説明

低温タンク等の壁面の断熱施工装置

【課題】スペーサーの使用を省き、それに代替使用する離型性側面材の施工途中での切断を回避するとともに、ウレタン原液の漏れ出し防止及び断熱層側面の整形作用を常に確実かつ安定よく行える低温タンク等の壁面の断熱施工装置を提供する。
【解決手段】 低温タンク等の壁面4に沿い昇降自在に吊持されるゴンドラ8に、壁面4との間にウレタン注入空間9を形成する押え面板10と、ウレタン注入空間9の表面側に表面材6を順次繰り出す表面材繰出装置12と、繰り出される表面材6と壁面4との間にウレタン原液を注入するウレタン注入装置15とが装備されているとともに、施工時にウレタン注入空間9の一端開放部を閉じてウレタン原液の漏れ出し防止及び断熱層側面を整形する帯状離型性側面材16をゴンドラ8の上昇に同期して上下に循環移動させるべく上下一対のローラ17,17間にエンドレスに巻回保持させた離型性側面材保持機構18が装備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)などの低温タンクの外壁面あるいは内外二重壁の外壁の内面等の壁面に硬質ウレタンフォーム(以下、単に硬質ウレタンと称するものも含む)による断熱層を現場施工によって形成する場合に用いられる低温タンク等の壁面の断熱施工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温タンク等の壁面に硬質ウレタンによる断熱層を形成する場合、熱衝撃や温度勾配に起因した温度応力による有害なひび割れの発生及びその進展を防ぐ表面補強のために、硬質ウレタンの表面にガラス繊維織物、つまり、ガラスメッシュなどの表面材を貼付けて両者が一体化された断熱層を形成するのが一般的である。
【0003】
このような硬質ウレタンと表面材とが一体化された断熱層を施工する装置として、低温タンク等の壁面に沿い昇降自在に吊持されるゴンドラに、その壁面との間に所定の断熱層の仕上がり厚さに相当するウレタン注入空間を形成可能な押え面板と、ゴンドラの上昇移動に同期して前記ウレタン注入空間の表面側に表面材を順次繰り出し可能な表面材繰出装置と、この表面材繰出装置から繰り出される表面材と壁面との間の空間にウレタン原液を注入し発泡するウレタン注入装置とが装備されてなる低温タンク等の壁面の断熱施工装置が既に開発され実用化されている。
【0004】
そして、この実用段階にある断熱施工装置を用いて実際に単位幅の断熱層を施工するに際しては、施工前に、図8に示すように、繰り出し表面材21と低温タンク22等の壁面23との間に形成されるところの単位幅の断熱層施工用のウレタン注入空間24の幅方向両端に相当する壁面23に、硬質ウレタンと同一厚み及び同等の断熱性能を持つ既製スペーサー25,25を予め貼付け施工した後、これら既製スペーサー25,25に沿わせて上述した断熱施工装置を上昇移動させてウレタン注入空間24にウレタン原液を注入し発泡させることにより、ウレタン原液の両側方への漏れ出しをスペーサー25,25によって防止しつつ、単位幅の断熱層を施工する手段が一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、既製スペーサー25,25を用いてウレタン原液の両側方への漏れ出しを防止する一般的な施工技術の場合は、複数の既製スペーサー25,25を作製し、保管し、現場に搬入する等の工程が必要なうえに、施工装置による断熱層の施工前に各ウレタン注入空間24の幅方向両端に相当する壁面23に人手作業によりスペーサー25,25を先行して貼付ける工程が必要であるために、断熱施工全体としての工程数が多くなり、それだけ工期が長くなり、かつ、施工コストが増大する。また、スペーサー25の貼付け作業は高所作業であるうえに、スペーサー25を全面接着により壁面23に強固に貼付けるためには、下地である壁面23あるいはスペーサー25自体の貼付け面を平滑化するなどの前処理等も必要となり、施工能率の悪化及び施工コストの増大は避けられないという問題がある。
【0006】
