説明

作業車の走行制御装置

【課題】 直進走行において動作異常が発生した場合であっても、直進走行並びに旋回走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供する。
【解決手段】 直進用の無段変速装置7から左右の走行装置1R,1Lの夫々への動力伝達を各別に断続する一対の直進用伝動クラッチ27,27と、旋回用の無段変速装置8から左右の走行装置1R,1Lの夫々への動力伝達を各別に断続する一対の旋回用伝動クラッチ25,25とを備え、異常用制御モードでは、直進が指令されると旋回用の無段変速装置8の変速出力を左右の走行装置1R,1L夫々に伝達し、右旋回が指令されると旋回用の無段変速装置8の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達しかつ右側の走行装置1Rを非駆動状態とし、左旋回が指令されると旋回用の無段変速装置8の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達しかつ左側の走行装置1Lを非駆動状態とすべく、各伝動クラッチを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直進用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の直進用伝動クラッチと、旋回用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の旋回用伝動クラッチと、前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、前記各伝動クラッチ及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、前記左右一対の直進用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換え、かつ、前記左右一対の旋回用伝動クラッチ夫々を遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達すべく、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達すべく、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御するよう構成されている作業車の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の作業車の走行制御装置において、従来では、前記左右一対の直進用伝動クラッチの一例としての左右一対の噛み合いクラッチと、左右一対の旋回用伝動クラッチの一例としての左右一対の摩擦クラッチが夫々備えられ、旋回指令手段としての旋回レバーにて直進が指令されたときには、左右一対の噛み合いクラッチを夫々伝動状態に切り換えて、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置夫々に伝達するようにして、直進用の無段変速装置の変速出力によって同速度で左右一対の走行装置を駆動するように構成されていた。そして、旋回レバーにて右旋回が指令されると、右側の走行装置を旋回用の無段変速装置にて駆動すべく右側の摩擦クラッチを伝動状態に切り換え、左側の走行装置を直進用の無段変速装置にて駆動すべく左側の噛み合いクラッチを伝動状態に切り換えて、左右一対の走行装置の速度差によって旋回走行を行うように構成され、旋回レバーにて左旋回が指令されると、左側の走行装置を旋回用の無段変速装置にて駆動すべく左側の摩擦クラッチを伝動状態に切り換え、右側の走行装置を直進用の無段変速装置にて駆動すべく右側の噛み合いクラッチを伝動状態に切り換えて、左右一対の走行装置の速度差によって旋回走行を行うように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−247154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、旋回指令手段にて直進が指令されて直進走行を行うときには、直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置に伝達されることによって車体を直進走行させるように構成されているので、直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置に対して動力伝達を行うことができないような動作異常が発生したような場合であれば、直進走行を行うことができないものとなる。又、旋回走行を行なうときにおいても、旋回方向と反対側に位置する走行装置は直進用の無段変速装置にて駆動する構成となっているから、上記したような動作異常が発生したときには、直進走行だけでなく旋回走行も行うことができないものとなっていた。
【0005】
特に、コンバインのように圃場内にて作業を行う作業車であれば、作業車が圃場内に位置しているときに、上述のように直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置に対して動力伝達を行うことができないような動作異常が発生すると、圃場から外部に脱出することができないので、修理点検等を行うために車体を修理箇所に移動させることができない等の不利な面があった。
【0006】
ちなみに、直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置に対して動力伝達を行うことができないような動作異常としては、例えば、特徴文献1に記載される構成であれば、前記直進用伝動クラッチを入切操作する油圧シリンダに圧油の給排を行う電磁弁が備えられるが、この電磁弁のスプールがロック状態になって操作不能状態に陥るような場合が考えられる。又、前記動作異常としては、このような異常以外に、例えば直進用の無段変速装置が動作不能状態に陥るような異常も考えられる。
【0007】
本発明の目的は、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置に対して動力伝達を行うことができないような動作異常が発生したような場合であっても、直進走行並びに旋回走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の走行制御装置は、直進用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の直進用伝動クラッチと、
旋回用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の旋回用伝動クラッチと、
前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、
前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、
直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、
前記各伝動クラッチ及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、前記左右一対の直進用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換え、かつ、前記左右一対の旋回用伝動クラッチ夫々を遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達すべく、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達すべく、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御するよう構成されているものであって、その第1特徴構成は、
前記制御手段が、異常用制御モードに切り換え自在に構成され、
この異常用制御モードにおいては、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、前記左右一対の直進用の伝動クラッチを夫々遮断状態に切り換えて、前記左右一対の旋回用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、右側の走行装置を非駆動状態とすべく、左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、前記左右一対の直進用の伝動クラッチ夫々と右側の旋回用伝動クラッチとを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、左側の走行装置を非駆動状態とすべく、右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて前記左右一対の直進用の伝動クラッチ夫々と左側の旋回用伝動クラッチとを遮断状態に切り換えるように制御するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、制御装置が異常制御モードに切り換えられているときに、旋回指令手段にて直進が指令されると、旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、左右一対の旋回用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換えることになる。つまり、旋回用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置夫々に伝達されるから、直進用の無段変速装置の変速出力を用いることなく直進走行することができる。
【0010】
制御装置が異常制御モードに切り換えられているときに、旋回指令手段にて右旋回が指令されると、左右一対の直進用の伝動クラッチを夫々遮断状態に切り換えて左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換え、右側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えて、旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、右側の走行装置が非駆動状態となる。つまり、左側の走行装置が旋回用の無段変速装置の変速出力にて駆動され、右側の走行装置が非駆動状態となるから、直進用の無段変速装置の変速出力を用いることなく右方向への旋回走行が可能となる。
【0011】
制御装置が異常制御モードに切り換えられているときに、旋回指令手段にて左旋回が指令されると、右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換え、左側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えて、旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、左側の走行装置が非駆動状態となる。つまり、右側の走行装置が旋回用の無段変速装置の変速出力にて駆動され、左側の走行装置が非駆動状態となるから、直進用の無段変速装置の変速出力を用いることなく左方向への旋回走行が可能となる。
【0012】
すなわち、上記異常制御モードにおいては、直進用の無段変速装置の変速出力を用いることなく、旋回用の無段変速装置の駆動力を利用して、直進走行、右方向への旋回走行、左方向への旋回走行のいずれも行うことが可能となる。
【0013】
従って、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置に対して動力伝達を行うことができないような動作異常が発生したような場合であっても、直進走行並びに旋回走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否か判別し、前記動作異常であると判別すると、前記異常用制御モードに切り換わるように構成されている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、制御手段は、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否かを判別することになる。そして、前記動作異常であると判別すると前記異常用制御モードに切り換わるのである。従って、上記したような動作異常であることが判別されると、自動的に異常用制御モードに切り換わるから、人為的に異常用制御モードへの切り換えを別途指令するような構成に比べて、操作の煩わしさが少ないものとなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成に加えて、異常が発生していることを報知する報知手段と、前記制御手段に制御モードの切り換えを指令する人為操作式の制御モード切換手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否かを判別し、前記動作異常であると判別すると、前記報知手段を作動させて、前記各直進用伝動クラッチ、前記各旋回用伝動クラッチ、及び、前記アクチュエータの作動を牽制する作動牽制モードになるように構成され、
且つ、前記動作異常であることを判別している状態で、前記制御モード切換手段にて制御状態の切り換えが指令されると、前記異常用制御モードへ切り換わるように構成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、制御手段は、前記動作異常であると判別すると、前記報知手段を作動させて、前記各直進用伝動クラッチ、前記各旋回用伝動クラッチ、及び、前記アクチュエータの作動を牽制する作動牽制モードに切り換わる。そして、前記動作異常であることを判別している状態で、前記制御モード切換手段にて制御状態の切り換えが指令されると、前記異常用制御モードへ切り換わることになる。
【0018】
つまり、前記動作異常であると判別しても、すぐに異常用制御モードへ切り換わるのではなく、作動牽制モードに切り換わることで、作業者は、動作異常が発生したことを認識して、例えばサービスマン等に修理を依頼する等の措置を取ることになる。
そして、サービスマン等は、制御モード切換手段にて制御状態の切り換えが指令することによって、制御手段を異常用制御モードへ切り換えることにより、作業車が圃場内に位置しているときには、作業車を走行させて圃場外部に脱出させることができ、修理工場に移動させること等が可能となる。
【0019】
