説明

作動弁の故障を検出するための装置および方法

【課題】本発明は、曲面板(13)を備える航空機用燃料管弁(1)に関するものである。
【解決手段】前記曲面板(13)は、弁本体(16)内で回転可能で、且つ電気アクチュエータ(11)に駆動される駆動軸(14)に連結され、前記弁は、トルク生成手段(18)と位置検出手段(19)を更に備える。前記トルク生成手段は、曲面板(13)に連結され、駆動軸(14)上の弁本体(16)にある曲面板の位置に基づいて変化するトルクを発生させる。前記位置検出手段(19)は、前記駆動軸の位置の特性を表す電気信号を提供する。また、本発明は、弁の作動中に故障を検出するためにかかる弁の動作を診断する方法と、前記方法を実施する装置も提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔制御されたアクチュエータによって作動される弁に関する。より詳細には、本発明は特に、航空機燃料回路など安全性の確保が必要であるため重要な回路内で弁が使用される際、弁の駆動シャフトまたはモータなど弁の主な構成部材の故障を検出するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機燃料回路は一般に、エンジンへの燃料供給を遮断する、燃料の補給または独立したタンク間での燃料の移動のために開放するなどの機能を果たす燃料弁を備える。
【0003】
図1に示されるように、弁1は、減速装置に結合された電気モータ12によって駆動されるアクチュエータ11を備える。アクチュエータ11は、燃料タンク15内を貫通する駆動シャフト14を利用して球体のボール13を回転させる。球体のボール13は、弁本体16内部に挿入され、前記弁本体内で軸132を中心に一体となって回転するように設置される。球体のボール13は、軸132に対してほぼ直交する軸134の貫通開口133を有する。弁本体16は、球体ボールの直径より実質的に小さい直径のほぼ円筒形の2つの端部161を有し、この端部に燃料フローパイプ17が固定される。軸171の2つの端部161は実質的に一直線上にあり、軸132に対してほぼ直交している。
【0004】
このような燃料弁では、通常の作動では中間位置は存在せず、弁は、開放位置または閉鎖位置のいずれかにある。
【0005】
弁が開放位置にあるとき、燃料が流れることができるように、球体のボール13の開口133の軸134とフローパイプ17の軸171は、ほぼ同軸である。
【0006】
弁が閉鎖位置にあるとき、燃料の流れを遮断するために、球体のボール13の開口133の軸134とフローパイプ17の軸171は、ほぼ直交する。
【0007】
この種の弁を監視するための現在の方法は、アクチュエータ11内に配置されたスイッチを利用して、弁の制御された位置と弁の検出された位置とを比較することである。この監視装置の欠点は、例えば、電気的接触の問題またはスイッチ機構の損傷によって1つまたは複数のスイッチが作動しなくなる恐れがあることである。この場合、弁の位置を判定することはできなくなり、例えば、「原因不明の故障」などのエラーメッセージが航空機を監視するシステムに返される。次いで、既知位置で弁を閉鎖しアクチュエータ11を交換するためにメンテナンス作業が必要であり、これは、航空機の運航休止を伴うことがあり、故障を検出し修復作業を行うのに比較的長い時間が必要とされる場合がある。別の制限は、アクチュエータ11の位置のみが監視され、球体のボール13の実際の位置または駆動シャフト14の実際の位置が監視されないという事実にある。この制限は、目に見えない故障の可能性につながる。したがって、例えば、駆動シャフト14の故障が検出されないまま、球体のボール13が対応する位置にないにもかかわらず、アクチュエータ11の位置を検出しフライトデッキに送信してしまう可能性がある。このような目に見えない故障は、駆動シャフト14の故障の中でも、航空機の作動有効性に影響を与えやすく、弁が正確に作動しているかをチェックするために、一定の間隔のメンテナンス作業をプログラムする必要があり、これは、航空路線にとって不利益となり得る。
【0008】
1つの解決策は、球体のボール13に位置センサを付加することである。しかしながら、このようなセンサを使用すると、燃料タンク内にケーブルを引き込むことになり、これは短絡を引き起こす恐れがある。
【0009】
特許文献1〜5には、実際にモータ内にあるいは駆動シャフト14にまたはこれに隣接して配置された位置センサに結合された専用マイクロプロセッサを使用する多様な装置が記載されている。こういった解決策は、複雑であることが証明されており、センサの数、およびセンサに結合され、燃料タンクに近接する動力供給装置の数が増加するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2003/193310号
