説明

交通情報提供システム、交通情報提供センタ、車載用情報収集装置

【課題】 実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な道路状況確認用情報を、迅速に且つ設備コストの高騰を伴うことなく提供すること、車両側において、上記道路状況確認用情報に必要な画像データを正確に収集すること。
【解決手段】 交通情報提供センタ1では、渋滞発生予想エリアを画像データ収集範囲として決定すると共に、その範囲を通過予定の定期バス3の候補を決定し、候補車両となった定期バス3に対して情報収集指令を送信する。定期バス3は、自車両が情報収集指令により示される画像データ収集範囲を差し掛かったときに、搭載カメラ12により撮影した画像データ及び車両位置情報などを含むプローブ情報を交通情報提供センタ1へ送信する。交通情報提供センタ1では、受信したプローブ情報に基づいて、道路の状況を視覚的に確認可能な道路状況確認用情報をリアルタイムに作成し、情報利用車両20からアクセス可能なネットワーク21へ提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転者に対して道路上での渋滞情報を視覚的な形態で提供するための交通情報提供システム及び交通情報提供センタ、並びに、視覚的な形態の渋滞情報を収集するための車載用情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、カーナビゲーションシステムに代表されるように、道路の渋滞情報を車両運転者に提供するシステムが広く普及している。但し、このシステムでは、道路地図画面上に渋滞箇所を識別可能に表示すると共に、その渋滞箇所を必要に応じて音声ガイドにより報知するだけの構成であるため、車両運転者側で渋滞の原因を確認することが困難であり、また、自車両が渋滞箇所に差し掛かったときにおいて当該車両の前にバスやトラックなどの大型車両が存在する場合には、実際の渋滞状況を目視によって把握することができない。このため、車両運転者のイライラ感が募る場合があるなど、十分な渋滞情報を提供できるシステムとは言えないものであった。
【0003】
これに対して、従来では、渋滞発生が予想される道路の状況を撮影する撮影機器を固定的に設置し、この撮影機器により撮影した画像データを車両運転者に配信するシステムが考えられており、このシステムによれば、車両運転者は、渋滞状況の把握を、その渋滞箇所を実際に撮影した画像データに基づいて視覚的に行うことが可能になるため、そのイライラ感が募る事態を未然に防止可能であると考えられる。しかしながら、このようなシステムを構築するためには、道路上に多数の撮影機器を固定的に設置する必要があるため、インフラの整備及び保守管理に膨大な手間が掛かるなどの課題がある。
【0004】
このような課題を解決するために、従来では、例えば特許文献1に見られるようなプローブカーシステムが考えられる。即ち。このプローブカーシステムは、バスなどの輸送用車両にビデオカメラを搭載し、このビデオカメラにより撮影した画像データ及び輸送用車両の位置情報を、交通情報として情報センターシステムへ送信する構成となっており、情報センターシステム側では、受信した画像データ及び位置情報を、日時情報などを付加した交通情報として画像データベースに蓄積する構成となっている。また、情報センターシステムにおいては、交通利用者側の情報処理機器から通信ネットワークを通じて位置指定を含む情報要求があったときには、指定された位置に該当する交通情報を画像データベースから取り出すと共に、その交通情報を要求先の情報処理機器へ通信ネットワークを通じて提供する構成となっている。従って、このようなプローブカーシステムを利用すれば、交通利用者側では、提供された交通情報に係る画像データを情報処理機器上で再生することにより、実際の渋滞状況を視覚的に把握可能になるから、前述のようなイライラ感が募る事態を未然に防止可能となる。
【特許文献1】特開2003−256991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像データは、そのデータ量が大きいという一般的事情がある。これに対して、特許文献1に示された情報センターシステムは、輸送用車両の運行経路に沿った道路について撮影した画像データをプローブ情報としてリアルタイムに収集し、このように収集した膨大な画像データ及び撮影位置についての位置情報を含む交通情報を画像データベースに蓄積しておく構成、換言すれば渋滞箇所以外の余分な画像データも蓄積しておく構成になっているため、そのデータベースの構築にきわめて容量の大きな記憶手段が必要となって設備コストが高騰するという欠点がある。