説明

併用治療のための錠剤

本発明は、式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物及び式IVの塩を含む固形投与形態(例えば、錠剤)を提供する。従って、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を圧縮して第一の圧縮された層を提供する工程;式IIIの化合物及び式IVの塩を第一の圧縮された層に加える工程;並びに、圧縮して本発明の錠剤を提供する工程を含む、本発明の錠剤を調製するための方法を提供する。本発明の一実施形態では、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を圧縮して軟層を提供し;式IIIの化合物及び式IVの塩を含む混合物を軟層に加えて最終化合物を提供し;そして、最終化合物を圧縮して本発明の錠剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の優先権)
本願は、2009年2月6日に出願された米国仮特許出願第61/150,655号および2009年2月6日に出願された米国仮特許出願第61/150,652号への優先権を主張する。これらの出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
特許文献1は、インテグラーゼ阻害剤として有用であると報告されている化合物を開示している。一つの特定の化合物は式Iの化合物である(すなわち、エルビテグラビア)。
【0003】
【化1】

特許文献2は、式Iの化合物のある特定の結晶形を提供している。該特定の結晶形は、該化合物の他の物理的形状と比較して、優れた物理的及び化学的安定性を有すると報告されている。
【0004】
特許文献3は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを阻害することによって、併用薬の薬物動態を改善する化合物を記載している。そのような阻害剤の1つは式IIの化合物である。
【0005】
【化2】

特許文献3は、該化合物を含む組成物もまた記載しており、少なくとも1つの追加の治療剤を含む組成物を提供している。170頁及び174頁において、特許文献3は、開示された化合物の組み合わせをさらに記載している(例えば、式IIの化合物)。種々の作用物質のリストに含まれているのは、式Iの化合物(すなわち、エルビテグラビア)、式IIIの化合物(すなわち、エムトリシタビン)及び式IVの塩(すなわち、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩)である。化合物の製剤に関する議論もまた159頁〜168頁に見ることができる。
【0006】
【化3】

特許文献4もまた、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを阻害することによって、併用薬の薬物動態を修正するのに有用であると報告されている化合物を開示している。特許文献4の199頁は、式I、式II、式III及び式IVの化合物の特定の組み合わせを記載している。製剤は181頁〜190頁において議論されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,176,220号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/113508号
【特許文献3】国際公開第2008/010921号
【特許文献4】国際公開第2008/103949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの報告にもかかわらず、現在、多剤組成物の送達のための改善された固形投与形態(例えば、錠剤)が必要である。改良された若しくは許容可能な化学的安定性、物理的安定性、放出特性又は用量均一性を有する式I、式II、式III及び式IVの化合物を含む改善された固形投与形態もまた必要である。式I、式II、式III及び式IVの化合物を含む組成物の固形投与形態を調製する改善された過程もまた必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、式I、式II、式IIIの化合物及び式IVの塩を含む固形投与形態(例えば、錠剤)並びに該固形投与形態を調製する方法を提供する。出願人は、二層の様式で調製された錠剤が、他の構造の錠剤よりも優れた性質を有することを発見した。この発見は、HIVのようなウイルス感染の処置のための併用療法の開発の進歩を示している。
【0010】
従って、一実施形態では、本発明は、第一の層及び第二の層を含む錠剤であって;
a)第一の層は、
式Iの化合物:
【0011】
【化4】

;及び
式IIの化合物:
【0012】
【化5】


及び必要に応じて薬学的に許容され得る担体を含み;並びに
b)第二の層は、
式IIIの化合物:
【0013】
【化6】

;及び
式IVの塩:
【0014】
【化7】


及び必要に応じて薬学的に許容され得る担体を含む、錠剤を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、150mg±10%の式Iの化合物;150mg±10%の式IIの化合物;200mg±10%の式IIIの化合物;及び300mg±10%の式IVの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、150mg±5%の式Iの化合物;150mg±5%の式IIの化合物;200mg±5%の式IIIの化合物;及び300mg±5%の式IVの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、150mg±2%の式Iの化合物;150mg±2%の式IIの化合物;200mg±2%の式IIIの化合物;及び300mg±2%の式IVの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、薬学的に活性な成分として150mg±5%の式Iの化合物;150mg±5%の式IIの化合物;200mg±5%の式IIIの化合物;及び300mg±5%の式IVの化合物;並びに1つ以上の薬学的に許容され得る担体からなる薬学的組成物を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、薬学的に活性な成分として150mg±2%の式Iの化合物;150mg±2%の式IIの化合物;200mg±2%の式IIIの化合物;及び300mg±2%の式IVの化合物;並びに1つ以上の薬学的に許容され得る担体からなる薬学的組成物を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、以下からなる錠剤を提供する。
【0021】
【表1】

