説明

位置制御装置

【課題】 制御対象機械を目標位置へ移動させて停止させるために、位置センサを用いて位置補正動作を行う機能を有した位置制御装置を提供する。
【解決手段】 この位置制御装置70には、従来の位置制御装置20と同じ構成要素である位置指令ブロック21,位置調節器22,速度調節器29,トルク調節器30,位置補正手段31の他に、位置補正手段31の出力である位置補正量が予め定めた範囲内であるか否かを監視し、この範囲を超えたときにはアラーム信号を出力する比較器71を備えている。すなわち、この比較器71により、対象機械10または対象機械60の移動する部分の位置を検出する位置センサ19の検出値が何らかの要因で過大、若しくは過小になったとき、または、光学式の位置センサ19での光線が何らかの要因で遮られたときには、前記位置補正量の絶対値が過大になることから、このときにはアラーム信号を外部に出力することにより、この位置制御装置70の動作信頼性を改善している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御対象機械を目標位置へ移動させて停止させるための位置制御装置に関し、特に、位置センサを用いて位置補正動作を行う機能を有した位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、この種の制御対象機械の模式的概念構成図である。
【0003】
この対象機械10には、重量物11と、アーム12と、スライド移動部13と、スライドレール部14と、送りねじ15と、カップリング16と、モータ17と、モータエンコーダ18と、位置センサ19と、位置制御装置20,40,70,75,80,85のうちの何れか1台とを備えている。このうち、重量物11,アーム12,スライド移動部13,スライドレール部14,送りねじ15,カップリング16は、制御対象機械として包括されるものである。
【0004】
図8において、スライドレール部14は、スライド移動部13が図示の左右の移動方向のみ移動するように拘束する。さらに、スライドレール部14とスライド移動部13の接触部は低摩擦であり、スライド移動部13がスライドレール部14上を滑らかに移動できるようにされている。また、モータ17の出力軸はカップリング16を介して送りねじ15と連結され、この送りねじ15はスライド移動部13に取り付けられた図示しないねじ部内に螺挿されている。
【0005】
すなわち、前記何れかの位置制御装置からの位置指令値に従った位置決め制御により、モータ17が送りねじ15を回転駆動することにより、スライド移動部13が図示の左右方向に移動する。
【0006】
このような位置決め制御がなされるスライド移動部13には、長尺のアーム12が取り付けられており、このアーム12の先端には重量物11が取り付けられている。従って、スライド移動部13の位置制御により、アーム12の先端の重量物11も位置決め制御されることとなる。
【0007】
図9は、上述の図8の構成とは異なった制御対象機械の模式的概念構成図である。
【0008】
この対象機械60には、台車61と、車輪62と、レール63と、カップリング64と、モータ17と、モータエンコーダ18と、位置センサ19と、位置制御装置20,40,70,75,80,85の何れか1台とを備えている。このうち、台車61,車輪62,レール63,カップリング64は制御対象機械として包括されるものであり、この制御対象機械は立体倉庫における部品の搬送装置などに供される。
【0009】
図9において、台車61は車輪62を介してレール63上を、図示の左右の移動方向に、滑らかに移動できるようにされている。また、モータ17の出力軸はカップリング64を介して車輪62と連結されている。すなわち、前記何れかの位置制御装置からの位置制御動作に従って、モータ17がカップリング64を介して車輪62を回転駆動することにより、台車61が図示の左右方向に移動する。
【0010】
上述の位置制御がなされる台車61には、例えば、門形アーム(図示せず)が取り付けられており、この門形アームには重量物(図示せず)が載置されている。従って、台車61の位置制御により、前記門形アームに支持された重量物も位置制御されることとなる。
【0011】
図10は、上述の対象機械10または対象機械60の位置決め制御を行う従来の位置制御装置20の回路構成図である。
【0012】
この位置制御装置20には、位置指令ブロック21と、位置調節器22と、速度調節器29と、トルク調節器30と、位置補正手段31とを備えている。
【0013】
位置指令ブロック21では対象機械10のスライド移動部13または対象機械60の台車61が目標位置に移動するためのパルス列形式の第1の速度指令値を出力し、このパルス列形式の第1の速度指令値ではパルス数が移動量を指令し、パルス周波数がその時々の移動速度(すなわち、単位時間当りの位置の移動量が速度に相当する指令値となる)を指令している。
【0014】
減算器23,積算器24,減算器25,調節器26,加算器27,フィードフォワード制御ブロック28からなる位置調節器22では、モータ17の出力軸に取り付けられたモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号を指令される前記第1の速度指令値に一致させるために、減算器23,積算器24,調節器26を用いた位置調節演算が行われ、その出力は第2の速度指令値として加算器27を介して速度調節器29に送られる。
【0015】
このとき、フィードフォワード制御ブロック28では、位置指令ブロック21からの前記第1の速度指令値の単位時間当りの位置の移動量に所定のフィードフォワードゲインを乗じた補正量を求め、この補正量と調節器26からの速度指令値とを加算器27により加算し、この加算値を新たな第2の速度指令値として速度調節器29に送っている。
【0016】
