説明

作動液としてイオン液体を備えている加工機械および/または作業機械

本発明は、作動液として液体を備えている加工または作業機械に関するものであり、本発明は、イオン液体が該作動液を構成することを特徴とするものである。本発明はまた、加工または作業機械における作動液の使用に関するものであり、本発明は、イオン液体が該作動液を構成し、特に、潤滑流体、遮蔽流体、密封流体、または圧力伝達流体として用いられることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、作動液としてイオン液体を備えている加工機械および/または作業機械に関するものである。
【0002】
加工機械および作業機械の多くの輸送、動力、および作業の原理において、作動液は、機能性および/または安全性の維持のために採用されている。
【0003】
したがって、流体、好ましくは油は、ポンプ、具体的には真空ポンプ、回転翼ポンプ、翼セルポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ等の加工機械、スクリュー圧縮機のような圧縮機、およびピストン装置において、潤滑流体、密封流体、障壁流体、圧力伝達流体、すなわち、極めて広範な作動液として用いられている。このことは、例えば、消耗、摩擦、ギャップ漏れ電流等を低減させ得るので、加工機械が全般にわたって動作することを可能にする。
【0004】
上記のような実施の典型的な例は:
a)液圧式ダイアフラムポンプ(Hydraulic diaphragm pumps)。この場合、油またはその他の流体が、ダイアフラムアクチュエーターのための作動液として、またはダイアフラム間のカップリング流体として用いられる。
【0005】
b)様々なタイプの真空ポンプおよび圧縮機、例えば、回転翼ポンプ、ルーツポンプ、回転ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機、ピストン圧縮機、スクロール圧縮機等。この場合、潤滑流体が、潤滑のためだけでなく、圧縮機系の密封、圧縮機系の冷却、および流体の輸送のためにも用いられる。
【0006】
c)液封真空ポンプ(Liquid ring vacuum pumps)。これらは、流体を、輸送作用(流体ピストン)を生み出すため、潤滑のため、および圧縮の熱を吸収させるための作動液として用いる。
【0007】
d)作業機械および作業ユニット、例えば、エンジン、ギア、水力装置等。この場合、流体は、潤滑流体として用いられる;すなわち、ベアリングの潤滑、歯等の潤滑、および動力の伝達、特に水力ユニットの場合、水力シリンダー、上昇装置等のために用いられる。
【0008】
その結果、以下およびその他の一定の利点が得られる:
a)効率性の向上
b)消耗からの防衛、および
c)蒸発冷却。すなわち、蒸発温度が超過した場合、流体は、ポンプ室中において蒸発し、これに伴い、該流体が、圧縮の熱の一部を吸収するので、処理ガスを冷却する。
【0009】
しかしながら、加工および処理機械における、公知の流体の作動手段の使用には、深刻な不利益が存在する。すなわち、そのような流体の蒸気圧が、加工機械の最低圧力を決定し、これは、該流体の蒸発において、複雑な様式によって、処理ガスから排除すべきである。
【0010】
液圧式ダイアフラムポンプは、上述した不利益の典型的な例である。それらの同時に高い圧縮剛性および輸送の正確性を伴った機密性の結果として、そのような液圧式ダイアフラムポンプは、危険性のある輸送作業、例えば、毒、環境関係または衛生流体の輸送のために、および所望の流体の正確な量の輸送、高圧下での輸送のために好ましく採用される。
【0011】
しかしながら、この場合、ピストンからダイアフラムへの圧力伝達流体として用いられる作動液(液圧流体)は、しばしば制限因子を示す。従来、天然油、または合成油、例えば、多重の添加剤が付与されたポリグリコールまたは特別な油が、この目的のために使用されている。生理学的な関心から、この潤滑剤が示され、グリセリンもまた、食品産業またはバイオテクノロジーの分野において使用される。