本発明は、本明細書に記載の本発明の錠剤を調製するための方法、並びに本発明の組成物を調製するのに有用な中間組成物及び物質(article)もまた提供する。従って、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を圧縮して第一の圧縮された層を提供する工程;式IIIの化合物及び式IVの塩を第一の圧縮された層に加える工程;並びに、圧縮して本発明の錠剤を提供する工程を含む、本発明の錠剤を調製するための方法を提供する。本発明の一実施形態では、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を圧縮して軟層を提供し;式IIIの化合物及び式IVの塩を含む混合物を軟層に加えて最終化合物を提供し;そして、最終化合物を圧縮して本発明の錠剤を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、錠剤をコーティングする工程をさらに含み得る。
【0022】
本発明は、本発明の中間組成物及び錠剤を調製するために有用な、図2及び3並びに本明細書の実施例に説明される方法もまた提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の錠剤を説明する。
【図2】図2は、本発明の組成物の調製を説明する。
【図3】図3は、本発明の組成物の調製を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
範囲及び用語についての以下に記載されている特定の値は、説明のためだけのものであり、他の値を除くものではない。
化合物量及び化合物の重量比
本発明の錠剤は、式I、式II、式IIIの化合物及び式IVの塩を含む。本明細書に記載の重量及び比は、記載されているように、併用療法に関する。本発明の範囲内に在りながら各種化合物の量は変化し得ることを理解されたい。一実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の量は、150mg±10%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の量は、150mg±5%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の量は、150mg±2%である。一実施形態では、本発明の錠剤中の式IIの化合物の量は、150mg±10%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IIの化合物の量は、150mg±5%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IIの化合物の量は、150mg±2%である。一実施形態では、本発明の錠剤中の式IIIの化合物の量は、200mg±10%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IIIの化合物の量は、200mg±5%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IIIの化合物の量は、200mg±2%である。一実施形態では、本発明の錠剤中の式IVの塩の量は、300mg±10%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IVの塩の量は、300mg±5%である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式IVの塩の量は、300mg±2%である。
【0025】
また、本発明の範囲内に在りながら、記載されているように、併用療法における相互の化合物の各種重量比は変化し得ることを理解されたい。一実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の式IIの化合物に対する重量比は、1±0.8である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の式IIの化合物に対する重量比は、1±0.5である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の式IIの化合物に対する重量比は、1±0.3である。別の実施形態では、本発明の錠剤中の式Iの化合物の式IIの化合物に対する重量比は、1±0.1である。
薬学的製剤
本発明の薬学的組成物は、従来の担体とともに製剤化され得る。組成物の活性成分は単独で投与され得るが、薬学的製剤としてそれらを提示することがより好ましくあり得る。本明細書に記載されているように、本発明の薬学的製剤は、式I、式II、式III及び式IVの化合物を1つ以上の許容され得る担体と一緒に含み得る。担体は、製剤の他の成分と適合し、受容者にとって生理的に無害であるという意味で、“許容され得る”べきである。従って、一実施形態では、本出願は、式I、式II、式III及び式IVの化合物並びに薬学的に許容され得る担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0026】
本明細書において、担体という用語としては、賦形剤、流動促進剤、充填剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、防腐剤(preservative)、界面活性剤、分散剤などが挙げられる。担体という用語としては、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤(preserving agent)のような作用物質もまた挙げられる。さらに、これらの用語は、本明細書で言及されている値のほかに通常の慣例と一致する値も含む。錠剤は、賦形剤、流動促進剤、充填剤、結合剤などを一般的に含むであろう。すべての製剤は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるHandbook of Pharmaceutical Excipients(APhA Publications,Washington,DC)に記載されているような賦形剤を必要に応じて含み得る。賦形剤としては、アスコルビン酸及び他の酸化防止剤、EDTAのようなキレート剤、デキストリンのような炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などが挙げられる。製剤のpHは、約3〜約11に及ぶが、通常は約7〜10である。
