説明

低密度ポリエチレンを製造するための重合法

エチレン系ポリマーを形成するための高圧重合法は、A.エチレンを含み、任意で連鎖移動剤システム(CTAシステム)を含む第1供給を第1オートクレーブ反応器帯に投入し、第1帯反応生成物を生産する重合条件で操作する段階であって、第1反応器帯のCTAシステムが移動活性Z1を有する段階;ならびにB.(1)第1帯反応生成物の少なくとも一部を、第2オートクレーブ反応器帯または管型反応器帯から選択される第2反応器帯に移動させ、重合条件で操作する段階、ならびに任意で(2)第2反応器帯が移動活性Z2を有するCTAシステムを含むという条件で、第2供給を第2反応器帯に新たに投入し、第2帯反応生成物を生産する段階を、Z1/Z2の比率が1未満であるという条件で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年12月18日に出願された米国特許出願第12/641,985号に優先権を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エチレン系ポリマー、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、およびLDPEを製造するための重合の改良に関する。とりわけ、重合法は、オートクレーブ反応器に関し、好ましくは管型反応器を用いて順次操作する。
【背景技術】
【0003】
今日、製造販売されるポリエチレンには多数の種類が存在する。特にある種類は様々な供給業者により製造され大量に販売されている。このポリエチレンは、高圧フリー・ラジカル・ポリエチレン(通常LDPEと呼ばれる)と呼ばれ、通常、管型反応器もしくはオートクレーブ反応器または時には組み合わせを用いて製造される。ポリマー使用者はLDPEを他のポリマー、例えば鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とブレンドし、流動性または加工性などの特性の改変を試みることもある。
【0004】
ここで本発明者らは、押出被覆特性を改良し、好ましい剛性、引張強度、溶融強度、および光学と組み合わせて収縮を改良し得る一方、他の性能属性を保持する新規なLDPEポリマーを発見した。
【0005】
例えば、S. Goto et al; Journal of Applied Polymer Science: Applied Polymer Symposium, 36, 21-40, 1981(参照番号1)は、反応速度論に関する下記の一般討論を記載する。より高い密度(≧926kg/m)をもつ低密度ポリエチレン樹脂は、短鎖分枝頻度を低減し、結果的に生成物の密度を増大するために、重合温度を下げて生産する。短鎖分枝(バックバイティング(backbiting)としても公知)および長鎖分枝(ポリマー転移(transfer with polymer)としても公知)反応段階の両反応比率は非常に温度依存性である。
【0006】
以下の表は関連する反応段階(参照番号1)の動的データを示す。温度依存性は活性化エネルギーにより与えられる。活性化エネルギーが増大するにつれ、特定の反応段階が高温により促進され、または低温により低減する。
【表1】

