作業機
【課題】 本発明は、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることを課題とする。
【解決手段】 操向手段の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構により前輪が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機とした。
【解決手段】 操向手段の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構により前輪が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチと、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると旋回内側のサイドクラッチを切り操作する機械式の自動操向機構を備えており、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り制御する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−196000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された乗用型作業機では、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、操向内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようになる。しかし、耕盤の深さによって、操向内側の後輪へかかる抵抗が異なるため、該後輪による圃場の荒らし具合が異なり、適切に圃場が荒れるのを抑えることが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪(10)が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構(A)と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構(A)により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、左右の後輪(11)の回転数を検出する各々の伝動軸回転数センサ(205)を設け、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されたとき、伝動軸回転数センサ(205)により検出された操向外側の後輪(11)の回転数に基づいて操向内側の後輪(11)の設定回転数を所定の演算式にて演算して前記操向外側の後輪(11)の回転数よりも小さい値に設定し、設定回転数よりも検出される操向内側の後輪(11)の回転数が大きいときは操向内側のサイドクラッチを切にし、設定回転数より検出される操向内側の後輪(11)の回転数が小さいときは操向内側のサイドクラッチを該後輪(11)が所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成とし、演算される前記設定回転数を変更調節する調節具(265)により、旋回連動機構(A)で断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する制御装置(163)を設けた作業機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する変速レバー(238)を設け、制御装置(163)は、変速レバー(238)により走行速度を路上走行速に切り替えたとき、旋回連動機構(A)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されると操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する状態から常時切状態にする構成とした請求項1又は2に記載の作業機とした。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、制御装置(163)は、走行速度に対応して前記演算式を補正して、走行速度が速いときには前記設定回転数を小さく補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数を大きく補正する構成とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、耕盤が深い場合は、旋回連動機構Aにより断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるので、耕盤が深いために操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、設定回転数より検出される操向内側の後輪11の回転数が小さいときに、該後輪11を所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで駆動するので、例えば耕盤深さや土壌の硬軟あるいは粘度等の条件により、操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを防止できる。また、圃場の状況や走行状況に対応して、調節具265により演算される前記設定回転数を変更して補正でき、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、走行速度を路上走行速に切り替えた路上走行時には、操向内側のサイドクラッチを常時切状態とするので、不要に操向内側の後輪11が断続的に駆動することがなく、機体の小回り旋回性を維持できると共に、後輪11が断続的に駆動することによるオペレータの乗り心地の悪化を防止できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が必要以上に駆動しないようにし、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、必要に応じて操向内側の後輪11が確実に駆動するようにし、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図である。
【図4】チェンジレバー部の斜視図である。
【図5】制御ブロック図である。
【図6】旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図7】旋回連動制御のフローチャートである。
【図8】操作盤のポンピングクラッチ調節ダイヤル部分の平面図である。
【図9】操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図である。
【図10】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図である。
【図11】主変速レバーの保持機構を示す図である。
【図12】植付クラッチ及び施肥クラッチを示す図である。
【図13】リードカム及びリードカム軸を示す図である。
【図14】スリーブを示す断面図である。
【図15】苗取り量調節ゲージを示す斜視図である。
【図16】クローラを示す側面図である。
【図17】上下フレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は、粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部となる苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0016】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0017】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0018】
尚、植付クラッチケース25内に、苗植付部4へ伝動する植付クラッチ250と、施肥装置5へ伝動する施肥クラッチ251とを設けている。この植付クラッチ250は植付クラッチピン252で作動し、施肥クラッチ251は施肥クラッチシフタ253により作動する構成となっているが、植付クラッチピン252及び施肥クラッチシフタ253は共通のアクチュエータ(電動モータ)の駆動により作動し、非作業状態に切り替えるときはアクチュエータを段階的に駆動させ、施肥クラッチシフタ253が先に作動して施肥クラッチ251を切状態にし、その後植付クラッチピン252が作動して植付クラッチ250を切状態にする。これにより、後述する繰出部61から繰り出されて実際に圃場に施肥されるまでに時間を要する施肥装置5が先に停止することで、施肥作業の終了位置と植付作業の終了位置を合わせることができる。しかしながら、機体を前進させて圃場の畦際ぎりぎりまで植付作業を行うとき、植付後、機体を後進させる操作に連動して苗植付部4を上昇すると共に植付クラッチ250及び施肥クラッチ251を同時に切状態に切り替えるが、植付クラッチ250は、植付クラッチピン252による定位置停止クラッチであるので、即座に伝動が断たれず、後進を始めても植付クラッチ250が伝動して苗植付部4が逆転作動するおそれがある。そこで、植付クラッチ250と施肥クラッチ251を隣接する伝動軸上に設け、施肥クラッチ251を切状態に切り替えると、施肥クラッチ251の鍔部251aが植付クラッチ250の鍔部250aに係合して、植付クラッチ250を切側に若干作動させてクラッチ爪が半掛かり状態にする構成となっている。これにより、その後の植付クラッチピン252による植付クラッチ250の切側への作動が行われやすい状況となり、植付クラッチ250の伝動が即座に断たれないようなことを抑えることができる。
【0019】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向手段となるハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0020】
油圧式無段変速装置23は、ハンドル34の右側に設けた主変速レバー16で変速操作される。この主変速レバー16には該主変速レバー16と一体回動する操作カム235を設け、該操作カム235の外周に無数のカム溝235aを設け、該カム溝235aに係合する位置決めローラ236をアーム237の先端に設け、該アーム237を操作カム235側へ回動する側へ付勢する位置決め用スプリング237により、位置決めローラ236をカム溝235aに押圧して主変速レバー16の操作位置を保持している。一方、ミッションケース12内の伝動ギヤの切替により通常植付作業時に使用する低速の作業速と路上走行時に使用する高速の路上走行速と伝動を断つ中立速度の3段階に切替する副変速レバー238を、ハンドル34の下方に設けている。そして、副変速レバー238と前記アーム237を連結する連動ケーブル239を設け、副変速レバー238を作業速の位置に操作すると、連動ケーブル239を弛めてアーム237を操作カム235側へ回動させ、主変速レバー16の操作位置を保持が確実に行われるようにし、走行等の負荷が大きい作業時に主変速レバー16が自動戻りしないようにしている。逆に、副変速レバー238を路上走行速の位置に操作すると、連動ケーブル239を引いてアーム237を操作カム235から離れる側へ回動させ、主変速レバー16の操作位置を保持力を小さくして、主変速レバー16の操作荷重を小さくして操作フィーリングの向上を図っている。
【0021】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0022】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0023】
尚、苗載台51を左右移動させるためのリードカム254と、該リードカム254が係合するリードカム軸255を備えている。リードカム軸255は、苗植付伝動ケース50内からの動力により駆動回転する。リードカム軸255の駆動により、苗載台51に連結されたリードカム254が左右移動し、苗載台51が左右移動する構成である。リードカム254の左右両側でリードカム軸255の外周には、リードカム軸255が露出しないように伸縮自在のブーツ256を左右各々設けている。この左右のブーツ256内にリードカム軸255を潤滑する潤滑油を収容すると共に、左右のブーツ256内を連結パイプ257により連結している。従って、リードカム254の左右移動により左右のブーツ256が伸縮するのに伴って、適宜潤滑油が連結パイプ257を経由して左右のブーツ256間を移動する。これにより、リードカム254の左右移動に拘らず、左右のブーツ256内の内圧を一定にすることができる。連結パイプ257は、リードカム254のリード爪部を経由して該リード爪部も潤滑する構成となっている。