また、輸送用車両側で撮影された画像データなどを含む交通情報が画像データベースに一旦格納され、交通利用者側の情報処理機器からの要求を受けるのに応じて、画像データベースから取り出した交通情報を当該情報処理へ配信するという手順を踏む構成となっているため、交通利用者側が入手した交通情報に時間遅れが発生する可能性が高くなり、交通利用者が望むリアルタイム性の高い交通情報を提供できなくなる恐れも出てくる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、道路上での実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な道路状況確認用情報を、迅速に且つ設備コストの高騰を伴うことなく提供できるなどの効果を奏する交通情報提供システム及び交通情報提供センタを提供することにあり、第2の目的は、指定された画像データ収集範囲において上記道路状況確認用情報に必要な画像データを正確に収集できるようになる車載用情報収集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の交通情報提供システムによれば、情報収集範囲決定手段において、渋滞発生が予想されるエリアが、交通情報を解析した結果に基づいて画像データ収集範囲として決定されるようになり、また、通信手段が、上記画像データ収集範囲を走行する特定車両に対して、当該車両に搭載されている撮影機器により画像データ収集範囲を撮影するように指示するための情報収集指令を送信するようになる。このような情報収集指令を車載通信機器により受信した特定車両においては、その情報収集指令により指示された画像データ収集範囲を走行する際に、車載端末が、撮影機器により車両前方を撮影すると共に、撮影した画像データを、その撮影位置を特定可能な形態で前記通信手段へ返信するようになる。すると、情報提供手段が、上記通信手段を通じて受信した画像データ及び当該画像データの送信源となった特定車両の位置を解析することにより、前記画像データ収集範囲に対応した道路の状況を視覚的に確認可能な再生用画像情報及び当該道路の位置を特定可能な位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、その道路状況確認用情報を、第三者車両からアクセス可能なネットワークへ提供するようになる。
【0008】
つまり、第三者車両側では、ネットワークへアクセスするだけで、特定車両において撮影された画像データをリアルタイムに変換した再生用画像情報を含む道路状況確認用情報を取得できることになり、従って、道路上での実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な道路状況確認用情報の提供を、画像データベースに一旦格納された画像データを交通利用者側の要求を受けてから配信するという従来構成に比べて迅速に行い得るようになる。また、このように構成された交通情報提供システムでは、ネットワーク用のサーバとして機能することになる情報提供手段に、道路状況確認用情報のための記憶手段が必要になるが、この記憶手段には、渋滞発生が予想される画像データ収集範囲に係る道路状況確認用情報のみが記憶されることになるから、渋滞箇所以外の余分な画像データも蓄積しておく従来構成に比べて、記憶手段の容量を大幅に小さくできることになり、結果的に設備コストの高騰を来たす恐れがなくなる。
【0009】
請求項2記載の交通情報提供システムによれば、情報提供手段が、受信プローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった特定車両の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定し、上記特定車両に対して、画像データを含むプローブ情報を再度返信するように指示するための情報収集指令を送信するようになる。この結果、渋滞発生エリアに係るプローブ情報を継続的に収集できるようになるから、渋滞情報として第三者車両に提供される道路状況確認用信号の信頼性を高め得るようになる。
【0010】
請求項3記載の交通情報提供システムによれば、履歴情報記録手段に蓄積された交通情報、つまり情報収集範囲決定手段において画像データ収集範囲を決定するのに必要となる交通情報は、情報提供手段において新たな渋滞発生エリアが認定される毎に常に最新のものにアップデートされることになるから、その交通情報の信頼性が向上すると共に、履歴情報記録手段に必要な記録容量が無闇に大きくなる事態を未然に防止できるようになる。
【0011】
請求項4記載の交通情報システムによれば、特定車両が、その出発場所に予め設定された通信エリアにあるときに、通信手段から当該特定車両に対して情報収集指令を送信する動作が行われるようになっているから、特定車両が画像データ収集範囲へ向かっている途中での情報収集指令の送信動作が不要になると共に、特定車両側で情報収集指令を確実に受信できるようになって、当該特定車両での情報収集(撮影機器による画像データの取得)を確実に行うことができる。
【0012】