このように施工面で多くの問題がある既製スペーサーの使用を省略する手段として、従来、単位幅の断熱層の施工開始前に、ゴンドラの横方向一端側にロール状に巻回し保持されている紙等の離型性面材をウレタン注入空間の一端開放部に向けて引き出し、その引き出した離型性面材の端部を壁面の下端部等に固定した後、ゴンドラを上昇させて所定の断熱施工を開始することにより、離型性面材をウレタン注入空間の一端開放部に順次繰り出してウレタン注入空間の一端開放部を常に閉じさせ、ウレタン原液の漏れ出し防止及び断熱層側面の整形を行うようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−173894公報
【特許文献2】特開2004−143681公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2において提案されている従来技術の場合は、特許文献1に示されている一般的な施工技術の場合に用いられていた既製スペーサーの使用及びそのスペーサーの事前貼付け作業等が不要であるために、断熱施工全体の工程数を大幅に削減して工期短縮による施工能率の向上、施工コストの低減、高所作業の不要化及び省力化を図ることが可能である。
【0009】
しかしながら、従来技術では、ウレタン原液の漏れ出し防止及び断熱層側面の整形のために用いられる離型性側面材がロール状に巻回されてゴンドラに保持されており、その巻回ロールから先端部を引き出して壁面の下端部等に固定した後、ゴンドラの上昇に伴い順次ロールから繰り出し供給するものであるために、ゴンドラが壁面の高い位置まで上昇した時点では離型性側面材が非常に長く繰り出されており、また、その繰り出された側面材に働く張力も繰り出し量の増加に伴う対断熱層との間の抵抗の増大につれて次第に大きくなる。したがって、その離型性側面材が施工(ゴンドラの上昇)途中で切断されてしまい、ウレタン原液の漏れ出し防止機能が果たせなくなったり、途中切断されない場合でも側面材を所定形状に保てなくなるために、壁面との間に隙間が生じてウレタン原液が漏れ出したり、断熱層の側面形状を所定どおりに整形できなくなったりするという問題がある。特に、離型性側面材は消費材であり、それの消費コストを少しでも節減するように紙材を用いていることが多いために、途中切断等の不具合を発生しやすい。また、従来技術の場合は、非常に長い離型性側面材をロール状に巻回するなどしてゴンドラに保持させておく必要があるために、それの保管のために大きなスペースを要し、施工装置全体が大型化、重量化するだけでなく、施工者による繰り出し等の目視確認も困難になって、益々上記のような不具合を発生しやすいという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、既製スペーサーの使用を省略するだけでなく、それに代替使用する離型性側面材の施工途中での切断を回避できるとともに短い離型性側面材を用いてウレタン原液の漏れ出し防止及び断熱層側面の整形作用を常に確実かつ安定よく行うことができる低温タンク等の壁面の断熱施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置は、低温タンク等の壁面に沿い昇降自在に吊持されるゴンドラに、前記壁面との間に所定の断熱層の仕上がり厚さに相当するウレタン注入空間を形成可能な押え面板と、ゴンドラの上昇移動に同期して前記ウレタン注入空間の表面側に表面材を順次繰り出し可能な表面材繰出装置と、この表面材繰出装置から繰り出される表面材と前記壁面との間にウレタン原液を注入し発泡するウレタン注入装置と、前記ウレタン注入空間の少なくとも一端開放部を閉じて注入ウレタン原液の漏れ出しを防止するとともに、硬質ウレタンフォームと表面材とが一体化された状態に施工される単位幅の断熱層の側面を整形する離型性側面材とが装備されてなり、前記ゴンドラを断熱層の単位幅に対応する距離ごと横方向に変位させつつ、低温タンク等の壁面に沿い複数回繰り返し上昇させることにより、前記壁面の全域を断熱施工するように構成されている低温タンク等の壁面の断熱施工装置であって、前記離型性側面材は、引張り強度及び引裂き強度が強く、かつ、可撓性を有する材料から帯状に形成されており、この帯状の離型性側面材を前記ゴンドラの上昇に同期して上下方向に循環移動させるべく少なくとも上下一対のローラ間に亘ってエンドレスに巻回保持させてなるクローラ式の離型性側面材保持機構が前記ゴンドラに装備されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴構成を有する本発明によれば、ゴンドラの上昇に伴い硬質ウレタンフォームと表面材とが一体化された状態の単位幅の断熱層を施工する際のウレタン原液の側方への漏れ出し防止及び断熱層側面の整形に、引張り強度及び引裂き強度が強く、かつ、可撓性を有する材料から帯状に形成された離型性側面材を用いることにより、壁面への事前貼付け工程が必要な既製スペーサーの使用を省くことが可能であり、断熱施工全体の工程数を大幅に削減して工期短縮による施工能率の向上、施工コストの低減、高所作業の不要化及び省力化を図ることができる。
【0013】
しかも、その離型性側面材を、壁面の下端部から上端部にかけて次第に長さを増すように順次繰り出す形態で使用するのではなく、ゴンドラの上昇に同期して上下方向に循環移動されるように少なくとも上下一対のローラ間に亘ってエンドレスに巻回保持させてなるクローラ形態で使用するものであるから、施工(ゴンドラの上昇)途中で側面材が切断されてウレタン原液が側方へ漏れ出したり、途中切断されない場合でも側面材が歪に変形して壁面との間に隙間を生じ、そこからウレタン原液が漏れ出したり、さらには、断熱層の側面形状が施工後の欠陥要因となるように整形不良となる等の不具合の発生を確実に回避することができる。また、離型性側面材が上下方向に循環移動可能なクローラ形態に保持されているので、従来技術のように、非常に長尺な側面材をロール状に巻回保持させる必要がなく、離型性側面材及びその保持機構を保管するためのゴンドラスペースが小さくてすみ、したがって、ゴンドラ、ひいては施工装置全体を可及的に小型化、軽量化できるとともに、施工者によるウレタン原液の漏れ状況や側面整形状態等の目視確認も容易となり、所定どおりに整形された側面を有する断熱層を確実かつ安定よく施工することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置における離型性側面材としては、引張り強度及び引裂き強度が強く、かつ、可撓性を有するものであればどのような材料から形成されたものであってもよいが、特に、請求項2に記載のように、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムもしくはアルミなどの金属箔または金属箔の裏面に補強材を積層した積層体から形成することが望ましい。これら材質の離型性側面材を用いる時は、耐久強度に優れているとともに、例えば単位幅の断熱層を施工する毎に側面材の表面に付着したウレタン残滓を除去したうえ、その表面に離型剤を塗布して用いることにより、この離型性側面材を何回もの断熱施工に繰り返し使用することが可能であり、消費材として用いられるものでありながらも、その交換頻度を少なくして消費コストの削減を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置において、請求項3に記載のように、前記クローラ式離型性側面材保持機構として、上下一対のローラ間に上下方向に適当間隔置きに離型性側面材の循環移動を案内する複数個のガイドローラを有するものを用いる場合は、離型性側面材をウレタンの発泡圧に十分に耐応させて形状保持させることが可能であり、断熱層の側面を所定どおりに整形することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置により施工される断熱層の側面は、壁面に直交する面に整形されるものであってもよいが、請求項4に記載のように、クローラ式離型性側面材保持機構におけるローラとして、単位幅の断熱層の側面が壁面に直交する面に対して断熱層表面側ほど漸次幅狭くなる傾斜面若しくは屈曲面に整形されるように帯状の離型性側面材を循環移動可能に保持する形状に形成されたものを用いて、断熱層の側面を壁面に直交する面に対して傾斜若しくは屈曲する面に整形してもよい。この場合は、隣接して形成される断熱層同士の側面接触面積を大きくして継目部に欠陥が生じにくい高品質な連続断熱層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置の概略構成及び断熱施工状況の概要を示す正面図、図2はその側面図である。この断熱施工装置Aは、図3に示すように、LNG等を貯蔵する低温タンクにおける内槽1とこの内槽1の外周を取り囲むようにプレキャストコンクリート(PC)から構築されている外槽(外壁)2との間の環状空間3に設置されて、外槽2内面のスチールライナ面(壁面)4に冷熱抵抗緩和材として、硬質ウレタンフォーム(以下、PUFと称する)5とこのPUF5の表面を被覆補強するガラスメッシュ等の表面材6とがウレタンの現場発泡により一体化された断熱層7の施工に用いられものである。