【0027】
薬学的製剤は、本明細書で議論される投与経路に適したものを含む。薬学的製剤は、単位投与形態で都合よく提示され、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。技術及び製剤は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に一般的に記載されている。そのような方法は、活性成分を、1つ以上の補助成分を構成する担体に結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液体担体若しくは微粉化した固体担体又はその両方に均一かつ密に接触させ、そして、もし必要であれば、生成物を成形する(例えば、単位投与形態として)ことによって、調製され得る。
【0028】
式IIの化合物と組み合わせて用いられ得る特定の担体は、シリカ粒子である。通常、シリカ粒子は、10〜120ミクロンの平均粒径及び40〜400m/gのBET表面積(窒素を用いたDIN 66 131に従って測定される)を有する、粒状で親水性のヒュームドシリカを含む。また、シリカ粒子は、通常、約0.5〜2.5mL/gの細孔容積を有し、細孔容積全体の約5%未満が約5nm未満の孔径を有し、残りはメソ細孔及びマクロ孔である。さらに、シリカ粒子は、通常、約3.6〜約8.5の範囲のpH及び約220〜約700g/Lのタップ密度を有する。
【0029】
本発明の組成物に特に有用な特定のシリカ物質(粒子)は、Evonik Degussa AG,Dusseldorf,Germanyから入手可能なAEROPERL(登録商標)300(ヒュームドシリカ)である。しかしながら、本明細書に記載のシリカ物質に類似の物理的及び化学的性質を有する他の物質、例えばケイ酸カルシウム(例えば、ゼオファーム)、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(例えば、ノイシリン)もまた用いられ得る。10〜約120ミクロンの平均粒径を有するシリカ粒子が有用である。20〜40ミクロンの平均粒径を有するシリカ粒子もまた有用である。約40〜400m/gのBET表面積を有するシリカ粒子が有用である。少なくとも150m/g、又は少なくとも200m/g、又は少なくとも250m/g又は少なくとも275m/gのBET表面積を有するシリカ粒子もまた有用である。
【0030】
一実施形態では、式IIの化合物は、本発明の組成物の他の成分と組み合わせる前に、シリカ粒子と結合される(すなわち、孔中及び表面上にコーティングされる)。本発明の一実施形態では、式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、20%±15%である。本発明の一実施形態では、式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、50%±10%である。本発明の一実施形態では、式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、45%±15%である。本発明の一実施形態では、式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、100%±20%である。本発明の一実施形態では、式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、85%±15%である。
【0031】
充填
式IIの化合物は、任意の適切な方法を用いて、シリカ粒子上に充填され得る。例えば、式IIの化合物は、
a)化合物の溶液(例えば、エタノールのようなアルコール中の化合物の溶液)をシリカ粒子に噴霧すること;
b)式IIの化合物、適切な溶媒(例えば、ジクロロメタンのような揮発性溶媒)、及びシリカ粒子を組み合わせること;該溶媒を蒸発させること;並びに、その結果として生じる固体物質を単離すること;又は
c)式Iの化合物及び適切な揮発性溶媒(例えば、ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素)、及びシリカ粒子を組み合わせること;貧溶媒(例えば、ヘキサン又はヘプタンのような高度に非極性の溶媒)を加えること;並びに、その結果として生じる固体物質(実施例4で説明されるように)を単離すること、
によってシリカ粒子上に充填され得る。
【0032】
式IIの化合物を、適切な溶媒及び複数のシリカ粒子と組み合わせて混合物を提供することができる。必要に応じて、式IIの化合物は、同時混合で適切な溶媒と組み合わせることができる。通常、組み合わせ前の式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、約50%±10%である。本発明の一実施形態では、組み合わせ前の式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、約20%±10%である。本発明の他の実施形態では、組み合わせ前の式IIの化合物のシリカ粒子に対する重量パーセントは、約30%±10%である。式IIの化合物が溶解可能な任意の溶媒が用いられ得る。通常、溶媒は、例えば、(C−C)アルコール(例えば、エタノール)のような揮発性有機溶媒を含む。
【0033】
式IIの化合物は、適切な溶媒中で化合物を溶解して式IIの化合物を含む溶液を提供すること;シリカ粒子を溶液に加えて混合物を提供すること;必要に応じて、混合物を攪拌(agitate)又はかき混ぜる(stir)こと;混合物に貧溶媒を加えること;及び、シリカ粒子上の式IIの化合物を含む固体混合物を単離することによってもシリカ物質に充填され得る。適切な溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン)、アルコール(例えば、エタノール)及びハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン)のような有機溶媒が挙げられる。適切な貧溶媒としては、高度に非極性の溶媒(例えば、ヘキサン又はヘプタン)が挙げられる。最終固体混合物は、任意の適切な分離技術(例えば、ろ過)によって単離され得る。
【0034】
