説明

位置調整治具、位置調整方法及び電子装置の製造方法

【課題】搬送機の位置調整を高精度に短時間で実施することが可能な位置調整治具を提供する。
【解決手段】 搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、搬送容器底部に設けられた結合溝がロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する際に用いる位置調整治具1であって、搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、搬送機により保持されるフランジ部14と、フランジ部14に接続された本体部16と、搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、本体部に接続され、キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレート10とを備える。貫通孔12の直径は、キネマティックピンの直径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等を収納する搬送容器の自動搬送に関し、特に搬送容器を製造装置に移載する搬送機の位置を調整する位置調整治具、位置調整方法及び電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる半導体基板は、前面ドア付きポッド(FOUP)と称される密閉容器に収納されて搬送される。「FOUP」とは半導体製造装置材料協会(SEMI:Semiconductor Equipment and Materials Institute)の規格に準拠している300ミリウェハ用の密閉型搬送容器である。FOUPの寸法は、SEMI規格E1.9、E47.1、E57、E62等にて規定されている。FOUPを自動搬送する搬送機とのインターフェースとして、FOUP上面のトップフランジ、FOUP底面のV溝状のレセプタクルのセカンダリキネマティックピン位置、及びFOUP底面のコンベアレールがSEMI規格の中で規定されている。また、製造装置に設けられたロードポートとのキネマティックカプリングのインターフェイスとして、FOUP底面のレセプタクルのプライマリキネマティックピン位置が規定されている。
【0003】
FOUPを高信頼性で自動搬送するために、FOUPのトップフランジ及びレセプタクルを基準に製造装置のロードポートに対する位置を搬送機に記憶させる必要がある。また、製造装置内でのFOUP搬送等において、レセプタクルのセカンダリキネマティックピン位置やコンベアレールと、レセプタクルのプライマリキネマティックピン位置とを基準に製造装置のロードポートに対する位置を搬送機に記憶させる必要がある。
【0004】
通常、搬送機にロードポート位置を記憶させるティーチング作業にFOUPが使用される。ティーチング作業において、搬送するFOUPとロードポートのプライマリキネマティックピンはSEMI規格に準拠していることが前提となる。しかし、SEMI規格には公差があり、FOUP毎の寸法誤差もある。特に、FOUPは樹脂製のため、金属や半導体等に比べて加工精度が劣る。そのため、ティーチングに使用するFOUPが必ずしもティーチングに適しているFOUPとは限らない。また、FOUPのレセプタクルに設けられたV溝はFOUP下面にある為に位置確認作業が困難である。
【0005】
FOUPの位置調整について、位置調整治具を用いてロードポートのFOUP保持部と蓋開閉部との相対的な位置を調整しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ロードポートに対する搬送機の位置を調整する治具については開示されていない。
【特許文献1】特開2000−269302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、搬送機の位置調整を高精度に短時間で実施することが可能な位置調整治具、位置調整方法及び電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、(イ)搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、搬送容器底部に設けられた結合溝がロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する際に用いる位置調整治具であって、(ロ)搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、搬送機により保持されるフランジ部と、(ハ)フランジ部に接続された本体部と、(ニ)搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、本体部に接続され、キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、(ホ)貫通孔の直径がキネマティックピンの直径より大きい位置調整治具が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、(イ)搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、搬送容器底部に設けられた結合溝とロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する位置調整方法であって、(ロ)搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、搬送機により保持されるフランジ部と、フランジ部に接続された本体部と、搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、本体部に接続され、キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、貫通孔の直径がキネマティックピンの直径より大きい位置調整治具により、ロードポート上の搬送機の搬送位置を調整する位置調整方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、(イ)複数の製造装置間を搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて搬送して、搬送容器に収納された基板を順次、対応する製造装置に転送して、複数の製造装置による一連の処理を行う電子装置の製造方法であって、(ロ)搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、搬送機により保持されるフランジ部と、フランジ部に接続された本体部と、搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、本体部に接続され、キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、貫通孔の直径がキネマティックピンの直径より大きい位置調整治具により、ロードポート上の搬送機の搬送位置を調整するステップと、(ハ)搬送位置を調整後に、搬送機により搬送容器を特定の工程の処理を終了した第1の製造装置から、次に予定されている工程を実行する第2の製造装置のロードポート上に移載するステップと、(ニ)搬送容器から基板を転送して第2の製造装置により予定されている工程を実施するステップとを含む電子装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送機の位置調整を高精度に短時間で実施することが可能な位置調整治具、位置調整方法及び電子装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法や構成は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や構成等が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
本発明の実施の形態に係る位置調整治具1は、図1及び図2に示すように、フランジ部14、本体部16、ベースプレート10を備える。位置調整治具1は、搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、搬送容器底部に設けられた結合溝がロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する際に用いられる。
【0013】
フランジ部14は、搬送容器上に設けられたトップフランジに対応する。本体部16は、フランジ部14に接続される。ベースプレート10は、本体部16に接続される。ベースプレート10は、搬送容器の底面に対応する面を裏面として、ロードポート上のキネマティックピンに対応する位置に設けられた3個の貫通孔12を有する。
【0014】
ベースプレート10上において、各貫通孔12は三角形の頂点の位置に配置される。貫通孔12のなす三角形の一辺と平行なベースプレート10の端部が、搬送容器の蓋が取り付けられる前面に対応する。貫通孔12の直径はDhである。また、フランジ部14及びベースプレート10間の距離が搬送容器の裏面及びトップフランジ間の距離に対応するように、本体部16の高さが決定される。
【0015】
実施の形態に係る電子装置としての半導体装置の製造を実施する製造設備は、図3に示すように、複数の製造装置54a、・・・、54bと、保管庫58とを備える。各製造装置54a〜54bは、半導体装置の製造工程の流れに従い、各製造装置54a〜54b間に規定される複数の工程間搬送経路に沿って搬送される搬送容器60に収納された半導体基板を処理する。保管庫58は、搬送容器60を複数保存することが可能である。
【0016】
更に、各製造装置54a〜54b間、及び保管庫58と各製造装置54a〜54bとの間の搬送には、天井吊り下げ式搬送(OHT)システムが用いられる。OHTシステムには、半導体基板を収納した搬送容器60を自動搬送可能なように構成された搬送機40、搬送レール52等を備える。各製造装置54a〜54bには、搬送された搬送容器60から半導体基板を転送するためのロードポート56a、・・・、56bが設けられる。保管庫58には、搬送容器60を収納するためのロードポート56cが設けられる。搬送機40は、搬送容器60を吊り下げて搬送レール52に沿って移動する。更に、搬送機40は、搬送容器60を各製造装置54a〜54b及び保管庫58のロードポート56a〜56c上に移載する。
【0017】
なお、製造装置54a〜54b及び保管庫58のそれぞれに、ロードポート56a〜56cが2個の設けられている。しかし、ロードポートは、1個、あるいは3個以上の複数個であってもよい。
【0018】
製造装置54a〜54bには、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング装置、ウェット処理装置、CVD装置、スパッタリング装置、蒸着装置、イオン注入装置、熱処理装置、拡散処理装置、フォトリソグラフィシステム、メッキ処理装置、ダイシング装置、ボンディング装置等が含まれる。また、製造装置54a〜54bには、干渉式膜厚計、エリプソメータ、接触式膜厚計、顕微鏡、抵抗測定装置等の種々の検査装置、測定装置も含まれる。
【0019】