【0024】
また、別の構成として、前記ブーツ256の代わりに、リードカム軸255の外周を覆うスリーブを設けることができる。このスリーブは、リードカム254と共に左右移動する移動スリーブ258と、左右移動しない固定スリーブ259とを備えている。固定スリーブ259にオイルシール260及びオイレスブッシュ261を介して摺動可能に移動スリーブ258を設け、左右の移動スリーブ258内を連結パイプ257により連結している。これにより、ブーツ256と比較して、リードカム254の移動による左右のスリーブ内の容積の変化を抑えることができ、また潤滑油の重みでブーツ256のように垂れ下がることもなく、潤滑性が向上する。尚、連結パイプ257は、前述と同様にリード爪部も潤滑する構成とすればよい。
【0025】
尚、苗植付装置52の取付位置の調節により、苗植付装置52の植付爪の作動軌跡を変更し、苗取出口51aからの苗取り量を調節できる構成となっている。この調節にあたっては、コの字型のプレートで構成される苗取り量調節ゲージ262を苗取出口51a部分に置き、植付爪先端の位置が苗取り量調節ゲージ262の目盛263で示される所望の位置となるよう調節する。従来、この苗取り量調節ゲージ262は、本例のロータリー式の苗植付装置52とは別のクランク式の苗植付装置の場合は植付爪の作動軌跡が異なるので、田植機の型式により異なる。そこで、苗取り量調節ゲージ262を構成する1枚のプレートの表裏に目盛263を付け、そのプレートを折り曲げて苗取り量調節ゲージ262を構成するにあたり、折り曲げ方向を一方側とするか他方側とするかで、共通の部材で2種類の苗取り量調節ゲージ262を作成する構成としている。これにより、コストダウンが図れる。尚、プレートに折り曲げるための溝を設け、プレートの折り曲げは、市場のユーザーにて簡単に行えるようにしておけばよい。
【0026】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0027】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0028】
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0029】
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0030】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0031】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0032】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0033】
また、圃場の土壌の硬軟に応じて、土壌が硬いときにはロータ27の回転速度を速くし、土壌が軟らかいときにはロータ27の回転速度を遅くし、土壌の硬軟に応じてロータ27の回転速度を変更する構成とすればよい。具体的には、ロータ27ヘの伝動経路にロータ変速装置を設け、苗植付部4に土壌の硬軟を検出する硬軟センサを設け、硬軟センサの検出に基づきロータ変速装置を制御する構成とすればよい。これにより、硬い土壌でも確実に整地でき、また軟らかい土壌では軟らかくなりすぎないようにできる。
【0034】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0035】
また、油圧式無段変速装置23に高い走行負荷がかかると、エンジン20の回転数を低下させる制御がなされる。具体的には、油圧式無段変速装置23のリリーフ弁の作動又は油圧回路内の圧力を検出する圧力センサの検出に基づき、高い走行負荷がかかっていると判断すると、スロットルバルブを閉じる側に作動させるか又は燃料供給ポンプからの燃料供給量を少なくし、エンジン20の回転数を低下させる。同様に、苗植付部4の上昇により昇降油圧シリンダ46に高い負荷がかかったことをリリーフ弁又は圧力センサで判断して、エンジン20の回転数を低下させる構成としている。また、燃料タンク内の燃料残量が少なくなると、燃料供給ポンプからの燃料供給量を少なくなる側に補正する。これにより、燃料切れを抑える構成となっている。
【0036】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0037】
図3の平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示す。
ハンドル34で旋回動作させる際に、ハンドル34の操作により作動するピットマンアーム175に出力軸174を介して作動ローラ177を連動させ、該作動ローラ177に従動体179を連動させて左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180が設けられているが、該クラッチ連動用左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iとの間は左右のプルシリンダ217で連結した構成となっている。
【0038】
また、プルシリンダ217を作動させるためのクラッチ制御用の電磁バルブ221を備えた油圧回路を図10に示す。左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(図3)(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221を備えている上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切る制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。
【0039】
図3に示す部材174,175,177,179,180、217,86Iなどを旋回連繋機構Aと言うことにする。
上記した実施例では、ハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0040】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図4に示すように、主変速レバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、主変速レバー90の基部に設けた接当片190が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図5)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0041】
このように、主変速レバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0042】
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図5に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0043】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0044】
一方、操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図5)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない。
【0045】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0046】
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時に主変速レバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0047】
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0048】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度センサ(ハンドル切れ角センサ)193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の伝動軸回転数センサ(走行距離検出センサ)205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0049】
この制御は、図6に示すように、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが断続的に入切する状態で、旋回内側の後輪7の伝動軸回転数が第一の設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、旋回内側の後輪7の伝動軸回転数が、苗植付け具126が前行程の植え終わり位置に揃うまでの第二の設定値N2に達すると植付「入り」にする機構である。
【0050】
上記旋回連動制御のフローを図7に示す。
まず、左右の後輪11,11の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また第一の設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、第二の設定値N2(旋回開始から植付開始までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0051】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図5)により、補正値n0を設定する。
【0052】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。尚、フィンガーレバー166は、手動操作にて苗植付部4の植付クラッチを操作して該苗植付部4を作動状態と非作動状態に任意に切り替えるための操作具であり、作業装置(苗植付部4)を非作業状態へ切り替える作業状態切替操作具となる。苗植付部4の作動状態と非作動状態への切替は、制御装置163からの出力信号により作動するPTOクラッチ作動ソレノイド264により、前記植付クラッチ250が操作されて為される。
【0053】
次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図5)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回を開始したかどうかを検出する。尚、フィンガーレバー166の操作により苗植付部4が非作動状態に切り替えられていなくても、旋回が開始されると、制御装置163により強制的に苗植付部4を非作動状態に切り替える。このとき、前記値(n)は零となる。
【0054】
旋回を開始すると操向内側の後輪11の伝動軸の回転数の検出を開始して、積算回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0055】
尚、機体の進行方向を検出する磁気式の方位センサ230を設け、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達しても、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出すれば、苗植付部4を下降せず、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出すれば、苗植付部4を下降する指令を出力する構成としている。これにより、オペレータによりステアリングハンドル34の操作パターンが異なって旋回経路が相違することで、旋回過程における設定の操向角度よりも早いタイミングで苗植付部4が下降することにより、機体の旋回で苗植付部4が畦に干渉して破損するようなことを防止している。そして、上述のように、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達していながら、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出した場合は、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出したときからの旋回内側の後輪7の回転数が、第二の設定値N2から第一の設定値N1を減じた値に達すると、苗植付部4が駆動し苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる制御を行う。これにより、上述のように苗植付部4の下降タイミングを適正に設定したのに準じて植付開始のタイミングも適正に制御することができ、苗の植え始め位置を正確に揃えることができる。
