説明

作業車両

【課題】本発明の課題は、作物の先端部を切断処理する摘心装置を、対地面に対して略平行姿勢で昇降する昇降リンク機構部に装備することによって、摘心作業を能率良く行うことを課題とする。
【解決手段】本発明は、走行車体の前部に装着され、昇降シリンダにより対地面対して略平行姿勢で昇降する昇降リンク機構部に作物の先端部を切断処理する作業用カッターを駆動可能に装備してあることを特徴とする作業車両の構成とする。また、昇降リンク機構部には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズルを装備した散布ブームランスからなる薬液散布装置を作業用カッターの後方に備えてあることを特徴とする作業車両の構成とする。また、作業用カッター及び散布ノズルは、水平基準線より上下角度の回動範囲をもつて角度調整可能に構成したことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走しながら大豆の摘心作業や防除作業が行える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成育した大豆の茎の最上端部を剪定する摘心手段を備えた歩行型剪定機は、例えば、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−267018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、作物の先端部を切断処理する摘心装置を、対地面に対して略平行姿勢で昇降する昇降リンク機構部に装備することによって、摘心作業を能率よく行い、摘心作業用カッターの切断作用高さを自由に調整でき、また、昇降リンク機構の利用によって別の作業装置の装着容易化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、走行車体(1)の前部に装着され、昇降シリンダ(8)により対地面対して略平行姿勢で昇降する昇降リンク機構部(9)に作物の先端部を切断処理する作業用カッター(10)を駆動可能に装備してあることを特徴とする作業車両としたものである。
【0006】
自走しながら圃場の作物に対して左右に往復動する作業用カッター(10)が作用し、作物の先端部が適宜の位置で切断処理される。昇降シリンダ(8)の操作で昇降リンク機構(9)を上下に昇降することによって作物先端部の切断位置を任意に変更調節することができる。この場合、昇降リンク機構(9)は、対地面に対して略平行姿勢を保って昇降するため、カッターの作用角は略一定に保持することができ、切断処理が確実に行える。
【0007】
請求項2記載の本発明は、前記昇降リンク機構部(9)には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズル(13)を装備した散布ブームランス(15)からなる薬液散布装置(16)を前記作業用カッター(10)の後方に備えてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両としたものである。
【0008】
作物先端部の摘心作業を行いながら、作物に対する薬液散布が同時に行える。摘心作業と防除(薬液散布)作業の複合作業が行えるので作業効率が大幅に向上するものとなる。
請求項3記載の本発明は、前記作業用カッター(10)及び散布ノズル(13)は、水平基準線(H)より上下角度(α)の回動範囲をもつて角度調整可能に構成したことを特徴とする請求項2記載の作業車両としたものである。
【0009】
作物の状況に応じて作業用カッター(10)の角度を変えて作業を行うことで、作業効率が向上するものとなる。
【発明の効果】
【0010】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、作物に対する摘心作業を能率よく行うことができ、摘心作業用カッターの対地高さを自由に変更調節することができるので、適正な摘心位置にて作物先端部を切断することができる。また、上下に平行移動する昇降リンク機構を採用することによって別の作業装置の装着が容易にできる。
【0011】
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、摘心作業と防除作業の複合作業が同時に行え、作業効率が大幅に向上するものとなった。
請求項3の本発明によれば、請求項2の発明効果を奏するものでありながら、作物の状況に応じて作業用カッターの角度を変えることで、効率良く摘心作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】摘心作業用カッター及び薬液散布装置を備えた乗用作業車両の側面図
【図2】同上平面図
【図3】カッター部の駆動構成を示す斜視図
