説明

低温液体用容器

本発明は、排気可能な外側容器を持つ低温液体用容器に関し、外側容器が平らな底壁、平らな天井壁及び側壁を持っている。内側容器の間に支柱が設けられ、この支柱が、内側容器の縦軸線の方向に、内側容器の間の方向及び内側容器の縦軸線に対して直角な方向におけるより大きい寸法を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの外側容器及び若干の内側容器から成る低温液体用容器であって、なるべく内側容器と外側容器との間の中間空間に、熱絶縁のため真空が存在するものに関する。このような容器は、自動車、航空機又は宇宙船へ組込むために考えられている。容器は燃料として又は他の目的(例えば冷媒)に使用するために取出される液化ガスを収容している。
【背景技術】
【0002】
真空絶縁は、大抵は更に別の手段により改善されて、熱の取込み従って低温液体の蒸発及びそれに伴う圧力上昇を抑制する。しかし低温液体は、高い圧力においても貯蔵可能である。それにより貯蔵量が同じ体積で高められるが、圧力負荷に耐えるために容器は重くなる。
【0003】
しかし真空絶縁により、いずれにせよ圧力が容器に作用する。外側容器は、その内部に真空が作用するので、外側から大気圧による負荷される。内側容器は、真空により包囲されているので、全内部圧力により負荷される。全体が円筒状の容器では、これらの圧力が制御可能である。
【0004】
しかし円筒状容器は、車両において使用するために、場所的な理由から非常に不利である。従って開発はトランク状の扁平な容器へ向かっている。しかし扁平な構造では、内側容器も外側容器も、大きい平らな自由面のため、高い負荷にさらされ、頑丈な支持片によってのみこの負荷を受止めることができる。その結果重量が増大し(路面車両及び航空機では特に不利である)、容器の内部への熱伝導が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、小さい重量で空間利用が良好な容器を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1による容器によって解決される。
【0007】
定義によれば、縦軸線方向とは、隣接する内側容器の縦軸線の方向に対してほぼ平行な方向を意味する。その際平行性からの小さい偏差は請求項の保護範囲に含まれる。
【0008】
本発明によれば、容器は扁平構造のタンクであるが、外側容器の天井面及び/又は側面の僅かな湾曲の意味でのある程度の偏差は許され、請求項の保護範囲に含まれる。
【0009】
本発明によれば、外側容器内に複数の内側容器が設けられ、その縦軸線がほぼ平行に1つの面に設けられている。しかし縦軸線の平行性に関する僅かな偏差又は共通な面からの内側容器の僅かな軸線ずれは許され、請求項の保護範囲に含まれる。
【0010】
「平行」及び「1つの面」という概念は、「ほぼ平行」及び「ほぼ1つの面」や、(例えば製造公差及び構造公差)による重要でない偏差を含む。
【0011】
本発明により提案される支柱によって、現れる内側及び外側からの圧縮負荷及び引張り負荷に対して、外側容器を安定化することができる。このような圧縮負荷及び引張り負荷は、例えば外側容器の排気又は外側容器の機械的な外部負荷によってひき起こされる。
【0012】
本発明によれば、従来技術から公知の前述した欠点を持たない扁平容器の構造が提案される。この構造は、最良の熱絶縁においてできるだけ軽くかつ簡単である。本発明の実施形態によれば、これは、内側容器が両側に底を持ちかつ並んで設けられる円筒であり、外側容器の平らな壁部分が円筒の間に設けられる支柱によって互いに支持されていることによって達せられる。複数の内側容器を並べて設けられるため(すべての内側容器を必ず1つの面内に並べて設けなくてよい)、内圧がかかる際特に有利な円筒形状が維持される。これにより、比較的僅かな壁厚でも、高圧の低温液体を貯蔵することができる。種々の外側寸法の容器のために、円筒を構造キットのように種々の数および種々の状態で使用できる、という利点もある。
【0013】
本発明の実施形態によれば、支柱が圧縮支柱即ち圧縮力を/に対して支持するための支柱、及び/又は引張り力を/に対して支持するための引張り支柱である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、内側容器が分離した容器例えば構造的に分離した円筒状タンク容器として設けられて、適当な装置を介して、場合によっては一緒に又は別々に充填されかつ/又は排出される。
【0015】
平らな壁部分の相互支持は、複数の内側容器を共通な外側容器で包囲するのを可能にする。なぜならば、それにより形成される平らな面に作用する大気圧は、内側容器を負荷することなしに受止められるからである。この支持は、外側容器の壁厚の著しい減少及び適当な重量減少を可能にする。従属請求項は有利な構成及び展開を対象としている。
【0016】
本発明の実施形態によれば、支柱が、連接する内側容器の縦軸線のなす面と支柱の交差部に関して、縦軸線方向に測った最大縦寸法を持ち、また縦軸線方向に対して直角に、隣接する内側容器の間で測った最大幅寸法を持っている。本発明の特別な実施形態によれば、最大縦寸法と最大幅寸法との比が、少なくとも1.25:1である。これにより、本発明による容器の特に良好な安定性が得られる。
【0017】