【0012】
しかしながら、これらのすべての流体は、不利益を有している。すなわち、たとえば、天然油を用いた場合、溶解したガスが、ダイフラムポンプの最低吸入圧力を0.4bar(絶対値)に制限される。熱的限界は、約150℃に達する。その上、温度の変化の結果として、強力な粘度の改変がなされる。合成油の使用は、熱的な限界は若干高いものの、天然油の使用と同様の不利益を有している。
【0013】
最後に、グリセリンの使用は、生物分解の阻害剤の適用を必要とする。それでもなお、分解は避けられない。この場合の熱的限界は95℃でしかない。粘度は、複雑な様式での水との混合により調製される。
【0014】
さらなる、上述した不利益の典型例が液封真空ポンプによって示される。この場合、回転する流体環が、互いに相対する羽根室同士を密封し、ガスに必要な圧力エネルギーを伝達するために、必要とされる。上記環の液体の蒸気圧が、達成し得る吸引圧力レベルの最低値を制限する。この吸引圧力において、羽根室は、蒸発した作動液によって完全に充填され、液封真空ポンプの吸引能力はゼロとなる。実際に使われる作動液は、好ましくは、蒸気圧が室温において約23mbarの水、および蒸気圧が約1mbarの油であり、したがって、いわゆる粗真空範囲においての作動のみが許可される。一方、いわゆる純真空範囲が必要となる処理では、その目的のための、他の圧縮機の続いての使用が必要となる。しかしながら、それらの作動原理の結果、それらは、液封真空ポンプの使用に比べて不利益を有している。特に、化学工業の分野において、それらの炭化水素の圧縮のための使用は、大きな安全予防を取ることによってのみ可能であり、用い得る圧縮機は、爆発防御設計が必要となる。
【0015】
真空範囲を低減するために、油および他の水を主体とした流体に対して、研究がなされている。これまでの吸引圧力レベルの低減は、1mbarまでのみ可能であった。しかしながら、この若干の実施分野の拡大は、同時に、通常、毒性、または環境汚染性の作動液であり、取り扱いの困難性を伴うものであった。また同時に、環液体(ring liquid)は、通常、吸引すべき、活性が高い、または腐食性のガスと反応しないことが保障される必要があった。
【0016】
最後に、ピストン装置は、上述した不利益のさらなる典型例である。このようなピストン装置の場合、特定の実施のための可能な技術的解決法によって、ガスまたは流体の輸送のために、流体ピストンまたは流体マスターピストン、つまり、所定の十分な濃度の差異および非混和性によって、該装置が作動され得る。しかしながら、これまで、これは、公知の作動液の限界、特に、蒸発、腐食、毒性、ガス溶解性等の、水性の流体を適用した場合に知られている不利益の結果として失敗してきた。同じことが、有機の流体の使用についても適用される。これは、この場合、蒸発、毒性、揮発性等の不利益が生じる。最後に、この場合、毒性、高コスト、高濃度、密封困難性等の不利益が流体金属の使用において生じる。
【0017】
以降の公表DE 10 2204 024 967 A1は、熱吸収ポンプ、鳩首冷却装置、および熱伝導体のための作動液(すなわち、輸送されるべき流体)としてのイオン液体の使用を開示している。イオン液体を使用する、ガス輸送装置、液圧式ダイアフラムポンプ、液封真空ポンプおよびピストン装置は、DE 10 2004 024 967 A1には開示されていない。
【0018】
DE 103 16 418 A1は、反応器からの熱の間接的な供給および放出のための熱キャリアとしてのイオン液体の使用を開示している。上記文献は、冷却媒体のより高い熱吸収の結果、ポンプの推進動力の節約が可能であり、イオン液体を輸送するための特別の設計が必要ないことを教示している。その上、障壁流体を用いた、ポンプのための付加的なポンプ密封が可能であること、そのような障壁流体がイオン液体で構成し得ることを開示している。
【0019】
したがって、本発明は、従来採用されていた作動液の利点を損なうことなく、上述したような不利益が避けられるような作動液を示すのに好適な加工および/または作業機械を設計する目的に基づいたものである。