【図4】図1要部の拡大側面図
【図5】別実施例の要部の拡大側面図
【図6】同上要部の側面図
【図7】図1とは別実施例の要部の側面図
【図8】同上別実施例の要部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、乗用作業車両示すものであり、この車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力を走行ミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。機体後部側中央に運転席5が、その前方にはステアリングハンドル6が装備されている。
【0014】
車体1の前方側には、昇降シリンダ8の伸縮作動により対地面対して略平行姿勢を保って昇降する昇降リンク機構9が装備されている。昇降リンク機構9には、作物の先端部を切断処理するバリカン式の摘心作業用カッター10が油圧モータ11によって駆動可能に装備されている。
【0015】
また、前記昇降リンク機構9部には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズル13、散布ホース14、散布ブームランス15等を有した薬液散布装置16が備えられている。機体後部に搭載された薬液タンク18内の薬液は、ポンプにより散布ホ−ス14を通じて散布ノズル13から噴出されるようになっている。
【0016】
前記昇降リンク機構9は、回動軸芯Q1,Q2を支点として上下動する上リンク9uと下リンク9dと前リンク(フレーム)9f等からなる。
摘心作業用カッター10は、図3にも示すように、固定受刃10aと左右に往復動する可動刈刃10bとからなり、そして、可動刈刃10bは、偏心軸12を有した油圧モータ11にて駆動する構成であり、可動刈刃10aと一体化したU型プレート10cに前記偏心軸12を係合させた構成としている。カッターを駆動する油圧モータ11の配置は、散布ブームランス15の左右いずれか一方側端部に設置することで、カッターの駆動構成が上記のように簡潔となる。
【0017】
また、かかる実施例では、油圧モータ11への油圧ホース17は、ブーム水平シリンダ19への油圧ホース20を付け替えて使用できるように共通化した構成としている。これによると、摘心装置専用の油圧ギヤポンプや油圧ホース等油圧配管する必要がなく、合理的で低コストの構成とすることができる。なお、油圧モータへの油圧ホースの取り付けは、ワンタッチカプラ17a方式とし、ワンタッチで着脱できる構成としている。
【0018】
また、カッター10の左右刈取幅は機体幅(前後輪の左右幅)より両外側方へ広くすることによって作物の摘心作業残しがなくなり、作業能率が向上する。なお、カッター10の刈刃面は、機体進行方向と略直交する横方向に設けることで、作物の刈刃への入り込みが良くなり、切断精度が向上する。
【0019】
カッター10の固定受刃10aは、散布ブームランス15の前側で支持ステー22を介して装着支持するように構成することで、カッターの支持構成が簡単で容易にでき部品点数も少なくなるメリットがある。カッター10の支持高さは、運転席に着座するオペレータよりカッターの刃先が見える位置に配置しておくと、作物先端部の摘心位置が決め易くなる。
【0020】
散布ノズル13を有した散布ブームランス15と一体的に設けた作物の摘心作業用カッター10において、散布ブームランス15の後方近くに左右方向に横たわる横軸23を架設し、摘心作業用カッター10と散布ブームランス15が一体的に横軸23を支点として回動できる構成としている。
【0021】
これにより、カッター10の作物に対する作用角度(進入角度)θ(図4)を任意に決定でき、最も切断性能が良好な切断角度を決定することができる。また、薬液の散布作業時においても噴霧角を任意に決定でき、作物の内部まで薬液が進入でき、よりよい防除効果を得ることができる。
【0022】
また、カッター10及び散布ノズル13は、水平基準線Hより上下αの回動範囲をもつて角度調整できる構成としている。例えば、大豆の摘心作業を行う場合には、カッターがやや前方下向きとなるように角度設定し、散布作業を行う際には、散布ノズルがやや斜め前方下向きとなるように角度設定することで、両作業とも最適な角度設定が行えるようにしている。
【0023】
カッター10の角度調節は、カッター位置より上方に配した調節ハンドル24の回動操作で、伸縮可能なアジャスタ25を介して行えるように構成してあり、そして、この調節ハンドル24は、カッターの先端より前方に突出しない位置に配置することによって、ハンドル操作時に手がカッター先端に当たらないようにしている。
【0024】
また、調節ハンドル24及びアジャスタ25は、カッター位置より上方に配置することによって調節時に作物との干渉がなくなり、ハンドル操作が容易に行える。