実施の形態に係る半導体装置の製造方法で用いる搬送容器60には、例えばFOUP等を用いる。図4(a)は、搬送容器60としてFOUPを用いた場合において、その前開きの蓋62が開けられた状態であり、容器本体61の内側に切られた溝(スロット)を介して、例えば1ロットの24枚のウェハ(半導体基板)63が容器本体61の内部に収納された状態を示している。一方、図4(b)は、図4(a)に対応し、搬送容器60の前開きの蓋62が閉じられ、密閉状態を示している。搬送容器60の上面には、搬送機40により保持されるトップフランジ64が設けられる。搬送容器60の底面には、ロードポート56a〜56cのキネマティックピンと結合するV溝を有するレセプタクル66が3個設けられる。図5に示すように、レセプタクル66は、幅WgのV字状の結合溝67を有する。なお、結合溝67は、U字状であってもよい。
【0020】
図6は、図3に示した製造装置54a〜54b、ロードポート56a〜56bの中の特定の一組を代表として選び、それを包括的に製造装置54、ロードポート56として示した図である。ロードポート56の上面には、ロードポート56上で搬送容器60を位置決めして保持する3本のキネマティックピン30が設けられる。キネマティックピン30の直径Dpは、搬送容器60の結合溝67の幅Wgよりも小さい。
【0021】
例えば、目的とする製造装置(k番目の製造装置:kは2以上の正の整数)54に半導体基板を収納した搬送容器を、工程の終了した他の製造装置((k−1)番目の製造装置)から搬送する場合、図7に示すように、搬送機40は、制御ユニット46の制御に基いて、チャック部42でトップフランジ64を保持することにより搬送容器60を吊り下げて搬送レール52の下を搬送レール52に従って走行する。制御ユニット46は、搬送レール52に設置された位置センサ(図示省略)の信号を検出して、搬送容器60をロードポート56へ移載するために搬送機40を目的とする製造装置54上方の定位置に停止させる。
【0022】
図8に示すように、搬送機40は、制御ユニット46の制御に基いて、定位置においてワイヤやベルト等のホイスト機構44を用いて搬送容器60をロードポート56に降下させる。図9に示すように、搬送容器60は、3個のレセプタクル66と3本のキネマティックピン30との3点キネマティックカプリングによりロードポート56上に移載される。その後、ホイスト機構44を巻き上げてチャック部42が搬送機40本体に収納される。
【0023】
その後、ロードポート56で、図4に示した搬送容器60の蓋62が開けられる。クリーンエリアにより局所クリーン化された転送室(図示省略)を介して、製造装置54に搬送容器60から基板が転送される。製造装置54では、基板に対して所定の工程の処理がなされる。工程の処理が終了した基板は、転送室を介して、ロードポート56に転送される。ロードポート56で、基板が搬送容器60に収納される。更に、搬送容器60の蓋62が閉じられる。その後、ホイスト機構44により降下したチャック部42がトップフランジ64を保持する。ホイスト機構44を巻き上げてチャック部42で保持された搬送容器60が搬送機40本体に回収される。搬送レール52に従って、次の工程の製造装置((k+1)番目の製造装置)まで搬送機40が搬送容器60を搬送する。
【0024】
なお、次の工程の製造装置が、他のロットの処理中、あるいはメンテナンス中で使用不可の場合は、搬送容器60は、次の工程の製造装置の直前の搬送レール52上で待機する。あるいは、次の工程の製造装置が長期間使用不可となると判断されれば、搬送容器60は、ロードポート56cに搬送され、ロードポート56cを介して保管庫58内に保管される。
【0025】
図10に示すように、搬送容器60の3個のレセプタクル66は、SEMI規格に基く3点キネマティックカプリングによりロードポート56の3本のキネマティックピン30に接して保持される。図5〜図7に示したように、レセプタクル66の結合溝67の幅Wgは、SEMI規格の公差を考慮してキネマティックピン30の直径Dpよりも大きくしてある。しかし、複数の搬送容器間には、搬送容器の製造誤差による寸法のばらつきがある。したがって、ロードポート56に対する搬送機40、特にチャック部42の位置を、製品としての搬送容器60を用いて位置調整すると、搬送容器60のロードポート56への移載の信頼性が劣化する。また、レセプタクル66が搬送容器60底面に設置されているため、目視による位置調整が困難となる。
【0026】
実施の形態では、図1及び図2に示した位置調整治具1を用いて、搬送機40の位置調整を行う。位置調整治具1のフランジ部14と貫通孔12との相対的な位置関係は、搬送容器60としてのFOUPのトップフランジ64とレセプタクル66のプライマリキネマティックピン位置とに規定されたSEMI規格の位置関係に準じている。位置調整治具1をフランジ部14で搬送機40に吊り下げる。貫通孔12の直径Dhは、キネマティックピン30の直径Dpよりも大きく、例えば、結合溝67の幅Wgと同程度にされる。作業者の目視により、キネマティックピン30がベースプレート10に触れることなく貫通孔12を通るように搬送機40の位置を調整する。ここで、「プライマリキネマティックピン位置」は、レセプタクル66の結合溝67における、キネマティックピン30との結合位置である。
【0027】
位置調整治具1は、樹脂製のFOUPに比べ精度よく加工することができる。したがって、実施の形態に係る位置調整治具1を用いて搬送機40の位置調整を行うと、搬送容器60のロードポート56への移載の信頼性が向上する。また、結合溝67のプライマリキネマティックピン位置に対応する貫通孔12により、ロードポート56のキネマティックピン30の位置を容易に目視することができる。その結果、位置調整時間を短縮することができる。このように、実施の形態に係る位置調整治具1によれば、位置調整の信頼性を向上させることが可能となる。
【0028】
次に、実施の形態に係る調整方法、及び半導体装置の製造方法を、図11〜図14に示す構成図、及び図15に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
