説明

低揮発分燃料用バーナ装置

【課題】火炎の高温ガスをチャンバ内に誘引して内部再循環流の温度を高め、これにより低揮発分燃料の温度を高めて揮発成分の放出を促進させることにより、低揮発分燃料であっても自立燃焼できるようにする。
【解決手段】低揮発分燃料Wと共に1次燃焼用空気A1を噴出する第1噴出部4がチャンバ2の基端部に偏心配置され、第1噴出部4から噴出する1次燃焼用空気A1によってチャンバ2内に内部再循環流R1が形成され、チャンバ2の周囲には2次燃焼用空気A2を噴出する第2噴出部6が配置されて、チャンバ2の先端前方に火炎Xを形成するようにした低揮発分燃料用バーナ装置であって、チャンバ2の先端に、先端前方へ向けて拡径し、2次燃焼用空気A2の噴出によって生じる圧力低下部Yにより火炎Xの高温ガスをチャンバ2内の内部再循環流R1に誘引させるようにしたスカート8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低揮発分燃料用バーナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粉炭焚ボイラ等に用いられる微粉炭燃焼用バーナ装置は、1次燃焼用空気と共に微粉炭を噴出し、且つ1次燃焼用空気の周囲に旋回するように2次燃焼用空気を噴出して微粉炭に着火することにより火炎を形成し、旋回する2次燃焼用空気によって火炎の中心に低速あるいは逆流領域をもつ外部再循環流を形成することにより火炎を安定化して燃焼するようにしている。
【0003】
ところで、微粉炭燃焼用バーナ装置においては、通常、燃料として瀝青炭が用いられている。そして、この瀝青炭を微粉化した微粉炭は、加熱されることによって揮発成分が放出され、まずこの揮発成分に着火が行われ、その後低揮発分の微粉炭そのものに着火して燃焼が行われる。
【0004】
しかしながら、近年では、無煙炭、半無煙炭あるいはオイルコークス等の低揮発分燃料をバーナ装置で燃焼させる要求が高まってきており、このような低揮発分燃料を、従来の微粉炭燃焼用バーナ装置で燃焼しようとしても、自立燃焼させることは困難であった。これは、低揮発分燃料は瀝青炭と比較して放出される揮発成分の量が少なく、高い温度でないと揮発成分を放出せず、着火に十分な濃度の可燃性混合気を形成できないことに起因していた。
【0005】
このように、揮発成分の十分な放出が行われないと、噴出口から低揮発分燃料が噴出されてから着火するまでに時間がかかることになり、火炎の根元が噴出口から離れたブラックスカートを生じることになる。このブラックスカートは、ボイラの炉内温度よりも低い温度の2次燃焼用空気が低揮発分燃料を含む1次燃焼用空気と早期に混合されてしまい、このために、低揮発分燃料の温度が低下されると共に低揮発分燃料濃度が希釈されることによって生じ、このブラックスカートが発生すると燃焼安定性が悪化し、失火する場合も生じていた。
【0006】
従って、噴出口から噴出された直後の低揮発分燃料を早期に加熱して高温に保持することができれば、噴出直後の低揮発分燃料の温度を高めて揮発分の放出を促進させることが可能であるために、安定燃焼させる効果が期待できる。このために、低揮発分燃料を1次燃焼用空気と共にチャンバ内に偏心して噴出することによってチャンバ内に内部再循環流を形成し、この内部再循環流により火炎の高温ガスをチャンバ内に引き込むようにした燃焼器が特許文献1に示されている。
【0007】
又、燃料及び酸化剤を吐出するミキサ吐出口をチャンバ内に偏心配置して、燃料・酸化剤をチャンバ内で再循環させて高温の燃焼ガスをミキサ吐出口に引き戻すことは特許文献2に示されている。
【特許文献1】中国実用新案出願特許付与公報2273373号
【特許文献2】公表特許公報10−501056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び2に示される燃焼器では、バーナの前方に外部再循環流を形成させて、この外部再循環流の高温ガスをチャンバ内に効果的に引き込んで内部再循環流の温度を高めることが重要となるが、特許文献1及び2に示すように、低揮発分燃料を含む1次燃焼用空気を噴出する噴出口をチャンバに対して偏心して設けたのみの構成では、外側の2次燃焼用空気の直進流によってチャンバ内の内部再循環流がチャンバ出口で壊されてしまうことがあり、しかもチャンバ外の外部再循環流も安定して形成されなくなる問題があるため、外部再循環流の高温ガスをチャンバ内に効果的に誘引することが困難となり、よって噴出口から噴出された直後の低揮発分燃料を早期に加熱して揮発成分を十分に放出させることはできず、低揮発分燃料を良好に安定燃焼させることができないという問題を有していた。