説明

伸縮性不織布

【課題】皮膚に貼付したときに伸縮性,柔軟性の使用感を有し、剥がれにくいと共に、特に積層されたとき、下積みにある膏薬の薬液が染み出し難い、主としてパップ用基布に用い好適な伸縮性不織布を提供する。
【解決手段】撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊からなり、目付質量が50g/m2〜200g/m2で、それを構成する撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊比率が5/95〜40/60の範囲である伸縮性不織布であって、縦初期伸張弾性率が4.0〜40.0N/5cm/100%であり、横初期伸張弾性率が1.0〜6.0N/5cm/100%、横50%伸張応力が0.5〜2.5N/5cmで、かつ剥離強力が2.0N/5cm以上の特性を具有せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼り薬(パップ)や温熱蒸気用等に用いられる伸縮性不織布に係り、就中、貼り薬の支持布に用いて膏体の染み出し防止に優れた上記伸縮性不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚貼付薬の支持布として伸縮性不織布を用いることは従来より広く知られており、例えば特許文献1では熱可塑性樹脂フィルムの上に不織布を積層したもの、特許文献2ではポリエステル繊維を主体として伸縮性を有せしめた不織布、更に特許文献3では弾性連続単繊維がランダムに配列されたメルトブローによる伸縮性不織布中に特定の線材融着部と点状融着部を混在させたもの等が提案されている。
【0003】
また、上記特許文献3においては更に貼付材の特性として目付100g/m2当たりの50%伸張応力が100〜1000g/m2,目付100g/m2当たりの伸張回復後の30%伸張応力が500g/m2以下、目付100g/m2当たりの50%伸張回復後の30%回復応力が80〜100%の伸張特性を同時に満足することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−224981号公報
【特許文献2】特開平3−161436号公報
【特許文献3】特開平11−188053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記各伸縮性不織布は皮膚に貼付したときに風合い及び伸縮柔軟性に優れ、衣類への引っ掛かりがなく、剥がれ難いなどの特性を有しているが、積層されて保管された場合、下積みにある膏薬の薬液が伸縮性不織布から染み出すという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者はかかる薬液が染み出し難い伸縮性不織布の開発を試み、検討の結果、伸縮性不織布を構成する捲縮性複合短繊維に撥水性短繊維を混繊することが好適であることを見出し、その混繊比率と得られた伸縮性不織布の特性を探求し本発明に到達するに至った。
【0006】
即ち、本発明は伸縮性不織布を構成する繊維に着目し、パップ用基布としての特性を見出すことにより薄い製品が可能になると共に、皮膚に貼付したときに伸縮性,柔軟性等の使用感を有し、かつ剥がれ難いと共に、特に積層されて保管される場合にも下積みにある膏薬の薬液が染み出しにくい伸縮性不織布を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明伸縮性不織布の特徴は、撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊からなり、目付質量が50g/m2〜200g/m2で、それを構成する撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊比率が5/95〜40/60の範囲である不織布であって、縦初期伸張弾性率が4.0〜40.0N/5cm/100%であり、横初期伸張弾性率が1.0〜6.0N/5cm/100%、横50%伸張応力が0.5〜2.5N/5cmで、かつ剥離強力が2.0N/5cm以上の特性を有している伸縮性不織布にある。
【0008】
ここで、上記撥水性短繊維としてはポリエステル短繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理により撥水性を付与せしめ、繊維間靜摩擦係数(F.F)が0.08〜0.20μsである短繊維が好ましく使用され、捲縮性複合短繊維としてはポリエステル樹脂の高融点成分と低融点成分の60/40〜40/60の配合の複合よりなる短繊維が好ましく使用される。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明伸縮性不織布は撥水性短繊維と捲縮性短繊維を所定割合で混繊することにより膏体の伸縮性不織布からの染み出しを防止することができ、縦初期伸張弾性率,横初期伸張弾性率及び横50%伸張応力を所定範囲とすることにより着用感が良く、動作中の抵抗感も少ない利点を有し、剥離強力を2.0N/5cm以上とすることにより、膏体と伸縮性不織布との保持性を高めて、全体として良好な使用感を有し、かつ剥がれにくいと共に積層された場合にも膏体の薬液が染み出し難い伸縮性不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、更に本発明伸縮性不織布の具体的な実施の形態について説明する。本発明伸縮性不織布は先ず捲縮性複合短繊維と、撥水性短繊維を混繊することによって構成される。伸縮性不織布を用いた貼り薬はこれが積層されて保管された場合には下積みにある膏薬の伸縮性不織布から薬液が染み出す問題がある。
【0011】
これは上記の如く捲縮性複合短繊維と撥水性短繊維を混繊することによって解決することができる。しかし、染み出しを抑えるには撥水性短繊維の混繊割合が重要であり、少ない場合には膏体の染み出しを抑えることは出来ず、一方、多いと伸縮性不織布の特性を損ない、所要の目標値を得ることが困難になるので撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維の混繊比率は5/95〜40/60の範囲とすることが好適である。