【特許文献2】米国特許出願第2005/156550号
【特許文献3】特許第7280705号
【特許文献4】特許第1121733号
【特許文献5】特開昭58(1993)−349329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、弁、および前記弁の故障を検出するために作動中の弁の作動を診断する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
航空機燃料回路弁は、燃料フローパイプに接続することができる弁本体内にボールを備え、前記ボールは、前記弁本体内で軸を中心に回転することができ、電気アクチュエータによって回転される駆動シャフトの第1端部に固定される。前記ボールは、回転軸に対してほぼ直交している軸の貫通開口を有し、前記ボールの回転範囲の2つの端部に、
−パイプ内に燃料が流れることができるように開口の軸が配向される、開放位置と呼ばれるボールの第1の位置と、
−パイプ内に燃料が流れないように開口の軸が配向される、閉鎖位置と呼ばれるボールの第2の位置との2つの安定した位置を有する。
【0013】
本発明によると、航空機燃料回路弁は、
−ボールに固定された補助シャフトの一端に配置され、駆動シャフトに対して、弁本体内のボールの位置によって変えることができるトルクを生成し、アクチュエータによって引き込まれる電流を増加させることができるトルク生成手段と、
−第1端部の反対側の駆動シャフトの第2端部に配置され、前記駆動シャフトの位置を示す信号を出力することができる位置検出手段とを備える。
【0014】
有利には、トルク生成手段および位置検出手段は、ボールが開放位置から閉鎖位置へ進む際、閉鎖位置が検出されるまでトルクが増加し、ボールが閉鎖位置から開放位置に進む際、開放位置が検出されるまでトルクが増加するように配置される。
【0015】
トルク生成手段は、回転範囲の2つの端部に近づくまでは有意なトルクを生成せず、各端部近傍から該当する端部に至るまで徐々に増加するトルクを生成する。
【0016】
本発明の一実施形態において、トルク生成手段は、
−自由端側で補助シャフトに固定され、少なくとも1つの突出部材を有するディスクと、
−弁本体上に配置され、ボールがほぼ開放位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材が1つの停止部材に接触し、ボールがほぼ閉鎖位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材が第2の停止部材に接触するように構成された2つの停止部材とを備える。
【0017】
本発明の別の実施形態において、トルク生成手段は、
−自由端側で補助シャフトに固定され、少なくとも1つの突出部材を有するディスクと、
−弁本体上に配置された1つの停止部材とを備え、これらは、ボールがほぼ開放位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材が停止部材の第1フランクに接触し、ボールがほぼ閉鎖位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材が停止部材の第2フランクに接触するように構成される。
【0018】
有利には、位置検出手段は、開放位置を示す少なくとも1つの信号と、閉鎖位置を示す少なくとも1つの信号とを生成する。
【0019】
本発明の一実施形態において、位置検出手段は、
−第2端部側で駆動シャフトに固定され、少なくとも1つの突出部材を有するカムと、
−突出部材の位置を感知できる、回転範囲の各端に配置された少なくとも1つの位置検出器とを備え、
その結果、少なくとも1つの位置検出器が、突出部材の作用の下で状態を変化させる。
【0020】
本発明の別の実施形態において、位置検出手段は、回転範囲の各端に少なくとも2つの位置検出器を備え、これらは、ボールが開放位置から閉鎖位置に進む際、第1位置検出器が、第2位置検出器の前に前記駆動シャフトの位置を示す信号を出力し、ボールが閉鎖位置から開放位置に進む際、第1位置検出器が、第2位置検出器の前に前記駆動シャフトの位置を示す信号を出力するように配置される。
【0021】
本発明はまた、作動中の燃料回路弁の動作を診断する方法に関し、この方法では、ボールを枢動させるためにアクチュエータに送信される制御信号の整合性が、トルク生成手段および位置検出手段によって生成された信号によってチェックされる、または非整合性が検出される。