1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を混合物と組み合わせて第二の混合物を提供することができる。これらの薬学的に許容され得る賦形剤としては、充填剤、結合剤、及び崩壊剤が挙げられ得る。その後の水性の造粒過程における混合物の加工性を改善するために、この水性過程に適合する充填剤及び崩壊剤を選択することが有益であり得る。例えば、微結晶性セルロース(充填剤)及びクロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)は、その後の水性の造粒過程と特に適合すると認められていた。ヒドロキシプロピルセルロース(結合剤)もまた、その後の造粒過程と特に適合すると認められていた。本発明の一実施形態では、微結晶性セルロースの第二の混合物の総重量に対する重量パーセントは、約50%±20%である。本発明の一実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースの第二の混合物の総重量に対する重量パーセントは、2%±1%である。本発明の一実施形態では、クロスカルメロースナトリウムの重量パーセントは、5%±2%である。薬学的に許容され得る賦形剤の追加に続いて、第二の混合物は、例えば、高せん断造粒機(Niro−Fielder,model PMA−25)のような機械混合器を用いて混合され得る。
【0035】
水を第二の混合物に加えて湿式顆粒を提供することができ、続いてそれは例えば20篩目を用いて脱凝集させることができる。例えば、流動床乾燥機(Fluid Air,model 20)を用いた乾燥は、固体粒子を含む乾燥材料を提供する。一実施形態では、乾燥材料は、乾燥減量(LOD)によって決定される約10.0%未満の含水率を有する。別の実施形態では、乾燥材料は、乾燥減量(LOD)によって決定される約5.0%未満の含水率を有する。別の実施形態では、乾燥材料は、乾燥減量(LOD)によって決定される約1.0%未満の含水率を有する。これらの粒子のサイズを、例えば40篩目又は適切な製粉機(Quadro CoMil,model 197/S)を用いて縮小して、第三の混合物を提供することができる。
【0036】
適切な薬学的に許容され得る滑沢剤/流動促進剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、又はアルファ化でんぷん)を、第三の混合物と組み合わせて第四の混合物を提供することができる。一実施形態では、ステアリン酸マグネシウムの第四の混合物の総重量に対する重量パーセントは、1%±0.5%である。
【0037】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法によって調製された組成物を提供する。本発明は、本明細書に記載の過程工程のいずれかによって調製された生成物もまた提供する。
【0038】
経口投与に適した製剤は、所定量の活性成分をそれぞれ含む錠剤のような個別単位として、粉末又は顆粒として提示され得る。
【0039】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意で1つ以上の補助成分とともに製造され得る。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と必要に応じて混合した粉末又は顆粒のような自由流動形態の形の活性成分を、適切な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉状活性成分の混合物を、適切な機械で成形することによって製造され得る。錠剤は、任意にコーティング又は割線を入れられ得、活性成分の持続放出又は制御放出をもたらすために、任意に製剤化される。
【0040】
本発明の錠剤は、口当たりの良い調製物を提供するために、1つ以上の、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤などの作用物質を含み得る。錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容され得る賦形剤と混合した活性成分を含む錠剤は許容可能である。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム若しくは炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウム若しくはリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、トウモロコシでんぷん、若しくはアルギン酸);結合剤(例えば、セルロース、微結晶性セルロース、でんぷん、ゼラチン若しくはアカシア);並びに、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸若しくはタルク)であり得る。錠剤は、コーティングされていなくても、消化管における分解及び吸着を遅らせるために、微小被包を含む公知の技術によって、コーティングされていてもよく、それによってより長期間にわたって持続的な作用をもたらし得る。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質は、単独で用いられ得るか又はワックスとともに用いられ得る。
【0041】
国際特許出願公開番号WO2005/113508は、式Iの化合物のある特定の結晶形を提供する。国際特許出願公開番号WO2005/113508のすべての内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる(特に、明細書中12頁〜62頁参照)。その中で、特定の結晶形は、結晶形II及び結晶形IIIとして特定されている。結晶形IIは、X線粉末回折計によって測定された6.56、13.20、19.86、20.84、21.22、及び25.22の回折角2θ()において特有の回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有する。結晶形IIIは、X線粉末回折計によって測定された8.54、14.02、15.68、17.06、17.24,24.16、及び25.74の回折角2θ()において特有の回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有する。一実施形態では、本発明の組成物は、結晶形II又は結晶形IIIの形である式Iの化合物を含む。
式IIの化合物の調製及びシリカへの前もった充填
国際特許出願公開番号WO2008/103949に記載されているように(例えば、254頁参照)、式IIの化合物又はその塩は、式Xの酸性塩(式中、Mは対イオンである)を式IXのアミンにカップリングさせて対応する式IIのアミドを形成することによって調製され得る。
【0042】
【化8】