【0056】
尚、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達していながら、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出した場合は、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出すれば、苗植付部4を下降するのであるが、この方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したときの旋回内側の後輪7の回転数を、新たに第一の設定値N1として更新して設定すれば、以降の旋回で第一の設定値N1によりオペレータの旋回パターンに合わせて適正なタイミングで苗植付部4を下降させることができ、以降の作業中に方位センサ230が故障したり、機体の近くの鉄塔等の磁気の影響で方位センサが適正に方位を検出できなかったりする場合でも、第一の設定値N1により適正なタイミングで苗植付部4を下降させることができる。尚、この場合は、補正入切用スイッチ等の切替手段により、予め方位センサ230による補正の制御は行わないように切り替えておく。
【0057】
本実施例の田植機では、自動植付開始モードが設定された時で、且つハンドル34により前輪10が直進状態から操舵状態へ操向されていることを旋回角度センサ193が検出した時にのみ、自動的に旋回外側の後輪11の回転数に応じて、旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動することからなるポンピングブレーキ旋回(ポンピングクラッチ旋回ともいう)を行うことができる。このようにポンピングブレーキ旋回を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。
【0058】
ポンピングブレーキ旋回は、制御装置163により、伝動軸回転数センサ205により操向外側の後輪11の回転数aを検出し、該操向外側の後輪11の回転数aから操向内側の後輪11の設定回転数b1を、所定の演算式(b1=a/5)にて演算して操向外側の後輪11の回転数aよりも小さい値(操向外側の後輪11の回転数aの5分の1)に設定する。そして、設定された設定回転数b1よりも検出される操向内側の後輪11の回転数bが大きいときは、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを切にする。逆に、設定回転数b1よりも検出される操向内側の後輪11の回転数bが小さいときは、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを入にする。尚、この操向内側のサイドクラッチを入にするのは、伝動軸回転数センサ205の検出に基づいて操向内側の後輪11の回転数bが所定の回転量b2(回転角度約8度、走行距離67mm)に達するまで為され、この所定の回転量b2に到達すると、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを切にする。これにより、操向内側の後輪11の回転量が小さくなったときに操向内側のサイドクラッチを入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成としている。
【0059】
従って、例えば耕盤深さや土壌の硬軟あるいは粘度等の条件により、操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを防止できると共に、機体を適正な旋回半径で旋回させることができ、旋回後の条合わせが容易になる。
【0060】
前記所定の回転量b2は、図8に示すように操作盤33に設けているポンピングクラッチ調節ダイヤル210で変更して設定することができる。このポンピングクラッチ調節ダイヤル210は、前記所定の回転量b2を零すなわち操向内側のサイドクラッチが常時切になる状態に設定することもできる。これにより、路上走行などで高速走行しているときには、ポンピングクラッチ旋回を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、操向内側のサイドクラッチを常時切に設定できる。尚、操向内側のサイドクラッチを入にする間隔を、上述では操向内側の後輪11の回転量b2により設定したが、時間(例えば0.5秒)により設定してもよい。
【0061】
また、前記演算式(b1=a/5)を変更して設定回転数b1を変更調節する調節具となる設定回転数調節ダイヤル を設けている。この設定回転数調節ダイヤル265の調節により、演算式における操向外側の後輪11の回転数aを除する値(標準で5であるが、4〜6の間の値に設定できる)を変更する構成となっている。これにより、サイドクラッチが断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更される。
【0062】
従って、圃場の状況や走行状況に対応して、設定回転数調節ダイヤル265により演算される前記設定回転数b1を変更して補正でき、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0063】
また、走行速度を操向外側の後輪11の回転数aで検出し、該走行速度が速いときには前記設定回転数b1を小さくなる側に補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数b1を大きくなる側に補正する構成としている。
【0064】
これにより、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が必要以上に駆動しないようにし、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、必要に応じて操向内側の後輪11が確実に駆動するようにし、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0065】
逆に、走行速度が速いときには前記設定回転数b1を大きくなる側に補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数b1を小さくなる側に補正する構成とすることもできる。これにより、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が確実に駆動するようにして、機体が走行不能になる状況を回避し、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、操向内側の後輪11が不要に駆動しないようにすることができる。
【0066】
上述では、走行速度を操向外側の後輪11の回転数aで検出する構成について説明したが、走行速度を検出する手段としては、変速操作具となる主変速レバー90の操作位置やエンジン20の回転数の検出によるものとしてもよい。
【0067】
尚、走行車体2の旋回中において、例えば機体の旋回後半にさしかかり次行程への条合わせをする等、適宜ハンドル34の切れ角を変化させながら旋回するとき、前輪10の向きが操舵状態から直進状態側へ戻されるのを旋回角度センサ193が検出すると、前記設定回転数b1が大きくなる側に補正され、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるように変更する。尚、この設定回転数b1が大きくなる側に補正された以降は、機体の条合わせの円滑化のために、前輪10が直進状態へ戻るまで、設定回転数b1が小さくなる側に変更されないようにしてもよい。
【0068】
また、耕盤深さセンサとなる昇降リンクセンサ48により圃場の耕盤の深さを検出し、この圃場の深さが深いほど、操向内側の後輪11の設定回転数b1を小さくなる側に補正し、サイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるように変更する。
【0069】
これにより、耕盤が深い場合は、旋回連動機構Aによりサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるので、耕盤が深いために操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0070】
上述では昇降リンクセンサ48により圃場の耕盤の深さを検出する構成について説明したが、圃場の耕盤の深さを検出する格別のセンサを設けてもよい。
また、前述のように走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する副変速レバー238を設けており、該副変速レバー238を路上走行速に切り替えたことを副変速レバーセンサ238aで検出すると、旋回連動機構Aにより前輪10が直進状態から操舵状態へ操向されるのを旋回角度センサ193により検出するとき、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを常時切状態にする構成としている。
【0071】
これにより、走行速度を路上走行速に切り替えた路上走行時には、操向内側のサイドクラッチを常時切状態とするので、不要に操向内側の後輪11が断続的に駆動することがなく、機体の小回り旋回性を維持できると共に、後輪11が断続的に駆動することによるオペレータの乗り心地の悪化を防止できる。
【0072】
尚、苗植付部4の昇降及び駆動の入切を手動で行う手動操作具となるフィンガーレバー166からの信号に基づき、苗植付部4を上昇していることから路上走行時であることを判断したり、苗植付部4が非駆動状態であることから路上走行時又は圃場内での非作業走行時であることを判断したりして、これらの時には上述のように操向内側のサイドクラッチを常時切状態にする構成としてもよい。
【0073】
また、左右ローリング制御のために苗植付部4に左右傾斜角速度を検出する角速度センサを設けた場合、機体の旋回中に苗植付部4を左右ローリング制御せず走行車体2に対して固定しているにも拘らず、前記角速度センサにより機体が左右に急激に傾動していることを検出すると、設定回転数b1を小さくなる側に補正する構成とし、操向内側のサイドクラッチの入切の周期において入状態を長くし、機体の急激な操向を抑えて機体の揺れを抑制することができる。
【0074】
また、図7に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。この構成により、旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせた作業性を行うことができる。
【0075】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅(D)が一定)となる効果がある。
【0076】
また、上記図7に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。このように、畦際から発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0077】
また、枕地を一工程で苗の植付作業を行うことができるホイルベースが短い田植機を用いて苗の植え付け作業を行う場合に、田植機の旋回時に苗植付部4の下降タイミングが早く、畦に苗植付部4の旋回外端が乗り上げることがある。この様な場合に苗植付部4の傾きを検出すると旋回時の苗植付部4の下降開始の設定時間を自己補正しておき、次回から、例えば数秒間、自動で苗植付部4の下降開始時間を遅らせるように制御を行うことで、畦に苗植付部4の旋回外端の乗り上げで、不測の破損事故を防止することができる。