【0018】
上記断熱施工装置Aは、図1及び図2に示すように、内,外槽1,2間の頂部に設置されたトロリービーム(図示省略)に取付けられて前記スチールライナ面4に沿って昇降操作自在に吊持されるゴンドラ8を備え、このゴンドラ8に、PUF5とガラスメッシュ等の表面材6とがウレタン発泡により一体化された単位幅の断熱層7Aを一体形成するための設備が装備されている。
【0019】
上記ゴンドラ8に装備されている断熱層一体形成設備は、図4に示すように、上記スチールライナ面4に当該施工装置Aにより先行施工された既設の単位幅断熱層7A’の表面に押し当てられゴンドラ8の上昇に伴い一体に上昇移動してスチールライナ面4との間に施工すべき単位幅の断熱層7Aの仕上がり厚さtに相当するウレタン注入空間9を形成保持可能な矩形状の押え面板10と、ゴンドラ8内の下部に配置されて表面材6をロール状に巻回保持するとともにゴンドラ8の上昇移動に伴い案内ローラ11を経て上記ウレタン注入空間9の表面側に順次繰り出し可能な表面材繰出装置12と、ゴンドラ8内の上部に配置されて表面材繰出装置12から繰り出される表面材6とスチールライナ面4との間のウレタン注入空間9にウレタン原液を注入するウレタン注入ヘッド13及びその注入ヘッド13を横方向に往復移動させるためのトラバーサー14からなるウレタン注入装置15とから構成されている。
【0020】
また、上記ゴンドラ8の幅方向一端側には、引張り強度及び引裂き強度が強く、かつ、可撓性を有する材料、例えばポリエチレンやポリプルピレンなどの樹脂フィルムから帯状に形成されて前記ウレタン注入空間9の一端開放部を閉じる離型性側面材16を上下一対のローラ17,17間に亘ってエンドレスに巻回させてなるクローラ式の離型性側面材保持機構18が板状ブラケット19を介して装備されている。このクローラ式離型性側面材保持機構18は、図1に明示するように、上下一対のローラ17,17の他に、これらローラ17,17間で上下方向に適当間隔置きに配置された複数個のガイドローラ20を有しており、これらローラ17,17,20により前記ゴンドラ8の上昇に同期して離型性側面材16がスチールライナ面4に直交する面に対して表面側ほど幅狭となるように傾斜する面内を上下方向に循環移動されるべく保持して構成されている。
【0021】
次に、上記のような構成の断熱施工装置Aを用いて低温タンクにおける外槽2内面のスチールライナ面(壁面)4に単位幅の断熱層7Aを複数列に順次形成して該スチールライナ面4全域に亘る連続断熱層7を施工する方法について説明する。
【0022】
図4に示すように、先行施工された既設の単位幅断熱層7A’の表面に押え面板10が接触するように施工装置Aをセツトし、この状態で、施工装置Aのゴンドラ8をスチールライナ面4に沿って上昇移動させる。このゴンドラ8の上昇に伴う押え面板10の上昇移動によって該押え面板10とスチールライナ4との間に施工予定の単位幅断熱層7Aの仕上がり厚みtに相当するウレタン注入空間9を形成させながら、このウレタン注入空間9の表面側に、表面材繰出装置12にロール状に巻回保持されている表面材6が案内ローラ11を経て順次繰り出されると同時に、その繰り出された表面材6とスチールライナ面4との間のウレタン注入空間9に、ウレタン注入装置15におけるトラバーサー14を介し横方向に往復移動されるヘッド13からウレタン原液が注入され発泡される。
【0023】