【0007】
ポリマー特性については、特定の反応段階の速度と伝播速度との比率が重要である。
【0008】
温度依存性の特性はΔ活性化エネルギーにより表される:
生成物のSCB頻度:Δ活性化エネルギー=13.03−10.52=2.51kcal/モル
生成物のLCB頻度:Δ活性化エネルギー=14.08−10.52=3.57kcal/モル
【0009】
上記のデータは、LCB頻度が温度の低下に伴ってSCB頻度より速く減少することを示唆する。さらに、SCB頻度を下げるために必要な最高重合温度の低下も反応器のポリマー濃度(/プロファイル)を下げる。LCB反応速度もポリマー濃度に依存するため、LCB頻度は、ポリマー密度が増加する場合さらに低下する。これは、LCB頻度が重合温度の低下によっても、およびLDPE密度が増加する場合、反応器のポリマー濃度の低下によっても、低下することを意味する。
【0010】
ポリエチレンの分子量分布はLCB頻度により大きな影響を受ける。高いLCB頻度は広範なMWDの樹脂をもたらす一方、低いLCB頻度は限られたMWDの樹脂をもたらす。これは、ポリマー密度が増加する場合、広範なMWDのポリエチレン樹脂を生産することは次第に困難になり、ある時点で不可能になることを意味する。広範なMWDのポリエチレンは、様々な押出適用に、特に溶融状態のレオロジーを制御するために必要である。一例として、押出被覆中の低いネックインの必要性である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S. Goto et al; Journal of Applied Polymer Science: Applied Polymer Symposium, 36, 21-40, 1981
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、エチレン系ポリマーを形成するための高圧重合法であって、
A.エチレンを含み、任意で連鎖移動剤システム(CTAシステム)を含む第1供給を第1オートクレーブ反応器帯に投入し、第1帯反応生成物を生産する重合条件で操作する段階であって、第1供給の移動活性がZ1である段階;ならびに
B.(1)第1帯反応生成物の少なくとも一部を、第2オートクレーブ反応器帯または管型反応器帯から選択される第2反応器帯に移動させ、重合条件で操作する段階、ならびに任意で、(2)第2反応器帯が移動活性Z2を有するCTAシステムを含むという条件で、第2供給を第2反応器帯に新たに投入し、第2帯反応生成物を生産する段階
を、Z1/Z2の比率が1未満であるという条件で含む方法を提供する。
【0013】
一実施形態において、本発明は本発明方法により調製されるエチレン系ポリマーである。一実施形態において、本発明は、0.926から0.935g/cmの密度、および(>)3g/10分より大きなメルトインデックス、およびセンチニュートンで(8.1x(メルトインデックス)−0.98)以上の溶融弾性を有するエチレン系ポリマーである。一実施形態において、本発明は、本発明のエチレン系ポリマーを含む組成物である。一実施形態において、本発明は、本発明組成物を含む製品、例えばフィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較例1および実施例2についての対数溶融弾性(ME)対対数メルトインデックス(MI)のプロットである。
【0015】
【図2】実施例2cおよび比較例1bについての光沢および曇価のプロットである。
【0016】
【図3】実施例2cおよび比較例1bについてのドローダウン(分当たりメータ(mpm)およびネックイン・ミリメータ(mm))のプロットである。
【0017】
【図4】実施例4および比較例3についての光沢および曇価のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概観
上記で論じたように、本発明は、エチレン系ポリマーを形成するための高圧重合法であって、
A.エチレンを含み、任意で連鎖移動剤システム(CTAシステム)を含む第1供給を第1オートクレーブ反応器帯に投入し、第1帯反応生成物を生産する重合条件で操作する段階であって、移動活性Z1を有するCTAシステムである段階;ならびに
B.(1)第1帯反応生成物の少なくとも一部を、第2オートクレーブ反応器帯または管型反応器帯から選択される第2反応器帯に移動させ、重合条件で操作する段階、ならびに任意で、(2)第2反応器帯が移動活性Z2を有するCTAシステムを含むという条件で、第2供給を第2反応器帯に新たに投入し、第2帯反応生成物を生産する段階
を、Z1/Z2の比率が1未満であるという条件で含む方法を提供する。
【0019】
一実施形態において、該方法は、(i番目−1)反応帯から(i番目)反応帯で生産された帯反応生成物を移動する1またはそれ以上の段階であって、式中、3≦i≦nおよびn≧3であり、各帯は重合条件で操作し、ならびに全i<nおよびZ1<ZnについてZ1/Zi比≦1という条件で、任意でCTAシステムを含む(i番目)供給を(i番目)反応帯に添加する段階であって、(i番目)反応帯のCTAシステムがZ1の移動活性を有する段階をさらに含む。
【0020】
一実施形態において、第1供給がCTAシステムを含む段階Aの方法はZ1の移動活性を有する。
【0021】
一実施形態において、第1反応器帯生成物および/または新たに投入された供給がCTAシステムを含む段階Bの方法は、移動活性Z2を有する第2反応器帯のCTAシステムをもたらす。
【0022】
一実施形態において、第2供給は第2反応器帯に投入され、第2供給はエチレンを含む。
【0023】
一実施形態において、前実施形態の第2供給はさらにCTAシステムを含む。
【0024】
一実施形態において、第2供給は第2反応器帯に投入され、第2供給はエチレンを含むがCTAシステムを含まない。
【0025】
一実施形態において、前実施形態のいずれかの第1供給は少なくとも1つのコモノマーを含む。
【0026】
一実施形態において、前実施形態のいずれかの第2供給は少なくとも1つのコモノマーを含む。
【0027】
一実施形態において、前実施形態のいずれかの第i供給はさらにエチレンを含む。
【0028】
一実施形態において、前特許請求項のいずれかの第i供給はさらに少なくとも1つのコモノマーを含む。
【0029】
一実施形態において、前実施形態のいずれかの少なくとも1つのコモノマーは、(i)ハイパーコンプレッサーへの吸引、(ii)ハイパーコンプレッサー排出、および(iii)1またはそれ以上のオートクレーブまたは管型反応器帯の1またはそれ以上に投入される。
【0030】
一実施形態において、前実施形態のいずれかの少なくとも1つのコモノマーは、アクリレート、シラン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸、および一酸化炭素である。
【0031】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、段階(B)(1)および(B)(2)は同時に実施される。
【0032】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、段階(B)(1)および(B)(2)は異なる時点で実施される。
【0033】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、第1帯反応生成物の少なくとも一部は第2オートクレーブ反応器帯に移動する。
【0034】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、第2オートクレーブ反応器帯は第1オートクレーブ反応器帯に隣接する。
【0035】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、第2オートクレーブ反応器帯は第1オートクレーブ反応器帯から1またはそれ以上の反応器帯で隔てられる。
【0036】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、第1帯反応生成物の少なくとも一部は管型反応器帯に移動する。
【0037】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、管型反応器帯は第1オートクレーブ反応器帯に隣接する。
【0038】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、管型反応器帯は第1オートクレーブ反応器帯から1またはそれ以上の反応器帯で隔てられる。
【0039】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、各反応器帯への各供給は同一のCTAシステムを含む。更なる実施形態において、各供給のCTAシステムは単一のCTAを含む。
【0040】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、少なくとも1つの反応器帯への少なくとも1つの供給は、他の反応器帯への少なくとも1つのCTAと異なるCTAを含む。
【0041】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、それぞれのCTAは独立してオレフィン、アルデヒド、ケトン、アルコール、飽和炭化水素、エーテル、チオール、ホスフィン、アミノ、アミン、アミド、エステル、およびイソシアネートの1つである。
【0042】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、それぞれのCTAは独立してメチルエチルケトン(MEK)、プロピオンアルデヒド、ブテン−1、アセトン、イソプロパノールまたはプロピレンである。
【0043】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、少なくとも1つのCTAは0.001より大きい連鎖移動定数Csを有する。
【0044】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、全てのオートクレーブ帯は同一のオートクレーブ反応器に位置付けられる。
【0045】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、オートクレーブ帯は2またはそれ以上の異なるオートクレーブ反応器に位置付けられる。
【0046】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、オートクレーブ帯はほとんど同じ大きさである。
【0047】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、2またはそれ以上のオートクレーブ帯は異なる大きさである。
【0048】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、各反応器帯の重合条件は同一温度および同一圧力で操作される。
【0049】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、少なくとも1つの反応器帯における少なくとも1つの重合条件は他の重合条件と異なる。
【0050】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、反応器帯におけるそれぞれの重合条件は、独立して、100℃以上の温度および100MPa以上の圧力を含む。
【0051】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、反応器帯におけるそれぞれの重合条件は、独立して、400℃未満の温度、および500MPa未満の圧力を含む。
【0052】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、全i<nではZ1/Zi比≦1であり、Z1/Zn比は0.95未満である。