2つの内側容器の間の支柱が、縦軸線に沿って設けられる複数の支柱素子から成っていると、支柱素子の最大縦寸法又は最大幅寸法が、内側容器の間で作用する支柱の有効全縦寸法又は全幅寸法を求めるため加算される。縦方向又は幅方向における2つ又はそれ以上の圧縮支柱素子の重なりは、支柱の有効全長又は有効全幅を求めるのに一度だけ寄与する。こうして求められる支柱素子の全長又は全幅は、支柱の寸法(長さ寸法又は幅寸法)とみなされる。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、支柱素子が内側容器の縦軸線の方向に見て対称に又はほぼ同じ相互間隔で設けられていると、特に有利である。これにより外側容器を介する力の導入が、均一に容器構造の歪みなしに行われるようにすることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、最大縦寸法と最大幅寸法との比が少なくとも2:1である。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、最大縦寸法と最大幅寸法との比が少なくとも5:1である。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、天井壁が、少なくとも2つの内側容器の間で底壁に対して、縦軸線方向に、外側容器の長さの少なくとも10%にわたって、支柱により支持されている。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、天井壁が、少なくとも2つの内側容器の間で底壁に対して、縦軸線方向に、特に外側容器の長さの少なくとも50%にわたって、支柱により支持されている。
【0023】
特別な実施形態によれば、圧縮支柱が外側容器の縦寸法の少なくとも10%特に少なくとも25%の最小長さを持っている。
【0024】
特別な実施形態によれば、圧縮支柱が内側容器の縦寸法の少なくとも10%特に少なくとも15%の最小長さを持っている。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも2つの内側容器の間で縦に設けられる支柱が、複数の分離した支柱素子を持っている。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、支柱が少なくとも2つの内側容器の全長にわたって延びている。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも2つの内側容器がそれぞれ円筒状に形成されている。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも2つの内側容器が、その端部で、外側容器の側壁に懸架され、従って縦方向における熱膨張が吸収される。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、内側容器が高級鋼から成っている。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、内側容器がプラスチック母体に埋込まれた炭素繊維から成っている。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、内側容器がその両側の底で外側容器の側壁に懸架され、従って縦方向における熱膨張が吸収される。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、外側容器が薄い板から成り、プラスチック母体に埋込まれた繊維を巻付けられている。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば支柱が、内側容器を横に(即ち縦軸線方向に対して直角に)外側容器の幅の方向及び/又は外側容器の高さの方向に、少なくとも部分的に支持するか、又は内側容器をこれらの方向に少なくとも部分的に位置ぎめするように、市長を構成することができる。
【0034】
例としての概略図により、本発明が以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1〜4において、外側容器が概略的に1で示され、その中に平行に並んで設けられる内側容器は2,3及び4で示されている。内側容器はなるべく高級鋼からなる円筒状管である。これらの管を間隔をおいて包囲する外側容器1は、扁平な構造をとることができる。外側容器はほぼ扁平な直方体であり、その側面は丸められている。しかしいずれにせよ、それは平らな壁部分10,11を持っている。内側容器2,3,4と外側容器1との間の中間空間5には、熱絶縁のため真空が存在して、別の手段と共にいわゆる「超絶縁」を形成している。中間空間5の真空により、平らな壁部分10,11は大気圧により圧縮される。他方内側容器2,3,4は、その中に大気圧が存在する場合、外方へ押される。低温液体が高い圧力で内側容器2,3,4内に貯蔵されていると、内側容器2,3,4の円筒状壁及び底7,8の引張り負荷はそれに応じて大きい。
【0036】
外側容器1の平らな壁部分10,11に作用する圧縮力を吸収するため、これらの壁は支柱12,13により互いに支持されている。図4からわかるように、これらの支柱は両方の平らな壁部分10,11を結合し、内側容器2,3又は3,4になるべく接触することなく、これらの間を通っている。図2では、支柱12,13は単一の支柱である。内側容器2,3,4は、公知のように両側のそれ自身公知の懸架片17,18により側壁14,15に懸架されている。
【0037】
図5及び図6の変わった実施例は、支柱22,23が内側容器2,3,4の長さにわたって延び、内側容器2,3,4が一端でのみ熱絶縁脚32により外側容器1に取付けられ、その他端が自由に可動であるという点で、相違している。図5からわかるように、支柱22,23がI形異形材であり、その脚部分24,25が平らに壁部分10,11の内側に当接し、その橋絡部分が座屈強度を高めるため補強ひれ26を持っている。内側容器2,3,4の間隔が充分であると、できるだけ僅かな重量で高い内圧に耐えるため、プラスチック母体に埋込まれた炭素繊維から成る被覆を内側容器に設けることができる。同じように外側容器1も、それが同様に繊維で補強された被覆31を備えている場合、非常に薄い板から成っていてもよい。