前記異常用制御モードは、動作異常が発生した場合における緊急用の措置をとるための特殊な制御モードであるから、作業車を使用する一般の使用者がこの異常用制御モードにて走行することは安全性の面で適切でないと考えられる。そこで、上記構成とすることで、一般の使用者が異常用制御モードにて走行を行うことを牽制することで安全性を確保することができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第2特徴構成又は第3特徴構成に加えて、前記左右一対の直進用伝動クラッチの夫々について、前記伝動状態であるか前記遮断状態であるかを各別に検出する一対の動作状態検出手段が備えられ、前記制御手段は、前記左右一対の直進用伝動クラッチを切り換えるべく制御したにもかかわらず、前記動作状態検出手段にて切り換えが検出されなければ、前記動作異常であると判別するように構成されている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、前記一対の動作状態検出手段は、前記左右一対の直進用伝動クラッチの夫々について、伝動状態であるか遮断状態であるかを各別に検出することができる。そして、制御手段は、左右一対の直進用伝動クラッチを切り換えるべく制御したにもかかわらず、動作状態検出手段にて切り換えが検出されなければ、左右一対の直進用伝動クラッチが適正に動作していない状態、つまり、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であると判別することができるのである。
【0022】
このようにして、左右一対の直進用伝動クラッチの実際の状態が伝動状態であるか遮断状態であるかを各別に検出して、その検出結果を制御手段にフィードバックすることにより、制御手段は、左右一対の直進用伝動クラッチが適正に作動しているか否かを判別して、適正に作動していなければ、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であると判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る作業車の走行制御装置の第1実施形態を、作業車の一例であるコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に作業車の一例であるコンバインの全体側面が示されており、このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1R、1Lの駆動で走行する走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置3を昇降可能に連結し、走行機体2に、刈取搬送装置3からの刈取穀稈を受け取って脱穀・選別処理を実行する脱穀装置4と、脱穀装置4からの穀粒を貯留する穀粒タンク5とを搭載するとともに、穀粒タンク5の前方箇所に搭乗運転部6を備えて構成されている。
【0024】
次に、このコンバインの伝動構造について説明する。
図2に示すように、直進走行状態における走行速度を高低変速自在な直進用の無段変速装置7と、旋回走行時において旋回側に位置する走行装置の走行速度を高低変速自在な旋回用の無段変速装置8と、それらの無段変速装置7、8からの動力が入力され、左右の走行装置1R、1Lへの動力が出力されるミッションケース9とを備えて伝動系が構成されている。直進用の無段変速装置7と旋回用の無段変速装置8は夫々、コンバインの車体に搭載されているエンジンから伝動ベルト10及び伝動プーリ11を介して駆動される伝動軸12によって駆動される可変油圧ポンプ7A、8Aと、その可変油圧ポンプ7A、8Aからの供給油で回転駆動される油圧モータ7B、8Bとの対で構成された周知構造の静油圧式無段変速装置(HST)によって構成されている。
【0025】
具体的に説明すると、前記ミッションケース9は、その内部に、前記直進用の無段変速装置7の出力軸20と、前記旋回用の無段変速装置8の出力軸21との夫々が内挿され、これら両出力軸20、21からの動力が左右一対の走行装置1R、1Lに伝達される一方、直進用の無段変速装置7の動力が刈取搬送装置3に伝達される構成となっている。前記直進用の無段変速装置7の出力軸20には、副変速用の大小一対の出力ギヤ20a、20b及び刈取部駆動用の出力ギア20cが固着されている。
【0026】
副変速軸22には、前記出力ギヤ20a、20bが常時噛合する副変速用の小径ギヤ22aと大径ギヤ22bとが相対回転自在に支持され、その両ギヤ22a、22bの中間位置に、副変速軸22と一体回転する副変速用シフトギヤ22dが軸芯方向で摺動自在に外嵌されている。この副変速用シフトギヤ22dを摺動操作することで高低二段に変速操作自在な副変速装置が構成されている。又、副変速軸22には出力ギア22eが固着されており、この出力ギア22eに対して、支持軸23に一体に設けたセンターギヤ24が常時噛合する状態で設けられている。
【0027】
そして、直進用の無段変速装置7から左右一対の走行装置1R,1Lの夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の直進用伝動クラッチとしての左右一対の噛み合いクラッチ27、27と、旋回用の無段変速装置8から左右一対の走行装置1R,1Lの夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の旋回用伝動クラッチとしての左右一対の多板式の摩擦クラッチ25、25とを備えて構成されている。
【0028】
すなわち、前記支持軸23に、センターギヤ24を挾む両側に、前記センターギヤ24の両側面とこれに対向するシフトギア26との間に形成された左右一対の直進用伝動クラッチとしての左右一対の噛み合いクラッチ27、27と、外周部に旋回用の無段変速装置8の伝動系に連係された外周ギヤ部25a、25bを備える前記左右一対の旋回用伝動クラッチとしての左右一対の多板式の摩擦クラッチ25、25とが設けられている。
【0029】
前記左右のシフトギア26は、夫々、センターギヤ24に噛み合う状態と噛み合わない状態とに回転軸芯方向にシフト操作自在であって、左側のシフトギア26がセンターギア24に噛み合うと左側の噛み合いクラッチ27が入り状態となり、右側のシフトギア26がセンターギア24に噛み合うと右側の噛み合いクラッチ27が入り状態となるように切り換え自在に構成されており、噛み合いクラッチ27、27が夫々入り状態に切り換えられると左右のシフトギア26は共にセンターギヤ24に係合している状態となり、シフトギア26を介して、左右の走行装置1R、1Lが同方向に同速駆動される機体直進状態となる。
【0030】
さらに説明を加えると、前記左右のシフトギヤ26、26は夫々、押圧スプリング29、29による押圧力にて噛み合いクラッチ27、27が噛み合う入り状態に付勢されており、左右のシフトギヤ26、26の夫々を押圧スプリング29、29による押圧力に抗して単動型の油圧シリンダからなる遮断用油圧シリンダ31L、31Rに圧油を供給してシフト操作することにより、噛み合いクラッチ27、27を切り状態に切り換え操作可能に構成されている。この遮断用油圧シリンダ31L、31Rの操作は、図3に示すように、遮断用電磁弁63、64を圧油供給状態と排油状態に切り換え操作することにより行うように構成されている。ところで、遮断用電磁弁63、64はバネ63a、64aにより前記圧油供給状態に復帰付勢される構成であり、ソレノイド63b、64bに通電して励磁することでバネ63a、64aの付勢力に抗して弁体を操作して前記排油状態に切り換える構成となっている。
【0031】
前記遮断用油圧シリンダ31L、31Rに対して、それらの油室内に作動油が供給されている圧油供給状態であるか作動油が排出されている排油状態であるかを検出する動作状態検出手段としての圧力センサ68、69が夫々設けられている。説明を加えると、遮断用油圧シリンダ31Lが圧油供給状態であれば左側の噛み合いクラッチ27が切状態であり、排油状態であれば左側の噛み合いクラッチ27が入状態となる。又、遮断用油圧シリンダ31Rが圧油供給状態であれば右側の噛み合いクラッチ27が切状態であり、排油状態であれば右側の噛み合いクラッチ27が入状態となる。従って、前記圧力センサ68、69は、前記遮断用油圧シリンダ31L、31Rにおける油室の圧力により、噛み合いクラッチ27、27が入り状態にあるか切り状態にあるかを検出することができる。