【0022】
本発明はまた、前記方法を実装するための装置に関する。前記装置は、
−電気アクチュエータの回転を制御し、またトルク生成手段および位置検出手段によって生成された信号を記録することができる制御手段と、
−アクチュエータに必要な電流を出力することができる動力供給手段と、
−電流の強度を測定し、アクチュエータによって引き込まれた電流を分析することができる電流制御手段と、
−航空機燃料回路弁が作動しなくなった場合警告メッセージを生成することができるメンテナンス手段とを備える。
【0023】
本発明を、図面を参照して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既に記載した従来技術による燃料弁の断面図である。
【図2】本発明による燃料弁の断面図である。
【図3】燃料弁に連結されるトルク生成手段の上面図である。
【図4】燃料弁に連結されるトルク生成手段の分解組み立て図である。
【図5】燃料弁に連結される位置検出手段の図である。
【図6】本発明による燃料弁を含む故障検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による航空機燃料回路の燃料弁1は、図2に示されるように、減速装置に結合された少なくとも1つの電気モータ12によって駆動されるアクチュエータ11を含む。モータ駆動のアクチュエータ11は、タンクの1つの壁の中の耐湿性の通路を介して燃料タンク内に貫通する駆動シャフト14を回転させる。駆動シャフト14は、第1端部143で球体のボール13を駆動させる。
【0026】
球体のボール13は、補助シャフト131に固定され、燃料弁本体16内に挿入され、補助シャフト131は前記弁本体の外部に突出する。球体のボール13および補助シャフト131は、弁本体16内部で軸132を中心に一体となって回転するように設置される。
【0027】
本発明は、球体のボール13の場合を記載するが、この選択は限定するものではなく、実際にはボールは、軸132を中心に回転する面を有するという条件で、例えば、円柱形状など他の任意の形状を有してもよい。
【0028】
弁本体16は、球体のボール13の直径より実質的に小さい直径のほぼ円筒形の2つの開口端部161を有し、この端部に燃料フローパイプ17が固定される。軸171の2つの端部161は実質的に一直線上にあり、軸132に対してほぼ直交している。
【0029】
球体のボール13は、軸132に対してほぼ直交している軸134の貫通開口133を有する。2つのフローパイプ17の間を燃料が流れるようにする、あるいは流れないようにするために、球体のボール13の開口133は、2つの安定した位置、すなわち
−燃料が流れることができるように、球体のボール13の開口133の軸134と、フローパイプ17の軸171がほぼ同軸である、開放位置と呼ばれる第1の位置と、
−燃料が流れないように球体のボール13の開口133の軸134と、フローパイプ17の軸171がほぼ直交している、閉鎖位置と呼ばれる第2の位置と
の間で軸132を中心に球体のボール13を回転させることによって前記フローパイプ17に対して配置される。
【0030】
燃料弁1はさらに、図3および図4に示されるように、トルク生成手段18を含む。
【0031】
シャフト131は、弁本体16の外部から接触可能な一端135に、ディスク181が設置される面136を有し、このディスクは好ましくは、シャフト131の面とほぼ同一の直径を有する。前記ディスクは、外周面182上に少なくとも1つの突出部材183を含む。
【0032】
好ましくは、前記少なくとも1つの突出部材183は、ディスク181上の突出物であり、同一の部分として形成されている。
【0033】
一実施形態において、前記少なくとも1つの突出部材183は、その大きな底部によってディスクの外周面に固定された半円錐形(截頭円錐形)の部材によって形成される。
【0034】
有利にはディスク181は、エラストマー材料で作製され、前記材料は、剛性および耐燃料性の材料から選択される必要がある。
【0035】
好ましくはディスク181は、外周面182全体またはその一部の上に、耐摩耗性の面を実現するために前記外周面を覆うフォイルを含む。好ましくはフォイルは、金属材料で作製される。
【0036】
ディスク181は、カバープレート185を利用して補助シャフト131に固定されて維持される。前記ディスクと前記補助シャフトの間のいかなる相対運動も阻止するために、カバープレート185は、例えば、ブロック溝または回転防止装置などの封鎖手段186を含む。
