作業車
【課題】 旋回走行の際、前車輪に掛かった抵抗に対応した適切なタイミングで前輪変速装置が前輪増速状態に切り換え操作されるようにする。
【解決手段】 前車輪が後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段51が非検出状態にあると、制御手段50が前輪変速装置20を標準状態に切り換え操作し、前輪変速装置20が前車輪を後車輪と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動する。前輪検出手段51が検出状態になると、制御手段50が前輪変速装置20を前輪増速状態に切り換え操作し、前輪変速装置20が前車輪を後車輪よりも高速で駆動する。
【解決手段】 前車輪が後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段51が非検出状態にあると、制御手段50が前輪変速装置20を標準状態に切り換え操作し、前輪変速装置20が前車輪を後車輪と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動する。前輪検出手段51が検出状態になると、制御手段50が前輪変速装置20を前輪増速状態に切り換え操作し、前輪変速装置20が前車輪を後車輪よりも高速で駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車において、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
すなわち、前車輪1の周速度と後車輪2の周速度とを等しくする等速駆動状態や、前車輪1の周速度を後車輪2の周速度よりも増速させる増速駆動状態を現出する前輪変速装置Aを設け、ステアリングハンドル9によってパワーステアリング機構を介して前車輪1を操向操作する操向操作系の操向操作量を計測するステアリングセンサ36を設け、ステアリングセンサ36及びモードスイッチ42に連係された制御装置40を設けるとともに、モードスイッチ42のダイヤル41が倍速位置や、倍速/AD位置に操作されると、制御装置40がステアリングセンサ36による検出情報を基に、前輪変速装置Aの切換弁32の標準ソレノイド32L及び増側ソレノイド32Hを操作するように構成されており、前車輪1を設定角以上に操向操作すれば、前輪変速装置Aが増速駆動状態になって前車輪1を後車輪2よりも高速で駆動し、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップすることを防止や回避しながら旋回走行することができるものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−222044号公報(段落〔0019〕−〔0022〕、〔0028〕、〔0029〕、図3,4,5,7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した如く前車輪の増速駆動が行われる従来の作業車にあっては、特許文献1に示されるように、前車輪の操向角度が設定角未満から設定角度になるように前車輪を操向操作することにより、前車輪が増速駆動状態に切り換わるものであった。
このため、従来、旋回走行する際、走行箇所における土壌硬さなどによっては、前車輪が後車輪によって押された状態になって前輪スリップが発生したり、前車輪が増速駆動状態に切り換わるに伴って変速ショックが発生したりすることがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記のトラブル発生を回避しながら小回り旋回することができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車において、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で左右一対の前車輪を駆動する標準状態と、左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になる状態で左右一対の前車輪を駆動する前輪増速状態とに切り換え自在な前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段が非検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記標準状態になり、前記前輪検出手段が検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記前輪増速状態になるように、前記前輪検出手段による検出情報に基づいて前記前輪変速装置を切り換え操作する制御手段を備えてある。
【0007】
本第2発明にあっては、
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車において、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差が変化するように左右一対の前車輪を変速駆動する前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段による検出情報を基に、前記前輪検出手段が非検出状態になるように前記前輪変速装置を変速操作する制御手段を備えてある。
【0008】
前車輪が横向き側に操向操作された際、殊に圃場では、前車輪の側面がわに土壌抵抗が作用しやすく、走行箇所の土壌硬さなどや前車輪の操向角度によって、前車輪に掛かる抵抗が変化する。そして、前車輪に掛かる抵抗が大になると、前車輪が後車輪によって押された状態になる。
【0009】
本第1発明による作業車では、前車輪が後車輪によって押された状態になると、前輪検出手段が検出状態になり、この検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を前輪増速状態に切り換え操作し、前車輪が後車輪よりも高速で駆動される。
【0010】
本第2発明による作業車では、前車輪が後車輪によって押された状態になると、前輪検出手段が検出状態になり、この検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を変速操作する。すなわち、後車輪による前車輪の押し操作を解消させるべく、前車輪の平均周速度が後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差が変化するように前車輪が変速駆動される。
【0011】
これにより、本第1発明による作業車でも、本第2発明による作業車でも、前車輪が後車輪によって押された状態が発生しなければ、前車輪が如何なる大きさの操向角度に操向操作されていても、前車輪が増速駆動されず、前車輪に掛かる抵抗が小さいにもかかわらず前車輪が増速駆動されて変速ショックが発生するということを防止できる。また、前車輪が後車輪によって押された状態が発生すると、このときの前車輪の操向角度の大きさ如何にかかわらず、前車輪が増速駆動され、前車輪に掛かる抵抗が大きいにもかかわらず前車輪が増速駆動されないで走行抵抗が大になるということを防止できる。
【0012】
従って、本第1発明によっても、本第2発明によっても、前輪検出手段が検出状態になれば前車輪が前輪変速装置によって増速駆動され、前車輪が後車輪によって押されてスリップすることを防止や回避することができるものでありながら、前車輪に掛かる抵抗が小であれば、前車輪の操向角度が大であっても前車輪が増速駆動されないように、かつ、前車輪に掛かる抵抗が大であれば、前車輪の操向角度が小であっても前車輪が増速駆動されるように前車輪の抵抗に応じた適切なタイミングで前輪変速装置が操作され、前輪スリップの防止や回避を精度よく行わせて地面乱れを精度よく防止しながら、かつ、変速ショックが発生しにくくて快適に運転しながら小回り旋回することができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において
前記前輪変速装置は、摩擦クラッチを備えて成り、この摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差を変化させるように構成されている。
