説明

低透過ホース

【課題】耐クラック性を改善し、耐冷媒透過性に優れる低透過ホースを提供する。
【解決手段】少なくとも冷媒バリア層3を有する低透過ホース1であって、前記冷媒バリア層3が、金属層32と樹脂層31,33とを積層する構成を有し、前記金属層32が、降伏点強度が500N/mm2以上、降伏点伸びが0.70%以上、かつ、厚みが0.5〜200μmの金属箔からなることにより、耐クラック性、耐冷媒透過性の優れる低透過ホース1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低透過ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコン等に使用される冷媒輸送用のホースとして、ポリアミド樹脂または変性ブチルゴムをベースとした冷媒バリア層を内管に用いたホースが一般的に用いられている。
また、このようなホースの冷媒として従来よりR134aが用いられてきたが、R134aの地球温暖化係数は二酸化炭素(CO2)の約1300倍と大きいため、ホースからの冷媒漏洩を限りなくゼロに近づけることが、地球環境保全的に重要な技術となってきていた。
【0003】
このような技術として、冷媒バリア層に金属蒸着膜や金属薄膜(金属箔)を用いるものが種々検討されてきているが(例えば、特許文献1〜5等参照。)、いずれの冷媒バリア層もホースの変形に対する追従性能が十分でなく、クラックが発生し、耐冷媒透過性(冷媒に対するバリア性)に劣る場合があった。
【0004】
一方、近年では、R134aの代替物質として、次世代冷媒であるCO2が注目されてきている。
また、冷媒としてCO2を用いた場合は、そのシステム上、CO2が気体状態および液体状態のみならず、それらの混合状態(超臨界状態)を経由することになるため、R134aを冷媒に用いたホースよりも高いレベルの耐熱性、耐冷媒透過性が必要となることが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−209224号公報
【特許文献2】特開平2−80881号公報
【特許文献3】特開2002−166494号公報
【特許文献4】特開2002−174369号公報
【特許文献5】特開2003−277897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、耐クラック性を改善し、耐冷媒透過性に優れる低透過ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、降伏点強度と降伏点伸びが所定の値以上である金属箔を冷媒バリア層に有する低透過ホースが、耐クラック性を改善し、耐冷媒透過性に優れる低透過ホースとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)少なくとも冷媒バリア層を有する低透過ホースであって、
上記冷媒バリア層が、金属層と樹脂層とを積層する構成を有し、
上記金属層が、降伏点強度が500N/mm2以上、降伏点伸びが0.70%以上、かつ、厚みが0.5〜200μmの金属箔からなる、低透過ホース。
(2)上記冷媒バリア層が、上記金属層を上記樹脂層間に積層する構成を有する上記(1)に記載の低透過ホース。
(3)上記金属層と、上記樹脂層とが、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着される上記(1)または(2)に記載の低透過ホース。
(4)上記金属層と、上記樹脂層のうち少なくとも上記金属層の内側の樹脂層とが、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着される上記(2)に記載の低透過ホース。
(5)上記金属層が、ステンレスまたは銅合金の金属箔からなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の低透過ホース。
(6)上記銅合金が、コルソン合金である上記(5)に記載の低透過ホース。
(7)上記樹脂層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する組成物を用いて形成される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の低透過ホース。
(8)上記樹脂層が、ポリアミド樹脂を含有する組成物を用いて形成される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の低透過ホース。
(9)更に、上記冷媒バリア層の内側に樹脂最内層を有し、上記冷媒バリア層の外側にゴム内層を有し、該樹脂最内層と該冷媒バリア層、および、該冷媒バリア層と該ゴム内層が、それぞれフェノール樹脂系接着剤により接着される上記(8)に記載の低透過ホース。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明するように、本発明によれば、耐クラック性を改善し、耐冷媒透過性に優れる低透過ホースを提供することができる。
このような本発明の低透過ホースは、種々の冷媒輸送用ホースに好適に用いられ、特にカーエアコン用冷媒輸送用ホースとして好適に用いられるため非常に有用である。
また、本発明の低透過ホースは、冷媒バリア層を構成する金属層と樹脂層との接着に、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤を用いることにより、超臨界状態のCO2に曝されても接着部の破壊が起こらず、CO2を冷媒に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の低透過ホースは、少なくとも冷媒バリア層を有する低透過ホースであって、上記冷媒バリア層が、金属層と樹脂層とを積層する構成を有し、上記金属層が、降伏点強度が500N/mm2以上、降伏点伸びが0.70%以上、かつ、厚みが0.5〜200μmの金属箔からなるホースである。
【0011】
