説明

作業車両の油圧回路

【課題】作業用油圧アクチュエータの負荷圧力が変化した場合であっても、走行速度の変動を抑制することが可能な作業車両の油圧回路を提供する。
【解決手段】可変容量型の第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22と、左走行用油圧モータ5L、右走行用油圧モータ5R、作業用油圧アクチュエータと、走行用方向切換弁と、作業用方向切換弁と、パイロットポンプ25と、前記走行用方向切換弁及び前記作業用方向切換弁の前後差圧をそれぞれ所定値に補償する圧力補償弁と、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の流量を変更する流量制御手段と、走行合流弁31と、走行用油圧モータ5L・5Rに作動油が供給された場合、前記作業用方向切換弁のスプールストローク量を規制し、走行合流弁31から前記作業用方向切換弁を介して前記作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制限する流量制限手段100と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の油圧回路の技術に関し、より詳細には、左右一対の走行用の油圧モータ及び作業用の油圧アクチュエータを具備する作業車両の油圧回路の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの油圧ポンプと、左右一対の走行用油圧モータと、作業用油圧アクチュエータと、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の方向を切り換える作業用方向切換弁と、を具備し、左右一対の走行用油圧モータを同時に駆動して作業車両を直進走行させるとともに、作業用油圧アクチュエータを駆動して作業車両の作業装置を作動させる場合には、2つの油圧ポンプが吐出する作動油を合流させた後に、左右一対の走行用油圧モータ及び作業用油圧アクチュエータへ供給する作業車両の油圧回路に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の作業車両の油圧回路は、2つの油圧ポンプが吐出する作動油を合流させた場合、作業用方向切換弁のスプールストローク量を規制し、作業用方向切換弁を介して作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を規制する。
これによって、作業車両を直進走行させると同時に作業装置を作動させる場合に、作動油が合流後に作業用油圧アクチュエータに大量に供給されて、走行用油圧モータへの作動油の供給量が低下し、作業車両の走行速度が極端に低下することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−33804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業車両の油圧回路では、作業用方向切換弁を介して作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を規制した場合における作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量は、当該作業用油圧アクチュエータに加わる負荷圧力によって変動する。つまり、作業用方向切換弁のスプールストローク量を一定のストローク量に規制しても、作業用油圧アクチュエータに高い負荷圧力が発生している場合には少量の作動油が当該作業用油圧アクチュエータに供給され、作業用油圧アクチュエータに低い負荷圧力が発生している場合には大量の作動油が当該作業用油圧アクチュエータに供給されることになる。そのため、作業車両を直進走行させると同時に作業装置を作動させる場合、作業車両の走行速度が極端に低下することを防止することはできるが、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力が変化したときには、走行用油圧モータへの作動油の供給量が変動し、作業車両の走行速度が安定しない点で不利であった。
【0006】
本発明の目的は、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力が変化した場合であっても、走行速度の変動を抑制することが可能な作業車両の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、少なくとも一つの作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータに、各々の作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータに対して設けられるパイロット式の方向切換弁を介して作動油を供給する2つの油圧ポンプの吐出量を、負荷圧力に応じて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路であって、前記作業用油圧アクチュエータ及び前記走行用油圧モータに同時に作動油を供給する場合、前記2つの油圧ポンプが吐出する作動油を合流させる合流弁と、前記走行用油圧モータに作動油が供給された場合、前記作業用油圧アクチュエータに対応する前記方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するパイロット式減圧弁と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記パイロット式減圧弁は、前記パイロット圧を供給するパイロットポンプの吐出側から分岐点を介して分岐して前記各方向切換弁と接続されるパイロット油路において、前記分岐点よりも前記パイロットポンプ側に一つ備えられて、前記方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するものである。
【0010】
請求項3においては、特定の作業用油圧アクチュエータを含む前記作業用油圧アクチュエータを複数有し、前記複数の作業用油圧アクチュエータは、前記特定の作業用油圧アクチュエータを含む組と前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組とに分けられ、前記パイロット式減圧弁は、前記パイロット圧を供給するパイロットポンプの吐出側から分岐点を介して分岐して前記各組の各作業用油圧アクチュエータに対応する方向切換弁と接続されるパイロット油路において、前記分岐点よりも下流側で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る方向切換弁よりも上流側に備えられて、当該パイロット式減圧弁で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る前記方向切換弁に付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、作業車両が2つの油圧ポンプからの作動油を合流させて左右の走行用油圧モータの駆動により走行している場合に、作業車両の作業装置が作業用油圧アクチュエータの駆動により作動するとき、パイロット式減圧弁により方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧することで作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が制限されることになる。そのため、2つの油圧ポンプから吐出される作動油が作業用油圧アクチュエータに供給されても、走行用油圧モータに供給される作動油の供給量が急激に減少しなくなり、ひいては作業車両の走行速度が急激に低下しにくくなる。
しかも、ロードセンシングシステムにより方向切換弁の前後差圧が所定値に補償されるため、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量は、方向切換弁のスプールストローク量にのみ依存する。すなわち、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量は、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力の変化に依存しない。そのため、走行用油圧モータに供給される作動油の供給量が、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力の変化にかかわらず変動しにくくなって、作業車両の走行速度が安定することになる。
したがって、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力が変化した場合であっても、走行速度の変動を抑制することができる。
さらに、パイロット式減圧弁を操作するための制御装置や、当該制御装置に記憶される制御プログラムを作成する必要がないため、コストの削減を図ることができる。
【0013】
請求項2においては、複数の方向切換弁に対して1つのパイロット式減圧弁を共用することで、コストの削減を図ることができる。
【0014】
請求項3においては、走行用油圧モータに作動油が供給される場合においても、特定の作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量は制限されない。したがって、駆動するために大流量を要する特定の作業用油圧アクチュエータを装着した場合、走行中であっても当該特定の作業用油圧アクチュエータを確実に作動させることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係る油圧回路を具備する旋回作業車の全体的な構成を示す側面図。
【図2】本発明の第一実施形態に係る油圧回路の全体的な構成を示す図。
【図3】本発明の第一実施形態に係る油圧回路のうち第一方向切換弁群等を示す図。
【図4】本発明の第一実施形態に係る油圧回路のうち第二方向切換弁群等を示す図。
