説明

低温で酸化亜鉛を堆積させる方法およびそれにより形成される生成物

【課題】ガラスならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料上に、優れた光学的および電気的性質を有するn型およびp型酸化亜鉛系透明導電性酸化物(TCO)を低温で堆積させる、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)プロセスを提供する。
【解決手段】BまたはFでドープすることによりn型ZnOを、窒素でドープすることによりp型ZnOを堆積させるPECVDプロセス。ガラスならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料上に、TCO用途に優れた光学的および電気的性質。前記プロセスは、揮発性亜鉛化合物、希釈ガスとしてのアルゴンおよび/またはヘリウム、酸化体としての二酸化炭素およびドーパントまたは反応物の混合物を利用して、所望のZnO系TCOを堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のジエチル亜鉛(DEZ)などの揮発性有機金属亜鉛化合物、少なくとも1種のアルゴンまたはヘリウムなどの希釈ガス、少なくとも1種の二酸化炭素などの酸化体および通常少なくとも1種の揮発性ドーパントまたは反応物を含んでなる混合物を利用することによる、低温での(例えば、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)により)n型およびp型ZnO系透明導電性酸化物(TCO)の堆積に関する。比較的低い堆積温度を利用することにより、本発明のプロセスは、ガラスならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料上に、ドープされたZnO、他の元素と同時堆積(co−deposited)されたZnO、酸化物形態の他の元素と合金になっているZnを堆積させることができる。本発明のプロセスは、フラットパネルディスプレイなどの多くの用途に使用される比較的堅く壊れやすいガラス基板上への堆積を可能にする、ドープされ、同時堆積され、または合金となったZnOの望ましい電気的および光学的性質を達成する。本発明のプロセスは、ガラス基板を、比較的柔軟性があり耐久性のあるプラスティックまたはポリマー基板へ代えることを可能にもする。
【背景技術】
【0002】
未ドープのZnOは、スパッタリングおよびイオンプレーティングなどの物理蒸着技術により低温で広範囲の基板上に堆積されてきた。未ドープのZnOは、有機金属亜鉛化合物と酸素、N2OまたはCO2の混合物を利用し、PECVDにより低温で基板上に堆積もできる。
【0003】
Al、Ga、Tl、Y、ScまたはInなどの3族元素およびGe、In、Sn、Ti、Zr、PbまたはHfなどの4族元素と同時堆積されたn型ZnOフィルムおよびSb、P、As、Bi、V、NbまたはTaなどの5族元素の酸化物を含むp型ZnOフィルムなどのドープされたZnOフィルムは、スパッタリングおよびイオンプレーティングなどの物理蒸着技術により、低温で広範囲の基板上に堆積されてきた。上述の元素と同時堆積されたZnOフィルムは、有用な電気的および光学的性質を有することが示されてきた。しかし、従来の物理蒸着技術により堆積されたドープされたZnOフィルムの成長速度は効果的でない。
【0004】
良好な電気的および光学的性質を持つ、BまたはAlによりドープされた酸化亜鉛または他の金属の酸化物と混合されているZnOは、揮発性亜鉛化合物、ドーパントとしてのホウ素化合物および酸化体としての水、酸素または亜酸化窒素(N2O)の混合物を利用し、PECVDにより低温で堆積されてきた。有機亜鉛錯体(例えば、DEZ)が、水蒸気、酸素またはN2Oのいずれかと混合されると、錯体は即時に固体を形成し、それによりフィードラインおよびZnOにより堆積されるべき基板を汚染する。ジエチル亜鉛またはジメチル亜鉛などの揮発性亜鉛化合物は、堆積温度よりはるか低温で水蒸気、酸素またはN2Oと激しく反応するので、反応物は、別なラインにより堆積チャンバーに導入される。別なフィードラインによる反応物の導入は、混合の均質性の達成および基板への反応物の均一な送達を、不可能でないにしても困難にするので、ドープされたZnOまたは他の金属の酸化物と混合されているZnOを、持続的に均一に良好な品質で堆積させることが困難である。このため、プロセスが、ドープされたZnOまたは他の金属の酸化物と混合されているZnOを大面積基板上に堆積させることもできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温でTCO用途向けの低抵抗性のドープされたZnOを堆積させるのに好適なプロセスの必要性が当分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1種のジエチル亜鉛(DEZ)などの揮発性有機金属亜鉛化合物、少なくとも1種のアルゴンまたはヘリウムなどの希釈ガス、少なくとも1種の二酸化炭素などの酸化体および通常少なくとも1種の揮発性ドーパントまたは反応物を含んでなる組み合わせまたは混合物を利用して、PECVDにより低温で、望ましい電気的および光学的性質を有するn型およびp型ZnO系TCOを堆積させる方法を提供することにより、従来プロセスに関連する問題を解決する。本発明は、低温(例えば、約20℃から約100℃)で互いに反応しない反応物を利用することにより、従来法が有する問題を解決する。したがって、反応物は、堆積チャンバーへの導入前に組み合わせまたは混合でき、それにより、不均一堆積、堆積の一貫性および比較的大きな面積上へフィルム、層またはコーティングを堆積させるためのプロセスの拡大に関連する問題を回避することができる。
【0007】
本発明の1態様は、ホウ素またはフッ素でドープされたZnOフィルムの形成に関する。
【0008】
本発明の他の態様において、反応性組成物および反応チャンバーまたは環境は、水および酸素の少なくとも片方を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、約100ppm未満、通常約10ppm未満、標準的には約1ppm未満の水または酸素が反応混合物中に存在することを意味する。
【0009】
本発明の他の態様において、反応性組成物中のCO2対DEZの比は、約3より大きい(例えば、約10.0より大きいなど、約5.0より大きい)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、低い電気抵抗または高い導電率、高い赤外線反射率および高い可視光透過率を有する酸化亜鉛フィルムに関する。これらの性質のため、そのような酸化亜鉛薄膜は、省エネ窓(energy efficient window)、太陽電池、フラットパネルディスプレイおよび他のオプトエレクトロニクス装置に透明導電性酸化物(TCO)として使用できる。本発明は、フラットパネルディスプレイに現在使用されているインジウムスズ酸化物(ITO)TCOによりコーティングされている堅く壊れやすいガラス基板を、プラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料でできており、ドープされたZnOによりコーティングされている柔軟な基板に代えることにも関する。
