仰角測定能力を持つレーダシステム
自動車の周辺検出用レーダシステムであって、1つ又は複数の送信アンテナにより送信信号を放射する送信手段、物体において反射される送信信号を1つ又は複数の受信アンテナにより受信する受信手段、及び受信した信号を処理する信号処理手段を有するものにおいて、送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得され、各組合わせに、基準点からそれぞれの送信アンテナ及びそれぞれの受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される相対位相中心が対応せしめられ、その際使用される送信アンテナ及び受信アンテナが、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して異なっていてもよく、空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して、相対位相中心の位置に関して空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの列が考察される時、送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Pで周期的に変化し、物体の受信信号が、空間方向Sにおけるその角度位置に従って、このように規定される送信アンテナと受信アンテナのこのように規定される組合わせにわたって周期長Pで交番する位相成分を持ち、それによりこの空間方向Sに対して物体の位置を表すことが可能であることが、信号処理手段において利用されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における運転者援助システムに使用するためのレーダシステムに関する。レーダシステムは、本発明によれば、方位角測定能力を持っている。
【背景技術】
【0002】
自動車は運転者援助システムを備えるようになっており、このシステムはセンサシステムにより周囲を検出し、こうして検出される交通状況から、車両の自動的な反応を誘導し、かつ/又は運転者に指図特に警告する。その際快適機能と安全機能が区別される。
【0003】
快適機能として、現在の開発ではFSRA(全速力範囲適応経済速度走行制御)が最も重要な役割を果たしている。車両は、交通状況が許す場合、自己速度を運転者により規定される希望速度に制御し、他の場合には自己速度が交通状況に自動的に合わされる。
【0004】
快適さの向上のほかに、安全機能がますます強く重視され、非常状況において制動距離又は停止距離が最も重要な役割を果たす。適当な運転者援助機能の多様性は、制動遅れ時間を減少するため制動機の自動的な予備充填(Prefill)から、改善された制動援助(BAS+)を経て自動的な非常制動までに及んでいる。
【0005】
上述した種類の運転者援助システムのために、現在主としてレーダセンサが使用される。レーダセンサは悪い気象条件でも確実に動作し、物体からの間隔のほかに、ドップラ効果を介してその放射状相対速度も直接測定することができる。その際送信周波数として24及び77GHzが使用される。
【0006】
費用及び大きさの理由から、現在利用可能なレーダセンサは方位角の測定能力のみを持ち、仰角の測定能力を持たず、それにより静止している車両と車道(例えば橋)より上の物体又は車道上にある小さい物体(例えばコーラ缶)及び(例えばずれた板継ぎ目による)道路表面の凹凸とを確実に区別することができない。従って現在のシステムでは、静止している物体に全く又は僅かな範囲でしか反応が行われず、このことは特に制動距離又は静止距離を少なくするための安全機能にとって不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、センサの費用及び大きさを全く又は僅かしか増大しない仰角測定能力を生じることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、原則的に請求項1〜14に記載のレーダシステムにより解決される。その際個別のアンテナの周期的な垂直ずれによる方位角の形成に、仰角の形成をとのように重畳できるかが示される。
【0009】
本発明の利点は、費用及び大きさに対してほぼ中立的な仰角測定能力によって、静止している車両(例えば停滞車両)に対して一層強い反応が行われるという事実から生じ、このことは制動距離又は停止距離を減少する安全機能にとって特に重要である。
【0010】
本発明による自動車の周辺検出用レーダシステムは、少なくとも2つの送信アンテナにより送信信号を放射する送信手段、物体において反射される送信信号を1つ又は複数の受信アンテナにより受信する受信手段を含み、各アンテナが位相中心を持っている。更に受信した信号を処理する信号処理手段が設けられている。これらの送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得される。各組合わせにおいて、それぞれ1つの送信アンテナ及び受信アンテナが動作する。こうして受信信号が、それぞれ1つの送信アンテナに由来して受信アンテナにより受信される反射信号から生じる。各組合わせに、基準点からそれぞれの送信アンテナ及びそれぞれの受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される相対位相中心が対応せしめられる。
【0011】
更に受信される信号を処理する信号処理手段が設けられている。送信アンテナ及び受信アンテナが、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持っている。しかし送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して異なっていてもよい。空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して、相対位相中心の位置に関して空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの列が考察される時、送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Pで周期的に変化する。このようなアンテナ装置の構成の1例が、図13に符号13.1で示されている。物体の受信信号が、空間方向Sにおけるその角度位置に従って、このように規定される送信アンテナと受信アンテナのこのように規定される組合わせにわたって周期長Pで交番する位相成分を持ち、それによりこの空間方向Sに対して物体の位置を表すことが可能であることが、信号処理手段において利用される。
【0012】
Rが水平方向であり、Sが垂直方向であり、従って物体の受信信号の周期長Pで交番する位相成分によって、その垂直位置について表すことができる。
【0013】
有利なな構成では、送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心が、空間方向Rに関して少なくとも近似的に等間隔の所にある。
【0014】
特に信号処理手段において、送信アンテナと受信アンテナの異なる組合わせから受信信号に、ディジタルビーム形成又は高分解方式(例えばブルクによるようなモデルに基く方式又はMUSICのようなサブスペース方式)が適用されて、それから空間方向R及び空間方向Sにおける物体の位置を測定又は評価する。
【0015】
本発明の有利な構成では、ディジタルビーム形成が、場合によっては窓関数を利用して、長さNの離散フーリエ変換(DFT)により行われ、そのため空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が使用される。
【0016】
本発明の有利な構成では、空間方向Sにおける物体の位置を評価するために、物体が長さNを持つDFTのスペクトルにおいて一般にP個の出力ピークをそれぞれの間隔N/Pで発生することが利用され、これらの出力ピークにおけるスペクトル値の関係が、空間方向Sにおける物体の角度位置に関係している。NはDFT長であり、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が考察される時、Pは送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が空間方向Sに関して交番する周期長である。本発明の好ましい構成では、周期長P=2である。
【0017】
により評価され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数値nAz及びnAz+N/2におけるスペクトル値を示し、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、sは相対位相中心の垂直ずれ、λは使用される平均波長である。
【0018】
本発明の有利な構成では、Sが垂直方向であり、この垂直な空間方向Sにおける物体の角度位置の評価が、仰角方向におけるレーダシステムの誤調節を検出するために利用される。
【0019】
本発明の有利な構成では、仰角における誤調節を検出するために、十分大きく離れた所で移動する物体のみが使用され、その際物体の距離は、道路表面の反映特性が測定結果の著しい誤りを生じないような大きさでなければならず、複数の物体の評価される角度位置についての平均が行われ、その際直線平均(例えば重み付き平均値形成)又は非直線平均(例えば中央値形成)が使用される。
【0020】
特に下をくぐるか又は乗越え可能な物体を検出するため、比V=j・w(nAz+N/2)/w(nAz)の虚数部分が直接に又は比の値|V|により割り算して使用され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数nAz及びnAz+N/2における両方の出力ピークのスペクトル値であり、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、特に物体距離について濾波される値及び/又は距離に関係するこの尺度の変化から、道路表面の上の物体の高さが推論される。
【0021】
レーダシステムの有利な構成は、複数の送信アンテナ(個数NSなるべく2)及び複数の受信アンテナ(個数NE)を備え、受信アンテナNEは空間方向Rに関してこれらNS個のうち外側送信アンテナ外になく、かつそれぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、かつこの方向Rにおけるその位相中心に関してそれぞれ少なくとも近似的に等間隔に設けられている。送信アンテナは、空間方向RにおいてこれらNS個の送信アンテナの相互間隔が、NE個の受信アンテナの相互間隔より係数NE又はNE−1だけ大きく、それにより1つの送信アンテナとこの空間方向Rに等間隔に設けられて少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ最大でNS・NE個の受信アンテナが合成される。
【0022】
有利な構成では、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナがプレーナ技術で実現されて、平らな面に設けられ、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナのうち少なくとも2つが空間方向Rに関して重なっている。この重なりは、これらの送信アンテナ及び受信アンテナの次の配置又は構成の少なくとも1つによって実現される。
アンテナが空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して互いにずれており、例えば水平な空間方向Rに対して送信アンテナが受信アンテナの上に設けられているか、又はその逆である。
送信アンテナ及び/又は受信アンテナが、空間方向Rに関して斜めの形状を持ち、例えばそれぞれのプレーナアンテナの列及び/又は行が平行又は直角ではなく、斜めに即ち空間方向Rに対して0°<|α|<90°の角αをなして設けられている。
アンテナが、図24の特別な実施例に示されているように、空間方向Rに関して互いにはまり合っている。
放射するか又は受信する素子(例えばパッチ)が、少なくとも2つの送信アンテナ又は受信アンテナにより共通に使用される。
少なくとも1つのアンテナが送信及び受信のために使用される。
【0023】
本発明の有利な構成では、送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得される。その際使用される送信アンテナ及び受信アンテナが少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して相違していてもよい。空間方向Rに関して、送信アンテナ及び受信アンテナから成るこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Qで周期的に等間隔ラスタだけ変化する。信号処理手段において空間方向Rにおける物体の位置を求めるために、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの列が考察される時、物体の受信信号が、空間方向Rにおけるその角度位置に従って、線形位相成分のほかに周期長Qで交番する位相成分を持っていることが、利用される。受信信号の線形位相成分は、空間方向Rにおける精密であるがあいまいな角度算定を可能にし、これに反し交番する位相成分は、粗いが一義的な角度算定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 レーダシステムの第1実施例を示す。
【図2】 第1実施例について、いわゆる周波数ランプから成る送信信号及び受信信号の周波数、及びその際順次制御されるアンテナ組合わせを示す。
【図3】 第1のDFT(左)の前及び第1のDFT(右)の後に2つの物体が存在する場合走査される信号を示す。
【図4】 物体がちょうど存在する距離ゲート4において周波数ランプにわたって回転する複素スペクトル値を示す。
【図5】 二次DFT後の2次元複素数スペクトルを示す。
【図6】 アンテナ装置の第1実施例について、個別アンテナとセンサと方位角αAZ<0において大きく離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を示す。
【図7a】 2つの送信アンテナ及び4つの受信アンテナを持つアンテナ装置の第1実施例と等価な1つの送信アンテナ及び8つの受信アンテナを持つアンテナ装置を示す。
【図7b】 この等価装置について、個別アンテナと遠く離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を示す。
【図8a】 上記のアンテナ装置について、(センサに対して静止している)物体がちょうど存在する距離−相対速度ゲート(9.0)においてアンテナ組合わせにわたって回転する複素数スペクトル値を示す。
【図8b】 三次DFT後のスペクトルの値を示す。
【図9】 3次元DFTの前(左)のデータ及びその後(右)の3次元複素数スペクトル(右)を示す。
【図10】 レーダシステムの第2実施例を示す。
【図11】 第2実施例について、すべてのアンテナ組合わせの並列制御の際における送信信号及び受信信号の周波数を示す。
【図12】 レーダシステムの第3実施例を示す。
【図13】 レーダシステムの第4実施例を示す。
【図14】 第4実施例のアンテナ装置について、個別アンテナと大きく離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を、仰角αEl>0と方位角αAZ=0との間で相違する波長を示す。
【図15a】 図14に示す状態について、(センサに対して静止している)物体がちょうど存在する距離−相対速度ゲート(9.0)においてアンテナ組合わせにわたって回転する複素スペクトル値を示す。
【図15b】 DFT長さN=16の半分だけ離れている2つの出力ピークを持つ三次DFT後のスペクトルの値をn=2及びn=10において示す。
【図16】 複素面において、第4実施例の仰角測定能力のための関係を変換する関係を示す。
【図17】 道路表面の反映作用を示す。
【図18a】 状態Vの相対虚数部分を示す。
【図18b】 車両(平均高さhO=0.5m、垂直寸法0.3m)、橋(平均高さhO=5m、垂直寸法0.3m)、及びセンサ高さhS=0.5mについて、それぞれ距離rにわたる状態Vの絶対虚数部分を示す。
【図19】 d=3λ/2に対して生じる位相差Δφと方位角αAZとの関係Δφ=3π・sin(αAZ)を示す。
【図20a】 方位検出範囲−19.5・・・+19.5を持つ理想的なアンテナダイヤグラムを示す。
【図20b】 少なくとも15dBの外部抑制を持つ検出範囲のために実現可能なアンテナダイヤグラムを示す。
【図21】 レーダシステムの第5実施例のアンテナ装置を示す。
【図22】 レーダシステムの第6実施例のアンテナ装置を示す。
【図23】 レーダシステムの第7実施例のアンテナ装置を示す。
【図24a】 レーダシステムの第8実施例のアンテナ装置を示す。
【図24b】 レーダシステムの第8実施例の別のアンテナ装置を示す。
【図25】 レーダシステムの第9実施例のアンテナ装置を示す。
【図26】 レーダシステムの第10実施例のアンテナ装置を示す。
【図27】 レーダシステムの第11実施例のアンテナ装置を示す。
【図28】 適当な肩部により方位範囲−19.5・・・+19.5外でも感度を持つアンテナダイヤグラムを示す。
【図29】 第11実施例について、DFT長N=16の半分だけ離れた2つの出力ピークを持つ三次DFT後におけるスペクトルの値の推移をn=2及びn=0において示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
さてレーダシステムの構成及びそのアンテナの配置により本発明を以下に説明する。まず注意すべきことは、広がっている物体が明らかに問題でない限り、図、ダイヤグラム及び推論において点状物体から出発する。
【0026】
図1による実施例
まず図1に大まかに示されているレーダシステムの構成例が考察される。レーダシステムは、送信信号を放射する2つの送信アンテナTX0及びTX1と、物体において反射される送信信号を受信する4つの受信アンテナRX0〜RX3を持っている。アンテナは、平らな基板1.1上にプレーナ技術でパッチアンテナとして構成され、この基板は水平方向及び垂直方向に関して図に示すように向けられている。すべてのアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)は高度及び方位において同じ放射特性を持っている。4つの受信アンテナ(従ってその位相中心従って放射中心)はそれぞれ同じ横方向即ち水平相互間隔d=λ/2=6.2mmを持ち、λ=c/24.15GHz=12.4mmは放射される信号の平均波長である。両方の送信アンテナの水平相互間隔は4倍の大きさ、従って4d=2λである。
【0027】
マルチプレクサ1.3及び1.4を介して、両方の送信アンテナの1つ及び4つの受信アンテナの1つをそれぞれ選択することができる。
【0028】
そのつど選択される送信アンテナで放射される送信信号は、24GHz範囲にある高周波発振器1.2から得られ、この発振器は制御電圧Vsteuerを介して周波数を変化することができる。制御電圧は制御手段1.9において発生される。そのつど選択される受信アンテナにより受信される信号は、実数ミキサ1.5において、同様に発振器1.2の信号と低周波範囲へ入るように混合される。それから受信信号は、図示した伝達関数を持つ帯域通過フィルタ1.6、増幅器1.7及びA/D変換器1.8を通り、続いてディジタル信号処理装置1.10において更に処理される。
【0029】
物体からの距離を測定できるようにするため、図2に示すように、高周波発振器従って送信信号の周波数は、非常に速やかに線形に変化される(8μsに187.5MHzだけ)。その際周波数ランプについて述べられる。周波数ランプは周期的に反復され(すべて10μs)、全部で2048の周波数ランプがある。周波数ランプにわたって、2つの送信アンテナと4つの受信アンテナから成る8つの組合わせが、TX0/RX0,TX0/RX1,TX0/RX2,TX0/RX3,TX1/RX0,TX1/RX1,TX1/RX2及びTX1/RX3のシーケンスで周期的に反復され、各周波数ランプの前でそれぞれ次の組合わせが選択される。図2において、kは各アンテナ組合わせに対して2408/8=256の周波数ランプについての制御変数であり、m=4・mTX+mRXはアンテナ組合わせTXmTX/RXmRXについての制御変数である。
