説明

低圧線分岐装置

【課題】 新設や既設に関係なく、低圧幹線を切断することなく簡単に取り付けることができるとともに、低圧引込線を液密な状態で電気的に接続することができる低圧線分岐装置を提供する。
【解決手段】 地下空間内に配設される低圧幹線から各戸へ引き込まれる低圧引込線を分岐させるための低圧線分岐装置において、前記低圧幹線の導体に対して電気的に接続可能に構成された接続手段と、低圧引込線を挿入可能に構成された複数の接続ポートが形成され、前記接続手段に対して電気的に接続されるとともに接続ポートに挿入した低圧引込線を電気的に接続可能に構成された導電部材が内装された装置本体とを備え、各接続ポートは、低圧引込線を刺衝可能で弾性変形自在なゲル状のシーリング部材で封止されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線共同溝やトンネル等の地下空間内に配設された低圧幹線から各戸に引き込まれる低圧引込線を分岐させるための低圧線分岐装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、電柱に架設された低圧幹線から分岐させた低圧引込線を各戸に引き込むことで各戸に電力供給していたが、電柱や低圧幹線、低圧引込線が景観を害したり、建築物の建設等に制限を与えたりするとして、近年においては電線共同溝やトンネル等の地下空間内に低圧幹線を配設し、該低圧幹線から分岐させた低圧引込線を各戸に引き込むようにした地中化が進められつつある。
【0003】
このように地中化すると、地下空間内に地下水や雨水が流れ込んで低圧幹線や低圧引込線の分岐部分等が水没する虞があるため、漏電防止や低圧幹線等の導体の酸化防止等の種々の観点から、低圧引込線の分岐部分等に防水対策が必要とされる。
【0004】
そのため、防水を要する箇所に防水テープを巻き付ける等の施策がとられていたが、低圧引込線の分岐は各戸毎に行う必要があり、多数箇所で煩雑な作業を行わなければならないとして、液密な状態で低圧幹線から低圧引込線を分岐させることのできる分岐装置が提供されている。
【0005】
かかる分岐装置は、一次側と二次側とに切り分けられた各低圧幹線を挿入する一対の第一ポートと、低圧引込線を挿入する複数の第二ポートとを備えている。
【0006】
該分岐装置は、電気絶縁性のあるケーシング内に導電性のコアが内装されており、各第一ポート及び第二ポートに挿入された低圧幹線及び低圧引込線の導体がコアに電気的に接続されるようになっている。これにより、該分岐装置は、コアを介して低圧幹線と低圧引込線とが電気的に接続されるようになっている。
【0007】
そして、該分岐装置は、低圧幹線及び低圧引込線を挿入した第一ポート及び第二ポートの隙間等から水が流入するのを阻止するためのシーリング部材が設けられている。すなわち、該分岐装置は、第一ポートの内周面と低圧幹線の外周との間、及び第二ポートの内周面と低圧引込線の外周との間を液密にするためのシーリング部材が設けられている。
【0008】
該シーリング部材は、ケーシング内に充填されたゲル材で構成されている。該シーリング部材は、低圧幹線や低圧引込線を挿入するまでは、第一ポート及び第二ポート内に充満して封止しており、該第一ポート及び第二ポート(ゲル)に低圧幹線や低圧引込線を挿入することによって、これらの外周と第一ポート及び第二ポートの内周面との間にゲルが介在した状態になってケーシング内を液密な状態にできるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2006−511924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記構成の分岐装置は、その設置箇所において低圧幹線を分断しなければならないため、低圧幹線を新しく設置する場合には、低圧幹線に対して分断、絶縁被覆の除去、分岐装置への接続といった複数工程を要し、作業が繁雑である。また、既設の低圧幹線の場合、既に各戸への電力供給が行われているため、受電状態にある低圧幹線を対象に分岐装置を取り付けなければならないが、上記構成の分岐装置は、低圧幹線を分断しなければ接続できないため、一時的な停電が余儀なくされるといった問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、新設、既設に関係なく、低圧幹線を分断することなく簡単に取り付けることができるとともに、低圧引込線を液密な状態で電気的に接続することのできる低圧線分岐装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る低圧線分岐装置は、地下空間内に配設される低圧幹線から各戸へ引き込まれる低圧引込線を分岐させるための低圧線分岐装置において、前記低圧幹線の導体に対して電気的に接続可能に構成された接続手段と、低圧引込線を挿入可能に構成された複数の接続ポートが形成され、前記接続手段に対して電気的に接続されるとともに接続ポートに挿入した低圧引込線を電気的に接続可能に構成された導電部材が内装された装置本体とを備え、各接続ポートは、低圧引込線を刺衝可能で弾性変形自在なゲル状のシーリング部材で封止されていることを特徴とする。
【0012】
上記低圧線分岐装置によれば、各接続ポートは、低圧引込線を刺衝可能で弾性変形自在なゲル状のシーリング部材で封止されているので、接続ポートから装置本体内部に液体(水)が流入するのを防止することができる。そして、接続手段を低圧幹線の導体に接続すれば装置本体内の導電部材が受電状態となる。このように、一つの接続手段を低圧幹線に接続するだけで、複数の接続ポートの何れに低圧引込線を挿入しても電気的に接続できる(低圧引込線を分岐させることのできる)状態にすることができる。しかも、シーリング部材が低圧引込線を刺衝可能で弾性変形自在であるため、シーリング部材が邪魔することなく、低圧引込線を接続ポートに挿入でき、挿入後においては、低圧引込線の絶縁被覆と接続ポートの内周面との間にシーリング部材が密着状態で存在することになる。これにより、低圧引込線を分岐させた状態においても装置本体内に液体(水)が流入するのを防止することができる。なお、防水テープ等で接続手段に対する防水対策を図る必要があったとしても、一つの接続手段に対する防水対策を行えば複数の低圧引込線を分岐させることのできる状態になるので、低圧引込線の分岐部分毎に防水対策を施す必要がなく格段に作業効率が向上する。
【0013】