速度調節器29では、モータエンコーダ18からのパルス列の検出信号に基づくモータ17の速度検出値が前記第2の速度指令値に一致するように速度調節演算が行われ、その出力がトルク指令値としてトルク調節器30に送られる。
【0017】
トルク調節器30では、前記トルク指令値に従い、このトルク調節器30に内蔵するインバータなどの半導体電力変換器を介してモータ17を駆動し、対象機械10のスライド移動部13または対象機械60の台車61を所定位置に移動させて停止させるような位置決め制御が実行される。
【0018】
このとき位置補正手段31では、位置センサ19で検出された対象機械10のスライド移動部13または位置センサ19と反射板19aとで検出された対象機械60の台車61の位置信号を、微分器32で微分演算することにより速度信号に変換し、この速度信号と速度演算器33によるモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号に基づくモータ17の速度演算値との差の積算値を減算器34,積算器35で求め、この積算値にフィルタ36を介した値を位置補正量として出力している。
【0019】
すなわち、位置調節器22において、減算器25では積算器24から得られる位置偏差量から前記位置補正量を減じた値を求め、この値を新たな位置偏差量として調節器26に与えることで、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正するようにしている。
【0020】
図11は、図10に示した位置制御装置20とは異なった従来の位置制御装置40の回路構成図であり、この図において、図10に示した位置制御装置20と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0021】
この位置制御装置40には、位置指令ブロック41と、位置調節器42と、積算器49と、位置補正手段50と、速度調節器29と、トルク調節器30とを備えている。
【0022】
位置指令ブロック41では、対象機械10のスライド移動部13または対象機械60の台車61が目標位置に移動するためのデータ形式の位置指令値を出力し、このデータ形式の位置指令値ではデータの値が移動量を指令し、データの変化がその時々の移動速度を指令している。
【0023】
加算器43,減算器44,調節器45,加算器46,微分器47,フィードフォワード制御ブロック48からなる位置調節器42では、モータ17に取り付けられたモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号の積算器49による積算値である移動量検出値を位置指令ブロック41から指令される前記位置指令値に一致させるために、減算器44,調節器45を用いた位置調節演算が行われ、その出力は第2の速度指令値として加算器46を介して速度調節器29に送られる。
【0024】
このとき、微分器47とフィードフォワード制御ブロック48とにより、位置指令ブロック41からの前記位置指令値の微分値に所定のフィードフォワードゲインを乗じた補正量を求め、この補正量と調節器45からの速度指令値とを加算器46により加算し、この加算値を新たな第2の速度指令値として速度調節器29に送っている。
【0025】
さらに位置補正手段50では、位置センサ19で検出された対象機械10のスライド移動部13または位置センサ19と反射板19aとで検出された対象機械60の台車61の位置信号と、モータ17に取り付けられたモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号の積算器49による積算値である移動量検出値との差を減算器51で求め、この減算値にフィルタ52を介した値を位置補正量として出力している。
【0026】
すなわち、位置調節器42において、加算器43では積算器49から得られる移動量検出値に前記位置補正量を加算した値を求め、この加算した値と位置指令ブロック41からの位置指令値との偏差を新たな位置偏差量として調節器45に与えることで、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正するようにしている。
【0027】
なお、この種の位置制御装置としては、下記特許文献1に記載されている構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2003−76426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
図10または図11に示した従来の位置制御装置では、対象機械10のスライド移動部13または対象機械60の台車61の位置を位置センサ19で検出して位置制御の補正を行っているため、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正しつつ位置制御を行うことが可能であるが、反面、位置センサ19に不具合が発生した場合、あるいは、光学式の位置センサ19での光線が何らかの要因で遮られて前記位置を正しく検出できなくなったときには、適切な位置制御が行えなくなるという問題点があった。
【0030】
この発明の目的は、上記問題点を解消した位置制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この第1の発明は、制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される第1の速度指令値または位置指令値に基づいて位置決め制御を行う位置制御装置において、
前記制御対象機械の移動する部分の位置を検出する位置センサと、この検出した値に基づく位置補正量を導出する位置補正手段と、この位置補正手段の出力値を監視する比較器とを備えたことを特徴とする。
【0032】
第2発明は前記第1の発明の位置制御装置において、
前記比較器は、前記位置補正量が予め定めた範囲内であるか否かを監視し、この範囲を超えたときにはアラーム信号を出力するようにしたことを特徴とする。