請求項5記載の交通情報収集システムによれば、例えば、画像データ収集範囲及びその周辺に複数台の特定車両が存在する場合には、それら特定車両の位置を示す車両位置情報並びに当該特定車両に搭載された撮影機器により撮影された画像データが、情報提供手段によりネットワークに提供される。第三者車両に搭載された報知手段は、ネットワークから取得した車両位置情報に基づいて複数台の特定車両の位置を報知するようになるから、当該第三者車両の運転者は、報知手段による報知内容に基づいて、任意の特定車両を指定する操作を行うことができる。このような指定操作が行われると、第三者車両に搭載された表示手段が、指定された特定車両に搭載された撮影機器により撮影された画像データをネットワークからダウンロードして再生表示するようになる。従って、画像データ収集範囲及びその周辺に複数台の特定車両が存在する場合には、第三者車両側で、任意の特定車両の搭載撮影機器により撮影された画像データを確認可能となるから、その運転者は、画像データ収集範囲及びその周辺での視覚的な情報を多角的に取得できるようになる。
【0013】
請求項6記載の交通情報提供センタにおいては、情報収集範囲決定手段が、渋滞発生が予想されるエリアを、交通情報を解析した結果に基づいて画像データ収集範囲として決定し、通信手段が、上記画像データ収集範囲を走行する特定車両に対して、当該車両に搭載されている撮影機器により車両前方を撮影し、且つ撮影した画像データを前記通信機器から返信するように指示するための情報収集指令を送信すると共に、その車両側から返信される画像データを、その撮影位置を特定可能な形態で受信するようになる。すると、情報提供手段が、上記通信手段を通じて受信した画像データ及び当該画像データの送信源となった特定車両の位置を解析することにより、前記画像データ収集範囲に対応した道路の状況を視覚的に確認可能な再生用画像情報及び当該道路の位置を特定可能な位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、その道路状況確認用情報を第三者車両からアクセス可能なネットワークへ提供するようになる。
【0014】
従って、本発明においても、前記請求項1記載の発明と同様に、道路上での実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な画像情報の提供を、従来構成に比べて迅速に行い得るようになると共に、情報提供手段に必要になる記憶手段の容量を小さくできて、設備コストの高騰を来たす恐れがなくなるものである。
【0015】
請求項7記載の交通情報提供センタによれば、前記請求項2記載の発明と同様に、渋滞発生エリアに係るプローブ情報を継続的に収集できるようになるから、渋滞情報として第三者車両に提供される道路状況確認用信号の信頼性を高め得るようになる。
【0016】
請求項8記載の交通情報提供センタによれば、前記請求項3記載の発明と同様に、履歴情報記録手段に蓄積された交通情報の信頼性が向上すると共に、履歴情報記録手段に必要な記録容量が無闇に大きくなる事態を未然に防止できるようになる。
【0017】
請求項9記載の車載用情報収集装置によれば、前記交通情報提供センタから送信される情報収集指令を通信機器により受信したときに、動作制御手段が、その情報収集指令の解析結果に基づいて、自車両が画像データ収集範囲を走行する際に撮影機器により車両前方を撮影させるようになる。また、応答手段が、撮影された画像データを、その撮影位置を特定可能な形態で前記交通情報提供センタへ返信するようになる。これにより、自車両が画像データ収集範囲に差し掛かったときに、道路上での実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な道路状況確認用情報の提供に必要な画像データを正確に収集できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1には、プローブ情報システムとして構成された交通情報提供システムの全体構成が機能ブロックの組み合わせにより示されている。
【0019】
この図1において、交通情報提供センタ1に設けられた制御ユニット2は、定期バス3(特定車両に相当)についての当日の運行経路や運行時刻などの車両運行情報を格納した車両管理データベース4、並びに、過去に実際に渋滞が発生した場所についての統計データを交通情報として格納した交通情報データベース5(履歴情報記録手段に相当)にアクセス可能に構成されている。
【0020】
この制御ユニット2内のデータ収集位置決定手段6(情報収集範囲決定手段に相当)は、当日の曜日、時刻、天候その他の情報を元に交通情報データベース5から交通情報を取り出すと共に、その交通情報を統計的に解析する方法(統計データトリガ)により、渋滞発生が予想されるエリアを画像データ収集範囲として決定し、決定した画像データ収集範囲を集めた渋滞予想位置リストを作成する。この場合、データ収集位置決定手段6においては、定期バス3から後述のように送られてくる定期プローブ情報(画像データ、車速信号など)を解析し、その情報から渋滞発生の兆候を検知した結果に基づいて画像データ収集範囲を決定する方法(リアルタイムトリガ)も併用することになる。
