説明

位置制御機構

【課題】 前後方向および回転方向のいずれにも制御対象の位置を制御できるようにするとともに、発塵や発熱がない位置制御機構を提供することである。
【解決手段】 一対のリニアモータR1,R2のそれぞれにエアスライドS1,S2を一体的に設けるとともに、これらエアスライドには、それと一体的に移動する第1連結部材6,7を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材10,11を互いに対向させて設ける。そして、これら第2連結部材10,11の対向部間には、直動形軸受12,13を設け、これら一対の第2連結部材は、上記直動形軸受を介して相対移動可能にする一方、上記一対の第2連結部材のいずれか一方の第2連結部材に移動体14を固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボット等に用いるのに最適な位置制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、制御対象の水平方向の角度を制御するのに回転テーブルを用いることが多いが、従来の回転テーブルは、その回転軸を軸受で支持される。したがって、この回転テーブルの回転中心は固定化されたものになり、意図的に回転中心をずらすことはできない。
なお、この回転テーブルは、制御対象の水平方向の角度を制御するのに通常用いられているものなので、特に特許調査はしなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにした従来の回転テーブルでは、回転中心が固定化されているので、その中心をずらした回転角度を制御したり、あるいは前後方向の位置を制御したりすることは不可能であり、その分、自在な位置制御が制限されるという問題があった。
【0004】
また、回転テーブルは、その駆動源となるモータ、およびボールねじやギア等の動力伝達機構から熱が発生したりすると、その熱によって各部材が膨張して、正確な位置制御に影響を及ぼすこともあった。しかも、モータ等が発熱すれば、それは焼き付きの原因になるが、その焼き付きを防止しようとすると、そのタクトを落とさなければならない。タクトを落とせば、当然のこととして、位置決めに要する時間が長くなり、それだけ迅速な処理に影響を及ぼすことになる。
【0005】
さらに、回転テーブルの軸受にはグリースや油が含まれているので、クリーンな使用環境が求められる半導体製造装置に、この位置制御機構を用いると、上記グリースや油、あるいは摩耗粉などによる塵埃が発生しやすくなる。特に、半導体製造装置においては、高タクトな動作が求められるので、上記軸受部分などからの発塵がさらに多くなり、半導体の製造に支障を来すといった問題があった。
【0006】
第1および第2の発明の目的は、前後方向および回転方向のいずれにも制御対象の位置を制御できるようにした位置制御機構を提供することである。
【0007】
第3の発明の目的は、第1,2の発明の目的に加えて、発塵や発熱がない位置制御機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、一対の直動形駆動体のそれぞれに、これら直動形駆動体と一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設けるとともに、これら第2連結部材の対向部間には、直動形軸受を設け、これら一対の第2連結部材は、上記直動形軸受を介して相対移動可能にする一方、上記一対の第2連結部材のいずれか一方の第2連結部材に移動体を固定した点に特徴を有する。
【0009】
第2の発明は、一対の直動形駆動体のそれぞれに、これら直動形駆動体と一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設け、これら第2連結部材の対向部間には、移動体を配置するとともに、この移動体と上記第2連結部材との対向部間に直動形軸受を設け、上記一対の第2連結部材と移動体とは、上記直動形軸受を介して相対移動可能にした点に特徴を有する。
【0010】
第3の発明は、一対のリニアモータのそれぞれにエアスライドを一体的に設けるとともに、これらエアスライドには、それと一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設けるとともに、これら第2連結部材の対向部間には、直動形軸受を設け、これら一対の第2連結部材は、上記直動形軸受を介して相対移動可能にする一方、上記一対の第2連結部材のいずれか一方の第2連結部材に移動体を固定した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
第1および第2の発明によれば、一対の直動形駆動体の移動位置をそれぞれ別々に制御することによって、移動体の回転中心をある程度変動させることができる。その分、角度調整の幅が広がるとともに、その適用範囲も大きくなる。
【0012】
第3の発明によれば、移動体の回転中心をある程度変動させることができることに加えて、次のような効果を奏することができる。