本発明の一態様として、前記接続手段は、導電性を有するとともに少なくとも何れか一方が前記導電部材と電気的に接続される一対の挟持体と、導体を挟み込んだ一対の挟持体同士を締結する締結手段とを備えていることが好ましい。このようにすれば、低圧幹線の導体に対して簡単且つ確実に接続することができる。
【0014】
本発明の他態様として、前記導電部材は、低圧引込線の導体を挿入可能な導体挿入穴が接続ポートの配置に対応して形成され、装置本体は、前記導体挿入穴に挿入された低圧引込線を固定する固定手段が設けられていることが好ましい。このようにすれば、導電部材と低圧引込線との電気的な接続状態を確実に維持させることができる。
【0015】
この場合、前記固定手段は、導電部材又は該導電部材を覆う装置本体のケーシングの少なくとも何れか一方に螺合された押ネジを備え、該押ネジの先端側が前記導体挿入穴に対して出退可能に構成されていることが好ましい。このようにすれば、押ネジを導体挿入穴内に突出させることで、導体挿入穴内の低圧引込線の導体を該押ネジで押さえて固定することができる。
【0016】
より好ましくは、前記固定手段が押ネジの先端部に取り付けられた固定部材を備えるとともに、導体挿入穴の内周面に前記固定部材を収容する凹部が形成され、前記固体部材は、間隔をあけて互いに対向する一対の押圧片と、該一対の押圧片の基端同士を連結した連結片とを備え、前記押ネジの先端部が一対の押圧片間に介在するように連結片に挿入されるとともに固定部材に対する抜け止めが施され、一対の押圧片及び押ネジの先端の三つで低圧引込線の導体を軸心方向に間隔をあけて押圧するように構成されてもよい。このようにすれば、導体挿入穴に挿入した低圧引込線の導体をより確実に固定することができる。
【0017】
本発明の別の態様として、低圧幹線の導体に接続した接続手段を覆う防水カバーをさらに備え、該防水カバーは、互いに重ね合わされる一対の分割カバーと、各分割カバー内に充填されたゲル状のシーリング部材とを備え、接続手段を両シーリング部材で挟み込むように構成されてもよい。このようにすれば、分割カバーを重ね合わせてシーリング部材で接続手段を挟み込むことで、該シーリング部材が接続手段に密着した状態となる。これにより、防水テープを巻くといった煩雑な作業を行うことなく、接続手段に対する確実な防水を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る低圧線分岐装置によれば、新設、既設に関係なく、低圧幹線を分断することなく簡単に取り付けることができるとともに、低圧引込線を液密な状態で電気的に接続することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る低圧線分岐装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る低圧線分岐装置は、図1に示す如く、電線共同溝やトンネル等の地下空間T内に配設された低圧幹線A1,A2,A3,A4から各戸に引き込まれる低圧引込線B1,B2,B3,B4を分岐させるためのものである。前記低圧幹線A1,A2,A3,A4には、アース線A1、電灯線A2、共用線A3、動力線A4があり、これら四本を一組にして配設されている。アース線A1、電灯線A2、共用線A3、動力線A4は、それぞれの役目に応じてケーブル径が設定されており、一般的には、アース線A1及び動力線A4が150sq、電灯線A2及び共用線A3が250sqに設定される。
【0021】
そして、本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、各低圧幹線A1,A2,A3,A4に対して取り付けられ、各低圧線分岐装置1によって分岐させたアースB1、動力B4、電灯B2、共用B3の各低圧引込線B1,B2,B3,B4を一組にして、地中から地上に引き出されて各戸に引き込まれる。なお、電力会社との契約内容によって引き込まれる低圧引込線B1,B2,B3,B4が四本以下(例えば、アースB1と共用B3の二本、或いは、アースB1と電灯B2の二本、アースB1、動力B4、電灯B2の三本、アースB1、共用B3、電灯B2又は動力B4の三本等)の場合もある。
【0022】
本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、前記低圧幹線A1,A2,A3,A4に取り付けることを前提に構成されており、図2乃至図5に示す如く、低圧幹線A1,A2,A3,A4の絶縁被覆が部分的に除去されて露呈する導体に対して電気的に接続可能に構成された接続手段10と、低圧引込線B1,B2,B3,B4を電気的に接続可能に構成された装置本体20とを備えている。
【0023】
本実施形態に係る接続手段10は、前記導体を径方向両側から挟み込むように構成された一対の挟持体100a,100bと、該一対の挟持体100a,100b同士を締結する締結手段150とを備えている。一対の挟持体100a,100bのそれぞれは、導電性の金属材料で形成されており、一方向に延びて該一方向から見た断面形状が円弧状に形成された挟持体本体101a,101bと、挟持体本体101a,101bの前記一方向に延びる両側端部から外側に延出した一対のフランジ部102a,102a,102b,102bとを備えている。
【0024】
前記挟持体本体101a,101bは、内周面の曲率半径が低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体の半径と略同等又は導体の半径よりもやや大きく設定される。本実施形態に係る挟持体本体101a,101bは、内周面の曲率半径が低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体(径の太い電灯線A2及び共用線A3の導体)の半径よりもやや大きく設定されるとともに、曲率中心と前記両側端部とを結ぶ二本の仮想線の角度が180°以下になるように形成されており、断面が劣弧になっている。これにより、一対の挟持体100a,100bの挟持体本体101a,101bで導体を挟み込んだときに、挟持体本体101a,101bの一方向に延びる端部同士が干渉することなく、挟持体本体101a,101bの内周面がアース線A1、電灯線A2、共用線A3、動力線A4の何れの低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体の外周にも密接するようになっている。
【0025】