【0037】
カバ−プレート185およびディスク181は、固定部材187を利用して補助シャフトに固定される。図4に示される例では、固定部材は、ワッシャー188に連結されたボルトである。前記ボルトは、カバープレート185およびディスク181を貫通し、シャフト131内に機械加工された前記ボルトに対応するねじ穴137に係合する。
【0038】
例えば、ねじなどの固定部材を利用して、弁本体16に2つの停止部材189が固定される。
【0039】
前記少なくとも1つの突出部材183は、ディスク181が所与の角度位置を取るにあたって第1停止部材189に接触し、ディスク181が別の所与の角度位置を取るにあたって第2停止部材189に接触する。
【0040】
2つの停止部材189は、球体のボール13が開放位置にあるとき、ディスク181の少なくとも1つの突出部材183が、第1停止部材189に接触し、球体のボール13が閉鎖位置にあるとき、第2の突出部材183が第2停止部材189に接触するように配置される。
【0041】
図3および図4に示される一実施形態において、停止部材189を軸132に対して可能な限り離して所定の位置に配置するために、ディスク181は、同様の結果を得るために角度を有してずらされた(オフセットされた)2つの突出部材を有する。
【0042】
好ましくは停止部材189は、鋼などの強固な材料で形成される。
【0043】
一実施形態において、停止部材189は、その底部の一方が弁本体16に固定されたシリンダによって形成される。
【0044】
ディスク181は、駆動シャフト14に対して固定されている球体のボール13の位置を表す。
【0045】
球体のボール13に固定された補助シャフト131が、球体のボールを開放または閉鎖するために少なくとも1つのモータ12によって一定の方向に回転される際、ディスク181は、少なくとも1つの突出部材183が停止部材189に接触するまで同時に回転される。これは結果として、駆動シャフト14に対するトルクの増加によって発生する抵抗となる。
【0046】
球体のボール13の回転範囲はしたがって、少なくとも1つのモータ12によって引き出された電流レベルの増加から測定可能なトルクの増加によって、各端部で限界を定められる(範囲が決められる)。
【0047】
好ましくはトルクの増加の値は、明確で繰り返し可能な電流突入を形成するのに十分であるが、アクチュエータ減速装置の歯車の歯に疲労問題を招くことがないように、駆動トルクを妥当な値に制限するように注意する。
【0048】
有利にはトルクの変化は、ディスク181の突出部材183の変形レベルを調節することによって制御することができる。この変形の調節は、例えば、ディスク181の直径を修正することによって、または停止部材189と球体のボール13に固定された補助シャフト131との間の空間を修正することによって実行される。
【0049】
別の実施形態において(図示せず)、単一の停止部材189が弁本体16に固定され、前記少なくとも1つの突出部材183が、ディスク181が所与の角度位置を取るにあたって停止部材189の第1フランクに接触し、またディスク181が別の所与の角度位置を取るにあたって停止部材189の第2フランクに接触する。
【0050】
燃料弁1はまた、図5に示されるように、アクチュエータ11の内部に配置された位置検出手段19を含む。前記位置検出手段は、アクチュエータ11の側に配置された第2端部141に、したがって燃料タンクの外側に、駆動シャフト14に固定されたカム191を備える。
【0051】
カム191は、外周面192上に、カム191が所与の角度位置を取るにあたって角度位置検出器195を作動させ、カム191の別の角度位置のために別の角度位置検出器195を作動させる少なくとも1つの突出部材193を有する。
【0052】
2つの位置検出器195およびカム191は、球体のボール13が開放位置にあるとき位置検出器195の一方が作動され、球体のボール13が閉鎖位置にあるとき他方の位置検出器195が作動されるように配置される。
【0053】
図5に示される一実施形態において、位置検出器195を軸132に対してできる限り離して所定の位置に配置するために、カム191は、同一の結果を得るために角度を有してずらされた(オフセットされた)2つの突出部材を有する。
【0054】
好ましくは突出部材193は、カム191上の突出物であり、同一の部分として形成されている。
【0055】
一実施形態において、突出部材193は、その大きな底部を介してカム191の外周面192に固定された半円錐形(截頭円錐形)の部材によって形成される。
【0056】