【図5】本発明の第一実施形態に係る左走行モータ用方向切換弁を示す拡大図。
【図6】本発明の第一実施形態に係る作業用方向切換弁のスプールストローク量の規制の様子を示す図。
【図7】本発明の第二実施形態に係る油圧回路の全体的な構成を示す図。
【図8】本発明の第三実施形態に係る油圧回路の全体的な構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る油圧回路201を具備する旋回作業車1について説明する。なお、本実施形態においては、旋回作業車1を作業車両の一実施形態として説明するが、作業車両はこれに限るものではなく、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であっても良い。
【0017】
旋回作業車1は、走行装置2、旋回装置3、及び作業装置4を具備する。
【0018】
走行装置2は、左右一対のクローラ5・5、左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5Rを具備する。
走行装置2は、左走行用油圧モータ5Lにより機体左側のクローラ5を、右走行用油圧モータ5Rにより機体右側のクローラ5を、それぞれ駆動することで、旋回作業車1を前後進及び旋回させることができる。
【0019】
旋回装置3は、旋回台6、旋回モータ7、操縦部8、及びエンジン9を具備する。
旋回台6は、走行装置2の上方に配置され、走行装置2に旋回可能に支持される。旋回装置3は、旋回モータ7を駆動することで、当該旋回台6を走行装置2に対して旋回させることができる。また、旋回台6上には、種々の操作具を備える操縦部8、動力源となるエンジン9等が配置される。
【0020】
作業装置4は、ブーム10、アーム11、バケット12、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、及びバケットシリンダ15を具備する。
ブーム10は、その一端部が旋回台6の前部に枢支され、伸縮自在に駆動するブームシリンダ13によって回動される。より詳細には、ブームシリンダ13が伸ばされた場合、ブーム10は上方に回動され、ブームシリンダ13が縮められた場合、ブーム10は下方に回動される。
アーム11は、その一端部がブーム10の他端部に枢支され、伸縮自在に駆動するアームシリンダ14によって回動される。より詳細には、アームシリンダ14が伸ばされた場合、アーム11は下方(アーム11の他端側がブーム10に近接する方向)に回動され、アームシリンダ14が縮められた場合、アーム11は上方(アーム11の他端側がブーム10から離間する方向)に回動される。
バケット12は、その一端部がアーム11の他端部に支持されて、伸縮自在に駆動するバケットシリンダ15によって回動される。より詳細には、バケットシリンダ15が伸ばされた場合、バケット12は下方(バケット12の他端側がアーム11に近接する方向)に回動され、バケットシリンダ15が縮められた場合、バケット12は上方(バケット12の他端側がアーム11から離間する方向)に回動される。
以上の如く、作業装置4は、バケット12を用いて土砂等の掘削を行う多関節構造を構成している。
【0021】
なお、本実施形態に係る旋回作業車1に具備する作業装置は、バケット12を有して掘削作業を行う作業装置4としているが、これに限定するものではなく、例えば油圧ブレーカーを有して破砕作業を行う作業装置であっても良い。
【0022】
次に、図2から図6までを用いて、旋回作業車1が具備する油圧回路201について説明する。油圧回路201は、第一油圧ポンプ21、第二油圧ポンプ22、コントロールバルブ30、作業用油圧アクチュエータ(ブームシリンダ13、アームシリンダ14等)、左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5Rを具備する。第一油圧ポンプ21、第二油圧ポンプ22、及びコントロールバルブ30は、旋回装置3に取り付けられる。
コントロールバルブ30は、主として走行合流弁31、第一方向切換弁群40、及び第二方向切換弁群60を具備する。
第一方向切換弁群40は、左走行モータ用方向切換弁41、ブームシリンダ用方向切換弁42、及びバケットシリンダ用方向切換弁43を具備する。
第二方向切換弁群60は、右走行モータ用方向切換弁61、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64を具備する。
【0023】
油圧回路201は、作業用油圧アクチュエータへ供給される作動油の方向を切り換える作業用方向切換弁に設けられる絞りの後に、圧力補償弁が接続された、いわゆるアフターオリフィス型のロードセンシングシステムを構成している。当該ロードセンシングシステムによって、作業用油圧アクチュエータに加わる負荷圧力に応じて第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22による作動油の吐出量を制御し、消費エネルギーの効率化を図ることができる。
【0024】
なお、説明の便宜上、左走行モータ用方向切換弁41、及び右走行モータ用方向切換弁61を総称して、単に「走行用方向切換弁」と記す。ブームシリンダ用方向切換弁42、バケットシリンダ用方向切換弁43、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64を総称して、単に「作業用方向切換弁」と記す。左走行モータ用圧力補償弁51、ブームシリンダ用圧力補償弁52、バケットシリンダ用圧力補償弁53、右走行モータ用圧力補償弁71、アームシリンダ用圧力補償弁72、旋回モータ用圧力補償弁73、及びPTO用圧力補償弁74を総称して、単に「圧力補償弁」と記す。ブームシリンダ13、アームシリンダ14、バケットシリンダ15、旋回モータ7、及びPTO用ポート16に接続されるアタッチメントを総称して「作業用油圧アクチュエータ」と記す。左走行用油圧モータ5L、及び右走行用油圧モータ5Rを総称して「走行用油圧アクチュエータ」と記す。
【0025】
図2から図4までに示す第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22は、エンジン9(図1参照)によって駆動され、作動油を吐出する。第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22は、それぞれ可動斜板21a及び可動斜板22aの傾斜角度を変更することによって、作動油の吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。第一油圧ポンプ21から吐出された作動油は、油路21b、及びコントロールバルブ30の走行合流弁31を介して第一方向切換弁群40、又は第一方向切換弁群40及び第二方向切換弁群60へと供給される。第二油圧ポンプ22から吐出された作動油は、油路22b、及び走行合流弁31を介して第二方向切換弁群60、又は第一方向切換弁群40及び第二方向切換弁群60へと供給される。
【0026】
コントロールバルブ30は、作動油の流れを切り換えるものである。コントロールバルブ30は、前述の如く、主として走行合流弁31、第一方向切換弁群40、及び第二方向切換弁群60を具備する。
【0027】
走行合流弁31は、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22から吐出された作動油を合流させることが可能なパイロット式の方向切換弁である。走行合流弁31は、スプールを摺動させることによりポジション31X又はポジション31Yに切り換えることが可能である。走行合流弁31のパイロットポート31a及びパイロットポート31bにパイロット圧が付与された場合、当該走行合流弁31はポジション31Yに切り換えられる。走行合流弁31のパイロットポート31a又はパイロットポート31bにパイロット圧が付与されない場合、スプリングの付勢力により、当該走行合流弁31はポジション31Xに保持される。
【0028】
走行合流弁31がポジション31Xにある場合、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22から吐出された作動油は合流せずに分かれて流れ、第一油圧ポンプ21から吐出された作動油は油路31cを介して第一方向切換弁群40へ、第二油圧ポンプ22から吐出された作動油は油路31dを介して第二方向切換弁群60へ、それぞれ供給される。
走行合流弁31がポジション31Yにある場合、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22から吐出された作動油は合流された後、油路31c及び油路31dを介して第一方向切換弁群40及び第二方向切換弁群60へ供給される。
【0029】
図2及び図3に示すように、第一方向切換弁群40は、前述の如く、左走行モータ用方向切換弁41、ブームシリンダ用方向切換弁42、及びバケットシリンダ用方向切換弁43を具備する。
【0030】
左走行モータ用方向切換弁41は、左走行用油圧モータ5Lに供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
左走行モータ用方向切換弁41には、左走行モータ用圧力補償弁51が接続される。左走行モータ用圧力補償弁51は、左走行モータ用方向切換弁41に設けられる絞り41c(又は、絞り41f)(図5参照)の後の圧力を所定値に補償するものである。
【0031】
以下では、図5を用いて、左走行モータ用方向切換弁41及び左走行モータ用圧力補償弁51について詳細に説明する。
【0032】