前記一対のフランジ部102a,102a,102b,102bは、それぞれ長方形状の金属プレートで構成されており、長手方向に延びる一方の端縁が前記挟持体本体101a,101bの側端部の全長に亘って接続されている。そして、各フランジ部102a,102a,102b,102bには、長手方向に間隔をあけて複数の貫通穴(本実施形態においては三つの貫通穴)が穿設されている。これにより、一対の挟持体100a,100bは、各挟持体本体101a,101bの内周面同士を対向させるように配置することで、それぞれのフランジ部102a,102a,102b,102bも対向し、該フランジ部102a,102a,102b,102bの貫通穴同士が対向(連通)するようになっている。
【0026】
前記締結手段150は、前記フランジ部102a,102a,102b,102bの貫通穴に挿通するボルト151…と該ボルト151…に螺合されるナット152…とで構成されている。
【0027】
これにより、本実施形態に係る接続手段10は、挟持体本体101a,101bで低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体を挟んだ状態で、フランジ部102a,102a,102b,102bの貫通穴に挿通したボルト151…に対してナット152…を螺合して一対の挟持体100a,100bを締結することで低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体に対して電気的に接続した状態で取り付けることができるようになっている。
【0028】
前記装置本体20は、低圧引込線B1,B2,B3,B4が挿入可能な複数の接続ポート202b…が形成されており、該接続ポート202b…に挿入された低圧引込線B1,B2,B3,B4が前記接続手段10に電気的に接続されるようになっている。具体的には、該装置本体20は、図5(a)及び図5(b)に示す如く、絶縁材料で構成されたケーシング200と、該ケーシング200に内装された導電部材210と、ケーシング200に内装され、前記接続ポート202b…に挿入された低圧引込線B1,B2,B3,B4を導電部材210に固定する固定手段220と、各接続ポート202b…を液密に封止するためのシーリング部材230とを備えている。
【0029】
本実施形態に係るケーシング200は、樹脂成型品であり、前記導電部材210を装填する装填口Hが形成され、該導電部材210が内装されるケーシング本体201と、該ケーシング本体201の装填口Hを閉塞する閉塞部材202とを備えている。
【0030】
ケーシング本体201は、一面の略全域が装填口Hとして開口し、導電部材210の後述する導電部材本体211が収容される箱状の本体収容部201aと、該本体収容部201aの装填口Hと対向する壁部に凸設され、導電部材210の後述する連結導電部212が収容される筒状収容部201bとで構成されている。
【0031】
前記本体収容部201aは、図2及び図3(a)に示す如く、装填口Hが略長方形状になるように横長に形成されている。そして、装填口Hを確定する壁部の一つには、前記固定手段220に対して外部からアクセス可能な操作部203…が形成されている。本実施形態に係る装置本体20には、上述の如く、接続ポート202b…が複数形成されているため、接続ポート202b…に対応して前記操作部203…も複数横並びに形成されている。
【0032】
図5(a)及び図5(b)に戻り、各操作部203…は、前記壁部の外面に凸設された筒状部204…と、その筒状部204…の開口を開閉可能な蓋部205…とで構成されている。前記筒状部204…は、内部(内穴)が本体収容部201a内と連通するようにケーシング本体201と一体的に成形されている。前記蓋部205…は、一部が筒状部204…の外面に蝶着されており、これによって筒状部204…の開口を開閉できるようになっている。そして、該蓋部205…は、内面にパッキン206…が配設されており、筒状部204…の開口を閉塞した状態で、該筒状部204…の上端面にパッキン206…が圧接して液密な状態になるようになっている。そして、この液密な状態で蓋部205…を維持させるために、本実施形態においては、蓋部205…における筒状部204…に対する蝶着位置と真反対位置に係止爪207…が凸設されるとともに、筒状部204…の外面に被係止部208…が凸設されており、蓋部205…で筒状部204…の上端開口を閉じた状態で被係止部208…に係止爪207…を係止させるようになっている。
【0033】
前記筒状収容部201bは、内部が本体収容部201a内と連通するように該本体収容部201aと一体的に成形されている。本実施形態に係る筒状収容部201bは、本体収容部201aの長手方向の略中央位置に形成されている。
【0034】
本実施形態に係るケーシング200は、前記装填口Hに閉塞部材202を嵌合することで、前記装填口Hを閉塞するように構成されており、その嵌合状態を維持させるために、本体収容部201aには、閉塞部材202に設けられた後述する係合爪209a…を係合させる被係合部209b…が形成されている。具体的には、ケーシング本体201は、装填口Hが奥側よりも大径に形成されており、これによって形成される段差部に係合爪209a…が挿入される穴209が設けられ、前記被係合部209b…は、前記穴209の内周の一部に形成された段差で構成されている。これにより、閉塞部材202をケーシング本体201に嵌め込んだ状態で、係合爪209a…が被係合部209b…と係合して前記装填口Hを閉塞した状態で維持できるようになっている。
【0035】
前記閉塞部材202は、前記本体収容部201aの装填口Hに嵌合されるプレート状のベース部202aと、該ベース部202aの一方の面に凸設された筒状の接続ポート202b…とを備えている。前記ベース部202aは、本体収容部201aの装填口H(開口)の形状(長方形状)に対応して形成され、接続ポート202b…の配置に対応して貫通した穴(採番しない)が形成されている。そして、前記接続ポート202b…は、閉塞部材202の長手方向に間隔をあけて複数設けられており、内部がベース部202aの穴に連通している。これにより、閉塞部材202はベース部202aの穴と接続ポート202b…の穴とで表裏で貫通している。
【0036】
そして、本実施形態に係る閉塞部材202は、ベース部202aの他方の面側に前記係合爪209a…が凸設されている。該係合爪209a…は、ベース部202aの周囲に間隔をあけて複数設けられており、上述の如く、本体収容部201aに設けられた被係合部209b…に係合できるようになっている。
【0037】
前記導電部材210は、導電性の金属材料で構成されており、ブロック状に形成された導電部材本体211と、該導電部材本体211の外面に凸設された前記連結導電部212とを備えている。