【0020】
そのもっとも全体的な実施形態では、本発明は、作動媒体、特に、分離流体および/または液圧流体としてイオン液体を備えている装置、特にポンプに関するものである。
【0021】
本発明の第1の好適な実施形態は、イオン液体を潤滑用および/または障壁用の流体として用いていることを特徴とするガス輸送装置からなる。
【0022】
本発明の第2の好適な実施形態は、イオン液体を液圧流体として用いていることを特徴とする液圧式ダイアフラムポンプ装置からなる。
【0023】
本発明の第3の好適な実施形態は、イオン液体を環液体として用いていることを特徴とする液封式真空ポンプ装置からなる。これは、上記ポンプの作動範囲を純真空範囲まで広げる。
【0024】
本発明の第4の好適な実施形態は、ピストンを備えており、該ピストンは、シリンダー内を往復運動し、流体ピストン、または先頭に配置された流体マスターピストンであり、イオン液体からなる。上記往復運動の結果として、ガスおよび/または低濃度もしくは高濃度の非混和性の流体が輸送される。
【0025】
さらなる発明は、イオン液体を作動媒体として用いることによる、上記の装置の操作処理に関するものである。
【0026】
その有利な実施形態は請求項において記載されている。
【0027】
本発明は、加工および/または作業機械を、作動媒体をそれぞれに提供される、すなわち、作動液がイオン液体とする様式で設計するという基本的なアイデアに基づくものである。その結果、以下に記載するような驚くべき利点が得られた。
【0028】
よく知られているように、イオン液体はイオン、すなわち陰イオンまたは陽イオンからなり、その帰結として塩である。しかしながら、塩化ナトリウムのような一般の塩とは大きく異なり、より低い融点を有し、室温においてさえも流体であり得る。したがって、100℃より低い温度において純粋な流体形態で存在する全ての塩は、定義上、イオン液体とみなされる。
【0029】
イオン液体は、液体塩(liquid salts)と呼ばれることもある。それらは、極めて低い蒸気圧(10−13bar)を有しており、ごく低いガス溶解度を有しており、不燃性であり、しばしば生理学的に安全であり、250℃より高温に至るまで熱的に安定であり、潤滑剤に適している。イオン液体によって提供される利点のリストは長い。したがって、イオン液体は、従来述べられてきた流体の環境に優しく資源保護に資する代替物を代表する。
【0030】
イオン液体においては、陰イオンおよび陽イオンを適切に選択することにより、望ましい段階的な極性の調整、およびその結果としての該イオン液体の特性、特に溶解に関する特性の制御が可能である。その範囲の広がりは、水混和性のイオン液体から、非水混和性の流体、さらには、有機溶媒とともにあったとしても自ら2相を形成するものまで含む。イオン液体のこれらの驚くべき特性を巧みに利用することは、本発明の意義において、これらの流体をうまく利用するための鍵となる。
【0031】
加工機械および/または作業機械の作動液としての本発明にかかるイオン液体の使用によれば、下記のパラメータに望んだとおりの影響を有利に与えることが可能である:
a)潤滑性能
b)圧縮剛性
c)温度の関数としての粘度
d)飽和蒸気圧
e)化学的不活性
f)熱的不活性
g)溶解性
h)生理学的安全性
このように、上記パラメータを従来の作動液に比べて改善するイオン液体を用いれば、下記のような利点を得ることができる。
【0032】
a)真空圧によって規定される真空の限界の、低減。これは、約10−13barという極めて低いイオン液体の蒸気圧が、実質的な得られる蒸気圧の低減をもたらすという事実に基づく、すなわち、液封真空ポンプの流体において、本発明に係るイオン液体が封水として用いられ得る場合。
【0033】
b)任意の潤滑性能と、より高温での安定性および低い蒸気圧と組合さって、いかなるタイプの潤滑された真空ポンプおよび圧縮機においても潤滑剤の消費を節約するだけでなく、油分離機においても節約し、同時に、達成し得る真空を低減させる。
【0034】