先ず、リニアモータにエアスライドを一体的に設け、このエアスライドで第1,2連結部材を支持するようにしたので、第1,2連結部材および第1,2連結部材に設けた移動体の荷重がエアスライドに作用したとしても、その部分が発熱したり、あるいはその部分から発塵したりしない。したがって、クリーンな使用環境が求められる半導体製造装置にも最適な制御機構ということになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5に示した第1実施形態は、一対の丸軸型のリニアモータM1,M2のそれぞれに同じく丸軸型のエアスライドS1,S2を一体的に設けたものである。このリニアモータM1,M2のそれぞれは、本体1に架設した丸軸型のレール2,3に摺動自在に設けたものであり、エアスライドS1,S2のそれぞれは、上記レール2,3と平行に架設した丸軸型のレール4,5に沿って移動するもので、これらリニアモータM1,M2とエアスライドS1,S2とは、一体化されている。したがって、リニアモータM1,M2がレール2,3に沿って移動すれば、それにともなってエアスライドS1,S2もレール4,5に沿って移動するものである。
また、上記エアスライドS1,S2には、それぞれ位置検出のための図示しないリニアエンコーダが横に配置されている。
【0014】
なお、上記エアスライドS1,S2は、レール4,5に対して、空気圧の作用で非接触の状態を保ちながら移動するもので、すでに公知のものである。
【0015】
上記のようにした一対のエアスライドS1,S2には、第1連結部材6,7の一端を固定している。そして、この第1連結部材6,7の他端には、アンギュラ軸受8,9を介して第2連結部材10,11を連結し、この第2連結部材10,11を第1連結部材6,7に対して回転自在にしている。しかも、これら一対の第2連結部材10,11は、第1連結部材6,7に直交する関係において、平行を保ちながら互いに対向するようにしている。そして、これら一対の第2連結部材10,11の対向部間には、直動形軸受12,13を設けて、両連結部材10,11を連係している。そして、上記直動形軸受12,13は公知のもので、両第2連結部材を相対移動可能に保ちながら、両者を連結するものである。
【0016】
さらに、上記第2連結部材10,11のうちの一方の第2連結部材11には、移動体14を固定しているが、この移動体14は、それ自体が位置制御対象になってもよいし、この移動体14に載せた物体が位置制御対象になってもよいものである。
【0017】
次に、この第1実施形態の作用を説明する。
今、リニアモータM1,M2を同時に駆動すると、それにともなってエアスライドS1,S2もレール4,5に沿って移動する。このとき、リニアモータM1,M2の相対的な移動量を等しくすれば、図2に示すように、移動体14は前後方向においてその位置が制御される。
【0018】
また、上記リニアモータM1,M2の相対的な移動量を相違させれば、図3および図4に示すように、移動体14を角度θの方向に正転させたり逆転させたりできる。なお、このように移動体14が角度θ分回動すると、移動体14が第1連結部材6,7に対して直角になっているときよりも、アンギュラ軸受8,9の中心間の距離が長くなる。このようにアンギュラ軸受8,9の中心間の距離が長くなったときには、両第2連結部材10,11が上記直動形軸受12,13を介して相対移動して、長さの変化を吸収する。
【0019】
さらに、移動体14を前後方向に移動した位置で、その移動体14を回動すれば、図5に示すように、移動体14は、前後方向と回動方向とが合成された方向において位置制御ができることになる。
【0020】
いずれにしても、この第1実施形態によれば、移動体14を回動方向にも前後方向にも位置調整ができるとともに、それら回動方向および前後方向とが合成された方向にも位置制御ができるので、従来の回転テーブルに比べて、その制御方向の自由度が極端に大きくなる。制御方向の自由度が大きくなれば、目的に応じたいろいろな位置制御が可能になるとともに、位置制御機構としての用途も飛躍的に拡大する。
【0021】
さらに、この第1実施形態によれば、エアスライドS1,S2を用いることができるので、機械的な接触部を少なくできる。このように機械的な接触部を少なくできるので、発塵量や発熱量を小さくできる。したがって、クリーンな使用条件を求められる半導体製造装置用の位置決め制御機構としても最適である。なお、リニアモータM1,M2のハウジングを、熱伝導性のよいアルミ製とするとともに、そのハウジングの表面には長穴状の掘り込みを設けて表面積を大きくしておけば、放熱性がよくなるので、リニアモータM1,M2の熱膨張よる位置決め精度の低下も抑えることができる。
【0022】
上記第1実施形態では、リニアモータM1,M2を用いたが、必ずしもリニアモータでなくてもよい。例えば、スクリューシャフトにナット部材をはめ、このナット部材にエアスライドS1,S2を固定するようにしてもよい。この場合には、上記スクリューシャフトとナット部材とが相まって、この発明の直動形駆動体を構成するものである。ただし、この直動形駆動体にはリニアモータも含まれること当然である。
