説明

作業車両

【課題】電源のON操作を携帯電話により操作することでキーの抜き忘れや所持すること自体の忘れを防ぐことができ、さらに、遠隔操作することによって盗難を防止することができる作業車両を提供する。
【解決手段】携帯端末120と通信する通信手段132と、携帯端末120から受け付けた認証コードに基づいて認証処理を行うコード認証手段146を備えた作業車両130であって、電源149のON/OFFを制御する制御手段を備え、前記コード認証手段146が前記携帯端末120からの認証コードを認証すると、前記電源149がONされる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業車両における電源を制御する技術に関し、詳しくは、キーを使用せずに携帯電話を用いて作業車両の電源をONする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるキーを送信機として、ドアの施錠及び解除を行うキーレスエントリーは従来から行われており、このキーの代わりに携帯電話を用いて、ドアの施錠及び解除、及び、エンジンの始動制御を行う技術は公知となっている(例えば、「特許文献1」、「特許文献2」参照)。
【特許文献1】特開平9−284409号公報
【特許文献2】特許第2998732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、作業車両の場合キャビン仕様でない機種が多数存在し、ドア自体が存在せず、運転席に容易に乗車できるため、キーレスエントリーシステムを適用できない。
また、携帯電話を操作してエンジンを始動させる場合には、ボタン操作となるので、従来からのキー操作による始動操作に比して違和感があり、低温時の始動の際には、セルモーターを作動し過ぎる場合があり、バッテリ上がりのおそれがあり、問題となっていた。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために、電源のON操作を携帯電話により操作することでキーの抜き忘れや所持すること自体の忘れを防ぐことができ、さらに、遠隔操作することによって盗難を防止することができる作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、携帯端末と通信する通信手段と、携帯端末から入力した認証コードと予め記憶させた認証コードとに基づいて認証処理を行うコード認証手段を備えた作業車両であって、電源のON/OFFを制御する制御手段を備え、前記コード認証手段が前記携帯端末からの認証コードを認証すると、前記電源をONするものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1に記載の作業車両において、前記携帯端末及び前記作業車両に作業パターンの記憶手段を備え、作業者に合った作業パターンで作業機を作動可能に構成したものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1に記載の作業車両において、前記携帯端末は作業機の遠隔操作手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、キーの抜き忘れなどから、キーを差したままにしておくような無防備な状態をなくすことができ、キーを抜き差しする煩わしさを解消できる。遠隔操作で電源がONできるため、バッテリ上がりや盗難を防止することができる。
【0011】
請求項2においては、作業車両を複数の作業者により操作可能とする場合、作業者毎に作業パターンが異なるため、作業を交代した場合などで、容易に作業パターンを変更できて、容易に再現できて操作し易くなる(作業パターンとは、例えばトラクタの場合、エンジン回転数や走行速度や作業機の高さ、作業機の旋回上昇やバック上昇のON/OFF、昇降の感度等をいい、これらは同じ作業であっても作業者によって好みが異なる)。
【0012】
請求項3においては、作業機(排出オーガやリフト装置等)を操作するための専用のリモコンが不要となり、リモコンを紛失するおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
図1は本発明の作業車両に係る作業車両制御システムのブロック構成図である。
図2は本実施例に係る作業車両制御システムのフローチャート図である。
図3は本実施例に係る作業パターン制御システムのフローチャート図である。