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなしたもので、火炎の高温ガスをチャンバ内に誘引して内部再循環流の温度を高め、これにより低揮発分燃料の温度を高めて揮発成分の放出を促進させることにより、低揮発分燃料であっても自立燃焼できるようにした低揮発分燃料用バーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の低揮発分燃料用バーナ装置では、低揮発分燃料と共に1次燃焼用空気を噴出する第1噴出部がチャンバの基端部に偏心して配置され、前記第1噴出部から噴出する1次燃焼用空気によってチャンバ内に内部再循環流が形成され、前記チャンバの周囲には2次燃焼用空気を噴出する第2噴出部が配置されて、チャンバの先端前方に火炎を形成するようにした低揮発分燃料用バーナ装置であって、前記チャンバの先端に、先端前方へ向けて拡径し、2次燃焼用空気の噴出によって生じる圧力低下部により火炎の高温ガスをチャンバ内の内部再循環流に誘引させるようにしたスカートを設けたことを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する本発明の低揮発分燃料用バーナ装置によれば、チャンバの先端に、噴出方向前方へ向けて拡径したスカートを設けたことにより、チャンバ内に内部再循環流が安定して形成されると共に、チャンバ外に外部再循環流が安定して形成されるようになる。更に、拡径したスカートに案内されて噴出する2次燃焼用空気によってスカート内近傍に圧力低下部が形成されるため、外部再循環流による火炎の高温ガスがチャンバ内の内部再循環流に効果的に誘引され、よってチャンバ内の内部再循環流が高温化されるため、第1噴出部から噴出された直後の低揮発分燃料は高温の内部再循環流により早期に加熱されて揮発成分を十分に放出するので、低揮発分燃料であっても良好な可燃性混合気を生じさせて自立燃焼が達成できるようになる。
【0012】
上記低揮発分燃料用バーナ装置において、前記第2噴出部から噴出する2次燃焼用空気に旋回を与えるための可変旋回羽根を備えることは好ましい。
【0013】
又、上記低揮発分燃料用バーナ装置において、前記第2噴出部に、前記チャンバの先端に備えたスカートと同等角度で拡径するスロートテーパ部を形成することは好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の低揮発分燃料用バーナ装置によれば、チャンバの先端に、噴出方向前方へ向けて拡径したスカートを設けたので、チャンバ内に安定した内部再循環流が形成されると共に、チャンバ外に安定した外部再循環流が形成されるようになり、更に、2次燃焼用空気が周方向外方へ噴出されることにより、スカート内近傍に圧力低下部が形成されて外部再循環流による火炎の高温ガスがチャンバ内の内部再循環流に効果的に誘引され、これによりチャンバ内の内部再循環流が高温化されるため、第1噴出部から噴出された直後の低揮発分燃料は高温の内部再循環流により早期に加熱されて揮発成分を十分に放出するので、低揮発分燃料であっても良好な可燃性混合気を生じさせて自立燃焼が達成できるようになる優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る低揮発分燃料用バーナ装置の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明の低揮発分燃料用バーナ装置の概略構成を模式的に示した断面図であり、図2は図1のII−II方向矢視図である。
【0017】
本発明の低揮発分燃料用バーナ装置1は、例えば、微粉炭焚ボイラ等の火炉に複数設置されるものであり、基端が閉塞されて先端が開口したチャンバ2をバーナスロート3と同芯に設けている。チャンバ2の閉塞された一端の底部には、低揮発分燃料Wと共に1次燃焼用空気A1を噴出する第1噴出部4を、チャンバ2の断面中心から偏心した位置に接続している。チャンバ2は、第1噴出部4から1次燃焼用空気A1と共に噴出される低揮発分燃料Wが着火可能な温度にまで加温されるようにするための部屋であり、前記第1噴出部4からの1次燃焼用空気A1を、チャンバ2内に偏心して高速で噴出すると、チャンバ2内に噴出方向とは逆のガスを引戻す力Fが発生することによって内部再循環流R1が形成される。そして、前記第1噴出部4からチャンバ2内に噴出され、更にチャンバ2の先端から噴出される低揮発分燃料Wは噴出される間に着火されて火炎X(図3参照)を形成するようになっている。低揮発分燃料用バーナ装置1では、例えばオイル焚によってボイラ内部温度を所定温度に高めた後、低揮発分燃料Wの供給に切り替えることによって火炎Xを保持するようにしている。