【0021】
また、制御ユニット2内のデータ収集車両決定手段7は、前記渋滞予想位置リスト中の画像データ収集範囲を通過予定の定期バス3の候補を、車両管理データベース4を参照して決定する。
【0022】
交通情報提供センタ1に設けられた通信手段8は、データ収集車両決定手段7により候補車両として決定された定期バス3に対して、データ収集位置決定手段6により決定された画像データ収集範囲での道路状況を撮影するように指示するための情報収集指令、つまり、画像データ収集範囲を特定可能な位置情報(座標情報)含む情報収集指令を無線通信により送信する構成となっている。このような通信は、例えば、運行開始前の定期バス3に対して、その出発場所(車庫)に予め設定された通信エリアに所定の通信所要時間だけ停車するように義務付けておき、その停車状態時に、DSRC通信或いは無線LANなどを利用して行われる。この場合、定期バス3には、固有のID番号(例えばIPアドレス)が割り当てられており、交通情報提供センタ1側では、そのID番号を利用して定期バス3の識別を行う構成となっている。
【0023】
尚、定期バス3への情報収集指令の送信タイミングは、上記のような運行開始前のタイミングに限られるものではなく、例えば、運行開始後の定期バス3から通信手段8を通じて定期的に取得した車両位置情報に基づいて、当該定期バス3の走行位置を監視し、前記画像データ収集範囲に差し掛かる直前のタイミングで情報収集指令を送信するという形態も可能である。
【0024】
通信手段8には、上記通信機能の他に、運行中の定期バス3から送信されるプローブ情報を受信する機能を備えており、受信したプローブ情報を、交通情報提供センタ1側に設けられたデータ解析手段9に与える構成となっている。このデータ解析手段9は、WEB提供データ作成手段10と共に本発明でいう情報提供手段を構成するものであるが、これら各手段9及び10の機能については後で説明する。
【0025】
定期バス3には、交通情報提供センタ1側の通信手段8と無線通信を行うための通信機器11、車両前方を撮影可能に設けられたカメラ12(撮影機器に相当)、画像データ表示用の情報表示器13(報知手段及び表示手段に相当)、定期バス3の現在位置を示す車両位置情報を取得するための位置検出器14が搭載されていると共に、これら通信機器11、カメラ12、情報表示器13、位置検出器14に接続された車載端末15が搭載されている。尚、位置検出器14はGPS信号の受信機により構成されるものであり、カーナビゲーション装置用のGPS受信機で兼用でき、情報表示器13も同様にカーナビゲーション装置用の表示器で兼用できるものである。また、車載端末15には、車速センサ16により得られる車速信号が、走行制御機器17(例えばエンジン制御ECU)を通じて入力されるようになっている。
【0026】
この車載端末15内の主制御部18は、通信機器11を通じて受信した情報収集指令を解析することにより画像データ収集範囲を特定すると共に、自車両(定期バス3)の走行位置を位置検出器14からの車両位置情報に基づいて継続的に監視し、自車両が画像データ収集範囲を差し掛かったときには、車載機器制御部19に対してカメラ12によって車両前方を撮影するように指令する構成となっている。この指令を受けた車載機器制御部19は、カメラ12を動作させて車両前方を撮影すると共に、撮影した画像データをその時点での車速センサ16からの車速信号と共に主制御部18へアンサバックする構成となっている。
【0027】
主制御部18は、アンサバックされた画像データ及び車速信号、並びにその時点での位置検出器14からの車両位置情報を含むアンサバックプローブ情報を、通信機器11から交通情報提供センタ1へ送信する制御を行うようになっている。尚、アンサバックプローブ情報中の画像データは、データ圧縮した状態で送信することが望ましい。また、主制御部18は、自車両が一定距離走行する毎、或いは一定時間が経過する毎に、カメラ12により撮影した画像データ、車速信号及び車両位置信号を含んで成る定期プローブ情報を交通情報提供センタ1へ送信する制御も行う構成となっている。
【0028】
一方、交通情報提供センタ1側において、前記データ解析手段9は、通信手段8から与えられたプローブ情報を解析することにより、該当道路での混雑度合い(これは対象物である車両についての画像認識処理に基づいて判定)や、プローブ情報の送信源となった定期バス3の走行速度に基づいて道路上の渋滞度を判定する。判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その周辺エリア(道路上での所定距離の範囲)を渋滞発生エリアと認定し、上記定期バス3が該当エリアにまだ存在するか否かを車両位置信号に基づいて判断し、そのエリアに存在していた場合には、当該定期バス3に画像データを含むプローブ情報を再度返信するように指令を出す。
