部20と連通している第2の出口26は、患者からの血流255の大体半分の流量で水と所望の小分子と老廃物を有する液流285を導く。この血液老廃物の液流285は限外濾過装置220に入る。
【0072】
上記で説明したように、限外濾過装置220は濾過装置10と同様に機能することができる。限外濾過装置220の濾過膜18は、水と所望の小分子が限外濾過装置220のローターの内部20に入るように構成されている。矢印285で表しているように、中間分子量の老廃物は濾し取られ、限外濾過装置220から廃棄袋230に移る。一方で濾液は、患者へと戻る血液の増量に使用することができる、清潔で温かく、生体適合性のある交換液を含む。
【0073】
図7Aに図示した実施例では、この患者から生成された交換液流275は、T型連結部が交換液流275と患者からの血流255を混ぜ合わせる2段階濾過システムの開始点へ再還流される。当業者に周知のように、T型連結部は2つの液体入力と1つの液体出力をもつ多数の装置のうち任意のものでよい。1つの実施例においては、T型連結部は単純にT型の管断面を有する。これにより血液透析装置210に入る液体の容量は増加し、患者200へと戻る液流265も同様に増加する。老廃物を失うために液流が減少する可能性があるので、補足人工交換液240を導入してもよい。本発明の好適な実施例によると、患者200へと戻る液流265は患者200を出る液流255とほぼ等しく、患者の血液の容量は比較的一定に保たれる。
【0074】
好適な実施例においては、交換液には様々な添加物を補充することができる。典型的な添加物には例えば重炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などの生体適合性のある緩衝液が含まれる。例えば塩素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン酸塩、デキストロース、グルコース、そして具体的な患者に必要な他の任意の分子などの他の成分も、交換液に加えることができる。
【0075】
図7Bに図示された例は図7Aに関して上記で説明したものと非常に類似している。唯一の違いは患者から生成された交換液流275がシステムに再流入するT分岐の位置にある。図7Bにおいては、この液流275は患者200へと戻る処理後の血流と混ざる。このようにして、患者への再導入の直前に、還元流265は増加して抽出流255とほぼ同じになる。好適な実施例においては、例えば液流を監視し、補足人工交換液の必要量に関してフィードバックをするために図7Aと図7Bの2段階システムの様々な場所に流量計を設置することができる。当業者には周知のように、無菌的で病院の環境での使用に合わせて構成されているという条件で、様々な流量計を使用することができる。
【0076】
これらの図の両方で、血液透析装置210は、持続的静脈−静脈血液濾過や持続的動脈−静脈血液濾過を含め血液濾過又は血液透析濾過を利用することができる。
【0077】
図7Aと図7Bは連続処理を説明しているものの、回分処理を包含していることを理解するべきである。回分処理は患者から除去された血液の一部を処理することを含む。その後血液を処理して、生成された交換液から選択的に成分を取り除くことができる。この処理後の血液は交換液と混合し、患者へと戻すことができる。
【0078】
もう一つの実施例においては、透析液を2段階血液透析システムにおいて再利用することができる。一般的には、一旦老廃物で汚染されると、透析液は例えば濾過装置110のような透析装置を一度通過した後に捨てられる。結果として、従来技術の透析装置は、大量の交換透析液が必要であり大量の廃棄物が生成されるといった、上記で濾過装置に関して説明したものと同じ非効率性の多くを抱えている。その代わりに、本発明によれば、老廃物を透析液から分離するために、中間分子量の老廃物を含んだ透析液を、例えば濾過装置10又は110のどちらかのような、第2の濾過装置に送ることができる。この第2濾過装置から濾液として出てくる再利用された透析液は、その後更なる透析過程に使用することができる。
【0079】
図8はそのような2段階血液濾過システムの略図であり、そこでは清潔で再利用された透析液が老廃透析液から生成され、大量の交換透析液の必要を緩和している。上記のように、システムを流れる様々な液体の流れの方向を矢印で図示している。
【0080】
患者は最も左側の四角300で表している。典型的な例においては、患者300は上記で患者200に関して説明したものと同様の特徴を持っている。あるいはこの2段階システムは、濾過する液体が中間的な大きさの分子を抽出する必要がある不均一液体であるといった、産業的な設定で使用することもできる。
【0081】