左走行モータ用方向切換弁41は、スプールを摺動させることによりポジション41X(中立位置)、ポジション41Y、又はポジション41Zに切り換えることが可能である。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41a及びパイロットポート41bのいずれにもパイロット圧が付与されない場合、スプリングの付勢力により、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Xに保持される。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41aにパイロット圧が付与された場合、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Yに切り換えられる。左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41bにパイロット圧が付与された場合、当該左走行モータ用方向切換弁41はポジション41Zに切り換えられる。
【0033】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Xにある場合、作動油は、油路31cから左走行用油圧モータ5Lに供給されない。
【0034】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Yにある場合、作動油は、油路31cから左走行モータ用方向切換弁41のスプール内に設けられる絞り41c、及び油路41dを介して左走行モータ用圧力補償弁51に供給される。
【0035】
左走行モータ用圧力補償弁51に供給された作動油は、左走行モータ用圧力補償弁51から油路51aを介して再び左走行モータ用方向切換弁41に供給される。
【0036】
油路51aを介して左走行モータ用方向切換弁41に供給された作動油は、油路5aを介して左走行用油圧モータ5Lに供給される。当該油路5aを介して供給される作動油によって、左走行用油圧モータ5Lは一方向に回転駆動する。また、左走行用油圧モータ5Lから排出される作動油は、油路5bを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻される。
【0037】
油路5bを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻された作動油は、当該左走行モータ用方向切換弁41から油路41e、及び戻り油路17aを介して作動油タンク17(図2参照)に戻される。
【0038】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Zにある場合、作動油は、油路31cから左走行モータ用方向切換弁41のスプール内に設けられる絞り41f、及び油路41dを介して左走行モータ用圧力補償弁51に供給される。
【0039】
左走行モータ用圧力補償弁51に供給された作動油は、当該左走行モータ用圧力補償弁51から油路51aを介して再び左走行モータ用方向切換弁41に供給される。
【0040】
油路51aを介して左走行モータ用方向切換弁41に供給された作動油は、油路5bを介して左走行用油圧モータ5Lに供給される。当該油路5bを介して供給される作動油によって、左走行用油圧モータ5Lは他方向に回転駆動する。また、左走行用油圧モータ5Lから排出される作動油は、油路5aを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻される。
【0041】
油路5aを介して左走行モータ用方向切換弁41に戻された作動油は、当該左走行モータ用方向切換弁41から油路41e、及び戻り油路17aを介して作動油タンク17に戻される。
【0042】
左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Y又はポジション41Zにある場合、油路41dの圧力は、左走行モータ用圧力補償弁51によって所定値に補償される。
詳細には、左走行用油圧モータ5L、ブームシリンダ13、及びバケットシリンダ15にかかる負荷圧力のうち最大の負荷圧力(以下、単に「第一最大負荷圧力」と記す)が、油路23bを介して左走行モータ用圧力補償弁51に付与される。左走行モータ用圧力補償弁51は、油路41dの圧力を、当該第一最大負荷圧力よりも、当該左走行モータ用圧力補償弁51が備えるスプリングによって設定される値だけ高い圧力になるように補償する。
【0043】
また、左走行モータ用方向切換弁41には、左走行検出用方向切換弁44が内装される。左走行検出用方向切換弁44は、スプールを摺動させることによりポジション44X(中立位置)、ポジション44Y、又はポジション44Zに切り換えることが可能である。左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Xに保持されている場合、左走行検出用方向切換弁44はポジション44Xに保持される。左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Yに切り換えられた場合、これに連動して左走行検出用方向切換弁44はポジション44Yに切り換えられる。左走行モータ用方向切換弁41がポジション41Zに切り換えられた場合、これに連動して左走行検出用方向切換弁44はポジション44Zに切り換えられる。
【0044】
左走行検出用方向切換弁44がポジション44Xにある場合、当該左走行検出用方向切換弁44は後述する油路25d及び油路25eを閉塞することがない。すなわち、作動油は、油路25d及び油路25eを、左走行検出用方向切換弁44を介して流通することができる。
【0045】
左走行検出用方向切換弁44がポジション44Y、又はポジション44Zにある場合、当該左走行検出用方向切換弁44は油路25d及び油路25eのうち、油路25dのみを閉塞する。
【0046】
図3に示すように、ブームシリンダ用方向切換弁42は、ブームシリンダ13に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
ブームシリンダ用方向切換弁42には、ブームシリンダ用圧力補償弁52が接続される。ブームシリンダ用圧力補償弁52は、ブームシリンダ用方向切換弁42に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0047】
ブームシリンダ用方向切換弁42及びブームシリンダ用圧力補償弁52の構成は、左走行モータ用方向切換弁41及び左走行モータ用圧力補償弁51の構成と略同一である。
【0048】
ブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42a又はパイロットポート42bにパイロット圧が付与された場合、当該ブームシリンダ用方向切換弁42は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31cを介して供給される作動油は、ブームシリンダ13に供給される。これによって、ブームシリンダ13が伸縮し、ブーム10が上方又は下方に回動される。
【0049】
また、ブームシリンダ用方向切換弁42には、ブーム検出用方向切換弁45が内装される。ブーム検出用方向切換弁45が中立位置にある場合、当該ブーム検出用方向切換弁45は後述する油路25d及び油路25eを閉塞することがない。ブーム検出用方向切換弁45が中立位置から他のポジションに切り換えられた場合、当該ブーム検出用方向切換弁45は油路25d及び油路25eのうち、油路25eのみを閉塞する。
【0050】
バケットシリンダ用方向切換弁43は、バケットシリンダ15に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
バケットシリンダ用方向切換弁43には、バケットシリンダ用圧力補償弁53が接続される。バケットシリンダ用圧力補償弁53は、バケットシリンダ用方向切換弁43に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0051】
バケットシリンダ用方向切換弁43及びバケットシリンダ用圧力補償弁53の構成は、ブームシリンダ用方向切換弁42及びブームシリンダ用圧力補償弁52の構成と略同一である。
【0052】
バケットシリンダ用方向切換弁43のパイロットポート43a又はパイロットポート43bにパイロット圧が付与された場合、当該バケットシリンダ用方向切換弁43は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31cを介して供給される作動油は、バケットシリンダ15に供給される。これによって、バケットシリンダ15が伸縮し、バケット12が上方(バケット12の他端側がアーム11から離間する方向)又は下方(バケット12の他端側がアーム11に近接する方向)に回動される。
【0053】
また、バケットシリンダ用方向切換弁43には、バケット検出用方向切換弁46が内装される。
バケット検出用方向切換弁46の構成は、ブーム検出用方向切換弁45の構成と略同一である。
【0054】
図2及び図4に示すように、第二方向切換弁群60は、前述の如く、右走行モータ用方向切換弁61、アームシリンダ用方向切換弁62、旋回モータ用方向切換弁63、及びPTO用方向切換弁64を具備する。
【0055】
右走行モータ用方向切換弁61は、右走行用油圧モータ5Rに供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
右走行モータ用方向切換弁61には、右走行モータ用圧力補償弁71が接続される。右走行モータ用圧力補償弁71は、右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0056】
右走行モータ用方向切換弁61及び右走行モータ用圧力補償弁71の構成は、左走行モータ用方向切換弁41及び左走行モータ用圧力補償弁51の構成と略同一である。
【0057】
右走行モータ用方向切換弁61のパイロットポート61a又はパイロットポート61bにパイロット圧が付与された場合、当該右走行モータ用方向切換弁61は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31dを介して供給される作動油は、右走行用油圧モータ5Rに供給される。これによって、右走行用油圧モータ5Rが回転駆動される。
【0058】