【0053】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、全i<nではZ1/Zi比≦1であり、Z1/Zn比は0.90未満である。
【0054】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、全i<nではZ1/Zi比≦1であり、Z1/Zn比は0以上である。
【0055】
前実施形態のいずれかの方法の一実施形態において、全i<nではZ1/Zi比≦1であり、Z1/Zn比は0より大きい。
【0056】
一実施形態において、本発明は第2供給が第2反応帯に投入される方法であり、第2供給はCTAシステムを含む。
【0057】
一実施形態において、本発明は第2供給が第2反応帯に投入される方法であり、第2供給はCTAシステムを含まない。
【0058】
一実施形態において、本発明方法は本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0059】
一実施形態において、本発明は前実施形態のいずれかの方法により製造されるエチレン系ポリマーである。
【0060】
一実施形態において、エチレン系ポリマーはポリエチレンホモポリマーである。
【0061】
一実施形態において、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーである。
【0062】
一実施形態において、本発明は、センチニュートンで8.1x(メルトインデックス)−0.98より大きい溶融弾性を有するエチレン系ポリマーである。
【0063】
一実施形態において、本発明は、センチニュートンで9.3x(メルトインデックス)−0.98より大きい溶融弾性を有するエチレン系ポリマーである。
【0064】
一実施形態において、本発明は3.0g/10分より大きいメルトインデックスを有するエチレン系ポリマーである。
【0065】
一実施形態において、本発明は、センチニュートンで8.1x(メルトインデックス)−0.98より大きい溶融弾性および3.0g/10分より大きいメルトインデックスを有するエチレン系ポリマーである。
【0066】
一実施形態において、本発明は、0.926から0.935g/cmの密度を有するエチレン系ポリマーである。
【0067】
一実施形態において、本発明は、センチニュートンで8.1x(メルトインデックス)−0.98より大きい溶融弾性および0.926から0.935g/cmの密度を有するエチレン系ポリマーである。
【0068】
一実施形態において、本発明は、センチニュートンで8.1x(メルトインデックス)−0.98より大きい溶融弾性、3.0g/10分より大きいメルトインデックスおよび0.926から0.935g/cmの密度を有するエチレン系ポリマーである。
【0069】
一実施形態において、前ポリマー実施形態のいずれかのエチレン系ポリマーはポリエチレンホモポリマーである。
【0070】
一実施形態において、前ポリマー実施形態のいずれかのエチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーである。
【0071】
一実施形態において、前ポリマー実施形態のいずれかのエチレン系ポリマーはLDPEである。
【0072】
本発明エチレン系ポリマーは、本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0073】
一実施形態において、本発明は、前ポリマー実施形態のいずれかのエチレン系ポリマーを含む組成物である。
【0074】
一実施形態において、該組成物はさらに他のエチレン系ポリマーを含む。
【0075】
本発明組成物は本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0076】
一実施形態において、本発明は前組成物実施形態のいずれかの組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む製品である。
【0077】
本発明製品は本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0078】
一実施形態において、本発明は前組成物実施形態のいずれかの組成物から形成される少なくとも1層を含むフィルムである。
【0079】
本発明フィルムは本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0080】
一実施形態において、本発明は、前組成物実施形態のいずれかの組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む被覆である。
【0081】
本発明被覆は、本明細書に記載する2またはそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0082】
重合
高圧フリーラジカル開始重合法について、2つの基本型の反応器が公知である。第1型において、1またはそれ以上の反応帯を有する攪拌型オートクレーブ管が使用される:オートクレーブ反応器。第2型において、被覆管が反応器として使用され、この管は1またはそれ以上の反応帯を有する:管型反応器。本発明に従って見出される有益な特性を有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを生産する本発明の高圧法は、少なくとも2つの反応帯を有するオートクレーブ反応器で、またはオートクレーブと管型反応器との組み合わせで実施できる。
【0083】
該方法のそれぞれのオートクレーブおよび管型反応器帯の温度は、典型的には100℃から400℃、より典型的には150℃から350℃、さらにより典型的には160℃から320℃である。本明細書で用いる「高圧」とは、該方法のそれぞれのオートクレーブおよび管型反応器帯における圧力が少なくとも100MPaであり、典型的には100から400MPa、より典型的には120から360MPa、さらにより典型的には150から320MPaであることを意味する。本発明の方法で用いる高圧値は、ポリマーに取り込まれる連鎖移動剤、例えばMEKまたはプロピオンアルデヒドの量に直接影響を及ぼす。反応圧が高くなるにつれ、連鎖移動剤由来単位が多く生成物に取り込まれる。
【0084】
本発明の方法の一実施形態において、少なくとも2つの反応帯を含むオートクレーブと少なくとも1つの反応帯を有する従来の管型反応器との組み合わせが用いられる。さらなる実施形態において、このような従来の管型反応器は、外部ウオータージャケットにより冷却され、開始剤および/またはモノマーの少なくとも1つの投入点を有する。適切な反応器の長さは、500から1500メートルであり得るが、これらに限定されない。オートクレーブ反応器は通常開始剤および/またはモノマーの幾つかの投入点を有する。使用する特定の反応器の組み合わせにより、20パーセントを上回る変換速度が可能になり、これは、約16〜18パーセントの変換速度である(低密度型ポリマーの生産でエチレン変換として表される)標準オートクレーブ反応器で得られる変換速度より有意に高い。
【0085】
適切な反応器システムの例は、米国特許第3,913,698号および同第6,407,191号に記載されている。
【0086】
モノマーおよびコモノマー
本記載および特許請求の範囲で用いられるエチレンコポリマーという用語は、エチレンと1またはそれ以上のコモノマーとのポリマーを指す。本発明のエチレンポリマーで使用されるべき適切なコモノマーは、エチレン系不飽和モノマーおよびとりわけC3−20α−オレフィン、アセチレン系化合物、共役ジエンまたは非共役ジエン、ポリエン、不飽和カルボン酸、一酸化炭素、ビニルエステル、およびC2−6アルキルアクリレートを含むがこれらに限定されない。
【0087】
本発明の方法は、フリーラジカル重合法である。本方法で使用されるべきフリーラジカル開始剤の種類は重要ではない。このような方法で一般に使用されるフリーラジカル開始剤は酸素であり、管型反応器において重合モノマーの重量、および有機過酸化物に0.0001から0.01重量パーセント(wt%)の従来量で使用できる。典型的な好ましい開始剤は、有機過酸化物、例えばパーエステル、パーケタール、ペルオキシケトンおよびパーカーボネート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、クミルパーネオデカノエート、およびtert−アミルパーピバレートである。他の適切な開始剤は、アゾジカルボン酸エステル、アゾジカルボン酸ジニトリル、および1,1,2,2−テトラメチルエタン誘導体を含む。これらの有機パーオキシ開始剤は、重合モノマーの重量に0.005から0.2重量%の従来量で使用される。
【0088】
連鎖移動剤(CTA)
連鎖移動剤またはテロゲンは重合段階のメルト・フロー・インデックスを制御するために使用される。連鎖移動は、伸長するポリマー鎖の終結に関与するため、ポリマー物質の最大分子量を制限する。連鎖移動剤は典型的に水素原子ドナーであり、これは伸長するポリマー鎖と反応し鎖の重合反応を停止させる。これらの剤は、飽和炭化水素または不飽和炭化水素からアルデヒド、ケトンまたはアルコールまでの多数の異なる種類のうちであり得る。選択される連鎖移動剤の濃度を制御することにより、ポリマー鎖の長さ、従って分子量を制御できる。ポリマーのメルト・フロー・インデックス(MFIまたはI)は、分子量に関連し、同様に制御される。
【0089】
本発明の方法で使用される連鎖移動剤は、脂肪族およびオレフィン炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、ペンテンまたはヘキサン;ケトン、例えばアセトン、ジエチルケトンまたはジアミルケトン;アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒド;および飽和脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールを含むがこれらに限定されない。好ましい連鎖移動剤は、少なくとも0.001(例えば、プロパン、イソブタン)、より好ましくは少なくとも0.01(例えばプロピレン、イソプロパノール、アセトン、1−ブテン)、さらにより好ましくは少なくとも0.05(例えば、メチルエチルケトン(MEK)、プロピオンアルデヒド、tert−ブタンチオール)の連鎖移動定数(Cs)をもつものである。Csは、モルチマー(Mortimer)により記載されるように130℃および1360気圧で算出する(以下、表Aに掲げる参照番号1−3)。最大Cs値は典型的には25を超過せず、より典型的には21を超過しない。
【0090】
一実施形態において、本発明の方法で使用する連鎖移動剤の量は、反応器システムに導入されるモノマー量に基づいて0.03から10.0重量パーセント、好ましくは0.1から2.0重量パーセントである。
【0091】
本発明の方法へのCTA導入の様式およびタイミングは、CTAおよび/またはエチレンが少なくとも2つの反応帯に新たに投入される限り、大きく異なり得る。典型的に、CTAはエチレンおよび/または他の反応成分、例えばコモノマー、開始剤、添加剤などとともに下流(第2および/または第3および/または第4など)反応帯に供給され、さらに幾らかのCTAは第1反応帯に供給され得る。第1反応帯はオートクレーブである。
【0092】
一実施形態において、補給CTA、即ち第1反応帯で消費されたCTAと交換するCTAは、新たなエチレンとともに直接投入により、および/または投入過酸化物溶液とともに供給される。
【0093】
一実施形態において、CTAを含まない追加(新たな)エチレンは、第1反応帯で消費されたエチレンの補給流として、第1オートクレーブ反応帯および/または1またはそれ以上の下流反応帯のいずれかに供給される。
【0094】
