仕上材、仕上面施工方法、床、および、壁
【課題】耐久性や清潔性を確保できて、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できる上、作業性を向上できるとともに、表面の防錆性や防食性を確保できるようにすること。
【解決手段】
本発明の仕上材1は、表面10Aが仕上面となる薄肉チタンシート10と、薄肉チタンシート10の裏面10B側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材12とを備える。薄肉チタンシート10は、耐薬品性や、耐熱衝撃性、耐摩耗性に加えて防錆性および防食性を有し高耐久性を有する。裏打用ボード材12は、一定以上の強度を有する。
【解決手段】
本発明の仕上材1は、表面10Aが仕上面となる薄肉チタンシート10と、薄肉チタンシート10の裏面10B側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材12とを備える。薄肉チタンシート10は、耐薬品性や、耐熱衝撃性、耐摩耗性に加えて防錆性および防食性を有し高耐久性を有する。裏打用ボード材12は、一定以上の強度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上材、仕上面施工方法、床、および、壁に関し、特に、耐久性や清潔性を確保でき、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できた上で、作業性を向上できるとともに表面の防錆性や防食性を確保できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場等では清潔性が要求されることから、熱湯や洗浄剤(次亜塩素酸ソーダや苛性ソーダ、塩酸など)等により、床面や生産設備等の洗浄が頻繁に行われる。また、製品等を運搬するためにフォークリフトやハンドリフタが床上を走行している。このような熱や薬剤等による劣化や、フォークリフト等の走行による損傷や劣化を防止するために、従来より、床仕上として、エポキシ樹脂等の樹脂を用いたレジンモルタル仕上げや、FRP仕上げ、ステンレス直張り仕上げ、ステンレス打込PC板敷き込み仕上げが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−160990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レジンモルタル仕上げやFRP仕上げの場合には、前述した劣化作用に対して十分な耐久性を有していないため、比較的短期間で劣化・損傷するという問題がある。そして、コンクリート製の床にレジンモルタル仕上げやFRP仕上げを施工する場合には、下地となるコンクリートにひび割れが生じると、このひび割れに追従してレジンモルタル仕上げやFRP仕上げにもひび割れが生じ、このひび割れ部分に塵埃等が堆積して清潔性を損なうという問題もある。また、床仕上材を構成する樹脂には特有の臭いがあるため、臭いが食品等へ移行することも懸念される。
【0005】
また、ステンレス直張り仕上げの場合には、レジンモルタル仕上げやFRP仕上げに比べて、耐久性や清潔性に優れるとともに特異臭の発生を防止できるものの、一般に、厚みが3〜5mm程度のステンレス板を使用して、このステンレス板をコンクリート製の床面と同じレベル位置に設置された鋼材にアンカーピン等で固定し、ステンレス板同士を突き合わせて溶接接合するため、下地となるコンクリート面を高精度に仕上げる必要があって仕上げ作業が煩雑になるという問題がある。さらに、ステンレスそのものが食塩等の塩素化合物の作用で錆びつくという問題もある。また、ステンレス打込PC板敷き込み仕上げの場合においても、前記ステンレス直張り仕上げの場合とほぼ同様の問題を抱えている。なお、このような問題は、床仕上材に限らず、例えば、壁面等の他の仕上材においても同様に発生している。
【0006】
本発明の目的は、耐久性や清潔性を確保できて、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できる上、作業性を向上できるとともに、表面の防錆性や防食性を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る仕上材は、防錆性および防食性の少なくともいずれかを有し、表面が仕上面となる金属製シートと、この金属製シートの裏面側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、金属製シートを構成する金属としては、防錆性および防食性の少なくともいずれかを有するチタンや銅、ステンレス等が含まれ、防錆性および防食性のいずれをも有しない鉄やステンレスは含まれない。また、裏打用ボード材としては、例えば、フレキシブルボードや、セメント系ボード、プラスチック製ボード、木製ボード等を採用でき、少なくとも、裏打ち材として一定以上の強度があればよい。また、本仕上材は、床仕上げ用や、壁仕上げ用、側溝仕上げ用等として利用できる。
【0009】