右走行モータ用方向切換弁61が中立位置から他のポジションに切り換えられた場合、当該右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞り後の圧力は、右走行モータ用圧力補償弁71によって所定値に補償される。
詳細には、右走行用油圧モータ5R、アームシリンダ14、旋回モータ7、及びPTO用ポート16にかかる負荷圧力のうち最大の負荷圧力(以下、単に「第二最大負荷圧力」と記す)が、油路24bを介して右走行モータ用圧力補償弁71に付与される。右走行モータ用圧力補償弁71は、右走行モータ用方向切換弁61に設けられる絞りの後の圧力を、当該第二最大負荷圧力よりも、当該右走行モータ用圧力補償弁71が備えるスプリングによって設定される値だけ高い圧力になるように補償する。
【0059】
また、右走行モータ用方向切換弁61には、右走行検出用方向切換弁65が内装される。
右走行検出用方向切換弁65の構成は、左走行検出用方向切換弁44の構成と略同一である。
【0060】
アームシリンダ用方向切換弁62は、アームシリンダ14に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
アームシリンダ用方向切換弁62には、アームシリンダ用圧力補償弁72が接続される。アームシリンダ用圧力補償弁72は、アームシリンダ用方向切換弁62に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0061】
アームシリンダ用方向切換弁62及びアームシリンダ用圧力補償弁72の構成は、右走行モータ用方向切換弁61及び右走行モータ用圧力補償弁71の構成と略同一である。
【0062】
アームシリンダ用方向切換弁62のパイロットポート62a又はパイロットポート62bにパイロット圧が付与された場合、当該アームシリンダ用方向切換弁62は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31dを介して供給される作動油は、アームシリンダ14に供給される。これによって、アームシリンダ14が伸縮し、アーム11が上方(アーム11の他端側がブーム10から離間する方向)又は下方(アーム11の他端側がブーム10に近接する方向)に回動される。
【0063】
また、アームシリンダ用方向切換弁62には、アーム検出用方向切換弁66が内装される。
アーム検出用方向切換弁66の構成は、ブーム検出用方向切換弁45の構成と略同一である。
【0064】
旋回モータ用方向切換弁63は、旋回モータ7に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
旋回モータ用方向切換弁63には、旋回モータ用圧力補償弁73が接続される。旋回モータ用圧力補償弁73は、旋回モータ用方向切換弁63に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0065】
旋回モータ用方向切換弁63及び旋回モータ用圧力補償弁73の構成は、アームシリンダ用方向切換弁62及びアームシリンダ用圧力補償弁72の構成と略同一である。
【0066】
旋回モータ用方向切換弁63のパイロットポート63a又はパイロットポート63bにパイロット圧が付与された場合、当該旋回モータ用方向切換弁63は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31dを介して供給される作動油は、旋回モータ7に供給される。これによって、旋回モータ7が回転駆動される。
【0067】
また、旋回モータ用方向切換弁63には、旋回検出用方向切換弁67が内装される。
旋回検出用方向切換弁67の構成は、アーム検出用方向切換弁66の構成と略同一である。
【0068】
PTO用方向切換弁64は、PTO用ポート16に供給される作動油の方向を切り換えることが可能なパイロット式の方向切換弁である。
PTO用方向切換弁64には、PTO用圧力補償弁74が接続される。PTO用圧力補償弁74は、PTO用方向切換弁64に設けられる絞りの後の圧力を所定値に補償するものである。
【0069】
ここで、PTO用ポート16とは、旋回作業車1の外部に動力を取り出すためのものである。例えば、芝刈り機、ブレーカー等のアタッチメントをPTO用ポート16に接続し、当該PTO用ポート16を介してアタッチメントに作動油を供給することで、当該アタッチメントを駆動させることができる。
【0070】
PTO用方向切換弁64及びPTO用圧力補償弁74の構成は、旋回モータ用方向切換弁63及び旋回モータ用圧力補償弁73の構成と略同一である。
【0071】
PTO用方向切換弁64のパイロットポート64a又はパイロットポート64bにパイロット圧が付与された場合、当該PTO用方向切換弁64は中立位置から他のポジションに切り換えられる。この場合、油路31dを介して供給される作動油は、PTO用ポート16に供給される。
【0072】
また、PTO用方向切換弁64には、PTO検出用方向切換弁68が内装される。
PTO検出用方向切換弁68の構成は、旋回検出用方向切換弁67の構成と略同一である。
【0073】
図2及び図3に示すように、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23は、第一油圧ポンプ21の可動斜板21aに連結され、当該可動斜板21aの傾斜角度を変更することで、第一油圧ポンプ21の作動油の吐出量を制御するものである。
第一ポンプ流量制御アクチュエータ23は、油路23aを介して油路21bと接続される。また、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23は、油路23bを介して走行合流弁31、左走行モータ用圧力補償弁51、ブームシリンダ用圧力補償弁52、及びバケットシリンダ用圧力補償弁53と接続される。
【0074】
図2及び図4に示すように、第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、第二油圧ポンプ22の可動斜板22aに連結され、可動斜板22aの傾斜角度を変更することで、第二油圧ポンプ22の作動油の吐出量を制御するものである。
第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、油路24aを介して油路22bと接続される。また、第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、油路24bを介して走行合流弁31、右走行モータ用圧力補償弁71、アームシリンダ用圧力補償弁72、旋回モータ用圧力補償弁73、及びPTO用圧力補償弁74と接続される。
【0075】
以下では、図2から図4までを用いて、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24の動作態様について説明する。
【0076】
走行合流弁31がポジション31Xにある場合、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23には、油路21b及び油路23aを介して第一油圧ポンプ21の吐出圧力が付与される。また、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23には、油路23bを介して第一最大負荷圧力が付与される。第一ポンプ流量制御アクチュエータ23は、第一油圧ポンプ21の吐出圧力と第一最大負荷圧力との差圧を所定値(第一ポンプ流量制御アクチュエータ23に設けられるスプリングによって定められる値)に保持するように、第一油圧ポンプ21の可動斜板21aの傾斜角度を制御する。
【0077】
走行合流弁31がポジション31Xにある場合、第二ポンプ流量制御アクチュエータ24には、油路22b及び油路24aを介して第二油圧ポンプ22の吐出圧力が付与される。また、第二ポンプ流量制御アクチュエータ24には、油路24bを介して第二最大負荷圧力が付与される。第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、第二油圧ポンプ22の吐出圧力と第二最大負荷圧力との差圧を所定値(第二ポンプ流量制御アクチュエータ24に設けられるスプリングによって定められる値)に保持するように、第二油圧ポンプ22の可動斜板22aの角度を制御する。
【0078】
走行合流弁31がポジション31Yにある場合、油路21b、油路22b、油路31c、及び油路31dが連通される。これによって、第一油圧ポンプ21、及び第二油圧ポンプ22の吐出圧力は略同一の圧力となり、当該吐出圧力は、油路23a、及び油路24aを介して第一ポンプ流量制御アクチュエータ23、及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24にそれぞれ付与される。
また、走行合流弁31がポジション31Yにある場合、油路23bと油路24bとが連通される。これによって、第一最大負荷圧力及び第二最大負荷圧力のうち大きい負荷圧力(以下、単に「合流最大負荷圧力」と記す)は、油路23b、及び油路24bを介して第一ポンプ流量制御アクチュエータ23、及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24にそれぞれ付与される。
第一ポンプ流量制御アクチュエータ23及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の吐出圧力と合流最大負荷圧力との差圧を所定値に保持するように、第一油圧ポンプ21の可動斜板21a、及び第二油圧ポンプ22の可動斜板22aの角度をそれぞれ制御する。
【0079】
上述の如く、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータ(左走行用油圧モータ5L、ブームシリンダ13等)の負荷圧力のうち最大の負荷圧力と、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の吐出圧力と、に基づいて、当該負荷圧力と吐出圧力との差圧を所定値に保持することができる。これによって、作業装置4の作業状態(作業負荷の大きさ)に応じて第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22による作動油の吐出量は最適な値に制御される。