このとき、ゴンドラ8側に装備されているクローラ式離型性側面材保持機構18のローラ17,17,20間に亘ってエンドレスに巻回保持され、その表面には離型剤が塗布されている離型性側面材16はウレタン注入空間9の一端開放部を閉じた状態で、ゴンドラ8の上昇に同期して上下方向に循環移動する一方、ウレタン注入空間9の他端開放部は先行施工された既設の単位幅断熱層7A’の側面で閉じられている。そのため、注入空間9に注入されたウレタン原液が注入空間9から両側方へ漏れ出すことは防止されており、空間9内で発泡し成形されたPUF5とその表面のガラスメッシュ等の表面材6とが一体化されて所定厚みtを有し、かつ、その一端側面7aが前記離型性側面材16により所定どおりの傾斜面に整形された単位幅の断熱層7Aが施工される。
【0024】
上記のようにして一列目の単位幅の断熱層7Aの施工が終了した後の二列目以降の施工時には、施工装置A全体を単位幅の断熱層7Aの単位幅(横幅)に対応する距離ごと横方向に変位させつつ、該施工装置Aを上述と同様に、スチールライナ面4に沿い所定回数繰り返し上昇させることにより、図5に示すように、二列目以降の単位幅の断熱層7Aを順次施工する。この二列目以降の施工時においても、ウレタン注入空間9の一端開放部はゴンドラ8の上昇に伴って上下方向の循環移動する離型性側面材16により閉じられることになり、空間9に注入されたウレタン原液の側方への漏れ出しを防止して、一列目と同様に、二列目以降においても所定厚みtで側面7aが所定どおりの傾斜面に整形された単位幅断熱層7Aが確実に施工されることになり、したがって、スチールライナ面4全域に亘って断熱性に優れた連続断熱層7を施工することが可能である。
【0025】
このように、ウレタン注入空間9からその側方へのウレタン原液の漏れ出し防止用の離型性側面材16をゴンドラ8の上昇に同期して上下方向に循環移動されるように上下一対のローラ17,17及び複数個のガイドローラ20間に亘ってエンドレスに巻回保持させてクローラ形態とした比較的短い側面材16を使用するので、施工(ゴンドラの上昇)途中で側面材16が切断されてウレタン原液が側方へ漏れ出したり、側面材16が歪に変形してスチールライナ面4との間に隙間を生じ、そこからウレタン原液が漏れ出したり、さらには、断熱層7Aの側面7aが施工後の欠陥要因の一つである整形不良となる等の不具合の発生を確実に回避することができる。
【0026】
また、クローラ形態の離型性側面材16の使用によって、従来技術のように、非常に長尺な側面材をロール状に巻回保持させる必要がなく、離型性側面材16及びその保持機構18を保管するためにゴンドラ8に必要なスペースは小さくてすみ、したがって、ゴンドラ8、ひいては施工装置A全体を可及的に小型化、軽量化できるとともに、施工者によるウレタン原液の漏れ状況や側面整形状態等も目視確認し易くなり、所定どおりの整形側面7aを有する断熱層7Aを確実かつ安定よく施工することができる。
【0027】
なお、上記実施の形態では、クローラ式の離型性側面材保持機構18を構成する各ローラ17,20として、円柱形状のものを用いた例で示したが、図6に示すように、略枕形状のローラ17,20を使用し、これらにエンドレスに巻回される離型性側面材16により断熱層7Aの側面7aをスチールライナ面4に直交する面に対して傾斜し、かつ、その傾斜面に沿って屈曲する形状に整形するようにしてもよい。これ以外にも外周面形状の異なる種々のローラ17,20を選択使用することにより、断熱層7Aの側面7aを任意の形状に整形することが可能である。特に、断熱層7Aの側面7aをスチールライナ面4に直交する面に対して傾斜する面あるいは屈曲する面に整形する場合は、隣接して形成される単位幅の断熱層7A,7A同士の側面接触面積を大きくとれて、それらの継目部に欠陥が生じにくい連続断熱層7を形成することができる。
【0028】
また、離型性側面材保持機構18における複数個のガイドローラ20に代えて、図7に示すように、離型性側面材16の内側に沿わせて長く配置され、側面材16をその裏面で摺接案内するガイド板21を用いてもよい。この場合でも、ウレタンの発泡圧に十分に対抗させて所定どおりの側面7aを確実に整形することができる。
【0029】