【0030】
個々の物体の受信信号は、混合後従って各周波数ランプ及び8つのアンテナ組合わせの各々のためのA/D変換器においても、正弦波振動である。これは図2により次のように説明することができる。即ち物体がレーダシステムに対して放射状相対速度0を持っていると、送信される信号と受信される信号との周波数差Δfは一定であり、信号伝搬時間Δt従って放射状距離r=c・Δt/2に比例し、ここでcは光速度であり、係数1/2は伝搬時間Δtが波の往復に関係することを考慮している。即ち周波数差Δfは、上記の設計ではΔf=2r/c・187.5MHz/8μs=r・156.250kHz/mとなる。受信される信号は発振器周波数従って送信周波数と実数値で混合されるので、混合後周波数Δfを持つ正弦波状振動が生じる。この周波数はMHz範囲にあり、消滅しない放射状相対速度の場合まだ二重周波数だけずらされるが、この二重周波数はkHz範囲にのみあり、従って周波数成分に対して物体距離により近似的に無視することができる。複数の物体があると、受信信号は異なる周波数の複数の正弦波振動の重畳である。
【0031】
各周波数ランプの期間中に、A/D変換器における受信信号は256回それぞれ25ns(従って40MHz)の間隔で走査される(図2参照)。図2からわかるように、信号走査は、物体からの受信信号が受信可能な距離範囲に達する時間範囲においてのみ有意義であり、従ってランプ開始後少なくとも最大に受信可能な距離に相当する伝搬時間を待たねばならない(最大に受信可能な150mの距離では、これは1μsに相当する)。
【0032】
それから各周波数ランプの256走査値にわたって、高速フーリエ変換(FFT)の形の離散形フーリエ変換(DFT)が形成される。それにより異なる周波数を生じる異なる距離にある物体を分離することができる(図3参照、2つの物体が存在する場合左の信号はDFT前、右の信号はDFT後)。DFTの離散した周波数チェックポイントjの各々は距離rに相当し、従ってパルスレーダと同様に距離ゲートとも称することができる。即ち上記の設計では、距離ゲートはちょうど間隔従って1mの幅を持っている(r・156.250kHz/m=1/(6.4μs)から生じる)。物体が存在する距離ゲートにおいて、DFTに出力ピークが生じる。走査される受信信号は実数であり、図1のアナログ帯域フィルタ1.5の上部移行範囲は8.75MHzの周波数帯域幅を持っている(56の周波数チェックポイントの範囲に相当する)ので、256の離散周波数チェックポイントの100のみが更に処理可能である(注意すべきことは、フィルタの任意に狭い移行範囲は実現不可能なことである。フィルタ1.5は小さい周波数従って近い物体の受信信号を減衰して、増幅器1.6及びA/D変換器1.7の過制御を回避する(アンテナで受信される信号は、減少する物体間隔と共に強くなる)。
【0033】
256の周波数ランプ(k=0.1,・・・,255)にわたって、各距離ゲートj(従って100の考察される周波数チェックポイントの各々)について8つのアンテナ組合わせ(m=0.1,・・・7)の各々に複素スペクトル値e(j,k,m)が生じる。1つの距離ゲートに相当する距離に正確に1つの物体があると、この距離ゲートにおいて複素スペクトル値が、各アンテナ組合わせの256の周波数ランプにわたって二重周波数で回転する。なぜならば、周波数ランプから周波数ランプへ距離(mm範囲又はそれ以上)従って対応する振動の位相位置が均一に変化するからである(図4参照。そこに示される周波数ランプ毎に45°の位相変化は物体のλ/(8・2)=0.78mmの距離減少に相当し、平均波長はλ=c/24.15GHz=12.4mmであり、分母の係数2は波の往復を考慮し、それからvrel=0.78mm/80μs=35km/hの放射状相対速度が生じる。即ち放射状相対速度の正の符号は接近と定義されている)。同じ距離ゲートにおいて異なる放射状相対速度を持つ複数の物体は、256の周波数ランプに生じる複素スペクトル値にわたる各アンテナ組合わせ及び各距離ゲートに対して二次DFTが計算されることによって、分離される。この二次DFTの離散した各周波数チェックポイントは1組の二重周波数に相当し(二重周波数の走査のため、それはその走査周波数の未知の整数倍までのみ求めることができる)、従って物体の1組の放射状相対速度vrelに相当するので、二次DFTの離散周波数チェックポイントを相対速度ゲートと称することができる。即ち放射状相対速度に対して、これから用語を簡単化するため、付加語“放射状”が省略される。二次DFTは相対速度を求めるのに役立つだけでなく、その積分により検出感度も−256の周波数ランプでは約10・log10(256)=24dBだけ高める。
【0034】
相対速度のためこの二次DFT後、各アンテナ組合わせに対して二次元複素数スペクトルが生じ、個々のセルは距離−相対速度ゲートと称することができ、物体により、それぞれ対応する距離−相対速度ゲートに出力ピークが現れる(図5参照)。
【0035】
最後に8つのアンテナ組合わせから情報が融合される。両方の送信アンテナから出て個々の物体で反射される波は、異なる相対位相位置を持つ方位角αAzに関係して4つの受信アンテナへ達する。なぜならば、物体と送信アンテナ及び受信アンテナとの間の距離は少し相違しているからである。今やこれが詳細に説明され、考察される物体はまずセンサに対して静止しており、即ちそれが相対速度0を持っている。図6に垂直投影で、アンテナの位相中心、及びセンサに対して大きく離れて静止している物体までのビーム路が、方位角αAz<0(正のαAzは基板面に対する垂直面の右を意味する)及び仰角αEl(基板面に対して水平な垂直面における)で示されている。即ち物体は、ビーム路が平行であると仮定できるほど遠く離れており、即ち物体はアンテナ装置のフラウンホーファー領域にある。送信アンテナTXmTXから物体へかつ逆に受信アンテナRXmRXへのアンテナ組合わせm=4・mTX+mRXのための距離r(m)は次式で与えられ
ここでrRPはアンテナ基板上の基準点RPから物体への距離、aは基準点と送信アンテナTX0との水平間隔である。この関係式から、間隔がアンテナ組合わせの数mと共に直線的に変化することがわかる。量(2a+d/2+m・d)は基準点RPに対するアンテナ組合わせmのいわゆる相対位相中心の水平間隔を示し、基準点に対する送信アンテナ及び受信アンテナの水平間隔から成る和である(ここで送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心は、基準点から送信アンテナ及び受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和と定義されている)。
【0036】
アンテナ組合わせm=0.1,・・・,7の受信波とアンテナ組合わせm=0の受信波との位相差φ(m)−φ(0)は、異なる距離r(m)に基いて次式となり
従ってアンテナ組合わせの数mと共に直線的に変化する。異なるアンテナ組合わせで受信される信号の振幅は一定である。なぜならば、すべてのアンテナは同じ放射特性を持ち、遠く離れた物体に対するアンテナの間隔は、レベルの考察に対して無視できるほど僅かしか相違していないからである。
【0037】
直ちにわかるように、図7bによる垂直投影を持つ図7aのアンテナ装置に対して、今まで考察した図1の装置と同じ関係が、距離r(m)及び位相差φ(m)−φ(0)に対して生じる。即ち図7aによる装置は1つだけの送信アンテナTX0と8つの等間隔受信アンテナRX0−RX7を持ち、アンテナ組合わせm=mRXは今や送信アンテナ及び受信アンテナRXmRXから形成される。アンテナ組合わせの一致する個別アンテナ及び一致する位相関係のため、両方のアンテナ装置は角度測定能力に関して等価である。しかしここに紹介される図1の装置は、図7aによる従来の装置と比較してほぼ半分の寸法しか持たず、それによりセンサの大きさが著しく減少する、という利点を持っている。
【0038】
8つのアンテナ組合わせmにわたって直線的に増大又は減少しかつ方位角に関係する位相差φ(m)−φ(0)は、場合によっては可能な一定の従って補償可能な位相ずれを別として、二次DFTの後まで維持される。即ち距離−相対速度ゲート(j,l)に1つの物体しか存在しないと、そこの複素スペクトル値v(j,l,m)は、8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・,7にわたって方位角に関係する一定の回転速度(例として図8a参照)で回転する。従って各距離−相対速度ゲートにおいて、方位方向に対してディジタルビーム形成を行うことができる。そのため直線的に変化する位相を持つ1組の複素係数をそれぞれ乗算される8つのアンテナ組合わせに対する複素数値にわたって和を形成する。即ちそれぞれの係数の組の直線的位相変化に関係して、異なる放射方向を持つ放射ローブが生じる。これらの放射ローブの放射幅は個別アンテナの放射幅より著しく小さい。上述した加算は16点DFTにより実現され、8つのアンテナ組合わせの8つの値は8つの0により補足される。このDFTの離散周波数値n=0.1,・・・15は、隣接するアンテナ組合わせの間の異なる位相差Δφ=φ(m)−φ(m−1)=2π・n/16に相当し、従って異なる位相角αAz=arcsin(Δφ・λ/(2πd))=arcsin(n・λ/(16d))に相当し、従って角度ゲートと称することができる。図8bには、図8aに記載の状態に対する三次DFTのスペクトルの推移w(j,l,n)が数値で示される。この図8aに記載の状態は方位角αAz=14.5°をなす物体に関する(π/rに相当する45°の隣接するアンテナ組合わせの図示した位相差に対して、n=2が対応し、d=λ/2に対して方位角αAz=arcsin(π/4)=14.5°が対応する)。三次DFTは方位角を求めるために用いられるだけでなく、その積分によって8つのアンテナ組合わせの場合検出感度を約10・log10(8)=9dBだけ高める。
【0039】
これまで方位角を求めるために、物体が相対速度0を持っていると仮定した。そうでない場合、アンテナ組合わせの間の位相は更に相対速度に比例して直線的に変化する。なぜならば、図2による8つの順次に続くアンテナ組合わせの受信信号は、それぞれ10μsの時間的ずれを持ち、この時間中に距離が少し変化するからである。それぞれ三次DFTが1つの距離−相対速度ゲート従って特定の相対速度に属しているので、8つのアンテナ組合わせにわたって相対速度により発生される直線的位相変化を、三次DFTの前又は後に補償することができる。DFTの前の補償の際、複素入力値の位相を移動し、DFTの後の補償の際出力値に属する離散周波数値nを移動せねばならない。相対速度の上述したあいまいさのため、この補償はあいまいな相対速度のために使用される仮定に従って異なる方位角を生じる。
【0040】
(アンテナ組合わせにわたって相対速度により発生される直線的位相変化の補償を含めて)方位角のこの三次DFTの後に、三次元複素数スペクトルが生じ、その際個々のセルを距離−相対速度−角ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度−角ゲートに出力ピークを生じることができる(図9参照。左は三次元DFT前のデータ、右はその後のデータ)。従って出力ピークを求めることによって、物体を検出し、その尺度即ち距離、(場合によっては存在するあいまいさを別として)相対速度及び方位角(相対速度の各あいまいさ仮定に対応する値。図9参照)を求めることができる。出力ピークはDFT窓変換により隣接セルにもレベルを持つので、このレベルに関係して補間により物体寸法をゲート幅より著しく正確に求めることができる。注意すべきことは、出力ピークが(十分な物体分離のために)幅広くなりすぎないけれども、(強く反射する物体の存在するところで弱く反射する物体も検出できるようにするため)、窓スペクトルの二次ローブも高くなりすぎないように、3つのDFTの窓関数が選ばれることである。出力ピークの高さから、第4の物体尺度として、物体がレーダ波をどんな強さで反射するかを示す物体の反射断面も評価することができる。
【0041】
物体の上述した検出及び対応する物体尺度の決定は1つの測定サイクルを示し、周辺の現在の画像を与える。即ちこれは例えばすべて30ms周期的に反復される。周辺状況を判断するために、順次に続くサイクルを越えて瞬間画像が追跡され、濾波され、評価される。その理由は特に次の通りである。
幾つかの量は1つのサイクルにおいて直接求められるのではなく、順次に続くサイクルにわたる変化からのみ求められる(例えば縦加速度及び横速度)。
物体の運動は複数のサイクルにわたってもっともらしくされ、その結果一層強固で確実な周辺記述が生じる。こうして例えば順次に続くサイクルにわたって生じる距離の変化が測定される(放射状)相対速度に合わされ、それにより周辺記述における冗長性従って付加的な確実性が生じる。
複数のサイクルにわたる時間的濾波による測定雑音の減少。
【0042】
追跡及び順次に続くサイクルにわたる物体検出の濾波は追尾(トラッキング)と称される。その際各物体について、現在のサイクルの追尾される物体寸法から次のサイクルについての値が予測される。これらの予測は、次のサイクルにおいてスナップショットとして検出される物体及びその物体寸法と比較されて、これらを互いに対応させる。それから同じ物体に属する予測された物体寸法と測定された物体寸法とが融合され、それから現在の追尾される物体寸法が生じ、それにより順次に続くサイクルにわたって濾波される値を示す。1つのサイクルにおいて特定の物体寸法が一義的に求められない場合、追尾の際異なる仮定が考慮される。追尾される物体及び追尾される物体寸法から、それぞれの運転者援助機能のための周辺状況が分析され、かつ解釈され、それから重要な物体従って適当な動作を推論する。
【0043】
図10による実施例2
図1によるセンサの今まで考察した実施例は、8つのアンテナ組合わせが順次に作動せしめられ、即ち常に1つのアンテナ組合わせでのみ受信が行われ、これはシステム感度に不利な影響を及ぼす。この欠点を図10による装置が除去する。両方の送信アンテナTX0及びTX1が並列に作動せしめられ、4つの受信アンテナRX0〜RX3の信号は並列に評価される。そのため高周波発振器10.2の出力信号は出力分割器10.2を経て同時に両方の送信アンテナへ印加され、受信側にディジタル信号処理手段4まで並列なチャネルがある。それにより各周波数ランプにおいて両方の送信アンテナが使用され、すべて4つの受信アンテナの信号が評価され、周波数ランプ及び周波数ランプ中の走査は、今や時間的に係数4だけ延ばされており、即ち今や512の周波数ランプがそれぞれ32μsの持続時間を持ち、すべて40μs周期的に反復され、256の値の操作が10MHz従ってすべて100nsで行われる(図11参照)。
【0044】
受信信号において両方の送信アンテナの成分を分離できるようにするため、送信アンテナTX1の前に開閉可能なインバータ10.4がある(開閉可能なインバータの駆動は制御手段10.9から行われる)。開閉可能なインバータは1つ置きの周波数ランプを動作させ、即ち送信アンテナTX1の位相位置は、1つおきの周波数ランプにおいて他の周波数ランプに対して180°移動される。それにより物体において反射されるTX1の送信信号により発生されている受信信号の位相は、物体の相対速度による変化に加えて、周波数ランプから周波数ランプへ180°だけ変化する。それによりTX1から生じるこれらの受信信号は、二次DFT前に、周期長2を持つ180°の付加的な位相変調を持ち、それにより二次DFTにおいて、スペクトルの半分のDFT長従って12.5kHzの移動が生じる。
【0045】
さて二次DFTは長さ512(512の周波数ランプが存在する)を持ち、4つの受信チャネル及び各距離ゲートについて求められる。TX1の位相変調により物体は、二次DFTにおいて各受信チャネル及び対応する距離ゲートに、12.5kHzの間隔で2つの出力ピークを発生する。即ち相対速度に相当する周波数における出力ピークは送信アンテナTX0から生じ、12.5kHzだけずれた出力ピークは送信アンテナTX1から生じる。それにより両方の送信アンテナから生じる成分は分離されている。
【0046】
(4つの受信アンテナの)4つの受信チャネルの各々に対して、二次DFTの下半分(0〜12.5kHz)がTX0のために使用され、上半分(12.5kHz〜25kHz)がTX1のために使用され、上半分が12.5kHzだけ下方へ下半分と同じ二重周波数範囲0〜12.5kHzへ移動されることによって、三次DFTに対して8つのアンテナ組合わせが生じる。それにより最初の実施例1におけるように再び256の相対速度ゲートのみが存在する。三次DFT後最初の装置に対するただ1つの相違として、相対速度に対して異なる仮定がもはや異なる方位角を意味せず、常に同じ方位角が生じる(図9による三次元DFDTのデータ直方体において、方位角において相対速度範囲0〜280km/hに属する値が常に有効であるということのみが変わっている)。その理由は、8つのアンテナ組合わせの受信信号の間に時間的ずれがもはや存在しないからである。
【0047】
TX1の上述した180°の交代する位相変化のかわりに、それを偶然に形成することもできる。即ち周波数ランプから周波数ランプへ、開閉可能なインバータの状態が偶然に決定される。その場合二次DFTは2回決定され、1回は位相変化の修正付きで、1回はその修正なしで決定される。位相修正により計算されるDFTでは、送信アンテナTX1から発する受信信号は出力ピークへ至るが、送信アンテナTX0から発する受信信号は約27dBだけその下にある雑音を発生するであろう。即ち位相修正なしで計算されるDFTでは、状態がちょうど取り違えられるであろう。それにより両方の成分の分離も可能であろう。相対速度の明確範囲は2倍になるであろう。
【0048】
4つの受信チャネルの使用により、システム感度が6dBだけ高まる。なぜならば、帯域フィルタ10.6の帯域幅は最初の実施例と比べて係数4だけ減少されているからである(周波数ランプの期間中の走査は係数4だけ遅い。なぜならば、周波数ランプはこの係数だけ長いからである)。二次DFTの2倍の長さ512のため、更に3dBだけ高い積分ゲインが生じる。周波数ランプの期間中に送信アンテナ毎に変わらずに多くの出力が放射される場合、全体として9dBだけシステム感度の上昇が生じる。(例えば1つの供給源から2つのアンテナへの同時供給のため、又は許可規定のため全送信出力が限定されているため)、送信アンテナ当たりの送信出力が半分になると、6dBだけシステム感度が上昇する。
【0049】
最後に言及すべきことは、ここで考察される図10の実施例2において、4つの並列なA/D変換器を、マルチプレクサを前に接続されるただ1つのA/D変換器に代えることもできることである。即ちこのA/D変換器は、図1による実施例におけるのと同じ40MHzの同じクロックで動作するであろう。
【0050】
図12による装置
今まで考察された図1及び図10による装置では、受信アンテナの上に送信アンテナが設けられていた。なぜならば、1つの面に設ける場合(従って送信アンテナを下方へ押付けられている場合)、パッチが接触することになるが、これは実現不可能である。送信アンテナと受信アンテナを上下に設けることにより、これらのアンテナは、所定のセンサ高さにおいて、1つの面に設ける場合の約半分の高さとすることができ、その結果仰角方向においてビーム集束が少なくなり、従ってアンテナゲインが小さくなる。それにより一方では垂直検出範囲が増大し、それが特定の機能にとって不利なことがあり(例えば橋が停止している車両と区別困難なことがあるため)、他方ではシステム感度が低下する。
【0051】
アンテナの配置におけるこの制限は、少なくとも1つのアンテナを送信にも受信にも利用することによって、回避することができる。図12は例として1つの配置を示し、右のアンテナが送信アンテナTX1及び受信アンテナRX3として利用される。即ち受信アンテナ相互の水平間隔は引続きd=λ/2であり、送信アンテナの水平間隔は引続き4d=2λである。
【0052】