【0029】
この場合、データ解析手段9により新たな渋滞発生エリアが認定される毎に、交通情報データベース5に蓄積された交通情報がアップデートされる構成となっている。
また、WEB提供データ作成手段10は、データ解析手段9での解析結果及び受信プローブ情報に基づいて、渋滞発生エリアの道路状況を視覚的に認識可能な再生用画像情報(動画像、静止画像の何れでも良い)、当該道路の位置を特定可能な道路位置情報、並びに渋滞発生エリア及びその周辺に存在する定期バス3の位置を特定可能な車両位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、作成した道路状況確認用情報を、情報利用車両20(第三者車両に相当)から無線通信によりアクセス可能なネットワーク21(インタネット或いは専用ネットワークなど)を通じて提供する構成となっている。尚、この道路状況確認用信号はデータ圧縮した状態で提供することが望ましい。
【0030】
この場合、ネットワーク21には、情報利用車両20に搭載された通信機器22と通信を行うための複数の路上通信機23が接続されている。また、情報利用車両20には、前記道路状況確認用情報を画面上で再生可能な表示器(図示せず)を備えた車載器24(報知手段、表示手段に相当)が搭載されていると共に、自車両の位置を認識可能な位置検出手段(例えばカーナビゲーション装置:図示せず)が搭載されている。
【0031】
上記情報利用車両20は、交通情報提供センタ1に対して、自車両の現在位置を示す車両位置情報含む情報リクエスト信号を、通信機器22からネットワーク21を通じて送信できる構成となっている。この情報リクエスト信号は、例えば情報利用車両20の運転者が単純な要求操作を行ったときに、自車両の現在位置を示す車両位置情報を自動入力した状態で送信されるものであり、これに応じて当該車両位置情報に対応した道路状況確認用情報が、ネットワーク21を通じて自動的にダウンロードされるようになっている。このようにダウンロードされた道路状況確認用情報は、車載器24側に搭載されたブラウザ機能により再生可能な画像データに変換されて画面表示される。尚、車載器24の表示器はタッチパネル画面を備えた構成とされるものである。
【0032】
図2には、上記構成の交通情報提供システムの基本機能を説明するためのイメージ図が示されている。この図2において、車庫から出発しようとする定期バス3に対しては、その出発場所に予め設定された通信エリアにおいて交通情報提供センタ1からの情報収集指令が与えられる。この情報収集指令は、例えば「信号交差点Sの周辺に設定されたデータ収集開始位置Q(例えば、信号交差点Sの500m手前の位置)に差し掛かったときにプローブ情報を交通情報提供センタ1へ送信開始」という指令である。定期バス3が、情報収集指令により指定されたデータ収集開始位置Qに差し掛かったときには、搭載カメラ12によって車両前方を撮影し、撮影した画像データ、車速信号及び車両位置情報を含むプローブ情報を交通情報提供センタ1へ送信開始し、このような送信動作を例えば自車両が100m進む毎に実行する。尚、図2では、定期バス3の搭載カメラ12による撮影範囲tを模式的に示した。
【0033】
交通情報提供センタ1では、受信したプローブ情報を解析することにより道路上の渋滞発生の有無を判定し、渋滞が発生していた場合には上記定期バス3に再度プローブ情報を要求する。これにより、定期バス3側では渋滞発生エリアに係るプローブ情報を引き続き交通情報提供センタ1へ送信するようになる。また、交通情報提供センタ1側では、受信したプローブ情報に基づいて、渋滞発生エリアの道路状況を視覚的に認識可能な再生用画像情報、当該道路の位置を特定可能な道路位置情報、並びに渋滞発生エリア及びその周辺に存在する定期バス3の位置を特定可能な車両位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、作成した道路状況確認用情報をネットワーク21へ提供する。
【0034】
定期バス3の後方を走行する情報利用車両20の運転者は、渋滞発生エリアに差し掛かった場合には、前の定期バス3が邪魔になって前方の渋滞状況を把握できない状態になる。このような状態時に、当該運転者が渋滞発生エリアの状況を知りたい場合には、情報リクエスト信号の送信操作を行う。すると、渋滞発生エリアに対応した道路状況確認用情報がネットワーク21を通じてダウンロードされて、情報利用車両20の車載器24が有する表示器上で表示されるようになる。
【0035】
ここで、図3には、上記車載器24による道路状況確認用情報の表示例が示されている。即ち、車載器24のタッチパネル画面には、自車両と渋滞発生エリア周辺に位置する定期バス3との位置関係を示す概略図フレームF1が表示されると共に、定期バス3の搭載カメラ12による上下2段の撮影画像フレームF2、F3が表示され、さらに、概略図フレームF1の表示地図の拡大・縮小を行うためのアイコンI1及び当該表示地図のスクロールを行うためのアイコンI2が表示される。