【0014】
すなわち、摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって前輪平均周速度と後輪平均周速度の差を変化させるものだから、前輪変速装置を摩擦クラッチが変速手段になった構造簡単なものにしながら、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差を変化させることができる。
【0015】
従って、本第3発明によれは、前輪変速装置が前車輪に掛かる抵抗に応じた適切なタイミングで操作され、前輪スリップの防止や回避を精度よく行わせながら、かつ、変速ショックを発生しにくくしながら小回り旋回することができるものでありながら、構造簡単な前輪変速装置を採用して安価に得ることができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、
前記前車輪の操向状態を検出する操向検出手段を備え、
前車輪が直進向きから横向きに設定角度以上に操向された横向き側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に基づく前記前輪変速装置の変速操作を実行するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動し、
前車輪が直進側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に優先して前記前輪変速装置を前記標準状態に維持操作するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動するように構成してある。
【0017】
すなわち、直進向きやそれに近い向きで走行される際、操向検出手段による検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を標準状態に維持操作し、前車輪が凹部に入り込むなどして前輪検出手段が検出状態になっても、前車輪が増速駆動されないで、左右前輪の平均周速度と左右後輪の平均周速度とが同一又はほぼ同一になった状態が維持され、前車輪が後車輪よりも高速で駆動されて前車輪が空転するなどの事態が発生しなくなる。
【0018】
従って、本第4発明によれば、直進向きやそれに近い向きで走行する際、前輪検出手段が検出状態になっても前後輪が同一又はほぼ同一の速度で駆動され、前車輪が空転して地面や芝面が傷むなどの事態が発生しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
〔第1実施例〕
図1に示すように、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1、左右一対の非操向型の駆動自在な後車輪2、車体前部に位置するエンジン3が装備された原動部、車体後部に位置する運転座席4が装備された運転部を備えた自走車体の車体後部を構成している後部ミッションケース5の両横側に、リフトアーム6を上下に駆動揺動自在に設け、前記後部ミッションケース5の後部に動力取り出し軸7を設けて、トラクタを構成してある。
【0020】
このトラクタは、車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を左右一対のリフトアーム6が利用されたリンク機構8によって昇降操作するように構成して連結するとともに、エンジン3の駆動力を動力取り出し軸7からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成したり、車体の前後輪間に草刈装置(図示せず)を連結するとともに、エンジン3の駆動力を後部ミッションケース5から草刈装置に伝達するように構成して、乗用型草刈機を構成するなど、各種の作業装置を駆動自在に連結して各種の作業車を構成するものである。
【0021】
図2に示すように、前記エンジン3の出力軸からの駆動力を、主クラッチ10及び回転伝動軸11を介して前記後部ミッションケース5の内部に位置する走行トランスミッション12に入力し、この走行トランスミッション12の後輪用出力を、後部ミッションケース12の内部に位置する後輪差動機構13を介して左右の後車輪2に伝達するように構成してある。前記走行トランスミッション12の前輪用出力を、回転伝動軸14を介して前輪変速装置20に入力し、この前輪変速装置20の出力を、回転伝動軸15及び前輪差動機構16を介して左右の前車輪1に伝達するように構成してある。
【0022】
図4,5に示すように、前記前輪変速装置20は、主クラッチハウジング10aの下部に主クラッチハウジング10aとの一体部品に鋳造されたケース本体21aを有した変速ケース21、この変速ケース21の内部に車体上下方向に並べて回転自在に支持された入力軸22、中間軸23、出力軸24、前記入力軸22の後端側に一体回転自在に連結している大径ギヤ25に噛み合った状態にして前記中間軸23の後端側に相対回転自在に支持されている増速ギヤ26、前記入力軸22の前端側に一体回転自在に連結している小径ギヤ27に噛み合った状態にして前記中間軸23の前端側に相対回転自在に支持されている標準速ギヤ28、前記中間軸23の中間部に位置するスプライン部にクラッチボディ41が一体回転自在に連結されている摩擦クラッチ40、前記クラッチボディ41の連結筒部41aの外周面側に支持されたクラッチギヤ30、前記中間軸23の前端部に位置するスプライン部に一体回転自在に支持された伝動ギヤ31、この伝動ギヤ31に噛み合った状態にして出力軸24に一体回転自在に連結されている伝動ギヤ32を備えて構成してある。
【0023】
図5に明示するように、前記摩擦クラッチ40は、前記中間軸23の前記増速ギヤ26に一体回転自在に連設した入力回転体42、前記クラッチボディ41、このクラッチボディ41と前記入力回転体42の間に設けた多板式の摩擦クラッチ機構43、クラッチボディ41の内部に中間軸23に摺動自在に外嵌した状態で設けた油圧ピストン44、この油圧ピストン44をクラッチ切り側に摺動付勢するように構成してクラッチボディ41の内部に設けたクラッチばね45を備えて構成してある。
【0024】
クラッチボディ41の連結筒部41aに支持された前記クラッチギヤ30は、クラッチボディ41の連結筒部41aに対してスプライン係合によって一体回転及び摺動自在に係合しており、かつ、クラッチボディ41の周方向での複数箇所においてクラッチボディ41を摺動自在に貫通している連結軸33を介して前記油圧ピストン44に一体移動自在に連結されている。
【0025】
前記油圧ピストン44に対して圧油を給排する操作油路47を中間軸23の内部に設けるとともに、この操作油路47に接続された変速バルブ48を変速ケース21に設けてある。
【0026】
すなわち、前輪変速装置20は、変速バルブ48が切り換え操作されることにより、左右前輪1を左右後輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動する標準状態と、左右前輪1を左右後輪2の約2倍の周速度で回動するように左右後輪2よりも増速して駆動する前輪増速状態とに変速される。
【0027】
つまり、図6に示すように、変速バルブ48が増速状態に切り換え操作されると、変速バルブ48から操作油路47に油圧が供給され、油圧ピストン44がクラッチばね45に抗して入力回転体42の方に摺動操作されて摩擦クラッチ機構43を入り状態に押圧操作し、摩擦クラッチ40が入り状態になる。これとともに、油圧ピストン44が各連結軸33を介してクラッチギヤ30を摺動操作し、クラッチギヤ30のクラッチ爪を標準速ギヤ28のクラッチ爪28aから外し操作する。すると、前輪変速装置20は、入力軸22の駆動力を大径ギヤ25、増速ギヤ26、摩擦クラッチ40、中間軸23、伝動ギヤ31、伝動ギヤ32を介して出力軸24の後端側に伝達し、出力軸24の前端側から前記回転軸伝動軸15に出力するように、かつ、大径ギヤ25と増速ギヤ26による増速伝動により、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になる状態に出力するように前輪増速状態になる。
【0028】