【0078】
また、下降開始を遅らせすぎて苗の植え付け開始位置までに苗植付部4の下降が間に合わなくて接地していないことを昇降リンクセンサ48で検知すると、警報でオペレータに知らせることができる、また、このとき苗植付部4を下降させないで作業を終了させる制御を行っても良い。尚、畦に苗植付部4の旋回外端が乗り上げたことは植付部ローリングセンサ54で検出することができる。
【0079】
また、前記旋回制御時には苗植付部4の「下げ」から苗植付部4の「入り」までの間に苗植付部4の油圧シリンダー46の油圧感度を鈍感(上昇側に切り替わらない)状態にすることでセンターフロート55などを前上がり状態にすることが望ましい。これはセンターフロートセンサー169の制御目標をセンターフロート55が前上がり状態になるように設定することで行え、センターフロート55を前上がり状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。
【0080】
前記自動植付開始モードの設定は図9に示す植始め調節ダイヤル212で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、植始め調節ダイヤル212を回して設定する。前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0081】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記ポンピングクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。これは湿田での旋回走行中では、車輪10,11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記ポンピングクラッチ旋回を選定するが、このときのみ連動してポンピングクラッチ制御をすることができる。こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
【0082】
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記ポンピングクラッチ旋回をしないで、通常の旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを常時切状態で旋回する通常の旋回モードとすることもできる。
【0083】
昇降バルブ161の下げPWM(Pulse Wide Modulation)制御時の騒音の対応策として次のような構成を採用することができる。すなわち、図10に示す油圧回路図において昇降バルブ161より昇降シリンダ46側にあるチェックバルブ162のスプールの後方から出る作動油を利用して、スプールがストロークしすぎるとスプールのポートを閉める構成でダンパー効果を得るようにして昇降バルブ161の下げPWM制御時の騒音を小さくする。
【0084】
現行の前記チェックバルブ162では、昇降バルブ161の下げのPWM制御時にスプールが高速にプラグ等に当たることにより騒音が発生する。個々の部品の精度などの違いにより大きな音が発生するものがあり問題となっているが、騒音が発生する箇所としてチェックバルブ162のスプールがそのストッパになっているプラグに当たる時に大きい音となることが分かったのでチェックバルブ162のスプールがプラグに当たる前にポートを閉めてダンパー効果によりプラグに当たらないようにして騒音の発生を防ぐことができた。
【0085】
本実施例の田植機の変速装置は従来周知の可変容量型の油圧ポンプ91と油圧モータ92を閉回路状にオイルが循環する油圧回路で接続した油圧式無段変速装置23を備えているが、その油圧回路構成を図10に示す。
【0086】
図10において、油圧式無段変速装置23は可動斜板付きの可変容量型油圧ポンプ91と定容量型の油圧モータ92を備え、該油圧式無段変速装置23にはエンジン20からの出力が入力軸(図示せず)を経由して油圧ポンプ91に入り、油圧ポンプ91の可動斜板の傾斜角度を調整することで油圧ポンプ91からの作動油の吐出量がコントロールされる。油圧ポンプ91の可動斜板を回転させて吐出された作動油は油圧モータ92に正転側回路96及び逆転側回路97からなる閉回路を介して送油される。前記閉回路は油圧ポンプ91の斜板95の傾斜角度に応じて回路96、97の一方が高圧側油路になり、他方が低圧側油路になる。また正転側回路96と逆転側回路97の中間部を結ぶバイパス油路99を有しており、該バイパス油路99には高圧側油路と低圧側油路を連通または遮断する切換バルブ101を備えている。さらに、一方向弁106を経由して正転側回路96へ油圧を供給する油路107と一方向弁109を経由して逆転側回路97へ油圧を供給する油路110を設け、該油路107又は油路110には不足する油圧を補充するためのチャージ圧供給用の油路113が接続されている。このチャージ圧供給用の油路113へは、油圧ポンプ112からの油圧が油圧シリンダー46を作動させる油圧バルブ系へ供給されるが、該油圧バルブ系において油圧シリンダー46側へ制御流となる一定流量を供給するための定流量弁234により分流された余剰流が供給される。
【0087】
そして、正転側回路96と逆転側回路97とに連通するシャトル弁231を設け、機体の走行負荷により正転側回路96か又は逆転側回路97の何れか一方の油圧の圧力が高くなると、前記シャトル弁231を介してパイロット油路232を介してパイロットチェック弁233を連通状態に切り替え、前記油圧バルブ系において定流量弁234により分流された油圧シリンダー46側への制御流を再度前記定流量弁234に供給して循環させることにより、結果的に定流量弁234により分流される余剰流を増加させ、チャージ圧供給用の油路113を介して高い圧力の油圧を油圧式無段変速装置23へ補充し、油圧式無段変速装置23の出力が低下するのを防止して所望の変速作動速度で変速できて良好な走行性能を得ることができる。特に、エンジン20の回転に連動して油圧ポンプ112が駆動されるが、アイドリング状態等のエンジン20の回転数が低いときに油圧式無段変速装置23へ補充する油圧が低下するようなことを防止できる。いいかえると、油圧シリンダー46による苗植付部4の上昇作動に優先して油圧式無段変速装置23へ油圧を補充することができる。尚、前記パイロットチェック弁233に代えて、流量切替弁を使用してもよい。
【0088】
尚、後輪11に代えてクローラ266を採用することもできる。クローラ266の場合、電動シリンダ等のアクチュエータで転輪267を移動させることにより接地長を変更可能に設け、副変速レバーセンサ238a等の検出により路上走行状態であるとき、又は昇降リンクセンサ48の検出で苗植付部4を上昇する等の機体旋回状態であるとき、接地長を短くし、通常の植付作業時、又は路上走行状態でも植付部ローリングセンサ54の検出等による傾斜地であるとき、接地長が長くなるように制御すればよい。これにより、路上走行における走行抵抗の低減、機体旋回時の小回り旋回性、通常作業時の走行推進力の向上に伴うエンジン20の低燃費化、傾斜地での転倒防止等を図ることができる。
【0089】
また、この種の田植機には、座席31の上方を覆うバイザを装着することができる。このバイザにより、太陽光や降雨を遮り、オペレータの作業環境を良好に維持できる。このバイザーの支持フレームは、左右の乗降ステップ267付近から上方に延びる左右各々の上下フレーム268と、この左右の上下フレーム268の上端を繋ぐ左右フレームとにより構成され、走行車体2側の車体フレームと前記支持フレームとで機体正面視で枠型のフレーム構造が構成され、フレームの強度が向上する。尚、乗降ステップ267を支持する左右方向のフレーム269から前方に延びる延長フレーム270を設け、延長フレーム270の前端に上下フレーム268の下端を取り付けた構成となっている。延長フレーム270と上下フレーム268との間を繋ぐ補強フレーム271により、支持フレームの取付部の強度を維持している。
【0090】
以上、各種の条件に応じてサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する手段として、操向内側の後輪11の回転量b2又は設定回転数b1を変更する構成について説明したが、各種の条件に応じて回転量b2又は設定回転数b1の何れを変更してもよく、前記回転量b2の変更と設定回転数b1の変更を併用してもよい。また、サイドクラッチを入にする間隔を時間で設定し、この時間を変更してもよい。また、サイドクラッチを断続的に入/切する周期を走行距離、操向外側の後輪11の回転数又は時間等で設定し、これらの設定を変更することで前記周期を変更して、周期における入状態の割合を変更する構成としてもよい。
【0091】
尚、サイドクラッチを断続的に入/切する方法として、設定回転数b1に基づき操向内側の後輪11を駆動する構成について説明したが、これに限らず、経過時間や走行距離等に伴って規則的に操向内側の後輪11を駆動する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1:乗用型田植機、2:走行車体、4:苗植付部、10:前輪、11:後輪、34:ハンドル、48:昇降リンクセンサ、163:制御装置、175:ピットマンアーム、180:左右ロッド、193:旋回角度センサ、205:伝動軸回転数センサ、238:副変速レバー、265:設定回転数調節ダイヤル、A:旋回連動機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチと、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると旋回内側のサイドクラッチを切り操作する機械式の自動操向機構を備えており、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り制御する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−196000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された乗用型作業機では、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、操向内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようになる。しかし、耕盤の深さによって、操向内側の後輪へかかる抵抗が異なるため、該後輪による圃場の荒らし具合が異なり、適切に圃場が荒れるのを抑えることが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪(10)が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構(A)と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構(A)により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、左右の後輪(11)の回転数を検出する各々の伝動軸回転数センサ(205)を設け、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されたとき、伝動軸回転数センサ(205)により検出された操向外側の後輪(11)の回転数に基づいて操向内側の後輪(11)の設定回転数を所定の演算式にて演算して前記操向外側の後輪(11)の回転数よりも小さい値に設定し、設定回転数よりも検出される操向内側の後輪(11)の回転数が大きいときは操向内側のサイドクラッチを切にし、設定回転数より検出される操向内側の後輪(11)の回転数が小さいときは操向内側のサイドクラッチを該後輪(11)が所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成とし、演算される前記設定回転数を変更調節する調節具(265)により、旋回連動機構(A)で断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する制御装置(163)を設けた作業機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する変速レバー(238)を設け、制御装置(163)は、変速レバー(238)により走行速度を路上走行速に切り替えたとき、旋回連動機構(A)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されると操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する状態から常時切状態にする構成とした請求項1又は2に記載の作業機とした。