この2段階血液濾過システムの第1段階を有する装置は血液透析装置310である。当業者に周知のように、装置310で使用する濾過膜には多種多様の特徴を持たせることができ、多数の異なる大きさの粒子の中から任意のものを濾過するために選ぶことができる。1つの実施例においては、分子量が10000ダルトン以下の分子を濾し取るように血液濾過装置310を構成している。1つの実施例においては、血液透析装置310は分子量が10,000ダルトン以下の分子のみが膜を通って拡散するように構成されている。
【0082】
一般的には、上記で説明したように、血液濾過装置はその中を通る二つの液体を濾過膜の両側にそれぞれ有している。水溶液が膜の両側に存在するため、液体の体積は大体同じに保たれるが、通過して拡散ができるならそこにある分子は膜を通して平衡状態となりやすい。これにより、比較的高い濃度の電解質、塩、その他の所望の分子を持つ透析液を濾過膜の一方に沿って流し、高い濃度の老廃副産物を持つ患者の血液は透析膜の別の側に沿って流すことができる。2つの溶液は膜を通して拡散できる分子に関しては平衡状態に向かい、一般的に結果として出てくるのは、透析液と老廃物からなる溶液と、追加の所望の小分子を含む処理後の血液である。
【0083】
この2段階血液濾過システムの第2段階に使用する装置は限外濾過装置320と説明することができ、これはより小さな分子に透過性を持つことからそう呼ばれている。好適な実施例においては、限外濾過装置320の目的は中間分子量で毒性のある分子を不均一溶液から濾し取り、透析液と他の所望の小分子のみを残すことである。この好適な実施例においては、分子量が約300ダルトン以下の分子を通し、それにより潜在的に毒性のある分子を残りの溶液から分離するように、限外濾過装置320で使用する濾過膜を選ぶ。他の実施例においては、濾過膜は分子量が約200ダルトン以下の分子のみを通すことができ、毒性のある可能性のある他の分子が濾液として出てくるのを防ぐ。
【0084】
同じ又は異なる型の濾過装置を血液透析装置310と限外濾過装置320に使用することができる。当業者には周知のように、多数の可能な血液透析装置と濾過装置を使用することができる。好適な実施例においては、血液透析装置310は図5と図6を参照して上記で説明した濾過装置110と同様に機能するテイラー渦攪拌濾過装置である。限外濾過装置320は上記で説明した濾過装置10と同様のテイラー渦攪拌濾過装置であることが望ましい。上記で説明したように、これらの濾過装置は、異なる粘性と流量の処理液体に対応するために、ローターとハウジングのそれぞれの様々な大きさと形、速度の任意の組み合わせを持つことができる。
【0085】
この2段階血液透析システムから生成された望ましくない老廃物を集めるために廃棄袋330を使用する。1つの実施例においては、この廃棄袋330は通常なら健康な腎臓によって集められるものと同じ老廃物の多くを集めるべきである。勿論、廃棄袋330は廃棄物を集める及び/又は廃棄する手段のうち任意のものを表すことができ、必ずしも特定の形と大きさをもった物理的な容器である必要は無い。適用となる法律と規制に従って、廃棄袋30を廃棄に注意が必要な危険廃棄物として集めなければならないことがよくある。本発明独自の特性により、2段階血液透析システムによって生み出される老廃物の容量は一般の単段階透析処理から生み出されるものと比べてはるかに少なくなるだろう。
【0086】
透析液供給源350が血液濾過装置310に入る透析液流355と共に示されている。1つの実施例においては、血液濾過装置310に入る透析液流355は患者からの血流365と大体等しい。そのため、患者300へ戻る処理後の血流375は患者からの血流と比べ実質的に減少していない。上記で説明したように、装置310を通って流れる透析液は装置310を通って流れる血液とは違う濾過膜の側に沿って移動する。老廃物の拡散を促進し血液の汚染を防ぐために、透析液は無菌的で発熱物質がなく、一般的には体温でなければならない。
【0087】
好適な実施例においては、透析液には様々な添加物を補充することができる。典型的な添加物は例えば塩素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン酸塩、デキストロース、グルコース、もしくは具体的な患者にとって必要な他の分子などの生物学的に所望の成分を含む。これらのより小さな分子は濾過膜を通して患者へ戻る処理後の血液へと拡散することができる。
【0088】
図8で示された2段階血液透析システムを使い、本発明に従って血液透析を行う方法を更に詳細に説明する。患者300から血液透析濾過装置310へと延びる矢印365で示しているように、処理の第1段階は患者からの採血である。従来のように、患者300の腕の動脈に接続されたIVチューブを通して採血する。勿論、患者から採血する他の手段も当業者には周知である。上記で説明したように、典型的な患者からの血流量は300−450ml/分である。それゆえ患者の血液量を比較的一定に保つため、患者へと戻る液体(矢印375)は同程度の流量で流れなければならない。従来のように、患者300へと戻る液体は患者の静脈に接続されたIVチューブを通して戻る。
【0089】