【0011】
本発明のプロセスは、周囲温度で互いに反応しない成分を有する気体状フィード混合物または反応性組成物を利用する。結果として、本発明のプロセスは、(1)堆積チャンバー外で反応物を混合する能力を向上し、チャンバー中へそれらを均一な混合物として導入することができ、(2)基板上のコーティングの不均一堆積など、堆積チャンバー中の反応物の不均質で劣った混合に関する問題を避けることができ、(3)チャンバーに入る前に互いに反応する反応物に関する問題を避けることができ、(4)堆積チャンバーへの反応物の導入をより容易にし、とりわけ(5)大面積にコーティングを堆積するプロセスのスケールアップをより容易にすることができる。
【0012】
本発明のZnOフィルムは、望まれる低い抵抗率または高い導電率を有する。本発明のドープされたフィルムは、通常、約0.01Ωcm未満の抵抗率を有する。
【0013】
本発明のZnOフィルムは、望まれる光学的性質も有する。本発明のドープされたフィルムは、通常、可視スペクトル中(400から800nmの範囲の波長)に少なくとも約80%の透明度を有する。
【0014】
本発明のZnOフィルムは、望まれる赤外線反射特性も有する。本発明のドープされたフィルムは、通常、赤外スペクトル中(1200から3000nmの範囲の波長)に少なくとも約50%の反射率を有する。
【0015】
本発明のZnOフィルムは、通常、約50nmから約400nmの範囲の厚さを有する。堆積時間、プラズマ出力またはプラズマ周波数を変えることにより、厚さを変えることができる。
【0016】
ジメチル亜鉛またはジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物は、周囲温度(例えば約20℃から約100℃)で、CO2とほとんどまたは全く反応しない。そのような化合物は、亜鉛化合物とCO2の間で早すぎる反応なしに反応チャンバーに入る前に、CO2(および反応性組成物の他の成分)とブレンドすることができる。このブレンドまたは反応性組成物は、ドープされた酸化亜鉛、他の元素の酸化物と同時堆積されたZnOまたは他の元素と合金を形成しているZnOの堆積に使用できる。
【0017】
1態様において、本発明は、ガラスならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料上に、有用な光学的および電気的性質を有するn型およびp型酸化亜鉛系透明導電性酸化物(TCO)を低温で堆積させる、低温PECVDプロセスに関する。例えば、本発明は、ZnOをBまたはFでドープすることによりn型ZnOを、ZnOを窒素でドープすることによりp型ZnOを堆積させ、それによりTCO用途(例えば、ガラスならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な材料上のドープされたZnO)に有用な表面を得るためのPECVDプロセスを含んでよい。本発明は、n型ZnOを、Al、Ga、Tl、Y、ScまたはInなどの3族元素の少なくとも1種の酸化物と、かつ/またはGe、Sn、Ti、Zr、PbまたはHfなどの少なくとも1種の4族元素とn型ZnOを同時堆積させ、Sb、P、As、Bi、V、NbまたはTaなどの5族元素の酸化物とp型ZnOを同時堆積させるためのPECVDプロセスも含んでなる。
【0018】
本発明のZnO系TCOは、プラズマ増強CVDリアクター中で堆積できる。PECVDリアクターは、誘導結合RF PECVDリアクター、容量結合DCまたはRF PECVDリアクター、マイクロ波またはECR PECVDリアクターおよびUV活性化リアクター(UV activated reactor)から選択できる。容量結合RF PECVDリアクターは、スケールアップまたはシステムの増大が容易なため、ドープされたZnOフィルムの堆積に有用である。
【0019】
容量結合RF PECVDリアクターに使用される活性化周波数(activation frequency)は約50kHzから約50MHzでよく、通常約5MHzから約30MHzであり、典型的には約10MHzから約20MHzである。
【0020】
PECVDリアクターは、ドープされたZnOコーティングの堆積のために、約1ミリトルから約50トルの範囲の全圧(または真空)で操作でき、通常約10ミリトルから約25トルであり、典型的には約50ミリトルから約10トルである。
【0021】
反応温度は、周囲温度から約300℃で選択でき、通常約50℃から約250℃であり、典型的には約100℃から約200℃である。約100℃から約300℃の範囲の温度、通常約200℃から約300℃の温度が、ガラス上へのZnO系TCOの堆積に使用される。約200℃未満の温度が、プラスティックおよびポリマーなどの比較的温度に敏感な基板上へのZnO系TCOの堆積に使用される。
【0022】
本発明の1態様において、ZnOの堆積に使用される基板は、プラスティックまたはポリマー材料を含んでなる。プラスティックおよびポリマー基板は、数ある中でも、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホンおよびポリイミド、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。
【0023】
本発明の他の態様において、本発明のプロセスに使用される反応性組成物は、少なくとも1種の有機亜鉛化合物、少なくとも1種の希釈剤または不活性キャリアガス(例えば、数ある中でもアルゴン、ヘリウム)、少なくとも1種の二酸化炭素などの酸化体および少なくとも1種のドーパントまたは反応物を含んでなる。有機亜鉛化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。希釈剤または不活性キャリアの量は、通常、反応性組成物の約40%から約99%の範囲である。これらの反応物は、PECVDチャンバーへの導入前に混合される。望まれる場合、水素ガスを、ドープされたZnOフィルムの堆積のためのこれらの反応物と混合してもよい。水素の量は、通常、反応性組成物の約2%から約50%の範囲である。
【0024】