また、アフターオリフィス型のロードセンシングシステムによって、走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの前後差圧は所定値に補償されている。
詳細には、走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの前の圧力は、第一ポンプ流量制御アクチュエータ23及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24によって、合流最大負荷圧力よりも所定値だけ高い圧力に保持される。また、走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁にそれぞれ設けられる絞りの後の圧力は、圧力補償弁によって、合流最大負荷圧力よりも所定値だけ高い圧力に保持される。
したがって、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量は、走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁のスプールストローク量(走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁により形成される油路の開口面積)にのみ依存する。すなわち、走行用方向切換弁及び作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を制御することで、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を精度良く制御することができる。
【0080】
なお、本実施形態に係る第一ポンプ流量制御アクチュエータ23及び第二ポンプ流量制御アクチュエータ24は、スプリングを備えた制御ピストンであるとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、レギュレータバルブ及び制御ピストンからなる構成であっても良く、作業用油圧アクチュエータ及び走行用油圧アクチュエータの負荷圧力と第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の吐出圧力との差圧を所定値に保持することが可能な構成であれば良い。
【0081】
図2及び図3に示すように、パイロットポンプ25は、エンジン9によって駆動され、作動油を吐出することにより、油路25a内にパイロット圧を発生させる。また、油路25aは、油路25b、油路25c、油路25d、及び油路25eに分岐される。油路25a内のパイロット圧は、リリーフ弁26により所定の圧力に保持される。
【0082】
油路25dには絞り25fが設けられる。油路25dは、絞り25f、バケット検出用方向切換弁46、ブーム検出用方向切換弁45、左走行検出用方向切換弁44、右走行検出用方向切換弁65、アーム検出用方向切換弁66、旋回検出用方向切換弁67、及びPTO検出用方向切換弁68を順に経由し、戻り油路17aに接続される。
油路25dにおける絞り25fとバケット検出用方向切換弁46との間からは、油路25hが分岐される。油路25hは、走行合流弁31のパイロットポート31aと接続される。
【0083】
油路25eには絞り25gが設けられる。油路25eは、絞り25g、バケット検出用方向切換弁46、ブーム検出用方向切換弁45、左走行検出用方向切換弁44、右走行検出用方向切換弁65、アーム検出用方向切換弁66、旋回検出用方向切換弁67、及びPTO検出用方向切換弁68を順に経由し、戻り油路17aに接続される。
油路25eにおける絞り25gとバケット選出用方向切換弁46との間からは、油路25kが分岐される。油路25kは、走行合流弁31のパイロットポート31bと接続される。
【0084】
左走行用油圧モータ5L又は右走行用油圧モータ5Rが駆動された場合(すなわち、左走行モータ用方向切換弁41が中立位置から他のポジション(ポジション41Y又はポジション41Z)に切り換えられた場合、若しくは右走行モータ用方向切換弁61が中立位置から他のポジションに切り換えられた場合)、左走行検出用方向切換弁44又は右走行検出用方向切換弁65によって油路25dが閉塞される。これによって、油路25dの絞り25fより下流側ではパイロット圧が生じる。当該パイロット圧は、油路25hを介して走行合流弁31のパイロットポート31aに付与される。
同様に、ブームシリンダ13、バケットシリンダ15、アームシリンダ14、又は旋回モータ7が駆動された場合、若しくはPTO用ポート16に作動油が供給された場合、ブーム検出用方向切換弁45、バケット検出用方向切換弁46、アーム検出用方向切換弁66、旋回検出用方向切換弁67、又はPTO検出用方向切換弁68によって油路25eが閉塞される。これによって、油路25eの絞り25gより下流側ではパイロット圧が生じる。当該パイロット圧は、油路25kを介して走行合流弁31のパイロットポート31bに付与される。
走行合流弁31のパイロットポート31a及びパイロットポート31bにパイロット圧が付与された場合、当該走行合流弁31はポジション31Yに切り換えられる。すなわち、走行動作(左走行用油圧モータ5L又は右走行用油圧モータ5Rの駆動)と作業動作(ブームシリンダ13、バケットシリンダ15、アームシリンダ14、又は旋回モータ7の駆動、若しくはPTO用ポート16への作動油の供給)が同時に行われた場合、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22から吐出された作動油は合流させられる。これによって、旋回作業車1が直進走行する場合(左走行用油圧モータ5L及び右走行用油圧モータ5Rを同時に駆動する場合)に作業装置4により作業動作を行っても、左走行用油圧モータ5L及び右走行用油圧モータ5Rに均等に作動油を供給することができ、旋回作業車1が曲進(直進操作しているにもかかわらず、左右いずれか一方に曲がりながら進行)することを防止することができる。
【0085】
図2及び図3に示すように、第一リモコン弁81は、油路25aから分岐される油路25bに接続される。
また、第一リモコン弁81は、油路81a及び油路81bを介してブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42a及びパイロットポート42bとそれぞれ接続される。
さらに、第一リモコン弁81は、油路81c及び油路81dを介してバケットシリンダ用方向切換弁43のパイロットポート43a及びパイロットポート43bとそれぞれ接続される。
第一リモコン弁81は、油路25bを介してパイロットポンプ25から供給される作動油を、パイロット用の作動油としてブームシリンダ用方向切換弁42(詳細には、パイロットポート42a又はパイロットポート42b)及びバケットシリンダ用方向切換弁43(詳細には、パイロットポート43a又はパイロットポート43b)に分配する。
【0086】
第一リモコン弁81は、操縦部8に配置される操作具としての第一操作レバー82に連動連結される。第一操作レバー82を操作することにより、第一リモコン弁81を切り換え、ブームシリンダ用方向切換弁42及びバケットシリンダ用方向切換弁43に供給される作動油の方向を切り換えることができる。
【0087】
図2及び図4に示すように、第二リモコン弁91は、油路25bに接続される。
また、第二リモコン弁91は、油路91a及び油路91bを介してアームシリンダ用方向切換弁62のパイロットポート62a及びパイロットポート62bとそれぞれ接続される。
さらに、第二リモコン弁91は、油路91c及び油路91dを介して旋回モータ用方向切換弁63のパイロットポート63a及びパイロットポート63bとそれぞれ接続される。
第二リモコン弁91は、油路25bを介してパイロットポンプ25から供給される作動油を、パイロット用の作動油としてアームシリンダ用方向切換弁62(詳細には、パイロットポート62a又はパイロットポート62b)及び旋回モータ用方向切換弁63(詳細には、パイロットポート63a又はパイロットポート63b)に分配する。
【0088】
第二リモコン弁91は、操縦部8に配置される操作具としての第二操作レバー92に連動連結される。第二操作レバー92を操作することにより、第二リモコン弁91を切り換え、アームシリンダ用方向切換弁62及び旋回モータ用方向切換弁63に供給される作動油の方向を切り換えることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、第一リモコン弁81はブームシリンダ用方向切換弁42及びバケットシリンダ用方向切換弁43に、第二リモコン弁91はアームシリンダ用方向切換弁62及び旋回モータ用方向切換弁63に、それぞれ接続されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、第一リモコン弁81及び第二リモコン弁91と、当該第一リモコン弁81及び第二リモコン弁91に接続される作業用方向切換弁と、の組み合わせは、特に限定するものではない。
【0090】
図2から図4までに示すように、左走行リモコン弁83は、図示せぬ油路を介して油路25bに接続される。
また、左走行リモコン弁83は、図示せぬ2つの油路を介して左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41a及びパイロットポート41bとそれぞれ接続される。
左走行リモコン弁83は、油路25b等を介してパイロットポンプ25から供給される作動油を、パイロット用の作動油として左走行モータ用方向切換弁41(詳細には、パイロットポート41a及びパイロットポート41b)に分配する。
【0091】
左走行リモコン弁83は、操縦部8に配置される走行操作具としての左走行操作レバー84に連動連結される。左走行操作レバー84を操作することにより、左走行リモコン弁83を切り換え、左走行モータ用方向切換弁41に供給される作動油の方向を切り換えることができる。