これに対し、図5に示すように、変速バルブ48が標準状態に切り換え操作されると、油圧ピストン44の油圧が操作油路47から変速バルブ48に排出され、油圧ピストン44がクラッチばね45によってクラッチボディ41の方に摺動操作されて摩擦クラッチ機構43の圧接操作を解除し、摩擦クラッチ40が切り状態になる。これとともに、油圧ピストン44が各連結軸33を介してクラッチギヤ30を標準速ギヤ28の方に摺動操作して、クラッチギヤ30のクラッチ爪を標準速ギヤ28のクラッチ爪28aに係合操作する。すると、前輪変速装置20は、入力軸22の駆動力を小径ギヤ27、標準速ギヤ28、クラッチギヤ30、クラッチボディ41、中間軸23、伝動ギヤ31、伝動ギヤ32を介して出力軸24の後端側に伝達し、出力軸24の前端側から回転伝動軸15に出力するように、かつ、小径伝動ギヤ27と標準速ギヤ28による伝動により、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で出力するように標準状態になる。
【0029】
図7に示すように、前輪変速装置20の前記変速バルブ48の電磁操作部48aに制御手段50を連係させるとともに、この制御手段50には、前輪検出手段51及び操向検出手段52も連係させてある。
【0030】
図4に示すように、前輪検出手段51は、感圧センサによって構成してあり、この感圧センサは、前輪駆動ケース60の中間部を車体前後向きのローリング軸芯Xまわりで回動自在に支持するように構成して車体フレーム(図示せず)に設けられた前後一対の支持体61のうちの前輪駆動ケース60よりも車体後方側に位置する支持体61に設けてある。
前輪駆動ケース60は、両端側で前車輪1を駆動回動自在に支持しており、前車輪1に土壌による移動抵抗が作用するなどして前車輪1が後車輪2によって車体前方向きに押された状態になると、感圧センサに前輪駆動ケース60からの設定力以上の押圧反力が作用し、感圧センサが感圧作動する。これにより、前輪検出手段51は、前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、このことを検出し、この検出結果を電気信号にして制御手段50に出力する。
【0031】
図3に示すように、操向検出手段52は、ピットマンアーム62に操作部が連動されたポテンショメータによって構成してある。ピットマンアーム62は、パワーステアリング装置63を介してステアリングホィール64に連動されており、このステアリングホィール64が回転操作されると、パワーステアリング装置63によって揺動操作され、タイロッド65を介して左右前輪1のナックルアーム66を揺動操作して各前車輪1を前輪駆動ケース60に対して揺動するように操向操作する。これにより、操向検出手段52は、ピットマンアーム62の揺動位置を基に、前車輪1が直進側操向状態や横向き側操向状態に操向操作されたことを検出し、この検出結果を電気信号にして制御手段50に出力する。
【0032】
操向検出手段52によって検出される前車輪1の直進側操向状態としては、前車輪1が直進向きの操向姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから左横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角度(10〜15度)未満である左横向き姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから右横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角度(10〜15度)未満である右横向き姿勢になった操向状態を設定してある。操向検出手段52によって検出される前車輪1の横向き側操向状態としては、前車輪1が直進向きから左横向き側に設定角度(10〜15度)以上揺動した左横向き姿勢になった操向状態、及び、前車輪1が直進向きから右横向き側に設定角度(10〜15度)以上揺動した右横向き姿勢になった操向状態を設定してある。
【0033】
制御手段50は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、前輪検出手段51及び操向検出手段52の検出情報を基に、図8に示す如く作動する。
【0034】
すなわち、制御手段50は、操向検出手段52による検出情報を基に、前車輪1が直進側操向状態にあるか否かを判断し、前車輪1が直進側操向状態にあると判断した場合、前輪検出手段51の検出結果如何にかかわらず前輪変速装置20が標準状態になるように前輪検出手段51の検出情報に優先して前輪変速装置20を標準状態に維持操作する。前車輪1が横向き側操向状態にあると判断した場合、前輪検出手段51が検出状態にあるか否かを判断し、前輪検出手段51が検出状態ではないと判断した場合、変速バルブ48を標準状態に切り換え操作して前輪変速装置20を標準状態に変速操作し、前輪検出手段51が検出状態にあると判断した場合、変速バルブ48を増速状態に切り換え操作して前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作する。
【0035】
つまり、圃場端部で旋回走行させるなど、前車輪1を直進向きから左向きや右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作して旋回走行する際、前車輪1の直進向きから横向き側への操向角度が大になるほど、前車輪1に土壌などによって掛かる抵抗がより大になる。しかし、前車輪1に掛かる抵抗が小さくて前車輪1が後車輪2によって押された状態になっていない間は、前輪検出手段51が非検出状態になっていて制御手段50が前輪変速装置20を標準状態に維持操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように左右前輪1が後車輪2と同速又はほぼ同速で駆動されて旋回走行していく。前車輪1に掛かる抵抗が大きくなって前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、前輪検出手段51が検出状態になって制御手段50が前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるように左右前輪1が増速駆動され、前車輪1の抵抗や操向角度にかかわらず、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップする事態を防止や回避しながら旋回走行することができる。
【0036】
前車輪1を直進向きに操向操作して、又は、直進向きから左横向きや右横向き側に設定角度(10〜15度)未満で揺動した状態に操向操作して走行する際、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように左右前輪1が後車輪2と同速度又はほぼ同速度で駆動されて走行していく。また、この走行の際、操向検出手段52の検出情報を基に、制御手段50が前輪検出手段51による検出情報に優先して前輪変速装置20を標準状態に維持操作しており、前車輪1が凹部に入り込むなどして前輪検出手段51が検出状態になることがあっても、前輪変速装置20が標準状態に維持されて前車輪1が後車輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動され、前車輪1が後車輪2よりも高速で駆動された前車輪1が空転するなどの事態を発生しないようにしながら走行することができる。
【0037】
前記走行トランスミッション12に、前進2段と後進1段の3段階に変速自在な主変速ギヤミッション12a、高、中、低の3段階に変速自在な副変速ギヤミッション12bを設け、主変速ギヤミッション12aと副変速ギヤミッション12bの変速段の組み合わせにより、図9の如き走行速度Vが現出されるようになっている。
【0038】