どのような好適な亜鉛化合物も本発明の反応性組成物に使用できる。好適な化合物の例は、Zn(R)(R')などの有機亜鉛化合物を含んでなり、前式において、RおよびR'は、数ある中でも、アルキル、フルオロアルキル、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナトである。有機亜鉛化合物は、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、亜鉛アセチルアセトテートおよび亜鉛アセチルアセトナトからなる群から選択される少なくとも1種の亜鉛化合物を含んでよい。通常、反応性組成物中のCO2対亜鉛化合物の比は、約3より高い(例えば、約10.0より高いなど約5.0より高い)。
【0025】
数ある中でも、NF3、HF、CF4、CHF3、CH22、CH3F、CF2O、C26、C24、C24O、C2HF3、C2HF5、C222、C224、C25F、C3HF3、C3HF5、C3HF7、C326、C333、C335、C37F、C36、C36O、C46、C48、C26、C38、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる少なくとも1種のフッ素化合物を、フッ素によるZnOのドープに使用できる。フッ素化合物は、PECVDチャンバーへの導入前に他の反応物と混合される。フッ素化合物の量は、通常、反応性組成物の約0.001%から約5%の範囲である。
【0026】
数ある中でも、B26、ボラジン(H633)、トリメチルボロキシン(C3933)、トリメトキシボロキシン(C3936)およびRがCH3、CH3O、CH3CH2、CH3CH2O、CH3CH2CH2、CH3CH2CH2O、(CH32CH2、(CH32CH2OであるR3B、これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる少なくとも1種のホウ素化合物を、ホウ素によるZnOのドープに使用できる。トリエチルホウ素およびトリエトキシボレートなどの毒性の低いホウ素化合物を、ホウ素によるZnOのドープに使用することが望ましい。ホウ素化合物は、反応性組成物をチャンバーへ導入する前に、反応性組成物の他の成分と混合される。ホウ素化合物の量は、通常、反応性組成物の約0.001%から約5%の範囲である。
【0027】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルキル、アルコキシ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるAl(R)(R')(R'')を含んでなる式を有する有機金属アルミニウム化合物を反応性組成物に加えて、アルミニウムを同時堆積し、またはアルミニウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。有機アルミニウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0028】
数ある中でも、R、R'およびR''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるSb(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属アンチモン化合物およびSbH3を反応性組成物に加えて、アンチモンを同時堆積し、またはアンチモンを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。アンチモン化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0029】
数ある中でも、R、R'およびR''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるAs(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属アルシン化合物およびAsH3を反応性組成物に加えて、アルシンを同時堆積し、またはアルシンを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。アルシン化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0030】
数ある中でも、R、R'およびR''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるBi(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属ビスマス化合物を反応性組成物に加えて、ビスマスを同時堆積し、またはビスマスを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ビスマス化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0031】
数ある中でも、R、R'およびR''が、H、アルキル、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるGa(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属ガリウム化合物を反応性組成物に加えて、ガリウムを同時堆積し、またはガリウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ガリウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0032】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニルであるGe(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属ゲルマニウム化合物およびGeH4を反応性組成物に加えて、ゲルマニウムを同時堆積し、またはゲルマニウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ゲルマニウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0033】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナトであるHf(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属ハフニウム化合物を反応性組成物に加えて、ハフニウムを同時堆積し、またはハフニウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ハフニウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0034】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルキル、シクロペンタジエニル、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるIn(R)またはIn(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属インジウム化合物を反応性組成物に加えて、インジウムを同時堆積し、またはインジウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。インジウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0035】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、アルキル、アルコキシ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるPb(R)(R')およびPb(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属鉛化合物を反応性組成物に加えて、鉛を同時堆積し、または鉛を酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。鉛化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0036】
数ある中でも、R、R'、R''R'''およびR''''が、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナトまたは他のβジケトナートであるNb(R)(R')(R'')(R''')(R'''')を含んでなる式を持つ有機金属ニオブ化合物を反応性組成物に加えて、ニオブを同時堆積し、またはニオブを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ニオブ化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0037】
数ある中でも、R、R'およびR''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるP(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属リン化合物およびPH3を反応性組成物に加えて、リンを同時堆積し、またはリンを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。リン化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0038】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルコキシ、シクロペンタジエニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトまたは他のβジケトネートであるSc(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属スカンジウム化合物を反応性組成物に加えて、スカンジウムを同時堆積し、またはスカンジウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。スカンジウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0039】
数ある中でも、R、R'、R''、R'''およびR''''が、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナトおよび他のβジケトネートであるTa(R)(R')(R'')(R''')(R'''')を含んでなる式を持つ有機金属タンタル化合物を反応性組成物に加えて、タンタルを同時堆積し、またはタンタルを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。タンタル化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0040】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、アルコキシ、シクロペンタジエニル、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナトであるTi(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属チタン化合物を反応性組成物に加えて、チタンを同時堆積し、またはチタンを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。チタン化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0041】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルコキシ、シクロペンタジエニル、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトであるTl−RおよびTl(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属タリウム化合物を反応性組成物に加えて、インジウムを同時堆積し、またはインジウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。タリウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0042】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、H、アルキル、アルコキシ、フェニルであるSn(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属スズ化合物を反応性組成物に加えて、スズを同時堆積し、またはスズを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。スズ化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0043】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルコキシ、シクロペンタジエニル、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトまたは他のβジケトネートであるV(R)(R')またはV(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属バナジウム化合物を反応性組成物に加えて、バナジウムを同時堆積し、またはバナジウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。バナジウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0044】