このアミド形成反応は、標準条件下で実施され得る。例えば、適切なカップリング剤(例えば、EDC・HCI及びHOBt)の存在下で、適切な有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン又はジクロロメタン)中で実施され得る。他の適切なアミドカップリング試薬及び条件は当該分野で公知である。反応は、通常、約−30℃〜約20℃の温度で実施され得る。ジクロロメタン(DCM)中に式IIの化合物を含む最終反応液を、図2に説明される過程において直接的に利用して本発明の代表的な組成物を提供することができ、又は、化合物のジクロロメタン溶液をエタノールと組み合わせて、その結果生じた混合物を蒸留してジクロロメタンを除去することができ、エタノール中に式IIの化合物の溶液が残ることになる。このエタノール溶液を、二酸化ケイ素粒子と組み合わせて蒸発させることで、二酸化ケイ素粒子上に充填された式IIの化合物を含む組成物を提供することができる(図2の左欄において説明されるように)。あるいは、化合物のジクロロメタン溶液を二酸化ケイ素粒子と組み合わせ、貧溶媒を加え、その結果生じた混合物をろ過及び乾燥することで、充填された式IIの化合物を含む組成物を提供することができる(図2の右欄において説明されるように)。
【0043】
図1は、本発明の錠剤(101)の横断面を示す。錠剤は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む第一の層(103)を含む。錠剤は、式IIIの化合物及び式IVの塩を含む第二の層(105)もまた含む。
【0044】
図2は、式IIの化合物を含む錠剤を調製するのに用いられ得る過程を説明する。
【0045】
図3は、本発明の二層錠剤を調製するための過程を説明する。この過程は、実施例1においてさらに詳述される。
【0046】
本発明は、以下の限定されない実施例によって説明され得る。
【実施例】
【0047】
実施例1:錠剤形成
式I、式II、式III及び式IVの化合物を含む固定用量の組み合わせ錠剤の製造法は、以下の工程を含む:1)式Iの化合物の流動床造粒及び乾燥、2)式IIの化合物又はシリカ粒子上に充填された式IIの化合物の高せん断造粒及び流動床乾燥、3)式IIIの化合物の乾式造粒及び式IVの塩の乾式造粒、4)式IIIの化合物の乾式顆粒の製粉及び式IVの塩の乾式顆粒の製粉、5)式IIIの化合物及び式IVの塩のブレンド、6)式Iの化合物及び式IIの化合物のブレンド、7)式I及び式IIの化合物のブレンドからなる一方の層と式III及び式IVの化合物のブレンドからなる他方の層を用いた二層圧縮による錠剤の形成、8)錠剤のコーティング並びに9)コーティングされた錠剤のパッケージング。
【0048】
二層錠剤についての処理中の重量制御は、三重層錠剤の構造と比較して優れていた。式I及び式IIの化合物を含む層についての二層の重量制御は、標的平均層重量の100.2%〜100.8%の間であった。全錠剤の平均重量は、標的平均錠剤重量の99.5%〜100.7%の間であった。式I及び式IIの化合物を含む層についての相対標準偏差(RSD)値は1.4%〜2.2%の間であったが、全錠剤についてのRSDは0.7%〜1.2%の間であった。これらの小さいRSD値は、二層錠剤の圧縮過程中の非常に低い重量変動性を示している。圧縮過程の開始及び終了時のもろさは、0.0%であった。二層の圧縮中に、欠けたり、蓋で覆われたり、又は壊れた錠剤は見られなかった。
【0049】
層1及び層2の間の重要な材料特性及び圧縮率の差は、固体担体上へ式IIを前もって充填する過程を用いた錠剤圧縮過程中の層剥離のリスクを示した。しかしながら、その結果生じた錠剤は、完全な状態で損傷を受けておらず、積極的な膜コーティング過程に持ちこたえていた。
【0050】
上記のように、本発明の錠剤の層を調製するのに有用な中間混合物は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物である。従って、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を提供する。式I及び式IIの化合物は、本発明の錠剤を調製するのに有用な、本明細書に記載のいずれかの量又は割合で存在し得る。例えば、以下の表は、本発明の錠剤を調製するのに使用され得る中間組成物についての代表的な成分及び重量比を説明する。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