【0012】
なお、上記貼り薬を身体に貼付したとき、一般的にその基材である伸縮性不織布の目付質量および厚さは余り薄いと伸縮効果がなく、透けた感じとなり、僅かな変形量で薄くなるのでよくなく、また厚くなると伸縮性の特性が生かせず、捲縮を生かしたソフトなものを得ることか難しいので、伸縮性不織布の目付質量は50g/m2〜200g/m2、厚さは0.3mm〜2.0mmとすることが好適である。
【0013】
そこで、パップ用基材としての伸縮性不織布は上記混繊比率,目付質量をふまえて上記範囲でパップ用に有効な下記特性を有せしめることによって達成される。
【0014】
即ち、伸縮性不織布の縦初期伸張弾性率は、4.0〜40.0N/5cm/100%がよく、身体に沿って大きく変形する。縦初期伸張弾性率が4.0N/5cm/100%未満であると、製品が巻き取られる場合、均一な巻取りが不均一となり、また膏体付与加工時に不均一なものとなり製品として劣るものになるので好ましくない。
【0015】
逆に縦初期伸張弾性率が40.0N/5cm/100%を超えると製品の巻き取りが硬いものとなり、製品としても硬く感じることになるので好ましくない。また横初期伸張弾性率は1.0〜6.0N/5cm/100%がよく、身体に沿って大きく変形する。横初期伸張弾性率が1.0N/5cm/100%未満であると、身体への抗力が小さいために頼りない感じとなるので好ましくなく、横初期伸張弾性率が6.0N/5cm/100%を超えると身体の初期変化に対して抗力が高くなり硬く感じることになるので好ましくない。
【0016】
更に横50%伸張応力は0.5〜2.5N/5cm/100%の範囲がよく、横50%伸張応力は低いほど身体に貼付したときの抵抗感が少ないが、横50%伸張応力が0.5N/5cm/100%未満であると湿布薬を加工する工程で抗力が弱いため塗布しにくく、加工性が劣るので加工性の点から好ましくなく、一方、横50%伸張応力が2.5N/5cm/100%を超えると身体に貼付したとき、不織布の抵抗感が強く違和感を感じるようになり好ましくない。
【0017】
また、剥離強力は2.0N/5cm以上の特性を有していることが好適である。伸縮性不織布に膏体を塗布して膏体と伸縮性不織布の間の接着状態は剥離強力で示すことが出来、剥離強力が2.0N/5cm未満であると膏体を身体に貼付した状態で伸縮性不織布が容易に膏体かにら剥がれ易くなる。従って、上記各特性は前記混繊比率,目付質量と相俟って本発明伸縮性不織布を効果的ならしめる。
【0018】
以下、更に上記本発明伸縮性不織布の繊維構成の詳細を説明する。本発明伸縮性不織布は前述のように基本的に撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊によって構成されるが、使用される撥水性短繊維としては、合成短繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理によって撥水性を付与した繊維であり、一般的にはポリエステル短繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理したものが用いられる。この場合、用いられる短繊維繊度は1.0〜10デシテックス(dtex)の範囲が好適であり、1dtex未満であると繊維層が緻密になり、一方、10dtexを超えると繊維層が粗くなるので何れも適当でない。
【0019】
また、繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理して表面に撥水性皮膜を形成したものは低摩擦係数を呈するようになるので撥水性能の度合いはこの摩擦係数で代替することができ、本発明伸縮性不織布における撥水性短繊維では靜摩擦係数0.05〜0.20μsの範囲が好適である。
【0020】
一方、捲縮性複合短繊維はポリエステル繊維が一般的であり、1種又は2種以上であってもよく、特にポリエステル系樹脂の高融点成分と低融点成分からなる偏芯芯鞘型,サイドバイサイド型構造の複合短繊維は好適である。具体例としてはポリエステル樹脂(融点:260〜270℃程度)と低融点ポリエステル樹脂(融点:200〜250℃程度)の複合繊維が挙げられ、これらは加熱することにより熱収縮に差を生じて捲縮性を発現する、
次に上記撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維の混繊により伸縮性不織布を作成するにあたっては先ず撥水性短繊維(靜摩擦係数μsが0.2以下の繊維)と捲縮性複合短繊維を所要の5/95〜40/60の割合で混繊し、カーディング加工してウエブに形成する。次いで該ウエブをニードルパンチ加工して繊維間の交絡処理を行って不織布とした後、熱処理機にて捲縮を発現せさ、その後、熱ロールを通して不織布の厚さを調整をすることによって伸縮性不織布を得る。
【0021】
かくして以上のようにして得られる本発明伸縮性不織布としては、パップ用の不織布の特性で縦方向の特性としては加工処理するときに安定した処理が出来ることであり、例えば熱処理して巻き取る場合、均一に巻き取りができること、また膏体付与時あるいは付与後に巻き取りが安定して出来ることである。即ち、不織布に引張が生じた場合、変形しないことが重要である。そのためには不織布の縦初期伸張弾性率は4〜40N/5cm/100%の範囲が効果的である。
【0022】