すなわち、副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘やあぜ塗り用の走行速度V=0.5km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘用の走行速度V=0.9km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘用の走行速度V=1.3km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、代掻き用の走行速度V=2.3km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=7.9km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、移動用の走行速度V=14.0km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=0.5km/hの後進速度が現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=1.3km/hの後進速度が現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=7.9km/hの後進速度が現出される。
【0039】
〔第2実施例〕
図10は、別の実施構造を備えたトラクタの前輪変速システムを示し、この前輪変速システムにあっては、前輪変速装置20の変速バルブ48に連係されたパルス制御回路53を備えている。
【0040】
パルス制御回路53は、変速バルブ48の電磁操作部48aにパルス信号を出力して変速バルブ48を増速状態に切り換え操作することにより、前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、かつ、変速バルブ48に出力するパルス信号のデューティ比を変更することにより、変速バルブ48を増速状態に間欠的に切り換え操作して前輪変速装置20の摩擦クラッチ40を入り状態に間欠的に切り換え操作するとともに摩擦クラッチ40を入り状態と切り状態に切り換える間隔を変更する。これにより、前輪変速装置20は、前輪増速状態に切り換え操作された際、前輪増速状態に間欠的に切り換わることにより、かつ、標準状態と前輪増速状態とに切り換わる間隔が変更されることにより、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるようにして、かつ、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差が変化するようにして左右前輪1を駆動する。
【0041】
図11に示すように、この前輪変速システムの制御手段54は、操向検出手段52による検出情報を基に、前車輪1が横向き側操向状態にあると判断し、かつ、前輪検出手段51が検出状態にあると判断した場合、前輪検出手段51による検出結果を基に、後車輪2による前輪押し操作の押し強さを算出し、算出前輪押し強さが大であるほど前輪変速装置20の摩擦クラッチ40が入り状態になっている時間がより長くなるように、算出前輪押し強さに基づいて変速バルブ48をデューティ制御して、前輪検出手段51が非検出状態になるように前輪変速装置20を変速操作する。
【0042】
つまり、前車輪1を直進向きから左向きや右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作して旋回走行する際、前車輪1に掛かる抵抗が小さくて前車輪1が後車輪2によって押された状態にならない間は、前輪検出手段51が非検出状態になっていて制御手段54が前輪変速装置20を標準状態に維持操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように前車輪1が後車輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動されて旋回走行していく。
前車輪1に掛かる抵抗が大きくなって前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、前輪検出手段51が検出状態になって制御手段54が算出前輪押し強さに基づいて前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、後車輪2による前車輪1の押し強さが大であるほど、左右前輪1の平均周速度と左右後輪2の平均周速度の差がより大になるように前車輪1が増速駆動され、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップする事態を防止や回避しながら旋回走行することができる。前車輪1を直進向きから左向きは右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作していても、前輪検出手段51が非検出状態になると、制御手段54が前輪変速装置20を標準状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度と左右後輪2の平均周速度とが同一又はほぼ同一になるように前車輪1の増速駆動が停止される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】トラクタ全体の側面図
【図2】走行用伝動装置の概略図
【図3】前輪操向操作装置の概略図
【図4】前輪変速装置配置部の断面図
【図5】前輪変速装置の標準状態での断面図
【図6】前輪変速装置の前輪増速状態での断面図
【図7】前輪変速装置の操作系のブロック図
【図8】前輪変速装置操作のフロー図
【図9】走行トランスミッションの変速段と走行速度の関係を示す説明図
【図10】別の実施構造を備えた前輪変速システムのブロック図
【図11】別の実施構造を備えた前輪変速システムのフロー図
【符号の説明】
【0044】
1 前車輪
2 後車輪
20 前輪変速装置
40 摩擦クラッチ
50,54 制御手段
51 前輪検出手段
52 操向検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車において、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
すなわち、前車輪1の周速度と後車輪2の周速度とを等しくする等速駆動状態や、前車輪1の周速度を後車輪2の周速度よりも増速させる増速駆動状態を現出する前輪変速装置Aを設け、ステアリングハンドル9によってパワーステアリング機構を介して前車輪1を操向操作する操向操作系の操向操作量を計測するステアリングセンサ36を設け、ステアリングセンサ36及びモードスイッチ42に連係された制御装置40を設けるとともに、モードスイッチ42のダイヤル41が倍速位置や、倍速/AD位置に操作されると、制御装置40がステアリングセンサ36による検出情報を基に、前輪変速装置Aの切換弁32の標準ソレノイド32L及び増側ソレノイド32Hを操作するように構成されており、前車輪1を設定角以上に操向操作すれば、前輪変速装置Aが増速駆動状態になって前車輪1を後車輪2よりも高速で駆動し、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップすることを防止や回避しながら旋回走行することができるものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−222044号公報(段落〔0019〕−〔0022〕、〔0028〕、〔0029〕、図3,4,5,7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した如く前車輪の増速駆動が行われる従来の作業車にあっては、特許文献1に示されるように、前車輪の操向角度が設定角未満から設定角度になるように前車輪を操向操作することにより、前車輪が増速駆動状態に切り換わるものであった。