【0023】
さらに、目的に応じては、上記エアスライドS1,S2を用いずに、直動形駆動体に第1連結部材を直接固定するようにしてもよい。このように直動形駆動体に第1連結部材を直接固定した実施形態を示したのが、図6に示した第2実施形態である。
この第2実施形態は、直動形駆動体であるリニアモータR1,R2に第1連結部材6,7の一端を固定したもので、その他は、第1実施形態と同様である。したがって、この第2実施形態においても、第1連結部材6,7と第2連結部材10,11とはアンギュラ軸受8,9を介して回動自在に連結されるとともに、一対の第2連結部材10,11は直動形軸受12,13を介して相対移動可能に連携されている。そして、一方の第2連結部材11に移動体14を固定している。
【0024】
このようにした第2実施形態の位置制御機構は、半導体製造装置のようにクリーンな使用条件が求められず、正確な位置制御だけが求められる用途に最適である。
【0025】
図7に示した第3実施形態は、直動形駆動体である一対のリニアモータR1,R2のそれぞれに、これらリニアモータR1,R2と一体的に移動する第1連結部材6,7の一端を固定している。そして、これら第1連結部材6,7のそれぞれには、第1連結部材6,7に対して回動可能にした第2連結部材10,11を互いに対向させて設け、これら第2連結部材10,11の対向部間には、移動体14を配置している。しかも、この移動体14と上記第2連結部材10,11との対向部間に直動形軸受12,13を設けている。したがって、第1,2実施形態と同様に、上記一対の第2連結部材10,11と移動体14とは、直動形軸受12,13を介して相対移動可能となる。
【0026】
なお、上記第3実施形態においても、エアスライドS1,S2を設け、このエアスライドS1,S2に第1連結部材6,7を固定するようにしてもよいこと当然である。
【0027】
また、この発明の位置制御機構とは、移動体14の前後位置および回動位置を制御することはもちろんであるが、例えば、レール2,3あるいは4,5を十分に長くして、移動体を決められた位置まで移動させる搬送機構も含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の平面図である。
【図2】移動体の制御方向を示す平面図である。
【図3】移動体の制御方向を示す平面図である。
【図4】移動体の制御方向を示す平面図である。
【図5】移動体の制御方向を示す平面図である。
【図6】第2実施形態の説明図である。
【図7】第3実施形態の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
M1,M2 直動形駆動体であるリニアモータ
S1,S2 エアスライド
6,7 第1連結部材
10,11 第2連結部材
12,13 直動形軸受
14 移動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の直動形駆動体のそれぞれに、これら直動形駆動体と一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設けるとともに、これら第2連結部材の対向部間には、直動形軸受を設け、これら一対の第2連結部材は、上記直動形軸受を介して相対移動可能にする一方、上記一対の第2連結部材のいずれか一方の第2連結材に移動体を固定したことを特徴とする位置制御機構。
【請求項2】
一対の直動形駆動体のそれぞれに、これら直動形駆動体と一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設け、これら第2連結部材の対向部間には、移動体を配置するとともに、この移動体と上記第2連結部材との対向部間に直動形軸受を設け、上記一対の第2連結部材と移動体とは、上記直動形軸受を介して相対移動可能にしたことを特徴とする位置制御機構。
【請求項3】
一対のリニアモータのそれぞれにエアスライドを一体的に設けるとともに、これらエアスライドには、それと一体的に移動する第1連結部材を設け、これら第1連結部材のそれぞれには、第1連結部材に対して回動可能にした第2連結部材を互いに対向させて設けるとともに、これら第2連結部材の対向部間には、直動形軸受を設け、これら一対の第2連結部材は、上記直動形軸受を介して相対移動可能にする一方、上記一対の第2連結部材のいずれか一方の第2連結部材に移動体を固定したことを特徴とする位置制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−238579(P2006−238579A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48533(P2005−48533)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】