【0038】
図7及び図8には、低温液体用の本発明による容器の別の可能な実施例が示されている。容器は、長さL、幅B及び高さHの外側容器40を持っている。
【0039】
図7及び図8による別の可能な実施例は、他の実施例とは次の点で相違している。即ち支柱34は、内側容器38の縦軸線37に沿って従って縦軸線方向に設けられている2つの別々の縦長の支柱素子35及び36を持っている。図7では、内側容器38の両方の縦軸線37を通る面に沿う支柱の断面がわかる。縦軸線方向における支柱素子35及び36の断面の長さの加算によって、外側容器40が、その長さ寸法の50%以上にわたって、その底壁41とその天井壁42との間の支柱34により支持されることがわかる。更に支柱の断面の(円筒状内側容器の縦軸線に沿う)長さ寸法が、幅寸法の複数倍であることがわかる。長さ寸法又は幅寸法を求めるために、それぞれ2つの内側容器の間に設けられる個々の支柱素子の断面の最大長さ寸法又は最大幅寸法が加算される。縦軸線の方向又は幅の方向に重畳される支柱素子の断面の部分(両方の縦軸線37を通る面との交差部)が、この加算において一度だけ考慮される。
【0040】
図8からわかるように、支柱34は、外側容器40の底壁及び天井壁の範囲に、付加的な補強部39を持っている。これにより外側容器と支柱との間の相互の力導入が改善される。図7及び図8からわかるように、図示した実施例では、縦軸線の方向における支柱34の断面の累積寸法は、内側容器の間の方向及び縦軸線に対して直角従って外側容器40の幅の方向におけるより大きい。外側容器40は、図7及び図8においてそれぞれ概略的にのみ示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による容器の斜視図を示す。
【図2】容器の平面図を示す。
【図3】容器の側面図を示す。
【図4】図3のC−C断面図を示す。
【図5】図4とは別の実施例を示す。
【図6】図5のVI−VI断面図を示す。
【図7】図8のVII−VII断面図で図2とは別の実施例を示す。
【図8】図7のVIII−VIII断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平構造の排気可能な外側容器を持つ低温液体用容器であって、外側容器が平らな底壁、平らな天井壁及び側壁を持ち、外側容器内に少なくとも2つの内側容器が設けられ、各内側容器が縦軸線を持ち、少なくとも2つの内側容器が、縦軸線を互いに平行に向けられて、1つの面に並んで設けられ、外側容器の底壁を天井壁に対して支持する支柱が、少なくとも2つの内側容器の間に縦方向に設けられ、支柱が、隣接する内側容器の縦軸線のなす面と支柱との交差部に関して、縦方向に、この縦方向に対して直角な方向におけるより大きい寸法を持っている、容器。
【請求項2】
支柱が、連接する内側容器の縦軸線のなす面と支柱の公差部に関して、縦軸線方向に測った最大縦寸法を持ち、また縦軸線方向に対して直角に、隣接する内側容器の間で測った最大幅寸法を持ち、最大縦寸法と最大幅寸法との比が、少なくとも1.25:1である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
最大縦寸法と最大幅寸法との比が少なくとも2:1である、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
最大縦寸法と最大幅寸法との比が少なくとも5:1である、請求項2に記載の容器。
【請求項5】
天井壁が、少なくとも2つの内側容器の間で底壁に対して、縦軸線方向に、外側容器の長さの少なくとも10%にわたって、支柱により支持されている、請求項1〜4の1つに記載の容器。
【請求項6】
天井壁が、少なくとも2つの内側容器の間で底壁に対して、縦軸線方向に、特に外側容器の長さの少なくとも50%にわたって、支柱により支持されている、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
少なくとも2つの内側容器の間で縦に設けられる支柱が、複数の分離した支柱素子を持っている、請求項1〜6の1つに記載の容器。
【請求項8】
支柱が少なくとも2つの内側容器の全長にわたって延びている、請求項1〜7の1つに記載の容器。
【請求項9】
少なくとも2つの内側容器がそれぞれ円筒状に形成されている、請求項1〜8の1つに記載の容器。
【請求項10】
少なくとも2つの内側容器が、その端部で、外側容器の側壁に懸架され、従って縦方向における熱膨張が吸収される、請求項1〜9の1つに記載の容器。
【請求項11】
支柱が少なくとも部分的に炭素繊維から成っている、請求項1〜10の1つに記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−533637(P2009−533637A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508155(P2009−508155)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003330
【国際公開番号】WO2007/118695
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(503211264)マグナ・シユタイル・フアールツオイクテヒニク・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (18)
【Fターム(参考)】