このため、従来、旋回走行する際、走行箇所における土壌硬さなどによっては、前車輪が後車輪によって押された状態になって前輪スリップが発生したり、前車輪が増速駆動状態に切り換わるに伴って変速ショックが発生したりすることがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記のトラブル発生を回避しながら小回り旋回することができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車において、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で左右一対の前車輪を駆動する標準状態と、左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になる状態で左右一対の前車輪を駆動する前輪増速状態とに切り換え自在な前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段が非検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記標準状態になり、前記前輪検出手段が検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記前輪増速状態になるように、前記前輪検出手段による検出情報に基づいて前記前輪変速装置を切り換え操作する制御手段を備えてある。
【0007】
本第2発明にあっては、
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車において、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差が変化するように左右一対の前車輪を変速駆動する前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段による検出情報を基に、前記前輪検出手段が非検出状態になるように前記前輪変速装置を変速操作する制御手段を備えてある。
【0008】
前車輪が横向き側に操向操作された際、殊に圃場では、前車輪の側面がわに土壌抵抗が作用しやすく、走行箇所の土壌硬さなどや前車輪の操向角度によって、前車輪に掛かる抵抗が変化する。そして、前車輪に掛かる抵抗が大になると、前車輪が後車輪によって押された状態になる。
【0009】
本第1発明による作業車では、前車輪が後車輪によって押された状態になると、前輪検出手段が検出状態になり、この検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を前輪増速状態に切り換え操作し、前車輪が後車輪よりも高速で駆動される。
【0010】
本第2発明による作業車では、前車輪が後車輪によって押された状態になると、前輪検出手段が検出状態になり、この検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を変速操作する。すなわち、後車輪による前車輪の押し操作を解消させるべく、前車輪の平均周速度が後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差が変化するように前車輪が変速駆動される。
【0011】
これにより、本第1発明による作業車でも、本第2発明による作業車でも、前車輪が後車輪によって押された状態が発生しなければ、前車輪が如何なる大きさの操向角度に操向操作されていても、前車輪が増速駆動されず、前車輪に掛かる抵抗が小さいにもかかわらず前車輪が増速駆動されて変速ショックが発生するということを防止できる。また、前車輪が後車輪によって押された状態が発生すると、このときの前車輪の操向角度の大きさ如何にかかわらず、前車輪が増速駆動され、前車輪に掛かる抵抗が大きいにもかかわらず前車輪が増速駆動されないで走行抵抗が大になるということを防止できる。
【0012】
従って、本第1発明によっても、本第2発明によっても、前輪検出手段が検出状態になれば前車輪が前輪変速装置によって増速駆動され、前車輪が後車輪によって押されてスリップすることを防止や回避することができるものでありながら、前車輪に掛かる抵抗が小であれば、前車輪の操向角度が大であっても前車輪が増速駆動されないように、かつ、前車輪に掛かる抵抗が大であれば、前車輪の操向角度が小であっても前車輪が増速駆動されるように前車輪の抵抗に応じた適切なタイミングで前輪変速装置が操作され、前輪スリップの防止や回避を精度よく行わせて地面乱れを精度よく防止しながら、かつ、変速ショックが発生しにくくて快適に運転しながら小回り旋回することができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において
前記前輪変速装置は、摩擦クラッチを備えて成り、この摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差を変化させるように構成されている。
【0014】
すなわち、摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって前輪平均周速度と後輪平均周速度の差を変化させるものだから、前輪変速装置を摩擦クラッチが変速手段になった構造簡単なものにしながら、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差を変化させることができる。
【0015】
従って、本第3発明によれは、前輪変速装置が前車輪に掛かる抵抗に応じた適切なタイミングで操作され、前輪スリップの防止や回避を精度よく行わせながら、かつ、変速ショックを発生しにくくしながら小回り旋回することができるものでありながら、構造簡単な前輪変速装置を採用して安価に得ることができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、
前記前車輪の操向状態を検出する操向検出手段を備え、
前車輪が直進向きから横向きに設定角度以上に操向された横向き側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に基づく前記前輪変速装置の変速操作を実行するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動し、
前車輪が直進側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に優先して前記前輪変速装置を前記標準状態に維持操作するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動するように構成してある。
【0017】
すなわち、直進向きやそれに近い向きで走行される際、操向検出手段による検出情報を基に制御手段が前輪変速装置を標準状態に維持操作し、前車輪が凹部に入り込むなどして前輪検出手段が検出状態になっても、前車輪が増速駆動されないで、左右前輪の平均周速度と左右後輪の平均周速度とが同一又はほぼ同一になった状態が維持され、前車輪が後車輪よりも高速で駆動されて前車輪が空転するなどの事態が発生しなくなる。
【0018】
従って、本第4発明によれば、直進向きやそれに近い向きで走行する際、前輪検出手段が検出状態になっても前後輪が同一又はほぼ同一の速度で駆動され、前車輪が空転して地面や芝面が傷むなどの事態が発生しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
〔第1実施例〕
図1に示すように、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1、左右一対の非操向型の駆動自在な後車輪2、車体前部に位置するエンジン3が装備された原動部、車体後部に位置する運転座席4が装備された運転部を備えた自走車体の車体後部を構成している後部ミッションケース5の両横側に、リフトアーム6を上下に駆動揺動自在に設け、前記後部ミッションケース5の後部に動力取り出し軸7を設けて、トラクタを構成してある。
【0020】
このトラクタは、車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を左右一対のリフトアーム6が利用されたリンク機構8によって昇降操作するように構成して連結するとともに、エンジン3の駆動力を動力取り出し軸7からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成したり、車体の前後輪間に草刈装置(図示せず)を連結するとともに、エンジン3の駆動力を後部ミッションケース5から草刈装置に伝達するように構成して、乗用型草刈機を構成するなど、各種の作業装置を駆動自在に連結して各種の作業車を構成するものである。