【0038】
前記導電部材本体211は、外寸が前記ケーシング本体201の内寸に対応するように設定されており、外面がケーシング本体201の内面に略接触した状態でケーシング本体201内に嵌め込まれるようになっている。そして、該導電部材本体211は、ケーシング本体201に嵌め込んだ状態で、前記装填口H側にある一面が前記装填口H端から所定量内部に奥まった位置になるように設定されている。すなわち、ケーシング本体201に対して閉塞部材202を取り付けた状態で、閉塞部材202(ベース部202a)内面との間に所定量の間隙(シーリング部材230の後述する装填口封止部231を収容する空間)が形成されるように寸法設定されている。
【0039】
さらに、該導電部材本体211には、低圧引込線B1,B2,B3,B4の導体を挿入するための導体挿入穴213…が長手方向に間隔をあけて複数穿設されている(図4参照)。すなわち、該導電部材本体211は、装填口Hを閉塞した閉塞部材202の各接続ポート202b…と略同心になるように、複数の導体挿入穴213…が穿設されている。また、該導電部材本体211は、ケーシング本体201に嵌め込んだ状態で該ケーシング本体201の操作部203…と略同心をなすネジ穴214が外部と導体挿入穴213…とを貫通するように形成されている。すなわち、操作部203…の形成されたケーシング本体201の壁部と対向する面に、導体挿入穴213…と略直交方向に延びるネジ穴214が穿設されている。さらに、該導電部材本体211は、導体挿入穴213…の内周に固定手段220の後述する固定部材222を収容するための凹部215が前記ネジ穴214の開口を含むように設けられている。該凹部215は、固定部材222を完全に収容できる深さに設定されている。
【0040】
前記連結導電部212は、導電部材本体211に基端が接続された略円柱状の連結本体部212aと、該連結本体部212aの先端に延設され、前記接続手段10に連結される連結部212bとで構成されている。前記連結本体部212aは、導電部材本体211と一体的に形成されたもので、ケーシング本体201の筒状収容部201bに内挿されるようになっている。すなわち、該導電部材210は、連結本体部212aを先頭にしてケーシング本体201に嵌合することで、連結本体部212aが筒状収容部201b内に収容されるとともに、導電部材本体211が本体収容部201a内に収容されるようになっている。
【0041】
そして、前記連結部212bは、プレート状に形成されており、連結導電部212の先端に一端が接続されている。該連結部212bは、連結本体部212aと一体的に形成されたもので、本実施形態においては、導体挿入穴213…(接続ポート202b…)の並列方向に沿うように設けられている。そして、該連結部212bは、接続手段10に連結されるのであるが、本実施形態においては、一対の挟持体100a,100b同士を締結する締結手段150(ボルト151…及びナット152…)を用いて連結するようになっている。すなわち、該連結部212bには、締結手段150のボルト151…を挿通するための貫通穴(採番しない)が穿設されており、挟持体100a,100bのフランジ部102a,102aに重ね合わせた上で貫通穴にボルト151…を挿通し、該ボルト151…にナット152…を螺合することによって、低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体に対する接続手段10の接続に併せて連結するようになっている。
【0042】
本実施形態に係る固定手段220は、導電部材本体211のネジ穴214に螺入される押ネジ221と、該押ネジ221の先端部に取り付けられた固定部材222とで構成されている。前記押ネジ221は、工具によって操作可能な頭部に棒状の雄ネジ部221aが連設されるとともに、その雄ネジ部221aの先端に該雄ネジ部221aよりも小径なピン部221bが連設されている。そして、該押ネジ221は、筒状部204…の上端開口を蓋部205…で閉塞した状態で頭部が操作部203…内に位置するとともに、ピン部221bの先端が導体挿入穴213…から退避した状態(凹部215内に位置した状態)になるように長さ設定されている。これにより、該押ネジ221は、頭部を操作することで、先端側が前記導体挿入穴213…に対して出退可能に構成されている。
【0043】
前記固定部材222は、金属片をコの字状に曲げて形成されており、間隔をあけて互いに対向する一対の押圧片222a,222aと、該一対の押圧片222a,222aの基端同士を連結した連結片222bとを備えている。該連結片222bには、前記ピン部221bを挿入する穴(採番しない)が穿設されている。これにより、該連結片222bは、前記押ネジ221の先端部が一対の押圧片222a,222a間に介在した状態で挿入できるようになっている。そして、押ネジ221の先端部には、固定部材222に対する抜け止めが施されており、本実施形態においては、一対の押圧片222a,222aの先端とピン部221bの先端とが略同レベルになる(同一面上に位置する)ように抜け止めが施されている。これにより、本実施形態に係る固定手段220は、一対の押圧片222a,222a及び押ネジ221の先端の三つで低圧引込線B1,B2,B3,B4の導体を軸心方向に間隔をあけて押圧できるようになっている。
【0044】
なお、図示しないが、固定部材222に対する抜け止めは、例えば、C型のスナップリングで行ってもよいが、本実施形態においては、導体挿入穴213…の内径や固定部材222の配置の関係上、スナップリングを取り付ける作業効率が悪いため、固定部材222の何れか一方の押圧片222aに穿設した貫通穴を介してピン部221bに穿設された穴に回り止め用のピン(例えば、テーパーピンやスプリングピン)を圧入することで施されている。
【0045】
前記シーリング部材230は、ゲル材を成型したもので、図4、図5(a)及び図5(b)に示す如く、前記装填口Hの形状に対応して略長方形状のプレート状に形成された装填口封止部231と、装填口封止部231の一方の面から延出した円柱状のポート封止部232…とで構成されている。このシーリング部材230を構成するゲル材は、低圧引込線B1,B2,B3,B4が刺衝可能で弾性変形自在(復元性に富むもの)なものであればよいが、耐久性や周囲との密着性等の観点を考慮すれば、シリンコン系のゲル材を採用することが好ましい。
【0046】