【0092】
右走行リモコン弁93は、図示せぬ油路を介して油路25bに接続される。
また、右走行リモコン弁93は、図示せぬ2つの油路を介して右走行モータ用方向切換弁61のパイロットポート61a及びパイロットポート61bとそれぞれ接続される。
右走行リモコン弁93は、油路25b等を介してパイロットポンプ25から供給される作動油を、パイロット用の作動油として右走行モータ用方向切換弁61(詳細には、パイロットポート61a及びパイロットポート61b)に分配する。
【0093】
右走行リモコン弁93は、操縦部8に配置される走行操作具としての右走行操作レバー94に連動連結される。右走行操作レバー94を操作することにより、右走行リモコン弁93を切り換え、右走行モータ用方向切換弁61に供給される作動油の方向を切り換えることができる。
【0094】
図2及び図4に示すように、PTO用リモコン弁95は、油路25aから分岐される油路25cに接続される。
また、PTO用リモコン弁95は、油路95a及び油路95bを介してPTO用方向切換弁64のパイロットポート64a及びパイロットポート64bとそれぞれ接続される。
PTO用リモコン弁95は、油路25cを介してパイロットポンプ25から供給される作動油を、パイロット用の作動油としてPTO用方向切換弁64(詳細には、パイロットポート64a又はパイロットポート64b)に分配する。
【0095】
PTO用リモコン弁95は、操縦部8に配置されるPTO操作レバー96に連動連結される。PTO操作レバー96を操作することにより、PTO用リモコン弁95を切り換え、PTO用方向切換弁64に供給される作動油の方向を切り換えることができる。
【0096】
図2から図4までに示すように、流量制限手段100は、作業用方向切換弁のスプールストローク量を規制するためのものである。流量制限手段100は、主として複数のパイロット式減圧弁(ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143b、バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144b、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145b、旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146b、及びPTO用パイロット式減圧弁147a・147b)を具備する。
【0097】
図2、及び図3に示すように、ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143bは、ブームシリンダ用方向切換弁42に付与されるパイロット圧を減圧するものである。ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143aは油路81aの中途部に、ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143bは油路81bの中途部に、それぞれ配置される。
ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143bのパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、パイロットポート42a・42bに付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧することができる。
【0098】
バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144bは、バケットシリンダ用方向切換弁43に付与されるパイロット圧を減圧するものである。バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144aは油路81cの中途部に、バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144bは油路81dの中途部に、それぞれ配置される。
バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144bのパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、パイロットポート43a・43bに付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧することができる。
【0099】
図2及び図4に示すように、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145bは、アームシリンダ用方向切換弁62に付与されるパイロット圧を減圧するものである。アームシリンダ用パイロット式減圧弁145aは油路91aの中途部に、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145bは油路91bの中途部に、それぞれ配置される。
アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145bのパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、パイロットポート62a・62bに付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧することができる。
【0100】
旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146bは、旋回モータ用方向切換弁63に付与されるパイロット圧を減圧するものである。旋回モータ用パイロット式減圧弁146aは油路91cの中途部に、旋回モータ用パイロット式減圧弁146bは油路91dの中途部に、それぞれ配置される。
旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146bのパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、パイロットポート63a・63bに付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧することができる。
【0101】
PTO用パイロット式減圧弁147a・147bは、PTO用方向切換弁64に付与されるパイロット圧を減圧するものである。PTO用パイロット式減圧弁147aは油路95aの中途部に、PTO用パイロット式減圧弁147bは油路95bの中途部に、それぞれ配置される。
PTO用パイロット式減圧弁147a・147bのパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、パイロットポート64a・64bに付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧することができる。
【0102】
以下では、説明の便宜上、ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143b、バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144b、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145b、旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146b、及びPTO用パイロット式減圧弁147a・147bを総称して、単に「パイロット式減圧弁」と記す。
【0103】
以下では、図2から図4まで、及び図6を用いて、上述の如く構成される油圧回路201の動作態様について説明する。詳細には、旋回作業車1を直進させながらブーム10を動作させる場合の油圧回路201の動作態様について説明する。
【0104】
図2から図4までに示すように、左走行操作レバー84及び右走行操作レバー94が操作され、左走行モータ用方向切換弁41のパイロットポート41a及び右走行モータ用方向切換弁61のパイロットポート61aにパイロット圧が付与されると、左走行モータ用方向切換弁41及び右走行モータ用方向切換弁61が中立位置から他のポジションにそれぞれ切り換えられて、左走行用油圧モータ5L及び右走行用油圧モータ5Rが同一方向に回転駆動される。これによって左右一対のクローラ5・5が同一方向に駆動して、旋回作業車1は直進走行する。
【0105】
旋回作業車1の直進走行中に、第一操作レバー82が操作されて、パイロット圧がブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42aに付与されると、当該ブームシリンダ用方向切換弁42及びブーム検出用方向切換弁45のスプールがそれぞれ中立位置から他のポジションに向けて摺動される。
【0106】
この場合、左走行検出用方向切換弁44によって油路25dにパイロット圧が生じるとともに、ブーム検出用方向切換弁45によって油路25eにパイロット圧が生じる。当該油路25d及び油路25eのパイロット圧は、走行合流弁31のパイロットポート31a及びパイロットポート31bに付与される。当該パイロット圧により、走行合流弁31はポジション31Yに切り換えられ、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22により吐出される作動油が合流される。
【0107】
また、油路25dのパイロット圧は、油路142を介して複数のパイロット式減圧弁のパイロットポートにそれぞれ付与される。当該パイロット圧により、複数のパイロット式減圧弁は、作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧をそれぞれ所定の値以下に減圧する。これによって、作業用方向切換弁のスプールストローク量を所定の値以下に規制することができる。すなわち、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量を所定の値以下に規制することができる。