図4は別実施例に係る農作業機制御システムのブロック構成図である。
図5は図4に示す制御システムの実施例2に係るフローチャート図である。
図6は図4に示す制御システムの実施例3に係るフローチャート図である。
【0014】
[ブロック構成]
まず、本発明の一実施例における、作業車両制御システム110のブロック構成図について、図1を用いて説明する。図1に示すように、作業車両制御システム110は、携帯端末120と、作業車両130とで構成される。本実施例では作業車両130としてトラクタの図を用いて説明するが、作業車両130はコンバインや田植機等他の作業車両でもよく、本実施例に限定されるものではない。
【0015】
前記携帯端末120は、携帯電話やPHS等であり、電源121、入力部122、表示部123、記憶部124、通信部125、携帯端末制御手段126、アンテナ127及び外部入力ソケット128等を備えて構成されている。
前記電源121は、例えば、一次電池や二次電池等のバッテリであり、供給される電力を入力部122、表示部123、記憶部124、通信部125及び携帯端末制御手段126等へ供給する。
入力部122はテンキーや十字スイッチやダイヤルやその他押しボタンスイッチ等であり、携帯電話として通常使用する電話番号の入力や文字の入力等に加えて、後述するように作業車両130のコード認証手段146で認証される認証コード等が入力される。
表示部123は、液晶等で構成され、画像や受信・送信画面や操作画面等を表示でき、後述するように前記入力部122により認証コードを入力した時にはその認証コードが表示され、また認証コードがコード認証手段146で認証された時には認証信号が表示され、認証されなかった時には警報信号が表示される。
【0016】
記憶部124には、制御プログラムや前記盗難警報設定時間情報をはじめ、前記認証コードや、認証コードの送信時刻、認証信号及び警報信号の受信時刻等が格納される。
通信部125では、アンテナ127を介して作業車両130と通信が可能であり、該作業車両130の通信手段132との間で前記認証コード等が送受信される。携帯端末120においては、前記通信データや時間情報等は携帯端末制御手段126によって制御される。
外部入力ソケット128は、USBケーブルやその他のジャックやカプラ等のいずれかを挿入することによって図示しないパソコンまたは専用の制御装置と接続・通信可能に構成され、また、充電等も可能としている。後述するように、作業車両130の作業パターンをパソコンで入力し、この外部入力ソケット128を介して携帯端末120に記憶させることができる。なお、外部入力ソケット128は、メモリーカード等の記憶装置を挿入し、この記憶装置を介して情報をやりとりする構成にすることも可能である。
【0017】
前記作業車両130は、作業車両制御手段131、通信手段132、表示手段134、入力手段136、エンジン停止手段138、エンジン始動手段139、作業機制御手段142、コード認証手段146、始動スイッチ148及びリレー150等を備えて構成されている。
作業車両制御手段131はCPUやRAMやROMやインターフェース等のマイクロコンピュータを主体として構成され、前記通信手段132、表示手段134、入力手段136、エンジン停止手段138、作業機制御手段142、コード認証手段146、始動スイッチ148及びリレー150等等が接続され、認証コード、作業機状態情報、エンジン始動状態情報等によって本発明に係る作業車両130の電源ON/OFFシステムを制御する。
通信手段132はアンテナ133を介して前記携帯端末120の通信部125と送受信可能とされ、認証コード等を送受信する。
【0018】
表示手段134はランプまたはモニターまたは液晶パネル等であり、作業状態や機体の状態や警報モニターや入力した値等を表示可能としている。
入力手段136は座席近傍の運転操作部に配設され、テンキーまたはキーボードまたはタッチパネル等で構成され、認証コードの入力やその他パスワードや設定値やプログラム等を入力可能としている。
エンジン停止手段138はエンジン140に設けられ、前記作業車両制御手段131から発信される信号によって燃料の供給を停止したり、点火装置を停止したりして、エンジン140の停止を行う。なお、エンジン140を停止するための操作は、始動スイッチをOFFとしたり、非常停止スイッチをONとしたりしてその信号が、作業車両制御手段131に送信される。また、安全装置が作動した場合等にも作業車両制御手段131から停止信号が送信される。