右のアンテナが同時に送信アンテナ及び受信アンテナとして動作できず、時間的にのみその機能が送信アンテナと受信アンテナとの間で交代することが可能である場合、送信アンテナTX1及び受信アンテナRX3から成る8つのアンテナ組合わせは不可能なので、7つのアンテナ組合わせのみが存在する。即ちその場合三次DFTのために、8つのアンテナ組合わせの信号が0にセットされる。他の場合即ち右のアンテナが同時に送信アンテナ及び受信アンテナとして動作できる場合、全部で8つのアンテナ組合わせが可能である。
【0053】
1つのアンテナを送信にも受信にも利用できるようにするため、このアンテナを交互に又は永続的にHF発生及び受信ミキサに接続せねばならない。即ちこれは例えば接続素子12.11のための次の実施例で実現される。
マルチプレクサ。アンテナはその機能を時間的に送信アンテナと受信アンテナとの間で交代できるが、同時に送信及び受信できない。マルチプレクサでは典型的に3dBの範囲にある出力損失が起こる。
サーキュレータは、出力損失なしに同時の送信及び受信を可能にするが、非常に高価である。
カップラ構造(例えばリングカップラ又はウィルキンソン分割器)も同様に同時の送信及び受信を可能にするが、出力損失(3〜4dB)を伴い、印刷構造のみから成るので、その費用は無視できる。
【0054】
使用される接続素子において出力損失が起こり、これが適当に異なる送信出力によっては補償されない場合、異なるアンテナ組合わせの受信信号は同じレベルを持たない。これは角度形成過程において(例えばディジタルビーム形成の場合)考慮し、かつ場合によっては補償すべきである。
【0055】
図12による例において、右及び左のアンテナをそれぞれ同時の送信及び受信に利用できない場合、水平に等間隔の相対位相中心を持つ9つのアンテナ組合わせが形成される。
【0056】
すべてのアンテナがその周囲において基板上でできるだけ同じような状態を見るようにするため、外部アンテナTX0及びTX1/RX3の左又は右にも、d=λ/2の間隔で有効アンテナ(従って8つのパッチを持つアンテナ列)と同じ構造を持ついわゆる盲アンテナを設けることができるであろう。この場合これらの盲アンテナは適合して終らされるであろう。それによりすべてのアンテナがそれぞれの隣接アンテナにより同じように(特に結合により)影響され、これは角度形成法にとって隣接アンテナによる異なる影響より危険でない。
【0057】
図13による実施例
今まで考察された実施例は、すべて物体の方位角を測定する可能性のみを持ち、仰角を測定することができない。しかし仰角測定の可能性は多くの機能のために有利であり、特に車道に静止している物体に反応して、これらを車道より上にある物体(橋、標識)又は車道にある小さい物体(例えばコーラ容器)及び(例えば平らでない板継ぎ目による)道路表面の反射から区別することができる。
【0058】
仰角を測定又は評価できるようにするため、アンテナ組合わせの相対位相中心が異なる垂直位置を持たねばならない(送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの相対位相中心は、ここでは基準点から送信アンテナ及び受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される)。今考慮されている図13のアンテナ装置では、両方の受信アンテナRX1及びRX3型が2つの受信アンテナRX0及びRX2に対してs=λ/2だけ下方へずれている。即ちそうしないと、図13による実施例は図1による最初の実施例とは相違しなくなる。
【0059】
図14には、水平投影で(従って基板13.1を側方からみて)、アンテナの位相中心及びセンサに対して大きく離れて静止している物体へのビーム路が、方位角αAz=0及び仰角αEl>0(正のαElは上を意味する)で示されている(物体は、ビーム路が平行であると仮定できるほど大きく離れており、即ち物体はアンテナ装置のブラウンホーファー領域にある)。送信アンテナTXmTXから物体まで及び逆に受信アンテナRXmRXまでのアンテナ組合わせm=4・mTX+mRXの距離r(m)は次のようになる。
ここでrRPはアンテナ基板上の基準点RPから物体への距離、bは基準点と送信アンテナとの垂直間隔、cは送信アンテナと両方の上部受信アンテナRX0及びRX2との垂直ずれ、mod(.,2)は2に対するモジュロ関数である。量(2b+c+mod(m、2)・s)は基準点RPに対するアンテナ組合わせmの相対位相中心の垂直間隔を示し、基準点に対する送信アンテナ及び受信アンテナの垂直間隔の合計である。
【0060】
下部受信アンテナに対するアンテナ組合わせm=1,3,5,7のための受信波従って受信信号と上部受信アンテナに対するアンテナ組合わせm=0,2,4,6のための受信波従って受信信号との位相差ΔφEl=φ(1)−φ(0)は、異なる距離r(m)のため
となる。
【0061】
従って受信信号の位相φ(m)は、アンテナ組合わせの番号m=0,1,・・・,7について周期長2でこの値λφElだけ交代する。さて一般に消滅しないまだ1つの方位角αAzが考察される場合、受信信号の位相φ(m)はアンテナ組合わせmについて直線的に変化するなお1つの成分を持ち、全体で次のようになる。
【0062】
対応する距離−相対速度ゲート(j、l)にこの1つの物体のみがある限り、そこの複素数値v(j、l、m)は二次DFT後8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・,7について次のようになる。
ここでKはこれらの値の一定値、expは指数関数である。小さい負の仰角αElに対して生じる図15aの例は、図8aに示す最初の実施例1の推移v(9,0,m)と比較して、今や1つ置きのベクトルが位相ΔφElだけずれていることを示す。
【0063】
三次DFTにおいて形成されるv(j,l,m)のスペクトルw(j,l,m)を次に説明するように変化する。偶数m=0,2,・・・に対してこの係数は値1を持ち、奇数m=1,3,・・・に対して値exp[−j・2π/λ・sin(αEl)・s]を持つ。周期長2で交代するこの係数のスペクトルF(n)は、(変換式から容易に誘導できるように)2つの出力ピーク、DFT長Nと乗算される両方の値の平均値を持つ周波数n=0における1つの出力ピーク
及び半分のDFT長従って半分のDFT長と乗算される両方の値の差を持つ周波数n=N/2における第2の出力ピークを持っている。
【0064】
全スペクトルw(j,l,n)は、方位角αAzに対応する周波数nAzにおいて出力ピークを持つ最初のスペクトルとF(n)との重畳によって生じる。即ち全スペクトルは、最初の周波数nAz及び半分のDFT長だけ離れた周波数nAz+N/2における2つの出力ピークを持ち、これら両方の出力ピークの複素スペクトル値の比に対して次式が成立する。
【0065】
図15bは、図15aに示すv(9,0,m)の推移に対するスペクトルw(9,0,n)の値を例として示す。即ちαAz=14.5°に対するn=nAz=2における出力ピークのほかに、n=10における第2の出力ピークがあり、従ってDFT長N=16の半分離れている。
【0066】
比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)から仰角αElが求められる。そのため上記の関係式の右の頂が図16により次にように書き換えられる。
仰角αElにより解くことによってΔφElε]−π,π[・に対して次式が生じる。
【0067】
従ってΔφElに相当する範囲]−arcsin(λ/(2s)+arcsin(λ/(2s)[における仰角が一義的に求められる(例において考察される場合s=λ/2従って]−90°,+90°[)。もちろんそれは、方位角αAzに対する周波数値nAzが既知であるという前提においてのみ有効である。しかし1つの物体に対して一般に半分のDFT長間隔を持つ2つの出力ピークを持つので、それぞれ異なる仰角を持つ方位角に対して2つの仮定がある。追尾(従って複数のサイクルにわたる物体の観察)により、自己の車両が動く場合、一般にどの仮定が正しいものであるか一般にわかる。なぜならば、仮定に対してのみ物体の有意義な推移が生じるからである。
【0068】
理想的な状態(雑音がなく点状に反射する物体)のために、上記の関数においてarctan関数の偏角は実数値であるが、他の状態に対しては一般に虚数成分がある。これは次の関係式の使用によって無視される。
ここでRe及びImはそれぞれの偏角の実数部分及び虚数部分である。
【0069】
距離−相対速度ゲートに1つの方位角において異なる仰角から複数の反射(大きく延びた物体の場合及び/又は道路表面における反映のため等)があると、これらを仰角を求める上記の式によって分解従って分離することができない。即ち量j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)にある重要な複素数成分によって、著しく異なる仰角からの反射がなければならないことだけを知ることができる。
【0070】
仰角を測定又は評価するための図示した手掛かりを、方位角のためのディジタルビーム形成へ仰角のためのモノパルス方式が含まれているように解釈することもできる(モノパルス方式は、2つのずれたアンテナ(群)の位相比較によって角度を求めるものである)。この手掛かりは、一方では等間隔受信アンテナに基くすべての評価方法(例えばDFTによる簡単なディジタルビーム形成のような)を維持でき、他方では方位角に対して精度の低下がなく、かつ分離能力に対して僅かな低下しかない、という利点を持っている(後者は、物体に対して水平面外の位置が可能である時、DFT長の半分に相当する方位角間隔を持つ物体においてのみ適用される)。即ちアンテナ組合わせについて水平な相互ずれなしに2つの群を上下に持つ、方位角及び仰角の同時測定を行う従来の手掛かりでは、方位角に対して同じ数のアンテナ組合わせで、精度及び分離能力が半分になる。
【0071】
注意すべきことは、アンテナ組合わせの周期的な垂直ずれを、原則的に2より大きい周期長Pでも形成できることである。水平面外の物体により、スペクトルに一般にそれぞれ間隔N/Pを持つP個の出力ピークが生じ、ここでNはディジタルビーム形成のDFT長である。即ちこれらの出力ピークの値から再び仰角を求めることができ、その際仰角を介して物体の分離も可能である。このような手掛かりにより、(方位及び高度のための)2つのディジタルビーム形成がDFTにおいて重畳される。
【0072】
強調すべきことは、高度測定可能性のためここに紹介された手掛かりが価格において実質的に中立なことである。
【0073】
実際の周辺において仰角測定のために考慮すべきことは、道路表面が反映する特性を持っていることである。これが図17に示されている。物体は送信出力を直接のやり方及び道路表面で反映されるやり方で受信する。物体で反射されてセンサにより受信される出力に対して、同様に2つのやり方がある。即ちそれによりセンサが、実際の物体に加えて、実際の物体とほぼ同じ(放射状)距離を持つけれども実際の物体の高さhoだけ道路表面の下にある反映物体を見る。道路表面より上にあるセンサの高さhsに関係して、実際の物体及び反映物体は仰角の異なる値を持ち、その差は距離の増大と共に減少する。実際の物体及び反映物体からの受信信号の位相は一般に異なっている。なぜならば、これらの位相差はその距離で少し相違するからである。即ちこの位相差は実際の物体の距離rにわたって変化する。上述した効果は、実際の物体が道路表面より高い所にあるほど、それだけ強く現れる。
【0074】
少なくとも大きく離れた物体に対して、実際の物体及び反映物体は同じ距離−相対速度ゲートに存在する。即ちこれらは同じ方位角を持つが、異なる仰角を持っている。受信アンテナの垂直ずれについて例として前に考察された周期長2に対して、両方の物体を分解することができない。即ち反射重心は平均して道路表面のほぼ高さにある。しかし比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)における著しい複素数成分により、著しく異なる仰角に物体が存在せねばならないことがわかる。実際の物体の受信信号と反映物体の受信信号との位相差は距離にわたって変化するので、距離にわたって、比Vの複素数成分従って以後Vの相対虚数部分と称される量Im(V)/|V|も変化する。Vの相対虚数部分の距離に関係する変化は、実際の物体が道路表面より高い所にあるほど、それだけ大きくなる。近傍範囲を別として、この判定基準を、車道上の重要な物体(例えば車両及び歩行者)とくぐり抜け可能な物体(従って例えば橋標識のように車道の上方にある物体)との区別に利用することができる。例えばVの相対虚数部分の特定の距離に関係する変化から、くぐり抜け可能な物体を推論することができる。図18aは例として、車両(平均高さho=0.5m、垂直寸法0.3m)及び橋(平均高さho=5m、垂直寸法0.3m)に対して、距離rにわたる比Vの相対虚数部分を示し、センサ高さhs=0.5mである。
【0075】
更にこの判定基準を、近傍範囲においても、車道上の重要な高くなっている物体(例えば車両及び歩行者と道路上にある比較的小さく従って乗り越え可能な物体(例えば飲物缶)及び(例えばずれた板継ぎ目による)道路表面の凹凸を区別するために使用することができる。全く又は僅かしか隆起しない車道上の物体に対して、Vの相対虚数部分の距離に関係する変化は、著しく隆起した物体に対するより小さい。更に近傍範囲において、実際に測定される仰角も利用することができる。なぜならば、仰角ビーム集束により、実際の隆起した物体の反射は、その反映物体の反射より著しく大きいので、実際の物体の実際の角度が近似的に測定され、それから近似的に実際の高さが求められるからである。
【0076】
比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)の相対虚数部分のほかに、原則的に、反射のみの場合仰角から生じる比に対する少なくとも1つの偏差を利用する他の尺度も使用して、それからくぐり抜け又は乗り越え可能な物体を識別するための基準を誘導することができる。例えば比Vの絶対虚数部分Im(V)のみを使用することもできる。この尺度Im(V)の値、特に物体距離について濾波された尺度、及びその距離に関する変化は、実際の物体が道路表面の上方で高い所にあるほど、それだけ大きくなる。物体距離について値の濾波は直線的であるか(例えば距離部分についての平均値)又は非直線的であってもよい(例えば距離部分についての最大値)。例として図18bは、車両(平均高さho=0.5m、垂直寸法0.3m)に対する距離rについて比Vの虚数部分を示し、センサ高さhs=0.5mである。
【0077】
更に1つの尺度だけでなく、反射のみの場合仰角から生じる比に対する少なくとも1つの偏差を利用する複数の尺度を使用して、それからくぐり抜け又は乗り越え可能な物体を識別する組合わせ判定基準を誘導することも当然可能である。
【0078】
仰角測定可能性は、仰角方向におけるセンサの誤調節の検出及び場合によっては修正又はその仰角方向の監視にも使用することができる。実際の仰角方向を求めるため、十分大きく離れた動く物体のみが適している。なぜならば、動く物体(車両)は、僅かな特別の場合を別として、自己の車両とほぼ同じ高さにあり、十分な距離においては道路の反映が測定される仰角に僅かな影響しか及ぼさないからである。即ち実際の物体及び反映物体の仰角は僅かしか相違しないからである(両方の物体がどの程度離れていなければならないかは、仰角方向を求めるために必要な精度に関係している)。これに反し静止物体は適していない。なぜならば、このような物体は、(車道上又はその上方に)異なる仰角で存在することがあるからである)。
【0079】
遠く離れた動く物体に対して平均して0°ではない仰角を測定する場合、センサは測定されたこの平均仰角の周りに誤方向を示す。なぜならば、他の車両が自己の車両に対して平均してほぼ水平方向にあり、従って実際の仰角0°の所にあるからである。例えばセンサは、+2°の測定される平均仰角に対して(物体はセンサに対して車道より2°だけ上にある)2°だけ下方を見る。
【0080】
複数の物体の測定される仰角についての平均は、直線的に従って例えば重み付けされる平均値形成により行うことができるが、測定列におけるアウトライアーの影響を少なくする非直線平均が一層よく適している。例として中央値があげられる。
【0081】
仰角方向を求めるために使用される動く物体において測定される仰角にあるアウトライアーは、例えば次の手段により大部分を既に原理的に回避することができる。
自己の車両の車道上を動く物体のみが取られる。従って自己の車道に対して高くずれた他の車道は影響を及ぼさない。
トンネルの天井及び橋の下側における反映によって、仰角測定に誤りが生じる。しかしこれは、たいていの場合、比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)における重要な複素数成分により知ることができる。従ってこのような物体は利用されない。このような物体を検出すると、安全のため特定の期間平均化のため物体を全く利用することができない。
システムになお別のトンネル検出機構がある場合、トンネルが検出されると、原則的に物体を使用することができない。
【0082】
仰角におけるセンサの誤方向がわかっていると、これを容易に除外修正することができる。そのため8つのアンテナ組合わせにわたって生じる値のうち1つおきの値だけが、三次DFTの前に適当な位相値だけ回される。
【0083】
図21〜26による実施例5〜10
今まで考察された実施例は、個別アンテナ毎に(従って送信アンテナ及び受信アンテナ毎に)1つの列のみを持ち、それにより水平方向(方位)に非常に幅広く放射する。このような装置は典型的に近接範囲センサのために使用される。なぜならば、これらのセンサは広い水平検出範囲を持たねばならないが、その代りに大きいレンジを持っていなくてよい。受信アンテナの水平相互間隔d=λ/2は、隣接するアンテナ組合わせの位相差λφ=π・sin(αAz)と方位範囲]−90°,+90°[にある方位仰角αAzの対応が一義的であるように、小さく選ばれている(アンテナが垂直にずれている場合仰角により生じる位相ずれはここでは考慮しない)。
【0084】
遠隔範囲センサのために、近接範囲センサと比べて、一層大きいレンジ従って高いシステム感度及び方位角の高い測定精度及び分離可能性の要求がある。その代りに水平検出範囲は限定されていてもよい。これらの要求を実現するために、アンテナの相互間隔が増大される(例えば今までの設計と比べて係数3だけ増大されるので、受信アンテナの間隔はd=3λ/2であり、送信アンテナの間隔は4d=6λである)。それにより一方では、複数の列を持つアンテナ従って方位方向における一層強い集束が実現され、その結果一層高いアンテナゲイン従って一層高いシステム感度が生じ(限られた方位検出範囲を犠牲にして)、また他方では、隣接するアンテナ組合わせの方位角による位相差Δφ=2πd/λ・sin(αAz)が適当に一層強く現れ、それにより方位角の測定精度及び分離可能性が高まる。
【0085】
d=3π/2に対して生じる位相差λφと方位角αAzとの関係λφ=3π・sin(αAz)が図19に示されている。即ち方位角範囲−90°・・・90°に6πの位相差が対応している。しかし位相は2πの未知の整数倍までしか測定できないので、あいまいさが生じる。こうして例えば方位角−41.8°と+41.8°の間で区別することができない。なぜならば、これらの方位角は位相差Δφ=0で測定されるからである。
【0086】
最大2πの位相差の変化が対応するように限定された方位検出範囲のみを、送信及び/又は受信用の個別アンテナが持っている場合、これらのあいまいさが回避される。上記の数値例に対して、この要求は方位検出範囲−19.5・・・+19.5により満たされる。図20aには、この範囲外の方位角に対していかなる放射又はいかなる受信も抑制する理想的なアンテナダイヤグラムが示されている。厳密な検出限界及び範囲外の完全な抑制を持つこのようなアンテナダイヤグラムは、実際には生じることができない。図20bは、方位−19.5・・・+19.5外で少なくとも15dBの抑制を持つ実現可能なアンテナダイヤグラムを示す。送信及び受信用のアンテナがこのようなアンテナダイヤグラムを持っている限り、システム面に2倍の値30dBの抑制が生じる。それにより非常に強く反射する物体に対してしか、方位角に対するあいまいさが生じる可能性はない。
【0087】