c)達成し得る十分な潤滑性能は、生理学的な安全性、ならびに熱的および化学的安定性と組合さって、衛生作業ならびに衛生機械および装備における潤滑の要求に関して、経済上および安全上のさらなる大きな利点である。この観点の典型的な例は、衛生作業のための水力ダイアフラムポンプ、衛生作業施設の道具、および衛生作業施設におけるベアリングの潤滑について、衛生作業施設におけるガスケットの潤滑等がある。
【0035】
d)増加した圧縮剛性は、低い圧縮率の結果として、すべての圧力の生産者における高い効率性を約束し、同等の運搬性能のためにより小さい機械を使用することを可能とさせる。
【0036】
e)温度の上昇にともなうあまり顕著ではない粘度の減少は、より安定な作業状態、および上昇した温度におけるポンプでのより少ないもれ損失を与える。
【0037】
f)イオン液体の低いガス溶解性、およびとても低い蒸気圧は、イオン液体の、ガスおよび特定の流体のための流体ピストン、ならびに、ガス容量が低く、その結果輸送の正確性が向上されたダイアフラムポンプのための水圧的な流体としての本発明に係る使用を可能にする。特別なイオン液体は、酸化に完全に抵抗性であり、したがって、酸素圧縮のために用いられ得、また、潤滑材として流体ピストンとして用いられ得るという特性がある。
【0038】
g)イオン液体の典型的なとても低い蒸気圧は、ダイアフラムポンプにおいてより大きい吸い上げ高さを可能とする。
【0039】
h)イオン液体の化学的不活性は、イオン液体を化学種の輸送機械における潤滑材としての使用を可能とする。
【0040】
したがって、イオン液体は、従来語られてきたような不利を避けることができる。それらの10−13bar(液体塩)という極めて低い蒸気圧によれば、真空技術において、極めて低い圧力に達することができ、その結果、真空ポンプおよび圧縮機の両方における処理ガスの混入を避ける。
【0041】
その上、液体により潤滑された、酸化またはひいては燃焼を引き起こすことのない機械では、上記のような方法で、純水酸素のような危険性の高いガスを輸送することも可能である。
【0042】
本発明において予期される、イオン液体の使用の結果として、加工機械において、上述したようなイオン液体からなる流体ピストンを備えたピストン機械を作動させることができるようになり、また、同時に記載される不利を避けることができるようになる。この場合、イオン液体の使用は、イオン液体が広い範囲において不活性であるため、輸送された物質との反応が不可能であるという利点をさらに提供する。
【0043】
最後に、液封真空ポンプの場合、環液体としてのイオン液体の本発明に係る使用の結果として、それらのポンプを好適な範囲の真空においても用い得る。この方法によれば、液封真空ポンプを、従来用いられていたスクリュー圧縮機、ピストン圧縮機、回転翼式圧縮機等の代わりに用いることができる。そして、それらの頑丈性、信頼性および処理の安全性についての大きな利点を完全に用い尽くすことができる。
【0044】
イオン液体は、使用目的の処理の状態および吸引すべきガスに応じて調整することができるため、過去において生じていた不利および困難は、イオン液体の本発明に係る使用により避けられる。したがって、吸い出されるべきガスとの反応は安全に防止することができる。
【0045】
作動液としてのイオン液体の使用の利点は、液封真空ポンプの作動原理、およびその目的のために用いられる流体の限界に基づいて、以下に説明される。
【0046】
すなわち、液封真空ポンプにおいて、円筒状のハウジング中に回転パドルが偏心して配置されている。上記ハウジング中に存在する環流体は、上記回転パドルの回転の結果として、一緒に回転する、同軸上に形成された流体リングを形成する。回転パドルとともに、環流体は、チャンバ内において大量のガスをせき止める。上記回転体の偏心の結果、上部領域において、上記パドルは、完全に環流体に浸され、上記チャンバ容積は、完全に作動液によって満たされる。上記回転の過程において、環流体は、自ら羽根ハブから離れ、三日月形のくぼみを形成する。輸送すべきガス状の流体は、羽根表面の前面に配置されたコントロールディスク装置によって、作動くぼみに吸引される。ガスが充填されたチャンバ容積が最大に達する直前に、吸引溝は閉じられ、上記チャンバは、コントロールディスク、羽根パドル、および流体によって密封される。環流体は、再度上記ハブに向かって移動し、この過程において、ピストンのように、ガスを圧縮する。圧力溝装置が達するとすぐに、圧縮されたガスは押し出される。