【0036】
具体的には、上記概略図フレームF1には、渋滞発生エリア周辺を示す簡易道路地図上に、自車両の現在位置、渋滞発生エリア周辺に存在する定期バスA、B、C、Dの位置がアイコン表示される。つまり、渋滞発生エリア周辺に存在する定期バスA、B、C、Dの位置が、情報利用車両20の運転者に対して視覚的に報知されることになる。尚、この概略図中には、定期バスA、B、C、Dの各搭載カメラ12による撮影方向を示す形象a、b、c、dも併せて表示される。また、例えば、下段の撮影画像フレームF3には、自車両の直前の定期バス3(この例では定期バスB)の搭載カメラ12による撮影画像が表示される。また、上段の撮影画像フレームF2には、自車両の直進方向前方に他の定期バスが存在する場合のみ、当該定期バス(この場合、定期バスA)の搭載カメラ12による撮影画像が表示され、他の定期バスが存在しない場合には例えば空白とされる。
【0037】
また、例えば、情報利用車両20の運転者は、概略図フレームF1上で他の定期バスを選択する操作(概略図フレームF1上に表示された定期バスアイコンのタッチ操作)を行うことにより、渋滞発生エリア周辺に存在する任意の定期バス3の搭載カメラ12による撮影画像を撮影画像フレームF2、F3上に表示できるようになっている。
【0038】
具体的には、例えば、図3に示す概略図フレームF1上で定期バスCの選択操作が行われたときには、車載器24は、当該定期バスCの搭載カメラ12による撮影画像データを交通情報提供センタ1に要求し、これに応じて取得した画像データを、図4に示すように例えば下段の撮影画像フレームF3に表示する。従って、この具体例の場合、情報利用車両20の運転者は、定期バスCの搭載カメラ12による撮影画像データに基づいて、進行先の交差点を右折した方向では渋滞が発生していないことを確認できることになるから、必要に応じて渋滞から抜け出ることが可能になるものである。
【0039】
以上要するに、上記した交通情報提供システムによれば、情報利用車両20側では、ネットワーク21へアクセスするだけで、渋滞発生エリアに実際に存在する定期バス3によって撮影された画像データをリアルタイムに変換した再生用画像情報(渋滞発生エリアの道路状況を視覚的に認識可能な画像情報)を含む道路状況確認用情報を取得して、車載器24の表示器上で表示できることになる。つまり、道路上での実際の渋滞状況を視覚的に把握可能な道路状況確認用情報の提供を、画像データベースに一旦格納された画像データを交通利用者側の要求を受けてから配信するという従来構成に比べて迅速に行い得るようになる。また、本実施例の交通情報提供システムでは、ネットワーク21用のサーバとして機能することになるWEB提供データ作成手段10に、道路状況確認用情報のための記憶手段が必要になるが、この記憶手段には、渋滞発生が予想される画像データ収集範囲に係る道路状況確認用情報のみが記憶されることになるから、渋滞箇所以外の余分な画像データも蓄積しておく従来構成に比べて、記憶手段の容量を大幅に小さくできることになり、結果的に設備コストの高騰を来たす恐れがなくなる。
【0040】
交通情報提供センタ1に設けられたデータ解析手段9は、受信プローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった定期バス3の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定し、上記定期バス3に対して、プローブ情報を再度返信するように指示するための情報収集指令を送信する構成となっているから、渋滞発生エリアに係るプローブ情報を継続的に収集できることになり、結果的に、渋滞情報として情報利用車両20に提供される道路状況確認用信号の信頼性を高め得るようになる。
【0041】
また、定期バス3が、その出発場所(車庫)に予め設定された通信エリアにあるときに、通信手段8から当該定期バス3に対して情報収集指令を送信する動作が行われるようになっているから、定期バス3が画像データ収集範囲へ向かっている途中での情報収集指令の送信動作が不要になると共に、定期バス3側で情報収集指令を確実に受信できるようになって、当該定期バス3での情報収集(カメラ12による画像データの取得)を確実に行うことができる。
【0042】
さらに、画像データ収集範囲及びその周辺に複数台の定期バス3が存在する場合、情報利用車両20の運転者は、車載器24の表示器に表示された概略図フレームF1上で任意の定期バス3を選択する操作(概略図フレームF1上に表示された定期バスアイコンのタッチ操作)を行うことにより、選択した任意の定期バス3の搭載カメラ12による撮影画像を、表示器に表示された撮影画像フレームF2、F3上に表示できるようになっている。つまり、画像データ収集範囲及びその周辺に複数台の定期バス3が存在する場合には、情報利用車両20側で、任意の定期バス3の搭載カメラ12により撮影された画像データを確認可能となるから、その運転者は、画像データ収集範囲及びその周辺での視覚的な情報を多角的に取得できるようになる。