また、本発明に係る仕上面施工方法は、上記の仕上材を、床や壁等の表面に貼り付けて仕上面を施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性や清潔性を確保でき、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できる上、作業性を向上できるとともに、表面の防錆性や防食性を確保できる。また、金属製シートと裏打用ボード材とを面状ファスナーで取り付けているので、信頼性の向上や作業性の向上が図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る仕上材を含む仕上構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第3変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第4変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第5変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第6変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図8】本発明の第7変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図9】本発明の第8変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図10】本発明の第9変形例に係る仕上材を入隅部に適用した縦断面図である。
【図11】本発明の第10変形例に係る仕上材を入隅部に適用した縦断面図である。
【図12】本発明の実施例に用いた熱冷試験装置を示す模式図である。
【図13】前記実施例における熱冷繰り返し試験の測定条件を示す図である。
【図14】前記実施例における付着力測定試験の様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る仕上材、およびこの仕上材を用いた仕上構造について説明する。図1は、本実施形態に係る仕上材1を含む仕上構造2を示す縦断面図である。図1に示すように、仕上構造2では、パネル状に形成された複数枚の仕上材1がコンクリート製の床3に取り付けられている。各仕上材1は、表面10Aが仕上面となる金属製シートとしての薄肉チタンシート10と、薄肉チタンシート10の裏面10B側に、接着剤14により一体的に取り付けられる裏打用ボード材12とを備えている。
【0013】
薄肉チタンシート10は、耐薬品性や、耐熱衝撃性、耐摩耗性に加えて防錆性および防食性にも優れ、高耐久性を有している。薄肉チタンシート10としては、例えば、厚みが0.3mm程度(0.1mm〜0.5mmなど)のものを採用できる。また、図1に示すように、薄肉チタンシート10の端縁10Xが裏打用ボード材12の小口12X側まで曲折し、この曲折した端縁10Xと小口12Xとが離隔し、空隙13が形成されている。
【0014】
なお、薄肉チタンシート10の表面10Aは、平滑面や、滑り防止用のエンボス加工が施されたエンボス面等にできる。また、薄肉チタンシート10の代わりに、銅製のシートや防錆性および防食性の少なくともいずれかを有する薄肉ステンレスシートを採用してもよい。
【0015】
裏打用ボード材12は、フレキシブルボードや、セメント系ボード、プラスチック製ボード、木製ボード等を採用でき、少なくとも裏打ち材として一定以上の強度を有している。裏打用ボード材12の厚みは、例えば3mm〜10mm程度とすることができる。具体的には、裏打用ボード材12として、パワロンボード(商品名:株式会社クラレ製)やスムースボード(商品名:株式会社大林組製)等を採用できる。
【0016】
接着剤14は、低臭または無臭タイプのウレタン樹脂やエポキシ樹脂系のものを好適に採用でき、薄肉チタンシート10および裏打用ボード材12の接着性に優れたものが好ましい。
【0017】
次に、仕上構造2の施工方法(仕上面施工方法)について説明する。
まず、コンクリート製の床3の表面3Aの予め墨出した位置に面状ファスナー16を取り付ける。次に、図1に示すように、仕上材1を構成する裏打用ボード材12の裏面12B側の外周に沿って前記面状ファスナー16に接合する面状ファスナー17を取り付け、この面状ファスナー17で囲まれる内側部分に接着剤18を設ける。そして、仕上材1と床3とを、面状ファスナー16,17同士の接合および接着剤18の接着力により接合する。このような作業を床3の表面3A全体に亘って実施し、複数枚の仕上材1を所定間隔で取り付ける。この際、図1に示すように、隣接する仕上材1間には目地部20が形成される。なお、目地部20の底部分には、床3の表面3Aに取り付けられた面状ファスナー16が設けられている。
【0018】
次に、目地部20に、ウレタン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂等の一般的なシーリング材としての目地材22を充填して硬化させる。この際、目地部20の面状ファスナー16の突起(ループまたはフック)に目地材22が絡み合い、耐水性や耐薬品性に優れたものとなる。また、目地材22を充填することにより、目地部20への塵埃や排水等の進入が防止される。なお、目地部20において菌類やカビ類等の発生が懸念される場合等には、目地材22に銀系等の抗菌剤を配合したものを用いてもよい。最後に、目地部20の表面を被覆するように、隣接する仕上材1間に跨って被覆材24を配置し、被覆材24を接着剤26により薄肉チタンシート10の表面10Aおよび目地材22に接着固定する。このような被覆材24としては、例えば、薄肉チタンシート10を短冊状に形成したもの等を採用できる。以上の手順により、仕上構造2を施工する。
【0019】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)仕上面としてチタンを採用したので、耐薬品性や耐熱衝撃性、耐摩耗性等の高耐久性に加えて、防錆性や防食性にも優れた仕上面を確保できる。
(2)仕上材1に樹脂等を使用しないので、樹脂特有の臭いの発生も防止できる。例えば、食品工場等に施工した場合でも、樹脂等の特異臭が食品等へ移行することを防止できる。
(3)コンクリート製の床3にひび割れが生じたとしても、このひび割れが薄肉チタンシート10には影響しないので、仕上材1表面の清潔性を確保できる。
(4)薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12とを一体的に取り付けたパネル状としたので、仕上構造2を簡単に構成でき、仕上面の施工作業の容易化を図ることができる。