なお、摘心作業用カッターの角度調節手段の別実施例として、図5に示すように、縦フレーム(リンク)9fに装着されたブーム支持フレーム21と、該フレーム21から前方に突設する左右の連結部材26,26を介して連結支持される散布ブームランス15との間に、カッターと散布ブームランスの回動支点である横軸23を設けた構成のものにおいて、散布ブームランス15とブーム支持フレーム21との間を油圧シリンダ27で連結し、運転席近くに設ける遠隔操作スイッチの操作で油圧シリンダ27を伸縮作動させ、カッターの角度調節を遠隔操作できるように構成することもできる。
【0025】
カッター10及び散布ノズル13の角度調節において、作物の摘心作業時には、カッター10を図5に示すようにやや前方下向きに角度設定し、作物への散布作業時には、散布ノズル13を図6に示すようにやや斜め前方下向きに角度設定する。かかる角度調節は前記油圧シリンダ27による油圧操作にて遠隔操作することができる。
【0026】
次に、図7に示す実施例について説明する。
図示の構成は、前方側に散布ノズル13を有した散布ブームランス15の後方に摘心作業用カッター10を配置した構成としている。大豆の摘心作業時に、散布ブームランス15で作物の茎葉部を進行方向前方に向けて傾斜させ、散布ブームランスの下面を通過後、茎葉部の戻り力(跳ね返り力)を利用して刃先への食い込みを良くし、切断性能を高めるようにしている。
【0027】
また、上記構成において、散布ブームランスとカッターとの高さ方向の距離を変更できるように、散布ブームランス15又はブーム支持フレーム21に対してカッター10を上下調節できるように構成しておくと、茎葉部の跳ね返り力を生かした最適な切断位置を決定することができる。
【0028】
このような構成の散布ブームランスとカッターを上下に平行移動する昇降リンク機構9部に設置することで、昇降リンクの昇降によりブームランスでの茎葉部の押す位置を決めることができ、カッターの上下調節機能により常に適正位置を切断することが可能となる。
【0029】
図8に示す実施例では、昇降リンク機構9の前面に設けた前フレーム9fに、ブーム支持フレーム21をローリング軸30を介して左右ローリング自在に装着し、ブーム支持フレーム21と前フレーム9fを自動水平シリンダ31にて連結し、そして、このローリング可能なブーム支持フレーム21に散布ブームランス15と摘心作業用カッター10を装備した構成としている。ブーム支持フレームは、機体が傾いても水平状態を保持するので、作物の摘心位置が正確に決まり、所定位置で確実に摘心することができる。
【0030】
また、変形例として、スロープ(傾斜)センサ32は、カッター部を除くブーム支持フレーム21又は散布ブームランス15上面に設けておくと、機体の傾きに対して、その都度オペレータがカッターのローリング角度を修正しなくても良いので、操作性が向上する。
【0031】
なお、上記スロープセンサ32は、角速度センサと一体化した構成とし、制御の優先順序として、より応答性の高い角速度センサを優先させ、機体傾斜による角速度を検出し、刈刃の自動水平性能を高めるようにしている。
【符号の説明】
【0032】
α 上下角度
H 水平基準線
1 走行車体
8 昇降シリンダ
9 昇降リンク機構
10 作業用カッター
13 散布ノズル
15 散布ブームランス
16 薬液散布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の前部に装着され、昇降シリンダ(8)により対地面対して略平行姿勢で昇降する昇降リンク機構部(9)に作物の先端部を切断処理する作業用カッター(10)を駆動可能に装備してあることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記昇降リンク機構部(9)には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズル(13)を装備した散布ブームランス(15)からなる薬液散布装置(16)を前記作業用カッター(10)の後方に備えてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業用カッター(10)及び散布ノズル(13)は、水平基準線(H)より上下角度(α)の回動範囲をもつて角度調整可能に構成したことを特徴とする請求項2記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−41481(P2011−41481A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190006(P2009−190006)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】