前記装填口封止部231は、ケーシング本体201に嵌め込まれた導電部材210(導電部材本体211)と閉塞部材202(ベース部202a)との間に介装されるもので、閉塞部材202で前記装填口Hを閉塞した状態で導電部材本体211と閉塞部材202のベース部202aとに密接する厚さになっている。本実施形態に装填口封止部231は、導電部材本体211と閉塞部材202とに挟み込まれてやや弾性変形する厚みに設定されており、ケーシング本体201と閉塞部材202との間を液密にシールできるようになっている。
【0047】
前記ポート封止部232…は、装填口封止部231と一体成型されている。該ポート封止部232…は、閉塞部材202の接続ポート202b…内に圧入されるもので、閉塞部材202の接続ポート202b…の配置に対応して複数設けられている。そして、該シーリング部材230(装填口封止部231及びポート封止部232…)は、低圧引込線B1,B2,B3,B4を接続ポート202b…に挿入するまでは、ポート封止部232…が接続ポート202b…内に充満して該接続ポート202b…の内周面に密接し、ケーシング200内が液密状態で維持するようになっている。また、接続ポート202b…に低圧引込線B1,B2,B3,B4を挿入したときに該低圧引込線B1,B2,B3,B4がポート封止部232…及び装填口封止部231に刺衝された状態になり、低圧引込線B1,B2,B3,B4の絶縁被覆の外周と接続ポート202b…の内周との間に充満して該接続ポート202b…の内周面及び低圧引込線B1,B2,B3,B4の外周面に密接し、ケーシング200内が液密状態で維持するようになっている。
【0048】
本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、接続手段10を低圧幹線A1,A2,A3,A4に取り付けた状態で導電性のある接続手段10の外面が露呈しているため、その部位の防水が図られる。この防水は、防水テープを巻くことでも達成できるが、本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、作業の簡素化を図るべく、図6に示す防水カバー30を備えている。
【0049】
該防水カバー30は、絶縁材料(樹脂材料)で成形されたカバー本体300と、該カバー本体300内に内装されたシーリング部材302a,302bとで構成されている。前記カバー本体300は、上下一対の分割カバー301a,301bで構成されており、これらを合わせることで全体として略箱状になるよう構成されている。
【0050】
該カバー本体300は、上下一対の分割カバー301a,301bを合わせることで形成される対向した一対の壁部に低圧幹線A1,A2,A3,A4を挿通させる穴303が形成されるとともに、該一対の壁部を接続した別の壁部に低圧線分岐装置1の筒状収容部201bを挿通させる穴304が形成されている(図8参照)。これらの穴303,304は、分割カバー301a,301bを合わせることで形成されるようになっている。すなわち、各分割カバー301a,301bは、上記壁部となる部位に略半円状の凹部303b,303b,304a,304bが形成されており、これらを重ねることで凹部303b,303b,304a,304bが一つの穴303,304になるようになっている。
【0051】
そして、本実施形態においては、一対の分割カバー301a,301bは、筒状収容部201bを挿通する穴304を形成する壁面と対向する壁面が蝶着されており、開閉可能になっている。また、一方の分割カバー301aは、筒状収容部201bを挿通する穴304を形成する壁部に係合爪305が凸設され、他方の分割カバー301bの壁部には係合爪305を係合させる被係合部306が凸設されている。これにより、係合爪305を被係合部306に係合させることで一対の分割カバー301a,301bを一体にした状態で維持できるようになっている。
【0052】
前記シーリング部材302a,302bは、例えば、シリンコン系のゲル材で構成されており、各分割カバー301a,301b内に充填されている。そして、上述の如く、一対の分割カバー301a,301bを合わせることで、各分割カバー301a,301b内のシーリング部材(ゲル材)302a,302b同士が密接するようになっている。これにより、該防水カバー30は、低圧幹線A1,A2,A3,A4に取り付けた接続手段10を分割カバー301a,301bで挟み込みことで、接続手段10の外面及び筒状収容部201bの一部の外面にシーリング部材(ゲル材)302a,302bが密接した状態になり、導電性のある接続手段10や連結部212b等を液密にカバーできるようになっている。
【0053】
次に、本実施形態に係る低圧線分岐装置1の使用態様について説明する。なお、新設の低圧幹線A1,A2,A3,A4や既設の低圧幹線A1,A2,A3,A4の何れを対象としても使用態様は同じであるので、既設の低圧幹線A1,A2,A3,A4の場合を一例にして説明することとする。
【0054】
まず、図7(a)に示す如く、地下空間T内に配設された低圧幹線A1,A2,A3,A4の絶縁被覆を接続手段10のサイズに応じて部分的に除去し、内部の導体を露呈させる。そして、図7(b)に示す如く、露呈した導体を一対の挟持体100a,100bで挟み込んで締結手段150でこれらを締結する。本実施形態においては締結手段150を用いて連結部212bを接続手段10に連結させるため、重ね合わせたフランジ部102a,102a,102b,102bに挿通したボルト151…の何れかを連結部212bに挿通した上でナット152…を螺合させる。なお、図7(b)においては、フランジ部102a,102aの長手方向に並ぶボルト151…のうち真ん中のボルト151…を連結部212bに挿通した上でナット152…を螺合させている。
【0055】
その後、図7(c)示す如く、前記防水カバー30で接続手段10及び筒状収容部201bの先端側の一部を液密にカバーする。すなわち、シーリング部材302a,302bで接続手段10を挟み込むように、一対の分割カバー301a,301bを重ね合わせ、係合爪305を被係合部306に係合させる。このようにすることで、防水カバー30内でシーリング部材302a,302bが接続手段10の外面の全域に密接して防水が図られた状態になり、図8に示す如く、低圧幹線A1,A2,A3,A4に対する低圧線分岐装置1の取り付けが完了する。なお、アース線A1、電灯線A2、共用線A3、動力線A4の何れの低圧幹線A1,A2,A3,A4に対しても上述のように低圧線分岐装置1を取り付ける。この状態で、装置本体20の接続ポート202b…はポート封止部232…によって封止され、操作部203…は蓋部205…のパッキン206…によって封止されているため、低圧線分岐装置1内は完全に液密状態で保たれることになる。従って、仮に地下空間T内に雨水等が流れ込んで浸水してしまっても、確実な防水が図られることになる。