一実施形態において、補給CTAは第1反応帯に供給されるCTAのCsより高いCsをもつCTAである。これにより、反応器システムの変換レベルが増大し得る。
【0095】
一実施形態において、CTAはモノマー群、例えばプロピレン、ブテン−1などを含む。モノマー群は反応器の変換を強化する(CTAの消費を増大させる)。
【0096】
一実施形態において、CTAおよび/または再利用区分の操作条件は、CTAを濃縮し再利用エチレンから分離し、反応器の投入口に戻す再利用CTAの減少をもたらすように選択される。
【0097】
一実施形態において、CTAは下流工程区分の反応器システムからパージされる。
【0098】
一実施形態において、反応器システムは2つのオートクレーブ反応帯、続いて2つの反応管型帯を含み、エチレンモノマーおよびCTAは両オートクレーブ反応帯に供給されるが、いずれの管型反応帯にも供給されない。
【0099】
一実施形態において、反応器システムは2つのオートクレーブ反応帯、続いて2つの反応管型帯を含み、エチレンモノマーおよびCTAは両オートクレーブ反応帯に供給されるが、いずれの管型反応帯にも供給されない。しかし開始剤は1つまたは両方の管型反応帯に供給される。
【0100】
ポリマー
広範なMWDのポリエチレンは、様々な押出適用に、特に溶融状態のレオロジーを制御するために必要である。一例として、押出被覆中の低ネックインを要する。
【0101】
一態様において、本発明のポリマーは、分割CTA概念(Z1/Zi=1)を用いない類似の反応器で製造された他のポリマーより広範なMWDを有する。これは溶融弾性−メルトインデックス平衡を用いて実証および定量され、これは実施例および比較例により示されるようにこれらの差異を示す高感度法である。押出被覆性能の改良によっても実証される。
【0102】
一実施形態において、本発明のエチレン系ポリマーは、典型的には1立方センチメートル当たり0.910から0.940、より典型的には0.915から0.940、さらにより典型的には0.926から0.935グラム(g/ccまたはg/cm)の密度を有する。一実施形態において、本発明のエチレン系ポリマーは、190℃/2.16kgで10分当たり典型的には0.1から100、より典型的には0.5から50、さらにより典型的には3.0から20グラム(g/10分)のメルトインデックス(I)を有する。一実施形態において、本発明のエチレン系ポリマーは、1から30、典型的には1.5−15センチニュートン(cN)の溶融弾性を有する。一実施形態において、本発明のエチレン系ポリマーは、これらの密度、メルトインデックスおよび溶融弾性の特性の2またはそれ以上を有する。
【0103】
エチレン系ポリマーはLDPEホモポリマー(好ましい)を含み、高圧コポリマーはエチレン/ビニルアセテート(EVA)、エチレン・エチルアクリレート(EEA)、エチレン・アクリル酸(EAA)(<0.926g/cm)LDPEを含む。
【0104】
ブレンド
本発明ポリマーは、1またはそれ以上の他のポリマー、例えば直鎖エチレン・ブチルアクリレート(EBA)等だがこれに限定されないものとブレンドできる。生成物の適用は、中密度(≧0.926g/cm)および標準密度低密度ポリエチレン(LLDPE)の両方、1またはそれ以上のα−オレフィン、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1などだがこれらに限定されないものとエチレンとのコポリマー;高密度ポリエチレン(HDPE)、例えばDow Chemical Companyから入手できるHDPE等級HD940−970について、コレーション収縮フィルム、ラベルフィルム、インフレーションフィルムおよびキャストフィルム、ブロー成形、発泡体、コンパウンド製造/マスターバッチおよび射出成形の適用などを含む。ブレンドにおける本発明ポリマーの量は、大きく異なり得るが、典型的にはブレンド中のポリマーの重量に基づいて10から90、10から50、または10から30重量%である。本発明ポリマーが比較的狭いMWD(例えば6未満)を有する場合、本発明ポリマーは典型的にブレンドの大部分を構成し、即ち、LDPEに富み、ブレンド中のポリマーの重量に基づいて50重量%またはそれ以上の本発明ポリマーを含有する。本発明ポリマーが比較的広範なMWD(例えば6またはそれ以上)を有する場合、本発明ポリマーは典型的にブレンドの一部を構成し、即ち、LDPEに乏しく、ブレンド中のポリマーの重量に基づいて50重量%未満の本発明ポリマーを含有する。LDPEに富むブレンドは典型的に優れた光学を提供し、ならびに/または積層の調製に有用である。LDPEに乏しいブレンドは、典型的に優れた加工性を示し、ならびに/またはフィルムブローイングおよび押出被覆などの適用に有用である。
【0105】
添加剤
1またはそれ以上の添加剤は、本発明ポリマーを含む組成物に添加してもよい。適切な添加剤は、安定剤、充填剤、例えば有機または無機粒子(クレイ、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末金属を含む)、有機または無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線または鋼網、およびナイロンまたはポリエステルのコード、ナノサイズ粒子、クレイなどを含む);粘着付与剤、油増量剤(パラフィン油またはナフテン油を含む)を含む。さらに、他の天然および合成ポリマー(本発明方法に従って製造される他のポリマーを含む)、ならびに他の方法により製造されるポリマーを本発明組成物に添加してもよい。
【0106】
使用
本発明のポリマーは、従来の様々な熱可塑性製造法で使用され、有用な製品(少なくとも1つのフィルム層、例えば単層フィルム、またはキャスト、ブロー、カレンダー、または押出被覆法により作製される多層フィルムの少なくとも1層を含む製品;成形品、例えばブロー成形、射出成形、または回転成形品;押出品;繊維;発泡体;ならびに織布または不織布を含む)を生産し得る。エチレンポリマーを含む熱可塑性組成物は、他の天然または合成材料、ポリマー、添加剤、補強剤、耐着火添加剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、および可塑剤とのブレンドを含む。
【0107】
本発明ポリマーは他に適用する繊維の製造に使用してもよい。本発明のポリマーから作製され得る繊維、または本発明のポリマーを含むブレンドは、ステープルファイバー、麻屑、多成分、鞘/芯、ねじれ、およびモノフィラメントを含む。適切な繊維を形成する方法は、米国特許第4,340,563号(Appel, et al.)、同第4,663,220号(Wisneski, et al.)、同第4,668,566号(Nohr, et al.)および同第4,322,027号(Reba)に開示されるように、スパンボンド、メルトブロー技術、米国特許第4,413,110号(Kavesh, et al.)に開示されるゲルスパン繊維、米国特許第3,485,706号(May)に開示される織布および不織布、またはこのような繊維から製造される構造(他の繊維、例えばポリエステル、ナイロンまたは綿とのブレンドを含む)、熱成形品、押出形材(異形押出および共押出を含む)、光沢品、ならびに延伸、ねじれ、または縮れの糸または繊維を含む。
【0108】
本発明ポリマーは様々なフィルムに用いられてもよく、様々な基質に被覆される押出被覆フィルム、透明収縮フィルム、コレーション収縮フィルム、キャスト延伸フィルム、サイレージフィルム、ストレッチフード、シーリング材、およびおむつのバックシートを含むがこれらに限定されない。本発明ポリマーは他の直接最終用途の適用にも有用である。本発明ポリマーは、ワイヤーおよびケーブル被覆操作、真空形成操作用のシート押出、および形成成形品(射出成形、ブロー成形法、または回転成形法の使用を含む)に有用である。本発明ポリマーを含む組成物は従来のポリオレフィン加工技術を用いて二次加工品にも成形できる。
【0109】
本発明ポリマーの他の適切な適用は、弾性フィルムおよび繊維;手触りが柔らかい商品、例えば歯ブラシの柄および電気器具の柄;ガスケットおよび異形品;接着剤(ホットメルト接着剤および感圧接着剤を含む);履き物(靴底および靴ライナーを含む);自動車内装部品および異形品;発泡品(連続気泡および独立気泡);他の熱可塑性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、イソタクチックポリプロピレンまたは他のオレフィンポリマー用の耐衝撃性改良剤;被覆布;ホース;管類;隙間充填材;キャップライナー;床材;および流動点改良剤としても公知の潤滑剤用の粘度指数改良剤を含む。
【0110】
本発明のポリマーのさらなる処理が他の最終用途への適用のため実施されてもよい。例えば、分散(水性および非水性の両方)は本ポリマーまたは本ポリマーを含む製剤を用いても形成できる。本発明ポリマーを含む発泡体もPCT公開第2005/021622号(Strandeburg, et al.)に開示されるように形成できる。本発明ポリマーは任意の公知手段により、例えば過酸化物、電子線、シラン、アジド、または他の架橋技術を用いて架橋してもよい。本発明ポリマーは、グラフト(例えば無水マレイン酸(MAH)、シラン、もしくは他のグラフト剤の使用により)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化、または他の化学修飾などにより化学修飾もできる。
【0111】
定義
反する言及がない限り、文脈から暗黙に、または当分野の慣習により、全ての部および百分率は重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日現在認められているものである。合衆国特許実務のため、言及する任意の特許、特許出願または刊行物の内容は、とりわけ定義(本開示で具体的に規定されるいずれの定義とも矛盾しない程度に)および当分野の常識の開示に関して、全体として参照により組み込まれる(またはその等価な合衆国版がこのように参照により組み込まれる)。
【0112】
本開示の数値範囲は概算であるため、他に示さない限り、範囲外の値を含んでもよい。数値範囲は、任意の下値と任意の上値との間に少なくとも2単位の間隔があるという条件で、下値および上値からのあらゆる値ならびに両値を1単位きざみで含む。一例として、組成特性、物理特性または他の特性、例えば分子量、粘度、メルトインデックスなどが100から1,000までならば、全ての個々の値、例えば100、101、102等、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200等は明確に列挙されることが意図される。1未満の値を含む範囲または1より大きい小数(例えば、1.1、1.5等)を含む範囲については、1単位は適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の1桁の数を含む範囲(例えば、1から5)については、1単位は典型的に0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙される最低値と最高値の間の数値のあらゆる可能な組み合わせが本開示に明確に記載されているとみなすべきである。とりわけ密度、メルトインデックス、分子量、試薬量および工程条件について、数値範囲が本開示内に規定される。
【0113】
本明細書で用いる「組成物」という用語は2またはそれ以上の物質の組み合わせを意味する。本発明ポリマーに関して、組成物は少なくとも1つの他の物質、例えば添加剤、充填剤、他のポリマー、触媒などと組み合わせた本発明ポリマーである。
【0114】