【0019】
エンジン始動手段139はエンジン停止手段138と同様にエンジン140に設けられ、始動スイッチをONすることで、前記作業車両制御手段131から発信される信号によって、セルモータを作動させて、燃料を噴射し、または、点火装置を作動させてエンジン140の始動を行う。
作業機制御手段142は作業機(コンバインの場合、刈取装置や排出オーガ等であり、トラクタの場合はロータリ耕耘装置やリフト装置等である)144に接続され、前記作業車両制御手段131から発信される信号によって作業機144を制御する。例えば、コンバインの場合には、刈取部の高さ制御や傾斜制御、排出オーガの高さ制御や旋回制御や排出クラッチのON/OFF等であり、トラクタの場合ロータリ耕耘装置の高さ制御や傾斜制御、作業機の旋回上昇制御やバック上昇制御や昇降の感度制御等である。
【0020】
コード認証手段146には作業者によって予め認証に用いられる認証コード(暗証番号、パスワード等)が携帯端末120の入力部122または作業車両130の入力手段より入力され、格納されている。この認証コードは複数個の英数字等の組み合わせであり、使用者が任意に設定できる。また、作業者が複数いる場合や作業パターンが複数ある場合等で、複数の認証コードを記憶させることもできる。そして、作業者が走行開始時や作業開始時に前記携帯端末120または作業車両の入力手段136から認証コードを入力すると、作業車両制御手段131は該認証コードと作業車両130のコード認証手段146に格納されている認証コードとの照合を行う。入力した認証コードと記憶させた認証コードが一致していると認証され、作業車両制御手段131からリレー150に信号を送り作動させて電源をONとして、始動スイッチ148をONとすることでエンジンを始動させることができる。
また、前記の作業機144の作業パターン(エンジン回転数や走行速度や作業機の高さ、作業機の旋回上昇やバック上昇のON/OFF、昇降の感度等)については、これらの作業パターンを作業車両130の入力手段で設定したり、携帯端末120から設定値を通信手段を介して送信したりすることができる。この作業パターンは記憶部124に記憶させておくこともできる。そしてその作業パターンを通信部125より作業車両130に通信することにより、複数の作業者によって作業車両130を操作する場合、同じ作業であっても作業者によって好みが異なる作業パターンを容易に変更でき、作業者が変わっても操作がしやすくなる。
【0021】
[作業車両制御]
次に、本発明の作業車両130の実施例1に係る作業車両制御システム110の動作について、図2を用いて説明する。図2は図1に示す作業車両制御システムの実施例1に係るフローチャート図である。
まず、電源をONしてエンジンを始動する場合、ステップS1において、コード認証に用いられる認証コードを、作業者によって携帯端末120の入力部122(または入力手段136)から入力する。この認証コードは複数個の英数字の組み合わせであり、予め使用者が任意に設定できる。ステップS2においてこの認証コードが通信部125、通信手段132等により通信して作業車両制御手段131の記憶部に格納する。ステップS3において、コード認証手段146に格納されている認証コードを呼び出し、作業車両制御手段131の記憶部に格納されている前記送信された認証コードと比較する。
ステップS3における前記認証コードを認証したか否かの判断は、具体的には、前記コード認証手段146に予め格納されている前記認証コードと入力した認証コードとが同一か否かを判断であり、同一であれば認証したと判断し、同一でなければ認証しないと判断するのである。判定が「YES」であれば(コードが認証されれば)、認証コードは正規のものとしてステップS4に進む。判定が「NO」であれば(コードが認証されなければ)、認証コードは正規ではない、つまり、パスワードが間違っているものとしてステップS7に進む。
【0022】
ステップS7では、作業者が入力した認証コードが認証コードと一致しなかったことを警報信号として通信手段132より送信し、携帯端末120の表示部に表示させ、一連の処理を終了する。
ステップS4では、作業者が入力した認証コードが認証コードと一致したことを通信手段132より送信し、携帯端末120の表示部123及び作業車両の表示手段134に表示させる。