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、制御装置(163)は、走行速度に対応して前記演算式を補正して、走行速度が速いときには前記設定回転数を小さく補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数を大きく補正する構成とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、耕盤が深い場合は、旋回連動機構Aにより断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるので、耕盤が深いために操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、設定回転数より検出される操向内側の後輪11の回転数が小さいときに、該後輪11を所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで駆動するので、例えば耕盤深さや土壌の硬軟あるいは粘度等の条件により、操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを防止できる。また、圃場の状況や走行状況に対応して、調節具265により演算される前記設定回転数を変更して補正でき、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、走行速度を路上走行速に切り替えた路上走行時には、操向内側のサイドクラッチを常時切状態とするので、不要に操向内側の後輪11が断続的に駆動することがなく、機体の小回り旋回性を維持できると共に、後輪11が断続的に駆動することによるオペレータの乗り心地の悪化を防止できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が必要以上に駆動しないようにし、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、必要に応じて操向内側の後輪11が確実に駆動するようにし、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図である。
【図4】チェンジレバー部の斜視図である。
【図5】制御ブロック図である。
【図6】旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図7】旋回連動制御のフローチャートである。
【図8】操作盤のポンピングクラッチ調節ダイヤル部分の平面図である。
【図9】操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図である。
【図10】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図である。
【図11】主変速レバーの保持機構を示す図である。
【図12】植付クラッチ及び施肥クラッチを示す図である。
【図13】リードカム及びリードカム軸を示す図である。
【図14】スリーブを示す断面図である。
【図15】苗取り量調節ゲージを示す斜視図である。
【図16】クローラを示す側面図である。
【図17】上下フレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は、粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部となる苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0016】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0017】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0018】
尚、植付クラッチケース25内に、苗植付部4へ伝動する植付クラッチ250と、施肥装置5へ伝動する施肥クラッチ251とを設けている。この植付クラッチ250は植付クラッチピン252で作動し、施肥クラッチ251は施肥クラッチシフタ253により作動する構成となっているが、植付クラッチピン252及び施肥クラッチシフタ253は共通のアクチュエータ(電動モータ)の駆動により作動し、非作業状態に切り替えるときはアクチュエータを段階的に駆動させ、施肥クラッチシフタ253が先に作動して施肥クラッチ251を切状態にし、その後植付クラッチピン252が作動して植付クラッチ250を切状態にする。これにより、後述する繰出部61から繰り出されて実際に圃場に施肥されるまでに時間を要する施肥装置5が先に停止することで、施肥作業の終了位置と植付作業の終了位置を合わせることができる。しかしながら、機体を前進させて圃場の畦際ぎりぎりまで植付作業を行うとき、植付後、機体を後進させる操作に連動して苗植付部4を上昇すると共に植付クラッチ250及び施肥クラッチ251を同時に切状態に切り替えるが、植付クラッチ250は、植付クラッチピン252による定位置停止クラッチであるので、即座に伝動が断たれず、後進を始めても植付クラッチ250が伝動して苗植付部4が逆転作動するおそれがある。そこで、植付クラッチ250と施肥クラッチ251を隣接する伝動軸上に設け、施肥クラッチ251を切状態に切り替えると、施肥クラッチ251の鍔部251aが植付クラッチ250の鍔部250aに係合して、植付クラッチ250を切側に若干作動させてクラッチ爪が半掛かり状態にする構成となっている。これにより、その後の植付クラッチピン252による植付クラッチ250の切側への作動が行われやすい状況となり、植付クラッチ250の伝動が即座に断たれないようなことを抑えることができる。
【0019】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向手段となるハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0020】
油圧式無段変速装置23は、ハンドル34の右側に設けた主変速レバー16で変速操作される。この主変速レバー16には該主変速レバー16と一体回動する操作カム235を設け、該操作カム235の外周に無数のカム溝235aを設け、該カム溝235aに係合する位置決めローラ236をアーム237の先端に設け、該アーム237を操作カム235側へ回動する側へ付勢する位置決め用スプリング237により、位置決めローラ236をカム溝235aに押圧して主変速レバー16の操作位置を保持している。一方、ミッションケース12内の伝動ギヤの切替により通常植付作業時に使用する低速の作業速と路上走行時に使用する高速の路上走行速と伝動を断つ中立速度の3段階に切替する副変速レバー238を、ハンドル34の下方に設けている。そして、副変速レバー238と前記アーム237を連結する連動ケーブル239を設け、副変速レバー238を作業速の位置に操作すると、連動ケーブル239を弛めてアーム237を操作カム235側へ回動させ、主変速レバー16の操作位置を保持が確実に行われるようにし、走行等の負荷が大きい作業時に主変速レバー16が自動戻りしないようにしている。逆に、副変速レバー238を路上走行速の位置に操作すると、連動ケーブル239を引いてアーム237を操作カム235から離れる側へ回動させ、主変速レバー16の操作位置を保持力を小さくして、主変速レバー16の操作荷重を小さくして操作フィーリングの向上を図っている。
【0021】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0022】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0023】
尚、苗載台51を左右移動させるためのリードカム254と、該リードカム254が係合するリードカム軸255を備えている。リードカム軸255は、苗植付伝動ケース50内からの動力により駆動回転する。リードカム軸255の駆動により、苗載台51に連結されたリードカム254が左右移動し、苗載台51が左右移動する構成である。リードカム254の左右両側でリードカム軸255の外周には、リードカム軸255が露出しないように伸縮自在のブーツ256を左右各々設けている。この左右のブーツ256内にリードカム軸255を潤滑する潤滑油を収容すると共に、左右のブーツ256内を連結パイプ257により連結している。従って、リードカム254の左右移動により左右のブーツ256が伸縮するのに伴って、適宜潤滑油が連結パイプ257を経由して左右のブーツ256間を移動する。これにより、リードカム254の左右移動に拘らず、左右のブーツ256内の内圧を一定にすることができる。連結パイプ257は、リードカム254のリード爪部を経由して該リード爪部も潤滑する構成となっている。
【0024】
また、別の構成として、前記ブーツ256の代わりに、リードカム軸255の外周を覆うスリーブを設けることができる。このスリーブは、リードカム254と共に左右移動する移動スリーブ258と、左右移動しない固定スリーブ259とを備えている。固定スリーブ259にオイルシール260及びオイレスブッシュ261を介して摺動可能に移動スリーブ258を設け、左右の移動スリーブ258内を連結パイプ257により連結している。これにより、ブーツ256と比較して、リードカム254の移動による左右のスリーブ内の容積の変化を抑えることができ、また潤滑油の重みでブーツ256のように垂れ下がることもなく、潤滑性が向上する。尚、連結パイプ257は、前述と同様にリード爪部も潤滑する構成とすればよい。
【0025】
尚、苗植付装置52の取付位置の調節により、苗植付装置52の植付爪の作動軌跡を変更し、苗取出口51aからの苗取り量を調節できる構成となっている。この調節にあたっては、コの字型のプレートで構成される苗取り量調節ゲージ262を苗取出口51a部分に置き、植付爪先端の位置が苗取り量調節ゲージ262の目盛263で示される所望の位置となるよう調節する。従来、この苗取り量調節ゲージ262は、本例のロータリー式の苗植付装置52とは別のクランク式の苗植付装置の場合は植付爪の作動軌跡が異なるので、田植機の型式により異なる。そこで、苗取り量調節ゲージ262を構成する1枚のプレートの表裏に目盛263を付け、そのプレートを折り曲げて苗取り量調節ゲージ262を構成するにあたり、折り曲げ方向を一方側とするか他方側とするかで、共通の部材で2種類の苗取り量調節ゲージ262を作成する構成としている。これにより、コストダウンが図れる。尚、プレートに折り曲げるための溝を設け、プレートの折り曲げは、市場のユーザーにて簡単に行えるようにしておけばよい。
【0026】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0027】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0028】
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0029】
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0030】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0031】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0032】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0033】
また、圃場の土壌の硬軟に応じて、土壌が硬いときにはロータ27の回転速度を速くし、土壌が軟らかいときにはロータ27の回転速度を遅くし、土壌の硬軟に応じてロータ27の回転速度を変更する構成とすればよい。具体的には、ロータ27ヘの伝動経路にロータ変速装置を設け、苗植付部4に土壌の硬軟を検出する硬軟センサを設け、硬軟センサの検出に基づきロータ変速装置を制御する構成とすればよい。これにより、硬い土壌でも確実に整地でき、また軟らかい土壌では軟らかくなりすぎないようにできる。