ここで、本発明の低透過ホースの好適な実施態様の一例を図1を用いて説明する。図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
図1のように、低透過ホース1は、樹脂最内層2、冷媒バリア層3およびゴム内層4を内管として有し、その上層に補強層5およびゴム外層6を外管として有するものである。また、冷媒バリア層3は、樹脂層31、金属層32および樹脂層33を有している。
なお、内管は、図1においては、冷媒バリア層3を樹脂最内層2とゴム内層4とで挟む3層構造をとっているが、樹脂最内層2と冷媒バリア層3とからなる2層構造または冷媒バリア層3とゴム内層4とからなる2層構造をとっていてもよい。
【0012】
次に、本発明の低透過ホースを構成する冷媒バリア層ならびに所望により有する樹脂最内層、ゴム内層、補強層およびゴム外層について詳述する。
【0013】
<冷媒バリア層>
上記冷媒バリア層は、金属層と樹脂層とを積層する構成を有する積層フィルムであれば特に限定されないが、金属層を樹脂層間に積層する、即ち、金属層を樹脂層と樹脂層との間に挟み込んだ構成を有する積層フィルムであるのが、ホースの変形に対する冷媒バリア層の追従性能が向上し、耐クラック性および耐冷媒透過性がより良好となる理由から好ましい。
【0014】
本発明においては、上記金属層は、降伏点強度が500N/mm2以上、降伏点伸びが0.70%以上の金属箔である。また、降伏点強度は、500〜1500N/mm2であるのが好ましく、500〜1100N/mm2であるのがより好ましい。
降伏点強度および降伏点伸びがこの範囲であると、金属箔を冷媒バリア層に有する低透過ホースの耐クラック性および耐冷媒透過性が良好となる。
これは、降伏点強度と降伏点伸びがこの値以上であれば、ホース使用時のホースの変形によっても、金属箔が弾性変形を示し、ホースの変形に対する追従性能が向上するためであると考えられる。
【0015】
ここで、上記降伏点強度および上記降伏点伸びの値は、ASTM−E−345に規定する測定方法に即して以下の方法で測定した値をいう。
(1)滑らかでねじれやしわのない金属箔からJDC#50カッターを用いて、152.4mm×12.7mmの引張試験用試料5枚を準備する。
(2)この試料の重量を0.001gまで測定する。
(3)平均断面積を測定する。
平均厚さ(mm)=試料重量(g)/{試料表面積(mm2)×金属密度(g/mm3)}
平均断面積(mm2)=試料重量(g)/{試料長さ(mm)×金属密度(g/mm3)}
(4)室温における試験:次の条件で試験を行う。
(i)ゲージ長さ 50mm
(ii)クロスヘッドスピード 50mm/分
(iii)チャートスピード 500mm/分
(5)降伏点強度および降伏点伸びを計算する。
降伏点強度(g/mm2)=降伏点荷重(g)/平均断面積(mm2
降伏点伸び(%)=[{降伏点長さ(mm)−元のゲージ長さ(mm)}/元のゲージ長さ(mm)]×100
【0016】
また、本発明においては、上記金属層は、厚みが0.5〜200μmの金属箔であり、3〜100μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ましい。金属箔の厚みがこの範囲であると、ホースの変形に対する冷媒バリア層の追従性能が十分となり、クラックが発生し、耐クラック性および耐冷媒透過性が良好となる。
【0017】
このような金属層を構成する金属は、金属箔とした場合に降伏点強度および降伏点伸びが上述した範囲となるものであれば限定されない。
具体的には、ステンレス、銅合金等が好適に例示され、ホースとしての剛性、取り扱い性に優れる観点から、銅合金であるのが好ましく、コルソン合金であるのがより好ましい。
本発明においては、このような金属として市販品を用いることができ、例えば、ステンレス(SUS304、日鉱金属社製)、コルソン合金(日鉱金属社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、上記樹脂層は、1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよい。なお、上記金属層を樹脂層間に積層する場合は、上記金属層の内側の樹脂層および外側の樹脂層のそれぞれが、1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよい。
【0019】
また、本発明においては、上記樹脂層は、樹脂組成物を用いて形成することができるが、樹脂組成物に含有する樹脂は同種であっても異種であってもよい。なお、ここで、樹脂組成物とは、樹脂および必要がある場合には添加剤を含有する組成物である。
このような樹脂組成物に含有する樹脂は特に限定されないが、破断強度、破断伸びに優れた樹脂や、ホース製造時に他のゴム層や樹脂層と接合が可能な樹脂等を好適に用いることができる。
具体的には、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好適に例示され、中でも、ポリアミド樹脂であるのが好ましい。
【0020】
上記ポリアミド樹脂としては、具体的には、例えば、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン666、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、これらの共重合体であるのが好ましい。
【0021】
上記ポリエステル樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、PETであるのが好ましい。
【0022】
上記ポリイミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、PIであるのが好ましい。
【0023】
また、所望により樹脂組成物に含有させる添加剤としては、例えば、加硫剤、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、加硫促進剤、軟化剤、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、樹脂層に用いられる樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