【0033】
また第3の発明は、制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される第1の速度指令値または位置指令値に基づいて位置決め制御を行う位置制御装置において、
前記制御対象機械の移動する部分の位置を検出する位置センサと、この検出した値に基づく位置補正量を導出する位置補正手段と、この位置補正手段を動作させるか否かを指令する補正動作指令器とを備えたことを特徴とする。
【0034】
第4発明は前記第3の発明の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられたときから、この第1の速度指令値または位置指令値が終了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする。
【0035】
第5発明は前記第3の発明の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられ、所定の切替設定値を通過した後からこの第1の速度指令値または位置指令値が終了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする。
【0036】
第6発明は前記第3の発明の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられ、この第1の速度指令値または位置指令値が終了する直前から該第1の速度指令値または位置指令値に基づく位置決めが完了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、前記制御対象機械の移動する部分の位置を検出する位置センサの動作状態を監視する、または前記位置センサを実際に利用する期間を限定することにより、位置誤差を補正しつつ適切な位置制御が行える位置制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図2】この発明の第2の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図3】この発明の第3の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図4】この発明の第4の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図5】図3,4に示した位置制御装置の動作を説明する波形図
【図6】図3,4に示した位置制御装置の動作を説明する波形図
【図7】図3,4に示した位置制御装置の動作を説明する波形図
【図8】対象機械の模式的概念構成図
【図9】対象機械の模式的概念構成図
【図10】従来例を示す位置制御装置の回路構成図
【図11】従来例を示す位置制御装置の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、この発明の第1の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図10に示した従来の位置制御装置20と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0040】
この位置制御装置70には、従来の位置制御装置20と同じ構成要素である位置指令ブロック21,位置調節器22,速度調節器29,トルク調節器30,位置補正手段31の他に、位置補正手段31の出力である位置補正量が予め定めた範囲内であるか否かを監視し、この範囲を超えたときにはアラーム信号を出力する比較器71を備えている。
【0041】
すなわち、この比較器71により、対象機械10または対象機械60の移動する部分の位置を検出する位置センサ19の検出値が何らかの要因で過大、若しくは過小になったとき、または、光学式の位置センサ19での光線が何らかの要因で遮られたときには、前記位置補正量の絶対値が過大になることから、このときにはアラーム信号を外部に出力することにより、この位置制御装置70の動作信頼性を改善している。
【0042】
図2は、この発明の第2の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図11に示した従来の位置制御装置40と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0043】
この位置制御装置75には、従来の位置制御装置40と同じ構成要素である位置指令ブロック41,位置調節器42,積算器49,速度調節器29,トルク調節器30,位置補正手段50の他に、位置補正手段50の出力である位置補正量が予め定めた範囲内であるか否かを監視し、この範囲を超えたときにはアラーム信号を出力する比較器76を備えている。
【0044】
すなわち、この比較器76により、対象機械10または対象機械60の移動する部分の位置を検出する位置センサ19の検出値が何らかの要因で過大、若しくは過小になったとき、または、光学式の位置センサ19での光線が何らかの要因で遮られたときには、前記位置補正量の絶対値が過大になることから、このときにはアラーム信号を外部に出力することにより、この位置制御装置75の動作信頼性を改善している。
【0045】
なお、図1,図2の回路構成図に基づいたこの発明の動作説明において、フィルタ36またはフィルタ52の周波数特性値,比較器71または比較器76の動作値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【0046】
図3は、この発明の第3の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図10に示した従来の位置制御装置20と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0047】