ステップS5では、前記認証により電源スイッチがONとなり、作業者がエンジンの始動スイッチ148をONとするとリレー150が作動して、エンジン始動手段139となるセルモータが駆動され、ディーゼルエンジンでは所定のタイミングで所定量の燃料が噴射され、ガソリンエンジンでは所定のタイミングで点火される。
【0023】
次に、ステップS6において、エンジン140始動後、後述する作業パターンで作業が開始される。そして、作業を終了、または走行を停止してエンジンを停止させる場合は、運転作業者によって停止スイッチ(始動スイッチ148を兼ねる)または非常停止スイッチがONされると、燃料噴射が停止または点火されなくなりエンジン140は停止し、電源OFFとなる。再びエンジン140を始動する場合や電源をONしたい場合には、前述のように認証コードを入力して認証させる必要がある。
【0024】
[作業パターン制御]
次に、作業パターンを再現させる制御システムについて、図3を用いて説明する。図3は図1に示す作業パターン制御システムの本実施例に係るフローチャート図である。まず、予め作業パターンを作業車両の記憶装置に記憶させておくために、作業者の好み、つまり、最も作業し易いパターンを作業中で見つけ(回転数や変速段等は覚えておく)この状態で作業を一時中断し、または、圃場端で回行する時に、作業車両130の表示手段134に、パターン設定画面を呼び出す(ステップS1)。この状態で、携帯端末120の入力部122で認証コードを入力・送信し(ステップS2)、パターン設定を行う(ステップS3)。この認証コード入力及びパターン設定は作業車両130の入力手段136から直接入力することもでき、また、予め携帯端末120をパソコンと接続・通信させ、認証コードと作業パターンをパソコンで編集した後に携帯端末120に記憶させ、その認証コードと作業パターンを送信することで行うこともできる。
このパターン設定を行った後に、そのパターンで作業を終了し、次の圃場(作業地)への移動して引き続き作業をする場合は電源をOFFとしない限りその作業パターンで装置ができる。また、作業を終了してエンジンを停止した後や、格納した後に別の日に同じ作業をしたい場合には、前述の電源をONとするときに、認証コードを入力すると(ステップS4)、作業パターンも同時に呼び出され、作業開始時には前回の作業と同様に行うことができるのである。
【0025】
次のステップS5では、前記携帯端末120または作業車両130から入力した認証コードがコード認証手段146に記憶された認証コードと一致したか否かが判断される。判定が「YES」であれば(コードが認証されていれば)、ステップS6に進み、判定が「NO」であれば(コードが認証されていなければ)、再びステップS4に戻るのである。このように認証コードが認証される(ステップS5)ことにより、前記により設定された作業パターン(具体的には、エンジン回転数や走行速度や作業機の高さ、作業機の旋回上昇やバック上昇のON/OFF等)が自動で再現されるのである(ステップS6)。
【0026】
また、携帯端末120は作業機のリモコンとして兼用できるようにしている。即ち、作業の際にリモコン操作を呼び出し、前記携帯端末120の表示部123には作業車両130の作業機144を遠隔操作するための選択手順が表示され、作業機144の操作入力が可能となる。具体的には、作業機144の回転・停止、上昇・下降等の選択画面が表示され、入力部122で選択・入力が可能となる。なお、この作業機144については、通常どおり作業車両130において作業者が直接操作することもでき、入力部122で「作業車両において操作する」という手段を選択・入力することもできる。但し、携帯電話機能が優先される。
前記操作手段が入力されれば、その操作手段情報が、通信部125を介して作業車両130に送信され、作業機制御手段142によって作業機の操作が行われる。具体的には、作業機144の回転・停止、上昇・下降等がなされる。
【0027】
以上のように、携帯端末120と通信する通信手段132と、携帯端末120から受け付けた認証コードに基づいて認証処理を行うコード認証手段146を備えた作業車両130であって、電源149のON/OFFを制御する制御手段を備え、前記コード認証手段146が前記携帯端末120からの認証コードを認証すると、前記電源149がONされる。また、前記携帯端末120は作業機144の遠隔操作手段を備え、前記携帯端末120及び前記作業車両130は作業機144の作業パターンの記憶手段を備え、作業者に合った作業パターンで作業機144が作動可能に構成される。
【0028】