【0108】
以下では、図6を用いて、ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143aによるブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量の規制の様子について説明する。
【0109】
第一操作レバー82を操作すると、当該操作量(詳細には、パイロットポート42aにパイロット圧を生じさせる方向への操作量)Mwに応じてパイロットポート42aに付与されるパイロット圧が生じる。第一操作レバー82の操作量Mwが増加するに従って、パイロットポート42aに付与されるパイロット圧も上昇する。当該パイロット圧の上昇に応じて、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールが中立位置から他のポジション方向へと摺動する。当該パイロット圧がブームシリンダ用パイロット式減圧弁143aによって減圧されない場合、第一操作レバー82の操作量Mwの増加に伴い、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量Swも増加する(図6の破線A参照)。
【0110】
しかし、第一操作レバー82の操作量Mwが所定の値(図6におけるM1)になり、パイロットポート42aに付与されるパイロット圧が所定の値まで達すると、当該パイロット圧はブームシリンダ用パイロット式減圧弁143aによって所定の値に維持されるように減圧される。すなわち、第一操作レバー82の操作量Mwをそれ以上増加させても、パイロット圧が所定の値を超えることはない(図6の実線B参照)。これによって、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量Swは、規制値S1以下に規制される。
【0111】
なお、上記のパイロット圧が維持される所定の値はパイロット式減圧弁のスプリングを変更する等により調節することが可能である。すなわち、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量Swの規制値S1は所望の値に調節することができる。
【0112】
上述の如く、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量(すなわち、ブームシリンダ用方向切換弁42により形成される油路の開口面積)が規制されることにより、当該ブームシリンダ用方向切換弁42を介してブームシリンダ13へと供給される作動油の流量が制限される。
この際、ロードセンシングシステムにより、ブームシリンダ用方向切換弁42の前後差圧は所定値に補償されている。これによって、ブームシリンダ13へと供給される作動油の流量は、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量に基づく開口面積によって決定される。すなわち、ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143aによってブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量を任意の値に規制することで、ブームシリンダ用方向切換弁42により形成される油路の開口面積を任意の値に規制し、ブームシリンダ13へと供給される作動油の流量を精度良く制限することができる。
【0113】
また、上述の如く直進走行中にブームシリンダ13に供給される作動油の流量を制限することで、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22から吐出される作動油がブームシリンダ13に大量に供給されることを防止することができる。これによって、直進中にブームシリンダ13を駆動させる場合であっても、左走行用油圧モータ5L及び右走行用油圧モータ5Rに供給される作動油の流量が急激に減少することがなく、直進走行中の走行速度の急激な変化を防止することができる。
【0114】
なお、上記油圧回路201の動作態様の説明においては、ブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42aにパイロット圧を付与する場合について説明したが、ブームシリンダ用方向切換弁42のパイロットポート42bにパイロット圧を付与する場合についても同様に、ブームシリンダ用方向切換弁42のスプールストローク量を規制することができる。
【0115】
また、上記油圧回路201の動作態様の説明においては、直進中にブームシリンダ13を動作させる場合についてのみ説明したが、直進中にバケットシリンダ15、アームシリンダ14、又は旋回モータ7を動作させる場合、及びPTO用ポート16に作動油を供給する場合についても同様に、作業用方向切換弁のスプールストローク量を規制することができる。
【0116】
以上の如く、本実施形態に係る旋回作業車1の油圧回路201は、少なくとも一つの作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータ5R・5Lに、各々の作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータ5R・5Lに対して設けられる方向切換弁(作業用方向切換弁及び走行用方向切換弁)を介して作動油を供給する2つの油圧ポンプ(第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22)の吐出量を、負荷圧力に応じて制御するロードセンシングシステムを具備する旋回作業車1の油圧回路201であって、前記作業用油圧アクチュエータ及び走行用油圧モータ5R・5Lに同時に作動油を供給する場合、前記2つの油圧ポンプが吐出する作動油を合流させる走行合流弁31と、走行用油圧モータ5R・5Lに作動油が供給された場合、前記作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するパイロット式減圧弁(ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143b、バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144b、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145b、旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146b、及びPTO用パイロット式減圧弁147a・147b)と、を具備するものである。
このように構成することにより、旋回作業車1が2つの油圧ポンプ(第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22)からの作動油を合流させて左右の走行用油圧モータ5R・5Lの駆動により走行している場合に、旋回作業車1の作業装置4が作業用油圧アクチュエータの駆動により作動するとき、減圧弁により作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧することで作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が制限されることになる。そのため、2つの油圧ポンプから吐出される作動油が作業用油圧アクチュエータに供給されても、走行用油圧モータ5R・5Lに供給される作動油の供給量が急激に減少しなくなり、ひいては旋回作業車1の走行速度が急激に低下しにくくなる。
しかも、ロードセンシングシステムにより作業用方向切換弁の前後差圧が所定値に補償されるため、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量は、作業用方向切換弁のスプールストローク量にのみ依存する。すなわち、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量は、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力の変化に依存しない。そのため、走行用油圧モータ5R・5Lに供給される作動油の供給量が、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力の変化にかかわらず変動しにくくなって、旋回作業車1の走行速度が安定することになる。
したがって、作業用油圧アクチュエータの負荷圧力が変化した場合であっても、走行速度の変動を抑制することができる。
さらに、パイロット式減圧弁を操作するための制御装置や、当該制御装置に記憶される制御プログラムを作成する必要がないため、コストの削減を図ることができる。
【0117】
以下では、図7を用いて、第二実施形態に係る油圧回路202について説明する。
【0118】
第二実施形態に係る油圧回路202が第一実施形態に係る油圧回路201(図2参照)と異なる点は、複数のパイロット式減圧弁(ブームシリンダ用パイロット式減圧弁143a・143b、バケットシリンダ用パイロット式減圧弁144a・144b、アームシリンダ用パイロット式減圧弁145a・145b、旋回モータ用パイロット式減圧弁146a・146b、及びPTO用パイロット式減圧弁147a・147b)に代えてパイロット式減圧弁153を具備している点である。
よって以下では、第一実施形態に係る油圧回路201と異なる点についてのみ説明し、油圧回路201と略同一の構成の部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0119】
パイロット式減圧弁153は、作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するものである。パイロット式減圧弁153は、油路25aの中途部、より詳細には、油路25aと油路25b及び油路25cとの分岐点Dよりもパイロットポンプ25(上流)側に配置される。