一実施形態において、位置検出器195は、例えばスイッチなど接触センサであり、その制御レバー196は、カム191の2つの突出部材193の一方と接触する。
【0057】
別の実施形態において、位置検出器195は、例えばホール効果センサなど非接触センサである。
【0058】
位置検出器195は、キャブレータ弁1のアクチュエータ11の位置を示すことを可能にする。
【0059】
有利には位置検出手段19は、各位置検出器195に近接して配置された第2位置検出器197を含む。
【0060】
第2位置検出器197の役割は、2通りある。まず、位置検出器195に不具合があるとき、前記第2位置検出器は、アクチュエータ11の位置を示す信号を返す補助手段として作用する。第2に、駆動シャフト14に不具合があるとき、第2位置検出器197は、アクチュエータが回転範囲を超えていることを信号で知らせる手段として使用される。
【0061】
別の実施形態において、第2位置検出器197は、例えばホール効果センサなど非接触センサである。それらは非接触であるため、第2位置検出器197は、より信頼性がある。
【0062】
有利には燃料弁は、図6に概略的に示される故障検出装置20に組み込まれる。前記装置は、動力供給手段22によって少なくとも1つのモータを制御することができる制御手段21を含む。
【0063】
球体のボール13の回転運動は、他のシステム(図示せず)から受信した信号に応じておよび/または例えば、航空機フライトデッキ内に配置されたスイッチ23など乗務員が作動することができる制御部材を利用して、制御手段21によって生成されたコマンドに応答して開始される。
【0064】
コマンドが生成される際、制御手段21は、データバス24を介して動力供給手段22に信号を送信し、前記動力供給手段が、電気分配ネットワーク25から供給ケーブル29を介して少なくとも1つのモータ12に供給電流を出力する。
【0065】
少なくとも1つのモータ12を作動させることによって、アクチュエータ11は、駆動シャフト14の制御方向におよそ1/4回転だけ回転され、これによって、開放位置から閉鎖位置へまたはその逆に切り換えるために球体のボール13が駆動される。
【0066】
動力供給手段22はさらに、電流強度を測定し、少なくとも1つのモータによって引き込まれた電流を分析することを可能にする電流制御手段26を含む。
【0067】
電流制御手段26によって検出された電流突入が、トルク生成手段18によって生成されたトルクの増加として解釈される際、少なくとも1つのモータを停止させるプレ信号と呼ばれる第1信号が発生される。
【0068】
通常の作動条件の下、制御手段21が、球体のボール13を開放位置または閉鎖位置のいずれかに配置する際、アクチュエータ11付近に配置された少なくとも1つのモータ12に電流が送られる。前記アクチュエータが、駆動シャフト14を回転させ、これによって、トルク生成手段18に固定された球体のボール13が回転する。球体のボール13は、ディスク181の少なくとも1つの突出部材183が停止部材189と接触するまで枢動する。この接触が、球体ボールの回転に対抗する抵抗を招き、これは、少なくとも1つのモータ12によって引き込まれた突入電流によって発生する駆動シャフト14に対するトルクの増加につながる。電流突入が検出される際、制御手段21は、少なくとも1つのモータを停止させるプレ信号を発生する。少なくとも1つのモータ12は、動力を供給されたままであり、位置検出器19のカム191の少なくとも1つの突出部材193が位置検出器195を作動させるまで引き続き駆動シャフト14を駆動させる。少なくとも1つのモータ12に対する供給を遮断し、次いで、少なくとも1つのモータ12への動力遮断信号と呼ばれる第2信号が制御手段21に送信され、この制御手段が駆動シャフト14を停止させ、これは、制御手段21によって生成されたコマンドによって開放位置または閉鎖位置のいずれかに回転しないように駆動シャフト14および球体のボール13を停止させる効果を有する。
【0069】
燃料弁1の通常の作動を分析することによって、トルク生成手段18によって生成されたトルクの増加として解釈される電流突入に関連し、かつ位置検出手段19によって生成された位置検出器の状態に関連する信号は、上記の精密な論理スキームに応答する結果になる。
【0070】
このような燃料弁1の主な故障は、以下の
−球体のボール13の閉塞;
−駆動シャフト14の破断;および
−アクチュエータ11の作動不良;であり、これらは、前記信号に対して、燃料弁1の正確な作動に関連する論理スキームがもはや考慮されなくなるような作用を有する。
【0071】