三層として錠剤を製造する試行もまた実施された。三層の圧縮中、錠剤は、式Iの化合物の層、式IIの化合物を含む第二の層並びに式IIIの化合物及び式IVの塩のブレンドを含む第三の層を用いて製造された。最初の試行は、第一の層として式IIの化合物を、その後に第二の層上に式Iの化合物を、そして最後に式IIIの化合物及び式IVの塩のブレンドの第三の層を適用することであった。式IIの化合物を含む層の重量は非常に小さく、その結果、圧縮過程中に上部及び下部のパンチの不一致の原因となる非常に薄い錠剤の層が生じた。式Iの化合物を含む層の重量は、式IIの化合物を含む層の重量と同程度であり、そのため、パンチの不一致は逆の構成を妨げるであろう。式III及び式IVの化合物を含むブレンドの重量は、圧縮過程中のパンチの不一致を防ぐ層厚さを示すのに十分大きかった。この層の後に、式Iの化合物を含む第二の層及び式IIの化合物を含む第三の層が続いた。
【0054】
3つの層の過程に関する錠剤の圧縮過程中に、重大な錠剤の欠陥が見られた。その上、この3つの層の構造で錠剤の重量を制御することもまた困難であった。さらに、第二及び第三の層が錠剤の中心部から分離した。三層錠剤の構造については、欠陥がない完全な錠剤は製造され得なかった。
【0055】
単層錠剤を製造するために、混合物における式I、式II、式III及び式IVの化合物のすべてを組み合わせると、式IVの化学的安定性を損なう。さらに、二層錠剤中の式I、式II、式III又は式IVの化合物の不適切な組み合わせもまた、式IVの化学的安定性を損なうであろう。例えば、式IIの形成に由来する二酸化ケイ素存在下の式IVは、式IVを分解するであろう;そして、式Iの形成に由来するラウリル硫酸ナトリウム存在下の式IVは、式IVを分解するであろう。
【0056】
実施例2
以下の表は、本発明の錠剤を調製するのに有用な本発明の代表的な組成物を説明する。
【0057】
【表5】