(イ)ステップS100で、搬送機40は、チャック部42で位置調整治具1のフランジ部14を保持して位置調整治具1を吊り下げる。搬送機40は、制御ユニット46の制御に基いて、位置調整対象の製造装置54に向かって搬送レール52の下を搬送レール52に従って走行する。
【0030】
(ロ)ステップS101で、図11に示すように、制御ユニット46は、搬送レール52に設置された位置センサ(図示省略)の信号を検出して、製造装置54上方の定位置に搬送機40を停止させる。
【0031】
(ハ)ステップS102で、制御ユニット46は、搬送機40からホイスト機構44を用いて位置調整治具1をロードポート56の直上まで降下させる。作業者は、貫通孔12から目視によりキネマティックピン30の位置を確認する。貫通孔12とキネマティックピン30の位置がずれていれば、制御ユニット46に接続された入力装置(図示省略)から制御ユニット46にずれ量を入力する。例えば、搬送レール52に沿った方向の位置ずれに対しては、搬送機40又はホイスト機構44を移動させて調整する。搬送レール52に直交する方向や回転の位置ずれに対しては、ホイスト機構44でずれを調整する。
【0032】
(ニ)ステップS103で、図13及び図14に示すように、キネマティックピン30がベースプレート10に触れることなく貫通孔12を通るように搬送機40あるいはホイスト機構44の位置が調整される。制御ユニット46は、調整位置を記憶する。位置調整治具1が、搬送機40から取り外される。
【0033】
(ホ)ステップS104で、搬送対象となる搬送容器60を搬送機40が保持する。ステップS105で、搬送機40は、搬送レール52を走行して製造装置54の定位置まで移動する。ステップS106で、搬送機40は、制御ユニット46に記憶された調整位置まで移動する。
【0034】
(ヘ)ステップS107で、搬送機40は、制御ユニット46の制御に基いて、調整位置においてホイスト機構44を用いて搬送容器60をロードポート56に移載させる。ステップS108で、ロードポート56で、図4に示した搬送容器60の蓋62が開けられる。クリーンエリアにより局所クリーン化された転送室(図示省略)を介して、製造装置54に搬送容器60から基板が転送される。ステップS109で、製造装置54が、基板に対して所定の工程の処理を実施する。
【0035】
(ト)ステップS110で、工程の処理が終了した基板が、転送室を介して、ロードポート56に転送される。ロードポート56で、基板が搬送容器60に収納される。更に、搬送容器60の蓋62が閉じられる。ステップS111で、ホイスト機構44により降下したチャック部42がトップフランジ64を保持する。ホイスト機構44を巻き上げてチャック部42で保持された搬送容器60が搬送機40本体に回収される。ステップS112で、搬送レール52を介して、次の工程の製造装置まで搬送機40が搬送容器60を搬送する。
【0036】
このようにして、実施の形態に係る位置調整治具1を用いて位置調整された搬送機40が、搬送容器60を搬送して、半導体装置の製造が実施される。精度よく加工された位置調整治具1を用いて、搬送機40の位置調整が実施される。ロードポート56上のキネマティックピン30の位置は、貫通孔12から容易に目視することができる。そのため、調整時間を短縮することができる。このように、実施の形態によれば、調整コストを低減でき、位置調整の信頼性を向上させることが可能となる。
【0037】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態の第1の変形例に係る位置調整治具1aは、図16及び図17に示すように、ベースプレート10に重心調整部18を備える。重心調整部18は、ベースプレート10に設けられた溝19に嵌め合わされる。重心調整部18は、図4に示した搬送容器60の前開きの蓋62側に対応する前面側からベースプレート10の中央部に向かう方向で溝19に沿って移動可能である。
【0038】
実施の形態の第1の変形例では、重心調整部18を備える点が実施の形態と異なる。他の構成は、実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0039】
FOUP等の搬送容器60は、蓋62が搬送容器60の前面に取り付けられると重心が前面側に偏る。したがって、搬送機40に吊り下げられると、搬送容器60の前面側が下方に傾く。搬送容器60の傾きにより、調整位置にずれが生じる。位置調整治具1aにおいて、重心調整部18を溝19に沿って移動させることにより、搬送容器60の重心の偏りに一致させることができる。その結果、位置調整治具1aを搬送容器60と同じ傾きで搬送機40に保持させることができる。このように、実施の形態の第1の変形例に係る位置調整治具1aを用いて、より信頼性の高い位置調整が可能となる。
【0040】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態の第2の変形例に係る位置調整治具1bは、図18及び図19に示すように、貫通孔12に嵌合する環状の位置判定部20を備える。位置判定部20の開口部21の直径Whは、キネマティックピン30の直径Dpより大きい。また、位置判定部20は、ベースプレート10の表面側で貫通孔12より大きな直径を有する。位置判定部20はベースプレート10の上方に可動である。
【0041】
実施の形態の第2の変形例に係る位置調整治具1bは、位置判定部20を有することが実施の形態と異なる。他の構成は、実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0042】
実施の形態の第2の変形例では、位置判定部20の開口部21の直径Whは、キネマティックピン30の直径Dpよりも大きく、例えば、結合溝67の幅Wgと同程度にされる。開口部21からの作業者の目視により、ロードポート56のキネマティックピン30が位置判定部20に触れることなく開口部21を通るように搬送機40の位置を調整する。