したがって、トルク生成手段18および位置検出手段19によって生成された信号を基準として検出されたいかなる不整合性も、制御手段21によって記録され、故障メッセージが生成され、次いでデータバス24を介して制御手段21によって監視手段27に送信される。
【0072】
一実施形態において、例えばどの部材が故障しているか、また修理するのに利用できる時間を含めた、故障を特定するのにメンテナンス作業員に必要な全てのデータは、主として燃料弁1の臨界に左右されるものであり、これらはメンテナンス手段28に記憶される。
【0073】
<位置検出器195の故障>
本発明による故障検出装置は、例えば、第2位置検出器197を利用して位置検出器195の故障を検出することができる。
【0074】
電流突入が検出される際、第1の信号が発動され、駆動シャフト14は回転を続ける。位置検出器195に不具合があり、したがって制御手段21に信号を送信しない場合、駆動シャフト14は、位置検出手段19のカム191の少なくとも1つの突出部材193が第2位置検出器197によって検出されるまで、さらにほんの僅かな角度だけその回転を続ける。この状況において、前記第2位置検出器は、前記第1位置検出器に代わり、少なくとも1つのモータ12への供給を遮断する信号を制御手段21に送信する。前記制御手段は、不具合のある位置検出器195を交換する作業を行うことができるように、例えば「欠陥スイッチ」などのメンテナンスメッセージをメンテナンス手段28に送信する。位置検出器195が故障したことをこのように認識することで、航空機を直ちに運航休止にする必要は無くなる。球体のボール13が適切に回転し、第2位置検出器197が一時的に位置検出器195に代わるため、したがって燃料弁1は稼働したままでよい。
【0075】
<モータ故障>
別の故障状況において、制御手段21が発したコマンドの結果として、少なくとも1つのモータ12によって全く電流が引き込まれないとき、前記少なくとも1つのモータへの供給は中断される。この故障は、少なくとも1つのモータ12の故障として解釈され、不具合のあるモータ駆動アクチュエータ11を交換するためにメンテナンス作業がプログラムされる。メンテナンス作業は、燃料弁の臨界に応じて遅かれ早かれ行われるようにプログラムされる。
【0076】
<ベアリングおよび/または減速装置の歯車の故障>
別の故障状況において、電流監視手段26によって周期的な異常が検出される際、前記異常が、駆動シャフト14の各回転で繰り返し現れる場合、これらの異常は、例えば、減速装置の歯車の損傷などベアリングおよび/または減速装置の初期故障のサインとして解釈される。
【0077】
<駆動シャフトの故障>
別の故障状況において、電流突入が全く検出されず、位置検出手段19が動力供給遮断信号を送信する際、この不整合性は、駆動シャフト14の異常として解釈される。
【0078】
フィードバックトルクが存在しない状態は、電流監視手段26に電流突入がないことによって発生し、これにより制御手段21には、アクチュエータ11が制御手段21によって制御されて枢動されていること、および、それにもかかわらず球体のボール13が、それより前のその事前に制御された位置のままであることが情報として与えられることになる。
【0079】
球体のボール13が回転しないため、トルク生成手段18のディスク181の少なくとも1つの突出部材183は、停止部材189に係合されず、したがってアクチュエータ11が制御手段21によって制御される位置に近づく際、この移動に対する抵抗は全く検出されない。フィードバックトルクが存在しないとき、制御手段21によって動力供給遮断信号は検出されず、検出手段19のカム191の少なくとも1つの突出部材193が2つの位置検出器195の一方を作動させるまで、駆動シャフト14は枢動を続ける。これらの状況下で、位置検出器195の作動は、第1信号を補足するものとみなされ、第2位置検出器197によって少なくとも1つの突出部材193が検出されるとすぐに、少なくとも1つのモータ12への動力供給は遮断される。次いで球体のボール13の動作ロスを防ぎ、迅速なメンテナンス作業をプログラムするために、制御手段21によってメンテナンス手段28にメッセージが送信される。このようにして、乗務員は故障の状態に迅速に気付き、駆動シャフト14の明らかな破断は必然的に、次のフライトの前に弁を交換すべきことを意味する。
【0080】
<弁の閉塞>