用いる「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は2またはそれ以上のポリマーの完全物理的混合物(即ち、反応しない)を意味する。ブレンドは混和性(分子レベルで相分離しない)であってもなくてもよい。ブレンドは分相であってもなくてもよい。ブレンドは、透過型電子顕微鏡、光散乱、x線散乱、および当分野で公知の他の方法から測定された1またはそれ以上のドメイン配置を含んでも含まなくてもよい。ブレンドは2またはそれ以上のポリマーをマクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂またはコンパウンディング)またはミクロレベル(例えば、同一反応器内で同時に形成する)で物理的に混合することにより達成され得る。
【0115】
「ポリマー」という用語は、同種または異なる種類に関わらず、モノマーの重合により調製される化合物を指す。従って、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造内に取り込まれ得るという了解の下で1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指す)または以下に定義する「インターポリマー」という用語を包含する。
【0116】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指す)および2より多い異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0117】
「エチレン系ポリマー」または「エチレンポリマー」の用語は、ポリマーの重量に基づいて大部分量の重合エチレンを含むポリマーを指し、少なくとも1つのコモノマーを任意で含んでもよい。
【0118】
「エチレン系インターポリマー」または「エチレンインターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて大部分量の重合エチレンを含むインターポリマーを指し、少なくとも1つのコモノマーを含む。
【0119】
「反応器帯」という用語は、開始剤システムの投入により、フリーラジカル重合反応が起こる反応器の区分を指し、該帯内の条件でラジカルに分解できる。反応帯は、別個の反応器ユニットまたは大きな反応器ユニットの一部であり得る。管型栓流反応器ユニットにおいて、新たな開始剤が投入される各々の帯が始まる。オートクレーブ反応器ユニットにおいて、帯は分離装置、例えばバッフルにより形成され、逆混合を防止する。各反応器帯はそれ自体の開始剤供給を有する一方、エチレン、コモノマー、連鎖移動剤および他の成分から成る供給は前の反応帯から移動し、ならびに/または新たに投入できる(混合される、または別個の成分として)。
【0120】
「帯反応生成物」という用語は、高圧条件下で(例えば100MPaより高い反応圧)フリーラジカル重合機構により製造されるエチレン系ポリマーを指す。分子間水素移動により、存在する不活性ポリマー分子は再開でき、元の(直鎖)ポリマー骨格に長鎖分枝(LCB)の形成をもたらす。反応器帯において、新たなポリマー分子が始まり、形成されるポリマー分子の一部は既存のポリマー分子にグラフトし長鎖分枝を形成する。帯反応生成物は反応器帯の端に存在するポリマーとして定義される。
【0121】
「重合条件」という用語は工程パラメータを指し、その条件下で、反応器帯に入る開始剤が少なくとも部分的にラジカルに分解し、重合を開始する。重合条件は、例えば圧力、温度、試薬およびポリマーの濃度、滞留時間および分布を含み、分子量分布およびポリマー構造に影響を及ぼす。ポリマー生成物に対する重合条件の影響は、S.Goto et al、参照番号1でよく説明されモデル化されている。
【0122】
「CTAシステム」という用語は、単独のCTAまたはCTAの混合物を含む。CTAシステムは、水素原子をラジカルを含む伸長ポリマー分子に転移できる構成要素を含み、これにより、ラジカルはCTA分子に転移され、次いで新たなポリマー鎖の始まりを開始できる。CTAはテロゲンまたはテロマーとしても公知である。本発明の好ましい実施形態において、それぞれのCTAシステムは単独のCTAを含む。
【0123】
「ハイパーコンプレッサーへの吸引」という用語は、1またはそれ以上の供給流を低圧から反応器圧にする反応器の前の最終コンプレッサーを指す。ハイパーコンプレッサーへの吸引はこのコンプレッサーの入口形状である。
【0124】
「ハイパーコンプレッサー排出」という用語はハイパーコンプレッサーの出口形状を指す。
【0125】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」などの用語は、それらの具体的な開示の有無に関わらず、任意の追加の構成要素、段階または手法の存在を排除する意図はない。いかなる疑いも回避するため、「含む(comprising)」の用語の使用を通して請求されるあらゆる方法は、反する言及がない限り、1またはそれ以上の追加段階、機器または構成要素部品、および/または材料を含み得る。対照的に、「基本的に〜から成る」という用語は、実施可能性に必須でないものを除いて、任意の続く列挙範囲から、任意の他の構成要素、段階または手法を排除する。「から成る」という用語は、具体的に記述または羅列されない任意の構成要素、段階または手法を排除する。「または」という用語は、他に言及されない限り、個々におよび任意の組み合わせで羅列する構成員を指す。
【0126】
「含む(containing)」という用語は、それらの具体的な開示の有無に関わらず、任意の追加の構成要素、段階または手法の存在を排除する意図はない。CTAシステムを含む反応帯に即して、「含む(containing)」という用語は、具体的に特定されない任意のCTAシステムの存在を排除する意図はない。
【0127】
試験方法
ポリマー試験方法
密度:密度測定用の試料はASTM D1928に従って用意する。試料は190℃および30,000psiで3分間、次いで21℃および207MPaで1分間加圧する。測定は試料加圧の1時間以内にASTM D792、方法Bを用いて行う。
【0128】
メルトインデックス:メルトインデックス、またはI(グラム/10分)はASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。I10は、ASTM D1238、条件190℃/10kg天秤皿で据え付けられたテンションローラ、およびステッパモータにより制御されるプルローラを用いて測定される。プラストマーは、天秤皿上のテンションローラ周囲に導かれ、プルローラ上に巻き付けられる前に他の滑車上に上昇する溶融ポリマー鎖を生成する。プルローラの速度はコンピュータで正確に制御される。溶融弾性は特定のドローダウン比(引き取り速度/ダイ出口速度)でテンションローラ上の力として決定される。該技術は熱可塑性および/または熱硬化性プラスチックに適用できる。
【0129】
溶融弾性:溶融弾性はDMELTシステムを用いて測定される。DMELTシステムは市販の可塑度計、カスタム加重試料を組み込んだデジタル天秤からなる。密度測定用の試料はASTM D1928に従って用意される。試料は190℃および30,000psiで3分間、次いで(21℃)および207MPaで1分間加圧する。測定は試料加圧の1時間以内にASTM D792、方法Bを用いて行う。
【0130】
溶融弾性の測定では、溶融ポリマー鎖は標準可塑度計(MP600押出可塑度計(Melt Indexer) System Installation & Operation Manual (#020011560), Tinius Olsen, 1065 Easton Road, Horsham, PA 19044-8009;参照番号13.6)バレルから一定温度(190℃)で標準ASTM D1238 MFRダイ(オリフィス高度(8.000±0.025mm)および直径(2.0955±0.005mm))により加重ピストンを用いて押し出される。押出物は一連の自由スピニングローラを経てステッパモータにより駆動するローラ上に引き出され(Stepper Motor and Controller Operating Manual, Oriental Motor USA Corporation, 2570 W. 237th Street, Torrance, CA 90505;参照番号13.7)、該ステッパモータは分析中の速度範囲に傾斜をつける。天秤(Excellence Plus XP Precision Balance Operating Instructions, Mettler Toledo, 1900 Polaris Parkway, Columbus, Ohio 43240;参照番号13.8)台を搭載したテンションローラで引き上げるポリマー鎖の力は、統合制御コンピュータにより記録される。獲得した力データの線形回帰から、最終の報告値は等速比(33.2)またはポリマー鎖速度対ダイ出口速度の歪度(Ln[速度比]=3.5)に基づいて決定する。分析結果はセンチニュートン(cN)の単位で報告する。
【0131】
トリプル検出器ゲル透過クロマトグラフィー(TDGPC):高温3Det−GPC分析は、145℃に設定されたアライアンスGPCV2000機器(Waters Corp.)で実施する。GPCの流速は1mL/分である。投入体積は218.5μLである。カラム装置は4つのMixed−Aカラム(20−μm粒子;7.5×300mm;Polymer Laboratories Ltd)から構成される。
【0132】
検出は、CH−センサーを備えたPolymer ChARのIR4検出器;l=488nmで操作する30−mWアルゴン・イオン・レーザーを備えたWyatt Technology Dawn DSP MALS検出器(Wyatt Technology Corp.,Santa Barbara,CA,USA);およびWaters3毛細管粘度検出器の使用により達成される。MALS検出器はTCB溶媒の散乱強度を測定することにより調整される。光ダイオードの規格化は、SRM 1483、32,100の重量平均分子量(Mw)および1.11の多分散性をもつ高密度ポリエチレンの投入により行われる。−0.104mL/mgの特定の屈折率増分(dn/dc)が、TCBのポリエチレンについて用いられる。
【0133】
従来のGPC校正は、580−7,500,000g/モル範囲の分子量をもつ20の限られたPS基準(Polymer Laboratories Ltd.)で行う。ポリスチレン基準のピーク分子量は、A=0.39、B=1で、
ポリエチレン=Ax(Mポリスチレン
を用いて、ポリエチレン分子量に変換される。Aの値は、115,000g/モルのMwをもつ直鎖ポリエチレンホモポリマーであるHDPE Dow 53494−38−4を用いて決定される。HDPE対照物質も、100%の質量回収(mass recovery)および1.873dL/gの固有粘度と仮定することにより、IR検出器および粘度計を調整するために用いられる。
【0134】
200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(Merck,Hohenbrunn,Germany)を含む蒸留「Baker Analyzed」−等級1,2,4−トリクロロベンゼン(J.T.Baker,Deventer,The Netherlands)は、試料調製用および3Det−GPC実験用の溶媒として使用する。HDPE SRM 1483はアメリカ国立標準技術研究所(Gaithersburg,MD,USA)から得られる。
【0135】
LDPE溶液は試料を穏やかにかき混ぜながら3時間160℃で溶解することにより調製する。PS標準は同一条件下で30分間溶解する。3Det−GPC実験の試料濃度は1.5mg/mLであり、ポリスチレン濃度は0.2mg/mLである。
【0136】
MALS検出器は、試料中のポリマーまたは粒子からの散乱シグナルを異なる散乱角θで測定する。基本的な光散乱方程式(M.Andersson,B.Wittgren,K.−G.Wahlund,Anal.Chem.75,4279(2003)から)は、
【数1】