さらに、上記実施の形態では、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂フィルムから形成された側面材16を用いたが、これ以外に、アルミなどの金属箔あるいは金属箔の裏面に補強材を積層して引張り強度及び引裂き強度を大きくした材料から形成したものを用いてもよい。このような側面材16は複数回の施工毎に交換すればよいので、それの消費コストの削減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る低温タンク等の壁面の断熱施工装置の概略構成及び断熱施工状況の概要を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】断熱施工箇所を説明する要部の縦断側面図である。
【図4】一列目の単位幅断熱層の施工状況を説明する要部の平面図である。
【図5】二列目以降の単位幅断熱層の施工状況を説明する要部の平面図である。
【図6】離型性側面材及びそれの保持機構の他の例を示す要部の拡大平面図である。
【図7】離型性側面材保持機構の他の例を示す拡大正面図である。
【図8】従来一般的な施工技術による単位幅断熱層の施工状況を説明する要部の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
4 スチールライナ面(壁面)
5 PUF(硬質ウレタンフォーム)
6 表面材
7 連続断熱層
7A 単位幅の断熱層
7a 断熱層の側面
8 ゴンドラ
9 ウレタン注入空間
10 押え面板
12 表面材繰出装置
15 ウレタン注入装置
16 離型性側面材
17 ローラ
18 離型性側面材保持機構
20 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温タンク等の壁面に沿い昇降自在に吊持されるゴンドラに、前記壁面との間に所定の断熱層の仕上がり厚さに相当するウレタン注入空間を形成可能な押え面板と、ゴンドラの上昇移動に同期して前記ウレタン注入空間の表面側に表面材を順次繰り出し可能な表面材繰出装置と、この表面材繰出装置から繰り出される表面材と前記壁面との間にウレタン原液を注入し発泡するウレタン注入装置と、前記ウレタン注入空間の少なくとも一端開放部を閉じて注入ウレタン原液の漏れ出しを防止するとともに、硬質ウレタンフォームと表面材とが一体化された状態に施工される単位幅の断熱層の側面を整形する離型性側面材とが装備されてなり、前記ゴンドラを断熱層の単位幅に対応する距離ごと横方向に変位させつつ、低温タンク等の壁面に沿い複数回繰り返し上昇させることにより、前記壁面の全域を断熱施工するように構成されている低温タンク等の壁面の断熱施工装置であって、
前記離型性側面材は、引張り強度及び引裂き強度が強く、かつ、可撓性を有する材料から帯状に形成されており、この帯状の離型性側面材を前記ゴンドラの上昇に同期して上下方向に循環移動させるべく少なくとも上下一対のローラ間に亘ってエンドレスに巻回保持させてなるクローラ式の離型性側面材保持機構が前記ゴンドラに装備されていることを特徴とする低温タンク等の壁面の断熱施工装置。
【請求項2】
前記離型性側面材が、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムもしくはアルミなどの金属箔または金属箔の裏面に補強材を積層した積層体から形成されている請求項1に記載の低温タンク等の壁面の断熱施工装置。
【請求項3】
前記クローラ式離型性側面材保持機構は、上下一対のローラ間に上下方向に適当間隔置きに離型性側面材の循環移動を案内する複数個のガイドローラを有している請求項1または2に記載の低温タンク等の壁面の断熱施工装置。
【請求項4】
前記クローラ式離型性側面材保持機構におけるローラは、単位幅の断熱層の側面が、壁面に直交する面に対して断熱層表面側ほど漸次幅狭となる傾斜面若しくは屈曲面に整形されるように、帯状の離型性側面材を循環移動可能に保持する形状に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の低温タンク等の壁面の断熱施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−52750(P2006−52750A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232952(P2004−232952)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】