説明

作業機

【課題】新たな入力部を設けずに、タイマ情報を設定することが可能な作業機を提供すること。
【解決手段】作業機1は、エンジン529を有する作業機本体5と、ユーザによって入力された操作を作業機本体5に送信可能な送信機3と、を有し、送信機3に一定期間操作の入力がなされなかった場合に、送信機3の電源を自動的にオフするオートパワーオフ機能と、オートパワーオフ機能に連動して、エンジン529を停止するエンジン停止機能と、オートパワーオフ機能が発揮されオートパワーオフが実行されるまでの時間の設定であるタイマ情報を設定するタイマ設定機能と、を有し、タイマ設定機能は、タイマ設定モードに切り替えることによってなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料節約、騒音低減、排ガス低減等を図るためにオートパワーオフする機能を有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送信機及び作業機本体のエンジンをオートパワーオフすることが可能な作業機が開示されている。そして、この作業機においてはオートパワーオフ機能が実行されるまでの時間を任意に設定することが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007―230696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、オートパワーオフ機能が実行されるまでの時間の設定する方法が具体的ではない。
そして、このオートパワーオフ機能が実行されるまでの時間の設定(以下、タイマ情報という)するために専用の入力部を設けることはコストの増大、ボタン等の数の増大をもたらし適切ではない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、新たな入力部を設けずに、タイマ情報を設定することが可能な作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業機は、エンジンを有する作業機本体と、ユーザによって入力された操作を前記作業機本体に送信可能な送信機と、を有し、前記送信機に一定期間操作の入力がなされなかった場合に、前記送信機の電源を自動的にオフするオートパワーオフ機能と、前記オートパワーオフ機能に連動して、前記エンジンを停止するエンジン停止機能と、前記オートパワーオフ機能が発揮されオートパワーオフが実行されるまでの時間の設定であるタイマ情報を設定するタイマ設定機能と、を有し、前記タイマ設定機能は、タイマ設定モードに切り替えることによってなされる。
【0007】
好適には、前記タイマ設定モードにおいて設定された前記タイマ情報は、前記作業機本体において設定された場合には前記送信機へ送信され、前記送信機において設定された場合には前記作業機本体へ送信される。
【0008】
好適には、前記タイマ情報は、少なくとも、前記作業機本体の本体表示部、又は、前記送信機の送信機表示部のいずれか一方において表示される。
【0009】
好適には、前記エンジン停止機能が発揮されて前記エンジンが停止される前に、停止を報知する報知手段を有する。
【0010】
好適には、前記送信機の電源がオンによって前記エンジン始動するオートパワーオン機能を有し、前記送信機の電源がオンによって前記オートパワーオンがなされる際に、オートパワーオンを報知する報知手段を有する。
【0011】
好適には、前記オートパワーオフ機能又はオートパワーオン機能は、有効又は無効に設定することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、新たな入力部を設けずに、タイマ情報を設定することが可能な作業機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における作業機の概要の説明図である。
【図2】本実施形態の作業機の制御を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態における作業機の概要の説明図である。
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1を用いて詳細に説明する。
作業機1は、作業機本体5とこの作業機本体5を遠隔操作するための送信機3とを有している。
そして、本実施形態では、図1のように作業機1の作業機本体5はトラッククレーンであるが、トラッククレーンはあくまで作業機1の作業機本体5の一例である。具体的には、作業機本体5は、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、積載型トラッククレーン、高所作業車、レッカー車、車両運搬車等であってよい。つまり、作業機本体5とは、各種作業が可能な作業機でありさえすればよく、車に搭載されていてもよいし、車に搭載されていないものであってもよい。