送信及び/又は受信用アンテナの適当に限定された方位検出範囲により方位角のあいまいさを大幅に防止するため、水平に見て、これらのアンテナの幅は、水平に順次に続く受信アンテナの間隔dの少なくとも約2倍の大きさでなければならない。この要求を満たすために、プレーナアンテナに対して次の5つの異なる手掛かりが紹介される。
送信アンテナが、垂直に見て受信アンテナとは異なる面(従って異なる範囲)に設けられている。即ちこれらのアンテナは重なっている(例として図21参照)。それにより送信アンテナの水平幅は、水平に順次に続く受信アンテナの間隔dより4倍まで大きく選ぶことができる。図21による例では、送信アンテナのみが必要とされる狭い方位検出範囲を持つが、受信アンテナはそうではない。それにより一層強く反射する物体に対して、方位角に対するあいまいさがまだ生じる可能性がある。注意すべきことは、送信アンテナの形状及び放射特性が受信アンテナの形状及び放射特性に対して原理的に相違していてもよいことの例を、図21が示していることである。
水平に順次に続く受信アンテナは交互に垂直にずらされて、E個の異なる垂直面にある。図22に示す例では、2つの面があり、従って交互のずれは周期長2を持っている。両方の受信アンテナRX0及びRX2は、他の2つの受信アンテナRX1及びRX3より上の面にある。受信アンテナのためにE個の異なる面を使用すると、その水平幅は水平に順次に続く受信アンテナの間隔dよりE倍まで大きく選ぶことができる。受信アンテナの垂直ずれにより、上述した仰角測定能力が潜在的に生じる。
送信アンテナ及び/及び受信アンテナは垂直でなく、水平面に対して斜めに設けられている(例として図23参照。そこでは斜めのアンテナが送信及び受信のために使用される。)それによりアンテナの水平幅をその間隔よりほぼ任意に大きくすることができる。絶対の近接範囲を別として、0°の範囲にある仰角に対して、従ってほぼ水平面にある物体に対してのみ、放射特性の大きい集束が得られるが、そこにはシステムの視点から重要なすべての物体がある。0°とは著しく相違する仰角に対して、水平方向に僅かなビーム集束しか行われず、それはせいぜい絶対の近接範囲において道路より上にある物体に対して不利に作用するだけである。0°とは著しく相違する仰角に対する一層少ないビーム集束は、システム面において、送信アンテナ及び受信アンテナを異なる方向に(一方を右へ、他方を左へ)傾斜させることによって、原理的に回避することができる。
アンテナは水平方向に互いにはまり合わされている(例として図24a及び図24b参照。そこでは受信アンテナが互いにはまり合わされている)。それによりアンテナの水平幅を、その間隔の2倍までの大きさにすることができる。はまり合いにより、図24aによる装置では、垂直方向にアンテナのずれが生じ、従って上述した仰角測定可能性を生じるが、図24bによるアンテナ装置ではそうではない。両方の例に示す側方からのはまり合いの代わりに、上又は下からもはまり合いを行うことができる。
放射素子又は受信素子は、少なくとも2つのアンテナにより共通に利用される(例として図25参照。そこではそれぞれ2つの隣接する受信アンテナにより3つのパッチ列が一緒に利用され、その受信される出力は3つのアンテナへ分割される)。それにより理論的に、アンテナをその間隔よりほぼ任意に幅広くすることができるが、特に高周波接続線の交差部は実現困難なので、実際にはその場合分配回路網はますます複雑になる。
【0088】
アンテナを配置するための上述した手掛かりなしでは、アンテナの間隔に相当するその水平幅しか実現されず、それにより方位角にあいまいさが強く現れすぎるであろう。
【0089】
なお述べておくべきことは、遠隔範囲センサ用の上述したアンテナ装置は常に2つの送信アンテナを外部に持ち、それによりセンサの有効アパーチャはその幅に対してほぼ2倍にされ、それにより24GHz範囲でも、長距離機能用センサが容認できるセンサの大きさで実現される。200mの距離まで物体から受信信号を受信できるために、実施例1及び2の設計とは異なり、線形周波数変調は半分の周波数偏移即ち93.75MHzしか持っていない。
【0090】
特に水平方向におけるアンテナの重なりを実現するための上述した方法は、近接範囲センサのためにも適用可能である。図10による実施例は、受信アンテナの上に送信アンテナを設ける例である(即ちアンテナは垂直に見て異なる面にある)。図26には送信アンテナと受信アンテナの水平はまり合いが示され、このはまり合いにより、送信アンテナとそれぞれ隣接する受信アンテナとの間にd/2=λ/4の間隔を実現することができ、それにより送信アンテナと受信アンテナを大体において1つの面に配置するにもかかわらず、図12の配置3におけるように共通な送信アンテナ及び受信アンテナは必要でない。
【0091】
図27による実施例11
遠隔範囲センサにおける方位角測定のあいまいさを減少又は回避するための上述した手段は限られた方位検出範囲に帰着した。しかしセンサにより長距離機能及び短距離機能を同時に実現しようとすれば、広い方位検出範囲が要求される(例えば−80°・・・+80°)。これは、図27による実施例について説明される次の手掛かりによって実現される。
【0092】
図23によるアンテナ構成に対して、今や考察される図27の構成では、2つの相違点がある。一方では個別アンテナは、方位範囲−19.5・・・+19.5外でも、アンテナダイヤグラムにある適当な肩部により著しく放射又は受信を行う(図28参照)。このような肩部は、パッチが、個別アンテナの水平方向に見て中間の範囲において、他の範囲より著しく多く放射することによって形成可能であり、それにより狭いアンテナダイヤグラムと広いアンテナダイヤグラムが重ねられ(このような手掛かりにより、大きいレンジが必要とされる中間範囲におけるアンテナゲイン従ってシステム感度が比較的僅かしか低下しない)。そして他方では、2つの受信アンテナRX0とRX2が、受信アンテナの平均水平ずれd=3λ/2より係数12だけ小さい水平距離t=λ/8だけ右へずらされている。それにより8つのアンテナ組合わせの相対位相中心は水平方向に等間隔ではなく、等間隔ラスタに対して周期長2で交代するずれを持っている。従ってセンサに対して大きく離れた所で静止している物体に対して、方位角αAzにおいて受信信号の位相φ(m)は、アンテナ組合わせm=0,1,・・・,7にわたって直線的な成分に加えて、周期長2で交代する成分を持ち、図7bと同じように次のようになる。
【0093】
対応する距離−相対速度ゲート(j,l)にこの1つの物体がある限り、そこの複素数値v(j,l,m)は、二次DFT後8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・7について
となり、ここでKはこれらの値の一定の値である。
【0094】
それにより前に考察された仰角測定可能性におけるのと全く同じ状態が、個々の受信アンテナの周期長2で交代する垂直ずれによって得られる。個々の受信アンテナの周期長2
Tにおいて形成されるv(j,l,m)のスペクトルw(j,l,n)は2つの出力ピーク、即ち方位角αAzに対応する周波数nAzにおける出力ピークと、半分のDFT長だけ離れた周波数nAz+N/2における出力ピークとを持ち、これら2つの出力ピークのスペクトル値の比に対して次式が成立する。
【0095】
図29は、DFT長N−16の半分だけ離れてn=0及びn=10の所にある2つの出力ピークを持つスペクトルw(j,l,n)の値の推移を示す。
【0096】
受信範囲+9°・・・+90°におけるすべての方位角αAzに対して、ここで考察されるt=λ/8において、比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)の値は1より大きい。それにより方位角αAzに属する周波数値n=nAz)は、大きい方の出力ピークの位置として求められる。従って図29の例ではnAz=2が生じる。もちろんそれにより方位角αAzはまだ一義的には決まっていない。なぜならば、各n=nAzに対してαAzの3つの異なる値が対応しているからであり、図29の例ではなお3つの方位角αAz=4.7°,48.6°及び−35.7°が問題になる。(方位角測定能力の上述した推論と同じように、上記の関係式を変形することにより、方位角を比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)からも求めることができる。
【0097】
t=λ/8についてこの関係式は全方位検出範囲−90°・・・+90°にわたって一義的である(2π/λ・sin(αAz)・tε]−π/4,π/4[のため)ので、それにより3つの問題となる方位角のうち正しい方位角を求めることができ、方位角算定は距離−相対速度ゲートにおいて個々の物体に対して一義的であり、この一義性は受信アンテナの交代する水平ずれにわたって生じる(このずれがないと、3つの異なる方位角を区別することができないであろう)。
【0098】
1つの距離−相対速度ゲートに、2つの周波数値n及びn+N/2に対応する異なる方位角で複数の物体の反射があると、一般にこれらをもはや分離することができない。即ち量j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)にある一般に重要な複素数成分により、複数のこのような物体があることを知って、特定の可能な仮定を誘導できるだけである。これらの仮定のうちどれが正しいかを大抵はもっともらしさの考察によって知ることができる。その例は次の通りである。
追尾(従って複数のサイクルにわたる物体の観察)により、センサに対して動く物体の場合、一般に複数の可能な仮定のうちどれが正しいかがわかる(例えば同じ周波数値n及びn+N/2への融合が一時的にのみ行われ、大抵は1つの仮定に対してのみ物体の場所の有意義な推移が生じる)。
図28に示すような個別アンテナダイヤグラムによって、高いアンテナゲインを持つ中間範囲からの物体は、小さいアンテナゲイン(肩部)を持つ外側範囲からの物体より一般に著しく高いレベルを持っているので、中間範囲及び外側範囲に物体が存在する場合、中間の物体がレベルにおいて優勢であり、従って正しい方位角で検出され、これが機能の観点から十分である。なぜならば、この中間の物体が重要な物体だからである。
【0099】
今まで考察した図27の例は、受信アンテナに垂直ずれを持たず、従って仰角測定能力を持っていない。原理的にはこのような垂直ずれを重畳することもできる。垂直ずれ及び水平ずれに対して異なる周期長を選ぶと、その作用は直ちに分けられるので、ただ1つの物体に対する方位角及び仰角を距離−相対速度ゲートにおいて一義的に求めることができる。周期長が同じ場合適当なもっともらしさの考察が必要である。
【0100】
広く放射する距離範囲センサにおける方位角の一義的な測定のための上述した手掛かりを、高解像度であるがあいまいなディジタル方位ビーム形成へ、個別物体に対して一義的であるけれども大まかな方位角算定のためのモノパルス法が含まれているように、解釈することもできる。この手掛かりは、一方では等間隔受信アンテナに基くすべての評価方法(例えばDFTによる簡単なディジタルビーム形成)を維持でき、他方では方位角に対して精度の低下を持たずかつ分離能力の僅かな低下しか持たない、という利点を持っている(後者は同じ周波数値nで出力ピークを生じる物体においてのみ)。両方の出力ピークのうち大きい方の出力ピークから出力ピークをできるだけ正確に求めるため、既に前述したように、隣接する出力値で補間を行い、それから補間される最大値を求めることができる。
【0101】
述べておくべきことは、アンテナ組合わせの周期的な水平ずれを原則的に2より大きい周期長でも形成できることである。その場合物体により、スペクトル中に、一般にそれぞれ間隔N/Qを持つQ個の出力ピークが生じ、ここでNはディジタルビーム形成のDFT長である。これらの出力ピークの値から、再び方位角を一義的に求めることができ、しかも同じ周波数値nにおいて出力ピークを発生する物体の分離が可能になる。このような手掛かりによって、DFTにおいて2つのディジタルビーム形成が重畳される。一方のビーム形成は精密であるがあいまいであり、他方のビーム形成は個別物体に対して一義的であるが大まかである。強調すべきことは、長レンジ機能及び短レンジ機能を実現するためセンサに対してここに紹介される手がかりが実質的に高価でも安価でもないことである。
【0102】
最後の注
述べておくべきことは、上記の例について示した本発明による考察及び実施例が一般的な設計及びパラメータ設定に転用され、即ち異なる数値(例えばアンテナの水平及び垂直間隔のための数値)へも適用可能なことである。従って式及び図には、具体的な数値のほかに、一般的なパラメータもしばしば示されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における運転者援助システムに使用するためのレーダシステムに関する。レーダシステムは、本発明によれば、方位角測定能力を持っている。
【背景技術】
【0002】
自動車は運転者援助システムを備えるようになっており、このシステムはセンサシステムにより周囲を検出し、こうして検出される交通状況から、車両の自動的な反応を誘導し、かつ/又は運転者に指図特に警告する。その際快適機能と安全機能が区別される。
【0003】
快適機能として、現在の開発ではFSRA(全速力範囲適応経済速度走行制御)が最も重要な役割を果たしている。車両は、交通状況が許す場合、自己速度を運転者により規定される希望速度に制御し、他の場合には自己速度が交通状況に自動的に合わされる。
【0004】
快適さの向上のほかに、安全機能がますます強く重視され、非常状況において制動距離又は停止距離が最も重要な役割を果たす。適当な運転者援助機能の多様性は、制動遅れ時間を減少するため制動機の自動的な予備充填(Prefill)から、改善された制動援助(BAS+)を経て自動的な非常制動までに及んでいる。
【0005】
上述した種類の運転者援助システムのために、現在主としてレーダセンサが使用される。レーダセンサは悪い気象条件でも確実に動作し、物体からの間隔のほかに、ドップラ効果を介してその放射状相対速度も直接測定することができる。その際送信周波数として24及び77GHzが使用される。
【0006】
費用及び大きさの理由から、現在利用可能なレーダセンサは方位角の測定能力のみを持ち、仰角の測定能力を持たず、それにより静止している車両と車道(例えば橋)より上の物体又は車道上にある小さい物体(例えばコーラ缶)及び(例えばずれた板継ぎ目による)道路表面の凹凸とを確実に区別することができない。従って現在のシステムでは、静止している物体に全く又は僅かな範囲でしか反応が行われず、このことは特に制動距離又は静止距離を少なくするための安全機能にとって不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、センサの費用及び大きさを全く又は僅かしか増大しない仰角測定能力を生じることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、原則的に請求項1〜14に記載のレーダシステムにより解決される。その際個別のアンテナの周期的な垂直ずれによる方位角の形成に、仰角の形成をとのように重畳できるかが示される。
【0009】
本発明の利点は、費用及び大きさに対してほぼ中立的な仰角測定能力によって、静止している車両(例えば停滞車両)に対して一層強い反応が行われるという事実から生じ、このことは制動距離又は停止距離を減少する安全機能にとって特に重要である。
【0010】
本発明による自動車の周辺検出用レーダシステムは、少なくとも2つの送信アンテナにより送信信号を放射する送信手段、物体において反射される送信信号を1つ又は複数の受信アンテナにより受信する受信手段を含み、各アンテナが位相中心を持っている。更に受信した信号を処理する信号処理手段が設けられている。これらの送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得される。各組合わせにおいて、それぞれ1つの送信アンテナ及び受信アンテナが動作する。こうして受信信号が、それぞれ1つの送信アンテナに由来して受信アンテナにより受信される反射信号から生じる。各組合わせに、基準点からそれぞれの送信アンテナ及びそれぞれの受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される相対位相中心が対応せしめられる。
【0011】
更に受信される信号を処理する信号処理手段が設けられている。送信アンテナ及び受信アンテナが、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持っている。しかし送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して異なっていてもよい。空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して、相対位相中心の位置に関して空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの列が考察される時、送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Pで周期的に変化する。このようなアンテナ装置の構成の1例が、図13に符号13.1で示されている。物体の受信信号が、空間方向Sにおけるその角度位置に従って、このように規定される送信アンテナと受信アンテナのこのように規定される組合わせにわたって周期長Pで交番する位相成分を持ち、それによりこの空間方向Sに対して物体の位置を表すことが可能であることが、信号処理手段において利用される。
【0012】
Rが水平方向であり、Sが垂直方向であり、従って物体の受信信号の周期長Pで交番する位相成分によって、その垂直位置について表すことができる。
【0013】
有利なな構成では、送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心が、空間方向Rに関して少なくとも近似的に等間隔の所にある。
【0014】
特に信号処理手段において、送信アンテナと受信アンテナの異なる組合わせから受信信号に、ディジタルビーム形成又は高分解方式(例えばブルクによるようなモデルに基く方式又はMUSICのようなサブスペース方式)が適用されて、それから空間方向R及び空間方向Sにおける物体の位置を測定又は評価する。
【0015】
本発明の有利な構成では、ディジタルビーム形成が、場合によっては窓関数を利用して、長さNの離散フーリエ変換(DFT)により行われ、そのため空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が使用される。
【0016】
本発明の有利な構成では、空間方向Sにおける物体の位置を評価するために、物体が長さNを持つDFTのスペクトルにおいて一般にP個の出力ピークをそれぞれの間隔N/Pで発生することが利用され、これらの出力ピークにおけるスペクトル値の関係が、空間方向Sにおける物体の角度位置に関係している。NはDFT長であり、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が考察される時、Pは送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が空間方向Sに関して交番する周期長である。本発明の好ましい構成では、周期長P=2である。
【0017】
により評価され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数値nAz及びnAz+N/2におけるスペクトル値を示し、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、sは相対位相中心の垂直ずれ、λは使用される平均波長である。
【0018】
本発明の有利な構成では、Sが垂直方向であり、この垂直な空間方向Sにおける物体の角度位置の評価が、仰角方向におけるレーダシステムの誤調節を検出するために利用される。
【0019】
本発明の有利な構成では、仰角における誤調節を検出するために、十分大きく離れた所で移動する物体のみが使用され、その際物体の距離は、道路表面の反映特性が測定結果の著しい誤りを生じないような大きさでなければならず、複数の物体の評価される角度位置についての平均が行われ、その際直線平均(例えば重み付き平均値形成)又は非直線平均(例えば中央値形成)が使用される。