(5)仕上材1の薄肉チタンシート10の厚みを0.3mm程度と小さくすることにより、仕上材1の軽量化を図ることができ、仕上面施工作業の容易化を図ることができる。また、セメント系ボード材の切断に一般的に現場で使用されるダイヤモンドカッタ等を用いて薄肉チタンシート10を容易に切断加工できるため、現場での急な対応も容易となる。
(6)薄肉チタンシート10の端縁10Xと裏打用ボード材12の小口12Xとの間に空隙13を形成したので、目地部20に目地材22を充填すると、空隙13にも目地材22が入り込むため、入り込んだ目地材22が硬化すると一種のアンカー効果が発揮され、仕上材1と目地材22との接合をより一層強固にでき、目地材22の剥がれを防止できる。
【0020】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。
【0021】
前記実施形態において、薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12とを接着剤14により一体的に取り付けたが、これに限らず、例えば、図2に示すように平ビス様のアンカーピン15等によりビス止めしてもよい。また、図3に示すように接着剤14による接着とビス止めとを併用してもよい。さらには、面状ファスナーおよび両面テープの少なくともいずれかを用いて接合してもよく、また、これらの面状ファスナーや両面テープに、前記アンカーピンや接着剤を併用してもよい。
【0022】
また、前記実施形態において、薄肉チタンシート10の端縁10Xを裏打用ボード材12の小口12X側まで曲折していたが、これに限らず、例えば、図4に示すように薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12との端部を揃えて面一としてもよい。また、薄肉チタンシート10の端縁10Xと裏打用ボード材12の小口12Xとが離隔していたが、図5に示すように当接させてもよい。さらに、図6に示すように、薄肉チタンシート10の端縁10Xを裏打用ボード材12の裏面12B側まで折り返してもよい。
【0023】
前記実施形態において、床3に対して、仕上材1の外周部分を面状ファスナー16,17で接合し、かつ仕上材1の中央部分を接着剤18で接着したが、これに限らず、例えば、図7に示すように仕上材1の裏面全体に面状ファスナー16,17および接着剤18を設け、面状ファスナー16,17および接着剤18を併用して接合してもよい。この際、面状ファスナー16,17の代わりに両面テープを採用してもよい。
【0024】
また、面状ファスナー16,17の代わりに、ガラス繊維や有機繊維(チョップドストランドマット、不織布、織布等)等の繊維を仕上材の裏面に接着剤で貼り付けておき、この接着剤が硬化した後に、仕上材を床に接合してもよい。このようにすれば、耐水性や耐薬品性を向上できるとともに、仕上材と床との接合をより一層強固にできる。なお、前記繊維は床の表面に貼り付けてもよい。
【0025】
また、床への仕上材の取り付け方法としては下記の方法を採用してもよい。すなわち、第1の方法として、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の有機系接着剤を用いて施工する方法を採用できる。この場合には、床表面の補強と有機系接着剤および床との一層の接着とを図るために、床の表面にプライマーを塗布してから、タックの無くなった後や硬化後に接着剤を塗布し、仕上材1を取り付ける方法を採用してもよいし、あるいは、プライマーを用いずに直接接着剤を塗布してもよい。また、第2の方法として、セメントモルタルやポリマーセメントモルタルを用いて施工する方法である。なお、ポリマーセメントモルタルには、エチレン酢酸ビニルや、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のポリマーのエマルジョンを採用できる。この場合には、ポリマーエマルジョンの希釈水溶液を床の表面に塗布して含浸させた後、セメントモルタル等を用いて取り付けることにより、仕上材と床との接合をより一層強固にできる。なお、この場合も、床の表面にプライマーを塗布せずに、セメントモルタル等を施工してもよい。
【0026】
前記実施形態において、目地部20の底部分に面状ファスナー16を配置し、この面状ファスナー16の上から目地材22を充填したが、これに限らず、目地部20の底部分にバッカー材を配置し、このバッカー材の上から目地材22を充填することにより、隣接する仕上材1同士を小口12Xで二面接着してもよい。
【0027】
また、前記実施形態において、被覆材24として薄肉チタンシート10を短冊状としたものを採用したが、これに限らず、例えば、図8に示すような断面T字状の被覆材25を用いて、そのT字状の突出部分25Aを目地材22中に埋め込んでもよい。この場合には、目地材22が硬化する前に被覆材25の突出部分25Aを挿入することが好ましい。このような構成によれば、被覆材25の突出部分25Aが目地材22中に埋設されるため、被覆材25の位置ずれを防止できる。
【0028】
また、前記実施形態において、目地材22と薄肉チタンシート10とを接着剤26により接合したが、両面テープを用いて接合してもよく、熱融着テープを用いて接合してもよい。また、目地材22そのものを接着剤として利用してもよく、この場合には、表面が盛り上がる程度に目地材22を多めに充填することで実施できる。
【0029】
また、図9に示すように、目地材22中に目地棒27を挿入してもよい。この場合には、目地部20の幅寸法が大きい場合であっても、目地棒27の存在により、フォークリフト等の走行時の衝撃を小さくできる。また、この目地棒27を被覆するように被覆材24を設けてもよく、この場合には目地棒27で被覆材24を支持することができる。なお、被覆材24は前述同様の変形例を適用できる。
【0030】