【0047】
作動液は、液封真空ポンプの3つの機能、つまり、第1に、吸引の作動パルスに併せたピストンの動作、第2に、互いの一筋の溝を密封する密封機能、そして第3に、圧縮の熱の吸収のすべてを満たす必要がある。
【0048】
圧縮の熱を放出するために、作動液の一部が継続的に圧力溝から排出され、ポンプの軸ハブにおいて、同量の新しい流体が流体チャンネルから供給される。この実行時の冷却の結果、作動液の定常的な温度が達成される。
【0049】
基本的に、よく知られているように、作動液の蒸気圧は、ポンプの吸引口において達成すべき最低限のあり得る吸引レベルを制限する。もし、吸引レベルが流体の蒸気圧と同じがその近傍になった場合、キャビテーションが生じ、その結果、ポンプのパフォーマンスが完全に低下する。
【0050】
実施の殆どの場合において、水が環流体として用いられる。この利点は、高い特異的な熱容量、経常的な入手可能性、環境適応性、そして最終的には価格である。
【0051】
しかしながら、フェライト素材の場合の腐食の危険性、約50mbarまでの粗真空までの使用範囲の限定は不利益な効果を有する。
【0052】
特別な適用において、油もまた、低い蒸気圧を有するものが、使用される。しかしながら、そのような油は、輸送される媒体への混入を招き、環境的な危険が存在する。作動液としての化学製品の使用、例えば、塩素ガスの圧縮のための濃硫酸の使用も、知られている。
【0053】
しかしながら、これらの適用は、増加した安全測定および付加的な装置、例えば油分離機等を必要とする。
【0054】
しかしながら、従来知られているすべての場合において、液封真空ポンプの適用の場は、粗真空に限定されていた。
【0055】
本発明のみが、本は杖みに予期されるイオン液体の使用の結果として、液封真空ポンプの適用の場を純真空範囲まで拡張することにより解決法を提供する。このようなイオン液体は、注目すべき蒸気圧を有していないために、キャビテーションが生じず、吸引圧力の低下の制限が生じない。その上、イオン液体は、すばらしい潤滑性能を有しており、その結果、純真空に調整された軸の密封を提供し得る。なおさらに、油の使用と異なり、輸送すべき流体への混入も生じない。
【0056】
本発明において予期される、加工機械におけるイオン液体の使用の結果、特に、液封真空ポンプにおいて、その使用の場は、結果的に純真空範囲まで拡張された。その結果、液封真空ポンプは、従来は回転翼ポンプおよび外翼ポンプ、偏心ピストンポンプまたはインジェクターによってカバーされていた適用領域まで、入場した。これらは、羽根の油による潤滑が必要であるため、ハウジングにおいて輸送される媒体の汚染の不利益、および圧縮の熱の放出が、複雑な装備によるしかないという不利益を有している。
【0057】
この理由により、液封真空ポンプは、その内在的な利点、例えば、最大限の信頼性、準等温的な圧縮、および圧縮過程における油の不在、今この方法での、純真空(10−3〜10−1bar)への適用可能性、処理コントロールおよび実施可能性への全く新しい方法、を展開することができる。
【0058】
作動液としての使用される本発明に係るイオン液体は、カチオンおよびアニオンの化合物であり、該カチオンが、
一般式[NRR]を有する四級アンモニウムカチオン、
一般式[PRR]を有するホスホニウムカチオン、
化1に示す一般式を有するイミダゾリウムカチオンにおいて、イミダゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリルC−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているイミダゾリウムカチオン、
【0059】
【化1】

