説明

位置センサ

【課題】 例として、位置センサをATC(工具自動交換装置)機能が搭載された工作機械にて使用する場合、位置センサはコードレスで信号伝達しなければならない。従来、その信号伝達方式として採用されている電磁誘導方式には電磁コイルの取り付け位置やスペースに難があり、電波方式には混信、赤外線方式には外部悪環境によるトラブルなどがあった。
【解決手段】工作機械において、連結された構造物を浮遊媒体として微弱な交流信号を印加し、位置センサに内蔵した発信回路と工作機械に設けた受信回路を磁気結合させることで、位置センサと受信器の信号伝達をコードレスで可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマシニングセンタに搭載されたATC(自動工具交換装置)機能により、着脱して使用されるため、コードレスで信号伝達を可能とする位置センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コードレス位置センサの信号伝達方式としては、電磁誘導(インダクトティブ)方式、電波(ラジオ)方式、及び赤外線(オプティカル)方式が知られている。
以下に各方式の概要と問題点を記す。
【0003】
電磁誘導方式は、位置センサに設けた発信コイルと機械の主軸周辺に設けた受信コイルで構成され、わずかな隙間をコードレス(非接触)で信号伝達する方式である。位置センサ側に設けられる発信コイルは、位置センサ側面に取付部を要し、受信側コイルは機械主軸周辺の限られたスペースに取り付けなければならず、そのスペースは機械毎に異なるため、互換性に乏しくレトロフィットが難しい。
【0004】
電波方式は、位置センサに組み込んだ送信器と受信器の間を電波で信号伝達する方式である。使用周波数による電波同士の混信、外部ノイズによる電波干渉に問題があり、法的規制もある。また位置センサ内の送信器が要する消費電力が多いため、その電源である電池の寿命によっては保全に手間がかかる。
【0005】
赤外線方式は、位置センサに組み込んだ発光部と受信器の受光部によって、赤外線で信号伝達する方式である。赤外線方式には送受信エリアに限りがあるため、機械内の主軸可動範囲で使用される位置センサにおいては、送受信器が互いに見通しの良い位置にあり、送信エリアが重なるように設置する必要がある。また、送受信器間に障害物がないことが使用条件となる。そのため、位置センサ内蔵の発光部は周囲全周方向に設ける必要があり、受信器は複数台の設置を要する場合もある。また、受発光部の可視面に切粉、ごみ等が付着することにより信号伝達に支障が起る恐れがある。なお、位置センサ内の発光電源は電池であり、その寿命によっては保全に手間がかかる。
【0006】
電磁誘導方式、電波方式、赤外線方式以外のコードレス信号伝達方式として、交流信号を感度良く検出する交流信号検出装置がある。(特許文献1)
【0007】
位置センサの形態については、一例として出願人が同一である特許文献2に示すタッチセンサがある。請求項2の位置センサは、四角状接触子を被測定物に合わせ球状に変えたもので、この形態に限定されるものではない。
【0008】
【特許文献1】特願 2007−21120
【特許文献2】特許 第296710号
【非特許文献1】RENISHOW社総合カタログ 2006年11月発行 従来方式の図示説明あり。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上に述べた電磁誘導方式、電波方式、及び赤外線方式における各々の問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達するために信号伝達方式として、在来方式の電磁誘導方式、電波方式、赤外線方式を採用せず、機械の連結された構造物(主として工作機械)を浮遊導体と解し、その浮遊導体を媒体として信号伝達を行うことにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
上述したように本発明の位置センサでは、受信器の設置場所の制約がないこと。位置センサに多数の発光部を設ける必要がないこと。障害物の影響を回避できること。切粉、ごみ等の影響を受けないこと。消費電力を抑えることにより、内蔵する電池の長寿命化が図れるなどの利点がある位置センサを提供できる。また非常に微弱な交流信号を利用した通信を採用することにより、通信範囲の限定を実現できる。交流信号の周波数や磁気結合条件を適正に選択することで、工場環境におけるノイズに強いといった従来の通信方式にないメリットが得られる。
【0012】
上述の効果はATC(自動工具交換方式)を搭載した工作機械における三次元タッチプローブにおいて顕著な効果が認められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の形態を図1および図2に基いて説明する。
【0014】
図1は本発明の全体構成を示すイメージ図である。1は機械装置で例としてマシニングセンタを示す。2は連結された構造物であり、工具や三次元タッチプローブ3を保持、回転する主軸部で、ATC装置(図示せず)により着脱する必要からタッチプローブ3の入出力にはコードを使用することができない。タッチプローブ3に装着されたフィンガ(接触子)4で、加工物5に接触して出力信号を発信する。6は受信器で、機械装置1に固定される。7は機械装置の数値制御装置である。
【0015】
図2は位置センサの断面図であり、ここでは請求項2に記した三次元タッチプローブの内部構成を示す。図1に示すように、三次元タッチプローブ3は、マシニングセンタや旋盤等の連結された構造物2の主軸にシャンク8を介して取り付けられ、加工物5の芯出しや寸法計測、寸法確認に使用される。それらの値は、フィンガ4が加工物や工具に接触し、三次元タッチプローブ内蔵のスイッチ接点部9が開閉することで生じる電気信号によって得られる。接点部9を送信回路10と接続することで、三次元タッチプローブと機械装置に取り付けた受信機2との通信を行う。送信回路の電源は、三次元タッチプローブに内蔵された電池11より供給される。三次元タッチプローブに内蔵するスイッチは、接点式センサ、無接点式センサ、非接触式センサ等、位置センサの形式に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 全体構成図
【図2】 三次元タッチプローブの構成図
【符号の説明】
【0017】
1 機械装置
2 連結された構造物(主軸部)
3 三次元タッチプローブ
4 フィンガ
5 加工物
6 受信器
7 数値制御装置
8 テーパーシャンク
9 接点部
10 送信回路
11 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一点の位置を一次元ないし三次元的に検知する位置センサの発信部と受信部との信号伝達において、コードを使用せず、かつ電磁誘導方式、電波方式、赤外線方式を用いず、機械の連結された構造物を浮遊導体と解し、その浮遊導体を媒体として交流信号検出伝達を行うことを特徴とする位置センサ。
【請求項2】
ATC(自動工具交換方式)機能を搭載した工作機械にて使用される三次元タッチプローブに代表される請求項1記載の位置センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−96212(P2011−96212A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264362(P2009−264362)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000138071)株式会社メトロール (14)
【Fターム(参考)】