【0021】
図2に示すように、前記エンジン3の出力軸からの駆動力を、主クラッチ10及び回転伝動軸11を介して前記後部ミッションケース5の内部に位置する走行トランスミッション12に入力し、この走行トランスミッション12の後輪用出力を、後部ミッションケース12の内部に位置する後輪差動機構13を介して左右の後車輪2に伝達するように構成してある。前記走行トランスミッション12の前輪用出力を、回転伝動軸14を介して前輪変速装置20に入力し、この前輪変速装置20の出力を、回転伝動軸15及び前輪差動機構16を介して左右の前車輪1に伝達するように構成してある。
【0022】
図4,5に示すように、前記前輪変速装置20は、主クラッチハウジング10aの下部に主クラッチハウジング10aとの一体部品に鋳造されたケース本体21aを有した変速ケース21、この変速ケース21の内部に車体上下方向に並べて回転自在に支持された入力軸22、中間軸23、出力軸24、前記入力軸22の後端側に一体回転自在に連結している大径ギヤ25に噛み合った状態にして前記中間軸23の後端側に相対回転自在に支持されている増速ギヤ26、前記入力軸22の前端側に一体回転自在に連結している小径ギヤ27に噛み合った状態にして前記中間軸23の前端側に相対回転自在に支持されている標準速ギヤ28、前記中間軸23の中間部に位置するスプライン部にクラッチボディ41が一体回転自在に連結されている摩擦クラッチ40、前記クラッチボディ41の連結筒部41aの外周面側に支持されたクラッチギヤ30、前記中間軸23の前端部に位置するスプライン部に一体回転自在に支持された伝動ギヤ31、この伝動ギヤ31に噛み合った状態にして出力軸24に一体回転自在に連結されている伝動ギヤ32を備えて構成してある。
【0023】
図5に明示するように、前記摩擦クラッチ40は、前記中間軸23の前記増速ギヤ26に一体回転自在に連設した入力回転体42、前記クラッチボディ41、このクラッチボディ41と前記入力回転体42の間に設けた多板式の摩擦クラッチ機構43、クラッチボディ41の内部に中間軸23に摺動自在に外嵌した状態で設けた油圧ピストン44、この油圧ピストン44をクラッチ切り側に摺動付勢するように構成してクラッチボディ41の内部に設けたクラッチばね45を備えて構成してある。
【0024】
クラッチボディ41の連結筒部41aに支持された前記クラッチギヤ30は、クラッチボディ41の連結筒部41aに対してスプライン係合によって一体回転及び摺動自在に係合しており、かつ、クラッチボディ41の周方向での複数箇所においてクラッチボディ41を摺動自在に貫通している連結軸33を介して前記油圧ピストン44に一体移動自在に連結されている。
【0025】
前記油圧ピストン44に対して圧油を給排する操作油路47を中間軸23の内部に設けるとともに、この操作油路47に接続された変速バルブ48を変速ケース21に設けてある。
【0026】
すなわち、前輪変速装置20は、変速バルブ48が切り換え操作されることにより、左右前輪1を左右後輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動する標準状態と、左右前輪1を左右後輪2の約2倍の周速度で回動するように左右後輪2よりも増速して駆動する前輪増速状態とに変速される。
【0027】
つまり、図6に示すように、変速バルブ48が増速状態に切り換え操作されると、変速バルブ48から操作油路47に油圧が供給され、油圧ピストン44がクラッチばね45に抗して入力回転体42の方に摺動操作されて摩擦クラッチ機構43を入り状態に押圧操作し、摩擦クラッチ40が入り状態になる。これとともに、油圧ピストン44が各連結軸33を介してクラッチギヤ30を摺動操作し、クラッチギヤ30のクラッチ爪を標準速ギヤ28のクラッチ爪28aから外し操作する。すると、前輪変速装置20は、入力軸22の駆動力を大径ギヤ25、増速ギヤ26、摩擦クラッチ40、中間軸23、伝動ギヤ31、伝動ギヤ32を介して出力軸24の後端側に伝達し、出力軸24の前端側から前記回転軸伝動軸15に出力するように、かつ、大径ギヤ25と増速ギヤ26による増速伝動により、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になる状態に出力するように前輪増速状態になる。
【0028】
これに対し、図5に示すように、変速バルブ48が標準状態に切り換え操作されると、油圧ピストン44の油圧が操作油路47から変速バルブ48に排出され、油圧ピストン44がクラッチばね45によってクラッチボディ41の方に摺動操作されて摩擦クラッチ機構43の圧接操作を解除し、摩擦クラッチ40が切り状態になる。これとともに、油圧ピストン44が各連結軸33を介してクラッチギヤ30を標準速ギヤ28の方に摺動操作して、クラッチギヤ30のクラッチ爪を標準速ギヤ28のクラッチ爪28aに係合操作する。すると、前輪変速装置20は、入力軸22の駆動力を小径ギヤ27、標準速ギヤ28、クラッチギヤ30、クラッチボディ41、中間軸23、伝動ギヤ31、伝動ギヤ32を介して出力軸24の後端側に伝達し、出力軸24の前端側から回転伝動軸15に出力するように、かつ、小径伝動ギヤ27と標準速ギヤ28による伝動により、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で出力するように標準状態になる。
【0029】
図7に示すように、前輪変速装置20の前記変速バルブ48の電磁操作部48aに制御手段50を連係させるとともに、この制御手段50には、前輪検出手段51及び操向検出手段52も連係させてある。
【0030】
図4に示すように、前輪検出手段51は、感圧センサによって構成してあり、この感圧センサは、前輪駆動ケース60の中間部を車体前後向きのローリング軸芯Xまわりで回動自在に支持するように構成して車体フレーム(図示せず)に設けられた前後一対の支持体61のうちの前輪駆動ケース60よりも車体後方側に位置する支持体61に設けてある。
前輪駆動ケース60は、両端側で前車輪1を駆動回動自在に支持しており、前車輪1に土壌による移動抵抗が作用するなどして前車輪1が後車輪2によって車体前方向きに押された状態になると、感圧センサに前輪駆動ケース60からの設定力以上の押圧反力が作用し、感圧センサが感圧作動する。これにより、前輪検出手段51は、前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、このことを検出し、この検出結果を電気信号にして制御手段50に出力する。
【0031】
図3に示すように、操向検出手段52は、ピットマンアーム62に操作部が連動されたポテンショメータによって構成してある。ピットマンアーム62は、パワーステアリング装置63を介してステアリングホィール64に連動されており、このステアリングホィール64が回転操作されると、パワーステアリング装置63によって揺動操作され、タイロッド65を介して左右前輪1のナックルアーム66を揺動操作して各前車輪1を前輪駆動ケース60に対して揺動するように操向操作する。これにより、操向検出手段52は、ピットマンアーム62の揺動位置を基に、前車輪1が直進側操向状態や横向き側操向状態に操向操作されたことを検出し、この検出結果を電気信号にして制御手段50に出力する。
【0032】
操向検出手段52によって検出される前車輪1の直進側操向状態としては、前車輪1が直進向きの操向姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから左横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角度(10〜15度)未満である左横向き姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから右横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角度(10〜15度)未満である右横向き姿勢になった操向状態を設定してある。操向検出手段52によって検出される前車輪1の横向き側操向状態としては、前車輪1が直進向きから左横向き側に設定角度(10〜15度)以上揺動した左横向き姿勢になった操向状態、及び、前車輪1が直進向きから右横向き側に設定角度(10〜15度)以上揺動した右横向き姿勢になった操向状態を設定してある。