【0024】
本発明においては、上記冷媒バリア層を構成する上記金属層および上記樹脂層は、例えば、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の接着剤を用いて接着する方法;圧延ロールで延ばしてフィルムにする方法;等により積層することができる。
これらのうち、接着剤、特に、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着するのが以下に示す理由から好ましい。なお、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤による接着は、上記冷媒バリア層が上記金属層を上記樹脂層間に積層する構成を有する場合は、上記金属層と、上記樹脂層のうち少なくとも上記金属層の内側の樹脂層とが、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着したものであるのが好ましい。また、この場合においては、上記樹脂層のうち少なくとも上記金属層の外側の樹脂層とは、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等により接着させてもよい。
【0025】
上記ポリアミド・エポキシ反応型接着剤は、アルコール可溶性ポリアミド樹脂および多官能エポキシ樹脂よりなるフレキシブル変性エポキシ系接着剤であれば特に限定されず、その具体例としては、後述の実施例で示す東亞合成社製のアロンマイティBX−60等が好適に挙げられる。
【0026】
このようなポリアミド・エポキシ反応型接着剤を用いて接着することにより、得られる冷媒バリア層を有する本発明の低透過ホースは、冷媒としてCO2を用いることができる。これは、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤が、優れた耐熱性および超臨界状態のCO2に対する耐性を示し、超臨界状態のCO2に曝されても金属層と樹脂層とが、界面で剥離しないためであると考えられる。
【0027】
また、本発明においては、上記冷媒バリア層の厚みは、1〜500μmであるのが好ましく、5〜200μmであるのがより好ましい。冷媒バリア層の厚さがこの範囲であると、フィルムの耐冷媒透過性を十分に維持しながら、ホースへの追随性を十分に確保できる。
【0028】
<樹脂最内層>
上記樹脂最内層は、上記冷媒バリア層の内側に、バリア層を均一に隙間なく巻きつけ、バリア層同士を強固に接着させる観点から所望により設けられる最内層である。
本発明においては、上記樹脂最内層は、上記冷媒バリア層を構成する上記樹脂層と同様、樹脂組成物を用いて形成することができ、樹脂組成物に含有する樹脂は同種であっても異種であってもよい。
このような樹脂組成物に含有する樹脂は特に限定されないが、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム/ポリプロピレンゴム系熱可塑性樹脂等を用いることができ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド樹脂を用いるのが、上記冷媒バリア層との接着性に優れる理由から好ましい。
また、本発明においては、上記樹脂最内層の厚みは、30〜300μmであるのが好ましく、50〜200μmであるのがより好ましい。
【0029】
<ゴム内層>
上記ゴム内層は、上記冷媒バリア層の外側に、後述する補強層との接着の観点から所望により設けられる内層である。
本発明においては、上記ゴム内層は、ゴム組成物を用いて形成することができるが、ゴム組成物に含有するゴムは同種であっても異種であってもよい。なお、ここで、ゴム組成物とは、ゴムおよび必要がある場合には上述した各種添加剤を含有する組成物である。
このようなゴム組成物に含有するゴムは特に限定されないが、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、水素添加NBR(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化メチルポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合ゴムのハロゲン化物(BIMS)等を用いることができ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明においては、上記ゴム内層の厚みは、1〜5mmであるのが好ましく、1.5〜3mmであるのがより好ましい。
【0030】
<補強層>
上記補強層は、上記ゴム内層の外側に、強度保持の観点から所望により設けられる層である。
本発明においては、上記補強層は、ブレード状で形成されたものでもスパイラル状で形成されたものでもよい。また、上記補強層を形成する材料は特に限定されないが、ビニロン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維(例えば、PET、PEN等)、芳香族ポリアミド繊維、ポリケトン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリケトン繊維などの繊維材料;硬鋼線(例えば、防錆および接着性付与のために使用するブラスメッキワイヤー、亜鉛メッキワイヤー等)などの金属材料;等が好適に例示される。
【0031】
<ゴム外層>
上記ゴム外層は、上記補強層の外側に、上記補強層を保護する観点から所望により設けられる層である。
本発明においては、上記ゴム外層は、上記ゴム内層と同様、ゴム組成物を用いて形成することができ、ゴム組成物に含有するゴムは同種であっても異種であってもよい。