【0016】
図1のように、作業機本体5は、送信機3によって遠隔操作可能である。もっとも、この遠隔操作は無線である必然性はなく、場合によっては有線であってよい。
作業機本体5は、クレーン55及びアウトリガ57を有している。
クレーン55は、旋回ポスト55a、起伏シリンダ55b、複数段の伸縮ブーム55c、フック55e及びワイヤロープ55dを有している。
そして、旋回ポスト55a及び起伏シリンダ55bが旋回することによって、伸縮ブーム55cの延びている方向が変更される。また、起伏シリンダ55bを伸縮させることによって、伸縮ブーム55cの起伏角度が変更される。
複数の伸縮ブーム55cは、その内部に配置された伸縮シリンダ(図示せず)によって、必要に応じて伸縮される。
伸縮ブーム55cの先端側の端部からは、ワイヤロープ55dが垂れ下がっている。して、このワイヤロープ55dには、フック55eが吊り下げられている。
そして、このクレーン55及びアウトリガ57を制御するための本体制御装置51を有している。なお、アウトリガ57は、ジャッキ動作を少なくとも可能である。
作業機本体5はエンジン529(図2参照のこと)を有している。このエンジン529の動力はクレーン55及びアウトリガ57等の作業機器に供給されている。また、エンジン529の動力をこのクレーン55及びアウトリガ57等の作業機器に切り替えるためにPTOスイッチが設けられている。
【0017】
また本体制御装置51は、本体表示部53を有している。この本体表示部53は、本体制御装置51によって制御されるクレーン55及びアウトリガ57の状態等を表示可能である。また、本体表示部53は、各種設定状態等も表示可能である。
【0018】
送信機3は、把持部35を有する。
ユーザは把持部35を把持し、送信機表示部37の表示及び/又は作業機本体5の状態等を確認しつつ、送信機スイッチ33を操作する。
この送信機スイッチ33の入力に従って、作業機本体5は各種の動作を行う。
また、送信機3は、送信機制御装置31を有しており、この送信機制御装置31によって各種制御がなされる。
【0019】
送信機スイッチ33は、送信機3の電源のオン/オフを行う送信機電源スイッチ33aを有する。
送信機3の電源がオンの状態で、この送信機電源スイッチ33aを短押しすることによって、送信機3の電源がオフされる。さらに、送信機3の電源がオンの状態で、送信機電源スイッチ33aを長押しすることによって、作業機本体5のエンジン529(図2参照のこと)もオートパワーオフされる。つまり、エンジン529の駆動が自動的に停止される。
つまり、作業機1は送信機3のオートパワーオフ機能と、作業機本体5のオートパワーオフ機能とを有している。
逆に、送信機3の電源がオフの状態、かつ、エンジン529の駆動が停止されている状態、の場合に、送信機3の送信機電源スイッチ33aが短押し(長押し)されると、送信機3の電源がオンされるだけではなく、エンジン529の駆動が開始される。つまり、作業機1はオートパワーオン機能をも有している。
【0020】
図2は、本実施形態の作業機1の制御を説明するブロック図である。
【0021】
図2のように、送信機3の送信機制御装置31は、送信機制御部311、送信機通信部313、送信機入力部315、送信機出力部319、送信機記憶部323及び送信機タイマ325を有している。
そして、送信機入力部315は、送信機電源スイッチ33aを含む送信機スイッチ33を有している。
また、送信機出力部319は、送信機スピーカ321及び送信機表示部37を有している。
【0022】
図2のように、作業機本体5の本体制御装置51は、本体制御部511、本体通信部513、本体入力部515、本体出力部519、本体記憶部523及び本体タイマ525を有している。
そして、本体入力部515は、モード選択スイッチ517aを含む本体スイッチ517を有している。
また、本体出力部519は、本体スピーカ521及び本体表示部53を有している。
さらに、本体制御部511は、エンジン529の始動・停止を行うスタータ527へエンジン529の停止及び始動の指示信号も出力する。
【0023】
送信機制御部311は送信機3の送信機制御装置31の全体的な動作を統括的に制御する。本体制御部511は作業機本体5の本体制御装置51の全体的な動作を統括的に制御する。
送信機通信部313及び本体通信部513は必要な情報を無線(電波、赤外線等)によって送信・受信する。
送信機入力部315は、送信機電源スイッチ33a等の送信機スイッチ33からの入力を受け付ける。また、送信機入力部315は、送信機スイッチ33以外の各種入力も受け付ける。本体入力部515は、モード選択スイッチ517等の本体スイッチ517からの入力を受け付ける。また、本体入力部515は、本体スイッチ517以外の各種入力も受け付ける。