として表せ、式中、Rθは過剰なレイリー比であり、Kは光学定数であり、とりわけ、特定の屈折率増分(dn/dc)に依存し、cは溶質濃度であり、Mは分子量であり、Rは旋回半径であり、ならびにlは入射光の波長である。光散乱データからの分子量および旋回半径の計算は、ゼロ角への外挿を要する。(P.J.Wyatt,Anal.Chim.Acta272,1(1993)も参照のこと)。これは、(Kc/Rθ1/2をsin(θ/2)の関数としていわゆるデバイプロットにプロットすることにより行われる。分子量は縦座標切片から、旋回半径は曲線の初期傾斜から算出できる。ジムおよびベリー(Zimm and Berry)法は全てのデータに用いられる。第2ビリアル係数はごく僅かであると推測される。固有粘度数は粘度および濃度検出器シグナルの両方から比粘度と濃度の比を各溶出片で得ることにより算出される。
【0137】
ASTRA4.72(Wyatt Technology Corp.)ソフトウェアは、IR検出器、粘度計、およびMALS検出器からのシグナルを収集するために用いられる。データ処理はハウス−リトン・マイクロソフト・エクセル・マクロス(house−written Microsoft EXCEL macros)で完了する。
【0138】
計算された分子量、および分子量分布(Mw/Mn)は、言及した1またはそれ以上のポリエチレン基準および0.104の屈折率濃度係数dn/dcから導き出された光散乱定数を用いて得られる。一般に、質量検出器応答および光散乱定数は、線形標準から約50,000ダルトンの過剰な分子量を用いて決定するべきである。粘度計の校正は、製造業者により記載される方法を用いて、または代わりにStandard Reference Materials(SRM)1475a、1482a、1483、または1484aなどの適切な線形標準の公表値を用いて遂行できる。クロマトグラフ濃度は対処する第2ウイルス係数効果を消去できるほど低いと推測される(分子量に及ぼす濃度効果)。
【0139】
フィルム試験条件
曇価:全曇価について測定する試料をサンプリングし、ASTM D1003に従って用意する。フィルムは以下の実験の節に記載されるように用意した。
【0140】
45°および60°光沢:45°および60°光沢はASTM D−2457により測定される。フィルムは以下の実験の節に記載されるように用意した。
【0141】
実験
Z1、Z2およびZiの計算
「反応器帯iにおけるCTA jの反応器帯モル濃度([CTA]ji)」は、「反応器帯1からiに新たに投入されるCTAの全モル量」を「反応器帯1からiに新たに投入されたエチレンの全モル量」で除したものとして定義される。この関係は以下に方程式Aで示す。
【数2】