【0032】
又、単動型の油圧シリンダからなる左右一対の操向用油圧シリンダ30L、30Rのうちの左側の操向用油圧シリンダ30Lに圧油供給してシフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、左側の摩擦クラッチ25が圧接する伝動入り状態に切り換え操作可能に構成され、一方、右側の操向用油圧シリンダ30Rに圧油供給してシフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、右側の摩擦クラッチ25が圧接する伝動入り状態に切り換え操作可能に構成されている。一対の操向用油圧シリンダ30L、30Rの操作は、図3に示すように、遮断用電磁弁32、33を圧油供給状態と排油状態に切り換え操作することにより行うように構成されている。
【0033】
シフトギヤ26からの動力はファイナルギア35を介して左右一対の走行装置1R,1Lに伝達されるが、このシフトギヤ26は、噛み合いクラッチ27が噛み合いしているときも、噛み合いしていないときも、常時、走行装置への伝動系の中継ギヤ34に噛合するように構成されている。
【0034】
つまり、左右の噛み合いクラッチ27、27を夫々入り状態として、左右の摩擦クラッチ25、25を夫々切り状態にすると直進用伝動状態となり、その直進用伝動状態から左側の噛み合いクラッチ27を切り状態にして左側の摩擦クラッチ25を入り状態にすると左旋回用伝動状態となり、前記直進用伝動状態から右側の噛み合いクラッチ27を切り状態にして右側の摩擦クラッチ25を入り状態にすると右旋回用伝動状態となる。
【0035】
説明を加えると、旋回用の無段変速装置8の出力軸21には、その両端部に伝動ギヤ21a、21bが固着され、両伝動ギヤ21a、21bの夫々に、各摩擦クラッチ25、25の外周ギヤ部25a、25aが噛み合っている。そして、左右のシフトギア26、26のうちの一方を遮断用油圧シリンダ31L、31Rのいずれか一方を作動してシフト操作することにより、センターギヤ24との噛み合いを外す側にシフト操作し、操向用油圧シリンダ30L、30Rのうちのいずれか一方により、シフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、そのシフトギア26の移動した側の摩擦クラッチ25が圧接されて入り状態となり、その摩擦クラッチ25を介して旋回用の無段変速装置8の動力がシフトギア26に伝達され、シフトギア26から中継ギア34及びファイナルギア35を介して一方の走行装置に伝達され、機体旋回状態となる。又、シフトギア26はセンターギヤ24に噛み合っているとき、及び、摩擦クラッチ25のクラッチ入り側に操作されているときのいずれのときにおいても、走行装置への伝動系の中継ギヤ34に噛み合うように構成されている。
【0036】
前記直進用の無段変速装置7は、中立位置から正転方向並びに逆転方向夫々について無段階に変速操作可能な構成となっており、又、搭乗運転部6には前後方向に沿って所定の前後操作範囲にわたり手動操作によって揺動可能な変速操作具としての主変速レバー14が設けられている。そして、図3に示すように、可変油圧ポンプ7Aの斜板13が油圧サーボ機構SVを介して主変速レバー14に連係され、主変速レバー14の操作指令に基づいて斜板13の角度を変更することにより油圧モータ7B側の出力状態を無段階に変更するように構成されている。つまり、主変速レバー14が手動操作にて操作されると、その操作に対して油圧サーボ機構SVの作用により油圧操作力にてアシスト操作を行うことにより変速操作を軽く操作することができる構成となっている。尚、油圧サーボ機構SVは周知構成のものであるから詳細な説明はここでは省略する。
【0037】
次に、直進用の無段変速装置7の変速操作構成について説明する。
図4に示すように、主変速レバー14が中立域にあり中立状態が指令されていると、前記斜板13が中立状態となり油圧モータ7Bは回転せず停止状態に維持され、主変速レバー14からの指令が前進増速側もしくは後進増速側への変速指令であると、主変速レバー14の操作指令に応じて上述したような油圧サーボ機構SVによって斜板13の角度が正転方向(前進増速方向)もしく逆転方向(後進増速方向)に油圧操作力によってアシスト操作され、油圧モータ7Bが指令位置に応じた速度で正転方向又は逆転方向に回転駆動されるように変速操作される構成となっている。
【0038】
一方、旋回用の無段変速装置8も直進用の無段変速装置7と同様に、正転方向並びに逆転方向夫々について無段階に変速操作可能な構成となっている。しかし、この旋回用の無段変速装置8は手動操作で変速を行うのではなく、可変油圧ポンプ8Aの斜板15が油圧式の旋回用操作機構16に連係され、この旋回用操作機構16により斜板角を変更することにより油圧モータ8B側の出力状態を変更するように構成されている。この旋回用操作機構16は、図3に示すように、旋回用の無段変速装置8における斜板15に連動連結されたアクチュエータの一例としての複動型の変速用油圧シリンダ17と、この変速用油圧シリンダ17に対する油圧制御を行う油圧制御ユニットVUとを備えて構成されている。前記変速用油圧シリンダ17は、内装される左右一対のバネ17a、17bの付勢力により中立位置に復帰付勢される構成となっている。
【0039】
前記油圧制御ユニットVUは、詳述はしないが、制御装置Hからの制御指令に基づいて、旋回用の無段変速装置8における斜板15を前進側増速方向並びに後進側増速方向夫々に移動操作し、且つ、任意の変速位置で斜板15を位置保持するように変速用油圧シリンダ17を制御するように構成されている。
【0040】
上記したような無段変速装置7、8の変速動作について説明を加えると、図4に示すように、斜板13、15の変速位置が中立位置Nを含む所定幅を有する中立域にあれば変速出力(出力回転速度)は零となり、斜板13、15の変速位置がその中立域から所定方向に回動操作されると前進方向への変速出力が無段階に増速操作され、斜板13、15が中立域から所定方向と反対方向に操作されると後進方向への変速出力が無段階に増速操作される構成となっている。
【0041】
そして、搭乗運転部6には、主変速レバー14の揺動操作量を直接検出することにより変速指令位置を検出するポテンショメータ式の変速レバー検出センサ65が設けられている。又、主変速レバー14の他に、中立位置Nを含む所定幅を有する直進指令用の中立操作域、その中立操作域から正方向に操作される左旋回指令用の左旋回操作域、及び、前記中立操作域から逆方向に操作される右旋回指令用の右旋回操作域の夫々にわたり移動操作自在な旋回指令手段としての旋回レバー56が備えられ、この旋回レバー56が、左旋回用操作域及び右旋回用操作域の夫々において所定の操作領域の全範囲にわたり移動操作自在で、且つ、中立操作域から離れる方向への移動量が大きいほど小となるように前記指令情報としての旋回用の目標速度比率を指令するように構成されている。
【0042】
説明を加えると、旋回レバー56の操作位置を検出する回転式のポテンショメータからなる旋回レバーセンサ57が設けられて、旋回指令操作領域において中立域から離れる方向への移動量が大きいほど、言い換えると、中立位置Nからの左右いずれかへの倒し角が大きいほど、大きな旋回力となるような指令情報を指令する構成となっている。
【0043】