この位置制御装置80には、従来の位置制御装置20と同じ構成要素である位置調節器22,速度調節器29,トルク調節器30の他に、従来の位置指令ブロック21の機能に前記第1の速度指令値の状態を出力する機能が付加された位置指令ブロック21aと、従来の位置補正手段31の機能を動作させるか否かを外部からの指令に基づき制御できる機能が付加された位置補正手段31aと、位置指令ブロック21aが出力する第1の速度指令値の状態、すなわちパルス列形式の第1の速度指令値のパルス数に基づく移動量に基づいて、位置補正手段31aを動作させるか否かを指令する補正動作指令器81〜83のうちの何れかを備えている。
【0048】
図4は、この発明の第4の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図11に示した従来の位置制御装置40と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0049】
この位置制御装置85には、従来の位置制御装置40と同じ構成要素である位置調節器42,速度調節器29,トルク調節器30の他に、従来の位置指令ブロック41の機能に前記位置指令値の状態を出力する機能が付加された位置指令ブロック41aと、従来の位置補正手段50の機能を動作させるか否かを外部からの指令に基づき制御できる機能が付加された位置補正手段50aと、位置指令ブロック41aが出力する位置指令値の状態、すなわちデータ形式の位置指令値のデータの値に基づく移動量に基づいて、位置補正手段50aを動作させるか否かを指令する補正動作指令器86〜88のうちの何れかを備えている。
【0050】
図5は、図3に示した位置制御装置80における補正動作指令器81を備えた構成、または図4に示した位置制御装置85における補正動作指令器86を備えた構成の動作を説明する波形図である。
【0051】
すなわち、図5に示すように、位置決め開始前の制御対象機械が停止している状態(時刻T0以前)では、補正動作指令器81または補正動作指令器86の信号に基づいて位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させる。そして、位置指令ブロック21aから第1の速度指令値または位置指令ブロック41aから位置指令値が新たに発せられた時刻T0 に位置決め制御動作を開始すると、補正動作指令器81または補正動作指令器86がこれを検知して、この時刻T0 より前は、その動作を停止中の位置補正手段31aまたは位置補正手段50aに対して、動作の開始を指令する。その後、時刻T1 に前記第1の速度指令値または位置指令値が終了すると、補正動作指令器81または補正動作指令器86がこれを検知して、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させるようにしている。このように、位置決め開始前や位置決め完了後の制御対象機械が停止しているとき等の位置検出値による位置制御を必要としない期間では、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させることにより、上記期間に光学式の位置センサ19での光学系が遮られたときの位置補正量の急変に伴う悪影響を受けないようにする。
【0052】
その結果、この位置制御装置80または位置制御装置85では、位置センサ19を利用する期間を限定することとなり、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正しつつ、適切な位置制御が行うことができる。
【0053】
図6は、図3に示した位置制御装置80における補正動作指令器82を備えた構成、または図4に示した位置制御装置85における補正動作指令器87を備えた構成の動作を説明する波形図である。
【0054】
すなわち、図6に示すように、位置決め開始前の制御対象機械が停止している状態(時刻T0以前)では、補正動作指令器82または補正動作指令器87の信号に基づいて位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させる。そして、位置指令ブロック21aから第1の速度指令値または位置指令ブロック41aから位置指令値が新たに発せられた時刻T0 に位置決め制御動作を開始するが、この時点では補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させている。その後、前記位置指令値が予め設定された切替設定値に達した時刻T1に、補正動作指令器82または補正動作指令器87がこれを検知して、この時刻T1 より前はその動作を停止中の位置補正手段31aまたは位置補正手段50aに対して、動作の開始を指令する。その後、時刻T2 に前記第1の速度指令値または位置指令値が終了すると、補正動作指令器82または補正動作指令器87がこれを検知して、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させるようにしている。このように、位置決め開始前や位置決め完了後の制御対象機械が停止しているときや、位置決め動作の開始直後から位置指令値が予め設定された切替設定値に達するまで等のように、位置検出値による位置制御を必要としない期間では、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させることにより、上記期間に光学式の位置センサ19での光学系が遮られたときの位置補正量の急変に伴う悪影響を受けないようにする。
【0055】
その結果、この位置制御装置80または位置制御装置85では、位置センサ19を利用する期間を限定することにより、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正しつつ適切な位置制御が行うことができる。
【0056】