【0034】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0035】
また、油圧式無段変速装置23に高い走行負荷がかかると、エンジン20の回転数を低下させる制御がなされる。具体的には、油圧式無段変速装置23のリリーフ弁の作動又は油圧回路内の圧力を検出する圧力センサの検出に基づき、高い走行負荷がかかっていると判断すると、スロットルバルブを閉じる側に作動させるか又は燃料供給ポンプからの燃料供給量を少なくし、エンジン20の回転数を低下させる。同様に、苗植付部4の上昇により昇降油圧シリンダ46に高い負荷がかかったことをリリーフ弁又は圧力センサで判断して、エンジン20の回転数を低下させる構成としている。また、燃料タンク内の燃料残量が少なくなると、燃料供給ポンプからの燃料供給量を少なくなる側に補正する。これにより、燃料切れを抑える構成となっている。
【0036】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0037】
図3の平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示す。
ハンドル34で旋回動作させる際に、ハンドル34の操作により作動するピットマンアーム175に出力軸174を介して作動ローラ177を連動させ、該作動ローラ177に従動体179を連動させて左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180が設けられているが、該クラッチ連動用左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iとの間は左右のプルシリンダ217で連結した構成となっている。
【0038】
また、プルシリンダ217を作動させるためのクラッチ制御用の電磁バルブ221を備えた油圧回路を図10に示す。左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(図3)(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221を備えている上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切る制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。
【0039】
図3に示す部材174,175,177,179,180、217,86Iなどを旋回連繋機構Aと言うことにする。
上記した実施例では、ハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0040】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図4に示すように、主変速レバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、主変速レバー90の基部に設けた接当片190が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図5)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0041】
このように、主変速レバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0042】
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図5に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0043】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0044】
一方、操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図5)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない。
【0045】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0046】
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時に主変速レバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0047】
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0048】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度センサ(ハンドル切れ角センサ)193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の伝動軸回転数センサ(走行距離検出センサ)205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0049】
この制御は、図6に示すように、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが断続的に入切する状態で、旋回内側の後輪7の伝動軸回転数が第一の設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、旋回内側の後輪7の伝動軸回転数が、苗植付け具126が前行程の植え終わり位置に揃うまでの第二の設定値N2に達すると植付「入り」にする機構である。
【0050】
上記旋回連動制御のフローを図7に示す。
まず、左右の後輪11,11の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また第一の設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、第二の設定値N2(旋回開始から植付開始までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0051】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図5)により、補正値n0を設定する。
【0052】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。尚、フィンガーレバー166は、手動操作にて苗植付部4の植付クラッチを操作して該苗植付部4を作動状態と非作動状態に任意に切り替えるための操作具であり、作業装置(苗植付部4)を非作業状態へ切り替える作業状態切替操作具となる。苗植付部4の作動状態と非作動状態への切替は、制御装置163からの出力信号により作動するPTOクラッチ作動ソレノイド264により、前記植付クラッチ250が操作されて為される。
【0053】
次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図5)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回を開始したかどうかを検出する。尚、フィンガーレバー166の操作により苗植付部4が非作動状態に切り替えられていなくても、旋回が開始されると、制御装置163により強制的に苗植付部4を非作動状態に切り替える。このとき、前記値(n)は零となる。
【0054】
旋回を開始すると操向内側の後輪11の伝動軸の回転数の検出を開始して、積算回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0055】
尚、機体の進行方向を検出する磁気式の方位センサ230を設け、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達しても、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出すれば、苗植付部4を下降せず、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出すれば、苗植付部4を下降する指令を出力する構成としている。これにより、オペレータによりステアリングハンドル34の操作パターンが異なって旋回経路が相違することで、旋回過程における設定の操向角度よりも早いタイミングで苗植付部4が下降することにより、機体の旋回で苗植付部4が畦に干渉して破損するようなことを防止している。そして、上述のように、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達していながら、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出した場合は、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出したときからの旋回内側の後輪7の回転数が、第二の設定値N2から第一の設定値N1を減じた値に達すると、苗植付部4が駆動し苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる制御を行う。これにより、上述のように苗植付部4の下降タイミングを適正に設定したのに準じて植付開始のタイミングも適正に制御することができ、苗の植え始め位置を正確に揃えることができる。
【0056】
尚、旋回内側の後輪7の旋回開始からの伝動軸回転数が第一の設定値N1に達していながら、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向していないと検出した場合は、方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したことを検出すれば、苗植付部4を下降するのであるが、この方位センサ230により機体が旋回開始から設定角度(90度)操向したときの旋回内側の後輪7の回転数を、新たに第一の設定値N1として更新して設定すれば、以降の旋回で第一の設定値N1によりオペレータの旋回パターンに合わせて適正なタイミングで苗植付部4を下降させることができ、以降の作業中に方位センサ230が故障したり、機体の近くの鉄塔等の磁気の影響で方位センサが適正に方位を検出できなかったりする場合でも、第一の設定値N1により適正なタイミングで苗植付部4を下降させることができる。尚、この場合は、補正入切用スイッチ等の切替手段により、予め方位センサ230による補正の制御は行わないように切り替えておく。
【0057】
本実施例の田植機では、自動植付開始モードが設定された時で、且つハンドル34により前輪10が直進状態から操舵状態へ操向されていることを旋回角度センサ193が検出した時にのみ、自動的に旋回外側の後輪11の回転数に応じて、旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動することからなるポンピングブレーキ旋回(ポンピングクラッチ旋回ともいう)を行うことができる。このようにポンピングブレーキ旋回を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。
【0058】
ポンピングブレーキ旋回は、制御装置163により、伝動軸回転数センサ205により操向外側の後輪11の回転数aを検出し、該操向外側の後輪11の回転数aから操向内側の後輪11の設定回転数b1を、所定の演算式(b1=a/5)にて演算して操向外側の後輪11の回転数aよりも小さい値(操向外側の後輪11の回転数aの5分の1)に設定する。そして、設定された設定回転数b1よりも検出される操向内側の後輪11の回転数bが大きいときは、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを切にする。逆に、設定回転数b1よりも検出される操向内側の後輪11の回転数bが小さいときは、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを入にする。尚、この操向内側のサイドクラッチを入にするのは、伝動軸回転数センサ205の検出に基づいて操向内側の後輪11の回転数bが所定の回転量b2(回転角度約8度、走行距離67mm)に達するまで為され、この所定の回転量b2に到達すると、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを切にする。これにより、操向内側の後輪11の回転量が小さくなったときに操向内側のサイドクラッチを入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成としている。