【0033】
制御手段50は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、前輪検出手段51及び操向検出手段52の検出情報を基に、図8に示す如く作動する。
【0034】
すなわち、制御手段50は、操向検出手段52による検出情報を基に、前車輪1が直進側操向状態にあるか否かを判断し、前車輪1が直進側操向状態にあると判断した場合、前輪検出手段51の検出結果如何にかかわらず前輪変速装置20が標準状態になるように前輪検出手段51の検出情報に優先して前輪変速装置20を標準状態に維持操作する。前車輪1が横向き側操向状態にあると判断した場合、前輪検出手段51が検出状態にあるか否かを判断し、前輪検出手段51が検出状態ではないと判断した場合、変速バルブ48を標準状態に切り換え操作して前輪変速装置20を標準状態に変速操作し、前輪検出手段51が検出状態にあると判断した場合、変速バルブ48を増速状態に切り換え操作して前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作する。
【0035】
つまり、圃場端部で旋回走行させるなど、前車輪1を直進向きから左向きや右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作して旋回走行する際、前車輪1の直進向きから横向き側への操向角度が大になるほど、前車輪1に土壌などによって掛かる抵抗がより大になる。しかし、前車輪1に掛かる抵抗が小さくて前車輪1が後車輪2によって押された状態になっていない間は、前輪検出手段51が非検出状態になっていて制御手段50が前輪変速装置20を標準状態に維持操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように左右前輪1が後車輪2と同速又はほぼ同速で駆動されて旋回走行していく。前車輪1に掛かる抵抗が大きくなって前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、前輪検出手段51が検出状態になって制御手段50が前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるように左右前輪1が増速駆動され、前車輪1の抵抗や操向角度にかかわらず、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップする事態を防止や回避しながら旋回走行することができる。
【0036】
前車輪1を直進向きに操向操作して、又は、直進向きから左横向きや右横向き側に設定角度(10〜15度)未満で揺動した状態に操向操作して走行する際、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように左右前輪1が後車輪2と同速度又はほぼ同速度で駆動されて走行していく。また、この走行の際、操向検出手段52の検出情報を基に、制御手段50が前輪検出手段51による検出情報に優先して前輪変速装置20を標準状態に維持操作しており、前車輪1が凹部に入り込むなどして前輪検出手段51が検出状態になることがあっても、前輪変速装置20が標準状態に維持されて前車輪1が後車輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動され、前車輪1が後車輪2よりも高速で駆動された前車輪1が空転するなどの事態を発生しないようにしながら走行することができる。
【0037】
前記走行トランスミッション12に、前進2段と後進1段の3段階に変速自在な主変速ギヤミッション12a、高、中、低の3段階に変速自在な副変速ギヤミッション12bを設け、主変速ギヤミッション12aと副変速ギヤミッション12bの変速段の組み合わせにより、図9の如き走行速度Vが現出されるようになっている。
【0038】
すなわち、副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘やあぜ塗り用の走行速度V=0.5km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘用の走行速度V=0.9km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、耕耘用の走行速度V=1.3km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、代掻き用の走行速度V=2.3km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが前進1速にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=7.9km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが前進2速にそれぞれ変速操作されることにより、移動用の走行速度V=14.0km/hが現出される。副変速ギヤミッション12bが低速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=0.5km/hの後進速度が現出される。副変速ギヤミッション12bが中速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=1.3km/hの後進速度が現出される。副変速ギヤミッション12bが高速に、主変速ギヤミッション12aが後進にそれぞれ変速操作されることにより、走行速度V=7.9km/hの後進速度が現出される。
【0039】
〔第2実施例〕
図10は、別の実施構造を備えたトラクタの前輪変速システムを示し、この前輪変速システムにあっては、前輪変速装置20の変速バルブ48に連係されたパルス制御回路53を備えている。
【0040】
パルス制御回路53は、変速バルブ48の電磁操作部48aにパルス信号を出力して変速バルブ48を増速状態に切り換え操作することにより、前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、かつ、変速バルブ48に出力するパルス信号のデューティ比を変更することにより、変速バルブ48を増速状態に間欠的に切り換え操作して前輪変速装置20の摩擦クラッチ40を入り状態に間欠的に切り換え操作するとともに摩擦クラッチ40を入り状態と切り状態に切り換える間隔を変更する。これにより、前輪変速装置20は、前輪増速状態に切り換え操作された際、前輪増速状態に間欠的に切り換わることにより、かつ、標準状態と前輪増速状態とに切り換わる間隔が変更されることにより、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるようにして、かつ、前輪平均周速度と後輪平均周速度の差が変化するようにして左右前輪1を駆動する。
【0041】
図11に示すように、この前輪変速システムの制御手段54は、操向検出手段52による検出情報を基に、前車輪1が横向き側操向状態にあると判断し、かつ、前輪検出手段51が検出状態にあると判断した場合、前輪検出手段51による検出結果を基に、後車輪2による前輪押し操作の押し強さを算出し、算出前輪押し強さが大であるほど前輪変速装置20の摩擦クラッチ40が入り状態になっている時間がより長くなるように、算出前輪押し強さに基づいて変速バルブ48をデューティ制御して、前輪検出手段51が非検出状態になるように前輪変速装置20を変速操作する。
【0042】
つまり、前車輪1を直進向きから左向きや右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作して旋回走行する際、前車輪1に掛かる抵抗が小さくて前車輪1が後車輪2によって押された状態にならない間は、前輪検出手段51が非検出状態になっていて制御手段54が前輪変速装置20を標準状態に維持操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度と同一又はほぼ同一になるように前車輪1が後車輪2と同一又はほぼ同一の駆動速度で駆動されて旋回走行していく。