数ある中でも、R、R'およびR''が、アルコキシ、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトまたは他のβジケトネートであるY(R)(R')(R'')を含んでなる式を持つ有機金属イットリウム化合物を反応性組成物に加えて、イットリウムを同時堆積し、またはイットリウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。イットリウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0045】
数ある中でも、R、R'、R''およびR'''が、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アセチルアセトナトであるZr(R)(R')(R'')(R''')を含んでなる式を持つ有機金属ジルコニウム化合物を反応性組成物に加えて、ジルコニウムを同時堆積し、またはジルコニウムを酸化物形態の亜鉛と合金にするために使用できる。ジルコニウム化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0046】
本発明の1態様において、窒素含有ガスならびに窒素、遠隔活性化窒素(remotely activated nitrogen)およびアンモニアからなる群の少なくとも1種などの化合物を使用して、窒素をZnOと合金にできる。窒素含有ガスまたは化合物は、PECVDリアクターに入る前に、反応性組成物と組み合わせられる。窒素ガス以外の窒素化合物の量は、反応性組成物の約0.1%から約10%の範囲である。
【0047】
反応性組成物は、アルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、ネオン、窒素およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる少なくとも1種の希釈剤または不活性キャリアガスをさらに含んでよい。1態様において、不活性キャリアガスは、アルゴン、ヘリウムまたはアルゴンとヘリウムの混合物を含んでなる。選択された不活性ガスを使用して、有機亜鉛化合物、場合によってはドーパントまたは反応物を運搬および送達する。
【0048】
他のプロセスパラメータの中でも、反応混合物の流速、操作圧力、操作温度は、プラズマ系の出力および周波数により変動する。これらのパラメータは当分野に公知の方法により制御および監視できる。
【0049】
本発明の1態様において、反応性組成物の成分は、反応チャンバー(例えばPECVD)に入る前に、組み合わされ、またはブレンドされ、またはよく混合され、または均質化される。本発明の実施にどのような好適なリアクターも使用できるが、そのようなリアクターおよび供給システムを図1に表す。ここで図1を参照すると、図1は、未ドープならびにFドープおよびBドープZnOの堆積への本発明の適用可能性を示す以下の実施例を実施するのに使用した容量結合PECVDリアクターを表している。リアクター1は、ガラスベルジャーに密封された、およそ3.5インチ直径のトップ電極2および2インチ×3インチボトム電極3からなっていた。トップアルミニウム電極2は、「シャワーヘッド」の形態であり、事前に組み合わされた反応物の混合物を導入する単一のフィードライン8に接続していた。シャワーヘッドとは、事前に組み合わされた反応物をPECVDリアクターに放出する複数の開口部を有するチャンバー、プレナムまたは他の構造を意味する。シャワーヘッド2には、ボトム電極3の上におかれる基板5上への反応物の均一な分布を容易にする複数の小径の穴4があった。それは、13.56MHzのRF電源7およびプラズマを発生させる整合回路にも接続していた。ボトム電極3は、組み込み式のヒーターおよび熱電対(図示せず)を有するグラファイトでできていた。熱電対を用いて、ZnOでコーティングすべき基板5の温度を監視および制御した。ボトム電極3は、回路を完全にするため接地されていた。ベルジャーエンクロージャは、スチールのテーブル支持体上にあった。それは、真空を引き堆積チャンバー1から生成物のガスを排気するための開口部6がその底にあった。トップ2とボトム電極3の間の距離は、トップ電極2を上下させて調整した。
【0050】
上述のとおり、シャワーヘッド2は、メインのフィードライン8に接続しており、それが他のライン(9、10、11、12および13)にも接続していた。有機亜鉛化合物、フッ素またはホウ素含有ドーパント(もしあれば)、キャリアアルゴンまたはヘリウムおよび二酸化炭素を含む反応物の混合物は、フィードライン8によりリアクターに導入された。場合によっては、水素ガスも反応物と混合された。反応物は全て、質量流量計(14、15、16、17、18および19)を利用して計量された。メインフィードライン8は、静的混合要素(図示せず)を含み、堆積チャンバー1に入る前に全ての反応物の完全かつ均一な混合を確実とした。ライン8および9(望まれる場合他のラインも)は、電動柔軟ヒートテープまたはスチームまたは加熱された流体トレースラインを含んでなるヒートトレース20により加熱される。
【0051】
以下の実施例は本発明の特定の態様を説明するために提供され、本発明および本願に添付される特許請求の範囲を限定しない。
【実施例】
【0052】
未ドープおよびドープされたZnOフィルムを、以下の操作手順を利用して堆積させた。前記手順は、適切な有機溶媒による基板の洗浄およびPECVDチャンバーへの基板の装填を含んでなる。次いで、リアクターを、真空引きによりリークの有無についてチェックした。リアクターにリークがないと分かったら、所定の流速のアルゴンまたはヘリウムガスを、リアクター中の所定の圧力または真空を維持しながら、リアクター中へシャワーヘッドにより成立させた。次いで、基板を所望の温度に加熱した。基板温度を保ちながら2つの電極間に1から30分間プラズマ照射して、基板表面をアルゴンまたはヘリウムプラズマ洗浄した。基板のプラズマ洗浄の後、RF出力を切り、所望の流速の二酸化炭素を、シャワーヘッドを通じてリアクターへ確立した。使用される場合、ドープガスの流速もシャワーヘッドを通じてリアクター中へ成立させた。数分待った後、有機亜鉛化合物の流速を、やはりシャワーヘッドを通じてリアクター中に成立させ、未ドープまたはドープされたZnOの堆積を開始した。全反応物の流れを、望まれる時間継続した。その後、アルゴンまたはヘリウム以外の全反応物の流れを止め、グラファイトヒーターへの電力を切った。アルゴンまたはヘリウムガスの流れの下で基板を冷却した。ZnO堆積物により堆積された基板をチャンバーから除き、堆積厚さ、シート抵抗および光学透過特性に関して分析した。ZnOフィルムの抵抗率は、シート抵抗を堆積厚さとかけて計算した。