前記サーボ機構SVによって操作される直進用の無段変速装置7における変速用の被操作体としての斜板13の操作位置を検出する直進用の変速位置検出センサ60が設けられ、旋回用の無段変速装置8における変速用の被操作体としての斜板15の操作位置を検出する旋回用の変速位置検出手段としてポテンショメータ式の旋回用の変速位置検出センサ61が設けられている。一方、直進用の無段変速装置7の出力回転速度を出力ギア22eの歯数をカウントすることにより検出する回転センサ58と、旋回用の無段変速装置8の出力回転速度を伝動ギア21aの歯数をカウントすることにより検出する回転センサ59が設けられている。
【0044】
そして、上記したような各種のセンサ類の入力情報に基づいて、変速用油圧シリンダ17の作動を制御することにより旋回用の無段変速装置8を変速制御するとともに、遮断用電磁弁32、33、及び、遮断用電磁弁63、64を切り換えて、操向用油圧シリンダ30R、30L、遮断用油圧シリンダ31L、31Rの作動を制御することにより、左右の噛み合いクラッチ27、27、左右の摩擦クラッチ25、25の伝動状態を切り換える制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置Hが備えられている。
【0045】
図3に示すように、異常が発生していることを作業者に報知するための報知手段としての異常報知ランプ66が設けられている。制御装置Hは、後述するような動作異常を判別すると、これらの異常報知ランプ66を作動させる構成となっている。
【0046】
又、制御装置Hに制御モードの切り換えを指令する人為操作式の制御モード切換手段としてのモード切換スイッチ67が設けられている。但し、このモード切換スイッチ67は、コンバインの使用者である作業者が操作するものではなく、動作異常が発生したときに、メンテナンス作業を行うサービスマン等が操作するものであり、隠し板によって覆われた場所に設置されるものである。
【0047】
制御装置Hは、旋回レバー56にて直進が指令されると、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1L夫々に伝達すべく、左右一対の噛み合いクラッチ27,27を夫々伝動状態に切り換え、かつ、左右一対の摩擦クラッチ夫々を遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、旋回レバー56にて右旋回が指令されると、直進用の無段変速装置7の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達し、かつ、旋回用の無段変速装置8の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達すべく、左側の噛み合いクラッチ27及び右側の摩擦クラッチ25を伝動状態に切り換えて、右側の噛み合いクラッチ27及び左側の摩擦クラッチ25を遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、旋回レバー56にて左旋回が指令されると、直進用の無段変速装置7の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達し、かつ、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達すべく、右側の噛み合いクラッチ27及び左側の摩擦クラッチ25を伝動状態に切り換えて、左側の噛み合いクラッチ27及び右側の摩擦クラッチ25を遮断状態に切り換えるように制御するよう構成されている。
【0048】
そして、制御装置Hは、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常であるか否かを判別し、動作異常であると判別すると、異常報知ランプ66を作動させて、左右の噛み合いクラッチ27、27、左右の摩擦クラッチ25、25及び変速用油圧シリンダ17の作動を牽制する作動牽制モードになるように構成され、且つ、前記動作異常であることを判別している状態で、モード切換スイッチ67にて制御状態の切り換えが指令されると、異常用制御モードへ切り換わるように構成されている。
【0049】
そして、前記異常用制御モードにおいては、旋回レバー56にて直進が指令されると、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左右一対の走行装置1R,1L夫々に伝達すべく、左右一対の噛み合いクラッチ27,27を夫々遮断状態に切り換えて、左右一対の摩擦クラッチ2,25を夫々伝動状態に切り換えるように制御し、且つ、旋回レバー56にて右旋回が指令されると、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達し、かつ、右側の走行装置1Lを非駆動状態とすべく、左側の摩擦クラッチ25を伝動状態に切り換えて、左右一対の噛み合いクラッチ27,27夫々と右側の摩擦クラッチ25とを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、旋回レバー56にて左旋回が指令されると、旋回用の無段変速装置8の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達し、かつ、左側の走行装置1Lを非駆動状態とすべく、右側の摩擦クラッチ25を伝動状態に切り換えて左右一対の噛み合いクラッチ27,27夫々と左側の摩擦クラッチ25とを遮断状態に切り換えるように制御するように構成されている。
【0050】
次に、図6〜図8のフローチャートに基づいて制御装置Hによる制御について説明する。
後述するような異常判別処理において動作異常が判別されていなければ、以下に説明するような通常制御モードでの制御を実行する(ステップ1)。すなわち、旋回レバー56が中立操作域に操作されていると、後述するような直進用制御を実行し(ステップ2、3)、旋回レバー56が右旋回用操作域に操作されると、左側の操向用油圧シリンダ30L及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lを夫々排油状態にして、右側の操向用油圧シリンダ30R及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rに圧油を供給して作動させて、左側の噛み合いクラッチ27を入り状態つまり伝動状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を切り状態つまり遮断状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25を切り状態つまり遮断状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25を入り状態つまり伝動状態に切り換える(ステップ4,5)。すなわち、右側の走行装置1Rが旋回用の無段変速装置8にて駆動され、左側の走行装置1Lが直進用の無段変速装置7にて駆動される伝動状態に切り換わる。
【0051】
一方、旋回レバー56が左旋回用操作域に操作されると、右側の操向用油圧シリンダ30R及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rを夫々排油状態にし、左側の操向用油圧シリンダ30L及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lに圧油を供給して作動させて、左側の噛み合いクラッチ27を切り状態つまり遮断状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を入り状態つまり伝動状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25を入り状態つまり伝動状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25を切り状態つまり遮断状態に切り換える(ステップ6)。すなわち、左側の走行装置1Lが旋回用の無段変速装置8にて駆動され、右側の走行装置1Rが直進用の無段変速装置7にて駆動される伝動状態に切り換わる。