【0020】
特に下をくぐるか又は乗越え可能な物体を検出するため、比V=j・w(nAz+N/2)/w(nAz)の虚数部分が直接に又は比の値|V|により割り算して使用され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数nAz及びnAz+N/2における両方の出力ピークのスペクトル値であり、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、特に物体距離について濾波される値及び/又は距離に関係するこの尺度の変化から、道路表面の上の物体の高さが推論される。
【0021】
レーダシステムの有利な構成は、複数の送信アンテナ(個数NSなるべく2)及び複数の受信アンテナ(個数NE)を備え、受信アンテナNEは空間方向Rに関してこれらNS個のうち外側送信アンテナ外になく、かつそれぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、かつこの方向Rにおけるその位相中心に関してそれぞれ少なくとも近似的に等間隔に設けられている。送信アンテナは、空間方向RにおいてこれらNS個の送信アンテナの相互間隔が、NE個の受信アンテナの相互間隔より係数NE又はNE−1だけ大きく、それにより1つの送信アンテナとこの空間方向Rに等間隔に設けられて少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ最大でNS・NE個の受信アンテナが合成される。
【0022】
有利な構成では、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナがプレーナ技術で実現されて、平らな面に設けられ、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナのうち少なくとも2つが空間方向Rに関して重なっている。この重なりは、これらの送信アンテナ及び受信アンテナの次の配置又は構成の少なくとも1つによって実現される。
アンテナが空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して互いにずれており、例えば水平な空間方向Rに対して送信アンテナが受信アンテナの上に設けられているか、又はその逆である。
送信アンテナ及び/又は受信アンテナが、空間方向Rに関して斜めの形状を持ち、例えばそれぞれのプレーナアンテナの列及び/又は行が平行又は直角ではなく、斜めに即ち空間方向Rに対して0°<|α|<90°の角αをなして設けられている。
アンテナが、図24の特別な実施例に示されているように、空間方向Rに関して互いにはまり合っている。
放射するか又は受信する素子(例えばパッチ)が、少なくとも2つの送信アンテナ又は受信アンテナにより共通に使用される。
少なくとも1つのアンテナが送信及び受信のために使用される。
【0023】
本発明の有利な構成では、送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得される。その際使用される送信アンテナ及び受信アンテナが少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して相違していてもよい。空間方向Rに関して、送信アンテナ及び受信アンテナから成るこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Qで周期的に等間隔ラスタだけ変化する。信号処理手段において空間方向Rにおける物体の位置を求めるために、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの列が考察される時、物体の受信信号が、空間方向Rにおけるその角度位置に従って、線形位相成分のほかに周期長Qで交番する位相成分を持っていることが、利用される。受信信号の線形位相成分は、空間方向Rにおける精密であるがあいまいな角度算定を可能にし、これに反し交番する位相成分は、粗いが一義的な角度算定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 レーダシステムの第1実施例を示す。
【図2】 第1実施例について、いわゆる周波数ランプから成る送信信号及び受信信号の周波数、及びその際順次制御されるアンテナ組合わせを示す。
【図3】 第1のDFT(左)の前及び第1のDFT(右)の後に2つの物体が存在する場合走査される信号を示す。
【図4】 物体がちょうど存在する距離ゲート4において周波数ランプにわたって回転する複素スペクトル値を示す。
【図5】 二次DFT後の2次元複素数スペクトルを示す。
【図6】 アンテナ装置の第1実施例について、個別アンテナとセンサと方位角αAZ<0において大きく離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を示す。
【図7a】 2つの送信アンテナ及び4つの受信アンテナを持つアンテナ装置の第1実施例と等価な1つの送信アンテナ及び8つの受信アンテナを持つアンテナ装置を示す。
【図7b】 この等価装置について、個別アンテナと遠く離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を示す。
【図8a】 上記のアンテナ装置について、(センサに対して静止している)物体がちょうど存在する距離−相対速度ゲート(9.0)においてアンテナ組合わせにわたって回転する複素数スペクトル値を示す。
【図8b】 三次DFT後のスペクトルの値を示す。
【図9】 3次元DFTの前(左)のデータ及びその後(右)の3次元複素数スペクトル(右)を示す。
【図10】 レーダシステムの第2実施例を示す。
【図11】 第2実施例について、すべてのアンテナ組合わせの並列制御の際における送信信号及び受信信号の周波数を示す。
【図12】 レーダシステムの第3実施例を示す。
【図13】 レーダシステムの第4実施例を示す。
【図14】 第4実施例のアンテナ装置について、個別アンテナと大きく離れかつセンサに対して静止している物体との間で異なる波長を、仰角αEl>0と方位角αAZ=0との間で相違する波長を示す。
【図15a】 図14に示す状態について、(センサに対して静止している)物体がちょうど存在する距離−相対速度ゲート(9.0)においてアンテナ組合わせにわたって回転する複素スペクトル値を示す。
【図15b】 DFT長さN=16の半分だけ離れている2つの出力ピークを持つ三次DFT後のスペクトルの値をn=2及びn=10において示す。
【図16】 複素面において、第4実施例の仰角測定能力のための関係を変換する関係を示す。
【図17】 道路表面の反映作用を示す。
【図18a】 状態Vの相対虚数部分を示す。
【図18b】 車両(平均高さhO=0.5m、垂直寸法0.3m)、橋(平均高さhO=5m、垂直寸法0.3m)、及びセンサ高さhS=0.5mについて、それぞれ距離rにわたる状態Vの絶対虚数部分を示す。
【図19】 d=3λ/2に対して生じる位相差Δφと方位角αAZとの関係Δφ=3π・sin(αAZ)を示す。
【図20a】 方位検出範囲−19.5・・・+19.5を持つ理想的なアンテナダイヤグラムを示す。
【図20b】 少なくとも15dBの外部抑制を持つ検出範囲のために実現可能なアンテナダイヤグラムを示す。
【図21】 レーダシステムの第5実施例のアンテナ装置を示す。
【図22】 レーダシステムの第6実施例のアンテナ装置を示す。
【図23】 レーダシステムの第7実施例のアンテナ装置を示す。
【図24a】 レーダシステムの第8実施例のアンテナ装置を示す。
【図24b】 レーダシステムの第8実施例の別のアンテナ装置を示す。
【図25】 レーダシステムの第9実施例のアンテナ装置を示す。
【図26】 レーダシステムの第10実施例のアンテナ装置を示す。
【図27】 レーダシステムの第11実施例のアンテナ装置を示す。
【図28】 適当な肩部により方位範囲−19.5・・・+19.5外でも感度を持つアンテナダイヤグラムを示す。
【図29】 第11実施例について、DFT長N=16の半分だけ離れた2つの出力ピークを持つ三次DFT後におけるスペクトルの値の推移をn=2及びn=0において示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
さてレーダシステムの構成及びそのアンテナの配置により本発明を以下に説明する。まず注意すべきことは、広がっている物体が明らかに問題でない限り、図、ダイヤグラム及び推論において点状物体から出発する。
【0026】
図1による実施例
まず図1に大まかに示されているレーダシステムの構成例が考察される。レーダシステムは、送信信号を放射する2つの送信アンテナTX0及びTX1と、物体において反射される送信信号を受信する4つの受信アンテナRX0〜RX3を持っている。アンテナは、平らな基板1.1上にプレーナ技術でパッチアンテナとして構成され、この基板は水平方向及び垂直方向に関して図に示すように向けられている。すべてのアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)は高度及び方位において同じ放射特性を持っている。4つの受信アンテナ(従ってその位相中心従って放射中心)はそれぞれ同じ横方向即ち水平相互間隔d=λ/2=6.2mmを持ち、λ=c/24.15GHz=12.4mmは放射される信号の平均波長である。両方の送信アンテナの水平相互間隔は4倍の大きさ、従って4d=2λである。
【0027】
マルチプレクサ1.3及び1.4を介して、両方の送信アンテナの1つ及び4つの受信アンテナの1つをそれぞれ選択することができる。
【0028】
そのつど選択される送信アンテナで放射される送信信号は、24GHz範囲にある高周波発振器1.2から得られ、この発振器は制御電圧Vsteuerを介して周波数を変化することができる。制御電圧は制御手段1.9において発生される。そのつど選択される受信アンテナにより受信される信号は、実数ミキサ1.5において、同様に発振器1.2の信号と低周波範囲へ入るように混合される。それから受信信号は、図示した伝達関数を持つ帯域通過フィルタ1.6、増幅器1.7及びA/D変換器1.8を通り、続いてディジタル信号処理装置1.10において更に処理される。
【0029】
物体からの距離を測定できるようにするため、図2に示すように、高周波発振器従って送信信号の周波数は、非常に速やかに線形に変化される(8μsに187.5MHzだけ)。その際周波数ランプについて述べられる。周波数ランプは周期的に反復され(すべて10μs)、全部で2048の周波数ランプがある。周波数ランプにわたって、2つの送信アンテナと4つの受信アンテナから成る8つの組合わせが、TX0/RX0,TX0/RX1,TX0/RX2,TX0/RX3,TX1/RX0,TX1/RX1,TX1/RX2及びTX1/RX3のシーケンスで周期的に反復され、各周波数ランプの前でそれぞれ次の組合わせが選択される。図2において、kは各アンテナ組合わせに対して2408/8=256の周波数ランプについての制御変数であり、m=4・mTX+mRXはアンテナ組合わせTXmTX/RXmRXについての制御変数である。
【0030】
個々の物体の受信信号は、混合後従って各周波数ランプ及び8つのアンテナ組合わせの各々のためのA/D変換器においても、正弦波振動である。これは図2により次のように説明することができる。即ち物体がレーダシステムに対して放射状相対速度0を持っていると、送信される信号と受信される信号との周波数差Δfは一定であり、信号伝搬時間Δt従って放射状距離r=c・Δt/2に比例し、ここでcは光速度であり、係数1/2は伝搬時間Δtが波の往復に関係することを考慮している。即ち周波数差Δfは、上記の設計ではΔf=2r/c・187.5MHz/8μs=r・156.250kHz/mとなる。受信される信号は発振器周波数従って送信周波数と実数値で混合されるので、混合後周波数Δfを持つ正弦波状振動が生じる。この周波数はMHz範囲にあり、消滅しない放射状相対速度の場合まだ二重周波数だけずらされるが、この二重周波数はkHz範囲にのみあり、従って周波数成分に対して物体距離により近似的に無視することができる。複数の物体があると、受信信号は異なる周波数の複数の正弦波振動の重畳である。
【0031】
各周波数ランプの期間中に、A/D変換器における受信信号は256回それぞれ25ns(従って40MHz)の間隔で走査される(図2参照)。図2からわかるように、信号走査は、物体からの受信信号が受信可能な距離範囲に達する時間範囲においてのみ有意義であり、従ってランプ開始後少なくとも最大に受信可能な距離に相当する伝搬時間を待たねばならない(最大に受信可能な150mの距離では、これは1μsに相当する)。
【0032】
それから各周波数ランプの256走査値にわたって、高速フーリエ変換(FFT)の形の離散形フーリエ変換(DFT)が形成される。それにより異なる周波数を生じる異なる距離にある物体を分離することができる(図3参照、2つの物体が存在する場合左の信号はDFT前、右の信号はDFT後)。DFTの離散した周波数チェックポイントjの各々は距離rに相当し、従ってパルスレーダと同様に距離ゲートとも称することができる。即ち上記の設計では、距離ゲートはちょうど間隔従って1mの幅を持っている(r・156.250kHz/m=1/(6.4μs)から生じる)。物体が存在する距離ゲートにおいて、DFTに出力ピークが生じる。走査される受信信号は実数であり、図1のアナログ帯域フィルタ1.5の上部移行範囲は8.75MHzの周波数帯域幅を持っている(56の周波数チェックポイントの範囲に相当する)ので、256の離散周波数チェックポイントの100のみが更に処理可能である(注意すべきことは、フィルタの任意に狭い移行範囲は実現不可能なことである。フィルタ1.5は小さい周波数従って近い物体の受信信号を減衰して、増幅器1.6及びA/D変換器1.7の過制御を回避する(アンテナで受信される信号は、減少する物体間隔と共に強くなる)。
【0033】
256の周波数ランプ(k=0.1,・・・,255)にわたって、各距離ゲートj(従って100の考察される周波数チェックポイントの各々)について8つのアンテナ組合わせ(m=0.1,・・・7)の各々に複素スペクトル値e(j,k,m)が生じる。1つの距離ゲートに相当する距離に正確に1つの物体があると、この距離ゲートにおいて複素スペクトル値が、各アンテナ組合わせの256の周波数ランプにわたって二重周波数で回転する。なぜならば、周波数ランプから周波数ランプへ距離(mm範囲又はそれ以上)従って対応する振動の位相位置が均一に変化するからである(図4参照。そこに示される周波数ランプ毎に45°の位相変化は物体のλ/(8・2)=0.78mmの距離減少に相当し、平均波長はλ=c/24.15GHz=12.4mmであり、分母の係数2は波の往復を考慮し、それからvrel=0.78mm/80μs=35km/hの放射状相対速度が生じる。即ち放射状相対速度の正の符号は接近と定義されている)。同じ距離ゲートにおいて異なる放射状相対速度を持つ複数の物体は、256の周波数ランプに生じる複素スペクトル値にわたる各アンテナ組合わせ及び各距離ゲートに対して二次DFTが計算されることによって、分離される。この二次DFTの離散した各周波数チェックポイントは1組の二重周波数に相当し(二重周波数の走査のため、それはその走査周波数の未知の整数倍までのみ求めることができる)、従って物体の1組の放射状相対速度vrelに相当するので、二次DFTの離散周波数チェックポイントを相対速度ゲートと称することができる。即ち放射状相対速度に対して、これから用語を簡単化するため、付加語“放射状”が省略される。二次DFTは相対速度を求めるのに役立つだけでなく、その積分により検出感度も−256の周波数ランプでは約10・log10(256)=24dBだけ高める。
【0034】
相対速度のためこの二次DFT後、各アンテナ組合わせに対して二次元複素数スペクトルが生じ、個々のセルは距離−相対速度ゲートと称することができ、物体により、それぞれ対応する距離−相対速度ゲートに出力ピークが現れる(図5参照)。
【0035】
最後に8つのアンテナ組合わせから情報が融合される。両方の送信アンテナから出て個々の物体で反射される波は、異なる相対位相位置を持つ方位角αAzに関係して4つの受信アンテナへ達する。なぜならば、物体と送信アンテナ及び受信アンテナとの間の距離は少し相違しているからである。今やこれが詳細に説明され、考察される物体はまずセンサに対して静止しており、即ちそれが相対速度0を持っている。図6に垂直投影で、アンテナの位相中心、及びセンサに対して大きく離れて静止している物体までのビーム路が、方位角αAz<0(正のαAzは基板面に対する垂直面の右を意味する)及び仰角αEl(基板面に対して水平な垂直面における)で示されている。即ち物体は、ビーム路が平行であると仮定できるほど遠く離れており、即ち物体はアンテナ装置のフラウンホーファー領域にある。送信アンテナTXmTXから物体へかつ逆に受信アンテナRXmRXへのアンテナ組合わせm=4・mTX+mRXのための距離r(m)は次式で与えられ
ここでrRPはアンテナ基板上の基準点RPから物体への距離、aは基準点と送信アンテナTX0との水平間隔である。この関係式から、間隔がアンテナ組合わせの数mと共に直線的に変化することがわかる。量(2a+d/2+m・d)は基準点RPに対するアンテナ組合わせmのいわゆる相対位相中心の水平間隔を示し、基準点に対する送信アンテナ及び受信アンテナの水平間隔から成る和である(ここで送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心は、基準点から送信アンテナ及び受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和と定義されている)。
【0036】
アンテナ組合わせm=0.1,・・・,7の受信波とアンテナ組合わせm=0の受信波との位相差φ(m)−φ(0)は、異なる距離r(m)に基いて次式となり
従ってアンテナ組合わせの数mと共に直線的に変化する。異なるアンテナ組合わせで受信される信号の振幅は一定である。なぜならば、すべてのアンテナは同じ放射特性を持ち、遠く離れた物体に対するアンテナの間隔は、レベルの考察に対して無視できるほど僅かしか相違していないからである。
【0037】
直ちにわかるように、図7bによる垂直投影を持つ図7aのアンテナ装置に対して、今まで考察した図1の装置と同じ関係が、距離r(m)及び位相差φ(m)−φ(0)に対して生じる。即ち図7aによる装置は1つだけの送信アンテナTX0と8つの等間隔受信アンテナRX0−RX7を持ち、アンテナ組合わせm=mRXは今や送信アンテナ及び受信アンテナRXmRXから形成される。アンテナ組合わせの一致する個別アンテナ及び一致する位相関係のため、両方のアンテナ装置は角度測定能力に関して等価である。しかしここに紹介される図1の装置は、図7aによる従来の装置と比較してほぼ半分の寸法しか持たず、それによりセンサの大きさが著しく減少する、という利点を持っている。
【0038】
8つのアンテナ組合わせmにわたって直線的に増大又は減少しかつ方位角に関係する位相差φ(m)−φ(0)は、場合によっては可能な一定の従って補償可能な位相ずれを別として、二次DFTの後まで維持される。即ち距離−相対速度ゲート(j,l)に1つの物体しか存在しないと、そこの複素スペクトル値v(j,l,m)は、8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・,7にわたって方位角に関係する一定の回転速度(例として図8a参照)で回転する。従って各距離−相対速度ゲートにおいて、方位方向に対してディジタルビーム形成を行うことができる。そのため直線的に変化する位相を持つ1組の複素係数をそれぞれ乗算される8つのアンテナ組合わせに対する複素数値にわたって和を形成する。即ちそれぞれの係数の組の直線的位相変化に関係して、異なる放射方向を持つ放射ローブが生じる。これらの放射ローブの放射幅は個別アンテナの放射幅より著しく小さい。上述した加算は16点DFTにより実現され、8つのアンテナ組合わせの8つの値は8つの0により補足される。このDFTの離散周波数値n=0.1,・・・15は、隣接するアンテナ組合わせの間の異なる位相差Δφ=φ(m)−φ(m−1)=2π・n/16に相当し、従って異なる位相角αAz=arcsin(Δφ・λ/(2πd))=arcsin(n・λ/(16d))に相当し、従って角度ゲートと称することができる。図8bには、図8aに記載の状態に対する三次DFTのスペクトルの推移w(j,l,n)が数値で示される。この図8aに記載の状態は方位角αAz=14.5°をなす物体に関する(π/rに相当する45°の隣接するアンテナ組合わせの図示した位相差に対して、n=2が対応し、d=λ/2に対して方位角αAz=arcsin(π/4)=14.5°が対応する)。三次DFTは方位角を求めるために用いられるだけでなく、その積分によって8つのアンテナ組合わせの場合検出感度を約10・log10(8)=9dBだけ高める。