【0018】
又、前記チャンバ2に配置した第1噴出部4が偏心した方向(図1では下側)に対して反対方向(図1では上側)に偏心した位置には温度調整用空気A3を噴出する温度調整用空気噴出部5を配置している。この温度調整用空気噴出部5は温度調整用空気A3をチャンバ2内に供給することによって、チャンバ2内の温度が過熱されるのを防止している。
【0019】
更に、前記チャンバ2の周囲とバーナスロート3との間には2次燃焼用空気A2を供給するための第2噴出部6を形成している。この第2噴出部6の上流には可変旋回羽根7(エアレジスタベーン)が設けてあり、該可変旋回羽根7で旋回させた2次燃焼用空気A2は前記チャンバ2を包囲するように噴出させている。そして、前記可変旋回羽根7は羽根の回動量(角度)を変化させることによって、旋回流の強さを調節できるようにしている。尚、2次燃焼用空気A2に旋回流を与えて供給することは従来から実施されているので、可変旋回羽根7の構成及び配置位置等には従来の種々の技術が適用できる。
【0020】
上記低揮発分燃料用バーナ装置1において、前記チャンバ2の先端(噴出側端)に、噴出方向前方へ向けて拡径したスカート8を固定する。
【0021】
スカート8は、2次燃焼用空気A2の吹き出しによって内部再循環流R1が壊される問題を防止し、且つ低揮発分燃料Wが着火される以前に1次燃焼用空気A1と2次燃焼用空気A2が混合されるのを防止し、更に、2次燃焼用空気A2の憤出を外側に向かわせることで外部再循環流R2が安定して形成されるようにするためのものであり、従って、スカート8は所定の拡がり角度と長さとを有している必要があり、スカート8の拡径の角度α1は10°〜45゜であることが好ましく、又、スカート8の長さLはバーナスロート3の厚さTの5%以上、即ち、例えば厚さTが600mmのバーナスロート3の場合では拡径したスカート8の長さLは30mm以上であることが好ましい。
【0022】
更に、前記第2噴出部6には、前記スカート8の拡径した角度α1と同等角度α2で拡径したスロートテーパ部9を形成している。
【0023】
次に、上記構成とした本発明の低揮発分燃料用バーナ装置1の動作について説明する。
【0024】
まず、第1噴出部4から1次燃焼用空気A1と共に低揮発分燃料Wを噴出すると、噴出された1次燃焼用空気A1と低揮発分燃料Wは、チャンバ2内を図1の紙面右側から左側に向かって移動するが、ここで、第1噴出部4はチャンバ2の中心に対して偏心した位置に配置しているため、第1噴出部4から噴出した1次燃焼用空気A1がチャンバ2内を直線状に流れることによって、図1に示すように、チャンバ2内にガスを引戻す力Fが発生し、これによって内部再循環流R1が形成される。
【0025】
この時、例えば円筒状のチャンバ2を設けたのみの構成では、チャンバ2の外側を流れる2次燃焼用空気A2の直進流によってチャンバ2内の内部再循環流R1が壊されてしまうことがあり、しかもチャンバ2前方の外部再循環流R2も安定して形成されなくなる問題があり、従ってチャンバ2出口に圧力が低下する部分を安定して形成することができないために、外部再循環流R2の高温ガスをチャンバ2内の内部再循環流R1に誘引して内部再循環流R1を高温化させることはできない。
【0026】
尚、低揮発分燃料用バーナ装置1にて燃焼することによって形成される火炎Xの挙動は非常に微妙であり、僅かな形状の変化等によりその挙動は大きく変化することが知られている。
【0027】
そこで、前記したように、チャンバ2の先端(噴出側端部)に噴出方向前方へ向けて拡径したスカート8を設けたことにより、図3に示す如く、2次燃焼用空気A2が周方向外側へ向かうために2次燃焼用空気A2の直線状の流れによってチャンバ2内の内部再循環流R1が壊される問題が防止され、内部再循環流R1が安定して形成されると共に、旋回しながら外側に拡径する2次燃焼用空気A2の流れによって外部再循環流R2も安定して形成されるようになる。しかも、2次燃焼用空気A2の拡径した流れによってスカート8内近傍に圧力低下部Yが形成されるようになるため、この圧力低下部Yにより外部再循環流R2による火炎Xの高温ガスがチャンバ2内の内部再循環流R1の引戻す力Fによって効果的に誘引されるようになる。