【0056】
そして、低圧幹線A1,A2,A3,A4から低圧引込線B1,B2,B3,B4を分岐させる場合、図9(a)に示す如く、低圧引込線B1,B2,B3,B4の端部の絶縁被覆を除去して導体を露呈させた上で、その導体を先頭にして何れかの接続ポート202b…に差し込む。ポート封止部232…及び装填口封止部231は柔軟で且つ弾性変形自在なゲル材で構成されているので、図9(b)に示す如く、上述のように接続ポート202b…に低圧引込線B1,B2,B3,B4を差し込むと、その先端によってポート封止部232…及び装填口封止部231に対して低圧引込線B1,B2,B3,B4が刺衝され、最終的に接続ポート202b…と略同心に形成された導体挿入穴213…内に導体が到達することになる。この状態で低圧引込線B1,B2,B3,B4の絶縁被覆と接続ポート202b…の内周面との間にあるシーリング部材(ゲル)230によって内部が液密な状態で保たれることになる。
【0057】
そして、蓋部205…を開けて押ネジ221を回すと、ピン部221b及び固定部材222が導体挿入穴213…内に突出する結果、これによって導体挿入穴213内にある導体が押さえられ、該低圧線分岐装置1に低圧引込線B1,B2,B3,B4が固定された状態になる。そして、蓋部205…を閉じてパッキン206…で筒状部204…の上端開口を封止することで、内部が完全に液密状態になる。これにより、仮に地下空間T内に雨水等が流れ込んで浸水してしまっても、確実な防水が図られることになる。
【0058】
そして、各戸に引き込まれた低圧引込線B1,B2,B3,B4が不要となって除去する場合もあるが、本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、シーリング部材230が弾性に富むため、低圧引込線B1,B2,B3,B4を接続ポート202b…から抜いても、低圧引込線B1,B2,B3,B4を挿通することで形成された穴がシーリング部材230の自己の弾性(復元力)によって閉塞され、装置本体20の内部が液水な状態で保たれることになる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、地下空間T内に配設された低圧幹線A1,A2,A3,A4の絶縁被覆を除去した上で接続手段10を接続するように構成されているため、該低圧幹線A1,A2,A3,A4を分断する必要がなく、停電させずに取り付けることができる。また、装置本体20にゲル状のシーリング部材230を設けたので、低圧引込線B1,B2,B3,B4を接続していない状態、低圧引込線B1,B2,B3,B4を分岐させた状態の何れにおいても液密な状態にすることができる。
【0060】
さらに、低圧引込線B1,B2,B3,B4を挿入(接続)する接続ポート202b…を複数設けたので、当該低圧線分岐装置1を低圧幹線A1,A2,A3,A4の何れかの箇所一カ所に設けるだけで、複数の低圧引込線B1,B2,B3,B4を分岐させることができる。また、上述のように、低圧引込線B1,B2,B3,B4を接続しない状態でも液密にできるため、必要となったときに低圧引込線B1,B2,B3,B4を接続して分岐させることができる。
【0061】
さらに、接続手段10等を防水カバー30で液密にカバーするようにしたので、防水テープを巻くといった煩雑な作業を必要とせず、接続手段10等に対しても簡単な作業で防水を図ることができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る低圧線分岐装置1は、固定手段220をピン部221bとこれを挿入したコの字状の固定部材222とで構成したので、低圧引込線B1,B2,B3,B4の導体を三カ所で押さえることができ、低圧引込線B1,B2,B3,B4を低圧線分岐装置1に対して確実に固定することができる。
【0063】
尚、本発明の低圧線分岐装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
上記実施形態において、防水カバー30で接続手段10に対する防水を図るようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、接続手段10に防水テープを巻き付けて接続手段10に対する防水を図るようにしてもよい。このようにしても、前記低圧線分岐装置1を取り付ける際に一つの接続手段10に対して施工するだけで複数の低圧引込線B1,B2,B3,B4を分岐させることのできる状態となるので、従来のように低圧引込線B1,B2,B3,B4毎に防水加工を施す必要がなく作業の効率化を図ることができる。但し、より効率的に接続手段10に対して防水するには上記実施形態と同様にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0065】
上記実施形態において、それぞれ独立した一対の挟持体100a,100bを締結手段150で締結するように接続手段10を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、接続手段10は一対の挟持体100a,100bの一端(一方のフランジ部102a,102a,102b,102b)同士を蝶着し、他端側(他方のフランジ部102a,102a,102b,102b)同士を締結するようにしてもよい。また、上記実施形態において接続手段10の締結手段150(ボルト151…及びナット152…)を用いて連結部212bを接続手段10に連結するようにしたが、例えば、連結部212bと接続手段10とを溶接等で取り外し不能に連結するようにしても勿論よい。
【0066】
また、接続手段10は、一対の挟持体100a,100bを締結手段150で締結するものに限定されるものではなく、例えば、接続手段10は、図10に示す如く、断面C字形状のスリーブ部160と、該スリーブ部160に連設され、導電部材210に連結される被連結部161とを備えたものであってもよい。
【0067】