【0039】
これまで方位角を求めるために、物体が相対速度0を持っていると仮定した。そうでない場合、アンテナ組合わせの間の位相は更に相対速度に比例して直線的に変化する。なぜならば、図2による8つの順次に続くアンテナ組合わせの受信信号は、それぞれ10μsの時間的ずれを持ち、この時間中に距離が少し変化するからである。それぞれ三次DFTが1つの距離−相対速度ゲート従って特定の相対速度に属しているので、8つのアンテナ組合わせにわたって相対速度により発生される直線的位相変化を、三次DFTの前又は後に補償することができる。DFTの前の補償の際、複素入力値の位相を移動し、DFTの後の補償の際出力値に属する離散周波数値nを移動せねばならない。相対速度の上述したあいまいさのため、この補償はあいまいな相対速度のために使用される仮定に従って異なる方位角を生じる。
【0040】
(アンテナ組合わせにわたって相対速度により発生される直線的位相変化の補償を含めて)方位角のこの三次DFTの後に、三次元複素数スペクトルが生じ、その際個々のセルを距離−相対速度−角ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度−角ゲートに出力ピークを生じることができる(図9参照。左は三次元DFT前のデータ、右はその後のデータ)。従って出力ピークを求めることによって、物体を検出し、その尺度即ち距離、(場合によっては存在するあいまいさを別として)相対速度及び方位角(相対速度の各あいまいさ仮定に対応する値。図9参照)を求めることができる。出力ピークはDFT窓変換により隣接セルにもレベルを持つので、このレベルに関係して補間により物体寸法をゲート幅より著しく正確に求めることができる。注意すべきことは、出力ピークが(十分な物体分離のために)幅広くなりすぎないけれども、(強く反射する物体の存在するところで弱く反射する物体も検出できるようにするため)、窓スペクトルの二次ローブも高くなりすぎないように、3つのDFTの窓関数が選ばれることである。出力ピークの高さから、第4の物体尺度として、物体がレーダ波をどんな強さで反射するかを示す物体の反射断面も評価することができる。
【0041】
物体の上述した検出及び対応する物体尺度の決定は1つの測定サイクルを示し、周辺の現在の画像を与える。即ちこれは例えばすべて30ms周期的に反復される。周辺状況を判断するために、順次に続くサイクルを越えて瞬間画像が追跡され、濾波され、評価される。その理由は特に次の通りである。
幾つかの量は1つのサイクルにおいて直接求められるのではなく、順次に続くサイクルにわたる変化からのみ求められる(例えば縦加速度及び横速度)。
物体の運動は複数のサイクルにわたってもっともらしくされ、その結果一層強固で確実な周辺記述が生じる。こうして例えば順次に続くサイクルにわたって生じる距離の変化が測定される(放射状)相対速度に合わされ、それにより周辺記述における冗長性従って付加的な確実性が生じる。
複数のサイクルにわたる時間的濾波による測定雑音の減少。
【0042】
追跡及び順次に続くサイクルにわたる物体検出の濾波は追尾(トラッキング)と称される。その際各物体について、現在のサイクルの追尾される物体寸法から次のサイクルについての値が予測される。これらの予測は、次のサイクルにおいてスナップショットとして検出される物体及びその物体寸法と比較されて、これらを互いに対応させる。それから同じ物体に属する予測された物体寸法と測定された物体寸法とが融合され、それから現在の追尾される物体寸法が生じ、それにより順次に続くサイクルにわたって濾波される値を示す。1つのサイクルにおいて特定の物体寸法が一義的に求められない場合、追尾の際異なる仮定が考慮される。追尾される物体及び追尾される物体寸法から、それぞれの運転者援助機能のための周辺状況が分析され、かつ解釈され、それから重要な物体従って適当な動作を推論する。
【0043】
図10による実施例2
図1によるセンサの今まで考察した実施例は、8つのアンテナ組合わせが順次に作動せしめられ、即ち常に1つのアンテナ組合わせでのみ受信が行われ、これはシステム感度に不利な影響を及ぼす。この欠点を図10による装置が除去する。両方の送信アンテナTX0及びTX1が並列に作動せしめられ、4つの受信アンテナRX0〜RX3の信号は並列に評価される。そのため高周波発振器10.2の出力信号は出力分割器10.2を経て同時に両方の送信アンテナへ印加され、受信側にディジタル信号処理手段4まで並列なチャネルがある。それにより各周波数ランプにおいて両方の送信アンテナが使用され、すべて4つの受信アンテナの信号が評価され、周波数ランプ及び周波数ランプ中の走査は、今や時間的に係数4だけ延ばされており、即ち今や512の周波数ランプがそれぞれ32μsの持続時間を持ち、すべて40μs周期的に反復され、256の値の操作が10MHz従ってすべて100nsで行われる(図11参照)。
【0044】
受信信号において両方の送信アンテナの成分を分離できるようにするため、送信アンテナTX1の前に開閉可能なインバータ10.4がある(開閉可能なインバータの駆動は制御手段10.9から行われる)。開閉可能なインバータは1つ置きの周波数ランプを動作させ、即ち送信アンテナTX1の位相位置は、1つおきの周波数ランプにおいて他の周波数ランプに対して180°移動される。それにより物体において反射されるTX1の送信信号により発生されている受信信号の位相は、物体の相対速度による変化に加えて、周波数ランプから周波数ランプへ180°だけ変化する。それによりTX1から生じるこれらの受信信号は、二次DFT前に、周期長2を持つ180°の付加的な位相変調を持ち、それにより二次DFTにおいて、スペクトルの半分のDFT長従って12.5kHzの移動が生じる。
【0045】
さて二次DFTは長さ512(512の周波数ランプが存在する)を持ち、4つの受信チャネル及び各距離ゲートについて求められる。TX1の位相変調により物体は、二次DFTにおいて各受信チャネル及び対応する距離ゲートに、12.5kHzの間隔で2つの出力ピークを発生する。即ち相対速度に相当する周波数における出力ピークは送信アンテナTX0から生じ、12.5kHzだけずれた出力ピークは送信アンテナTX1から生じる。それにより両方の送信アンテナから生じる成分は分離されている。
【0046】
(4つの受信アンテナの)4つの受信チャネルの各々に対して、二次DFTの下半分(0〜12.5kHz)がTX0のために使用され、上半分(12.5kHz〜25kHz)がTX1のために使用され、上半分が12.5kHzだけ下方へ下半分と同じ二重周波数範囲0〜12.5kHzへ移動されることによって、三次DFTに対して8つのアンテナ組合わせが生じる。それにより最初の実施例1におけるように再び256の相対速度ゲートのみが存在する。三次DFT後最初の装置に対するただ1つの相違として、相対速度に対して異なる仮定がもはや異なる方位角を意味せず、常に同じ方位角が生じる(図9による三次元DFDTのデータ直方体において、方位角において相対速度範囲0〜280km/hに属する値が常に有効であるということのみが変わっている)。その理由は、8つのアンテナ組合わせの受信信号の間に時間的ずれがもはや存在しないからである。
【0047】
TX1の上述した180°の交代する位相変化のかわりに、それを偶然に形成することもできる。即ち周波数ランプから周波数ランプへ、開閉可能なインバータの状態が偶然に決定される。その場合二次DFTは2回決定され、1回は位相変化の修正付きで、1回はその修正なしで決定される。位相修正により計算されるDFTでは、送信アンテナTX1から発する受信信号は出力ピークへ至るが、送信アンテナTX0から発する受信信号は約27dBだけその下にある雑音を発生するであろう。即ち位相修正なしで計算されるDFTでは、状態がちょうど取り違えられるであろう。それにより両方の成分の分離も可能であろう。相対速度の明確範囲は2倍になるであろう。
【0048】
4つの受信チャネルの使用により、システム感度が6dBだけ高まる。なぜならば、帯域フィルタ10.6の帯域幅は最初の実施例と比べて係数4だけ減少されているからである(周波数ランプの期間中の走査は係数4だけ遅い。なぜならば、周波数ランプはこの係数だけ長いからである)。二次DFTの2倍の長さ512のため、更に3dBだけ高い積分ゲインが生じる。周波数ランプの期間中に送信アンテナ毎に変わらずに多くの出力が放射される場合、全体として9dBだけシステム感度の上昇が生じる。(例えば1つの供給源から2つのアンテナへの同時供給のため、又は許可規定のため全送信出力が限定されているため)、送信アンテナ当たりの送信出力が半分になると、6dBだけシステム感度が上昇する。
【0049】
最後に言及すべきことは、ここで考察される図10の実施例2において、4つの並列なA/D変換器を、マルチプレクサを前に接続されるただ1つのA/D変換器に代えることもできることである。即ちこのA/D変換器は、図1による実施例におけるのと同じ40MHzの同じクロックで動作するであろう。
【0050】
図12による装置
今まで考察された図1及び図10による装置では、受信アンテナの上に送信アンテナが設けられていた。なぜならば、1つの面に設ける場合(従って送信アンテナを下方へ押付けられている場合)、パッチが接触することになるが、これは実現不可能である。送信アンテナと受信アンテナを上下に設けることにより、これらのアンテナは、所定のセンサ高さにおいて、1つの面に設ける場合の約半分の高さとすることができ、その結果仰角方向においてビーム集束が少なくなり、従ってアンテナゲインが小さくなる。それにより一方では垂直検出範囲が増大し、それが特定の機能にとって不利なことがあり(例えば橋が停止している車両と区別困難なことがあるため)、他方ではシステム感度が低下する。
【0051】
アンテナの配置におけるこの制限は、少なくとも1つのアンテナを送信にも受信にも利用することによって、回避することができる。図12は例として1つの配置を示し、右のアンテナが送信アンテナTX1及び受信アンテナRX3として利用される。即ち受信アンテナ相互の水平間隔は引続きd=λ/2であり、送信アンテナの水平間隔は引続き4d=2λである。
【0052】
右のアンテナが同時に送信アンテナ及び受信アンテナとして動作できず、時間的にのみその機能が送信アンテナと受信アンテナとの間で交代することが可能である場合、送信アンテナTX1及び受信アンテナRX3から成る8つのアンテナ組合わせは不可能なので、7つのアンテナ組合わせのみが存在する。即ちその場合三次DFTのために、8つのアンテナ組合わせの信号が0にセットされる。他の場合即ち右のアンテナが同時に送信アンテナ及び受信アンテナとして動作できる場合、全部で8つのアンテナ組合わせが可能である。
【0053】
1つのアンテナを送信にも受信にも利用できるようにするため、このアンテナを交互に又は永続的にHF発生及び受信ミキサに接続せねばならない。即ちこれは例えば接続素子12.11のための次の実施例で実現される。
マルチプレクサ。アンテナはその機能を時間的に送信アンテナと受信アンテナとの間で交代できるが、同時に送信及び受信できない。マルチプレクサでは典型的に3dBの範囲にある出力損失が起こる。
サーキュレータは、出力損失なしに同時の送信及び受信を可能にするが、非常に高価である。
カップラ構造(例えばリングカップラ又はウィルキンソン分割器)も同様に同時の送信及び受信を可能にするが、出力損失(3〜4dB)を伴い、印刷構造のみから成るので、その費用は無視できる。
【0054】
使用される接続素子において出力損失が起こり、これが適当に異なる送信出力によっては補償されない場合、異なるアンテナ組合わせの受信信号は同じレベルを持たない。これは角度形成過程において(例えばディジタルビーム形成の場合)考慮し、かつ場合によっては補償すべきである。
【0055】
図12による例において、右及び左のアンテナをそれぞれ同時の送信及び受信に利用できない場合、水平に等間隔の相対位相中心を持つ9つのアンテナ組合わせが形成される。
【0056】
すべてのアンテナがその周囲において基板上でできるだけ同じような状態を見るようにするため、外部アンテナTX0及びTX1/RX3の左又は右にも、d=λ/2の間隔で有効アンテナ(従って8つのパッチを持つアンテナ列)と同じ構造を持ついわゆる盲アンテナを設けることができるであろう。この場合これらの盲アンテナは適合して終らされるであろう。それによりすべてのアンテナがそれぞれの隣接アンテナにより同じように(特に結合により)影響され、これは角度形成法にとって隣接アンテナによる異なる影響より危険でない。
【0057】
図13による実施例
今まで考察された実施例は、すべて物体の方位角を測定する可能性のみを持ち、仰角を測定することができない。しかし仰角測定の可能性は多くの機能のために有利であり、特に車道に静止している物体に反応して、これらを車道より上にある物体(橋、標識)又は車道にある小さい物体(例えばコーラ容器)及び(例えば平らでない板継ぎ目による)道路表面の反射から区別することができる。
【0058】
仰角を測定又は評価できるようにするため、アンテナ組合わせの相対位相中心が異なる垂直位置を持たねばならない(送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの相対位相中心は、ここでは基準点から送信アンテナ及び受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される)。今考慮されている図13のアンテナ装置では、両方の受信アンテナRX1及びRX3型が2つの受信アンテナRX0及びRX2に対してs=λ/2だけ下方へずれている。即ちそうしないと、図13による実施例は図1による最初の実施例とは相違しなくなる。
【0059】
図14には、水平投影で(従って基板13.1を側方からみて)、アンテナの位相中心及びセンサに対して大きく離れて静止している物体へのビーム路が、方位角αAz=0及び仰角αEl>0(正のαElは上を意味する)で示されている(物体は、ビーム路が平行であると仮定できるほど大きく離れており、即ち物体はアンテナ装置のブラウンホーファー領域にある)。送信アンテナTXmTXから物体まで及び逆に受信アンテナRXmRXまでのアンテナ組合わせm=4・mTX+mRXの距離r(m)は次のようになる。
ここでrRPはアンテナ基板上の基準点RPから物体への距離、bは基準点と送信アンテナとの垂直間隔、cは送信アンテナと両方の上部受信アンテナRX0及びRX2との垂直ずれ、mod(.,2)は2に対するモジュロ関数である。量(2b+c+mod(m、2)・s)は基準点RPに対するアンテナ組合わせmの相対位相中心の垂直間隔を示し、基準点に対する送信アンテナ及び受信アンテナの垂直間隔の合計である。
【0060】
下部受信アンテナに対するアンテナ組合わせm=1,3,5,7のための受信波従って受信信号と上部受信アンテナに対するアンテナ組合わせm=0,2,4,6のための受信波従って受信信号との位相差ΔφEl=φ(1)−φ(0)は、異なる距離r(m)のため
となる。
【0061】
従って受信信号の位相φ(m)は、アンテナ組合わせの番号m=0,1,・・・,7について周期長2でこの値λφElだけ交代する。さて一般に消滅しないまだ1つの方位角αAzが考察される場合、受信信号の位相φ(m)はアンテナ組合わせmについて直線的に変化するなお1つの成分を持ち、全体で次のようになる。
【0062】
対応する距離−相対速度ゲート(j、l)にこの1つの物体のみがある限り、そこの複素数値v(j、l、m)は二次DFT後8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・,7について次のようになる。
ここでKはこれらの値の一定値、expは指数関数である。小さい負の仰角αElに対して生じる図15aの例は、図8aに示す最初の実施例1の推移v(9,0,m)と比較して、今や1つ置きのベクトルが位相ΔφElだけずれていることを示す。
【0063】
三次DFTにおいて形成されるv(j,l,m)のスペクトルw(j,l,m)を次に説明するように変化する。偶数m=0,2,・・・に対してこの係数は値1を持ち、奇数m=1,3,・・・に対して値exp[−j・2π/λ・sin(αEl)・s]を持つ。周期長2で交代するこの係数のスペクトルF(n)は、(変換式から容易に誘導できるように)2つの出力ピーク、DFT長Nと乗算される両方の値の平均値を持つ周波数n=0における1つの出力ピーク
及び半分のDFT長従って半分のDFT長と乗算される両方の値の差を持つ周波数n=N/2における第2の出力ピークを持っている。
【0064】
全スペクトルw(j,l,n)は、方位角αAzに対応する周波数nAzにおいて出力ピークを持つ最初のスペクトルとF(n)との重畳によって生じる。即ち全スペクトルは、最初の周波数nAz及び半分のDFT長だけ離れた周波数nAz+N/2における2つの出力ピークを持ち、これら両方の出力ピークの複素スペクトル値の比に対して次式が成立する。
【0065】
図15bは、図15aに示すv(9,0,m)の推移に対するスペクトルw(9,0,n)の値を例として示す。即ちαAz=14.5°に対するn=nAz=2における出力ピークのほかに、n=10における第2の出力ピークがあり、従ってDFT長N=16の半分離れている。
【0066】
比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)から仰角αElが求められる。そのため上記の関係式の右の頂が図16により次にように書き換えられる。
仰角αElにより解くことによってΔφElε]−π,π[・に対して次式が生じる。
【0067】
従ってΔφElに相当する範囲]−arcsin(λ/(2s)+arcsin(λ/(2s)[における仰角が一義的に求められる(例において考察される場合s=λ/2従って]−90°,+90°[)。もちろんそれは、方位角αAzに対する周波数値nAzが既知であるという前提においてのみ有効である。しかし1つの物体に対して一般に半分のDFT長間隔を持つ2つの出力ピークを持つので、それぞれ異なる仰角を持つ方位角に対して2つの仮定がある。追尾(従って複数のサイクルにわたる物体の観察)により、自己の車両が動く場合、一般にどの仮定が正しいものであるか一般にわかる。なぜならば、仮定に対してのみ物体の有意義な推移が生じるからである。
【0068】
理想的な状態(雑音がなく点状に反射する物体)のために、上記の関数においてarctan関数の偏角は実数値であるが、他の状態に対しては一般に虚数成分がある。これは次の関係式の使用によって無視される。
ここでRe及びImはそれぞれの偏角の実数部分及び虚数部分である。
【0069】
距離−相対速度ゲートに1つの方位角において異なる仰角から複数の反射(大きく延びた物体の場合及び/又は道路表面における反映のため等)があると、これらを仰角を求める上記の式によって分解従って分離することができない。即ち量j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)にある重要な複素数成分によって、著しく異なる仰角からの反射がなければならないことだけを知ることができる。
【0070】
仰角を測定又は評価するための図示した手掛かりを、方位角のためのディジタルビーム形成へ仰角のためのモノパルス方式が含まれているように解釈することもできる(モノパルス方式は、2つのずれたアンテナ(群)の位相比較によって角度を求めるものである)。この手掛かりは、一方では等間隔受信アンテナに基くすべての評価方法(例えばDFTによる簡単なディジタルビーム形成のような)を維持でき、他方では方位角に対して精度の低下がなく、かつ分離能力に対して僅かな低下しかない、という利点を持っている(後者は、物体に対して水平面外の位置が可能である時、DFT長の半分に相当する方位角間隔を持つ物体においてのみ適用される)。即ちアンテナ組合わせについて水平な相互ずれなしに2つの群を上下に持つ、方位角及び仰角の同時測定を行う従来の手掛かりでは、方位角に対して同じ数のアンテナ組合わせで、精度及び分離能力が半分になる。