送信機出力部319は、送信機制御部311の命令に従って、送信機スピーカ321及び送信機表示部37に各種の出力を行う。この送信機出力部319の送信機スピーカ321、送信機表示部37等によって、ユーザは各種の情報等の報知を受ける。本体出力部519は、本体制御部511の命令に従って、本体スピーカ521及び本体表示部53に各種の出力を行う。この本体出力部519の本体スピーカ521、本体表示部53等によって、ユーザは各種の情報等の報知を受ける。なお、ユーザへ報知する手段はスピーカ及び本体表示部53以外の方法であってもよい。例えば、ユーザへ報知する手段は振動、ライトの点滅等であってよい。
送信機記憶部323及び本体記憶部523は、送信機制御部311及び本体制御部511が制御に必要とする各種の情報を記憶している。
送信機タイマ325及び本体タイマ525は、タイマをカウントする。
【0024】
本実施形態のオートパワーオフ機能は、送信機制御装置31及び本体制御装置51によって、例えば、以下のように実現される。
送信機入力部315(又は本体入力部515)からの各種入力が無くなると、送信機制御部311(又は本体制御部511)は、送信機タイマ325(又は本体タイマ525)は、タイマカウントを開始ように命令を行う。
そして、その送信機タイマ325(又は本体タイマ525)のカウント値が、送信機記憶部323が予め有しているタイマ情報の値よりも大きくなった場合に、送信機制御部311(又は本体制御部511)は、送信機3のオートパワーオフ動作を行う。
さらに、この送信機3がオートパワーオフする予定であるという情報(又は、オートパワーオフが完了したという情報)は、送信機通信部313及び本体通信部513を介して本体制御部511に伝えられる。
そして、本体制御部511は、この情報によってエンジン529停止させるオートパワーオフを行う。具体的には、エンジン529のスタータ527にエンジン529を停止させる旨の停止命令を出力する。スタータ527は、この停止命令に基づいてエンジン529を停止させる。
【0025】
ここで、送信機記憶部323が予め有しているタイマ情報の値は、工場出荷時に一定の値が設定されているが、ユーザは、このタイマ情報の値を設定(変更、調節)可能である。
以下、具体的にこのタイマ情報の値の設定方法を説明する。
ユーザは、作業機本体5に設けられたモード選択スイッチ517aを押圧することによって、オートパワーオフ機能が発揮されてオートパワーオフが実行されるまでの時間の設定であるタイマ情報を設定(変更、調節)可能なモードに変更する。このタイマ情報を設定(変更、調節)するための、モードがタイマ設定モードである。
そして、このタイマ設定モード中に、この本体スイッチ517等の操作がなされることによって、タイマ情報が設定される。
このようにタイマ情報の設定がモード選択スイッチ517aによって実行することが可能となることから、タイマ情報の設定のために新たにスイッチ等の操作部を設ける必要が無く、コストの増加が無く、新たな設計変更等を行わなくてよいという効果がある。また、タイマ情報の設定をユーザが容易に行うことが可能となる。
また、モード選択スイッチ517aは作業機本体5に設けられている。
このようにしたことによって、ある程度小型で機能が集約している方が、操作性が向上する送信機3側に、タイマ情報を設定するためのスイッチ等を設けずに済むという効果がある。
さらに、送信機3側で設定した場合には、無線の状態等によっては、作業機本体5に通信されないおそれがあるが、このように作業機本体5でタイマ情報を設定することから、確実にタイマ情報を設定することが可能となる。
なお、モード選択スイッチ517aは作業機本体5に設けると好適であるにすぎず、送信機3側に設けてもよいことはいうまでもない。
【0026】
さらに、新たに設定されたタイマ情報は、本体通信部513及び送信機通信部313を介して本体制御部511に伝えられる。
このようにしたことによって、タイマ情報を作業機本体5と送信機3との間で共有化することができる。そして、このタイマ情報の共有化によって、送信機3のオートパワーオフと作業機本体5のエンジン529のオートパワーオフとをそれぞれ行うことができ、何らかの事情で無線通信の状態が悪化していても、それぞれオートパワーオフを実行することが可能となる。
【0027】
また、新たに設定されたタイマ情報は、本体表示部53に表示されることによって、ユーザに報知される。また、本体表示部53のみならず、送信機表示部37に表示してもよい。
このようにしたことによって、ユーザは確実にタイマ情報の設定が行われたこと、オートパワーオフまでの時間を認知することが可能となる。
【0028】
ところで、オートパワーオフ(エンジン停止機能)が発揮されて、エンジン529が何らユーザに報知されることなく停止することは何らかの問題が生ずるおそれがある。
そこで、送信機出力部319及び/又は本体出力部519において、ユーザに報知を行う。具体的には、送信機スピーカ321、本体スピーカ521、送信機表示部37及び本体表示部53に、オートパワーオフが行われる旨の音声発信又は表示が行われる。