【0059】
従って、例えば耕盤深さや土壌の硬軟あるいは粘度等の条件により、操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを防止できると共に、機体を適正な旋回半径で旋回させることができ、旋回後の条合わせが容易になる。
【0060】
前記所定の回転量b2は、図8に示すように操作盤33に設けているポンピングクラッチ調節ダイヤル210で変更して設定することができる。このポンピングクラッチ調節ダイヤル210は、前記所定の回転量b2を零すなわち操向内側のサイドクラッチが常時切になる状態に設定することもできる。これにより、路上走行などで高速走行しているときには、ポンピングクラッチ旋回を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、操向内側のサイドクラッチを常時切に設定できる。尚、操向内側のサイドクラッチを入にする間隔を、上述では操向内側の後輪11の回転量b2により設定したが、時間(例えば0.5秒)により設定してもよい。
【0061】
また、前記演算式(b1=a/5)を変更して設定回転数b1を変更調節する調節具となる設定回転数調節ダイヤル を設けている。この設定回転数調節ダイヤル265の調節により、演算式における操向外側の後輪11の回転数aを除する値(標準で5であるが、4〜6の間の値に設定できる)を変更する構成となっている。これにより、サイドクラッチが断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更される。
【0062】
従って、圃場の状況や走行状況に対応して、設定回転数調節ダイヤル265により演算される前記設定回転数b1を変更して補正でき、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0063】
また、走行速度を操向外側の後輪11の回転数aで検出し、該走行速度が速いときには前記設定回転数b1を小さくなる側に補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数b1を大きくなる側に補正する構成としている。
【0064】
これにより、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が必要以上に駆動しないようにし、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、必要に応じて操向内側の後輪11が確実に駆動するようにし、操向内側の後輪11を適正に且つ円滑に回転させることができ、機体の小回り旋回性を維持しながら、各種の状況に応じて適切に圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0065】
逆に、走行速度が速いときには前記設定回転数b1を大きくなる側に補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数b1を小さくなる側に補正する構成とすることもできる。これにより、走行速度の変化に伴う操向外側の後輪11のスリップ率の変化に対応して、走行速度が速いときには操向外側の後輪11のスリップ率が大きくなるため、操向内側の後輪11が確実に駆動するようにして、機体が走行不能になる状況を回避し、走行速度が遅いときには操向外側の後輪11のスリップ率が小さくなるため、操向内側の後輪11が不要に駆動しないようにすることができる。
【0066】
上述では、走行速度を操向外側の後輪11の回転数aで検出する構成について説明したが、走行速度を検出する手段としては、変速操作具となる主変速レバー90の操作位置やエンジン20の回転数の検出によるものとしてもよい。
【0067】
尚、走行車体2の旋回中において、例えば機体の旋回後半にさしかかり次行程への条合わせをする等、適宜ハンドル34の切れ角を変化させながら旋回するとき、前輪10の向きが操舵状態から直進状態側へ戻されるのを旋回角度センサ193が検出すると、前記設定回転数b1が大きくなる側に補正され、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるように変更する。尚、この設定回転数b1が大きくなる側に補正された以降は、機体の条合わせの円滑化のために、前輪10が直進状態へ戻るまで、設定回転数b1が小さくなる側に変更されないようにしてもよい。
【0068】
また、耕盤深さセンサとなる昇降リンクセンサ48により圃場の耕盤の深さを検出し、この圃場の深さが深いほど、操向内側の後輪11の設定回転数b1を小さくなる側に補正し、サイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるように変更する。
【0069】
これにより、耕盤が深い場合は、旋回連動機構Aによりサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合が大きくなるので、耕盤が深いために操向内側の後輪11へかかる抵抗が大きくなって該後輪11が回転しにくくなるのを適確に防止でき、該後輪11が回転しないことにより圃場が荒れるのを抑えることができる。
【0070】
上述では昇降リンクセンサ48により圃場の耕盤の深さを検出する構成について説明したが、圃場の耕盤の深さを検出する格別のセンサを設けてもよい。
また、前述のように走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する副変速レバー238を設けており、該副変速レバー238を路上走行速に切り替えたことを副変速レバーセンサ238aで検出すると、旋回連動機構Aにより前輪10が直進状態から操舵状態へ操向されるのを旋回角度センサ193により検出するとき、クラッチ制御用電磁バルブ221への出力によりプルシリンダ217を作動させ、操向内側のサイドクラッチを常時切状態にする構成としている。
【0071】
これにより、走行速度を路上走行速に切り替えた路上走行時には、操向内側のサイドクラッチを常時切状態とするので、不要に操向内側の後輪11が断続的に駆動することがなく、機体の小回り旋回性を維持できると共に、後輪11が断続的に駆動することによるオペレータの乗り心地の悪化を防止できる。
【0072】
尚、苗植付部4の昇降及び駆動の入切を手動で行う手動操作具となるフィンガーレバー166からの信号に基づき、苗植付部4を上昇していることから路上走行時であることを判断したり、苗植付部4が非駆動状態であることから路上走行時又は圃場内での非作業走行時であることを判断したりして、これらの時には上述のように操向内側のサイドクラッチを常時切状態にする構成としてもよい。
【0073】
また、左右ローリング制御のために苗植付部4に左右傾斜角速度を検出する角速度センサを設けた場合、機体の旋回中に苗植付部4を左右ローリング制御せず走行車体2に対して固定しているにも拘らず、前記角速度センサにより機体が左右に急激に傾動していることを検出すると、設定回転数b1を小さくなる側に補正する構成とし、操向内側のサイドクラッチの入切の周期において入状態を長くし、機体の急激な操向を抑えて機体の揺れを抑制することができる。
【0074】
また、図7に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。この構成により、旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせた作業性を行うことができる。
【0075】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅(D)が一定)となる効果がある。
【0076】
また、上記図7に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。このように、畦際から発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0077】
また、枕地を一工程で苗の植付作業を行うことができるホイルベースが短い田植機を用いて苗の植え付け作業を行う場合に、田植機の旋回時に苗植付部4の下降タイミングが早く、畦に苗植付部4の旋回外端が乗り上げることがある。この様な場合に苗植付部4の傾きを検出すると旋回時の苗植付部4の下降開始の設定時間を自己補正しておき、次回から、例えば数秒間、自動で苗植付部4の下降開始時間を遅らせるように制御を行うことで、畦に苗植付部4の旋回外端の乗り上げで、不測の破損事故を防止することができる。
【0078】
また、下降開始を遅らせすぎて苗の植え付け開始位置までに苗植付部4の下降が間に合わなくて接地していないことを昇降リンクセンサ48で検知すると、警報でオペレータに知らせることができる、また、このとき苗植付部4を下降させないで作業を終了させる制御を行っても良い。尚、畦に苗植付部4の旋回外端が乗り上げたことは植付部ローリングセンサ54で検出することができる。
【0079】
また、前記旋回制御時には苗植付部4の「下げ」から苗植付部4の「入り」までの間に苗植付部4の油圧シリンダー46の油圧感度を鈍感(上昇側に切り替わらない)状態にすることでセンターフロート55などを前上がり状態にすることが望ましい。これはセンターフロートセンサー169の制御目標をセンターフロート55が前上がり状態になるように設定することで行え、センターフロート55を前上がり状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。
【0080】
前記自動植付開始モードの設定は図9に示す植始め調節ダイヤル212で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、植始め調節ダイヤル212を回して設定する。前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0081】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記ポンピングクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。これは湿田での旋回走行中では、車輪10,11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記ポンピングクラッチ旋回を選定するが、このときのみ連動してポンピングクラッチ制御をすることができる。こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
【0082】
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記ポンピングクラッチ旋回をしないで、通常の旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを常時切状態で旋回する通常の旋回モードとすることもできる。
【0083】
昇降バルブ161の下げPWM(Pulse Wide Modulation)制御時の騒音の対応策として次のような構成を採用することができる。すなわち、図10に示す油圧回路図において昇降バルブ161より昇降シリンダ46側にあるチェックバルブ162のスプールの後方から出る作動油を利用して、スプールがストロークしすぎるとスプールのポートを閉める構成でダンパー効果を得るようにして昇降バルブ161の下げPWM制御時の騒音を小さくする。
【0084】
現行の前記チェックバルブ162では、昇降バルブ161の下げのPWM制御時にスプールが高速にプラグ等に当たることにより騒音が発生する。個々の部品の精度などの違いにより大きな音が発生するものがあり問題となっているが、騒音が発生する箇所としてチェックバルブ162のスプールがそのストッパになっているプラグに当たる時に大きい音となることが分かったのでチェックバルブ162のスプールがプラグに当たる前にポートを閉めてダンパー効果によりプラグに当たらないようにして騒音の発生を防ぐことができた。