(方程式A)
【0142】
方程式Aにおいて、j≧1であり、
【数3】

は、「i番目反応器帯に新たに投入されたj番目CTAのモル量」であり、
【数4】

は、「i番目反応器帯に新たに投入されたエチレンのモル量」である。
【0143】
「反応器帯iにおけるCTA(システム)の移動活性」は、「反応器帯における各CTAの反応器帯モル濃度の和」にその連鎖移動活性定数(Cs)を乗じたものとして定義される。連鎖移動活性定数(Cs)は、基準圧力(1360atm)および基準温度(130℃)での反応速度の比率Ks/Kpである。この関係は以下に方程式Bで示され、式中、ncompiは、反応器帯iにおけるCTAの総数である。
【数5】

(方程式B)
【0144】
従って、Z1/Zi比は以下に方程式Cで示される。
【数6】

(方程式C)
【0145】
幾つかの連鎖移動剤についての連鎖移動定数(Cs)値は以下に表Aで示し、130℃および1360atmでモーティマー(Mortimer)により導き出された連鎖移動定数(Cs)、例として連鎖移動剤を示す。
【表2】

参照番号2 G. Mortimer; Journal of Polymer Science: Part A-1; Chain transfer in ethylene polymerization; vol 4, p 881-900 (1966)
参照番号3 G. Mortimer; Journal of Polymer Science: Part A-1; Chain transfer in ethylene polymerization. Part Iv. Additional study at 1360 atm and 130℃; vol 8, p1513-1523 (1970)
参照番号4 G. Mortimer; Journal of Polymer Science: Part A-1; Chain transfer in ethylene polymerization. Part VII. Very reactive and depletable transfer agents; vol 10, p163-168 (1972)
【0146】
1つのみのCTAが全反応器システムで使用される場合、方程式BおよびCはそれぞれ方程式DおよびEに簡約する。
【数7】

(方程式D)
【数8】

(方程式E)
【0147】
4つの反応器帯はA A T Tとして使用設定される。反応器帯1はAであり、反応器帯2はAであり、反応器帯3はTであり、反応器帯4はTである。CTAは帯1および2に投入され、開始剤のみが帯3および4に投入されるが、典型的にいくらかのCTAは帯1および2から帯3および4に持ち越される。CTAは反応器帯3および4に添加されない。
【0148】
1つのみのCTAは、Csが方程式から脱落することを示唆するため、方程式Eは、以下に示すように、大半の実施例に用いられる。
【数9】

【0149】
さらに、AC/管反応システム(全実施例を作成するために用いるシステムである)の管部分は反応器帯3および4とみなすことができ、両帯はさらに任意の新たに投入されるエチレンまたはCTAを受け入れない。これは方程式Eが以下に示すようになることを意味する。つまり、Z1/Z4=Z1/Z3=Z1/Z2。
【数10】

【0150】
さらに、全ての実施例について:
【数11】

であるため、関係は以下に示すようにさらに簡約される。
【数12】

重合およびポリマー
比較例1:補給MEK(CTA)は両オートクレーブ反応帯(1および2)に等しく分けられる。
反応圧:2450バール
オートクレーブ(AC)滞留時間:55秒
管滞留時間:80秒
【0151】
Tert−ブチルペルオキシパーピバレート(TBPV)は各オートクレーブ反応器帯のフリーラジカル開始剤として投入される。管型反応器の2つの反応器帯の初めに、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)の混合物は追加のフリーラジカル開始剤として投入される。
温度条件;
オートクレーブ最上帯(50%エチレン):入口:37℃;対照185℃
オートクレーブ底帯(50%エチレン):入口:35℃;対照185℃
管第1帯対照:274℃
管第2帯対照:274℃
【0152】
メチルエチルケトン(MEK)は連鎖移動剤として使用される。再利用MEK(反応器の部分変換後、低圧再利用区分の部分濃縮および/または部分パージ)は両反応器のエチレン供給流および両AC反応帯に等しく分けられる。新たな補給MEK(MIを制御/変更するためにMEK濃度を維持する)は両AC反応帯に等しく分けられる。
【0153】
生成物サンプリング
ポリマーのレオロジー結果を測定するために試料を採取し、1つの試料(1b)は押出被覆およびインフレーションフィルム評価のため採取する。結果は表1に報告する。
【表3】

本発明実施例2:補給MEK(CTA)はオートクレーブ最上反応帯に送られる。
反応器圧:2450バール
オートクレーブ滞留時間:55秒
管滞留時間:80秒
【0154】
Tert−ブチルペルオキシパーピバレート(TBPV)は、各オートクレーブ反応器帯のフリーラジカル開始剤として投入される。管型反応器の2つの反応器帯の初めに、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)の混合物は、追加のフリーラジカル開始剤として投入される。
温度条件:
オートクレーブ最上帯(50%未使用エチレン):入口:37℃;対照185℃
オートクレーブ底帯(50%未使用エチレン):入口:35℃;対照185℃
管第1帯対照:274℃
管第2帯対照:274℃
【0155】
メチルエチルケトン(MEK)は連鎖移動剤として使用される。再利用MEK(反応器の部分変換後、低圧再利用区分の部分濃縮およびまたは部分パージ)は両反応器のエチレン供給流および両AC反応帯に等しく分けられる。新たな補給MEK(MIを制御するためにMEK濃度を維持する)はオートクレーブ最上帯に送られるエチレン供給流に供給される。
【0156】
生成物サンプリング
ポリマーのレオロジー応答を測定するために試料を採取し、1つの試料(2c)は押出被覆およびインフレーションフィルム評価のため採取する。結果は表2に報告する。
【表4】

比較例3:補給プロピレン(CTA)は両オートクレーブ反応帯(1および2)に等しく分けられる。
反応器圧:2000バール
オートクレーブ(AC)滞留時間:55秒
管滞留時間:80秒
【0157】
Tert−ブチルペルオキシパーピバレート(TBPV)は、各オートクレーブ反応器帯のフリーラジカル開始剤として投入される。管型反応器の2つの反応器帯の初めに、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)の混合物は、追加のフリーラジカル開始剤として投入される。
温度条件:
オートクレーブ最上帯(50%未使用エチレン):入口:40℃;対照202℃
オートクレーブ底帯(50%未使用エチレン):入口:36℃;対照236℃
管第1帯対照:275℃
管第2帯対照:275℃
【0158】
プロピレンは連鎖移動剤として使用される。再利用プロピレン(反応器の部分変換後、低圧再利用区分の部分濃縮および/または部分パージ)は両反応器の補給エチレン供給流および両AC反応帯に等しく分けられる。新たな補給プロピレン(MIを制御/変更するためにプロピレン濃度を維持する)は両AC反応帯に等しく分けられる。
生成物サンプリング
【0159】
レオロジー応答およびインフレーションフィルム評価を測定するために試料を採取する。結果は表3に報告する。
【表5】