これにより、キーの抜き忘れなどから、キーを差したままにしておくような無防備な状態をなくすことができ、キーを抜き差しする煩わしさを解消できる。そして遠隔操作で電源149がONできるため、バッテリ上がりや盗難を防止することができる。また、作業機(排出オーガやリフト装置等)144を操作するための専用のリモコンが不要となり、リモコンを紛失するおそれもない。そして、作業車両130を複数の作業者により操作可能とする場合、作業者毎に作業パターンが異なるため、作業を交代した場合などで、容易に作業パターンを変更できて、容易に再現できて操作し易くなる。
【0029】
[制御システム]
次に、別実施例における、農作業機制御システム10のブロック構成図について、図4を用いて説明する。図4に示すように、農作業機制御システム10は、携帯端末20と、農作業機30とで構成される。本実施例では農作業機30としてコンバインの図を用いて説明するが、農作業機30はトラクタや田植機等他の農作業機でもよく、本実施例に限定されるものではない。
【0030】
前記携帯端末20は、携帯電話やPHS等であり、電源21、入力部22、表示部23、記憶部24、通信部25、携帯端末制御手段26及びアンテナ27等を備えて構成されている。
前記電源21は、例えば、一次電池や二次電池等のバッテリであり、供給される電力を入力部22、表示部23、記憶部24、通信部25及び携帯端末制御手段26等へ供給する。
入力部22はテンキーや十字スイッチやダイヤルやその他押しボタンスイッチ等であり、携帯電話として通常使用する電話番号の入力や文字の入力等に加えて、後述するように農作業機30の設定時間制御手段34に格納する盗難警報設定時間情報等を入力できる。
表示部23は、液晶等で構成され、画像や受信・送信画面や操作画面等を表示でき、前記入力部22により盗難警報設定時間情報を入力した時にはその値が表示され、また後述するように農作業機30の通信手段32から送信された農作業機30の位置情報等も表示される。
記憶部24には、制御プログラムや前記盗難警報設定時間情報をはじめ、農作業機30の位置情報履歴や盗難警報設定時間情報の送信時刻や農作業機30の位置情報の受信時刻等のデータが格納される。
通信部25では、アンテナ27及び携帯電話会社が設置したアンテナ(基地局)70を介して電話網の交換局あるいはインターネット通信網に接続可能に構成される。そして、この電話網やインターネット通信網を介して農作業器30と通信でき、該農作業機30の通信手段32との間で前記盗難警報設定時間情報や位置情報を送受信できる。携帯端末20においては、前記通信データや時間情報等は携帯端末制御手段26によって制御される。
【0031】
前記農作業機30は、農作業機制御手段31、通信手段32、設定時間制御手段34、表示手段36、位置情報検知手段(GPS:Global Positioning System)38、入力手段40、ドア開閉状態検知手段42、エンジン始動状態検知手段46及び警報手段50等を備えて構成されている。
農作業機制御手段31はCPUやRAMやROMやインターフェース等のマイクロコンピュータを主体として構成され、前記通信手段32、設定時間制御手段34、表示手段36、位置情報検知手段(GPS)38、入力手段40、ドア開閉状態検知手段42、エンジン始動状態検知手段46及び警報手段50等が接続され、盗難警報設定時間情報、位置情報、ドア開閉状態情報、エンジン始動状態情報、警報情報等によって本発明に係る農作業機30の盗難防止システムを制御する。
通信手段32はアンテナ33から前記基地局や交換局、又はインターネット通信網を介して前記携帯端末20の通信部25と送受信可能とされ、盗難警報設定時刻情報を受信したり、後述する位置情報検知手段(GPS)38で検知された位置情報を前記通信部25へと送信したりする。
【0032】
設定時間制御手段34は盗難警報設定時間情報を格納し、後述するエンジン始動状態検知手段46でエンジンの始動が検知された場合や、ドア開閉状態検知手段42でドアの開閉が検知された場合に盗難警報設定時間か否かを判断する。この盗難警報設定時間は前記携帯端末20の入力部22だけでなく、後述する農作業機30の入力手段40からも同様に設定可能に構成されている。また、農作業機制御システム10は、予め盗難防止システムのON(作動)、OFF(解除)が設定できるように構成されており、携帯端末20の入力部22、または農作業機30の入力手段40の操作により、このON(作動)、OFF(解除)の設定操作が可能となる。