【0071】
注意すべきことは、アンテナ組合わせの周期的な垂直ずれを、原則的に2より大きい周期長Pでも形成できることである。水平面外の物体により、スペクトルに一般にそれぞれ間隔N/Pを持つP個の出力ピークが生じ、ここでNはディジタルビーム形成のDFT長である。即ちこれらの出力ピークの値から再び仰角を求めることができ、その際仰角を介して物体の分離も可能である。このような手掛かりにより、(方位及び高度のための)2つのディジタルビーム形成がDFTにおいて重畳される。
【0072】
強調すべきことは、高度測定可能性のためここに紹介された手掛かりが価格において実質的に中立なことである。
【0073】
実際の周辺において仰角測定のために考慮すべきことは、道路表面が反映する特性を持っていることである。これが図17に示されている。物体は送信出力を直接のやり方及び道路表面で反映されるやり方で受信する。物体で反射されてセンサにより受信される出力に対して、同様に2つのやり方がある。即ちそれによりセンサが、実際の物体に加えて、実際の物体とほぼ同じ(放射状)距離を持つけれども実際の物体の高さhoだけ道路表面の下にある反映物体を見る。道路表面より上にあるセンサの高さhsに関係して、実際の物体及び反映物体は仰角の異なる値を持ち、その差は距離の増大と共に減少する。実際の物体及び反映物体からの受信信号の位相は一般に異なっている。なぜならば、これらの位相差はその距離で少し相違するからである。即ちこの位相差は実際の物体の距離rにわたって変化する。上述した効果は、実際の物体が道路表面より高い所にあるほど、それだけ強く現れる。
【0074】
少なくとも大きく離れた物体に対して、実際の物体及び反映物体は同じ距離−相対速度ゲートに存在する。即ちこれらは同じ方位角を持つが、異なる仰角を持っている。受信アンテナの垂直ずれについて例として前に考察された周期長2に対して、両方の物体を分解することができない。即ち反射重心は平均して道路表面のほぼ高さにある。しかし比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)における著しい複素数成分により、著しく異なる仰角に物体が存在せねばならないことがわかる。実際の物体の受信信号と反映物体の受信信号との位相差は距離にわたって変化するので、距離にわたって、比Vの複素数成分従って以後Vの相対虚数部分と称される量Im(V)/|V|も変化する。Vの相対虚数部分の距離に関係する変化は、実際の物体が道路表面より高い所にあるほど、それだけ大きくなる。近傍範囲を別として、この判定基準を、車道上の重要な物体(例えば車両及び歩行者)とくぐり抜け可能な物体(従って例えば橋標識のように車道の上方にある物体)との区別に利用することができる。例えばVの相対虚数部分の特定の距離に関係する変化から、くぐり抜け可能な物体を推論することができる。図18aは例として、車両(平均高さho=0.5m、垂直寸法0.3m)及び橋(平均高さho=5m、垂直寸法0.3m)に対して、距離rにわたる比Vの相対虚数部分を示し、センサ高さhs=0.5mである。
【0075】
更にこの判定基準を、近傍範囲においても、車道上の重要な高くなっている物体(例えば車両及び歩行者と道路上にある比較的小さく従って乗り越え可能な物体(例えば飲物缶)及び(例えばずれた板継ぎ目による)道路表面の凹凸を区別するために使用することができる。全く又は僅かしか隆起しない車道上の物体に対して、Vの相対虚数部分の距離に関係する変化は、著しく隆起した物体に対するより小さい。更に近傍範囲において、実際に測定される仰角も利用することができる。なぜならば、仰角ビーム集束により、実際の隆起した物体の反射は、その反映物体の反射より著しく大きいので、実際の物体の実際の角度が近似的に測定され、それから近似的に実際の高さが求められるからである。
【0076】
比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)の相対虚数部分のほかに、原則的に、反射のみの場合仰角から生じる比に対する少なくとも1つの偏差を利用する他の尺度も使用して、それからくぐり抜け又は乗り越え可能な物体を識別するための基準を誘導することができる。例えば比Vの絶対虚数部分Im(V)のみを使用することもできる。この尺度Im(V)の値、特に物体距離について濾波された尺度、及びその距離に関する変化は、実際の物体が道路表面の上方で高い所にあるほど、それだけ大きくなる。物体距離について値の濾波は直線的であるか(例えば距離部分についての平均値)又は非直線的であってもよい(例えば距離部分についての最大値)。例として図18bは、車両(平均高さho=0.5m、垂直寸法0.3m)に対する距離rについて比Vの虚数部分を示し、センサ高さhs=0.5mである。
【0077】
更に1つの尺度だけでなく、反射のみの場合仰角から生じる比に対する少なくとも1つの偏差を利用する複数の尺度を使用して、それからくぐり抜け又は乗り越え可能な物体を識別する組合わせ判定基準を誘導することも当然可能である。
【0078】
仰角測定可能性は、仰角方向におけるセンサの誤調節の検出及び場合によっては修正又はその仰角方向の監視にも使用することができる。実際の仰角方向を求めるため、十分大きく離れた動く物体のみが適している。なぜならば、動く物体(車両)は、僅かな特別の場合を別として、自己の車両とほぼ同じ高さにあり、十分な距離においては道路の反映が測定される仰角に僅かな影響しか及ぼさないからである。即ち実際の物体及び反映物体の仰角は僅かしか相違しないからである(両方の物体がどの程度離れていなければならないかは、仰角方向を求めるために必要な精度に関係している)。これに反し静止物体は適していない。なぜならば、このような物体は、(車道上又はその上方に)異なる仰角で存在することがあるからである)。
【0079】
遠く離れた動く物体に対して平均して0°ではない仰角を測定する場合、センサは測定されたこの平均仰角の周りに誤方向を示す。なぜならば、他の車両が自己の車両に対して平均してほぼ水平方向にあり、従って実際の仰角0°の所にあるからである。例えばセンサは、+2°の測定される平均仰角に対して(物体はセンサに対して車道より2°だけ上にある)2°だけ下方を見る。
【0080】
複数の物体の測定される仰角についての平均は、直線的に従って例えば重み付けされる平均値形成により行うことができるが、測定列におけるアウトライアーの影響を少なくする非直線平均が一層よく適している。例として中央値があげられる。
【0081】
仰角方向を求めるために使用される動く物体において測定される仰角にあるアウトライアーは、例えば次の手段により大部分を既に原理的に回避することができる。
自己の車両の車道上を動く物体のみが取られる。従って自己の車道に対して高くずれた他の車道は影響を及ぼさない。
トンネルの天井及び橋の下側における反映によって、仰角測定に誤りが生じる。しかしこれは、たいていの場合、比V=j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)における重要な複素数成分により知ることができる。従ってこのような物体は利用されない。このような物体を検出すると、安全のため特定の期間平均化のため物体を全く利用することができない。
システムになお別のトンネル検出機構がある場合、トンネルが検出されると、原則的に物体を使用することができない。
【0082】
仰角におけるセンサの誤方向がわかっていると、これを容易に除外修正することができる。そのため8つのアンテナ組合わせにわたって生じる値のうち1つおきの値だけが、三次DFTの前に適当な位相値だけ回される。
【0083】
図21〜26による実施例5〜10
今まで考察された実施例は、個別アンテナ毎に(従って送信アンテナ及び受信アンテナ毎に)1つの列のみを持ち、それにより水平方向(方位)に非常に幅広く放射する。このような装置は典型的に近接範囲センサのために使用される。なぜならば、これらのセンサは広い水平検出範囲を持たねばならないが、その代りに大きいレンジを持っていなくてよい。受信アンテナの水平相互間隔d=λ/2は、隣接するアンテナ組合わせの位相差λφ=π・sin(αAz)と方位範囲]−90°,+90°[にある方位仰角αAzの対応が一義的であるように、小さく選ばれている(アンテナが垂直にずれている場合仰角により生じる位相ずれはここでは考慮しない)。
【0084】
遠隔範囲センサのために、近接範囲センサと比べて、一層大きいレンジ従って高いシステム感度及び方位角の高い測定精度及び分離可能性の要求がある。その代りに水平検出範囲は限定されていてもよい。これらの要求を実現するために、アンテナの相互間隔が増大される(例えば今までの設計と比べて係数3だけ増大されるので、受信アンテナの間隔はd=3λ/2であり、送信アンテナの間隔は4d=6λである)。それにより一方では、複数の列を持つアンテナ従って方位方向における一層強い集束が実現され、その結果一層高いアンテナゲイン従って一層高いシステム感度が生じ(限られた方位検出範囲を犠牲にして)、また他方では、隣接するアンテナ組合わせの方位角による位相差Δφ=2πd/λ・sin(αAz)が適当に一層強く現れ、それにより方位角の測定精度及び分離可能性が高まる。
【0085】
d=3π/2に対して生じる位相差λφと方位角αAzとの関係λφ=3π・sin(αAz)が図19に示されている。即ち方位角範囲−90°・・・90°に6πの位相差が対応している。しかし位相は2πの未知の整数倍までしか測定できないので、あいまいさが生じる。こうして例えば方位角−41.8°と+41.8°の間で区別することができない。なぜならば、これらの方位角は位相差Δφ=0で測定されるからである。
【0086】
最大2πの位相差の変化が対応するように限定された方位検出範囲のみを、送信及び/又は受信用の個別アンテナが持っている場合、これらのあいまいさが回避される。上記の数値例に対して、この要求は方位検出範囲−19.5・・・+19.5により満たされる。図20aには、この範囲外の方位角に対していかなる放射又はいかなる受信も抑制する理想的なアンテナダイヤグラムが示されている。厳密な検出限界及び範囲外の完全な抑制を持つこのようなアンテナダイヤグラムは、実際には生じることができない。図20bは、方位−19.5・・・+19.5外で少なくとも15dBの抑制を持つ実現可能なアンテナダイヤグラムを示す。送信及び受信用のアンテナがこのようなアンテナダイヤグラムを持っている限り、システム面に2倍の値30dBの抑制が生じる。それにより非常に強く反射する物体に対してしか、方位角に対するあいまいさが生じる可能性はない。
【0087】
送信及び/又は受信用アンテナの適当に限定された方位検出範囲により方位角のあいまいさを大幅に防止するため、水平に見て、これらのアンテナの幅は、水平に順次に続く受信アンテナの間隔dの少なくとも約2倍の大きさでなければならない。この要求を満たすために、プレーナアンテナに対して次の5つの異なる手掛かりが紹介される。
送信アンテナが、垂直に見て受信アンテナとは異なる面(従って異なる範囲)に設けられている。即ちこれらのアンテナは重なっている(例として図21参照)。それにより送信アンテナの水平幅は、水平に順次に続く受信アンテナの間隔dより4倍まで大きく選ぶことができる。図21による例では、送信アンテナのみが必要とされる狭い方位検出範囲を持つが、受信アンテナはそうではない。それにより一層強く反射する物体に対して、方位角に対するあいまいさがまだ生じる可能性がある。注意すべきことは、送信アンテナの形状及び放射特性が受信アンテナの形状及び放射特性に対して原理的に相違していてもよいことの例を、図21が示していることである。
水平に順次に続く受信アンテナは交互に垂直にずらされて、E個の異なる垂直面にある。図22に示す例では、2つの面があり、従って交互のずれは周期長2を持っている。両方の受信アンテナRX0及びRX2は、他の2つの受信アンテナRX1及びRX3より上の面にある。受信アンテナのためにE個の異なる面を使用すると、その水平幅は水平に順次に続く受信アンテナの間隔dよりE倍まで大きく選ぶことができる。受信アンテナの垂直ずれにより、上述した仰角測定能力が潜在的に生じる。
送信アンテナ及び/及び受信アンテナは垂直でなく、水平面に対して斜めに設けられている(例として図23参照。そこでは斜めのアンテナが送信及び受信のために使用される。)それによりアンテナの水平幅をその間隔よりほぼ任意に大きくすることができる。絶対の近接範囲を別として、0°の範囲にある仰角に対して、従ってほぼ水平面にある物体に対してのみ、放射特性の大きい集束が得られるが、そこにはシステムの視点から重要なすべての物体がある。0°とは著しく相違する仰角に対して、水平方向に僅かなビーム集束しか行われず、それはせいぜい絶対の近接範囲において道路より上にある物体に対して不利に作用するだけである。0°とは著しく相違する仰角に対する一層少ないビーム集束は、システム面において、送信アンテナ及び受信アンテナを異なる方向に(一方を右へ、他方を左へ)傾斜させることによって、原理的に回避することができる。
アンテナは水平方向に互いにはまり合わされている(例として図24a及び図24b参照。そこでは受信アンテナが互いにはまり合わされている)。それによりアンテナの水平幅を、その間隔の2倍までの大きさにすることができる。はまり合いにより、図24aによる装置では、垂直方向にアンテナのずれが生じ、従って上述した仰角測定可能性を生じるが、図24bによるアンテナ装置ではそうではない。両方の例に示す側方からのはまり合いの代わりに、上又は下からもはまり合いを行うことができる。
放射素子又は受信素子は、少なくとも2つのアンテナにより共通に利用される(例として図25参照。そこではそれぞれ2つの隣接する受信アンテナにより3つのパッチ列が一緒に利用され、その受信される出力は3つのアンテナへ分割される)。それにより理論的に、アンテナをその間隔よりほぼ任意に幅広くすることができるが、特に高周波接続線の交差部は実現困難なので、実際にはその場合分配回路網はますます複雑になる。
【0088】
アンテナを配置するための上述した手掛かりなしでは、アンテナの間隔に相当するその水平幅しか実現されず、それにより方位角にあいまいさが強く現れすぎるであろう。
【0089】
なお述べておくべきことは、遠隔範囲センサ用の上述したアンテナ装置は常に2つの送信アンテナを外部に持ち、それによりセンサの有効アパーチャはその幅に対してほぼ2倍にされ、それにより24GHz範囲でも、長距離機能用センサが容認できるセンサの大きさで実現される。200mの距離まで物体から受信信号を受信できるために、実施例1及び2の設計とは異なり、線形周波数変調は半分の周波数偏移即ち93.75MHzしか持っていない。
【0090】
特に水平方向におけるアンテナの重なりを実現するための上述した方法は、近接範囲センサのためにも適用可能である。図10による実施例は、受信アンテナの上に送信アンテナを設ける例である(即ちアンテナは垂直に見て異なる面にある)。図26には送信アンテナと受信アンテナの水平はまり合いが示され、このはまり合いにより、送信アンテナとそれぞれ隣接する受信アンテナとの間にd/2=λ/4の間隔を実現することができ、それにより送信アンテナと受信アンテナを大体において1つの面に配置するにもかかわらず、図12の配置3におけるように共通な送信アンテナ及び受信アンテナは必要でない。
【0091】
図27による実施例11
遠隔範囲センサにおける方位角測定のあいまいさを減少又は回避するための上述した手段は限られた方位検出範囲に帰着した。しかしセンサにより長距離機能及び短距離機能を同時に実現しようとすれば、広い方位検出範囲が要求される(例えば−80°・・・+80°)。これは、図27による実施例について説明される次の手掛かりによって実現される。
【0092】
図23によるアンテナ構成に対して、今や考察される図27の構成では、2つの相違点がある。一方では個別アンテナは、方位範囲−19.5・・・+19.5外でも、アンテナダイヤグラムにある適当な肩部により著しく放射又は受信を行う(図28参照)。このような肩部は、パッチが、個別アンテナの水平方向に見て中間の範囲において、他の範囲より著しく多く放射することによって形成可能であり、それにより狭いアンテナダイヤグラムと広いアンテナダイヤグラムが重ねられ(このような手掛かりにより、大きいレンジが必要とされる中間範囲におけるアンテナゲイン従ってシステム感度が比較的僅かしか低下しない)。そして他方では、2つの受信アンテナRX0とRX2が、受信アンテナの平均水平ずれd=3λ/2より係数12だけ小さい水平距離t=λ/8だけ右へずらされている。それにより8つのアンテナ組合わせの相対位相中心は水平方向に等間隔ではなく、等間隔ラスタに対して周期長2で交代するずれを持っている。従ってセンサに対して大きく離れた所で静止している物体に対して、方位角αAzにおいて受信信号の位相φ(m)は、アンテナ組合わせm=0,1,・・・,7にわたって直線的な成分に加えて、周期長2で交代する成分を持ち、図7bと同じように次のようになる。
【0093】
対応する距離−相対速度ゲート(j,l)にこの1つの物体がある限り、そこの複素数値v(j,l,m)は、二次DFT後8つのアンテナ組合わせm=0.1,・・・7について
となり、ここでKはこれらの値の一定の値である。
【0094】
それにより前に考察された仰角測定可能性におけるのと全く同じ状態が、個々の受信アンテナの周期長2で交代する垂直ずれによって得られる。個々の受信アンテナの周期長2
Tにおいて形成されるv(j,l,m)のスペクトルw(j,l,n)は2つの出力ピーク、即ち方位角αAzに対応する周波数nAzにおける出力ピークと、半分のDFT長だけ離れた周波数nAz+N/2における出力ピークとを持ち、これら2つの出力ピークのスペクトル値の比に対して次式が成立する。
【0095】
図29は、DFT長N−16の半分だけ離れてn=0及びn=10の所にある2つの出力ピークを持つスペクトルw(j,l,n)の値の推移を示す。
【0096】
受信範囲+9°・・・+90°におけるすべての方位角αAzに対して、ここで考察されるt=λ/8において、比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)の値は1より大きい。それにより方位角αAzに属する周波数値n=nAz)は、大きい方の出力ピークの位置として求められる。従って図29の例ではnAz=2が生じる。もちろんそれにより方位角αAzはまだ一義的には決まっていない。なぜならば、各n=nAzに対してαAzの3つの異なる値が対応しているからであり、図29の例ではなお3つの方位角αAz=4.7°,48.6°及び−35.7°が問題になる。(方位角測定能力の上述した推論と同じように、上記の関係式を変形することにより、方位角を比w(j,l,nAz)/w(j,l,nAz+N/2)からも求めることができる。
【0097】
t=λ/8についてこの関係式は全方位検出範囲−90°・・・+90°にわたって一義的である(2π/λ・sin(αAz)・tε]−π/4,π/4[のため)ので、それにより3つの問題となる方位角のうち正しい方位角を求めることができ、方位角算定は距離−相対速度ゲートにおいて個々の物体に対して一義的であり、この一義性は受信アンテナの交代する水平ずれにわたって生じる(このずれがないと、3つの異なる方位角を区別することができないであろう)。
【0098】
1つの距離−相対速度ゲートに、2つの周波数値n及びn+N/2に対応する異なる方位角で複数の物体の反射があると、一般にこれらをもはや分離することができない。即ち量j・w(j,l,nAz+N/2)/w(j,l,nAz)にある一般に重要な複素数成分により、複数のこのような物体があることを知って、特定の可能な仮定を誘導できるだけである。これらの仮定のうちどれが正しいかを大抵はもっともらしさの考察によって知ることができる。その例は次の通りである。
追尾(従って複数のサイクルにわたる物体の観察)により、センサに対して動く物体の場合、一般に複数の可能な仮定のうちどれが正しいかがわかる(例えば同じ周波数値n及びn+N/2への融合が一時的にのみ行われ、大抵は1つの仮定に対してのみ物体の場所の有意義な推移が生じる)。