未ドープZnOを堆積する実施例
〔比較例1〕
【0053】
未ドープZnOフィルムを、ジエチル亜鉛(DEZ)を有機亜鉛化合物として、二酸化炭素を酸化体として利用し、前述のPECVDリアクター中で、それぞれガラスとケイ素である、2つの1インチ×1インチの1片に堆積させた。1sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れおよび20sccmのアルゴンの流れを利用して、300℃の温度および0.8トルの圧力で未ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は6であった。2.8cmの電極間距離および35ワットのRF電力を利用して35分間フィルムを堆積させた。
【0054】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ80nmの暗褐色の未ドープZnOフィルムを堆積させた。この実施例は、6であるDEZ/CO2比が、300℃で無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積させるには十分高くはなかったことを示した。
〔比較例2〕
【0055】
比較例1での実験を繰り返し、PECVDリアクター中で未ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れおよび10sccmのアルゴンの流れを利用して、300℃の温度および0.6トルの圧力で未ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.8cmの電極間距離および35ワットのRF電力を利用して30分間フィルムを堆積させた。
【0056】
ガラスおよびケイ素基板上に、シート抵抗が7216Ω/□(すなわち0.07Ωcmの抵抗率)である、厚さ97nmの無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積させた。この実施例は、12に近いCO2/DEZ比を利用して、300℃で高いシート抵抗を持つ無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積可能であることを示した。高いシート抵抗を持つこの未ドープZnOフィルムはTCO用途には好適でない。
〔比較例3〕
【0057】
比較例1での実験を繰り返し、PECVDリアクター中で未ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、18sccmのアルゴンの流れおよび1.5sccmの水素を利用して、300℃の温度および0.8トルの圧力で未ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.8cmの電極間距離および15ワットのRF電力を利用して15分間フィルムを堆積させた。
【0058】
ガラスおよびケイ素基板上に、シート抵抗が8333Ω/□(すなわち0.09Ωcmの抵抗率)である、厚さ108nmの無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積させた。この実施例は、12に近いCO2/DEZ比を利用して、300℃で高いシート抵抗を持つ無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、水素ガスを、ZnOフィルム堆積用のフィード混合物に混合できることを示した。高いシート抵抗を持つこの未ドープZnOフィルムはTCO用途には好適でない。
〔比較例4〕
【0059】
比較例1での実験を繰り返し、PECVDリアクター中で未ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、52sccmのアルゴンの流れを利用して、200℃の温度および1.8トルの圧力で未ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.5cmの電極間距離および30ワットのRF電力を利用して40分間フィルムを堆積させた。
【0060】
ガラスおよびケイ素基板上に、シート抵抗が4542Ω/□(すなわち0.06Ωcmの抵抗率)である、厚さ132nmの無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積させた。この実施例は、12に近いCO2/DEZ比を利用して、200℃という低温で高いシート抵抗を持つ無色透明な未ドープZnOフィルムを堆積可能であることを示した。高いシート抵抗を持つこの未ドープZnOフィルムはTCO用途には好適でない。
〔比較例5〜8〕
【0061】
比較例1の実験を4回繰り返し、反応混合物中のCO2/DEZ比が、PECVDリアクター中の未ドープZnOフィルムの堆積に及ぼす影響を調べた。固定された0.5sscmのDEZの流れ、36sccmのアルゴンの流れ、2.4cmの電極間距離、35ワットのRF電力、30分の堆積時間、1.8トルの圧力および200℃の温度をこれらの実施例で利用し、未ドープZnOを堆積させた。CO2の流速を3sccmから6sccmに変え、CO2/DEZ比を6から12に変えた。
【0062】
以下の表1に示すこれらの実験の結果は、上述の条件を利用して高い抵抗を有する未ドープZnOを堆積可能であることを示している。この結果は、高い(10を超える)CO2/DEZ比が、光学的に透明で無色のZnOフィルムを堆積するのに有用であることも示している。
【表1】

フッ素ドープZnOを堆積させる実施例
〔実施例1〕
【0063】
フッ素ドープZnOフィルムを、ジエチル亜鉛(DEZ)を有機亜鉛化合物として、二酸化炭素を酸化体として、NF3をドーパントとして利用し、前述のPECVDリアクター中で、それぞれガラスとケイ素である、2つの1インチ×1インチの1片に堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.15sccmのNF3の流れおよび20.85sccmのアルゴンの流れを利用して、300℃の温度および0.85トルの圧力でフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.8cmの電極間距離および40ワットのRF電力を利用して40分間フィルムを堆積させた。
【0064】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ107nmのフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は373Ω/□であり、フィルム抵抗率は0.004Ωcmであった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つフッ素ドープZnOフィルムが、300℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、フッ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上のTCO用途に十分良好であったことを示した。