患者300から流れる血液はその後血液透析装置310を通過する。血液透析装置310は当業者には周知のような様々な方法で血液を透析することができる。好適な実施例においては、血液透析装置310は上記で詳細に説明した装置110と同様に作動することができる。この例においては、血液は入口122を通して第1の空隙116に流入する。透析液は入口126を通して第2の空隙146に流入する。
【0090】
第2の空隙146と第1の空隙116を分離している濾過膜118は、分子量が約10,000ダルトン以下の分子がどちらの方向にも通過できるように設計されている。患者300から流れる血液は多数の成分を含み、それには水、電解質、小栄養分子、老廃物、高分子量の分子(例えば蛋白質など)、血球、そして他の様々な種類の細胞などが含まれる。透析液供給源350から流れる透析液は水と患者の処理後の血液に補充することができる他の所望の小分子を含む。このため、透析液と血液が血液濾過装置310を反対方向に流れる間、血液は透析液から拡散する所望の小分子を蓄積し、透析液は血液から拡散する老廃物を蓄積する。
【0091】
一方、ローター144と114は、第1の空隙116を流れている血液の中と第2の空隙146を流れている透析液の中にテイラー渦を作り出すのに十分な速度で回転する。これらのテイラー渦は両方の空隙にある液体を混合し、これにより濾過膜118の外側と内側の部分での濃度分極の問題を緩和している。
【0092】
濾過装置310は二つの出口124と128を有している。第1の出口124は第1の空隙116と連通している。(透析液と血液が比較的等しい流量を有するために、)水は非常に少量のみ濾過膜118を通して拡散するので、典型的な例においては、この出口124からの流量は大体入口122への流量と大体等しい。小さな相違があった場合には、補足交換液を使用する、もしくは患者に戻す前に少量の処理後の血液を除去することにより、これらを修正することができる。
【0093】
第2の空隙146と連通している第2の出口128は、老廃透析液385の流れを導く。この老廃透析液385は限外濾過装置320に入る。
【0094】
上記で説明したように、限外濾過装置320は濾過装置10と同様に機能することができる。限外濾過装置320の濾過膜18は透析液基質と所望の小分子が限外濾過装置320のローター内部20に入るように構成されている。中間分子量の老廃物は濾し取られ、限外濾過装置320から廃棄袋330へと移る。一方で濾液は、もう一度患者の血液からの老廃物を拡散させるのに使用することができる、清潔で温かく生体適合性のある透析液を今や含んでいる。
【0095】
患者の処理後の血液への拡散により透析液中の所望の小分子の濃度は激減するので、これらの分子は所望の小分子の供給源390から補充することができる。好適な実施例においては、システムは透析液の流れを検出し、適切な量の濃縮液をT型連結部を通して再利用された透析液に加えることができる。
【0096】
図8に示されている実施例においては、再利用された透析液395が2段階濾過システムの開始点に導入され、そこではT型連結部が再利用された透析液395と新しい透析液流365を混合している。理想的には、システムが全体のサイクルを通して行った後は、未使用の透析液が非常に少量しか必要でなくなる。
【0097】
図1−8に示された実施例の変法により、本発明は他の非常に多くの用途に適用することができる。一般的な意味では、本発明の実施例は、フィルターが目詰まりや濃度分極のために性能を落とし、交換液が所望であるような、いかなる用途にも使用することができる。これらの用途としては、水からの塩の除去、人間の消費のための海水の処理、農業使用のための海水の処理、農業使用のための廃水の再処理、人間の消費のための廃水の再処理、例えばサトウキビ樹液やメープル樹液などの植物の樹液からの砂糖又は他の所望の成分の濃縮、ゴムの木の樹液からのラテックスの濃縮、例えば製薬産業や電子産業で必要となるような産業用途のための水からの不純物の除去、料理油のリサイクル、モーター潤滑油や潤滑油サイクル、静脈注射のための無菌水の生成などを含む。
【0098】
更に言えば、分子排除膜もしくは分子篩膜を使用した場合には、例えばバイオプロセッサーや発酵装置の中の細胞材料からの細胞上清及び/又は溶解物の精製といった、大規模な細胞生物工学の分離用途にこの装置を使用することができる
【0099】
上記で説明したような様々な資料や方法、技術は本発明を実行する多数の方法を提供する。勿論、本明細書で説明したどのような特定の実施例に従っても、全ての説明した目的又は利点が必ずしも達成されるわけではないことは理解するべきである。そのため、例えば、必ずしも本明細書で教示又は示唆したかもしれない他の目的又は利点を達成せずに、本明細書で教示したような1つもしくは幾つかの利点を達成又は最適化する形で、システムの構成要素を作り方法を実行することができることを当業者は認識するであろう。
【0100】