実施例3
以下の表は、本発明の錠剤を調製するのに有用な本発明の代表的な組成物を説明する。
【0058】
【表6】

実施例4
以下の表は、本発明の錠剤を調製するのに有用な本発明の代表的な組成物を説明する。
【0059】
【表7】

実施例5
式IIの化合物に関する薬物動態の用量決定試験を行った。用量決定試験のための式IIの化合物の用量としては、50mg、100mg及び200mgが挙げられた。100mg用量の用量決定試験が提供している式IIの化合物についての薬物動態のデータは、以下の表に示される。
【0060】
【表8】

Q1=第1四分位数;Q3=第3四分位数
データは算術平均(%CV)として示される;T1/2は中央値(Q1,Q3)として示される;%CV、変動係数パーセント
また、式I/式II/式III/式IVの化合物の2つの固定用量の組み合わせに関する薬物動態試験も行った。式I/式II/式III/式IVの化合物の固定用量の組み合わせの用量は、それぞれ、150mg/100mg/200mg/300mg(用量A)及び150mg/150mg/200mg/300mg(用量B)であった。2つの固定用量の組み合わせ(用量A及び用量B)に関する試験が提供している式IIの化合物についての薬物動態のデータは、以下の表に示される。
【0061】
【表9】

固定用量の組み合わせ試験(用量A)における式IIの化合物について濃度曲線下面積(AUC)によって測定された全曝露は、式IIの化合物の100mgの用量に関する用量決定試験について濃度曲線下面積(AUC)によって測定された曝露に対して、1.5〜2倍高かった。式IIの化合物へのこの曝露の高まりのために、同等の抗ウイルス効果をもたらすために必要な式Iの化合物はより少なくなるか、または同量の式Iの化合物が、式Iの化合物が式IIの化合物とともに投与される場合に、抗ウイルス効果の増大をもたらすかのいずれかであろう。また、式IIの化合物へのこの予想外の曝露の高まりは、式IIの化合物への効果的な曝露を実現するのに必要な式IIの化合物がより少なくなることも示唆している。
【0062】
すべての出版物、特許、及び特許文献は、参照することにより個別に組み込まれるように、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明は、様々な特定の及び好ましい実施形態並びに技術を参照して記載されている。しかし、当然のことながら、本発明の精神及び範囲内に在りながら多くの変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の層及び第二の層を含む錠剤であって;
a)該第一の層は、
式Iの化合物:
【化9】

;及び、式IIの化合物:
【化10】


及び、必要に応じて薬学的に許容され得る担体を含み;並びに
b)第二の層は、
式IIIの化合物:
【化11】

;及び、式IVの塩:
【化12】


及び、必要に応じて薬学的に許容され得る担体を含む、錠剤。
【請求項2】
前記第一の層が前記第二の層に接している、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
式Iの化合物の式IIの化合物に対する重量比が1.0±0.5である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項4】
前記第一の層が複数のシリカ粒子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
式IIの化合物がシリカ粒子に結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項6】
150mg±10%の式Iの化合物;150mg±10%の式IIの化合物;200mg±10%の式IIIの化合物;及び300mg±10%の式IVの化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項7】
150mg±5%の式Iの化合物を含む、請求項6記載の錠剤。
【請求項8】
150mg±2%の式Iの化合物を含む、請求項6記載の錠剤。
【請求項9】
150mg±5%の式IIの化合物を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項10】
150mg±2%の式IIの化合物を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項11】
200mg±5%の式IIIの化合物を含む、請求項6〜10のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項12】
200mg±2%の式IIIの化合物を含む、請求項6〜10のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項13】
300mg±5%の式IVの塩を含む、請求項6〜12のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項14】
300mg±2%の式IVの塩を含む、請求項6〜12のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項15】
薬学的に許容され得る担体をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項16】
単位投与形態で製剤化される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項17】
1日1回投与のために製剤化される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項18】
式Iの化合物及び式IIの化合物を含む組成物を圧縮して第一の圧縮された層を提供する工程;式IIIの化合物及び式IVの塩を該第一の圧縮された層に加える工程;並びに、圧縮して錠剤を提供する工程を含む、請求項1記載の錠剤を調製するための方法。
【請求項19】
以下からなる、請求項1記載の錠剤。
【表10】

【請求項20】
請求項18に記載のように調製された錠剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517432(P2012−517432A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549268(P2011−549268)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/023226
【国際公開番号】WO2010/091197
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】