【0028】
これにより、高温ガスによって内部再循環流R1の1次燃焼用空気A1が高温化されるため、第1噴出部4から噴出された直後の低揮発分燃料Wは高温の内部再循環流R1により早期に加熱され、これによって揮発成分が十分に放出されるので、低揮発分燃料であっても良好な可燃性混合気を生じるようになって自立燃焼が達成されるようになる。
【0029】
なお、上記において、火炎X内部の高温ガスを効率的にチャンバ2内に引き込むためには、火炎Xの高温ガスが循環する外部再循環流R2の領域と内部再循環流R1の領域とは一部で重なり合った状態となっている。
【0030】
なお、上記においてチャンバ2内の温度が過熱された場合には、温度調整用空気噴出部5から温度調整用空気A3をチャンバ2内に供給することによって、チャンバ2内の過熱を防止することができる。
【0031】
上記したように、チャンバ2内において高温ガスによって加熱された低揮発分燃料Wからは十分な量の揮発成分が放出されるようになるため、チャンバ2内に噴出された低揮発分燃料Wは、噴出後直ちに着火して燃焼安定性が向上するために、無煙炭、半無煙炭あるいはオイルコークス等の低揮発分燃料Wであっても自立燃焼することが可能となる。
【0032】
上記したように、火炎Xの高温ガスがチャンバ2内の内部再循環流R1の引戻す力Fによって良好に誘引されて低揮発分燃料Wからより多くの揮発成分を放出させると共に、多くの窒素成分を放出させることができ、しかも外部再循環流R2により火炎Xの強い還元領域を形成できるので、発生するNOxの低減化を図ることが可能となる。
【0033】
なお、本発明の低揮発分燃料用バーナ装置は、低揮発分燃料及び1次燃焼用空気を噴出する噴出口をチャンバに対して偏心させる偏心方法には限定されないこと、2次燃焼用空気に旋回流を与える方法には限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の低揮発分燃料用バーナ装置の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】本発明の低揮発分燃料用バーナ装置の作動を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 低揮発分燃料用バーナ装置
2 チャンバ
3 バーナスロート
4 第1噴出部
6 第2噴出部
7 可変旋回羽根
8 スカート
9 スロートテーパ部
A1 1次燃焼用空気
A2 2次燃焼用空気
W 低揮発分燃料
R1 内部再循環流
R2 外部再循環流
X 火炎
Y 圧力低下部
α1 角度
α2 同等角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低揮発分燃料と共に1次燃焼用空気を噴出する第1噴出部がチャンバの基端部に偏心して配置され、前記第1噴出部から噴出する1次燃焼用空気によってチャンバ内に内部再循環流が形成され、前記チャンバの周囲には2次燃焼用空気を噴出する第2噴出部が配置されて、チャンバの先端前方に火炎を形成するようにした低揮発分燃料用バーナ装置であって、前記チャンバの先端に、先端前方へ向けて拡径し、2次燃焼用空気の噴出によって生じる圧力低下部により火炎の高温ガスをチャンバ内の内部再循環流に誘引させるようにしたスカートを設けたことを特徴とする低揮発分燃料用バーナ装置。
【請求項2】
前記第2噴出部から噴出する2次燃焼用空気に旋回を与えるための可変旋回羽根を備えたことを特徴とする請求項1に記載の低揮発分燃料用バーナ装置。
【請求項3】
前記第2噴出部に、前記チャンバの先端に備えたスカートと同等角度で拡径するスロートテーパ部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の低揮発分燃料用バーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−138901(P2008−138901A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323452(P2006−323452)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実用化開発/高温空気微粉炭燃焼ボイラの実用化開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】