これによって、ユーザはオートパワーオフがなされることの認識が無いまま、エンジン529が停止することが無くなる。
【0029】
また、送信機3の電源がオフの状態、かつ、エンジン529の駆動が停止されている状態、の場合に、送信機3の送信機電源スイッチ33aが短押し(長押し)されると、送信機3の電源がオンされるだけではなく、エンジン529の駆動が開始される際にも、同様の報知が行われる。
これによって、ユーザはオートパワーオンがなされることの認識が無いまま、エンジン529が駆動を始めることが無くなる。
【0030】
なお、以上のオートパワーオフ及びオートパワーオンの機能は、これを有効又は無効に設定することも可能である。
つまり、オートパワーオフ及びオートパワーオンの機能の両方を有効又は無効に設定することも可能とすることもできるし、、一方のみを有効又は無効に設定することが可能とすることもできる。
これによって、オートパワーオン及びオートパワーオフされることを望まないユーザのニーズに対応可能である。逆に、オートパワーオン及びオートパワーオフを有効にして、燃費の節約、騒音の防止、利便性の向上等を望むユーザのニーズにも答えることが可能となる。
【0031】
<定義等>
積載型トラッククレーンは、本発明における作業機本体の一例である。つまり、作業機本体とは、例えば、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、カーゴクレーン、高所作業車、レッカー車、車両運搬車等の各種作業が可能な作業機本体であり、車に搭載されていてもよいし、車に搭載されていないものであってもよい。
送信機スピーカ321、本体スピーカ521、送信機表示部37、本体表示部53は本発明における報知手段の一例である。つまり、報知手段とは、音、画面表示、点滅、振動等、ユーザに知らせることができる手段で有ればどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 作業機
3 送信機
5 作業機本体
31 送信機制御装置
33 送信機スイッチ
33a 送信機電源スイッチ
37 送信機表示部
51 本体制御装置
53 本体表示部
311 送信機制御部
313 送信機通信部
315 送信機入力部
319 送信機出力部
325 送信機タイマ
511 本体制御部
513 本体通信部
515 本体入力部
517 本体スイッチ
517a モード選択スイッチ
519 本体出力部
525 本体タイマ
529 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する作業機本体と、
ユーザによって入力された操作を前記作業機本体に送信可能な送信機と、を有し、
前記送信機に一定期間操作の入力がなされなかった場合に、前記送信機の電源を自動的にオフするオートパワーオフ機能と、
前記オートパワーオフ機能に連動して、前記エンジンを停止するエンジン停止機能と、
前記オートパワーオフ機能が発揮されオートパワーオフが実行されるまでの時間の設定であるタイマ情報を設定するタイマ設定機能と、を有し、
前記タイマ設定機能は、タイマ設定モードに切り替えることによってなされる
作業機。
【請求項2】
前記タイマ設定モードにおいて設定された前記タイマ情報は、
前記作業機本体において設定された場合には前記送信機へ送信され、
前記送信機において設定された場合には前記作業機本体へ送信される
請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記タイマ情報は、少なくとも、前記作業機本体の本体表示部、又は、前記送信機の送信機表示部のいずれか一方において表示される
請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記エンジン停止機能が発揮されて前記エンジンが停止される前に、停止を報知する報知手段を有する
請求項1〜3いずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
前記送信機の電源がオンによって前記エンジン始動するオートパワーオン機能を有し、
前記送信機の電源がオンによって前記オートパワーオンがなされる際に、オートパワーオンを報知する報知手段を有する
請求項1〜4いずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記オートパワーオフ機能又はオートパワーオン機能は、有効又は無効に設定することが可能な
請求項1〜5いずれか1項に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43753(P2013−43753A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183139(P2011−183139)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】