図7は、図3に示した位置制御装置80における補正動作指令器83を備えた構成、または図4に示した位置制御装置85における補正動作指令器88を備えた構成の動作を説明する波形図である。
【0057】
すなわち、図7に示すように、位置決め開始前の制御対象機械が停止している状態(時刻T0以前)では、補正動作指令器83または補正動作指令器88の信号に基づいて位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させる。そして、位置指令ブロック21aから第1の速度指令値または位置指令ブロック41aから位置指令値が新たに発せられた時刻T0 に位置決め制御動作を開始するが、この時点では補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させている。その後、概略の位置決めが完了して前記第1の速度指令値または位置指令値が終了直前に達した時刻T1に、補正動作指令器83または補正動作指令器88がこれを検知して、この時刻T1 以前はその動作を停止中の位置補正手段31aまたは位置補正手段50aに対して、動作の開始を指令する。その後、前記位置指令値に基づく位置決めの微調整を行い精密な位置決めが完了して位置決め完了信号が出力される時刻T2に、補正動作指令器83または補正動作指令器88がこれを検知して、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させるようにしている。このように、位置決め開始前や位置決め完了信号が出力された後の制御対象機械が停止しているときや、位置決め完了直前の精密な位置決め動作を行う前の概略の位置決めを行っているとき等のように、位置検出値による位置制御を必要としない期間では、位置補正手段31aまたは位置補正手段50aの動作を停止させることにより、上記期間に光学式の位置センサ19での光学系が遮られたときの位置補正量の急変に伴う悪影響を受けないようにする。
【0058】
その結果、この位置制御装置80または位置制御装置85では、位置センサ19を利用する期間を限定することにより、モータ17と対象機械10,60との間のバックラッシ、スリップなどに起因した位置誤差を補正しつつ適切な位置制御が行うことができる。
【0059】
なお、図5〜図7の波形図に基づいたこの発明の動作説明において、フィルタ36またはフィルタ52の周波数特性値,補正動作指令器81〜83,86〜88におけるそれぞれの動作値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【符号の説明】
【0060】
10…対象機械、11…重量物、12…アーム、13…スライド移動部、14…スライドレール部、15…送りねじ、16…カップリング、17…モータ、18…モータエンコーダ、19…位置センサ、20…位置制御装置、21,21a…位置指令ブロック、22…位置調節器、29…速度調節器、30…トルク調節器、31,31a…位置補正手段、40…位置制御装置、41,41a…位置指令ブロック、42…位置調節器、49…積算器、50,50a…位置補正手段、60…対象機械、61…台車、62…車輪、63…レール、64…カップリング、70…位置制御装置、71…比較器、75…位置制御装置、76…比較器、80…位置制御装置、81〜83…補正動作指令器、85…位置制御装置、86〜88…補正動作指令器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される第1の速度指令値または位置指令値に基づいて位置決め制御を行う位置制御装置において、
前記制御対象機械の移動する部分の位置を検出する位置センサと、この検出した値に基づく位置補正量を導出する位置補正手段と、この位置補正手段の出力値を監視する比較器とを備えたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置制御装置において、
前記比較器は、前記位置補正量が予め定めた範囲内であるか否かを監視し、この範囲を超えたときにはアラーム信号を出力するようにしたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項3】
制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される第1の速度指令値または位置指令値に基づいて位置決め制御を行う位置制御装置において、
前記制御対象機械の移動する部分の位置を検出する位置センサと、この検出した値に基づく位置補正量を導出する位置補正手段と、この位置補正手段を動作させるか否かを指令する補正動作指令器とを備えたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられたときから、この第1の速度指令値または位置指令値が終了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられ、所定の切替設定値を通過した後からこの第1の速度指令値または位置指令値が終了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項6】
請求項3に記載の位置制御装置において、
前記補正動作指令器は、前記第1の速度指令値または位置指令値が新たに発せられ、この第1の速度指令値または位置指令値が終了する直前から該第1の速度指令値または位置指令値に基づく位置決めが完了するまでの期間、前記位置補正手段を動作させるようにしたことを特徴とする位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−107961(P2011−107961A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262060(P2009−262060)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】