このようなゴム組成物に含有するゴムは特に限定されないが、NBR、IIR、EPDM、HNBR、CR、CSM、CM等を用いることができ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明においては、上記ゴム外層の厚みは、1〜5mmであるのが好ましく、1.5〜3mmであるのがより好ましい。
【0032】
上記冷媒バリア層ならびに所望により設けられる上記樹脂最内層、上記ゴム内層、上記補強層および上記ゴム外層を有する本発明の低透過ホースの製造方法は特に限定されず、ホースの製造方法として従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、マンドレル上に、上記樹脂最内層、上記冷媒バリア層、上記ゴム内層、上記補強層および上記ゴム外層をこの順に積層させた後に、それらの層を140〜190℃下、30〜180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法等が好適に例示される。
【0033】
なお、本発明の低透過ホースをCO2冷媒輸送用ホースなどの耐熱性が特に要求される用途に使用する場合には、上記樹脂層を熱融着させて上記樹脂最内層および/または上記ゴム内層と接合させると、ホース使用時に上記樹脂層と上記樹脂最内層および/または上記ゴム内層との接着が弱まる可能性があるため、上記樹脂最内層と上記冷媒バリア層、および、上記冷媒バリア層と上記ゴム内層とを、それぞれ接着剤により接着するのが好ましい。
このような接着剤は、樹脂と、樹脂またはゴムとを接着することができる接着剤であれば特に限定されず、その具体例としては、ハロゲン化フェノール樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂およびクレゾール樹脂などのフェノール樹脂系接着剤等が好適に挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を用いて本発明の低透過ホースについてより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
<冷媒バリア層A1の調製>
冷媒バリア層A1として、厚さ20μm、破断強度1140N/mm2、破断伸び6%、降伏点強度1100N/mm2、降伏点伸び0.75%のステンレス箔(SUS304、日鉱金属社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ5μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0036】
<冷媒バリア層A2の調製>
冷媒バリア層A2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)を用いた以外は冷媒バリア層A1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0037】
<冷媒バリア層A3の調製>
冷媒バリア層A3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層A1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0038】
<冷媒バリア層A4の調製>
冷媒バリア層A4として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層A1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0039】
<冷媒バリア層B1の調製>
冷媒バリア層B1として、厚さ18μm、破断強度800N/mm2、破断伸び10%、降伏点強度780N/mm2、降伏点伸び1.10%の銅合金(コルソン合金、日鉱金属社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ5μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0040】
<冷媒バリア層B2の調製>
冷媒バリア層B2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)を用いた以外は冷媒バリア層B1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0041】
<冷媒バリア層B3の調製>
冷媒バリア層B3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層B1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0042】
<冷媒バリア層B4の調製>
冷媒バリア層B4として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層B1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0043】
<冷媒バリア層C1の調製>
冷媒バリア層C1として、厚さ18μm、破断強度420N/mm2、破断伸び5%、降伏点強度410N/mm2、降伏点伸び0.67%の一般銅(HS−1200、日鉱金属社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ5μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0044】
<冷媒バリア層C2の調製>
冷媒バリア層C2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層C1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0045】
<冷媒バリア層C3の調製>
冷媒バリア層C3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層C1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0046】