この場合、前記スリーブ部160は、導電性のある金属材料で形成され、周方向の一部が分断されることで軸線方向の全長に亘って低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体を挿入するためのスリット(開口)が形成され、径方向に塑性変形可能に構成される。かかるスリーブ部160は、スリットに沿って低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体を内部に導入した上で、径方向に圧縮されることで塑性変形して導体と密接するようになっている。これにより、該スリーブ部160は、上記実施形態と同様に、低圧幹線A1,A2,A3,A4を分断することなく低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体に電気的に接続することができる。なお、この場合においても、上記構成の接続手段10を上記実施形態で説明したような防水カバー30や防水テープによって防水することは勿論である。
【0068】
そして、前記被連結部161は、導電部材210に対して電気的に接続できる構成であればよいが、例えば、スリーブ部160の一端から延出した金属片により構成され、導電部材210の連結部212b’にボルトBとナットNとで連結するようにしたものであってもよい。かかる被連結部161は、装置本体20と低圧幹線A1,A2,A3,A4との干渉を防止できるように、導電部材210と連結される部位がスリーブ部160の軸線に対して交差(直交)する方向に延びるように形成されればよく、例えば、図10に示すようにL字状に曲げて先端側(導電部材210が連結される部位)がスリーブ部160の軸線と直交方向に延出するようにしてもよいし、スリーブ部160における軸線方向の途中位置から延出するように形成してもよい。なお、導電部材210の連結部212b’は、被連結部161の形態に合わせて適宜形成することは勿論のことである。
【0069】
また、接続手段10は、図11に示す如く、低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体を挟み込むクランプの如く形成してもよい。具体的には、接続手段10は、連結部170aを介して基端同士が連結されることで所定の間隔をあけて対向した一対の対向部170b,170cを備えたクランプ本体170と、一対の対向部170b,170c間に配設され、一方の対向部170bに対して接離可能に設けられた移動体171と、他方の対向部170cに対して貫通して螺合されるとともに、移動体171に対して一端部が軸線周りで回転自在に連結される一方、他端側に導電部材210が連結される連結ねじ体172とを備え、少なくとも移動体171及び連結ねじ体172が導電性のある金属材料で形成されたものであってもよい。このようにすれば、対向部170b、170cの先端側から一方の対向部170bと移動体171との間に低圧幹線A1,A2,A3,A4を分断することなく導体を介入させることができ、連結ねじ体172を一方向に回転させて螺入し、該連結ねじ体172に連結された移動体171を一方の対向部170b側に移動させることで、一方の対向部170bと移動体171とで導体を挟み込んで当該接続手段10と導体とを電気的に接続することができる。また、連結ねじ体172を他方向に回転させることで、移動体171が他方の対向部170c側に移動するので、導体に対する挟み込み(接続)を解除することができ、不要となったときに容易に取り外すことができる。この場合においても、上記構成の接続手段10を上記実施形態で説明したような防水カバー30や防水テープによって防水することは勿論である。
【0070】
そして、この場合、前記クランプ本体170は、一方の対向部170bにおける他方の対向部170cと対向する面、及び、移動体171における一方の対向部170bと対向する面が低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体の外径に対応した曲率半径の湾曲面で構成されることが好ましい。このようにすれば、両湾曲面が低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体の外周面に沿った状態で該導体を挟み込むことができ、電気的な接続が良好となる。さらに、このように接続手段10をクランプの如く構成する場合、該接続手段10と低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体とを電気的に接続するに際し、移動体171を一方の対向部170b側に移動させるために連結ねじ体172を回転させる必要があるため、接続手段10を低圧幹線A1,A2,A3,A4の導体に接続する際の作業性を考慮すれば、その接続後に接続手段10と導電部材210とを電気的に連結できる構成にすることが好ましく、例えば、連結ねじ体172の他端に突片を設け、導電部材210の連結部212と突片とをボルトとナットとで締結するようにしてもよいし、図11に示すように、連結ねじ体172の他端側、又は導電部材210の連結部212b’’の何れか一方に雄ねじを形成し、連結ねじ体172の他端側、又は導電部材210の連結部212’’の何れか他方に雌ねじを形成し、互いに螺合させることで連結できるようにしてもよい。なお、上述の如く、連結ねじ体172を螺入(回転)させるために、当該連結ねじ体172の他端部を工具で操作できる形態することは勿論のことである。
【0071】
上記実施形態において、固定手段220として押ネジ221の先端部に固定部材222を取り付けたが、これに限定されるものではなく、例えば、押ネジ221のみで固定手段220を構成してもよい。そして、上記実施形態において導電部材210に押ネジ221を螺合させるようにしたが、例えば、導電部材210に貫通穴を穿設し、ケーシング200に押ネジ221を螺合させるようにしてもよいし、導電部材210及びケーシング200に押ネジ221を螺合させるようにしてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態において、固定手段220で低圧引込線B1,B2,B3,B4を固定するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、導電部材210の導体挿入穴213の内周面に凸設した突起や爪等で固定手段を構成し、導体挿入穴213に挿入した低圧引込線B1,B2,B3,B4が突起や爪等に係止されることで脱落を防止するようにしてもよい。また、導体挿入穴213を低圧引込線B1,B2,B3,B4の導体と略同径に形成し、該導体挿入穴213に導体を圧入させるようにしてもよい。従って、固定手段220を外部から操作する必要がない場合には、操作部203…を設ける必要はない。
【0073】