【0085】
本実施例の田植機の変速装置は従来周知の可変容量型の油圧ポンプ91と油圧モータ92を閉回路状にオイルが循環する油圧回路で接続した油圧式無段変速装置23を備えているが、その油圧回路構成を図10に示す。
【0086】
図10において、油圧式無段変速装置23は可動斜板付きの可変容量型油圧ポンプ91と定容量型の油圧モータ92を備え、該油圧式無段変速装置23にはエンジン20からの出力が入力軸(図示せず)を経由して油圧ポンプ91に入り、油圧ポンプ91の可動斜板の傾斜角度を調整することで油圧ポンプ91からの作動油の吐出量がコントロールされる。油圧ポンプ91の可動斜板を回転させて吐出された作動油は油圧モータ92に正転側回路96及び逆転側回路97からなる閉回路を介して送油される。前記閉回路は油圧ポンプ91の斜板95の傾斜角度に応じて回路96、97の一方が高圧側油路になり、他方が低圧側油路になる。また正転側回路96と逆転側回路97の中間部を結ぶバイパス油路99を有しており、該バイパス油路99には高圧側油路と低圧側油路を連通または遮断する切換バルブ101を備えている。さらに、一方向弁106を経由して正転側回路96へ油圧を供給する油路107と一方向弁109を経由して逆転側回路97へ油圧を供給する油路110を設け、該油路107又は油路110には不足する油圧を補充するためのチャージ圧供給用の油路113が接続されている。このチャージ圧供給用の油路113へは、油圧ポンプ112からの油圧が油圧シリンダー46を作動させる油圧バルブ系へ供給されるが、該油圧バルブ系において油圧シリンダー46側へ制御流となる一定流量を供給するための定流量弁234により分流された余剰流が供給される。
【0087】
そして、正転側回路96と逆転側回路97とに連通するシャトル弁231を設け、機体の走行負荷により正転側回路96か又は逆転側回路97の何れか一方の油圧の圧力が高くなると、前記シャトル弁231を介してパイロット油路232を介してパイロットチェック弁233を連通状態に切り替え、前記油圧バルブ系において定流量弁234により分流された油圧シリンダー46側への制御流を再度前記定流量弁234に供給して循環させることにより、結果的に定流量弁234により分流される余剰流を増加させ、チャージ圧供給用の油路113を介して高い圧力の油圧を油圧式無段変速装置23へ補充し、油圧式無段変速装置23の出力が低下するのを防止して所望の変速作動速度で変速できて良好な走行性能を得ることができる。特に、エンジン20の回転に連動して油圧ポンプ112が駆動されるが、アイドリング状態等のエンジン20の回転数が低いときに油圧式無段変速装置23へ補充する油圧が低下するようなことを防止できる。いいかえると、油圧シリンダー46による苗植付部4の上昇作動に優先して油圧式無段変速装置23へ油圧を補充することができる。尚、前記パイロットチェック弁233に代えて、流量切替弁を使用してもよい。
【0088】
尚、後輪11に代えてクローラ266を採用することもできる。クローラ266の場合、電動シリンダ等のアクチュエータで転輪267を移動させることにより接地長を変更可能に設け、副変速レバーセンサ238a等の検出により路上走行状態であるとき、又は昇降リンクセンサ48の検出で苗植付部4を上昇する等の機体旋回状態であるとき、接地長を短くし、通常の植付作業時、又は路上走行状態でも植付部ローリングセンサ54の検出等による傾斜地であるとき、接地長が長くなるように制御すればよい。これにより、路上走行における走行抵抗の低減、機体旋回時の小回り旋回性、通常作業時の走行推進力の向上に伴うエンジン20の低燃費化、傾斜地での転倒防止等を図ることができる。
【0089】
また、この種の田植機には、座席31の上方を覆うバイザを装着することができる。このバイザにより、太陽光や降雨を遮り、オペレータの作業環境を良好に維持できる。このバイザーの支持フレームは、左右の乗降ステップ267付近から上方に延びる左右各々の上下フレーム268と、この左右の上下フレーム268の上端を繋ぐ左右フレームとにより構成され、走行車体2側の車体フレームと前記支持フレームとで機体正面視で枠型のフレーム構造が構成され、フレームの強度が向上する。尚、乗降ステップ267を支持する左右方向のフレーム269から前方に延びる延長フレーム270を設け、延長フレーム270の前端に上下フレーム268の下端を取り付けた構成となっている。延長フレーム270と上下フレーム268との間を繋ぐ補強フレーム271により、支持フレームの取付部の強度を維持している。
【0090】
以上、各種の条件に応じてサイドクラッチを断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する手段として、操向内側の後輪11の回転量b2又は設定回転数b1を変更する構成について説明したが、各種の条件に応じて回転量b2又は設定回転数b1の何れを変更してもよく、前記回転量b2の変更と設定回転数b1の変更を併用してもよい。また、サイドクラッチを入にする間隔を時間で設定し、この時間を変更してもよい。また、サイドクラッチを断続的に入/切する周期を走行距離、操向外側の後輪11の回転数又は時間等で設定し、これらの設定を変更することで前記周期を変更して、周期における入状態の割合を変更する構成としてもよい。
【0091】
尚、サイドクラッチを断続的に入/切する方法として、設定回転数b1に基づき操向内側の後輪11を駆動する構成について説明したが、これに限らず、経過時間や走行距離等に伴って規則的に操向内側の後輪11を駆動する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1:乗用型田植機、2:走行車体、4:苗植付部、10:前輪、11:後輪、34:ハンドル、48:昇降リンクセンサ、163:制御装置、175:ピットマンアーム、180:左右ロッド、193:旋回角度センサ、205:伝動軸回転数センサ、238:副変速レバー、265:設定回転数調節ダイヤル、A:旋回連動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪(10)が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構(A)と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構(A)により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機。
【請求項2】
作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、左右の後輪(11)の回転数を検出する各々の伝動軸回転数センサ(205)を設け、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されたとき、伝動軸回転数センサ(205)により検出された操向外側の後輪(11)の回転数に基づいて操向内側の後輪(11)の設定回転数を所定の演算式にて演算して前記操向外側の後輪(11)の回転数よりも小さい値に設定し、設定回転数よりも検出される操向内側の後輪(11)の回転数が大きいときは操向内側のサイドクラッチを切にし、設定回転数より検出される操向内側の後輪(11)の回転数が小さいときは操向内側のサイドクラッチを該後輪(11)が所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成とし、演算される前記設定回転数を変更調節する調節具(265)により、旋回連動機構(A)で断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する制御装置(163)を設けた作業機。
【請求項3】
走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する変速レバー(238)を設け、制御装置(163)は、変速レバー(238)により走行速度を路上走行速に切り替えたとき、旋回連動機構(A)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されると操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する状態から常時切状態にする構成とした請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
制御装置(163)は、走行速度に対応して前記演算式を補正して、走行速度が速いときには前記設定回転数を小さく補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数を大きく補正する構成とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機。
【請求項1】
作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されるのに連動して操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切し、前輪(10)が操舵状態から直進状態へ戻るのに連動して操向内側のサイドクラッチを常時入状態にする旋回連動機構(A)と、耕盤の深さを検出する耕盤深さセンサ(48)を設け、耕盤が深いことを耕盤深さセンサ(48)により検出すると、旋回連動機構(A)により断続的に入/切する周期における入状態の割合を大きく変更する制御装置(163)を備えた作業機。
【請求項2】
作業装置(4)と、左右一対の前輪(10)と左右一対の駆動する後輪(11)を備える走行車体(2)と、左右の後輪(11)への伝動を入/切する左右各々のサイドクラッチと、操向手段(34)の操作に連動して進行方向に向かって左右に設けられた前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(175,180)と、操向手段(34)の操作を検出する旋回角度センサ(193)と、左右の後輪(11)の回転数を検出する各々の伝動軸回転数センサ(205)を設け、ステアリング機構(175,180)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されたとき、伝動軸回転数センサ(205)により検出された操向外側の後輪(11)の回転数に基づいて操向内側の後輪(11)の設定回転数を所定の演算式にて演算して前記操向外側の後輪(11)の回転数よりも小さい値に設定し、設定回転数よりも検出される操向内側の後輪(11)の回転数が大きいときは操向内側のサイドクラッチを切にし、設定回転数より検出される操向内側の後輪(11)の回転数が小さいときは操向内側のサイドクラッチを該後輪(11)が所定の回転量に達するまで又は所定時間経過するまで入にして、操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する構成とし、演算される前記設定回転数を変更調節する調節具(265)により、旋回連動機構(A)で断続的に入/切する周期における入状態の割合を変更する制御装置(163)を設けた作業機。
【請求項3】
走行速度を低速の作業速と高速の路上走行速とに切替する変速レバー(238)を設け、制御装置(163)は、変速レバー(238)により走行速度を路上走行速に切り替えたとき、旋回連動機構(A)により前輪(10)が直進状態から操舵状態へ操向されると操向内側のサイドクラッチを断続的に入/切する状態から常時切状態にする構成とした請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
制御装置(163)は、走行速度に対応して前記演算式を補正して、走行速度が速いときには前記設定回転数を小さく補正し、走行速度が遅いときには前記設定回転数を大きく補正する構成とした請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−155879(P2011−155879A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19154(P2010−19154)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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