表示手段36はランプまたはモニターまたは液晶パネル等であり、作業状態や機体の状態や警報モニターや入力した値等を表示可能としている。
位置情報検知手段38はGPSを利用して、農作業機30の位置情報を検知する。詳しくは、GPSが人工衛星90からの電波を受信し、農作業機30の位置情報を測位するのである。位置情報検知手段(GPS)38によって測位された前記位置情報は、後述するエンジン始動状態検知手段46でエンジンの始動が検知され、あるいはドア開閉状態検知手段42でドアの開閉が検知された場合に盗難警報設定時間であったときは、前記通信手段32から携帯端末20の通信部25へと送信される。
入力手段40は座席近傍の運転操作部に配設され、テンキーまたはキーボードまたはタッチパネル等で構成され、盗難警報設定時間の入力やその他パスワードや設定値やプログラム等を入力可能としている。
【0033】
ドア開閉状態検知手段42はスイッチや光センサー等により構成してドア44の回動部またはロック部に設けられる。ドア44が開閉されるとドア開閉状態検知手段42で検知された信号が前記設定時間制御手段34へと送信され、盗難警報設定時間か否かの判断がなされる。
エンジン始動状態検知手段46はセルモーターや出力軸等のエンジン出力部48に設けられる。エンジンが始動され、エンジン始動情報がエンジン始動状態検知手段46で検知されると、このエンジン始動情報が前記設定時間制御手段34へと送信され、盗難警報設定時間か否かの判断がなされる。
警報手段50はブザーまたはスピーカまたはホーンと、ランプまたはライト等で構成される。エンジン始動状態検知手段46でエンジンの始動が検知され、あるいはドア開閉状態検知手段42でドアの開閉が検知された場合に盗難警報設定時間であったときは、警報を発し、例えば、ホーンが鳴り、ライトが点灯するように構成されている。このように、盗難警報設定時間内に不審者によってエンジンが始動され、あるいはドアが開閉された場合は、位置情報検知手段(GPS)38で検知された位置情報が前記携帯端末20へと送信され、警報手段50によって異常の発生が周囲に報知される。
【0034】
次に、別実施例に係る農作業機制御システム10の動作について、図5を用いて説明する。図5は図4に示す制御システムの実施例2に係るフローチャート図である。
まず、ステップS1において、農作業機30を使用しない時間(盗難警報設定時間)を設定する。つまり、コンバインや田植機等の農作業機30は早朝や夜間は作業をすることはなく、また、トラクタは夕方から夜にかけて作業をすることはあるが、深夜は作業することがない。そこで、農作業機毎に作業をしない時間を設定する。但し、コンバインや田植機は作業する時期も限られるので、月日を設定することも可能である。この時間設定は携帯端末20の入力部22、または、農作業機30の入力手段40により入力する。
次に、ステップS2において、盗難防止システムがONされているか判断する。盗難防止システムのON(作動)、OFF(解除)は、使用者が携帯端末20の入力部22、または、農作業機30の入力手段40の操作により予め設定されている。この盗難防止システムは、作業終了時や格納時において点検や整備等を行う時や移動時等で解除し、その他の時は作動させておく。この判定が「NO」であれば(盗難システムがONされていなければ)、再びステップS2に戻る。判定が「YES」であれば(盗難システムがONされていれば)、ステップS3に進む。
ステップS3においては、エンジンが始動されてエンジン出力部48でエンジン始動情報が検知されたか否かを判断する。この判定が「NO」であれば(エンジン始動情報が検知されていなければ)、再びステップS3に戻る。判定が「YES」であれば(エンジン始動情報が検知されていれば)、ステップS4に進む。
ステップS4においては、現在の時間を設定時間制御手段34に送信する。
次に、ステップS5において、現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内か否かを判断する。判定が「YES」であれば(現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内であれば)、エンジンの始動は正規ではないもの、つまり、盗難の可能性があるとして扱われ、ステップS6に進む。判定が「NO」であれば(現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内でなければ)、エンジンの始動は正規のものとして扱われ、一連の処理を終了する。