また、前記実施形態において、仕上材1を床3に取り付けたが、図10または図11に示すように、床3と壁100の立ち上り部分との間の入隅部102に仕上材を取り付けることもできる。例えば、図10に示すように、床3の表面3Aに接着剤で仕上材1Aを取り付け、また、壁100の表面100Aに接着剤で仕上材1Bを取り付け、これらの仕上材1A,1B間に目地材22を充填することにより、入隅部102を施工できる。なお、仕上材としては、前述同様の変形例を適用できる。
【0031】
また、図11(A)に示すように、仕上材1Cの裏打用ボード材12の略中央部に切込み104を入れ、図11(B)に示すように、この切込み104から仕上材1Cを90°に折り曲げ、入隅部102に接着剤106で接合してもよい。なお、入隅部102同様に仕上材1を用いて側溝を施工することもできる。
【0032】
なお、本発明の仕上材1は、食品工場の仕上げに限らず、薬品工場その他の建物内の仕上げにも適用できる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明について実施例を用いて、より詳細に説明する。
本実施例では、食品工場における床洗浄等において、仕上材の表面、すなわち、薄肉チタンシートの表面に熱湯水が直接接触したあと放冷される場合を想定して、薄肉チタンシートおよび裏打用ボード材を接着する接着剤の耐久性を確認する試験を実施した。具体的には、下記構成の仕上材を用いて、熱冷繰り返し試験と付着力測定試験とを実施した。
【0034】
(A)試験対象Xである仕上材の構成
・薄肉チタンシート:厚み0.3mm、平板状
・裏打用ボード材:市販のフレキシブルボード、厚み5mm
・薄肉チタンシートおよび裏打用ボード材の接着剤:ウレタン樹脂系(Derfit U 8M105、コグニスジャパン株式会社製)、塗布量545〜590g/m2
【0035】
(B)熱冷繰り返し試験
図12は、熱冷を繰り返すための熱冷試験装置200を示す図である。熱冷試験装置200を用いて、タイマー210のON/OFFを行って、試験対象Xから高さhだけ離した位置のランプ220を点灯/消灯させることにより、下記条件となる熱冷繰り返し試験(試験B1、試験B2)を実施した。
<試験B1>
図13に示すように、室温から60℃まで12分間かけて温度を上昇させてから(加熱)、60℃で3分間保持した後、60℃から23℃まで60分間かけて温度を降下させる(放冷)75分間のサイクルを、300サイクル繰り返し実施した。
<試験B2>
図13に示すように、室温から80℃まで12分間かけて温度を上昇させてから(加熱)、80℃で3分間保持した後、80℃から23℃まで60分間かけて温度を降下させる(放冷)75分間のサイクルを、300サイクル繰り返し実施した。
【0036】
(C)付着力測定試験
<試験C1>
図14に示すように、仕上材300の表面にウレタン樹脂系接着剤302(具体的には、Derfit U 8M105、コグニスジャパン株式会社製)、塗布量545〜590g/m2で鋼製アタッチメント304(40mm角)を接着してから、接着剤302を硬化させた。次に、図14(A)に示すように、薄肉チタンシート310に裏打用ボード材320の表面まで達する切込み310Aを入れた。このような試験対象X(X1)に対して、前記熱冷繰り返し試験の試験B1並びに試験B2を実施した場合(結果2,結果3)、および、実施しなかった場合(結果1)について、建研式接着力試験器により付着力を測定した。
<試験C2>
図14(B)に示すように、仕上材300の表面にウレタン樹脂系接着剤302で鋼製アタッチメント304を接着し接着剤302を硬化させた後、このウレタン樹脂系接着剤302のみに切込み302Aを入れた。この試験対象X(X2)に対して、熱冷繰り返し試験を実施せずに建研式接着力試験器により付着力を測定した(結果4)。
【0037】
(D)試験結果
前記付着力測定試験における接着力の結果と、その破断部位とを表1に示した。
【0038】
この表1に示すように、熱冷の有無に関わらず、薄肉チタンシート310と裏打用ボード材320との接着力には変化がなかった。この際、破断部位にも変化がなかった。従って、本仕上材を食品工場等の床等に使用した場合でも、接着剤が十分な接着耐久性を保持していることが判明した。
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1(1A〜1C),300 仕上材
2 仕上構造
3 床
3A 表面
10,310 薄肉チタンシート(金属製シート)
10A 表面(仕上面)
10B 裏面
10X 端縁
12,320 裏打用ボード材
12B 裏面
12X 小口
14,18,26,106 接着剤
16,17 面状ファスナー
20 目地部
22 目地材
24,25 被覆材
100 壁
100A 表面
302 ウレタン樹脂系接着剤
304 鋼製アタッチメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上材、仕上面施工方法、床、および、壁に関し、特に、耐久性や清潔性を確保でき、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できた上で、作業性を向上できるとともに表面の防錆性や防食性を確保できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場等では清潔性が要求されることから、熱湯や洗浄剤(次亜塩素酸ソーダや苛性ソーダ、塩酸など)等により、床面や生産設備等の洗浄が頻繁に行われる。また、製品等を運搬するためにフォークリフトやハンドリフタが床上を走行している。このような熱や薬剤等による劣化や、フォークリフト等の走行による損傷や劣化を防止するために、従来より、床仕上として、エポキシ樹脂等の樹脂を用いたレジンモルタル仕上げや、FRP仕上げ、ステンレス直張り仕上げ、ステンレス打込PC板敷き込み仕上げが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−160990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レジンモルタル仕上げやFRP仕上げの場合には、前述した劣化作用に対して十分な耐久性を有していないため、比較的短期間で劣化・損傷するという問題がある。そして、コンクリート製の床にレジンモルタル仕上げやFRP仕上げを施工する場合には、下地となるコンクリートにひび割れが生じると、このひび割れに追従してレジンモルタル仕上げやFRP仕上げにもひび割れが生じ、このひび割れ部分に塵埃等が堆積して清潔性を損なうという問題もある。また、床仕上材を構成する樹脂には特有の臭いがあるため、臭いが食品等へ移行することも懸念される。