<冷媒バリア層D1の調製>
冷媒バリア層D1として、厚さ9μm、破断強度420N/mm2、破断伸び5%、降伏点強度410N/mm2、降伏点伸び0.67%の一般銅(HS−1200、日鉱金属社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ5μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0047】
<冷媒バリア層D2の調製>
冷媒バリア層D2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層D1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0048】
<冷媒バリア層D3の調製>
冷媒バリア層D3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層D1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0049】
<冷媒バリア層E1の調製>
冷媒バリア層E1として、厚さ30μm、破断強度75N/mm2、破断伸び15%、降伏点強度27N/mm2、降伏点伸び0.20%の一般アルミニウム(1N30、住軽アルミ箔社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ5μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0050】
<冷媒バリア層E2の調製>
冷媒バリア層E2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層E1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0051】
<冷媒バリア層E3の調製>
冷媒バリア層E3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層E1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0052】
<冷媒バリア層F1の調製>
冷媒バリア層F1として、厚さ30μm、破断強度100N/mm2、破断伸び21%、降伏点強度50N/mm2、降伏点伸び0.20%の高強度アルミニウム(8021、住軽アルミ箔社製)の両面に、それぞれ、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤(アロンマイティBX−60、東亞合成社製)を厚さ10μmとなるように塗布し、その上に樹脂層としてナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)をそれぞれ積層したものを用いた。
【0053】
<冷媒バリア層F2の調製>
冷媒バリア層F2として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ15μm)の代わりにPETの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層F1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0054】
<冷媒バリア層F3の調製>
冷媒バリア層F3として、ナイロン6の延伸フィルム(厚さ25μm)の代わりにPIの延伸フィルム(厚さ25μm)を用いた以外は冷媒バリア層F1と同様の方法により積層したものを用いた。
【0055】
得られた各冷媒バリア層をJIS1号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用いて、各冷媒バリア層を有する低透過ホースとしての耐クラック性を、以下の試験結果から判断した。
【0056】
(耐クラック性)
上記試験片を、温度120℃、変位・振幅2.0±0.25%、周波数7.5Hzの繰返し疲労試験に供し、試験体表面の亀裂の有無を目視により確認した。なお、変位・振幅2.0±0.25%は、ホースでの推定変位・振幅にほぼ等しく、計算上、ホースでは、1.75±0.15%となる。また、7.5Hzは、繰返し疲労試験の回転数である450回転に相当する。
この結果、15時間経過しても亀裂が確認できないものを「○」と評価し、15時間経過前に亀裂が確認できたものを「×」と評価した。結果を下記表1に示す。
なお、「○」と評価したものは、ホースとしての耐クラック性が優れると評価でき、「×」と評価したものは、ホースとしての耐クラック性が劣ると評価できる。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
上記表1に示す結果から、冷媒バリア層A1〜A4およびB1〜B4を有する低透過ホースは、耐クラック性が優れることが分かり、その結果から、耐冷媒透過性も優れると評価できる。
これに対し、降伏点強度および降伏点伸びが所定の範囲以下である金属箔を有する冷媒バリア層C1〜C3、D1〜D3、E1〜E3およびF1〜F3を有する低透過ホースは、耐クラック性が劣り、その結果から、耐冷媒透過性にも劣ることが分かる。
【0061】
<低透過ホースの作製>
(実施例1)
最内層樹脂であるナイロン6を樹脂用クロスヘッド型の押出機で、直径6mmのマンドレルの外周に押出し、厚さ0. 2mmの最内層を形成させた後に、フェノール系接着剤を塗布し、上記で得られた冷媒バリア層A1の上面にフェノール系接着剤を塗布しながらハーフラップでらせん状に巻き、厚さ0.2mmの冷媒バリア層を形成した。
次いで、形成した冷媒バリア層の上に、内管ゴム用組成物であるHNBRゴム組成物をゴム用クロスヘッドダイ型の押出機を用いて押出し、厚さ1.6mmのゴム内層を形成した。このゴム内層の上に、アラミド糸からなる補強材を編み組みして(1500d、80本)、補強層を形成した。
次いで、形成した補強層の上に、外管ゴム用組成物であるEPDMゴム組成物をゴム用クロスヘッドダイ型の押出機を用いて押出し、厚さ1.2mmのゴム外層を形成した。