即ち、盗難防止システムが作動している状態でエンジンが始動されると、エンジン出力部48に配置したエンジン始動状態検知手段46がONとなりその信号が農作業機制御手段31に送信され、現在の時間が設定時間制御手段34に送信されるのである。この設定時間制御手段34において、現在の時間が盗難警報設定時間内にない場合は、作業時間帯であるので、警報を発することなく走行したり作業したりすることが可能となる。
【0035】
次に、ステップS6において、警報が発せられる。つまり、ブザーまたはホーンが鳴らされて、警報ランプが点滅される。但し、警報の手段は限定するものではなく、音声で警報することも可能である。なお、誤って盗難防止システムを解除することなくメンテナンス等のためにエンジンを始動させ、警報が発せられた場合には、入力手段40または携帯端末20を用いて盗難防止システムを解除する。この入力手段40で解除する場合、簡単に解除ができないように、パスワードを設定したり、別のキーを用いたり、他の操作と連動させて解除できるようにする。
そしてステップS7において、この警報の作動と同時に、位置情報検知手段(GPS)38が作動されて農作業機30が現在位置している位置情報が検知される。
次にステップS8において、この位置情報が農作業機30の通信手段32により携帯端末20に送信される。なお、この盗難防止システムは解除されるまで、所定時間毎に作動させることで、移動中であっても追跡することが可能となる。また、警報を所定時間ごとに所定時間発することで、長い時間警報を作動させることができる。
一方、位置情報が送信された携帯端末20は表示部23に、地図上で位置情報を表示させるとともに、該位置情報を記憶部24に格納する。ここで、使用者は表示部23に表示された位置情報を確認することで、使用者が農作業機30を格納した位置以外であると、盗まれたとして、警察に通報し、位置情報に基づいて追跡することができ、容易に取り戻すことができる。
【0036】
上記のように、携帯端末20と通信する通信手段32を備える農作業機30において、機体の位置情報を検知する位置情報検知手段(GPS)38と、エンジンの始動状態を検知するエンジン始動状態検知手段46と、前記携帯端末20または農作業機30で盗難警報設定時間を設定し、エンジンが始動したときに、盗難警報設定時間内であるか否かを判断する設定時間制御手段34とを備え、該設定時間制御手段34で盗難警報設定時間内であると判断された場合、そのとき検知された前記位置情報が前記携帯端末20に送信され、警報が報知される。
【0037】
これにより、盗難警報設定時間内に農作業機30のエンジンが始動され、農作業機30が盗難されそうになった場合、遠隔地にいてもその発生を検知することができ、また農作業機30の周囲にその発生を知らせることができるので、即時に追跡等が行え、農作業機30の盗難を未然に防止できる。
【0038】
次に、別実施例に係る農作業機制御システム10の動作について、図6を用いて説明する。図6は図4に示す盗難防止制御システムの実施例3に係るフローチャート図である。なお本実施例において説明する農作業機制御システム10の動作において、実施例2と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
まず、ステップS1において、実施例2と同様に農作業機30を使用しない時間(盗難警報設定時間)を携帯端末20の入力部22、または、農作業機30の入力手段40により設定する。
次に、ステップS2において、盗難防止システムがONされているか判断する。この判定が「NO」であれば(盗難システムがONされていなければ)、再びステップS2に戻る。判定が「YES」であれば(盗難システムがONされていれば)、ステップS3に進む。
ステップS3においては、ドア開閉状態検知手段42によりドア開閉情報が検知されたか否かを判断する。この判定が「NO」であれば(ドア開閉情報が検知されていなければ)、再びステップS3に戻る。判定が「YES」であれば(ドア開閉情報が検知されていれば)、ステップS4に進む。
ステップS4においては、現在の時間を設定時間制御手段34に送信する。
次に、ステップS5において、現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内か否かを判断する。判定が「YES」であれば(現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内であれば)、ドアの開閉は正規ではないもの、つまり、盗難の可能性があるとして扱われ、ステップS6に進む。判定が「NO」であれば(現在の時刻がステップS5で検知した盗難警報設定時間内でなければ)、ドアの開閉は正規のものとして扱われ、一連の処理を終了する。