〔実施例2〕
【0065】
実施例1の実験を繰り返し、PECVDリアクター中でフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.02sccmのNF3の流れおよび64.5sccmのアルゴンの流れを利用して、225℃の温度および1.8トルの圧力でフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.7cmの電極間距離および30ワットのRF電力を利用して40分間フィルムを堆積させた。
【0066】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ126nmのフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は325Ω/□であり、フィルム抵抗率は0.004Ωcmであった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つフッ素ドープZnOフィルムが、225℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、フッ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上のTCO用途に十分良好であったことを示した。
〔実施例3〕
【0067】
実施例1の実験を繰り返し、PECVDリアクター中でフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.02sccmのNF3の流れおよび64.5sccmのアルゴンの流れを利用して、210℃の温度および1.8トルの圧力でフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.7cmの電極間距離および30ワットのRF電力を利用して40分間フィルムを堆積させた。
【0068】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ128nmのフッ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は242Ω/□であり、フィルム抵抗率は0.0031Ωcmであった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つフッ素ドープZnOフィルムが、200℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、フッ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上ならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な柔軟性のある基板上のTCO用途に十分良好であることを示した。
ホウ素ドープZnOを堆積させる実施例
〔実施例4〕
【0069】
ホウ素ドープZnOフィルムを、ジエチル亜鉛(DEZ)を有機亜鉛化合物として、二酸化炭素を酸化体として、トリエチルホウ素(TEB)をドーパントとして利用し、前述のPECVDリアクター中で、それぞれガラスとケイ素である、2つの1インチ×1インチの1片に堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.0993sccmのTEBの流れおよび51.5sccmのアルゴンの流れを利用して、200℃の温度および1.8トルの圧力でホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.4cmの電極間距離および30ワットのRF電力を利用して60分間フィルムを堆積させた。
【0070】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ131nmのホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は98オーム/スクエアであり、フィルム抵抗率は0.0012オームcmであった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つホウ素ドープZnOフィルムが、200℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、ホウ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上ならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な柔軟性のある基板上のTCO用途に十分良好であることを示した。
〔実施例5〕
【0071】
実施例4の実験を繰り返し、PECVDリアクター中でホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.05696sccmのTEBの流れおよび49.5sccmのアルゴンの流れを利用して、200℃の温度および1.8トルの圧力でホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.4cmの電極間距離および30ワットのRF電力を利用して75分間フィルムを堆積させた。
【0072】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ133nmのホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は59Ω/□であり、フィルム抵抗率は0.0008Ωcmであった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つホウ素ドープZnOフィルムが、200℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、ホウ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上ならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な柔軟性のある基板上のTCO用途に十分良好であることを示した。
〔実施例6〕
【0073】