【0005】
また、ステンレス直張り仕上げの場合には、レジンモルタル仕上げやFRP仕上げに比べて、耐久性や清潔性に優れるとともに特異臭の発生を防止できるものの、一般に、厚みが3〜5mm程度のステンレス板を使用して、このステンレス板をコンクリート製の床面と同じレベル位置に設置された鋼材にアンカーピン等で固定し、ステンレス板同士を突き合わせて溶接接合するため、下地となるコンクリート面を高精度に仕上げる必要があって仕上げ作業が煩雑になるという問題がある。さらに、ステンレスそのものが食塩等の塩素化合物の作用で錆びつくという問題もある。また、ステンレス打込PC板敷き込み仕上げの場合においても、前記ステンレス直張り仕上げの場合とほぼ同様の問題を抱えている。なお、このような問題は、床仕上材に限らず、例えば、壁面等の他の仕上材においても同様に発生している。
【0006】
本発明の目的は、耐久性や清潔性を確保できて、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できる上、作業性を向上できるとともに、表面の防錆性や防食性を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る仕上材は、防錆性および防食性の少なくともいずれかを有し、表面が仕上面となる金属製シートと、この金属製シートの裏面側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、金属製シートを構成する金属としては、防錆性および防食性の少なくともいずれかを有するチタンや銅、ステンレス等が含まれ、防錆性および防食性のいずれをも有しない鉄やステンレスは含まれない。また、裏打用ボード材としては、例えば、フレキシブルボードや、セメント系ボード、プラスチック製ボード、木製ボード等を採用でき、少なくとも、裏打ち材として一定以上の強度があればよい。また、本仕上材は、床仕上げ用や、壁仕上げ用、側溝仕上げ用等として利用できる。
【0009】
また、本発明に係る仕上面施工方法は、上記の仕上材を、床や壁等の表面に貼り付けて仕上面を施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性や清潔性を確保でき、かつ樹脂特有の臭いの発生を防止できる上、作業性を向上できるとともに、表面の防錆性や防食性を確保できる。また、金属製シートと裏打用ボード材とを面状ファスナーで取り付けているので、信頼性の向上や作業性の向上が図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る仕上材を含む仕上構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第3変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第4変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第5変形例に係る仕上材を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第6変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図8】本発明の第7変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図9】本発明の第8変形例に係る仕上面施工方法を説明する縦断面図である。
【図10】本発明の第9変形例に係る仕上材を入隅部に適用した縦断面図である。
【図11】本発明の第10変形例に係る仕上材を入隅部に適用した縦断面図である。
【図12】本発明の実施例に用いた熱冷試験装置を示す模式図である。
【図13】前記実施例における熱冷繰り返し試験の測定条件を示す図である。
【図14】前記実施例における付着力測定試験の様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る仕上材、およびこの仕上材を用いた仕上構造について説明する。図1は、本実施形態に係る仕上材1を含む仕上構造2を示す縦断面図である。図1に示すように、仕上構造2では、パネル状に形成された複数枚の仕上材1がコンクリート製の床3に取り付けられている。各仕上材1は、表面10Aが仕上面となる金属製シートとしての薄肉チタンシート10と、薄肉チタンシート10の裏面10B側に、接着剤14により一体的に取り付けられる裏打用ボード材12とを備えている。
【0013】
薄肉チタンシート10は、耐薬品性や、耐熱衝撃性、耐摩耗性に加えて防錆性および防食性にも優れ、高耐久性を有している。薄肉チタンシート10としては、例えば、厚みが0.3mm程度(0.1mm〜0.5mmなど)のものを採用できる。また、図1に示すように、薄肉チタンシート10の端縁10Xが裏打用ボード材12の小口12X側まで曲折し、この曲折した端縁10Xと小口12Xとが離隔し、空隙13が形成されている。
【0014】