パイロット式減圧弁153のパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、作業用方向切換弁の各パイロットポートに付与されるパイロット圧を一括して減圧することができる。
【0120】
上述の如く構成された油圧回路202において、左走行用油圧モータ5L又は右走行用油圧モータ5Rを駆動する場合、油路25dにパイロット圧が生じる。当該パイロット圧は、油路142を介してパイロット式減圧弁153のパイロットポートに付与される。当該パイロット圧により、パイロット式減圧弁153は、作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を所定の値以下に一括して減圧する。これによって、作業用方向切換弁のスプールストローク量を所定の値以下に一括して規制することができる。
【0121】
以上の如く、本実施形態に係るパイロット式減圧弁153は、前記パイロット圧を供給するパイロットポンプ25の吐出側から分岐点Dを介して分岐して各作業用方向切換弁と接続されるパイロット油路(油路25a)において、分岐点Dよりもパイロットポンプ25側に一つ備えられて、作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するものである。
このように構成することにより、複数の作業用方向切換弁に対して1つのパイロット式減圧弁153を共用することで、コストの削減を図ることができる。
【0122】
以下では、図8を用いて、第三実施形態に係る油圧回路203について説明する。
【0123】
第三実施形態に係る油圧回路203が第二実施形態に係る油圧回路202(図7参照)と異なる点は、パイロット式減圧弁153に代えて作業用パイロット式減圧弁163を具備している点である。
よって以下では、第二実施形態に係る油圧回路202と異なる点についてのみ説明し、油圧回路202と略同一の構成の部材には同一の符号を付し、説明を省略する。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、作業用油圧アクチュエータを2つの組(PTO用ポート16に接続されるアタッチメントと、それ以外の作業用油圧アクチュエータ)に分けて説明する。
【0124】
作業用パイロット式減圧弁163は、一方の組の作業用油圧アクチュエータ(作業用油圧アクチュエータのうちPTO用ポート16に接続されるアタッチメント(特定の作業用油圧アクチュエータ)以外の作業用油圧アクチュエータ)に対応する作業用方向切換弁(ブームシリンダ用方向切換弁42、バケットシリンダ用方向切換弁43、アームシリンダ用方向切換弁62、及び旋回モータ用方向切換弁63)に付与されるパイロット圧を減圧するものである。作業用パイロット式減圧弁163は、油路25bの中途部、より詳細には、油路25aと油路25b及び油路25cとの分岐点Dよりも第一リモコン弁81及び第二リモコン弁91(下流)側に配置される。
作業用パイロット式減圧弁163のパイロットポートは油路142を介して油路25dと接続され、油路25d内のパイロット圧が上昇した場合、一方の組の作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁の各パイロットポートに付与されるパイロット圧を一括して減圧することができる。
【0125】
上述の如く構成された油圧回路203において、左走行用油圧モータ5L又は右走行用油圧モータ5Rを駆動する場合、油路25dにパイロット圧が生じる。当該パイロット圧は、油路142を介して作業用パイロット式減圧弁163のパイロットポートに付与される。当該パイロット圧により、作業用パイロット式減圧弁163は、一方の組の作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧を所定の値以下に一括して減圧する。これによって、一方の組の作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁のスプールストローク量を所定の値以下に一括して規制することができる。
【0126】
このように構成することにより、複数の作業用方向切換弁に対して1つの作業用パイロット式減圧弁163を共用することで、コストの削減を図ることができる。また、PTO用方向切換弁64に付与されるパイロット圧を規制しないため、PTO用ポート16に芝刈り機、ブレーカー等の大流量の作動油が必要なアタッチメントが接続された場合、当該アタッチメントに供給される作動油の流量を制限することがなく、当該アタッチメントを確実に駆動させることができる。
【0127】
以上の如く、本実施形態に係る旋回作業車1の油圧回路203は、特定の作業用油圧アクチュエータ(アタッチメント)を含む作業用油圧アクチュエータを複数有し、前記複数の作業用油圧アクチュエータは、前記特定の作業用油圧アクチュエータを含む組と前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組とに分けられ、作業用パイロット式減圧弁163は、パイロット圧を供給するパイロットポンプ25の吐出側から分岐点Dを介して分岐して前記各組の各作業用油圧アクチュエータに対応する作業用方向切換弁と接続されるパイロット油路(油路25b)において、分岐点Dよりも下流側で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る作業用方向切換弁よりも上流側に備えられて、作業用パイロット式減圧弁163で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る作業用方向切換弁に付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧するものである。
このように構成することにより、走行用油圧モータ5R・5Lに作動油が供給される場合においても、特定の作業用油圧アクチュエータ(アタッチメント)に供給される作動油の流量は制限されない。したがって、駆動するために大流量を要する芝刈り機、ブレーカー等のアタッチメントを装着した場合、走行中であっても当該アタッチメントを確実に作動させることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0128】
5L 左走行用油圧モータ
5R 右走行用油圧モータ
7 旋回モータ(作業用油圧アクチュエータ)
13 ブームシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
14 アームシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
15 バケットシリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
16 PTO用ポート
21 第一油圧ポンプ(油圧ポンプ)
22 第二油圧ポンプ(油圧ポンプ)
25 パイロットポンプ
31 走行合流弁(合流弁)
41 左走行モータ用方向切換弁(方向切換弁)
42 ブームシリンダ用方向切換弁(方向切換弁)
43 バケットシリンダ用方向切換弁(方向切換弁)
61 右走行モータ用方向切換弁(方向切換弁)
62 アームシリンダ用方向切換弁(方向切換弁)
63 旋回モータ用方向切換弁(方向切換弁)
64 PTO用方向切換弁(方向切換弁)
201 油圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータに、各々の作業用油圧アクチュエータ及び左右一対の走行用油圧モータに対して設けられるパイロット式の方向切換弁を介して作動油を供給する2つの油圧ポンプの吐出量を、負荷圧力に応じて制御するロードセンシングシステムを具備する作業車両の油圧回路であって、
前記作業用油圧アクチュエータ及び前記走行用油圧モータに同時に作動油を供給する場合、前記2つの油圧ポンプが吐出する作動油を合流させる合流弁と、
前記走行用油圧モータに作動油が供給された場合、前記作業用油圧アクチュエータに対応する前記方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧するパイロット式減圧弁と、
を具備する作業車両の油圧回路。
【請求項2】
前記パイロット式減圧弁は、前記パイロット圧を供給するパイロットポンプの吐出側から分岐点を介して分岐して前記各方向切換弁と接続されるパイロット油路において、前記分岐点よりも前記パイロットポンプ側に一つ備えられて、前記方向切換弁に付与されるパイロット圧を減圧する、請求項1に記載の作業車両の油圧回路。
【請求項3】
特定の作業用油圧アクチュエータを含む前記作業用油圧アクチュエータを複数有し、
前記複数の作業用油圧アクチュエータは、前記特定の作業用油圧アクチュエータを含む組と前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組とに分けられ、
前記パイロット式減圧弁は、前記パイロット圧を供給するパイロットポンプの吐出側から分岐点を介して分岐して前記各組の各作業用油圧アクチュエータに対応する方向切換弁と接続されるパイロット油路において、前記分岐点よりも下流側で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る方向切換弁よりも上流側に備えられて、当該パイロット式減圧弁で前記特定の作業用油圧アクチュエータを含まない組に係る前記方向切換弁に付与されるパイロット圧をそれぞれ減圧する、請求項1に記載の作業車両の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−196437(P2011−196437A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62731(P2010−62731)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】