【0043】
例えば、図20に示すように、ロードポート56のキネマティックピン30に対して位置判定部20が重なるように搬送機40の位置がずれているとする。このような場合、図21に示すように、位置調整治具1bをロードポート56に向かって降下させると、位置判定部20がキネマティックピン30と接触して位置判定部20がベースプレート10の上方に浮き上がる。したがって、搬送機40の位置ずれを容易に確認することができる。図22に示すように、キネマティックピン30が開口部21を通るように搬送機40の位置が調整される。
【0044】
実施の形態の第2の変形例によれば、ロードポート56上のキネマティックピン30の位置を開口部21から容易に目視することができる。更に、位置判定部20により搬送機40のキネマティックピン30に対する位置ずれを容易に確認することができる。このように、実施の形態の第2の変形例に係る位置調整治具1bを用いて、より信頼性の高い位置調整を、短時間で実施することが可能となる。
【0045】
(第3の変形例)
本発明の実施の形態の第3の変形例に係る位置調整治具1cは、図23及び図24に示すように、位置判定部20aを備える。位置判定部20aは、互いに直交する方向のそれぞれで対向する2組のゲージ26と、I字形状の基準ロッド22を有する。基準ロッド22は、ベースプレート10に接続された支持部24により支持される。基準ロッド22の下端部には、ゲージ26の蝕針28が接触している。基準ロッド22の下端部は、キネマティックピン30とほぼ同じ直径である。
【0046】
実施の形態の第3の変形例に係る位置調整治具1cは、位置判定部20aを有することが実施の形態と異なる。他の構成は、実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0047】
実施の形態の第3の変形例では、基準ロッド22がキネマティックピン30と重なるように搬送機40の位置が調整される。位置調整のため、位置判定部20aのゲージ26により、貫通孔12内でキネマティックピン30の位置が測定される。
【0048】
例えば、図25に示すように、キネマティックピン30に対して、基準ロッド22がずれているとする。このような場合、図26に示すように、位置調整治具1cをロードポート56に向かって降下させると、位置判定部20aの基準ロッド22がキネマティックピン30と接触して基準ロッド22がベースプレート10の上方に移動する。その結果、蝕針28がキネマティックピン30と接触する。ゲージ26から変位量を測定することにより、基準ロッド22の位置からのキネマティックピン30の位置ずれ量が求められる。図27に示すように、求めた位置ずれ量に基いて搬送機40を調整することにより、基準ロッド22がキネマティックピン30と重なるように位置合わせすることができる。
【0049】
実施の形態の第3の変形例によれば、ロードポート56上のキネマティックピン30の位置を貫通孔12から容易に目視することができる。更に、位置判定部20aの基準ロッド22に対するロードポート56上のキネマティックピン30の相対的な位置をゲージ26により容易に測定することができる。このように、実施の形態の第3の変形例に係る位置調整治具1cを用いて、より信頼性の高い位置調整を、短時間で実施することが可能となる。
【0050】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0051】
本発明の実施の形態においては、半導体装置の製造方法について説明したが、半導体装置に限定されず、液晶装置、磁気記録媒体、光記録媒体、薄膜磁気ヘッド、超伝導素子、音響電気変換素子、等の電子装置の製造方法においても、本発明が適用できることは、上記説明から容易に理解できるであろう。
【0052】
このように、本発明はここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置調整治具の上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る位置調整治具の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態の説明に用いる製造設備の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る搬送容器の(a)前開きの蓋が開けられた状態を示す鳥瞰図、及び(b)前開きの蓋が閉じられた状態を示す鳥瞰図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る搬送容器の底面図である。
【図6】本発明の実施の形態の説明に用いる製造装置のロードポートの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の説明に用いる搬送容器の搬送の一例を示す図(その1)である。
【図8】本発明の実施の形態の説明に用いる搬送容器の搬送の一例を示す図(その2)である。
【図9】本発明の実施の形態の説明に用いる搬送容器の搬送の一例を示す図(その3)である。
【図10】本発明の実施の形態の説明に用いる搬送容器の搬送の一例を示す図(その4)である。
【図11】本発明の実施の形態に係る位置調整治具による搬送機の位置調整の一例を示す図(その1)である。
【図12】本発明の実施の形態に係る位置調整治具による搬送機の位置調整の一例を示す図(その2)である。
【図13】本発明の実施の形態に係る位置調整治具による搬送機の位置調整の一例を示す図(その3)である。
【図14】本発明の実施の形態に係る位置調整治具による搬送機の位置調整の一例を示す図(その4)である。
【図15】本発明の実施の形態に係る位置調整方法及び電子装置の製造方法の一例を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る位置調整治具の上面図である。