なお、薄肉チタンシート10の表面10Aは、平滑面や、滑り防止用のエンボス加工が施されたエンボス面等にできる。また、薄肉チタンシート10の代わりに、銅製のシートや防錆性および防食性の少なくともいずれかを有する薄肉ステンレスシートを採用してもよい。
【0015】
裏打用ボード材12は、フレキシブルボードや、セメント系ボード、プラスチック製ボード、木製ボード等を採用でき、少なくとも裏打ち材として一定以上の強度を有している。裏打用ボード材12の厚みは、例えば3mm〜10mm程度とすることができる。具体的には、裏打用ボード材12として、パワロンボード(商品名:株式会社クラレ製)やスムースボード(商品名:株式会社大林組製)等を採用できる。
【0016】
接着剤14は、低臭または無臭タイプのウレタン樹脂やエポキシ樹脂系のものを好適に採用でき、薄肉チタンシート10および裏打用ボード材12の接着性に優れたものが好ましい。
【0017】
次に、仕上構造2の施工方法(仕上面施工方法)について説明する。
まず、コンクリート製の床3の表面3Aの予め墨出した位置に面状ファスナー16を取り付ける。次に、図1に示すように、仕上材1を構成する裏打用ボード材12の裏面12B側の外周に沿って前記面状ファスナー16に接合する面状ファスナー17を取り付け、この面状ファスナー17で囲まれる内側部分に接着剤18を設ける。そして、仕上材1と床3とを、面状ファスナー16,17同士の接合および接着剤18の接着力により接合する。このような作業を床3の表面3A全体に亘って実施し、複数枚の仕上材1を所定間隔で取り付ける。この際、図1に示すように、隣接する仕上材1間には目地部20が形成される。なお、目地部20の底部分には、床3の表面3Aに取り付けられた面状ファスナー16が設けられている。
【0018】
次に、目地部20に、ウレタン樹脂やシリコーン変性エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂等の一般的なシーリング材としての目地材22を充填して硬化させる。この際、目地部20の面状ファスナー16の突起(ループまたはフック)に目地材22が絡み合い、耐水性や耐薬品性に優れたものとなる。また、目地材22を充填することにより、目地部20への塵埃や排水等の進入が防止される。なお、目地部20において菌類やカビ類等の発生が懸念される場合等には、目地材22に銀系等の抗菌剤を配合したものを用いてもよい。最後に、目地部20の表面を被覆するように、隣接する仕上材1間に跨って被覆材24を配置し、被覆材24を接着剤26により薄肉チタンシート10の表面10Aおよび目地材22に接着固定する。このような被覆材24としては、例えば、薄肉チタンシート10を短冊状に形成したもの等を採用できる。以上の手順により、仕上構造2を施工する。
【0019】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)仕上面としてチタンを採用したので、耐薬品性や耐熱衝撃性、耐摩耗性等の高耐久性に加えて、防錆性や防食性にも優れた仕上面を確保できる。
(2)仕上材1に樹脂等を使用しないので、樹脂特有の臭いの発生も防止できる。例えば、食品工場等に施工した場合でも、樹脂等の特異臭が食品等へ移行することを防止できる。
(3)コンクリート製の床3にひび割れが生じたとしても、このひび割れが薄肉チタンシート10には影響しないので、仕上材1表面の清潔性を確保できる。
(4)薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12とを一体的に取り付けたパネル状としたので、仕上構造2を簡単に構成でき、仕上面の施工作業の容易化を図ることができる。
(5)仕上材1の薄肉チタンシート10の厚みを0.3mm程度と小さくすることにより、仕上材1の軽量化を図ることができ、仕上面施工作業の容易化を図ることができる。また、セメント系ボード材の切断に一般的に現場で使用されるダイヤモンドカッタ等を用いて薄肉チタンシート10を容易に切断加工できるため、現場での急な対応も容易となる。
(6)薄肉チタンシート10の端縁10Xと裏打用ボード材12の小口12Xとの間に空隙13を形成したので、目地部20に目地材22を充填すると、空隙13にも目地材22が入り込むため、入り込んだ目地材22が硬化すると一種のアンカー効果が発揮され、仕上材1と目地材22との接合をより一層強固にでき、目地材22の剥がれを防止できる。
【0020】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。
【0021】
前記実施形態において、薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12とを接着剤14により一体的に取り付けたが、これに限らず、例えば、図2に示すように平ビス様のアンカーピン15等によりビス止めしてもよい。また、図3に示すように接着剤14による接着とビス止めとを併用してもよい。さらには、面状ファスナーおよび両面テープの少なくともいずれかを用いて接合してもよく、また、これらの面状ファスナーや両面テープに、前記アンカーピンや接着剤を併用してもよい。
【0022】
また、前記実施形態において、薄肉チタンシート10の端縁10Xを裏打用ボード材12の小口12X側まで曲折していたが、これに限らず、例えば、図4に示すように薄肉チタンシート10と裏打用ボード材12との端部を揃えて面一としてもよい。また、薄肉チタンシート10の端縁10Xと裏打用ボード材12の小口12Xとが離隔していたが、図5に示すように当接させてもよい。さらに、図6に示すように、薄肉チタンシート10の端縁10Xを裏打用ボード材12の裏面12B側まで折り返してもよい。
【0023】
前記実施形態において、床3に対して、仕上材1の外周部分を面状ファスナー16,17で接合し、かつ仕上材1の中央部分を接着剤18で接着したが、これに限らず、例えば、図7に示すように仕上材1の裏面全体に面状ファスナー16,17および接着剤18を設け、面状ファスナー16,17および接着剤18を併用して接合してもよい。この際、面状ファスナー16,17の代わりに両面テープを採用してもよい。