【0043】
また、交通情報データベース5に蓄積された交通情報、つまりデータ収集位置決定手段6において画像データ収集範囲を決定するのに必要となる交通情報が、データ解析手段9からの情報(新たな渋滞発生エリアについての情報)に基づいて常に最新のものにアップデートされることになるから、その交通情報の信頼性が向上すると共に、交通情報データベース5に必要な記録容量が無闇に大きくなる事態を未然に防止できるようになる。
【0044】
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されるものではなく、例えば以下に述べるような変形或いは拡大が可能である。
特定車両の例として定期バス3を挙げたが、タクシー、観光バス、宅配便トラックなどを特定車両とする構成も可能である。
例えば、情報利用車両20前方の見通し距離にある定期バス3との間での近距離無線通信(無線LAN、DSRCなど)により、当該定期バス3の搭載カメラ12による撮影画像を直接的に取得する構成も可能である。
【0045】
定期バス3から送信されるプローブ情報には、当該定期バス3に係る車両位置情報が含まれる構成としたが、その撮影位置を特定可能な情報(例えば情報収集指令のコマンド番号)が含まれていれば良いものである。つまり、交通情報提供センタ1から定期バス3に送信される情報収集指令には、データ収集開始位置を示す情報が含まれているから、交通情報提供センタ1側では、プローブ情報中に当該情報収集指令に係るコマンド番号が含まれていれば、撮影位置の特定が可能になる。
定期バス3の車載端末15と交通情報提供センタ1との間の通信が不通となった場合には、車載端末15側で送信待ちプローブ情報を一時的に未送信履歴として保持し、通信可能になった時点で未送信履歴中のプローブ情報を送信する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例を示す交通情報提供システムの機能ブロック図
【図2】交通情報提供システムの基本機能を説明するためのイメージ図
【図3】道路状況確認用情報の表示例を示す図その1
【図4】道路状況確認用情報の表示例を示す図その2
【符号の説明】
【0047】
1は交通情報提供センタ、2は制御ユニット、3は定期バス(特定車両)、4は車両管理データベース、5は交通情報データベース(履歴情報記録手段)、6はデータ収集位置決定手段(情報収集範囲決定手段)、7はデータ収集車両決定手段、8は通信手段、9はデータ解析手段(情報提供手段)、10はWEB提供データ作成手段(情報提供手段)、12はカメラ(撮影機器)、13は情報表示器(報知手段及び表示手段)、14は位置検出器、15は車載端末、18は主制御部、20は情報利用車両(第三者車両)、21はネットワーク、24は車載器(報知手段、表示手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通情報を解析することにより渋滞発生が予想されるエリアを画像データ収集範囲として決定する情報収集範囲決定手段と、
撮影機器及び通信機器を搭載した複数の車両のうち前記画像データ収集範囲を走行する特定車両に対して、当該画像データ収集範囲での道路状況を前記撮影機器により撮影するように指示するための情報収集指令を送信する通信手段と、
前記特定車両に搭載され、前記通信機器を通じて受信した情報収集指令により指示される画像データ収集範囲を走行する際に前記撮影機器により車両前方を撮影すると共に、撮影した画像データを、その撮影位置を特定可能な形態のプローブ情報として前記通信手段へ返信する車載端末と、
前記通信手段を通じて受信したプローブ情報を解析することにより前記画像データ収集範囲に対応した道路の状況を視覚的に確認可能な再生用画像情報及び当該道路の位置を特定可能な位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、その道路状況確認用情報を第三者車両からアクセス可能なネットワークへ提供する情報提供手段と、
を備えたことを特徴とする交通情報提供システム。
【請求項2】
前記情報提供手段は、前記通信手段を通じて受信したプローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった特定車両の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定し、上記特定車両に対して、画像データを含むプローブ情報を再度返信するように指示するための情報収集指令を前記通信手段から送信することを特徴とする請求項1記載の交通情報提供システム。
【請求項3】
前記情報収集範囲決定手段での解析に供する交通情報を蓄積した履歴情報記録手段を備えた上で、