その後、150℃で加硫した後、マンドレルを抜取り、低透過ホースA1を得た。
【0062】
(実施例2)
冷媒バリア層A1に代えて冷媒バリア層B1を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、低透過ホースB1を得た。
【0063】
(比較例1)
冷媒バリア層A1に代えて冷媒バリア層C1を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、低透過ホースC1を得た。
【0064】
(比較例2)
冷媒バリア層A1に代えて冷媒バリア層F1を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、低透過ホースF1を得た。
【0065】
得られた各低透過ホースについて、以下に示す方法により、超臨界状態の二酸化炭素に対する耐透過性(耐超臨界CO2透過性)およびホイップ試験後の耐クラック性を評価した。
【0066】
(耐超臨界CO2透過性)
得られた各低透過ホースに対して、耐冷媒透過試験を行った。
耐冷媒透過試験は、冷媒として二酸化炭素を使用し、それぞれの場合において、特開2001−349801号公報に記載してあるホースのガス透過量測定方法およびその測定装置を用いて行った。
具体的には、得られた各低透過ホースのそれぞれについて、ホース両端に金具を装着した長さ50cmのホース2本を用意し、あらかじめ70℃で4時間加熱しておき、1本のホースはリザーバタンクを連結し、20℃で5.5MPaになるまで冷媒を封入した。他方のホースは冷媒を封入せずに密閉した。そして、120℃で72時間後における質量を測定することで、ガス透過量を算出し、耐超臨界CO2透過性を調べた。結果を下記表2に示す。
【0067】
(ホイップ試験後の耐クラック性)
得られた各低透過ホースに対して、ホイップ試験を行った。
ホイップ試験は、温度120℃、圧力4.0MPaでホース内部にN2ガスを導入した状態で、該ホースを図2に示す回転疲労試験機30(31:ホース、32:平行軸、33:回転円板、34:圧力計、35:加圧シリンダー、36:重錘)に取り付け、規定の条件(回転数:450rpm/分、回転半径:5mm、回転時間:100時間、試料長さL:300mm、取り付け距離S:190mm)で円運動するように調整して行った。
なお、クラックの有無は、上記ホイップ試験後の各低透過ホースを縦方向に分割し、分割されたホースの内面を目視にて確認した。亀裂のない状態であるものを耐クラック性が優れるホースとして「○」と評価し、亀裂の入っている状態であるものを耐クラック性が劣るホースとして「×」と評価した。結果を下記表2に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
表2に示す結果より、実施例1および2で作製した低透過ホースA1およびB1は、超臨界状態のCO2に対しても耐透過性を有しているから耐冷媒透過性に優れていることが分かった。また、比較例1および2に比べ、ホイップ試験後においても耐クラック性に優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の低透過ホースの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、ホイップ試験に用いた回転疲労試験機を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 低透過ホース
2 樹脂最内層
3 冷媒バリア層
31,33 樹脂層
32 金属層
4 ゴム内層
5 補強層
6 ゴム外層
30 回転疲労試験機
31 ホース
32 平行軸
33 回転円板
34 圧力計
35 加圧シリンダー
36 重錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも冷媒バリア層を有する低透過ホースであって、
前記冷媒バリア層が、金属層と樹脂層とを積層する構成を有し、
前記金属層が、降伏点強度が500N/mm2以上、降伏点伸びが0.70%以上、かつ、厚みが0.5〜200μmの金属箔からなる、低透過ホース。
【請求項2】
前記冷媒バリア層が、前記金属層を前記樹脂層間に積層する構成を有する請求項1に記載の低透過ホース。
【請求項3】
前記金属層と、前記樹脂層とが、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着される請求項1または2に記載の低透過ホース。
【請求項4】
前記金属層と、前記樹脂層のうち少なくとも前記金属層の内側の樹脂層とが、ポリアミド・エポキシ反応型接着剤により接着される請求項2に記載の低透過ホース。
【請求項5】
前記金属層が、ステンレスまたは銅合金の金属箔からなる請求項1〜4のいずれかに記載の低透過ホース。
【請求項6】
前記銅合金が、コルソン合金である請求項5に記載の低透過ホース。
【請求項7】
前記樹脂層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する組成物を用いて形成される請求項1〜6のいずれかに記載の低透過ホース。
【請求項8】
前記樹脂層が、ポリアミド樹脂を含有する組成物を用いて形成される請求項1〜6のいずれかに記載の低透過ホース。
【請求項9】
更に、前記冷媒バリア層の内側に樹脂最内層を有し、前記冷媒バリア層の外側にゴム内層を有し、該樹脂最内層と該冷媒バリア層、および、該冷媒バリア層と該ゴム内層が、それぞれフェノール樹脂系接着剤により接着される請求項8に記載の低透過ホース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−291910(P2008−291910A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137589(P2007−137589)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】