【0024】
また、面状ファスナー16,17の代わりに、ガラス繊維や有機繊維(チョップドストランドマット、不織布、織布等)等の繊維を仕上材の裏面に接着剤で貼り付けておき、この接着剤が硬化した後に、仕上材を床に接合してもよい。このようにすれば、耐水性や耐薬品性を向上できるとともに、仕上材と床との接合をより一層強固にできる。なお、前記繊維は床の表面に貼り付けてもよい。
【0025】
また、床への仕上材の取り付け方法としては下記の方法を採用してもよい。すなわち、第1の方法として、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の有機系接着剤を用いて施工する方法を採用できる。この場合には、床表面の補強と有機系接着剤および床との一層の接着とを図るために、床の表面にプライマーを塗布してから、タックの無くなった後や硬化後に接着剤を塗布し、仕上材1を取り付ける方法を採用してもよいし、あるいは、プライマーを用いずに直接接着剤を塗布してもよい。また、第2の方法として、セメントモルタルやポリマーセメントモルタルを用いて施工する方法である。なお、ポリマーセメントモルタルには、エチレン酢酸ビニルや、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のポリマーのエマルジョンを採用できる。この場合には、ポリマーエマルジョンの希釈水溶液を床の表面に塗布して含浸させた後、セメントモルタル等を用いて取り付けることにより、仕上材と床との接合をより一層強固にできる。なお、この場合も、床の表面にプライマーを塗布せずに、セメントモルタル等を施工してもよい。
【0026】
前記実施形態において、目地部20の底部分に面状ファスナー16を配置し、この面状ファスナー16の上から目地材22を充填したが、これに限らず、目地部20の底部分にバッカー材を配置し、このバッカー材の上から目地材22を充填することにより、隣接する仕上材1同士を小口12Xで二面接着してもよい。
【0027】
また、前記実施形態において、被覆材24として薄肉チタンシート10を短冊状としたものを採用したが、これに限らず、例えば、図8に示すような断面T字状の被覆材25を用いて、そのT字状の突出部分25Aを目地材22中に埋め込んでもよい。この場合には、目地材22が硬化する前に被覆材25の突出部分25Aを挿入することが好ましい。このような構成によれば、被覆材25の突出部分25Aが目地材22中に埋設されるため、被覆材25の位置ずれを防止できる。
【0028】
また、前記実施形態において、目地材22と薄肉チタンシート10とを接着剤26により接合したが、両面テープを用いて接合してもよく、熱融着テープを用いて接合してもよい。また、目地材22そのものを接着剤として利用してもよく、この場合には、表面が盛り上がる程度に目地材22を多めに充填することで実施できる。
【0029】
また、図9に示すように、目地材22中に目地棒27を挿入してもよい。この場合には、目地部20の幅寸法が大きい場合であっても、目地棒27の存在により、フォークリフト等の走行時の衝撃を小さくできる。また、この目地棒27を被覆するように被覆材24を設けてもよく、この場合には目地棒27で被覆材24を支持することができる。なお、被覆材24は前述同様の変形例を適用できる。
【0030】
また、前記実施形態において、仕上材1を床3に取り付けたが、図10または図11に示すように、床3と壁100の立ち上り部分との間の入隅部102に仕上材を取り付けることもできる。例えば、図10に示すように、床3の表面3Aに接着剤で仕上材1Aを取り付け、また、壁100の表面100Aに接着剤で仕上材1Bを取り付け、これらの仕上材1A,1B間に目地材22を充填することにより、入隅部102を施工できる。なお、仕上材としては、前述同様の変形例を適用できる。
【0031】
また、図11(A)に示すように、仕上材1Cの裏打用ボード材12の略中央部に切込み104を入れ、図11(B)に示すように、この切込み104から仕上材1Cを90°に折り曲げ、入隅部102に接着剤106で接合してもよい。なお、入隅部102同様に仕上材1を用いて側溝を施工することもできる。
【0032】
なお、本発明の仕上材1は、食品工場の仕上げに限らず、薬品工場その他の建物内の仕上げにも適用できる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明について実施例を用いて、より詳細に説明する。
本実施例では、食品工場における床洗浄等において、仕上材の表面、すなわち、薄肉チタンシートの表面に熱湯水が直接接触したあと放冷される場合を想定して、薄肉チタンシートおよび裏打用ボード材を接着する接着剤の耐久性を確認する試験を実施した。具体的には、下記構成の仕上材を用いて、熱冷繰り返し試験と付着力測定試験とを実施した。
【0034】
(A)試験対象Xである仕上材の構成
・薄肉チタンシート:厚み0.3mm、平板状
・裏打用ボード材:市販のフレキシブルボード、厚み5mm
・薄肉チタンシートおよび裏打用ボード材の接着剤:ウレタン樹脂系(Derfit U 8M105、コグニスジャパン株式会社製)、塗布量545〜590g/m2
【0035】
(B)熱冷繰り返し試験
図12は、熱冷を繰り返すための熱冷試験装置200を示す図である。熱冷試験装置200を用いて、タイマー210のON/OFFを行って、試験対象Xから高さhだけ離した位置のランプ220を点灯/消灯させることにより、下記条件となる熱冷繰り返し試験(試験B1、試験B2)を実施した。
<試験B1>
図13に示すように、室温から60℃まで12分間かけて温度を上昇させてから(加熱)、60℃で3分間保持した後、60℃から23℃まで60分間かけて温度を降下させる(放冷)75分間のサイクルを、300サイクル繰り返し実施した。
<試験B2>