別の故障状況において、制御手段21が高い電流突入を記録するが、位置検出手段19を介して駆動シャフト14の位置に関するいかなる情報も受信しないとき、球体のボール13が詰まる、または燃料フローパイプ17内に氷がある場合凍ってしまうなどの異常を予測することができる。このような状況下で、少なくとも1つのモータ12がトルクを加えても、駆動シャフト14が枢動しないことは明らかである。故障を区別し、他の故障条件から氷の有無を特定するためのひとつの手段は、制御手段21内に、ベアリングまたは減速装置あるいは弁の他の物理的部分に影響を与えるものとして検出されたイベントを不揮発性メモリに記録することが可能なアルゴリズムを含むことである。したがって、その後機械の故障がないことが確認された場合、弁の閉塞の最も起こり得る原因は、フローパイプ17内に氷があることである。
【0081】
弁の閉塞の原因として氷の存在に関する疑問を解決するための方法において、球体のボール13に互い違いの動きを受けさせる試みが有利に開始される。前記試みは、前記球体ボールが非作動状態のままである場合、氷の存在を立証する。別の解決策は、燃料の温度が、水がもはや氷の状態にならない十分な温度に達しているとき、弁をテストすることである。このような措置が決定的であった場合、この事象は、メンテナンス手段28のメモリに記録され、メンテナンス作業を開始するために問題のタンクから水が除去されたかチェックするなどのメッセージが送信される。
【符号の説明】
【0082】
1 弁
11 アクチュエータ
12 モータ
13 球体のボール
14 駆動シャフト
15 燃料タンク
16 弁本体
17 燃料フローパイプ
18 トルク生成手段
19 位置検出手段
20 故障検出装置
21 制御手段
22 動力供給手段
23 スイッチ
24 データバス
25 電気分配ネットワーク
26 電流制御手段
27 監視手段
28 メンテナンス手段
29 供給ケーブル
131 補助シャフト
132 軸
133 貫通開口
134 軸
135 一端
136 面
137 ねじ穴
141 第2端部
143 第1端部
161 端部
171 軸
181 ディスク
182 外周面
183 突出部材
185 カバープレート
186 封鎖手段
187 固定部材
188 ワッシャー
189 停止部材
191 カム
192 外周面
193 突出部材
195 位置検出器
196 制御レバー
197 第2位置検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料フローパイプ(17)に接続することができる弁本体(16)の中にボール(13)を備える航空機燃料回路弁(1)において、前記ボール(13)が、前記弁本体内で軸(132)を中心に回転することができ、電気アクチュエータ(11)によって回転される駆動シャフト(14)の第1端部(143)に固定され、前記ボールが、軸(134)の貫通開口(133)を有し、前記ボールの回転範囲の2つの端部に、
−前記パイプ(17)内に燃料が流れることができるように前記開口(133)の軸(134)が配向される、開放位置と呼ばれる前記ボールの第1の位置と、
−前記パイプ(17)内に燃料が流れないように前記開口(133)の軸(134)が配向される、閉鎖位置と呼ばれる前記ボールの第2の位置と
の2つの安定した位置を有しており、
前記航空機燃料回路弁(1)は、
−前記ボール(13)に固定された補助シャフト(131)の一端(135)に配置され、前記弁本体(16)内の前記ボール(13)の位置によって変えることができるトルクを前記駆動シャフト(14)に対して生成し、前記アクチュエータ(11)によって引き込まれた電流を増加させることができるトルク生成手段(18)と、
−前記第1端部(143)の反対側の前記駆動シャフト(14)の第2端部(141)に配置され、前記駆動シャフトの位置を示す信号を出力することができる位置検出手段(19)
とを備えることを特徴とする航空機燃料回路弁(1)。
【請求項2】
前記トルク生成手段(18)および前記位置検出手段(19)が、前記ボールが開放位置から閉鎖位置へ進む際、閉鎖位置が検出されるまでトルクが増加し、前記ボールが閉鎖位置から開放位置に進む際、開放位置が検出されるまでトルクが増加するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の航空機燃料回路弁(1)。
【請求項3】
前記トルク生成手段(18)が、回転範囲の前記2つの端部に近づくまでは有意なトルクを生成せず、各端部近傍から該当する端部に至るまで徐々に増加するトルクを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の航空機燃料回路弁(1)。
【請求項4】
前記トルク生成手段(18)が、
−自由端(135)側で前記補助シャフト(131)に固定され、少なくとも1つの突出部材(183)を有するディスク(181)と、