化2に示す一般式を有するピリジニウムカチオンにおいて、ピリジン核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているピリジニウムカチオン、
【0060】
【化2】

化3に示す一般式を有するピラゾリウムカチオンにおいて、ピラゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているピラゾリウムカチオン、
【0061】
【化3】

化4に示す一般式を有するトリアゾリウムカチオンにおいて、トリアゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているトリアゾリウムカチオン、
【0062】
【化4】

として表される。なお、基R、R、Rは、それぞれ互いに独立に、
水素、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
ヘテロアリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、必要であれば、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
からなる群より選択され、
基Rは、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
アリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、選択可能に、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
から選択され、
用いられる上記イオン液体のアニオンが、[PF、[BF、[CFCO、[CFSO、[(CFSON]、[(CFSO)(CFCOO)N]、[R−SO、[R−O−SO、[R−COO]、Cl、Br、I、[NO、[N(CN)、[HSO、または[RPOから選択され、基Rおよび基Rは、それぞれ独立に、
水素、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
アリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
からなる群より選択される。
【0063】
特定の望むべき実施目的のための上述した特性を有する好適なイオン液体は、典型的には、下記に示される:
1)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート:
水混和性、250℃より高温において安定、化学的不活性、肯定的な潤滑特性;
2)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロボレート:
非水混和性、250℃以下で安定、化学的不活性、肯定的な潤滑特性;
3)1−エチル−3−メチルイミダゾリウム エチル スルフォレート:
水混和性、生理学的に安全(実証済み)、250℃以下で安定、化学的不活性、トンスケールで入手可能;
4)1−エチル−3−メチルイミダゾリム ビスフルオロメタンスルフォニル アミド: 非水混和性、300℃より高温において安定、化学的不活性、肯定的な潤滑特性;
5)3−メチル−1−エチルピリジニウム エチル スルフェート:
水混和性、250℃以下で安定、化学的不活性;
6)ブチル トリメチル ホスホニウム ジメチル フォスフェート:
水混和性、200℃以下で安定、化学的不活性;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体を潤滑用および障壁用の流体として用いていることを特徴とするガス輸送装置。
【請求項2】
イオン液体を液圧流体として用いていることを特徴とする液圧式ダイアフラムポンプ装置。
【請求項3】
イオン液体を環液体として用いていることを特徴とする液封式真空ポンプ装置。
【請求項4】
ピストンを備えており、
該ピストンは、
シリンダー内を往復運動し、
流体ピストン、または先頭に配置された流体マスターピストンの形態であり、
イオン液体からなり、
該往復運動の結果としてガスおよび/または低濃度もしくは高濃度の非混和性の流体を輸送することを特徴とするピストン装置。
【請求項5】
作動液として提供されるイオン液体がカチオンおよびアニオンからなり、
用いられる該カチオンが、
一般式[NRR]を有する四級アンモニウムカチオン、
一般式[PRR]を有するホスホニウムカチオン、
化1に示す一般式を有するイミダゾリウムカチオンにおいて、イミダゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリルC−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているイミダゾリウムカチオン、
【化1】

化2に示す一般式を有するピリジニウムカチオンにおいて、ピリジン核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているピリジニウムカチオン、
【化2】

化3に示す一般式を有するピラゾリウムカチオンにおいて、ピラゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているピラゾリウムカチオン、
【化3】

化4に示す一般式を有するトリアゾリウムカチオンにおいて、トリアゾール核が、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cアミノアルキル基、C−C12アリル基、またはC−C12アリル−C−Cアルキル基から選択される少なくとも一つの基によって置換され得ているトリアゾリウムカチオン、
【化4】

と表され、基R、R、Rは、それぞれ互いに独立に、
水素、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
ヘテロアリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、必要であれば、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
からなる群より選択され、
基Rは、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
アリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、選択可能に、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
から選択され、
用いられる上記イオン液体のアニオンが、[PF、[BF、[CFCO、[CFSO、[(CFSON]、[(CFSO)(CFCOO)N]、[R−SO、[R−O−SO、[R−COO]、Cl、Br、I、[NO、[N(CN)、[HSO、または[RPOから選択され、基Rおよび基Rは、それぞれ独立に、
水素、
1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分枝した、飽和または不飽和の、脂肪族または脂環式のアルキル基、
アリル基中に3〜8の炭素原子を有するヘテロアリルC−Cアルキル基であって、すくなくとも一つのヘテロ原子がN、O、およびSから選択され、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るヘテロアリル基、
アリル基中に5〜12の炭素原子を有するアリル基であって、C−Cアルキル基および/またはハロゲン原子から選択される少なくとも一つの基によって置換され得るアリル基
からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
作動液として使用される上記イオン液体が、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム エチル スルフォレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリム ビスフルオロメタンスルフォニル アミド、3−メチル−1−エチルピリジニウム エチル スルフェート、ブチル トリメチル ホスホニウム ジメチル フォスフェート、またはそれらの混合からなる群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
作動液、特に、潤滑流体、障壁流体、密封流体、圧力伝達流体としてイオン液体が用いられることを特徴とする、ガス輸送装置、液圧式ダイアフラムポンプ装置、液封真空ポンプ装置、またはピストン装置における、作動液の使用。
【請求項8】
ガス輸送装置において、イオン液体が潤滑用および障壁用の流体として用いられることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
液圧式ダイアフラムポンプ装置において、イオン液体が液圧流体として用いられることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
液封式真空ポンプ装置において、作動領域を純真空に拡大するために、イオン液体が環液体として用いられることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項11】
ピストン装置において、シリンダー内を往復運動し、該往復運動の結果としてガスおよび/または低濃度もしくは高濃度の非混和性の流体を輸送するピストン流体としてイオン液体が用いられることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項12】
イオン液体を作動媒体として用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の装置の制御方法。

【公表番号】特表2008−530441(P2008−530441A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555599(P2007−555599)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050941
【国際公開番号】WO2006/087333
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】