【0052】
そして、ステップ5やステップ6において、左右の噛み合いクラッチ27、27を切り状態又は入り状態に切り換えるための遮断用電磁弁63、64に対応する指令を与えたときに、圧力センサ68、69の検出結果に基づいて、遮断用電磁弁63、64が適正に作動していない異常状態であるか否か、すなわち、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常であるか否か、言い換えると、直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否かを判別する異常判別処理を実行する(ステップ7)。
【0053】
説明を加えると、遮断用電磁弁63、64は圧油供給状態に復帰付勢されており、この圧油供給状態では噛み合いクラッチ27、27は切り状態つまり遮断状態になる。制御装置Hがソレノイド63b、64bに通電することにより排油状態に切り換えられると、噛み合いクラッチ27、27が入り状態つまり伝動状態に切り換わる。そこで、制御装置Hが、排油状態への切り換えを指令したにもかかわらず、噛み合いクラッチ27、27が入り状態(伝動状態)に切り換えられたことが圧力センサ68、69により検出されない、又は、制御装置Hが、圧油供給状態への切り換えを指令したにもかかわらず、噛み合いクラッチ27、27が切り状態(遮断状態)に切り換えられたことが圧力センサ68、69により検出されないときは、動作異常であると判別することになる。
【0054】
次に、前記直進用の変速位置検出センサ60の検出値が設定単位時間あたりに操作判別用設定量以上変化した否かによって主変速レバー14の操作により増減速が指令されたか否かを判断し、主変速レバー14の操作により増減速が指令されていると判断した場合には、次のような変速位置制御を実行する(ステップ8)。
【0055】
すなわち、左右の走行装置1R、1Lが回転方向が同じであって、旋回用の無段変速装置8の変速出力と直進用の無段変速装置7の変速出力の速度比率が旋回レバー56にて指令される旋回半径に対応する速度比率となるように、旋回用の無段変速装置8における斜板15の目標変速位置を演算にて求める(ステップ9)。
【0056】
その目標変速位置を求める処理について説明を加えると、旋回レバー56の右旋回用操作域又は左旋回用操作域における中立操作域から離れる方向への移動量と旋回半径に対応する速度比率との関係が図5に示すように二次関数に対応する関係として定めて記憶されている。一方、直進用の変速位置センサ60によって検出される直進用の無段変速装置7の変速位置と、図5に示すような関係の関数とから、旋回用の無段変速装置8の目標変速位置を求めるのである。
【0057】
そして、旋回用の変速位置検出センサ61によって検出される旋回用の無段変速装置8の変速位置が目標変速位置になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御して変速操作を行う(ステップ10、11,12)。ちなみに、直進用の無段変速装置7は変速レバー14に対する手動操作にて変速位置が調整されることになる。
【0058】
図5に示す関係について説明を加えると、図5のラインL1は基準となる直進側の無段変速装置の速度を示している。ラインL2は緩旋回モードにおける目標回転速度の変化を示し、ラインL3は信地旋回モードにおける目標回転速度の変化を示し、ラインL4は超信地旋回モードにおける目標回転速度の変化を示しており、ダイヤル操作により旋回モードを3段階に切り換える旋回モード切換え具62にて指定された旋回モードが選択されることになる。ラインL2にて示す緩旋回モードでは、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置が反対側の走行装置の走行速度Vの約1/3の速度にまで減速されるように、旋回レバー56の操作位置に対する、左右の走行装置1R、1Lの速度比率の変化特性が予め設定されている。ラインL3で示す信地旋回モードにおいては、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置の走行速度が零となるまで減速されるように、旋回レバー56の操作位置に対する左右の走行装置1R、1Lの速度比率が予め設定されている。又、ラインL4に示す超信地旋回モードにおいては、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置の走行速度が反対側の走行装置の駆動回転方向とは逆回転方向で、反対側の走行装置の速度と同速度になるように、旋回レバー56の操作位置に対する左右の走行装置1R、1Lの速度比率が予め設定されている。
【0059】
前記旋回レバー56にて旋回が指令されており、主変速レバー14の操作により増減速が指令されていない場合、言い換えると、主変速レバー14にて同じ速度が指令されている場合には、左右の走行装置1R、1Lが回転方向が同じであって、旋回用の無段変速装置8の出力回転速度と直進用の無段変速装置7の出力回転速度の速度比率が旋回レバー56にて指令される旋回半径に対応する目標速度比率となるように、旋回用の無段変速装置8に対する目標回転速度を演算にて求める(ステップ13)。つまり、回転センサ58によって検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と、上述した如く図5に示すように二次関数に対応する関係として定められている関数とから、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度を求める。そして、回転センサ59によって検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御して変速操作を行う回転速度制御を実行する(ステップ14)。
【0060】
前記旋回レバー56が中立位置にあり、直進が指令されているときには、直進用制御を実行する。
直進用制御においては、一対の操向用油圧シリンダ30L、30R及び遮断用油圧シリンダ31L,31Rを夫々排油状態にして、左右の噛み合いクラッチ27、27を共に入り状態すなわち伝動状態に切り換え、左右の摩擦クラッチ25、25を共に切り状態すなわち遮断状態に切り換える(ステップ15)。このとき、ステップ7と同様に、圧力センサ68、69の検出結果に基づいて、遮断用電磁弁63、64が適正に作動していない異常状態であるか否か、すなわち、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常であるか否か、言い換えると、直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否か判別する異常判別処理を実行する(ステップ16)。
【0061】
そして、直進用の変速位置検出センサ60の検出値に基づいて直進用の無段変速装置7に対する増減速が指令されているか否かが判別され(ステップ17)、主変速レバー14により増減速が指令されているときは、直進用の無段変速装置7における斜板13の変速位置を直進用の変速状態に対応する目標変速位置として設定する(ステップ18)。次に、旋回用の無段変速装置8における斜板15の変速位置が上記したようにして設定された目標変速位置になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する(ステップ19、20、21)。