そして、操作部203…を設ける場合、必ずすも蓋部205…を筒状部204a,204bに蝶着する必要はなく、例えば、蓋部205…を筒状部204a,204bに圧着可能なキャップの如く形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る低圧線分岐装置を取り付ける対象を説明するための説明図であって、低圧幹線及び低圧引込線の配設された地下空間の概略断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る低圧線分岐装置の一部(防水カバー)を除く全体斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る低圧線分岐装置の一部(防水カバー)を除く全体説明図であって、(a)は、平面図を示し、(b)は側面図を示す。
【図4】同実施形態に係る低圧線分岐装置の一部(防水カバー)を除く横断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る低圧線分岐装置の断面図であって、(a)は、図3のI−I断面図を示す、(b)は、図3のII−II断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る防水カバーの斜視図であって、分割カバーを開いた状態を示す。
【図7】同実施形態に係る低圧線分岐装置の取り付け方を説明するための工程図であって、(a)は、低圧幹線の絶縁被覆を除去した状態を示し、(b)は、低圧線分岐装置の接続手段を低圧幹線の導体に接続した状態を示し、(c)は、接続手段を防水カバーでカバーする状態を示す。
【図8】同実施形態に係る低圧線分岐装置の全体斜視図であって、低圧幹線に取り付けた状態を示す。
【図9】同実施形態に係る低圧線分岐装置に低圧引込線を接続して分岐させる方法についての説明図であって、(a)は、接続ポートに低圧引込線を挿入する状態を示し、(b)は、低圧引込線を電気的に接続した状態の断面図を示す。
【図10】本発明の他実施形態に係る低圧線分岐装置の一部(防水カバー)を除く全体斜視図を示す。
【図11】本発明の別の実施形態に係る低圧線分岐装置の一部(防水カバー)を除く全体斜視図を示す。
【符号の説明】
【0075】
1…低圧線分岐装置、10…接続手段、20…装置本体、30…防水カバー、100a,100b…挟持体、101a,101b…挟持体本体、102a,102a,102b,102b…フランジ部、150…締結手段、151…ボルト、152…ナット、200…ケーシング、201…ケーシング本体、201a…本体収容部、201b…筒状収容部、202…閉塞部材、202a…ベース部、202b…接続ポート、203…操作部、204…筒状部、205…蓋部、206…パッキン、207…係止爪、208…被係止部、209…穴、209a…係合爪、209b…被係合部、210…導電部材、211…導電部材本体、212…連結導電部、212a…連結本体部、212b…連結部、213…導体挿入穴、214…ネジ穴、215…凹部、220…固定手段、221…押ネジ、221a…雄ネジ部、221b…ピン部、222…固定部材、222a…押圧片、222b…連結片、230…シーリング部材、231…装填口封止部、232…ポート封止部、300…カバー本体、301a,301b…分割カバー、302a,302b…シーリング部材、303,304…穴、303b,303b,304a,304b…凹部、305…係合爪、306…被係合部、A1…アース線(低圧幹線)、A2…電灯線(低圧幹線)、A3…共用線(低圧幹線)、A4…動力線(低圧幹線)、B1…アース(低圧引込線)、B2…電灯(低圧引込線)、B3…共用(低圧引込線)、B4…動力(低圧引込線)、H…装填口、T…地下空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下空間内に配設される低圧幹線から各戸へ引き込まれる低圧引込線を分岐させるための低圧線分岐装置において、前記低圧幹線の導体に対して電気的に接続可能に構成された接続手段と、低圧引込線を挿入可能に構成された複数の接続ポートが形成され、前記接続手段に対して電気的に接続されるとともに接続ポートに挿入した低圧引込線を電気的に接続可能に構成された導電部材が内装された装置本体とを備え、各接続ポートは、低圧引込線を刺衝可能で弾性変形自在なゲル状のシーリング部材で封止されていることを特徴とする低圧線分岐装置。
【請求項2】
前記接続手段は、導電性を有するとともに少なくとも何れか一方が前記導電部材と電気的に接続される一対の挟持体と、導体を挟み込んだ一対の挟持体同士を締結する締結手段とを備えている請求項1記載の低圧線分岐装置。
【請求項3】
前記導電部材は、低圧引込線の導体を挿入可能な導体挿入穴が接続ポートの配置に対応して形成され、装置本体は、前記導体挿入穴に挿入された低圧引込線を固定する固定手段が設けられている請求項1又は2記載の低圧線分岐装置。
【請求項4】
前記固定手段は、導電部材又は該導電部材を覆う装置本体のケーシングの少なくとも何れか一方に螺合された押ネジを備え、該押ネジの先端側が前記導体挿入穴に対して出退可能に構成されている請求項3記載の低圧線分岐装置。
【請求項5】
前記固定手段が押ネジの先端部に取り付けられた固定部材を備えるとともに、導体挿入穴の内周面に前記固定部材を収容する凹部が形成され、前記固体部材は、間隔をあけて互いに対向する一対の押圧片と、該一対の押圧片の基端同士を連結した連結片とを備え、前記押ネジの先端部が一対の押圧片間に介在するように連結片に挿入されるとともに固定部材に対する抜け止めが施され、一対の押圧片及び押ネジの先端の三つで低圧引込線の導体を軸心方向に間隔をあけて押圧するように構成されている請求項4記載の低圧線分岐装置。
【請求項6】
低圧幹線の導体に接続した接続手段を覆う防水カバーをさらに備え、該防水カバーは、互いに重ね合わされる一対の分割カバーと、各分割カバー内に充填されたゲル状のシーリング部材とを備え、接続手段を両シーリング部材で挟み込むように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の低圧線分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−165223(P2009−165223A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340131(P2007−340131)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】