特定の好適な実施例に関して本発明を説明してきたものの、大きさや構成や素材の変化を含む本発明の他の実施例も、本明細書の開示を考慮すると当業者には明らかであろう。それに加え、本明細書のいかなる実施例に関連して説明された全ての特徴は、本明細書の他の実施例にもすぐに適合することができる。異なる実施例における類似の特徴について異なる用語または参照番号を使用しているのは、明確にするためのものであり、他の違いを意味するわけではない。従って、本発明は添付の特許請求の範囲を参照してもっぱら説明されることを意図し、本明細書で開示した好適な実施例のみに限定されるのではない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は本発明で使用する渦攪拌血液透析装置の1つの実施例の断面図を示している。
【図2】図2は図1の装置の1つの実施例の上から見た断面図を示している。
【図3】図3は渦攪拌透析装置の第2の実施例の上から見た断面図を示している。
【図4】図4は渦攪拌透析装置の第3の実施例の上から見た断面図を示している。
【図5】図5は本発明のデュアルローター渦攪拌装置の1つの実施例の断面図を示している。
【図6】図6は図5の断面図であり、血液(外側の空隙)と透析液(内側の空隙)の流路を強調している。
【図7a】図7aは濾過透析システムの概略図であり、交換液を患者の血液老廃物から生成し患者から引き出された血液と混合している。
【図7b】図7bは濾過透析システムの第2の概略図であり、交換液を患者の血液老廃物から生成し患者へ戻す前に処理後の血液と混合している。
【図8】図8は濾過透析システムの概略図であり、再利用された交換液を透析装置から流れる透析排液から取得している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの血液を受容し第1の濾液と処理後の血液を生成する第1濾過装置と、
第1の濾液を受容し交換液と老廃物を生成する第2濾過装置を備え、
第1と第2の濾過装置の少なくとも一方がテイラー渦攪拌血液濾過装置を備えることを特徴とする患者の2段階血液透析のシステム。
【請求項2】
更に処理後の血液と交換液を混合し還元血流を作り出すT型連結部を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
還元血流を更に補充交換液の導入によって増加させることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
補充交換液に少なくとも1つの添加物を補充することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
還元血流が実質的に患者からの血流と等量であることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
更に患者からの血液と交換液を混合して第1濾過装置に入る血流を増加させるT型連結部を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
第1濾過装置への血流を更に補充交換液の導入によって増加させることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
補充交換液に少なくとも1つの添加物を補充することを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
更に患者からの血液に抗凝固剤を混合するための抗凝固剤供給源を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記テイラー渦攪拌血液濾過装置は、
ハウジング壁を持つハウジングと、
濾過膜を備え第1の内部を画定する第1の壁を持つ第1のローターで、濾過膜とハウジング壁の間に第1の空隙が存在するように前記の第1のローターが前記のハウジングの内側に配置されそこで回転するように適合されている第1のローターと、テイラー渦を第1の空隙の中に作り出すのに十分な速度で第1のローターを前記のハウジングの中で回転させる第1の回転駆動手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1濾過装置は、
ハウジング壁を持つ円筒形のハウジングと、
透析膜を備える第1の壁を持つ第1の円筒形のローターで、透析膜とハウジング壁の間に第1の同軸の空隙が存在するように前記の第1の円筒形のローターが前記のハウジングの内側に同軸上に配置されそこで回転するように適合されている第1のローターと、
第2の壁を持つ第2の円筒形のローターで、第1と第2の壁の間に第2の同軸の空隙が存在するように前記の第2の円筒形のローターが前記の第1の円筒形のローターの内側に同軸上に配置されそこで回転するように適合されている第2のローターと、
患者からの血液を第1の同軸の空隙へと導くハウジング壁にある第1の入口及び処理後の血液を第1の同軸の空隙から導き出すハウジング壁にある第1の出口と、