前記情報提供手段は、前記通信手段を通じて受信したプローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった特定車両の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定するように構成され、
前記履歴情報記録手段に蓄積された交通情報は、前記情報提供手段により新たな渋滞発生エリアが認定される毎にアップデートされることを特徴とする請求項1または2記載の交通情報提供システム。
【請求項4】
前記特定車両の出発場所には通信エリアが予め設定され、前記通信手段は、前記特定車両が通信エリア内にあるときに当該特定車両に対して前記情報収集指令を送信することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の交通情報提供システム。
【請求項5】
前記情報提供手段は、前記画像データ収集範囲及びその周辺に存在する前記特定車両の位置を示す車両位置情報、並びに当該特定車両に搭載された撮影機器により撮影された画像データを前記ネットワークへ提供するように構成され、
前記第三者車両には、前記ネットワークから取得した前記車両位置情報に基づいて前記特定車両の位置を報知可能な報知手段と、この報知手段により報知された特定車両を指定する操作に応じて当該特定車両に搭載された撮影機器により撮影された画像データを前記ネットワークからダウンロードして再生表示する表示手段とが搭載されることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の交通情報提供システム。
【請求項6】
撮影機器及び通信機器を搭載した複数の車両との間で当該通信機器を介して通信可能に設けられた交通情報提供センタにおいて、
交通情報を解析することにより渋滞発生が予想されるエリアを画像データ収集範囲として決定する情報収集範囲決定手段と、
前記複数の車両のうち前記画像データ収集範囲を走行する特定車両に対して、車両前方を前記撮影機器により撮影し、且つ撮影した画像データを前記通信機器を介して返信するように指示するための情報収集指令を送信すると共に、その車両側から返信される画像データを、その撮影位置を特定可能な形態で受信する通信手段と、
この通信手段を通じて受信した画像データ及び当該画像データの送信源となった特定車両の位置を解析することにより前記画像データ収集範囲に対応した道路の状況を視覚的に確認可能な再生用画像情報及び当該道路の位置を特定可能な位置情報を含む道路状況確認用情報をリアルタイムに作成すると共に、その道路状況確認用情報を第三者車両からアクセス可能なネットワークへ提供する情報提供手段と、
を備えたことを特徴とする交通情報提供センタ。
【請求項7】
前記情報提供手段は、前記通信手段を通じて受信したプローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった特定車両の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定し、上記特定車両に対して、画像データを含むプローブ情報を再度返信するように指示するための情報収集指令を前記通信手段から送信することを特徴とする請求項6記載の交通情報提供センタ。
【請求項8】
前記情報収集範囲決定手段での解析に供する交通情報を蓄積した履歴情報記録手段を備えた上で、
前記情報提供手段は、前記通信手段を通じて受信したプローブ情報を解析することにより、当該プローブ情報の送信源となった特定車両の走行域の渋滞度を判定し、判定した渋滞度が予め決められたしきい値より大きい場合には、その走行域を渋滞発生エリアと認定するように構成され、
前記履歴情報記録手段に蓄積された交通情報は、前記情報提供手段により新たな渋滞発生エリアが認定される毎にアップデートされることを特徴とする請求項6または7記載の交通情報提供センタ。
【請求項9】
請求項6ないし8の何れかに記載の交通情報提供センタから送信される情報収集指令を受信する通信機器と、
少なくとも車両前方を撮影可能な撮影機器と、
前記通信機器により受信した情報収集指令の解析結果に基づいて自車両が前記画像データ収集範囲を走行中の期間に前記撮影機器により車両前方を撮影させる動作制御手段と、
前記撮影機器により撮影された画像データを、その撮影位置を特定可能な形態で前記交通情報提供センタへ返信する応答手段と、
を備えたことを特徴とする車載用情報収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−221537(P2006−221537A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36331(P2005−36331)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】