図13に示すように、室温から80℃まで12分間かけて温度を上昇させてから(加熱)、80℃で3分間保持した後、80℃から23℃まで60分間かけて温度を降下させる(放冷)75分間のサイクルを、300サイクル繰り返し実施した。
【0036】
(C)付着力測定試験
<試験C1>
図14に示すように、仕上材300の表面にウレタン樹脂系接着剤302(具体的には、Derfit U 8M105、コグニスジャパン株式会社製)、塗布量545〜590g/m2で鋼製アタッチメント304(40mm角)を接着してから、接着剤302を硬化させた。次に、図14(A)に示すように、薄肉チタンシート310に裏打用ボード材320の表面まで達する切込み310Aを入れた。このような試験対象X(X1)に対して、前記熱冷繰り返し試験の試験B1並びに試験B2を実施した場合(結果2,結果3)、および、実施しなかった場合(結果1)について、建研式接着力試験器により付着力を測定した。
<試験C2>
図14(B)に示すように、仕上材300の表面にウレタン樹脂系接着剤302で鋼製アタッチメント304を接着し接着剤302を硬化させた後、このウレタン樹脂系接着剤302のみに切込み302Aを入れた。この試験対象X(X2)に対して、熱冷繰り返し試験を実施せずに建研式接着力試験器により付着力を測定した(結果4)。
【0037】
(D)試験結果
前記付着力測定試験における接着力の結果と、その破断部位とを表1に示した。
【0038】
この表1に示すように、熱冷の有無に関わらず、薄肉チタンシート310と裏打用ボード材320との接着力には変化がなかった。この際、破断部位にも変化がなかった。従って、本仕上材を食品工場等の床等に使用した場合でも、接着剤が十分な接着耐久性を保持していることが判明した。
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1(1A〜1C),300 仕上材
2 仕上構造
3 床
3A 表面
10,310 薄肉チタンシート(金属製シート)
10A 表面(仕上面)
10B 裏面
10X 端縁
12,320 裏打用ボード材
12B 裏面
12X 小口
14,18,26,106 接着剤
16,17 面状ファスナー
20 目地部
22 目地材
24,25 被覆材
100 壁
100A 表面
302 ウレタン樹脂系接着剤
304 鋼製アタッチメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆性および防食性の少なくともいずれかを有し、表面が仕上面となる金属製シートと、この金属製シートの裏面側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材とを備えることを特徴とする仕上材。
【請求項2】
請求項1に記載の仕上材を、床や壁等の表面に貼り付けて仕上面を施工することを特徴とする仕上面施工方法。
【請求項3】
前記床や前記壁等の表面に、面状ファスナーを用いて前記仕上材を貼り付けたことを特徴とする請求項2に記載の仕上面施工方法。
【請求項4】
床や壁等の表面に前記仕上材を複数個貼り付け、これらの仕上材間の目地部分に目地材を充填することを特徴とする請求項2又は3に記載の仕上面施工方法。
【請求項5】
前記目地部分に目地材を充填した後、この目地材の中に目地棒を挿入することを特徴とする請求項4に記載の仕上面施工方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の仕上面施工方法により施工されていることを特徴とする床。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の仕上面施工方法により施工されていることを特徴とする壁。
【請求項1】
防錆性および防食性の少なくともいずれかを有し、表面が仕上面となる金属製シートと、この金属製シートの裏面側に、面状ファスナーによって一体的に取り付けられる裏打用ボード材とを備えることを特徴とする仕上材。
【請求項2】
請求項1に記載の仕上材を、床や壁等の表面に貼り付けて仕上面を施工することを特徴とする仕上面施工方法。
【請求項3】
前記床や前記壁等の表面に、面状ファスナーを用いて前記仕上材を貼り付けたことを特徴とする請求項2に記載の仕上面施工方法。
【請求項4】
床や壁等の表面に前記仕上材を複数個貼り付け、これらの仕上材間の目地部分に目地材を充填することを特徴とする請求項2又は3に記載の仕上面施工方法。
【請求項5】
前記目地部分に目地材を充填した後、この目地材の中に目地棒を挿入することを特徴とする請求項4に記載の仕上面施工方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の仕上面施工方法により施工されていることを特徴とする床。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の仕上面施工方法により施工されていることを特徴とする壁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−133201(P2009−133201A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72302(P2009−72302)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【分割の表示】特願2004−68048(P2004−68048)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【分割の表示】特願2004−68048(P2004−68048)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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