【0062】
ステップ17において、直進用の無段変速装置7に対する増減速が指令されていないことが判別されると、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定する(ステップ22)。そして、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する(ステップ23)。
【0063】
ステップ7やステップ16における異常判別処理において、遮断用電磁弁63、64が適正に作動していない異常状態であること、言い換えると、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常であることが判別されていると、異常報知ランプ66を作動させて動作異常であることを作業者に報知して作動牽制モードに移行する(ステップ24,25)。この作動牽制モードにおいては、旋回レバー56や主変速レバー14の操作にかかわらず、左右一対のかみ合いクラッチ27,27、左右一対の摩擦クラッチ25,25、及び、変速用油圧シリンダ17の作動が牽制される。
【0064】
そこで、作業者はサービスマン等に修理依頼をすることになるが、サービスマン等が、前記モード切換スイッチ67を操作して制御モードを切り換えると、制御装置Hは異常用制御モードに切り換わる(ステップ26,27)。
【0065】
この異常用制御モードにおいては、図9に示すように制御を実行する。
すなわち、旋回レバー56が中立位置にあり、直進が指令されているときには、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左右一対の走行装置1R,1L夫々に伝達すべく、左右一対の噛み合いクラッチ27,27を夫々切り状態すなわち遮断状態に切り換えて、左右一対の摩擦クラッチ25,25を夫々入り状態すなわち伝動状態に切り換える(ステップ27,28)。
【0066】
旋回レバー56にて右旋回が指令されると、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達し、かつ、右側の走行装置1Lを非駆動状態とすべく、左側の摩擦クラッチ25を入り状態すなわち伝動状態に切り換えて、左右一対の噛み合いクラッチ27,27夫々と右側の摩擦クラッチ25とを切り状態すなわち遮断状態に切り換える(ステップ29,30)。
【0067】
旋回レバー56にて左旋回が指令されると、旋回用の無段変速装置8の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達し、かつ、左側の走行装置1Lを非駆動状態とすべく、右側の摩擦クラッチ25を入り状態すなわち伝動状態に切り換えて左右一対の噛み合いクラッチ27,27夫々と左側の摩擦クラッチ25とを切り状態すなわち遮断状態に切り換える(ステップ31)。
【0068】
そして、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定して、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する(ステップ32,33)。
【0069】
つまり、直進が指令されているときは、主変速レバー14にて指令される速度と同じまたはほぼ同じ速度に制御される旋回用の無段変速装置8の変速出力が、左右一対の走行装置1R,1Lに伝達されて直進走行を行なうことができ、又、右旋回が指令されているときは、前記旋回用の無段変速装置8の変速出力が左側の走行装置1Lに伝達され、右側の走行装置1Rが非駆動状態となり、右旋回を行うことができる。同様にして、左旋回が指令されているときは、前記旋回用の無段変速装置8の変速出力が右側の走行装置1Rに伝達され、左側の走行装置1Lが非駆動状態となり、左旋回を行うことができる。
【0070】
従って、上記異常用制御モードにおいては、例えば、左右の噛み合いクラッチ27、27を切り状態又は入り状態に切り換えるための遮断用電磁弁63、64が、スプールがロック状態になってソレノイドに通電しても切り換えを行えないような動作異常が発生する等の要因によって、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右の走行装置1R,1Lに伝達することができない動作異常が発生している場合であっても、直進走行並びに旋回走行を実行することができるのである。
【0071】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る作業車の走行制御装置の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態では、動作異常が発生したときにおける制御の仕方が異なる他は、第1実施形態と同じ構成であるから、ここでは異なる点についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0072】
すなわち、この実施形態では、前記制御手段として制御装置Hが、直進用の無段変速装置7の変速出力を前記左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常であるか否か判別し、前記動作異常であると判別すると、前記異常用制御モードに切り換わるように構成されている。つまり、前記動作異常であることを判別すると、自動的に異常用制御モードに切り換わり、直進走行や旋回走行を行える状態に切り換えるのである。
【0073】
具体的に説明すると、図9に示すように、動作異常でないことを判別した場合には、第1実施形態のときと同様な制御を実行する(ステップ31〜44)。そして、動作異常であると判別すると、異常報知ランプ66を作動させて動作異常であることを作業者に報知して、異常用制御モードに移行する(ステップ45,46)。この異常用制御モードにおける処理内容は第1実施形態において図9を用いて説明した内容と同様であるから説明は省略する。
【0074】
従って、この実施形態では、直進用の無段変速装置7の変速出力を前記左右一対の走行装置1R,1Lに対して伝達することができない動作異常が発生しても、制御モードの切り換えを指令しなくても異常用制御モードに自動的に切り換わるから、作業者は、例えばコンバインの車体を圃場内に位置している状態から修理の行い易い場所に移動させる等の一時的な対策を取ることが可能となる。
【0075】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0076】
(1)上記実施形態では、前記左右一対の直進用伝動クラッチの夫々について、前記伝動状態であるか前記遮断状態であるかを各別に検出する一対の動作状態検出手段として、前記遮断用油圧シリンダ31L、31Rに対して、それらの油室内に作動油が供給されている圧油供給状態であるか作動油が排出されている排油状態であるかを検出する圧力センサを用いる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、遮断用電磁弁63、63のスプールの移動状態を直接検出する位置センサを用いたり、あるいは、遮断用油圧シリンダ31L、31Rの作動状態を検出する位置センサを用いる等、各種の形態の動作状態検出手段を用いるようにしてもよい。
【0077】