【図17】図16に示した位置調整治具1のA−A断面を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る位置調整治具の上面図である。
【図19】図18に示した位置調整治具のB−B断面を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る位置調整方法の一例を示す図である。
【図21】図20に示した位置判定部の位置調整前のC−C断面を示す図である。
【図22】図20に示した位置判定部の位置調整後のC−C断面を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る位置調整治具の上面図である。
【図24】図23に示した位置調整治具のD−D断面を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る位置調整方法の一例を示す図である。
【図26】図25に示した位置判定部の位置調整前のE−E断面を示す図である。
【図27】図25に示した位置判定部の位置調整後のE−E断面を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10…ベースプレート
12…貫通孔
14…フランジ部
16…本体部
18…重心調整部
20、20a…位置判定部
30…キネマティックピン
40…搬送機
52…搬送レール
54…製造装置
56…ロードポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、前記搬送容器底部に設けられた結合溝が前記ロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する際に用いる位置調整治具であって、
前記搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、前記搬送機により保持されるフランジ部と、
前記フランジ部に接続された本体部と、
前記搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、前記本体部に接続され、前記キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、
前記貫通孔の直径が前記キネマティックピンの直径より大きいことを特徴とする位置調整治具。
【請求項2】
前記搬送容器の重心に一致するように重心位置を調整する、前記ベースプレットに設けられた重心調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置調整治具。
【請求項3】
前記キネマティックピンの直径より内径が大きく、前記ベースプレートの表面の上方に可動なように前記貫通孔に嵌合する環状の位置判定部を前記ベースプレートに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置調整治具。
【請求項4】
前記貫通孔内で前記キネマティックピンの位置を測定可能な互いに直交する方向のそれぞれで対向する2組のゲージを含む位置判定部を前記ベースプレートに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置調整治具。
【請求項5】
搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて目的とする製造装置のロードポート上に移動し、前記搬送容器底部に設けられた結合溝と前記ロードポート上のキネマティックピンと結合するように位置調整する位置調整方法であって、
前記搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、前記搬送機により保持されるフランジ部と、前記フランジ部に接続された本体部と、前記搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、前記本体部に接続され、前記キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、前記貫通孔の直径が前記キネマティックピンの直径より大きい位置調整治具により、前記ロードポート上の前記搬送機の搬送位置を調整することを特徴とする位置調整方法。
【請求項6】
複数の製造装置間を搬送機により基板を収納する搬送容器を吊り下げて搬送して、前記搬送容器に収納された基板を順次、対応する製造装置に転送して、前記複数の製造装置による一連の処理を行う電子装置の製造方法であって、
前記搬送容器上のトップフランジに対応して設けられた、前記搬送機により保持されるフランジ部と、前記フランジ部に接続された本体部と、前記搬送容器の底面に対応する面を裏面とし、前記本体部に接続され、前記キネマティックピンに対応する位置に設けられた貫通孔を有するベースプレートとを備え、前記貫通孔の直径が前記キネマティックピンの直径より大きい位置調整治具により、前記ロードポート上の前記搬送機の搬送位置を調整するステップと、
前記搬送位置を調整後に、前記搬送機により前記搬送容器を特定の工程の処理を終了した第1の製造装置から、次に予定されている工程を実行する第2の製造装置のロードポート上に移載するステップと、
前記搬送容器から前記基板を転送して前記第2の製造装置により前記予定されている工程を実施するステップ
とを含むことを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−108765(P2008−108765A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287308(P2006−287308)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】