本発明実施例4:補給プロピレン(CTA)はオートクレーブ底反応帯に送られる。
反応器圧:2000バール
オートクレーブ滞留時間:55秒
管滞留時間:80秒
【0160】
Tert−ブチルペルオキシパーピバレート(TBPV)は、各オートクレーブ反応器帯のフリーラジカル開始剤として投入される。管型反応器の2つの反応器帯の初めに、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)の混合物は、追加のフリーラジカル開始剤として投入される。
温度条件:
オートクレーブ最上帯(50%未使用エチレン):入口:40℃;対照204℃
オートクレーブ底帯(50%未使用エチレン):入口:36℃;対照237℃
管第1帯対照:276℃
管第2帯対照:275℃
【0161】
プロピレンは連鎖移動剤として使用される。再利用プロピレン(反応器の部分変換後、低圧再利用区分の部分濃縮および/または部分パージ)は両反応器の補給エチレン供給流および両AC反応帯に等しく分けられる。新たな補給プロピレン(MIを制御するためにプロピレン濃度を維持する)はオートクレーブ底帯に送られるエチレン供給流に供給される。
【0162】
生成物サンプリング
レオロジー応答およびインフレーションフィルム評価を測定するために試料を採取する。結果は表4に報告する。
【表6】

【表7】

【0163】
ポリマーおよびフィルム
それぞれのフィルムは表6に示される工程パラメータを用いて形成した。本発明フィルム1は実施例2cのポリマー試料から製造した。
本発明フィルム2は実施例4のポリマー試料から製造した。
【0164】
比較フィルム1は比較例1のポリマー試料から製造した。
【0165】
比較フィルム2は比較例3のポリマー試料から製造した。
【0166】
フィルムは全て「直径25mmのダイ」に接続する「25/1クロム被覆スクリュー(圧縮比3/1;供給帯10D;移行帯3D;計量帯12D)」を用いて製造される。内部バブル冷却は使用しない。インフレーションフィルムを生産するために用いる一般的なインフレーション・フィルム・パラメータは表8に示す。全ての実施例および比較例に同一条件を用いた。温度プロファイルのバレル1はペレットホッパーに最も近く、続いてバレル2、続いてバレル3、続いてバレル4である。フィルムの厚さはマイクロメータで測定した。
【表8】

【0167】
フィルムおよびそれらの光学特性はそれぞれ以下の表7および表8ならびに図2〜3に示す。全ての平均および標準偏差は1試料当たり10回の測定に基づく。
【表9】

【表10】

【0168】
ポリマーおよび押出被覆
押出被覆は比較例1bおよび実施例2cで実施した。比較例3および実施例4のメルトインデックスは良好な被覆操作には低すぎる。被覆はそれぞれ下記の条件に従って形成した。樹脂は、320度の押出機温度で、0.7mmの公称ダイギャップを備えたコートハンガー型押出ダイから70g/mクラフトペーパー上に25g/mの量で押出し、40ミクロン・アルミニウム・シートの工程を追加した一部においては、250mmの空隙を用いて、1分当たりライン速度(メートル)を変更して100m/分のライン速度だが、空隙を変更して、15から20℃の温度で維持するつや消し冷却ロールを用いた。
【0169】
本発明被覆1は実施例2cのポリマー試料から製造した。
【0170】
比較被覆1は比較例1bのポリマー試料から製造した。被覆結果は以下の表9に示す。ドローダウンは安定な被覆中に達成可能な最高ライン速度である。ネックインは、固定ライン速度(100m/分)のダイ幅と比較したウェブ幅の収縮である。より低いネックインおよびより高いドローダウンは双方ともに非常に望ましい。より低いネックインは、ウェブのより優れた寸法安定性を意味し、ひいては基質上へのより優れた被覆制御を提供する。より高いドローダウンはより速いライン速度を意味し、ひいてはより優れた生産性を意味する。
【表11】

【0171】
本発明は先の好ましい実施形態の記載を通して若干詳細に記載したが、この詳細は説明が主目的である。下記の特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数の変形および修飾が当業者によって為され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系ポリマーを形成するための高圧重合法であって、
A.エチレンを含み、任意で連鎖移動剤システム(CTAシステム)を含む第1供給を第1オートクレーブ反応器帯に投入し、第1帯反応生成物を生産する重合条件で操作する段階であって、前記第1反応器帯の前記CTAシステムが移動活性Z1を有する段階;ならびに
B.(1)前記第1帯反応生成物の少なくとも一部を、第2オートクレーブ反応器帯または管型反応器帯から選択される第2反応器帯に移動させ、重合条件で操作する段階、ならびに任意で(2)前記第2反応器帯が移動活性Z2を有するCTAシステムを含むという条件で、第2供給を前記第2反応器帯に新たに投入し、第2帯反応生成物を生産する段階
を、Z1/Z2の比率が1未満であるという条件で含む方法。
【請求項2】
(i番目−1)反応帯から(i番目)反応帯で生産された帯反応生成物を移動する1またはそれ以上の段階であって、式中、3≦i≦nおよびn≧3であり、各帯が重合条件で操作する段階、ならびに、全i<nおよびZ1<ZnではZ1/Zi比≦1という条件で、CTAシステムを含む(i番目)供給を(i番目)反応帯に任意で添加する段階であって、前記(i番目)反応帯のCTAシステムがZiの移動活性を有する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2またはi番目の供給は、アクリレート、シラン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸、および一酸化炭素から成る群から選択される少なくとも1つのコモノマーを含む、請求項1から2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記反応器帯への少なくとも1つの前記供給は、前記他の反応器帯への少なくとも1つのCTAと異なる前記CTAを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各々のCTAが独立してオレフィン、アルデヒド、ケトン、アルコール、飽和炭化水素、エーテル、チオール、ホスフィン、アミノ、アミン、アミド、エステル、およびイソシアネートの1つである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのCTAが0.001より大きい連鎖移動定数Csを有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記反応器帯のそれぞれの前記重合条件は、独立して、100℃以上の温度および100MPa以上の圧力を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記反応器帯のそれぞれの前記重合条件は、独立して、400℃未満の温度および500MPa未満の圧力を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
全i<nでは前記Z1/Zi比≦1であり、Z1/Zn<0.95である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
全i<nでは前記Z1/Zi比≦1であり、Z1/Zn<0.90である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
全i<nでは前記Z1/Zi比≦1であり、前記Z1/Zn比≧0である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法により製造されるエチレン系ポリマー。
【請求項13】
下記の特性:(1)センチニュートンで(8.1x(メルトインデックス)−0.98)以下の溶融弾性、3g/10分より大きいメルトインデックス、および0.926から0.935g/cmの密度を含むエチレン系ポリマー。
【請求項14】
前記溶融弾性がセンチニュートンで(9.3x(メルトインデックス)−0.98)以下である、請求項13に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項15】
請求項12から14に記載のエチレン系ポリマーを含む組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む製品。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含むフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514440(P2013−514440A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544703(P2012−544703)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060244
【国際公開番号】WO2011/075465
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】