(2)上記各実施形態では、前記左右一対の直進用伝動クラッチの夫々について、前記伝動状態であるか前記遮断状態であるかを各別に検出して、前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否か判別する構成としたが、このような構成に限らず、例えば、前記直進用の無段変速装置の変速出力が変速操作具の指令内容に対応した変速出力になっているか否かを検出して、直進用の無段変速装置が良好に作動しているか否かを検出する構成としてもよく、又、このような構成と上記各実施形態にて採用した構成とを併用する構成としてもよい。
【0078】
(3)上記各実施形態では、前記異常用制御モードにおいて、直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定して、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する構成としたが、このような構成に代えて、例えば、旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が、変速操作具の操作にかかわらず、異常用の回転速度として予め設定されている目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する構成としてもよい。
【0079】
(4)上記各実施形態では、旋回指令手段として、左右の揺動操作自在な旋回レバーを備えて、その操作位置を検出するポテンショメータ式の旋回レバーセンサとを備える構成としたが、このような構成に限らず、例えば、旋回レバーの操作位置を検出する複数のスイッチを備える構成としたり、又、旋回レバーに代えて左右のスイッチを押し操作する時間で旋回半径を異ならせるように指令する構成等、各種の形態で実施してもよい。
【0080】
(5)上記各実施形態では、直進用の無段変速装置7及び旋回用の無段変速装置8が靜油圧式無段変速装置にて構成されるものを例示したが、ベルト式無段変速装置やテーパコーン型の無段変速装置等、各種の形式の無段変速装置を用いることができる。
【0081】
(6)上記各実施形態では、作業車としてコンバインを例示したが、コンバインに限らずトラクターやその他の農作業機でもよく建設用作業車等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動構造を示す概略構成図
【図3】制御ブロック図
【図4】変速位置と変速出力との関係を示す図
【図5】旋回レバーの操作位置と速度比率との関係を示す図
【図6】制御動作のフローチャート
【図7】制御動作のフローチャート
【図8】制御動作のフローチャート
【図9】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0083】
1R,1L 走行装置
7 直進用の無段変速装置
8 旋回用の無段変速装置
14 変速操作具
17 アクチュエータ
56 旋回指令手段
66 報知手段
67 制御モード切換手段
68,69 動作状態検出手段
H 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の直進用伝動クラッチと、
旋回用の無段変速装置から左右一対の走行装置の夫々への動力伝達を各別に断続すべく伝動状態と遮断状態とに切り換え自在な左右一対の旋回用伝動クラッチと、
前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、
前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、
直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、
前記各伝動クラッチ及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、前記左右一対の直進用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換え、かつ、前記左右一対の旋回用伝動クラッチ夫々を遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達すべく、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達すべく、右側の直進用伝動クラッチ及び左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、左側の直進用伝動クラッチ及び右側の旋回用伝動クラッチを遮断状態に切り換えるように制御するよう構成されている作業車の走行制御装置であって、
前記制御手段が、異常用制御モードに切り換え自在に構成され、
この異常用制御モードにおいては、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置夫々に伝達すべく、前記左右一対の直進用伝動クラッチを夫々遮断状態に切り換えて、前記左右一対の旋回用伝動クラッチを夫々伝動状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し、かつ、右側の走行装置を非駆動状態とすべく、左側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて、前記左右一対の直進用伝動クラッチ夫々と右側の旋回用伝動クラッチとを遮断状態に切り換えるように制御し、且つ、
前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し、かつ、左側の走行装置を非駆動状態とすべく、右側の旋回用伝動クラッチを伝動状態に切り換えて前記左右一対の直進用伝動クラッチ夫々と左側の旋回用伝動クラッチとを遮断状態に切り換えるように制御するように構成されている作業車の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否か判別し、前記動作異常であると判別すると、前記異常用制御モードに切り換わるように構成されている請求項1記載の作業車の走行制御装置。
【請求項3】
異常が発生していることを報知する報知手段と、前記制御手段に制御モードの切り換えを指令する人為操作式の制御モード切換手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記直進用の無段変速装置の変速出力を前記左右一対の走行装置に対して伝達することができない動作異常であるか否かを判別し、前記動作異常であると判別すると、前記報知手段を作動させて、前記各直進用伝動クラッチ、前記各旋回用伝動クラッチ、及び、前記アクチュエータの作動を牽制する作動牽制モードに切り換わるように構成され、
且つ、前記動作異常であることを判別している状態で、前記制御モード切換手段にて制御状態の切り換えが指令されると、前記異常用制御モードへ切り換わるように構成されている請求項1記載の作業車の走行制御装置。
【請求項4】
前記左右一対の直進用伝動クラッチの夫々について、前記伝動状態であるか前記遮断状態であるかを各別に検出する一対の動作状態検出手段が備えられ、
前記制御手段は、
前記左右一対の直進用伝動クラッチを切り換えるべく制御したにもかかわらず、前記動作状態検出手段にて切り換えが検出されなければ、前記動作異常であると判別するように構成されている請求項2又は3記載の作業車の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−91091(P2007−91091A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284400(P2005−284400)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】