前車輪1に掛かる抵抗が大きくなって前車輪1が後車輪2によって押された状態になると、前輪検出手段51が検出状態になって制御手段54が算出前輪押し強さに基づいて前輪変速装置20を前輪増速状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度が左右後輪2の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、後車輪2による前車輪1の押し強さが大であるほど、左右前輪1の平均周速度と左右後輪2の平均周速度の差がより大になるように前車輪1が増速駆動され、前車輪1が後車輪2によって押されてスリップする事態を防止や回避しながら旋回走行することができる。前車輪1を直進向きから左向きは右向き側に設定角(10〜15度)以上に揺動した状態に操向操作していても、前輪検出手段51が非検出状態になると、制御手段54が前輪変速装置20を標準状態に変速操作し、左右前輪1の平均周速度と左右後輪2の平均周速度とが同一又はほぼ同一になるように前車輪1の増速駆動が停止される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】トラクタ全体の側面図
【図2】走行用伝動装置の概略図
【図3】前輪操向操作装置の概略図
【図4】前輪変速装置配置部の断面図
【図5】前輪変速装置の標準状態での断面図
【図6】前輪変速装置の前輪増速状態での断面図
【図7】前輪変速装置の操作系のブロック図
【図8】前輪変速装置操作のフロー図
【図9】走行トランスミッションの変速段と走行速度の関係を示す説明図
【図10】別の実施構造を備えた前輪変速システムのブロック図
【図11】別の実施構造を備えた前輪変速システムのフロー図
【符号の説明】
【0044】
1 前車輪
2 後車輪
20 前輪変速装置
40 摩擦クラッチ
50,54 制御手段
51 前輪検出手段
52 操向検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車であって、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で左右一対の前車輪を駆動する標準状態と、左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になる状態で左右一対の前車輪を駆動する前輪増速状態とに切り換え自在な前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段が非検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記標準状態になり、前記前輪検出手段が検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記前輪増速状態になるように、前記前輪検出手段による検出情報に基づいて前記前輪変速装置を切り換え操作する制御手段を備えてある作業車。
【請求項2】
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車であって、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差が変化するように左右一対の前車輪を変速駆動する前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段による検出情報を基に、前記前輪検出手段が非検出状態になるように前記前輪変速装置を変速操作する制御手段を備えてある作業車。
【請求項3】
前記前輪変速装置は、摩擦クラッチを備えて成り、この摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差を変化させるように構成されている請求項2記載の作業車。
【請求項4】
前記前車輪の操向状態を検出する操向検出手段を備え、
前車輪が直進向きから横向きに設定角度以上に操向された横向き側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に基づく前記前輪変速装置の変速操作を実行するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動し、
前車輪が直進側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に優先して前記前輪変速装置を前記標準状態に維持操作するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動するように構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項1】
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車であって、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度と同一又はほぼ同一になる状態で左右一対の前車輪を駆動する標準状態と、左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になる状態で左右一対の前車輪を駆動する前輪増速状態とに切り換え自在な前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段が非検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記標準状態になり、前記前輪検出手段が検出状態にあると、前記前輪変速装置が前記前輪増速状態になるように、前記前輪検出手段による検出情報に基づいて前記前輪変速装置を切り換え操作する制御手段を備えてある作業車。
【請求項2】
左右一対の前車輪を操向操作及び駆動自在に備え、左右一対の後車輪を駆動自在に備えた作業車であって、
左右一対の前車輪の平均周速度が左右一対の後車輪の平均周速度よりも高速度になるように、かつ、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差が変化するように左右一対の前車輪を変速駆動する前輪変速装置、及び、前記前車輪が前記後車輪によって押された状態になったことを検出する前輪検出手段を備え、
前記前輪検出手段による検出情報を基に、前記前輪検出手段が非検出状態になるように前記前輪変速装置を変速操作する制御手段を備えてある作業車。
【請求項3】
前記前輪変速装置は、摩擦クラッチを備えて成り、この摩擦クラッチが入り状態と切り状態に切り換え間隔を変更して切り換え操作されることによって、前記前輪平均周速度と前記後輪平均周速度の差を変化させるように構成されている請求項2記載の作業車。
【請求項4】
前記前車輪の操向状態を検出する操向検出手段を備え、
前車輪が直進向きから横向きに設定角度以上に操向された横向き側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に基づく前記前輪変速装置の変速操作を実行するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動し、
前車輪が直進側操向状態にあることを前記操向検出手段が検出すると、前記制御手段は、前記前輪検出手段による検出情報に優先して前記前輪変速装置を前記標準状態に維持操作するべく前記操向検出手段による検出情報に基づいて作動するように構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−315618(P2006−315618A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142883(P2005−142883)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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