即ち、盗難防止システムが作動している状態でドアが開閉されると、ドア44に配置したドア開閉状態検知手段42がONとなりその信号が農作業機制御手段31に送信され、現在の時間が設定時間制御手段34に送信されるのである。この設定時間制御手段34において、現在の時間が盗難警報設定時間内にない場合は、作業時間帯であるので、警報を発することなく走行したり作業したりすることが可能となる。
【0039】
次に、ステップS6において、警報が発せられる。つまり、ブザーまたはホーンが鳴らされて、警報ランプが点滅される。
そしてステップS7において、この警報の作動と同時に、位置情報検知手段(GPS)38が作動されて農作業機30が現在位置している位置情報が検知される。
次にステップS8において、この位置情報が農作業機30の通信手段32により携帯端末20に送信される。
一方、位置情報が送信された携帯端末20は表示部23に、地図上で位置情報を表示させるとともに、該位置情報を記憶部24に格納する。ここで、使用者は表示部23に表示された位置情報を確認することで、使用者が農作業機30を格納した位置以外であると、盗まれたとして、警察に通報し、位置情報に基づいて追跡することができ、容易に取り戻すことができる。
【0040】
上記のように、携帯端末20と通信する通信手段32を備える農作業機30において、機体の位置情報を検知する位置情報検知手段(GPS)38と、運転操作部の乗降口に配置したドア44の開閉状態を検知するドア開閉状態検知手段42と、前記携帯端末20または農作業機30で盗難警報設定時間を設定し、ドア44が開閉したときに、盗難警報設定時間内であるか否かを判断する設定時間制御手段34とを備え、該設定時間制御手段34で盗難警報設定時間内であると判断された場合、そのとき検知された前記位置情報が前記携帯端末20に送信され、警報が報知される。
【0041】
これにより、盗難警報設定時間内に農作業機30のドアが開閉され、農作業機30が盗難されそうになった場合、遠隔地にいてもその発生を検知することができ、また農作業機30の周囲にその発生を知らせることができるので、即時に追跡等が行え、農作業機30の盗難を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の作業車両に係る作業車両制御システムのブロック構成図。
【図2】本実施例に係る作業車両制御システムのフローチャート図。
【図3】本実施例に係る作業パターン制御システムのフローチャート図。
【図4】別実施例に係る農作業機制御システムのブロック構成図。
【図5】図4に示す制御システムの実施例2に係るフローチャート図。
【図6】図4に示す制御システムの実施例3に係るフローチャート図。
【符号の説明】
【0043】
10 農作業機制御システム
20 携帯端末
30 農作業機
110 作業車両制御システム
120 携帯端末
130 作業車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末と通信する通信手段と、
携帯端末から入力した認証コードと予め記憶させた認証コードとに基づいて認証処理を行うコード認証手段を備えた作業車両であって、
電源のON/OFFを制御する制御手段を備え、
前記コード認証手段が前記携帯端末からの認証コードを認証すると、前記電源をONすることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記携帯端末及び前記作業車両に作業パターンの記憶手段を備え、作業者に合った作業パターンで作業機を作動可能に構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記携帯端末は作業機の遠隔操作手段を備えることを特徴とする作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−220337(P2008−220337A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67579(P2007−67579)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】