図28に示すような個別アンテナダイヤグラムによって、高いアンテナゲインを持つ中間範囲からの物体は、小さいアンテナゲイン(肩部)を持つ外側範囲からの物体より一般に著しく高いレベルを持っているので、中間範囲及び外側範囲に物体が存在する場合、中間の物体がレベルにおいて優勢であり、従って正しい方位角で検出され、これが機能の観点から十分である。なぜならば、この中間の物体が重要な物体だからである。
【0099】
今まで考察した図27の例は、受信アンテナに垂直ずれを持たず、従って仰角測定能力を持っていない。原理的にはこのような垂直ずれを重畳することもできる。垂直ずれ及び水平ずれに対して異なる周期長を選ぶと、その作用は直ちに分けられるので、ただ1つの物体に対する方位角及び仰角を距離−相対速度ゲートにおいて一義的に求めることができる。周期長が同じ場合適当なもっともらしさの考察が必要である。
【0100】
広く放射する距離範囲センサにおける方位角の一義的な測定のための上述した手掛かりを、高解像度であるがあいまいなディジタル方位ビーム形成へ、個別物体に対して一義的であるけれども大まかな方位角算定のためのモノパルス法が含まれているように、解釈することもできる。この手掛かりは、一方では等間隔受信アンテナに基くすべての評価方法(例えばDFTによる簡単なディジタルビーム形成)を維持でき、他方では方位角に対して精度の低下を持たずかつ分離能力の僅かな低下しか持たない、という利点を持っている(後者は同じ周波数値nで出力ピークを生じる物体においてのみ)。両方の出力ピークのうち大きい方の出力ピークから出力ピークをできるだけ正確に求めるため、既に前述したように、隣接する出力値で補間を行い、それから補間される最大値を求めることができる。
【0101】
述べておくべきことは、アンテナ組合わせの周期的な水平ずれを原則的に2より大きい周期長でも形成できることである。その場合物体により、スペクトル中に、一般にそれぞれ間隔N/Qを持つQ個の出力ピークが生じ、ここでNはディジタルビーム形成のDFT長である。これらの出力ピークの値から、再び方位角を一義的に求めることができ、しかも同じ周波数値nにおいて出力ピークを発生する物体の分離が可能になる。このような手掛かりによって、DFTにおいて2つのディジタルビーム形成が重畳される。一方のビーム形成は精密であるがあいまいであり、他方のビーム形成は個別物体に対して一義的であるが大まかである。強調すべきことは、長レンジ機能及び短レンジ機能を実現するためセンサに対してここに紹介される手がかりが実質的に高価でも安価でもないことである。
【0102】
最後の注
述べておくべきことは、上記の例について示した本発明による考察及び実施例が一般的な設計及びパラメータ設定に転用され、即ち異なる数値(例えばアンテナの水平及び垂直間隔のための数値)へも適用可能なことである。従って式及び図には、具体的な数値のほかに、一般的なパラメータもしばしば示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の周辺検出用レーダシステムであって、1つ又は複数の送信アンテナにより送信信号を放射する送信手段、物体において反射される送信信号を1つ又は複数の受信アンテナにより受信する受信手段、及び受信した信号を処理する信号処理手段を有するものにおいて、
送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得され、各組合わせに、基準点からそれぞれの送信アンテナ及びそれぞれの受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される相対位相中心が対応せしめられ、
その際使用される送信アンテナ及び受信アンテナが、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して異なっていてもよく、
空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して、相対位相中心の位置に関して空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの列が考察される時、送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Pで周期的に変化し、
物体の受信信号が、空間方向Sにおけるその角度位置に従って、このように規定される送信アンテナと受信アンテナのこのように規定される組合わせにわたって周期長Pで交番する位相成分を持ち、それによりこの空間方向Sに対して物体の位置を表すことが可能であることが、信号処理手段において利用される
ことを特徴とする、レーダシステム。
【請求項2】
Rが水平方向であり、Sが垂直方向であり、従って物体の受信信号の周期長Pで交番する位相成分によって、その垂直位置について表すことができる、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心が、空間方向Rに関して少なくとも近似的に等間隔の所にある、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項4】
信号処理手段において、送信アンテナと受信アンテナの異なる組合わせから受信信号に、ディジタルビーム形成又は高分解方式が適用されて、それから空間方向R及び空間方向Sにおける物体の位置を測定又は評価する、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項5】
ディジタルビーム形成が、場合によっては窓関数を利用して、長さNの離散フーリエ変換(DFT)により行われ、そのため空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が使用される、請求項4に記載のレーダシステム。
【請求項6】
空間方向Sにおける物体の位置を評価するために、物体が長さNを持つDFTのスペクトルにおいて一般にP個の出力ピークをそれぞれの間隔N/Pで発生することが利用され、これらの出力ピークにおけるスペクトル値の関係が、空間方向Sにおける物体の角度位置に関係し、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が考察される時、Pは送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が空間方向Sに関して交番する周期長を示す、請求項5に記載のレーダシステム。
【請求項7】
周期長P=2である、請求項6に記載のレーダシステム。
【請求項8】
され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数値nAz及びnAz+N/2におけるスペクトル値を示し、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、sは相対位相中心の垂直ずれ、λは使用される平均波長である、請求項2又は7に記載のレーダシステム。
【請求項9】
Sが垂直方向であり、この垂直な空間方向Sにおける物体の角度位置の評価が、仰角方向におけるレーダシステムの誤調節を検出するために利用される、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項10】
仰角における誤調節を検出するために、十分大きく離れた所で移動する物体のみが使用され、複数の物体の評価される角度位置についての平均が行われ、その際直線平均又は非直線平均が使用される、請求項9に記載のレーダシステム。
【請求項11】
下をくぐるか又は乗越え可能な物体を検出するため、
比V=j・w(nAz+N/2)/w(nAz)の虚数部分が直接に又は比の値|V|により割り算して使用され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数nAz及びnAz+N/2における両方の出力ピークのスペクトル値であり、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、
特に物体距離について濾波される値及び/又は距離に関係するこの尺度の変化から、道路表面の上の物体の高さが推論される、請求項2又は7に記載のレーダシステム。
【請求項12】
空間方向Rに関してこれらNS個のうち外側送信アンテナ外にない複数の送信アンテナ(個数NS)及び複数の受信アンテナ(個数NE)が、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、かつこの方向Rにおけるその位相中心に関してそれぞれ少なくとも近似的に等間隔に設けられ、この空間方向RにおいてこれらNS個の送信アンテナの相互間隔が、NE個の受信アンテナの相互間隔より係数NE又はNE−1だけ大きく、それにより1つの送信アンテナとこの空間方向Rに等間隔に設けられて少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ最大でNS・NE個の受信アンテナが合成される、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項13】
NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナがプレーナ技術で実現されて、平らな面に設けられ、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナのうち少なくとも2つが空間方向Rに関して重なっているものにおいて、
a)アンテナが空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して互いにずれており、
b)送信アンテナ及び/又は受信アンテナが空間方向Rに関して斜めの形状を持ち、
c)アンテナが空間方向Rに関して互いにはまり合っており、
d)放射するか又は受信する素子が少なくとも2つの送信アンテナ又は受信アンテナによ り共通に使用される
ことを特徴とする、レーダシステム。
【請求項14】
送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得され、
使用される送信アンテナ及び受信アンテナが少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して相違していてもよく、
空間方向Rに関して、送信アンテナ及び受信アンテナから成るこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Qで周期的に等間隔ラスタだけ変化し、
信号処理手段において空間方向Rにおける物体の位置を求めるために、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの列が考察される時、物体の受信信号が、空間方向Rにおけるその角度位置に従って、線形位相成分のほかに周期長Qで交番する位相成分を持っていることが、利用される、
請求項1,2,4〜11の1つに記載のレーダシステム。
【請求項1】
自動車の周辺検出用レーダシステムであって、1つ又は複数の送信アンテナにより送信信号を放射する送信手段、物体において反射される送信信号を1つ又は複数の受信アンテナにより受信する受信手段、及び受信した信号を処理する信号処理手段を有するものにおいて、
送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得され、各組合わせに、基準点からそれぞれの送信アンテナ及びそれぞれの受信アンテナの位相中心への両方のベクトルの和として定義される相対位相中心が対応せしめられ、
その際使用される送信アンテナ及び受信アンテナが、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して異なっていてもよく、
空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して、相対位相中心の位置に関して空間方向Rに規定されている送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの列が考察される時、送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Pで周期的に変化し、
物体の受信信号が、空間方向Sにおけるその角度位置に従って、このように規定される送信アンテナと受信アンテナのこのように規定される組合わせにわたって周期長Pで交番する位相成分を持ち、それによりこの空間方向Sに対して物体の位置を表すことが可能であることが、信号処理手段において利用される
ことを特徴とする、レーダシステム。
【請求項2】
Rが水平方向であり、Sが垂直方向であり、従って物体の受信信号の周期長Pで交番する位相成分によって、その垂直位置について表すことができる、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
送信アンテナと受信アンテナの組合わせの相対位相中心が、空間方向Rに関して少なくとも近似的に等間隔の所にある、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項4】
信号処理手段において、送信アンテナと受信アンテナの異なる組合わせから受信信号に、ディジタルビーム形成又は高分解方式が適用されて、それから空間方向R及び空間方向Sにおける物体の位置を測定又は評価する、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項5】
ディジタルビーム形成が、場合によっては窓関数を利用して、長さNの離散フーリエ変換(DFT)により行われ、そのため空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が使用される、請求項4に記載のレーダシステム。
【請求項6】
空間方向Sにおける物体の位置を評価するために、物体が長さNを持つDFTのスペクトルにおいて一般にP個の出力ピークをそれぞれの間隔N/Pで発生することが利用され、これらの出力ピークにおけるスペクトル値の関係が、空間方向Sにおける物体の角度位置に関係し、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナと受信アンテナの組合わせの列が考察される時、Pは送信アンテナと受信アンテナのこれらの組合わせの相対位相中心の位置が空間方向Sに関して交番する周期長を示す、請求項5に記載のレーダシステム。
【請求項7】
周期長P=2である、請求項6に記載のレーダシステム。
【請求項8】
され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数値nAz及びnAz+N/2におけるスペクトル値を示し、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、sは相対位相中心の垂直ずれ、λは使用される平均波長である、請求項2又は7に記載のレーダシステム。
【請求項9】
Sが垂直方向であり、この垂直な空間方向Sにおける物体の角度位置の評価が、仰角方向におけるレーダシステムの誤調節を検出するために利用される、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項10】
仰角における誤調節を検出するために、十分大きく離れた所で移動する物体のみが使用され、複数の物体の評価される角度位置についての平均が行われ、その際直線平均又は非直線平均が使用される、請求項9に記載のレーダシステム。
【請求項11】
下をくぐるか又は乗越え可能な物体を検出するため、
比V=j・w(nAz+N/2)/w(nAz)の虚数部分が直接に又は比の値|V|により割り算して使用され、ここでw(nAz)及びw(nAz+N/2)は周波数nAz及びnAz+N/2における両方の出力ピークのスペクトル値であり、nAzは方位角αAzに相当する周波数値を示し、
特に物体距離について濾波される値及び/又は距離に関係するこの尺度の変化から、道路表面の上の物体の高さが推論される、請求項2又は7に記載のレーダシステム。
【請求項12】
空間方向Rに関してこれらNS個のうち外側送信アンテナ外にない複数の送信アンテナ(個数NS)及び複数の受信アンテナ(個数NE)が、それぞれ少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、かつこの方向Rにおけるその位相中心に関してそれぞれ少なくとも近似的に等間隔に設けられ、この空間方向RにおいてこれらNS個の送信アンテナの相互間隔が、NE個の受信アンテナの相互間隔より係数NE又はNE−1だけ大きく、それにより1つの送信アンテナとこの空間方向Rに等間隔に設けられて少なくとも近似的に同じ放射特性を持つ最大でNS・NE個の受信アンテナが合成される、上記請求項の1つに記載のレーダシステム。
【請求項13】
NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナがプレーナ技術で実現されて、平らな面に設けられ、NS個の送信アンテナ及びNE個の受信アンテナのうち少なくとも2つが空間方向Rに関して重なっているものにおいて、
a)アンテナが空間方向Rに対して直角な空間方向Sに関して互いにずれており、
b)送信アンテナ及び/又は受信アンテナが空間方向Rに関して斜めの形状を持ち、
c)アンテナが空間方向Rに関して互いにはまり合っており、
d)放射するか又は受信する素子が少なくとも2つの送信アンテナ又は受信アンテナによ り共通に使用される
ことを特徴とする、レーダシステム。
【請求項14】
送信アンテナ及び受信アンテナの異なる組合わせから受信信号が取得され、
使用される送信アンテナ及び受信アンテナが少なくとも近似的に同じ放射特性を持ち、これらの送信アンテナの放射特性がこれらの受信アンテナの放射特性に対して相違していてもよく、
空間方向Rに関して、送信アンテナ及び受信アンテナから成るこれらの組合わせの相対位相中心の位置が、周期長Qで周期的に等間隔ラスタだけ変化し、
信号処理手段において空間方向Rにおける物体の位置を求めるために、空間方向Rにおいて相対位相中心の位置に関して規定されている送信アンテナ及び受信アンテナの組合わせの列が考察される時、物体の受信信号が、空間方向Rにおけるその角度位置に従って、線形位相成分のほかに周期長Qで交番する位相成分を持っていることが、利用される、
請求項1,2,4〜11の1つに記載のレーダシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24a】
【図24b】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24a】
【図24b】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2011−526373(P2011−526373A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519033(P2011−519033)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000948
【国際公開番号】WO2010/000254
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(504087204)アーデーツエー・オートモテイブ・デイスタンス・コントロール・システムズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (33)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000948
【国際公開番号】WO2010/000254
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(504087204)アーデーツエー・オートモテイブ・デイスタンス・コントロール・システムズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (33)
【Fターム(参考)】
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