実施例4の実験を繰り返し、PECVDリアクター中でホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。0.5sscmのDEZの流れ、6sccmのCO2の流れ、0.0569sccmのTEBの流れおよび49sccmのアルゴンの流れを利用して、200℃の温度および1.8トルの圧力でホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィードガス中のCO2/DEZ比は12であった。2.4cmの電極間距離および35ワットのRF電力を利用して180分間フィルムを堆積させた。
【0074】
ガラスおよびケイ素基板上に、厚さおよそ362nmのホウ素ドープZnOフィルムを堆積させた。フィルムは無色透明で、400から800nmの波長領域で80%より高い透明度を示した。フィルムのシート抵抗は9.4Ω/□であり、フィルム抵抗率は0.00034Ωcmであった。波長2000および3000nmでのフィルムの赤外線反射率は、それぞれ約80%および96%であった。この実施例は、良好な電気的および光学的性質を持つホウ素ドープZnOフィルムが、200℃でPECVDにより堆積可能であることを示した。さらに、この実施例は、ホウ素ドープZnOの電気的および光学的性質が、ガラス上ならびにプラスティックおよびポリマーなどの温度に敏感な柔軟性のある基板上のTCO用途に十分良好であることを示した。
〔実施例7〜9〕
【0075】
実施例4の実験を3回繰り返し、反応混合物中のCO2/DEZ比が、PECVDリアクター中でのホウ素ドープZnOフィルムの堆積に与える影響を調べた。固定された0.5sscmのDEZの流れ、48.8sccmのアルゴンの流れ、0.0583sccmのTEBの流れ、2.4cmの電極間距離、35ワットのRF電力、1.8トルの圧力および200℃の温度をこれらの実施例で利用し、ホウ素ドープZnOを堆積させた。CO2の流速を3sccmから6sccmに変え、CO2/DEZ比を6から12に変えた。堆積時間は、以下の表2に示すとおり、35から90分に変えた。
【0076】
表2に示すこれらの実験の結果は、上述の条件を利用して、堆積条件に依存して高い電気抵抗および低い電気抵抗を有するホウ素ZnOを堆積可能であることを示している。この結果は、高い(10を超える)CO2/DEZ比が、光学的に透明で無色のZnOフィルムを堆積するのに有用であることも示している。さらに、この結果は、高い(10を超える)CO2/DEZ比が、低い電気抵抗率を有するホウ素ドープZnOを堆積させるのに有用であることを示している。
【表2】

【0077】
本発明は、実施例に開示されている特定の実施形態にも、本願に開示されているどのような態様にも、その範囲が限定されない。本願に示され記載されているものに加え、本発明の種々の変更が当業者には明らかであり、添付する特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、PECVDリアクターシステムを表す、本発明の1態様の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
少なくとも1種の有機金属亜鉛化合物、少なくとも1種の希釈剤、二酸化炭素および少なくても1種のドーパントを組み合わせ、反応性組成物を形成する工程、
前記反応性組成物を堆積チャンバー中に導入する工程、および
基板上にドープされた酸化亜鉛を堆積させるに十分な時間および条件下で、堆積チャンバー内に環境をつくる工程、
を含んでなる、基板上にドープされた酸化亜鉛を堆積させる方法。
【請求項2】
前記反応性組成物が、実質的に水および酸素を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応性組成物が、ジエチル亜鉛、アルゴン、二酸化炭素およびトリエチルホウ素を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のドープされた酸化亜鉛が、0.01Ωcm未満の抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記のドープされた酸化亜鉛が、少なくとも80%の光学的透明度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性組成物が、ジエチル亜鉛、アルゴン、二酸化炭素および三フッ化窒素を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
二酸化炭素対亜鉛化合物の比が3.0より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素対亜鉛化合物の比が5.0より高い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素対亜鉛化合物の比が10.0より高い、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記基板がガラスを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ドーパントが、3族元素および5族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、プリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホンおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含んでなる、基板上にドープされた酸化亜鉛を堆積させる方法:
ジエチル亜鉛、少なくとも1種の希釈剤、二酸化炭素および少なくとも1種のホウ素またはフッ素ドーパントを含んでなる組成物であって、実質的に水および酸素を含まず、周囲条件下で実質的に非反応性である組成物を提供する工程、
前記組成物を堆積チャンバーへ導入する工程および
前記組成物を、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホンおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる基板上に、ドープされた酸化亜鉛を堆積させるに十分な時間および条件下で、約200℃未満の温度で、堆積チャンバー内でPECVD環境に暴露させる工程。
【請求項14】
二酸化炭素対ジエチル亜鉛の比が3.0より高い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ホウ素およびフッ素からなる群から選択される少なくとも1種によりドープされている酸化亜鉛を含んでなり、0.01Ωcm未満の抵抗および少なくとも80%の透明度を有するフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−138300(P2007−138300A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314185(P2006−314185)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】