第1の濾液を第2の同軸の空隙から導き出す前記のハウジングにある第2の出口と、
前記のハウジングの内側で第1の円筒形のローターを回転させるための第1の回転駆動手段と、
前記のハウジングの内側で第2の円筒形のローターを回転させるための第2の回転駆動手段を備えることを特徴とする、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
患者からの血液を受容し透析排液と処理後の血液を生成するように構成された透析装置と、
透析排液を受容し再利用された透析液と老廃物を生成するように構成された濾過装置を備えることを特徴とする患者の2段階血液透析のシステム。
【請求項13】
透析装置へ導入するために高濃度の透析液と再利用された透析液を混合するT型連結部を更に備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
高濃度の透析液に少なくとも1つの添加物を補充することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
透析装置と濾過装置の少なくとも一方が、
ハウジング壁を持つハウジングと、
濾過膜を備え第1の内部を画定する第1の壁を持つ第1のローターで、濾過膜とハウジング壁の間に第1の空隙が存在するように前記の第1のローターが前記のハウジングの内側に配置されそこで回転するように適合されている第1のローターと、
テイラー渦を第1の空隙の中に作り出すのに十分な速度で第1のローターを前記のハウジングの中で回転させる第1の回転駆動手段を備えることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
透析装置が、
ハウジング壁を持つ円筒形のハウジングと、
透析膜を備える第1の壁を持つ第1の円筒形のローターで、透析膜とハウジング壁の間に第1の同軸の空隙が存在するように前記の第1の円筒形のローターが前記のハウジングの内側に同軸上に配置されそこで回転するように適合されている第1の円筒形のローターと、
第2の壁を持つ第2の円筒形のローターで、第1と第2の壁の間に第2の同軸の空隙が存在するように前記の第2の円筒形のローターが前記の第1の円筒形のローターの内側に同軸上に配置されそこで回転するように適合されている第2のローターを、
備えることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
テイラー渦を発生させるように構成した第1濾過装置を設けることと、
第2濾過装置を設けることと、
患者からの血液を第1濾過装置へと導入することと、
第1濾過装置からの第1の濾液を第2濾過装置へと導入することと、
交換液を第2濾過装置から取得することを含むことを特徴とする患者に血液透析を行う手段。
【請求項18】
交換液を第1濾過装置からの処理後の血液に混合するステップを更に含む、請求項17に記載の手段。
【請求項19】
患者からの血液を第1濾過装置へ導入する前に交換液を患者からの血液に混合するステップを更に含む、請求項17に記載の手段。
【請求項20】
第1濾過装置を設けることと、
テイラー渦を発生させるように構成した第2濾過装置を設けることと、
患者からの血液を第1濾過装置へと導入することと、
第1濾過装置からの第1の濾液を第2濾過装置へと導入することと、
交換液を第2濾過装置から取得することを含むことを特徴とする患者に血液透析を行う手段。
【請求項21】
交換液を第1濾過装置からの処理後の血液に混合するステップを更に含む、請求項20に記載の手段。
【請求項22】
患者からの血液を第1濾過装置へ導入する前に交換液を患者からの血液に混合するステップを更に含む、請求項20に記載の手段。
【請求項23】
透析装置を設けることと、
濾過装置を設けることと、
患者からの血液と透析液を透析装置へと導入することと、
透析装置からの透析排液を濾過装置へと導入することと、
再利用された透析液を濾過装置から取得することを含むことを特徴とする患者に血液透析を行う手段。
【請求項24】
透析装置への導入のために濃縮された透析液と再利用された透析液を混合するステップを更に含む、請求項23に記載の手段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2008−510511(P2008−510511A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527177(P2007−527177)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027305
【国際公開番号】WO2006/022737
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504438015)ケイケイジェイ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】