縦初期伸張弾性率が4N/5cm/100%未満であると加工時に引っ張り工程で容易に伸びて変形してしまうので好ましくなく、一方、縦初期伸張弾性率が40N/5cm/100%を超えると加工時に引っ張り工程では問題ないが、製品として硬すぎるので好ましくない。また、パップ用の不織布の特性で横方向の特性は膏体を付与した後の身体に貼り付けた時の着用感を示すのでその特性は前述の如く横初期伸張弾性率1.0〜6.0N/5cm/100%がよく、身体に沿って大きく変形する(横方向)抗力で、横初期伸張弾性率が1.0N/5cm/100%未満であると、身体への抗力が小さいために頼りない感じとなるので好ましくない。また、横初期伸張弾性率が6.0N/5cm/100%を超えると身体の初期変化に対して抗力が高くなり硬く感じることになるので好ましくない。更に、横50%伸張応力が0.5〜2.5N/5cmの範囲であることが着用感ならびに動作中の抵抗感の面で好ましく、膏体と伸縮性不織布の保持性の面では繊維間剥離応力(F・F)が2.0N/5cm以上であることが効果的である。以下、本発明の実施例を比較例と共に述べる。
【実施例】
【0023】
実施例1
繊度2.2デシテックス(dtex)、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)93質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル繊維(融点:262℃)短繊維7質量%(目付質量64g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が98g/m2、厚さが0.97mmであった。
【0024】
実施例2
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:230℃)93質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃)7質量%(目付質量64g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度150℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が110g/m2、厚さが1.02mmであった。
【0025】
実施例3
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)93質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.089のポリエステル短繊維(融点262℃)7質量%(目付質量64g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が97g/m2、厚さが0.98mmであった。
【0026】
実施例4
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)93質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃)7質量%(目付質量42g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が65g/m2、厚さが0.59mmであった。
【0027】
実施例5
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)85質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃゜)15質量%(目付質量85g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数120本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が148g/m2、厚さが1.01mmであった。
【0028】
実施例6
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)70質量%と繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃)30質量%(目付質量65g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数120本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が99g/m2、厚さが0.62mmであった。
【0029】
比較例1
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)100質量%を均一開繊して目付質量67g/m2のウエブを得た。次にウェブに針深度10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布の目付質量が98g/m2、厚さが0.75mmであった。
【0030】
比較例2
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)97質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃)3質量%(目付質量65g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が107g/m2、厚さが1.04mmであった。
【0031】
比較例3
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)85質量%と、繊度2.2デシテックスで繊度51mmの繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.322のポリエステル短繊維(融点:262℃)15質量%(目付質量65g/m2)を均一混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が98g/m2、厚さが0.76mmであった。
【0032】
比較例4