−前記弁本体(16)上に配置される2つの停止部材(189)とを備え、
−前記ボール(13)がほぼ開放位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材(183)が停止部材(189)に接触し、前記ボール(13)がほぼ閉鎖位置の前にあるとき少なくとも1つの突出部材(183)が第2の停止部材(189)に接触するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の航空機燃料回路弁(1)。
【請求項5】
前記トルク生成手段(18)が、
−自由端(135)側で前記補助シャフト(131)に固定され、少なくとも1つの突出部材(183)を有するディスク(181)と、
−前記弁本体(16)上に配置される1つの停止部材(189)とを備え、それらは、前記ボール(13)がほぼ開放位置の前にあるとき前記少なくとも1つの突出部材(183)が停止部材の第1フランクに接触し、前記ボール(13)がほぼ閉鎖位置の前にあるとき少なくとも1つの突出部材(183)が停止部材(189)の第2フランクに接触するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の航空機燃料回路弁(1)。
【請求項6】
位置検出手段(19)が、開放位置を示す少なくとも1つの信号と、閉鎖位置を示す少なくとも1つの信号とを生成することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の航空機燃料回路弁。
【請求項7】
前記位置検出手段(19)が、
−前記第2端部(141)側で前記駆動シャフト(14)に固定され、少なくとも1つの突出部材(193)を有するカム(191)と、
−前記突出部材(193)の接近を感知できる、回転範囲の各端に配置された少なくとも1つの位置検出器(195)とを備え、
その結果、前記少なくとも1つの位置検出器(195)が、前記突出部材(193)の作用の下で状態を変化させることを特徴とする請求項6に記載の航空機燃料回路弁。
【請求項8】
前記位置検出手段(19)が、回転範囲の各側に少なくとも2つの位置検出器(195、197)を備え、これらの位置検出器は、前記ボールが開放位置から閉鎖位置に進む際、前記第1位置検出器(195)が、前記第2位置検出器(197)の前に前記駆動シャフト(14)の位置を示す信号を出力し、前記ボールが閉鎖位置から開放位置に進む際、前記第1位置検出器(195)が、前記第2位置検出器(197)の前に前記駆動シャフト(14)の位置を示す信号を出力するように配置されることを特徴とする請求項7に記載の航空機燃料回路弁。
【請求項9】
作動中の請求項1から8のいずれか1項に記載の航空機燃料回路弁の動作を診断する方法であって、前記ボール(13)を枢動させるために前記アクチュエータ(11)に送信された制御信号の整合性が、前記トルク生成手段(18)および前記位置検出手段(19)によって生成された信号によってチェックされる、または非整合性が検出されることを特徴とする診断方法。
【請求項10】
−電気アクチュエータ(11)の回転を制御し、かつ請求項1から8のいずれか1項に記載のトルク生成手段(18)および位置検出手段(19)によって生成された信号を記録するための制御手段(21)と、
−前記アクチュエータ(11)に電力を供給する動力供給手段(22)と、
−電流の強度を測定し、前記アクチュエータ(11)によって引き込まれた電流を分析する電流制御手段(26)と、
−前記ボール(13)を枢動させるために前記アクチュエータ(11)に送信された制御信号と、前記トルク生成手段(18)および前記位置検出手段(19)によって生成された信号との非整合性が検出される際、前記航空機燃料回路弁(1)が作動しなくなった場合に警告メッセージを生成することができるメンテナンス手段(28)と、
を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−533270(P2010−533270A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515574(P2010−515574)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051276
【国際公開番号】WO2009/016299
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(507233246)
【Fターム(参考)】