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmの靜摩擦係数μsが0.310のポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(低融点ポリエステルの融点:250℃)50質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの表面にシリコンを被覆した繊維−繊維間の靜摩擦係数μsが0.151のポリエステル短繊維(融点:262℃)50質量%(目付質量65g/m2)を均一に混合してカーディング加工を施し、次に針深さで10mm、打ち込み本数110本/cm2のニードル加工をし、引き続き連続して熱処理機で温度170℃、滞留時間30秒間の捲縮発現処理を行った。得られた不織布は高伸縮性で目付質量が100g/m2、厚さが0.77mmであった。
【0033】
以上の各実施例及び比較例により得られた夫々の伸縮性不織布についてその製造状態をまとめて表1に、そして各特性ならびに評価を対比した結果を表2に示す。なお、表中の各項目についての測定ならびに評価は下記に従って行った。
【0034】
測定方法
目付量:g/m2
試料から50mm×50mmの試料片を切り出し、0.1gの単位まで質量を測定する。質量を4倍してg/m2で表す。3回測定(n=3)し、その平均値を四捨五入し整数で示す。
【0035】
厚さ:mm
試料から50mm×50mmの試料片を切り出し、接触面積5cm2、押し圧20gのダイヤルゲージにて3点測定し、mmで表す。3回測定(n=3)の平均値を四捨五入し、小数点以下2桁までで示す。
【0036】
短繊維の摩擦係数:μs
JIS規格 JIS L1015−8.13に準拠して測定した。
【0037】
測定器:レーダー式摩擦試験機
円筒外径:8mm
計器:トウションバランス
摩擦係数(μs)=0.733log(W/(W−m))
W:繊維の両端にかけた荷重(N)
m:トウショウバランスの読み(N)
初期伸張弾性率:N/5cm/100%
強伸度測定
縦方向に5cm×30cmの試料をn=5採取する。東洋ボールドイン社製テンシロンを用い、掴み間隔20cmで引っ張り速度20cm/minで5%伸張応力を100%に換算して示す。5試料測定(n=5)の平均値で表す。
50%伸張応力:N/5cm
縦方向、横方向共に5cm×30cmの試料をn=3採取する。東洋ボールドイン社製テンシロンを用い、掴み間隔20cmで引っ張り速度20cm/minで10cm点の応力を測定し、平均値で表す。
【0038】
50%伸張回復率:%
縦方向、横方向共に5cm×30cmの試料をn=3採取する。東洋ボールドイン社製テンシロンを用い、掴み間隔20cmで引っ張り速度20cm/minで50%の伸張し、同速で原点まで回復させたときの回復率を算出し、平均値で表す。
【0039】
剥離強力:N/5cm
試料を70mm幅のセキスイクラフトテープNO.500を横方向に表と裏に貼り合わせ50mm×200mmに打ち抜く。試料はn=3採取する。東洋ボールドイン社製テンシロンを用い、掴み間隔100mm、引っ張り速度200mm/minで、試料は100mm点まで剥がしチャックに夫々50mm挟んで剥離応力を測定し、平均値で表す。
【0040】
撥水性評価
不織布表面に蒸留水10cc載せる。この状態で120min放置する。120min後の不織布裏面への浸水状態を調べ下記基準に基づいて評価した。
【0041】
評価
不織布裏面への透水が全くない ○
不織布裏面への透水はないが湿っていた △
不織布裏面へ透水し、水が溜まっていた ×
染み出し評価
膏薬剤を不織布に貼付して不織布から膏薬剤が染み出す状態を評価する。
【0042】
膏薬剤を不織布に貼付して不織布(10cm×14.3cm、13.0g)にフィルム(0.4g)を貼ったもの7枚を19.5cm×16cmの薬抜け防止した袋に密封し(重量約114g)、これを25袋重ねて一週間静置して底部の袋の状態を評価した。
【0043】
不織布から膏薬剤が全部(7枚)染み出していない ○
不織布から膏薬剤がやや(7枚中、4枚以下)染み出している △
不織布から膏薬剤が全部(7枚)染み出している ×
加工性評価
不織布加工の巻き取り、膏体の付与加工時、何らの問題はない ○
不織布加工の巻き取り、膏体の付与加工時、斑が発生 △
不織布加工の巻き取り、膏体の付与加工時、処理できない ×
総合評価
初期伸張弾性率、50%伸張応力、剥離強力、染み出し評価、加工性を総合的にみて評価した。
【0044】
染み出し評価が満足し、他の物性、加工性も問題はない ○
染み出し評価は問題はないが、物性に問題がある △
染み出し評価、物性、加工性共に問題がある ×
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

上記表より本発明に係る伸縮性不織布は総合評価において優れており、パップ基布用不織布として頗る好適であることが実証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊からなり、目付質量が50g/m2〜200g/m2で、それを構成する撥水性短繊維と捲縮性複合短繊維との混繊比率が5/95〜40/60の範囲である不織布であって、縦初期伸張弾性率が4.0〜40.0N/5cm/100%であり、横初期伸張弾性率が1.0〜6.0N/5cm/100%、横50%伸張応力が0.5〜2.5N/5cmで、かつ剥離強力が2.0N/5cm以上の特性を有していることを特徴とする伸縮性不織布。
【請求項2】
撥水性短繊維がポリエステル短繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理により撥水性を付与せしめた繊維であり、繊維間靜摩擦係数(F.F)が0.08〜0.20μsである請求項1記載の伸縮性不織布。
【請求項3】
捲縮性複合短繊維がポリエステル樹脂の高融点成分と低融点成分の60/40〜40/60の配合の複合よりなる短繊維である請求項1または2記載の伸縮性不織布。

【公開番号】特開2010−90508(P2010−90508A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261610(P2008−261610)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】